幕末に日本にやってきた英国のプラントハンターのロバート・フォーチュンは、訪日前に中国で歴史的な密命をやり遂げた跡だった。当時、イギリスの綿をインドへ、インドのアヘンを中国へ、中国の茶をイギリスへという「三角貿易」で、イギリス経済は巨万の富を帝国にもたらしていた。アヘン戦争(1840年)勝利でイギリスはさらに未踏の中国市場を飛躍的に拡大していくことになる。中国奥地に外国人が侵出するのは命がけだった。プラントハンターの若きフォーチュンは、「ロンドン園芸協会」から中国行きを命じられ、貴重な茶をはじめとする植物の苗と種を入手する密命を受けていた。彼は高級官僚服と辮髪をもって変装し、未知の国での採集を命がけでしていく。そんなドキュメンタリーを描いたのがサラ・ローズ(訳・築地誠子)『紅茶スパイ』(原書房、2011.1...プラントハンターの密命は