chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
ことばを食する https://www.whitepapers.blog/

私の主観による書評、ブックレビューです。小説のほか美術書、ノンフィクションなど幅広く扱います。ベストセラーランキングもチェックします。

くー
フォロー
住所
未設定
出身
未設定
ブログ村参加

2019/05/27

arrow_drop_down
  • 国を支える「母」への道のり 〜「月と日の后」冲方丁

    この世をばわが世とぞ思う望月の....と詠んで、権力をほしいままにした藤原道長。その娘・彰子(しょうし)の生涯を追い、怨念や陰謀渦巻く平安貴族の権力争いを描き出します。「月と日の后」(冲方丁=うぶかた・とう=、PHP)の斬新さは、どろどろした政争を女性の視点でとらえたこと。 12歳で生家から引き剥がされ、一条天皇のもとに入内(じゅだい)した彰子は、右も左も分からない女の子。天皇が訪ねてきても、ただ身を固くして微動だにできません。 父である道長にとって、娘は権力を握るための大事な道具です。 初潮はまだか。胸乳はまだ張らないのか。いつ子を産める体になるのか。 父が歯ぎしりせんばかりに自分の成長を待…

  • 冲方さんと千年前の女性たち 〜作家つれづれ・その4

    冲方丁(うぶかた・とう)さんの新刊「月と日の后」(PHP)を読んでいます。読了していないので、作品レビューを書くのは後日にするとして、今は趣の赴くままに...。 一昨日から息子と2歳の孫の男の子が帰省していて、振り回されていました。幼い瞳は、なんと邪気がないことか。今日の午後に帰って行き、ほっとしたような寂しいような。さて 藤原彰子(しょうし)は、摂政として世を支配した藤原道長の娘。12歳で一条天皇に嫁ぎ、天皇亡き後も陰から朝廷を支えた女性です。 「月と日の后」は、彰子の生涯を追い、その視点から平安貴族たちの権力闘争と、闘争に翻弄される人びと(その筆頭は彰子自身と、天皇)を描き出します。欲望渦…

  • 惨めなシンデレラとその後 〜「源氏物語」瀬戸内寂聴訳その6

    5月の連休のころヤフオクで全10巻、1,000円で落札した瀬戸内寂聴訳「源氏物語」。併読本として年末までには読み終えようか...と、気軽に構えていました。 ところが読み始めるとそれなりに深みにはまり、いまや年内の読了をほぼあきらめています。この大作が持つ力を、完全に見誤っていた。 瀬戸内さんは、現代文へのさすがの翻訳。意味を移し替えるだけなら国文学の専門家で事足りても、物語の空気感を伝えることができるのは現役の小説家しかないですね。だからこそ、これまでもそうそうたる作家たちが現代語訳に挑んできたのでしょう。 手元に、谷崎潤一郎訳「源氏物語」(昭和49年の7刷、中公文庫)があります。カバーに川端…

  • 時空を超えた事実 それは<物語> 〜「イヴの七人の娘たち」ブライアン・サイクス

    <縄文顔>と<弥生顔>という、ちまたの分類があります。縄文=ソース顔、弥生=しょうゆ顔、と言い換えてもいいでしょう。この分類、なかなか遺伝子的に日本人の成り立ちを言い当てていると思います。 などど、知ったふうに書いたのは、遺伝子解析が切り拓いた現代の考古学(正確には分子人類学、他の呼称もあり)について、ごく少しだけ知っているからです。 「イヴの七人の娘たち」(ブライアン・サイクス、ソニー・マガジンズ=現在は河出文庫)は、この分野を面白く紹介してくれる科学ノンフィクションです。 翻訳が出たのは20年前の2001年ですから、もはや先端技術の<古典>ともいうべき1冊。文系人間にも読めて、なかなか面白…

  • 中村真一郎 〜作家つれづれ・その3

    最近、中村真一郎さん(1918〜1997年)の本を引っ張り出してきて、拾い読みの再読をしています。今はもう、名前知らない〜、という人が多いかもしれません。 小説家、仏文学者。文学評論も書き、若いころは詩人として知られ、またラジオドラマの脚本なども書きました。わたしが読んだは、中村さんの仕事のごく一部。硬質な印象のある詩と、日本の古典文学について書いた3冊の評論集に過ぎません。作家としての本流は小説なのですが、そちらは未読のままです。 「私説 源氏物語」(潮出版社、1975年、絶版)のページをめくって、当たり前のことを忘れていた自分に気づき、はっとしました。 「源氏物語」の主人公・光源氏と、彼の…

  • すくすく伸びる命について

    昨年秋に、剪定したツルバラの枝を1本、挿木して部屋に持ち込みました。 幸い根が出て、冬に芽を伸ばし始めました。肥料と水管理に気を配り、大きな鉢に2回の植え替え。たった1年で、ここまですくすく伸びた命の力に驚くばかりです。 昨年の冬 今年5月ごろ 2121年9月9日。秋の蕾が膨らみ、少し咲き始めました。 さらに来年の花の時期、どこまで大きくなっているか楽しみ。でも、植物は世話を怠るとすぐにダメージが現れるので気が抜けません。これからは病害虫、特に葉を枯らす黒星病(ブラック・ポイント)にも要注意です。 さて、新聞のコラムに何を書くか毎回悩むのですが、どうしても書けそうなテーマを見つけられないときが…

  • 軽い気持ちで読むと.... 〜「貝に続く場所にて」石沢麻依

    森に接した大学都市、ドイツのゲッティンゲン。留学中の<私>は人気ない駅舎の陰で、日本から訪ねてくる友人を待っています。 <私>は東日本大震災で被災した過去を持ち、ゲッティンゲンを訪ねてくる彼は、大学時代の美術史の研究仲間。沿岸部に住んでいた彼は、2011年3月11日に津波にさらわれ、現在も遺体は見つかっていません。 「貝に続く場所にて」(石沢麻依、文藝春秋9月号)は、令和3年上半期の芥川賞受賞作です。あの大災害による暴力的な日常の分断、そして鎮魂と、生き残った罪悪感を、作者はどのように形象化したのか。わたしはそれが知りたくて、作品を手にしました。 <私>を訪ねてきた、この世の人ではない彼は、ご…

  • 常夏の氷 秋風が吹いて栗

    わたしの住む地、9月になったとたんに涼しくなり、いや、肌寒いほどでした。夜になって、外からは激しい雨音。 「もう栗が出回っているのか」と、スーパーで栗を見かけたのが8月最後の昨日のことで、帰宅して水に浸しておきました。今日の夕方から鍋でことこと、40分ほど。熱いうちに一つひとつ皮を剥きながら(焦ってはいけません、特に渋皮は)、焼酎のお供にしました。 うん、新型コロナも地球温暖化も心配だけれど、秋はやってきた。...かな。 「源氏物語」54帖の、第26帖は「常夏」。 猛暑でぐったりするさなか、36歳になった光源氏は、息子の夕霧の中将らと水上にしつらえたデッキでひと時を過ごしています。 そこへ息子…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、くーさんをフォローしませんか?

ハンドル名
くーさん
ブログタイトル
ことばを食する
フォロー
ことばを食する

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用