破骨細胞の分裂(fission)によるosteomorphs形成
数年前のANZBMS(TheAustralianandNewZealandBoneandMineralSociety)で破骨細胞のfissionの演題発表を聴いたときに、大変美しい動画と詳細な解析に驚いた記憶があります。中々論文にならないなーと思っていたのですが、満を持してCELL誌に論文が発表されました。著者を見ると、オーストラリアの骨代謝関係者が多数名前を連ねており、オーストラリアの破骨細胞オタク(osteoclasters)が総力をあげて取り組んだ研究であることがわかります。ご存知のように破骨細胞は単球・マクロファージ系の前駆細胞に由来する骨吸収細胞です。その分化にはRANKL(およびM-CSF)の存在が必須で、RANKLは破骨細胞分化のみならず、活性化にも関与していることが明らかになっています。著者らは...破骨細胞の分裂(fission)によるosteomorphs形成
骨髄Osteolectin陽性細胞は運動負荷によって増加しリンパ球造血を制御する
Leptin受容体陽性(LepR+)細胞は、骨髄nicheにおいて造血幹細胞維持に重要な役割をすることが知られています。骨髄におけるLepR+細胞は小動脈arteriolesおよび洞様毛細血管sinusoidsという2種類の血管に隣接して存在しますが、この論文では、LepR+細胞の16%程度が著者らが報告していたC-typelectindomainを有する骨形成性増殖因子osteolectin(Clec11a)(Yueetal.,Elife.2016Dec13;5:e18782)陽性であり、小動脈周囲にのみ存在することを明らかにしました。Osteolectin陽性(Oln+)細胞は骨芽細胞へ分化しますが、脂肪細胞へは分化しないosteogenicprogenitorであることも示されました。Oln+細胞において...骨髄Osteolectin陽性細胞は運動負荷によって増加しリンパ球造血を制御する
LaJollaInstituteforImmunologyのAlessandroSette博士とShaneCrotty博士によるCOVID-19における獲得免疫adaptiveimmunityの役割についてのreviewです。SARS-CoV-2の特徴として、感染細胞におけるI型interferon(IFN)が関与する自然免疫反応遅延の重要性を示しています。このため自然免疫反応によってprimingされる獲得免疫の誘導が遅延し、ウイルスの複製や拡散が持続し、これを補うために自然免疫反応の暴走が起こって炎症性サイトカインやケモカインの産生過剰が生じ、組織障害を引き起こすことがCOVID-19重症化の本質であるとしています。この仮説はCD4+T細胞の誘導不良が重症化と相関することや、抗体製剤で自然感染の100倍もの...COVID-19における獲得免疫の関与
変形性膝関節症に対するhigh-intensity strength trainingの有効性(START)
変形性膝関節症(kneeosteoarthritis,KOA)は高齢者の運動器疾患の中でも最も多いもので、日本にも2500万人以上の患者がいるとされています。重症化すれば人工膝関節全置換術などの手術が有効ですが、重症化予防のエビデンスがある薬物が存在しないことも治療を難しくしています。KOA患者に対しては運動療法が有効であることが報告されていますが、その内容や強度についての詳細な解析はこれまでありませんでした。さてOARSIのガイドラインをはじめとして、運動療法はKOAの症状を改善させることが知られています。一方で激しすぎる運動はかえって関節軟骨を傷めてOAの進行を助長させる可能性も指摘されています。この研究(TheStrengthTrainingforArthritisTrial;START)では高強度トレー...変形性膝関節症に対するhigh-intensitystrengthtrainingの有効性(START)
いつになったらワクチンで生活は正常に戻るのか?(How soon will COVID-19 vaccines return life to normal?)
JonCohen氏によるこのScienceの論説については、有名な宮坂昌之先生をはじめ多くの方が取り上げておられるので、今更感満載なのですが、実に多くの情報が網羅されており、論点整理に大変有用です。Google翻訳でもよいので是非一読されることをお薦めします。Cohen氏はまず現在世界中で急速に進んでいるSARS-CoV-2ワクチン接種の状況を説明した上で、下記の3つの論点を提示しています。いずれも重要な論点です。①ワクチンによって免疫が成立したら周囲に感染を広げないのか? ②いつになれば正常な日常生活を再開できるか?③新たな変異型SARS-CoV-2はワクチンへの期待にどのような影響も有するか?①ワクチンによって免疫が成立したら周囲に感染を広げないのか? これについてはUCSanDiegoHealthにおける...いつになったらワクチンで生活は正常に戻るのか?(HowsoonwillCOVID-19vaccinesreturnlifetonormal?)
新型コロナウイルス感染症に対して、モノクローナル抗体製剤の有効性が示されています。ほとんどはSpikeタンパクを標的とする抗体で、2種類の抗体を混合したREGN-COV2などが海外では使用されています。さて抗体は抗原認識に重要な可変領域(Fab)と定常領域であるFcの合わさった構造を取りますが、Fc部分は抗体依存性免疫増強(Antibody-DependentEnhancement:ADE)に関与する可能性があるので、ADEを避けるために可変領域だけを切り出して使用するという考え方もあるかと思います。しかしこの論文で著者らはFc領域はSARS-CoV-2ウイルスの感染予防という点では不必要だが、感染が生じた後の症状改善には重要な役割を果たすことを明らかにしています。Fc部分が存在することで炎症症状や呼吸障害の改...新型コロナウイルス抗体製剤のFc部分の重要性
COVID-19肺炎におけるimmune cell circuits
医療従事者で「COVID-19はただの風邪」と考えるヒトはあまりいないとは思いますが、それではCOVID-19の病態の特殊性はどのようなところにあるのか?という点についてはまだまだ分かっていないことが沢山あります。新型コロナウイルス感染症の最も重要な病態は肺炎です。この論文で著者らはICUに入院している88人の重症COVID-19肺炎患者から経時的に肺胞洗浄(bronchoalveolarlavage,BAL)サンプルを採取し、COVID-19以外のICU入院重症肺炎患者211名のBALサンプルとの違いを検討しました。まずCOVID-19患者では、健常人や他の肺炎患者ではほとんど見られないT細胞や単球の割合が多いことが明らかになりました。また肺胞マクロファージ中にSARS-CoV-2のRNAのpositive&...COVID-19肺炎におけるimmunecellcircuits
RECOVERY trialでトシリズマブの有効性が示された
Preprintではありますが、TheRandomisedEvaluationofCOVID-19therapy(RECOVERY)trialにおいてtocilizumabの有効性を示す研究結果が発表されました。RECOVERYは英国のNHShospitalsで行われている、様々な治療薬の有効性・安全性を検証する大規模なtrialで、これまでにもデキサメサゾンが有効であることを示しています。今回の論文は抗IL-6受容体抗体tocilizumabの有効性を示したものです。RECOVERYtrialではmainrandomisation(PartA:dexamethasone,lopinavir-ritonavir,hydroxychloroquine,azithromycin,colchicine,PartB:回...RECOVERYtrialでトシリズマブの有効性が示された
天然痘やポリオの例を見ても、ワクチンが人類の感染症との戦いにおいて強力な武器であることは間違いありません。今回の新型コロナウイルス感染症においても優れたワクチンの開発をうけて、「感染の拡大を抑え込んで日常生活を取り戻したい」と考えている人々にとっては、ワクチンへの反対や拒否は「けしからん」ことなわけです。しかし私の周囲にも「接種するつもりだけど怖い」という声もきかれます。医学・科学リテラシーが高い方でもそうなのですから、一般の方々にとって不安はもっと強いのだと思います。この記事中のDeborahJones先生のように”Butwhatstrikesmeishowmanypeoplearestillhesitating.Vaccinehesitancywillslowdownourreturntonormal.(訳...ワクチン接種をためらう理由は?(長いです)
重症なCOVID-19患者では血栓形成が促進しており、重症化と関連していることが知られています。またこのような患者で抗リン脂質抗体(aPL抗体,anti-phospholipidantibodies)が出現する頻度が高く、抗リン脂質抗体症候群と共通した病態が存在するのではないかとされていました。この論文で著者らは入院COVID-19患者において8種類の抗リン脂質抗体(aPL抗体,anti-phospholipidantibodies)の存在を検討し、52%の患者で少なくとも1つのaPL抗体が存在することを明らかにしました。aPL抗体の中ではaPS/PTIgGが24%と最も多く、aCLIgM23%,aPS/PTIgM18%の順でした。高いaPL抗体を有する患者では好中球の過活性化が生じており、感染制御や血栓形成に...COVID-19における抗リン脂質抗体の重要性
「この国のあり方?」プラセボを対照としたランダム化比較試験(RCT)は、新薬開発はもちろん臨床研究のゴールドスタンダードといわれており、その重要性は多くの医療者が認識しているところです。とはいえ実際にRCTをやろうとすると、手間がかかるということにも増して、「自分の患者さんにプラセボを投与するのはしのびない」とか「明らかにこちらの手術の方が良いと思っているのに別なことはできない」というような反対意見が現場から聞こえてきます。このような意見は「サイエンティフィックじゃないな~」とも思うのですが、何となく彼らの気持ちもわかる気がします。簡単に言うと「自分の家族が病気になったときに、RCTに参加して、プラセボを投与されて病気が悪化したら後悔するでしょ」ということではないかと思います(そうでしょ、○○先生?)。日常診療...この国のあり方?
臥位から座位や立位に体位変更する際、重力によって下半身に血流が集中し、このため心臓に貯留する血液量が低下してしまうと立ちくらみやめまいを生じてしまうという現象が生じることがありますが、これは起立性低血圧(orthostatichypotension,OH)と呼ばれます。この時正常人では安静時に活性化している圧受容体(baroreceptor,)が血圧や大静脈・心腔における血液貯留低下によって不活化し、圧反射(baroreflex)を生じることで交感神経が活性化されて血管抵抗と心血流増加によって血圧が回復します。一方で脊髄損傷患者においては圧受容体と下位脳幹部との連絡が絶たれているため、圧反射が生じないことがOHの原因となっており、患者のQOLを著しく低下させることが知られています。現在OHの治療はライフスタイル...電気刺激によって脊髄損傷による起立性低血圧を改善させる
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