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  • 「アジア発酵紀行」 小倉ヒラク

    「アジア発酵紀行」(小倉ヒラク著2023年11月文藝春秋285p)を読みました。「日本発酵紀行」が面白かったので。子どものころ「赤毛のアン」を読んでいた時に(マリラはアンに料理を仕込もうとするのでけっこう料理シーンが多い)よく出てきた「グレイビー」肉汁なんて訳されていた。何?どうやらグレイビーから作ったソースを料理にかけるらしい。ソースだったら冷蔵庫にあるし、何だったら醤油も、味噌もと思っていた。日本の料理は実は簡単なのだという。味噌や醤油があるから。味噌も醤油も発酵食品だ。(みりんも酒も)日本中の「発酵」を巡り歩きた著者は今度は「糀」(こうじ)のルーツを求めてアジアを巡ることにする。大陸のこうじは麦こうじが主だ。では米こうじは日本独自のものなのか?いや、そんなはずはない。きっとアジアのどこかにルーツはあ...「アジア発酵紀行」小倉ヒラク

  • 「モヤ対談」 花田菜々子

    「モヤ対談」(花田菜々子著2023年11月小学館460p)を読みました。「面白いと思った本」の著者と対談するという企画をまとめたもの。山崎ナオコーラは言う。「主婦も主夫も介護者もニートも社会人ですから社会参加とか社会復帰って言葉を使うのはおかしいなと思っています」メレ山メレ子は言う。「男らしさや女らしさを期待されることのかわりに今度は無害でまっとうな善人であることを期待されているような圧はたしかあるかも」ブレイディみかこは言う。「なんでこんなにエンパシーという言葉がウケたのかな(うちの居間にもエンパシーという文字の入った絵が額に入れてあります)いつも配偶者や子どものケアをしていると常に他者の靴を履いている状態だから子どもが失敗したら自分のせいだと思うし配偶者の仕事がうまくいかないと自分が悪いんじゃないかと...「モヤ対談」花田菜々子

  • 「曇る眼鏡を拭きながら」 くぼたのぞみ 斎藤真理子

    「曇る眼鏡を拭きながら」(くぼたのぞみ斎藤真理子著2023年10月集英社)を読みました。翻訳家の2人の往復書簡です。くぼたのぞみさんは詩人でもある。斎藤真理子さんは「82年生まれ、キム・ジョン」などハングル語の翻訳をしている。おふたりとも若くない。(60代と70代)なのに、なんだか若い女性の書いたものを読んでいるような気分になるのは何故なんでしょう。翻訳ものといえばイギリス文学、フランス文学、ロシア文学だったのに今ではアフリカ文学も韓国文学は次々にという感じになっている。それというのも翻訳のおかげ。「やむにやまれず作品を書く人がいてそれを儲けのためだけではなく出版する人がいてさらに読む人がいるその営みを多言語に広げて多くの言語の向こうにいる人たちにも読めるようにするそれが「曇る眼鏡を拭きながら」なされる翻...「曇る眼鏡を拭きながら」くぼたのぞみ斎藤真理子

  • 「マンガがあるじゃないか」

    「マンガがあるじゃないかわたしをつくったこの一冊」(2016年1月河出書房新社)を読みました。29人の方が自分のイチ押しを紹介している。光浦靖子は「エースをねらえ!」(山本鈴美香)大学もろくに行かずバイトも何十個もクビになって仲の良い少数の人としか接することができなかった光浦は現状を打破しようとショック療法的に一番苦手だと思うお笑い芸人のオーディションを受けて合格してしまう。笑いも取れないコメントも使われないしまいには怒られる……落ち込む日々。そんなとき「エースをねらえ!」を読んでダメダメな主人公の姿にふれるうちに「誰もが主役なわけじゃないそれぞれの役割があるんだ」と思うようになる。荻原規子は「動物のお医者さん」(佐々木倫子)「仕事や人間関係で行き詰まりどうしようもない気分に陥ったときハムテル(主人公の獣...「マンガがあるじゃないか」

  • 「サガレン」 梯久美子

    宮沢賢治は妹とし子を亡くした翌年、カラフトに旅に行っている。この鉄道旅が「銀河鉄道の夜」のモチーフになっているのだという。そのことを調べて書いた「サガレン」(梯久美子著2020年4月角川書店285p)を読みました。賢治は「サガレンの朝の妖精」(オホーツク挽歌)「サガレンの八月のすきとほった空気」(樺太鉄道)というふうにカラフトをサガレンと言っている。「死後、妹は、どのような道をたどってどこへ行ったのか」を賢治はどしても知りたかった。そのために、日常とは別の時間が流れる汽車の旅を必要としていたのではないかと著者は推理する。賢治は花巻から青森へ鉄道で行き連絡船で函館に渡り函館から稚内まで鉄道で行き稚内から宗谷海峡を渡ってカラフトへ渡った。賢治はとし子が成仏したイメージとそれができずにどこか暗い場所にいるイメー...「サガレン」梯久美子

  • 「文庫旅館で待つ本は」 名取佐和子

    「文庫旅館で待つ本は」(名取佐和子著2023年12月筑摩書房247p)を読みました。現実にもあるらしい本のあるホテルや旅館文庫のある小さな旅館が舞台です。円(まどか)祖母の後を継いで凧屋旅館の若女将をしている。円は本が読めない。文字は読めるのだが本の匂いに圧倒されてしまうのだ。円は人の匂いも感じる。体臭とかではなく、その人の心の持つ匂いとでも言おうか。お客に文庫の中の一冊と同じ匂いを感じたらその本を勧めて読んでもらうそして、本の内容を語ってもらうというのが基本設定。(これだけでも、じゅうぶんおいしい)全部で5話。第3話はファンタジー風第5話はミステリー風と味付けもさまざま。お客が勧められる本は夏目漱石の「こころ」志賀直哉の「小僧の神様」芥川龍之介の「藪の中」とシック。華奢な体なのにお客の荷物を軽々と持った...「文庫旅館で待つ本は」名取佐和子

  • 「ユニバーサルミュージアムへのいざない」

    「ユニバーサルミュージアムへのいざない」(広瀬浩二郎著2023年10月三元社183p)を読みました。テレビの画面に、数人の女房たちがてんでに書物を開いている場面が出てきた。(源氏物語系番組)あれ?違うでしょう。この時代の読書は一人の女房が声に出して読む→みんながそれを聞くだったはず。第一、写本だって灯だってそんなに数はない。ついこの前まで、夜は炉辺でお年寄りの話を聞いたものだっただろうし皆でラジオに耳を傾けた時代もあった。そう考えると、現代はずいぶん視覚優位になっている。美術館や博物館だって「見る」ためのものだ。その流れに対して広がっているのがユニバーサルミュージアム活動だ。著者は視覚障害者として長年開かれたミュージアム活動に携わってきた。(国立民族学博物館にお勤め)この本では、全国のユニバーサルミュージ...「ユニバーサルミュージアムへのいざない」

  • 「八ヶ岳南麓から」 上野千鶴子

    「八ヶ岳南麓から」(上野千鶴子著2023年12月山と渓谷社150p)を読みました。人一人の存在は大きい。野球のあの人も将棋のあの人も上野千鶴子氏が作った「おひとりさま」という言葉は独身の人に市民権をもたらした。その上野氏が八ヶ岳で過ごした日々のことが語られている。このエッセー、きっぱりの中の情感とユーモアの配分がほどよいところがいい。山荘を建てて「鹿野苑」(ろくやおん)と名付けたら(釈迦が仏法を説いた林園の名前)宗教系の高齢者施設に入っているの?と言われた。東大の研究室は夏熱く(誤字ではありません)、冬寒い。365日、逆冷暖房完備。コロナ下の山荘ごもりは「自分にこんなにおひとりさま耐性があったのか。小さい時から「読む」と「書く」が好きだった。それさえあれば生きていけることを確認させてくれた」「おふたりさま...「八ヶ岳南麓から」上野千鶴子

  • 「フットパスによる未来づくり」

    「脳を鍛えるには運動しかない」(レイティ著2009年3月NHK出版345p)を読んで少し歩くようになって歩くことに興味がわいてきたところだったので。「フットパスによる未来づくり」(神谷由紀子泉留維編2023年9月水曜社286p)を読みました。18世紀末イギリスでは工場労働者の健康維持のために自由に郊外の道を(所有者のある土地でも)歩くことができるという法律が定められた。それが、フットパス。日本では20年ほど前から取り組まれている。沖縄の浦添市では芥川賞作家の又吉栄喜(又吉直樹ではありません)の作品の舞台であることから「又吉栄喜の原風景を歩くDeepOkinawaフットパス」を行っている。東京の町田市の石川健さんは発祥の地イギリスの「国民が健康な生活を送るために国が歩く道を保障する」というのは斬新な発想だと...「フットパスによる未来づくり」

  • 「人生が確実に幸せになる文房具100」

    「人生が確実に幸せになる文房具100」(高畑正幸著2023年12月主婦と生活社143p)を読みました。著者は伝説の番組「TVチャンピオン」の文具通選手権で3回の優勝を飾った人。あ、〇〇がないと思ったら買い物ついでにちょっと買って済ませてしまう日々。著者は言う。「毎日の生活で触れるものに便利で、美しく、質の高いものを丁寧に選びしっかり使うことは生活の雑事を楽しむ行為に変えてくれます」No.1からNo.100まで厳選された(絞り込むのに苦労したことでしょう)100点の文房具が紹介されている。ごくごく生真面目な辞書のようなつくり。これは読み物として楽しむというよりは手元に置いて〇〇を買おうと思ったら開いてオススメを買うという使い方がいいのではないかと思います。筆記用具にウエイトが寄っていますが個人的には紙もの好...「人生が確実に幸せになる文房具100」

  • 「椿の恋文」 小川糸

    終戦間際のドイツの世界に少々疲れたので鎌倉でひと休み。「椿の恋文」(小川糸著2023年10月幻冬舎339p)を読みました。おなじみ、ドラマにもなったツバキ文具店ものの続編です。鎌倉で「ほっこり」しようと思ったらこれが違う……何だかザラっとする。イヤミスならぬイヤほっこり(著者はほっこり系のつもりはありませんと言うかもしれないけれど)散りばめられた鎌倉の食べ物屋さん、お菓子登場人物の愛称(バーバラ夫人、マダムカルピス、男爵……)がどれもほっこり風味なのに……祖母の代書屋ツバキ文具店を引き継いだ鳩子は今では子持ちになっている。夫ミツローの連れ子QPちゃんとミツローとの間に生まれた小学生の2人の子どもの3人だ。(2人が年子で同じ学年というのは次巻への伏線?)しばらく休んでいた代書屋を再開したツバキ文具店につぎつ...「椿の恋文」小川糸

  • 「歌われなかった海賊へ」 逢坂冬馬

    「同志少女よ、敵を撃て」の逢坂冬馬の「歌われなかった海賊へ」(逢坂冬馬著2023年10月早川書房375p)を読みました。舞台は第二次大戦中のドイツ父を密告によって失ったヴェルナーは密告した相手を殺そうと狙っていた。もともとヴェルナーは喧嘩には自信があった。そこに現れたレオとフリーデに誘われてヴェルナーは反ヒトラー・ユーゲント(少年組織)のグループを組むことになる。(実在したエーデルヴァイス海賊団)そこに爆弾を愛好する少年ドクトルが参加して4人はユダヤ人が運ばれて来る列車の通るトンネルの爆破作戦に取り組むことになる少しでもユダヤ人が収容所に入れられるのを遅らせるために……登場人物たちはそれぞれに壁を持っている。ヴェルナーはもちろん裕福な靴工場経営者の息子レオにも親衛隊将校に娘フリーデにもドクトルにも(兵器に...「歌われなかった海賊へ」逢坂冬馬

  • 「バールの正しい使い方」

    地震お見舞い申し上げます。年をまたいで読んでいたのは「人鳥(ペンギン)クインテット」の青本雪平(青森県出身)の「バールの正しい使い方」(青本雪平著2022年12月徳間書店421p)主人公は礼恩(れおん)小学生の男の子だ。礼恩は転校を繰り返している。お父さんは仕事が続かずに転職ばかりしている。お父さんが転職するたびに、引っ越しをすることになり礼恩は転校することになる。転校はお手のものだ。まずクラスの様子をじっと観察する。リーダー格なのは誰で、孤立しているのは誰か。そして、あとは「擬態」するだけだほどほどの存在として。小学校のクラスを舞台にした日常の謎ミステリっぽかった物語は第4話「靴の中のカメレオン」で急にカーブを切る。重い病を抱えている礼恩はついに入院し院内学級で過ごすようになる。3人だけの院内学級……物...「バールの正しい使い方」

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