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陽西三郎
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2019/10/04

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  • この道はどこに

    畑の中の石道 ある晴れた日である。 好天気に誘われて、男は車に乗ってドライブしようと思った。海が見たくなり、西海岸の方向に向けて車を運転していた。 遠くに見える水平線に向かって、道路に沿って運転していると思っていたが、どう間違えたのか、水平線が消え、突然、畑の中の細い道に出てしまっていた。 細い道は畑と草原に覆われている。かろうじて車二台がすれ違う程のぎりぎりの細さである。 男は車を引き返そうとも思ったが、たまには冒険もいい、行ける所まで行ってみよう、めったいない冒険心が湧き出た。そのままハンドルを八の字に構えて前進した。 細い道が続き、行先が行き止まりのような、奥には木の生い茂った荒れ地の広…

  • 13階のエレベーター

    エレベーターに写った影 ある週末の真夜中3時を過ぎた時刻の出来事である。 私は仕事での2泊3日の旅行を終え、自分の住んでいるマンションに帰って来た。飛行機が遅れ、こんな時間になってしまっていた。 マンションビルのフロアーに入り、暗証番号を押しエレベーターホールへの自動ドアを通り、エレベーターの前に立った。私は、エレベーターのボタンを押した。もうすでにエレベーターは、誰かが乗っている。階の数字が上がって行く。2、3、4、・・・ こんな遅い時間に誰、ああそうか、飲んだ帰りだな、私は自然にそのように考えた。 ・・7階、エレベーターが止まった。誰か乗った、あるいは下りてまた乗った。エレベーターはそのま…

  • 僕はノラ猫だよ、名前は野良。

    ノラ猫の野良 僕はノラ猫だよ、名前は野良。名前は自分でつけた。 誰も僕のことを「野良」と本当の名前で呼ばず、「タマ」、とか「ミケ」とか「ゴロニャ」とか勝手に名づけて呼んでいる。 僕の大好きな魚などをあげるなら、「ニヤッ」と鳴いたりするが、普段はそれほど人間に近づかない。面倒くさいのだ。 ノラ猫になって三年。僕も以前は家ネコだったよ。大きな家に飼われていた。 うまれた時は、五匹の兄弟猫、お母さん猫と一緒にその家で育てられたけど、ある日、外に出たら迷子になり家に帰れず、そのまま、家族と別れて僕は一人ぼっちになった。 最初は、不安で心細く、小さな声で鳴き、公園などの草むらの中などで隠れていたが、大き…

  • ピノキオ鳥の綱休み

    ピノキオ鳥の綱休み 一羽の鳥が海を渡って来た。何百万海里の海を越えて北の大陸から南の島に飛んできた。 クチバシのとがった三角頭の細身で、まるでピノキオのように木で作られたような、変わった鳥だった。鳥は疲れたのだろう、桟橋に停泊中の船の係留ロープに止っていた。 じっとこちらを伺っているように見える。密かに何かを考えているように見える。ピノキオのように人形だったのが、魔法を掛けれらて生きた鳥にされたのだろうか。それとも、人間だったのが、鳥に変身させられたのだろうか。いわくありげな風貌が人間味を感じさせる。僕は「考えるピノキオ鳥」だと思った。 「やあ、気づいたね。君ももしかしたら、無理やり人間にさせ…

  • 楽園

    楽園(アンリ・ルソー風?) 南の海にはぽっかりと小さな島が数個並んでいた。 真っ青な空に黄色い太陽が輝き、大きな緑の樹木が生い茂り、真っ赤な花が咲き誇る地上の楽園。 手をのばせば身近に黄色の食べ物があふれ、川には手でつかむことのできる程の無数の銀色の魚が泳いでいた。 海からは何にでも使える色とりどりの漂流物が流れ着き、簡単にカラフルな家を造ることができた。多彩な色、赤、青、黄色、緑の魚が釣れた。 透明な雨は雨水となって池に貯められ、黄金の雷の光は火となり夜を照らし魚を焼いた。 人々は苦労もせずに一日の生活をバラ色に送ることができるはずだった。 そう、南の島は「楽園」と呼ばれていた。 その日が来…

  • 灯台島の謎 2

    灯台 2 「財宝箱」は跡形もなく消えていた。 誰があんな重い箱を持っていったのだろうか。Sは朝早く起き、「財宝箱」がなくなったと大騒ぎした。だが、二人は何食わぬ顔でまるで何も無かったかのように、「それがとうした」と平気な顔をしているフリをしていた。 Sはピンときた。「俺が寝ている間に、二人でどこかに運んだんだな」と半分寝ぼけた頭をフル回転させて考えた。 MはSの動揺を察して言う。「海の漂流物は、会社の規則で裏の倉庫に保管することになっている。お前が起きる前に、俺たち二人で箱は裏の倉庫に持っていったよ。何か、財宝でも入っていそうだと、俺たちが妙な気をおこさないよう、隠したのさ」 Kも情けない顔で…

  • 灯台島の悲劇

    灯台 1 数十年前の話である。 その灯台は離れ島にあった。 本島から船で2時間、周辺1㎞の小さな無人島は、海峡が激流のため航海安全用に灯台が設置されていた。3名の灯台守が3か月分の食料、燃料などを積み込み灯台を管理・運営していた。 3月から3か月間、春の季節の灯台守の3人は、KとMとSだった。 Kは灯台守職25年のベテランで三名一組の主任である。Mは灯台守職10年の中堅で、おもに技術職である。Sは灯台守職1年目の若手で、記録その他の事務職を受け持っている。 三名は官舎の中で寝泊まり自活しながら、これからの3か月間、灯台の点灯運営を行っていくのだ。 朝は早くから起き定期点検を行い、灯台に昇り照明…

  • 戻り橋

    橋 隣町M町に行くのには、その橋を渡る必要があった。 その橋はそれほど長くないが、車が一台しか通れない横幅の小さな橋だった。だれもが、昼間でもライトを照らし、軽くクラクションを鳴らし向こう側に合図を送り、車の鉢合わせを防ぐようにしていた。 一台の車が橋を渡って行った。 その車は橋を渡るときの礼儀を知っていなかったのだろう。昼間であったのでヘッドライトを点けず、向こう側からの車も来ないだろうと、クラクションも鳴らさず橋を渡って行った。 橋の真ん中あたりまで来たとき、一台の車が止まっているのに出会った。車を運転していた男はビックリした。前方を見ながら反対側からは車が来る気配もないと判断し、一気に通…

  • フライドフィッシュ定食

    フライドフィッシュ ある小さな島のお話です。 南の小さな村に小さな港があった。数人の漁民が小さな船で遠くの海まで漁をすることがあった。太平洋の赤道近くの海にまで魚を釣りに出かけるのだった。 真夏の天気のいい日の出来事である。あまりの暑さに水温も上昇し、海上温度も50度にもなっていた。 釣り上げた魚が海から釣り上げた瞬間、太陽熱に焼かれ、まるで煮魚になったように釣り上げられたのだ。 漁師はビックリして、その魚をそのまま海に戻そうとした。でも、もうお昼時期なので、昼飯にでも食おうかとそのまま食べてみると、ほんとに美味しい、塩煮魚の味がして、骨のまわりまで食べられるほどであった。 「こりゃ簡単だ、さ…

  • 十字路交差点事件

    十字路交差点 ー2019年10月1日のことである。 人通りの少ない交差点である。 「車の種類はわかっているのか。」 「まだ、分かっていません。」 すべての車が動き出した。 「どの車に乗っているのだろうか。」 「あの車が怪しいんじゃないか。」 「そうだ。あの車の追跡を依頼しよう。」ー 「ユーチュブ映像『十字路交差点事件』より」 僕はあるユーチュブの映像で気になるものを見つけた。 僕が住んでいる街にそっくりな交差点の映像であった。2019年10月1日、僕はちょうどこの映像が写された時間にそこにいた。映像を見ると左側の男女ペアが写っているのが見えるだろう。その二人は僕と知り合いの女性である。 僕は、…

  • 金豚が空を飛んだ 3

    豚のグッズ ー社会にまだインターネットが普及しない時代のことだよ。ワープロもなく誰もが手書きで文字を書き、家庭に一台の黒電話の時代だねー ーこの島は特に遅れていた。戦争が終わて30年近く異民族に支配され、やっとJ国に吸収されて2年後のころのことだよ。 J国へのパスポート携帯が必要なくなり、自由に往来できるようになった。若者はだれでもJ国の大都会を目指して行った。とくに首都のTエリアへの移動はまるで民族の大移動のようだった。 でも、わたしは行かなかった。地元の高校を卒業して1年考えて、逆に父の生まれ育った南の小さな島K村に行くことに決めたのだ。 わたしの父の姉、つまりは叔母の家は農家で、サトウキ…

  • 金豚が空を飛んだ 2

    金豚グッズ 酔いもまわってきた僕はなんだかいい気分になっていた。ここは、ほら話が流通する場所である。あるいは、礼儀としてまず自分のほら話を一篇語るべきかなと変な納得をした。 僕は二人に向かってほ次のような話をした。 「ある日のことです。僕は夜中に起きてみると家の外にまばゆい光が溢れているのを見たのです。家族のだれもがまだ寝ているので、その光に気づきません。近所の人々もいつものように静かに寝静まっていました。 ぼくだけが、なぜか、その光に反応して起きだしてしまったのです。外は、光のあたっている部分以外は暗く、まだ夜が明けてない状態でした。だから、その光は太陽の光ではなく、ましてや町の街灯などでも…

  • 金豚が空を飛んだ。

    金豚グッズ 『紅の豚』(宮崎駿)の主人公、ポルコ・ロッソは自分の飛行機乗りの経験から言う。 「飛ばねぇ豚はただの豚だ」 だが『不思議の国アリス』では豚が飛ぶことはあり得ないこととして意味づけている。 「わたしにも考える権利はあります」と言うアリス。 「ブタにだって飛ぶ権利があるようにね」と侯爵夫人。 (『不思議の国のアリス』河合祥一郎訳) 常識的には豚は空を飛ばない。豚を例にするほど豚が空を飛ぶことは絶対にありえない超怪奇現象として位置づけられていることを言いたいのだろう。 豚が空を飛ぶことはあり得ないが、もし、空を飛ぶ豚がいるとしたらどうなる。 「空飛ぶ豚」は特別な豚であり、豚を超えた豚であ…

  • 明けもどろの花が咲いた

    2020年 遅れ初日の出 2020年、早朝6時10分。 突然携帯電話のアラームが鳴った。 外はまだ暗い。東の海を臨むと厚い雲がかかっているように見える。初日の出は拝めないだろうと思った。 7時ごろになると分厚い雲が白く輝いてくる。 8時を過ぎるころから雲が隙間をつくり始めた。その隙間からあふれんばかりの太陽の光がもれてくる。 時間遅れた日の出を見た。 雲間から明けもどろの花が咲いている。 古琉球時代の太陽を讃えた古謡が思い浮かぶ。 一 天に鳴響む大主 明けもどろの花の 咲い渡り あれよ 見れよ 清らやよ 又 地天鳴響む大主 明けもどろの花の (歌意) 天地に鳴り轟く大主よ。 明けもどろの花が咲…

  • 見えざる壁

    タイル壁 増殖するタイル壁が目の前をおう。 Kは唸った。 「俺はタイル張りの壁に閉じ込められていたのか」 ・・・ Kは会社に行くためにいつものようにバスに乗った。バスは少し遅れてバス亭に着き、ドアが開いた。KはICカードを読み取り機にピット押しバスに乗り込んだ。バスのドアが閉まった。 やはり、少し遅れてバスはバス停に着いた。 Kは会社への道をいつものように歩いている(少し早歩き)。今日は5分遅れている。でも大丈夫、少し早く歩けば時間内に着ける(だろう)。 いつもはバス停から会社へは真っすぐに行く道順だ。 その道は右側に緑豊かな畑があり、Kの好きな花がすっと鼻をくすぐる。途中の公園には日向ぼっこ…

  • メガネ

    眼鏡 面白い話を聞いた。 先日ある熱い国に旅行に行った人の本当の話である。 ホテルの従業員は部屋に置いてあるセイフティボックスをいとも簡単に開けて、中のものを取った。 セイフティボックスにメガネを預けていた客は、中をみてメガネがなくなっているのに驚いて従業員に言った。「あのメガネはたいして高価ではない。でも、メガネがないと一日とて生活できない私にとってはとても大切なものなので、安全なセイフティボックスに仕舞って置いていた。 メガネがないとホテルから出る事もできない。知っていたら探し出して欲しい」 しかし、その従業員は答える。「このホテルには、お客様の大切な物をセイフティボックスから盗むような従…

  • 割れた茶碗

    割れた有田焼 茶碗が割れた。食器を洗っているとき、石鹸にまみれた茶碗をすべらせて落とし割った。一瞬のことだった。軽く落ちたと思ったのにパリンときれいにちいさな2片を作り割れた。 その茶碗は数年前、ある有田焼専門店で買った。手に取ってみてあまりの軽さに驚き、何度も他の食器と持ち比べてみて一番軽く感じられたので、とても気に入って買ったものだ。 使うとき洗うとき、いつも他の物よりも軽いなと感じながら手に馴染んでいた。 それがパリンときれいに割れた。粉々にはなっていない。割れ目を繋ぐときれいに合う。そのまま接着したらもとの形に戻りそうなくらいである。 茶碗・皿が割れるのは何かの意味があるという。 男は…

  • その先には何にがある

    季節はずれのビーチ ここはサイハテの島、南端孤島の西の果てにある漂流島。 草木も生えぬ荒れ地に枯れ木が一本立っている。流木が西のかなた太平洋から流れ着いたのだろう。海藻の緑が白い砂地に埋められていく。 空と海が交差する水平線、その先になにがあるのだろうか。 と思いたいが、ここは季節外れのビーチの海岸線。 訪れる人もいなくなった人口ビーチは、夏の賑わいを忘れ、静かな波の音だけが聞こえる簡素な砂地地帯になっている。 人工的につくられた湾岸は美しいカーブを描いているが、人々が訪れなければすぐまた荒々しい海岸線に変わるだろうか。 海の向こうに一艘の船が遊覧している。遠くに航行しているので軽やかに海に漂…

  • 事務所の中のジャッカル

    メキシコの守護犬 ある年の初夏の一日。 携帯が静かになった。「ハーイ、何している。退屈でしょうがないよ。どこかに行こうよ」 いつもの気まぐれなウサギからのメールだった。 俺は疲れていた。今日は日曜日。昨日は土曜日、にもかかわらず会社に出勤して夜遅くまで働いていた。 そして今、その残務のため、誰もいない会社の部屋で一人パソコンンに向かっている。午前中に昨日の仕事の報告書の続きを作成しなければならないのだ。「今日は、午前中、仕事でかり出されて抜け出せないよ」「なんだ、つまんない。 久々に天気がいいからどこかドライブでもしようかと思って誘ったんだよ」「ありがとう。俺も今日は外ではしゃぎたい気分でいた…

  • 八本指のエビの足

    皿に残されたエビフライの尻尾 猫の指の数が何本あるかご存じだろうか。前足が5本、後ろ足が4本あるのが通常である。 作家のヘミングウェイの愛したネコには前足の指が6本あった。それを「ヘミングウェイ・キャット」と呼び幸運を招くネコだと言われている。 海を愛したヘミングウェイは船に乗って釣りに行くことが好きだった。 知り合いの船乗りの船長からもらったネコには6本の指があった。船乗りの世界では、ネズミをとるネコは重宝され、帆船のロープを器用に渡る、それも6本指のネコはどちらもうまく「幸運を呼ぶネコ」としてお守り代わりになっていたのだ。 ヘミングウェイが譲り受けたネコも6本の指を持っていた。 指の数が多…

  • 青空のディスタンス

    鉄塔コンビ ちょっと太めのR鉄塔と、細めのA鉄塔が二つ並んでいる。 向こうの山が小さく見えるほどの威風堂々の鉄塔コンピ。 「雨にも負けず、風にも負けず、(雪にも)夏の暑さにも負けぬ」丈夫な鉄骨を持ち、鉄塔は街中の家に電気を送っている。 R「俺たちチョット働きすぎじゃない」 A「まあ、そう言うなよ。俺たちが休むとみんなが困るんだよ」 R「それにしても24時間、365日立ちっぱなしの働きづくめはキツイね」 A「それは仕方がないよ。人々が安心して生活ができるように俺たちが、頑張っているわけよ」 R「でも、最近、腰に痛みが走るようになってね。たまには、横になりたいよ」 A「そうだね。横になっても電気が…

  • 比蛇川の謎

    比謝川大橋下の比謝川 K市の中心を流れK動物園の中にある溜め池に起源をもち、K町に下り、東シナ海に流れる、長さ3キロメートルの比謝川は、梅雨時の雨に充分に水分と養分を与えられ、生い茂る雑草・雑木は密林のように川の岸辺を覆っている。 川は、灰色の粘土が川底にたまって淀んでいる。 どんな魚が生息しているのやら。テレピアは確実に潜んでいるだろう。カメも川の中央の岩に天気のいい日に日向ぼっこしているのを見かける。 深さはそれ程ないが、泥で濁っている分底なし沼のようにも見える。 個人で飼育していたニシキヘビが、比謝川の岸辺の密林に逃げたという噂がたって、数年がたつが、蛇の行方は杳として知れない。 その頃…

  • ピンクの城壁

    遊び場 公園の階段は赤、ピンク、緑のセメント丸椅子が並び、ピンク色の壁門が段々じょうに延びている。 一匹のサルがピョンと壁門からセメント丸椅子へ飛び跳ねて、空に飛んでいった。 空にはたくさんのサルが浮かんでいる。 足をバタバタさせ、手を水平に広げ、立ち泳ぎのように浮び踊っている。 サルの群れの飛行ダンス。 サルの一匹がピンクの壁門をスーッと低飛行して潜り抜け、地上に降りたった。 ネコがビックリひっくり返り、犬はクンクン鼻をのばして自分の尻尾を追う。 鳩は羽をパタパタ、目玉をグルグル(声もグルッツグル)させ、チョウチョはいつものようにヒラヒラ、優雅に知らんぷり。 公園で遊ぶこどもがサルの後を…

  • 大人も出ずに居られない街(ディズニーランド)

    ネオン輝く街 清三の耳が聞こえなくなったのには訳がある。 清三が、三歳の時である。 母親が添い寝をしていながら居眠りをした。そのあまりにも大きないびきに清三は耳をふさぐしかなかった。耳をふさいでも母親の大きないびきは清三の脳の中にまで響く程であった。 清三は神様に祈った。 「神様、僕の耳を音が聞こえないようにしてください。 ママの大きないびきが聞こえないようしてください。」 清三は、いつも母親から神様の話を聞いていたので、神様の大きな力を信じてお祈りした。 するとどうだろう。大きないびきは小さな呼吸音に変わり、清三の耳にも子守歌として静かに聞こえ安らかに眠ることが出来た。 次の日から清三の耳は…

  • 三通の手紙が来た

    郵便ポスト 三通の手紙が来た。 一通は石川県から、二通目は山梨県から、三通目は福島県からだった。 一日おきの消印だった。送り手は石川県から山梨県、そして福島県と移動しながらこの手紙を送っている。 一通目の手紙は「6月24日は晴れるだろう」と書いてある。 二通目の手紙は「6月24日は豪雨だ」との予想だった。 三通目の手紙は何も書いてなかった。「?」の文字が書かれているだけだった。 すべての手紙が同じ人物の書いたものであるのは宛名の筆跡で分かった。その意味するものは理解できなかった。いたずらで手紙を送ってきたのか。 宛先の住人Sは考えた。 三通の手紙が間違って送られたのではない。書いた人の意思によ…

  • 右が左、左が右・・・

    カーブミラー 男は車を運転していた。 T字路の曲がり角にさしかかった。男は前方のカーブミラーを見ながら一時停止した。カーブミラーには前方道路の左側に車はなかった。男はT字路をスローで右折する。対向車はない。 その時だ、急に左側から高速スピードで一台の車が疾走してきた。男は急ブレーキをかけた。車はギーギッツと音を上げて止まる。左からの対向車はカーブミラーに写らずスッと消えた。 車は来なかった。男の見間違いだったのだろう。カーブミラーに写った影を車と見間違えたのだ。男はそう判断して、車を再び右折進行した。 男の運転した車は本通りに出た。男は車を運転しながら、さっきのカーブミラーに写っていた車の影の…

  • 赤バナーのレイに囲まれて

    赤いハイビスカス そこは三方を壁に囲まれた小さな広場だった。 その小さな広場は、私が友人・Kを訪れたO市にあった。 五年前に知り合ったKはこのO市に住んでいるはずだった。 1 東京で知り合ったKは三年前故郷に帰っていった。せっかく知り合って仲良くなったのに残念だ、もし、O市の近くに来るようなことがあれば、ぜひ立ち寄って欲しいとKは心を込めて言ってくれた。 Kと私は知り合ってすぐ仲良くなった。同じ趣味が起因したのだろうか、話す内容が多岐にわたっていても会話が途切れることはなかった。二人が行ったことのある場所もほとんど一緒で、まるで双子の兄弟のような親しさで接していた。 私とKは二日を開けず互いの…

  • ワイワイガヤガヤ

    グレムリングッズ 男はゲームセンターに足を運んだ。 何年ぶりのゲームセンターだろう。 昔のゲームセンターとは様子が違う。 小さな子供づれの家族や子供たちが多い。 なんだか健全な場所になっているようだ。 男は一つのゲーム機に目を止めた。 昔映画で見た宇宙怪獣のようなぬいぐるみがタクサン置かれている。それをどうするのだろう。 上の方にクレーン機のようなものが吊り下げられている。 もしかしたら、そのクレーンでぬいぐるみを釣り上げて空いている空間に落とせば、前の出口から出てくる仕組みなのか。 ボタンを押してクレーンを動かし、クレーンの先っぽ(アーム)でぬいぐるみを挟んで穴に落とせばいいのだろう。 男は…

  • 影の影響

    影を写す 男は影を写した。 影を写して、その形を保存すると光の部分、つまり本物の肉体が滅びないと古書にあった。 自分の影を写し続けると、その影が形を保ったまま肉体の老化を防ぐと言うのだ。 まるで「ドリアン・グレイの肖像」のようだ。 ドリアンの場合は、実際の肉体は老化しないが、絵の中の肖像画が年月にふさわしく老化していく小説である。 影の中の陰画は暗黒であるので老化することはない(いや、老化が影に吸収されて見えない)。 しかし、その代償として何かを要求されるのではないか。 ドリアンは若さを得てその傲慢さで悪に染まったが、老化した肖像画をナイフで切り裂いた後、自分に刃が跳ね返って自死することになる…

  • 架空座談

    三頭会談 A おう、ひさしぶり。 B そうだね。何年ぶりかな? C もう、3年はなるよ。 A もう、そんなになるのか。 C だいたい、そうだね。 B でも、ひさしぶりに会ってもお互いあまり変わらないね。 A いつもここで会って、この椅子にすわって喋っていたな。 B まあ、ここが一番安心するからね。 C というより、俺たちあまり金がないから、いつも手持ちの飲み物食い物を持って、この席を指定席にしているんだからね。 A まあ、そういわず、指定席なのだから、特別だと思って座ればかなりいけるんじゃない。 B つつと言うか。誰も座らない指定席は特別仕立てだよ。 C まあ、価値あるものと思えば何でも特別だ…

  • 台風よどこへ

    台風一過 台風が過ぎ去った。 雲が動いた。 小さく雲がちぎれた。 でも、今はなだらかに空にただよっている。 酔っているのではない、と思う。 強風に追い付けなかったので、雲は少しだけ戸惑って空をさまよっているのだろう。 秋を呼びたかったから、暑さにおびえる者を少しだけ涼やかにしたかったのだ。 と、台風は言いたいのかもしれない。 でも、雲さえもおきざりにしてどうする。 と、地上の者は言いたい。 でも、世界は、地上の都合だけではできていない。 と、台風は言うだろう。 でも、少しは地上のことも気にして欲しい。 と、僕は言いたいけど・・・ 何も言えない。 ・・・ ・・・ ・・・ そんなことを雲に托して言…

  • マンホール地下の謎

    消火栓のマンホール ドイツでの「ネズミ救出作戦」をご存じだろうか。 ドイツのとある町で、ネズミの鳴き声(うめき声)が聞こえた。そこを通りかかった小さな女の子が気づいた。太ったネズミがマンホールの穴に挟まて動けなくなって、「助けて!」と叫んでいると言うのだ。 女の子はネズミが可哀そうになって、家族に助けて欲しいと頼んだ。家族は、ネズミを助ける手立てを知らず、動物愛護団体に連絡した。 動物愛護団体の職員は実際に助ける道具を持っていないので、近くの消防隊に救助を依頼した。依頼された消防隊員は7人がかりで、マンホールの蓋をあけ、太りすぎて穴に挟まったお尻を押し上げ、無事救出に成功した。 冬を越すために…

  • 羽咋のUFO博物館

    宇宙博物館グッズ 数年前、僕は石川県の能登半島に行った。 金沢市の旅行のついでに、近くに有名なUFOの町があるとの情報を得て、訪れた。 そこは羽咋(ハクイ)市である。 駅から歩いて15分、ビックリした(仰天も含めよう)。 なんと博物館(コスモアイル羽咋)の前に本物のロケットが展示されていたのだ。 アメリカで実際に打ち上げた 「レッドストーンロケット」(26.6m)が展示されていたのである。 博物館の形はまさにUFO型であった。 その昔、羽咋には奇妙なことが書かれた古文書があった。 古文書によると「そうはちぼん」と呼ばれる謎の飛行物体が頻繁に目撃されていたというのである。「そうはちぼん」とは、日…

  • 赤と黒の表示プレート

    トイレはあちら 男はビルの屋上のビアガーデンで生ビールを飲んだいた。 いまだ日の強い夏の話(九月だからもう初秋?)である。 太陽のまぶしい夕方の五時ごろから飲み始めたのが祟ったのだ。陽の下のアルコールは酔いが廻るのが早い。 飲み放題コース、セルフサービスの生ビールは何杯でも飲めた。飲み放題にセルフサービスとは「悪魔の誘い」である。 まるで自分の家にいるように、保冷庫から勝手に冷えたジョッキ杯を出して、自分で生ビールを注ぐのだから遠慮はいらない。 男は貧乏性で、もとを取ろうと心が向いているから、なるべくたくさん飲もうと張り切った。 酔ったらたくさん飲めないから損だと、酔っている自分をごまかして、…

  • ちいさい秋 みつけた

    小さな紅葉 葉っぱが三枚(+R)赤く染まっていた。 街の街路樹にちさい秋を見つけた。 子どものころ聞いた(歌った)童謡を思い出す。 だれかさんが だれかさんが だれかさんが みつけた ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 みつけた めかくし鬼さん 手のなる方へ すましたお耳に かすかにしみた よんでる口笛 もずの声 (「ちいさい秋見つけた」サトウハチロー) そういえば、子どものころは誰でもよく鬼ごっこをしたっけ。 「誰かさん」は独りぼっちで、遠く離れた場所から鬼ごっこで遊ぶ子供たちの声を聴いている。 自分も鬼ごっこに加わりたいのだが、ひとりで家の中にいるのだろう。 部屋の中で耳をすますと、鬼ごっ…

  • 宝くじ売り場から見える風景

    宝くじと観覧車 宝くじを買ったことがあるだろうか? ほとんどのひとは一度くらいは宝くじを買っているだろう。 それを買い続けるかどうかは人による。 高額当選(1億円以上)の経験があるものは数少ない。それでも高額当選を夢見て買い続ける人は多いだろう。 いつかは高額当選し億万長者になる夢をみるのは楽しい。今の仕事を辞め、海外旅行し、高級車を乗り回し、はては日本脱出の夢をみるのはなお楽しいだろう(1億円じゃ足りない?、じゃ10億円にしよう、夢見は自由だ)。東南アジア(マレーシア)で王族の暮らしをしよう。 目の前で威張り腐っている上司に辞表を叩きつけて、意地悪な同僚を尻目に、さっそうと職場を後にする。ま…

  • 三角食堂

    三角食堂 とある町の三叉路の角地に小さな食堂がある。 二つの車道に囲まれた食堂は瓦屋根の二階建(一部が二階)の一階部分に大きな看板が掲げられている。 「三角食堂」 地形に由来するであろう食堂名ははシンプルで一直線(三角形)である。 ・・・ その中に入るとテーブル席が六つある。 壁に掛かった大きな三角形の時計が三時を打っている。 メニューを見ると、三角おにぎりを始め、おでん、サンドイッチと三角形料理をはじめ、さらには三角ソバ、三角ステーキ、三角オムライスとすべてのメニューが三角形の形をした料理になっている。 食器もまた三角形で、三角お皿に、ごはん・汁椀も三角形である。コップも三角形である。 箸は…

  • テーブル番号

    はま寿司のテーブル番号 男は一人でその店に入った。 渡された座席番号は44番。 その店は商品が回転しながら客の前に提示され、その商品を気に入った客が勝手に取っていいことになっている。または、タブレットに商品が提示され、注文画面を押すと商品が回転ラインに乗って客の前に来る、その時、商品画面が表示され音声で知らせてくれる。それをすばやく取る。 男は商品を取り損ねた。 お知らせの音声と画面を確認している間に商品は男の前をすっと通り過ぎて行った。 タイミングが悪いのか、次に注文した商品も取り逃がしてしまった。 そのつぎのもだ。三回目だ。 男は焦った。 これではいつまでたっても商品にありつけない。 男は…

  • ペンが並ぶ

    水性六角ツインペン ペンが並んでいる。赤。青紫。緑。黒。 規則正しく並んでいるよに見えて、少し、右を見ているペン、左を見ているペン、あるいは隣のペンにもたれかかっているペンなど、長い間店頭に並び疲れているような感じのするペンの整列である。 後ろでは青緑と黄色がワイワイガヤガヤとなにやら騒がしく動き回っている。後方から押されて前列の右側の緑のペンが黒のペンにもたれかかって、その勢いで後ろの黒のペンが緑のペンの集団の中に紛れ込んだ。 大丈夫だろうか。後列の黒のペンの集団がその仲間のペンを取り戻すかのように勢いよく緑の集団にくってかかっている。 青緑のペン三本は遠巻きにこわごわと、みんなから離れてた…

  • だれも座らないベンチ

    あるバス停のベンチ そこには使い古され年月のたった半分壊れかけたベンチがあった。 だれかが座ったことがあるのだろうか。 長いこと使われていないような気がする。 だれもこの背もたれの欠けたベンチには座らないのだろう。 そこへ、ひとりのおばあさんが来た。バスが来るのを待つのだろうが、チラッとベンチを見たがそのまま立ちながらバスを待っている。 おう、そこまれ嫌われたのか、悲しいねベンチ君。いくらなんでも疲れたら休んでくださいね。さびしそうなベンチ君のかわりに僕はそう思った。 それとも、ベンチ君は我関せずで、誰が座ろうが、座らなかろうが構わないのかもしれない。何年も人々から忘れ去られ、ベンチの座板も雨…

  • 初めてのブログ開設

    残波岬の銅像 今日のブログ講座は、悪戦苦闘の連続。何度も入力画面で失敗した。 この画面にやっとたどり着いて、ほっとしている。 自分だけが取り残された気分で、本当に今日でマスターでき、みんなに追い付いていけるのかひやひや、サスペンス映画並みの心理状況だった。 完璧に自分を見失っている。 映画で言えば「恐怖の報酬」になるが、さすがに、トラックまるごと大爆破ではなく、恐怖の報酬として逆にこのようにブログを書いていることになる。 一大逆転のサスペンス劇場で、ハッピーエンドになれば幸いだ。

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