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  • 「日本史を暴く」 古文書発見記

    「日本史を暴く」(磯田道史著2022年11月中公新書)を読みました。怖い顔をした磯田さん(テレビでお馴染みなので、つい言ってしまう)裏、闇、暴くというほどではありません。新聞連載をまとめた軽い一冊。どの章にも〇〇で古文書を発見読んでみたら…とある。新聞を読むような速さで古文書が読めるという磯田さんでなくてはこんなに発見できないだろう。磯田さんは子どもの頃台風で大雨が降ると20km余りの道を自転車をこいで高松城のあたりが水浸しになっているのを見に行って秀吉による備中高松城の水攻めの情景を想像したという。磯田さんはよしながふみの「大奥」も読んでいて「社会の構成員の声をまんべんなく反映させるにはリーダーや会議メンバーに女性・若者が含まれていてその発言が尊重されていなければおかしい。でなければ、その集団は衰退する...「日本史を暴く」古文書発見記

  • 「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」

    東日本の震災のあと出来た「気仙沼ニッティング」の製品(地域の人による手編みのセーターを販売)のデザインを担当したニットデザイナーの三國万里子さんのエッセー「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」(三國万里子著2022年9月新潮社刊)を読みました。三國万里子という存在が好きです。表紙は最近人形の服作りに凝っているという三國さん作のセーターを着たロシアの作家の人形(ロシアは人形制作がさかんです)中学生のころ学校になじめずに外階段で時間を過ごしたりしょっちゅう早退したりしていたこと。息子さんはなかなか言葉を言わずひらがな積み木で意思表示をしていた。その後母音だけを発音するようになりずいぶん経って子音も言うようになったこと。(今では日本語ペラペラ)大学を卒業して仕事に馴染めずに秋田の山奥の温泉旅館で働いた日...「編めば編むほどわたしはわたしになっていった」

  • 「死に方がわからない」 現代終活事情

    「死に方がわからない」(門賀美央子著2022年9月双葉社刊)を読みました。物騒な題名ですが世に言う「終活」について調べたレポートです。著者は50才過ぎ配偶者、子どもはなく兄弟もいない。郷里にお母さんがひとりで暮らしている。親類ともあまり交流はない。フリーライターなので職場というものもない。そんな著者が(お母さん亡き後)自分のイメージした最後を実現すべく調べに調べたのがこの一冊。問いを立てその解をそれぞれ3つ以上。ここがすごい。人は、1つ解を得たらつい安心してしまうものなのに。問いは◯自宅でひとりで死んでいた場合、どうした早く発見されるか◯どうしたら希望しない(過剰な)治療をしないで死ねるか◯死後の住居やモノの整理はどうしたらいいか◯葬儀や埋葬はどうしたらいいかなどなど死んでしまったら仕方がないという丸投げ...「死に方がわからない」現代終活事情

  • 「小さなことばたちの辞書」 辞書編纂の物語

    まだ初雪は降っていません。「小さなことばたちの辞書」(ウィリアムズ著2022年10月小学館刊)を読みました。。幼くして母を亡くしたエズメは父が仕事をしている辞典の編纂室スクリプトリウムの大きな机の下で過ごすのが常だった。室長のマレー博士(実在の人物)はここで「オックスフォード英語大辞典」を編纂していた。壁には仕切りのある棚がありたくさんのカードが置かれている。国内のあちこちに住む協力者から送られて来たものも多かった。辞典にはことばの語釈だけでなく用例も記載される。その用例を集めることに協力者が必要なのだ。エズメを「育てている」のは父ばかりではない。マレー家の女中のリジー辞典編纂の協力者ディータ(実在の人物)父の仕事仲間の多くもエズメにやさしく接してくれていた。やがてエズメはスクリプトリウムで仕事をするよう...「小さなことばたちの辞書」辞書編纂の物語

  • 「川のほとりに立つ者は」 寺地はるなの新作

    昨日は霰が降りました。「川のほとりに立つ者は」(寺地はるな著2022年10月双葉社刊)を読みました。直立二足歩行の本を読んだばかりなのでこの本を読んでヒトの脳はなぜこれほど多様なのだろうと考えた。縄文時代も江戸時代もヒトの脳は多様だったのだろうか……カフェの雇われ店長をしている清瀬に登録していない番号から電話がかかって来る。恋人の松木が階段から落ちて意識不明の状態で病院に運ばれたという。一緒にいたのは松木の幼い頃からの友人樹(いつき)樹もまた意識不明だった。松木の部屋に行ってみるとホワイトボードや文字を練習したノートなどがあった。手紙の下書きもあった。天音という人に宛てた手紙だ。松木は誰に文字を教えていたのか?なぜそれを清瀬に隠していたのか……登場人物たちの脳の多様さが意識される。ディスレクシア(文字が書...「川のほとりに立つ者は」寺地はるなの新作

  • 「直立二足歩行の人類史」 人類を生き残らせた出来の悪い足

    「直立二足歩行の人類史人類を生き残らせた出来の悪い足」(デシルヴァ著2022年8月文藝春秋社刊)を読みました。立って歩くようになって手が自由に使えるようになったからヒトはここにいると言うけれどそう単純じゃないんだよと著者は言う。著者は考古学者で特に足の化石(足跡の化石も)を研究している。二足歩行をする生物は他にもいる。鳥恐竜の一部カンガルーだって立っている。ヒトは樹上から地上に降りて二足歩行になったという説があるけれどそうだろうか?木の上で既に立っていたかもしれないのだ。(立っている方がより高い枝の実を採れる?)問題は地上に降り立って時々は立っていたヒトがその時々から「常時」になったのはなぜかということなのだ。その答えはまだない。はっきりしているのは類人猿が手の甲をついて歩くナックルウォークから徐々に立ち...「直立二足歩行の人類史」人類を生き残らせた出来の悪い足

  • ザリガニの鳴くところ

    家にいる時間が長いので少し歯ごたえのあるものを読みたいと思って「ザリガニの鳴くところ」(オーエンズ著2020年3月早川書房刊)を読みました。と書いたのは2020年4月この作品が映画化されました。みるかどうか迷います。心を奪われた作品だったので自分の中にある「像」を壊したくない気持ち。みたい気もするけど……迷います、ほんとに。1969年の世界と1952年の世界が交互に語られ始める。1969年の方はミステリ。町でも人気者の青年・チェイスの死体が町外れの火の見櫓の下で発見される。事故なのか、殺人なのか……1952年の世界の主人公はカイア町の人々からは浮浪者の住む世界のように言われている沼地に住んでいる。縦横に川が流れ海に近く森にも近いたくさんの生き物たちが住むところ。ザリガニの鳴き声も聞こえるほど静かなところだ...ザリガニの鳴くところ

  • 「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」 本屋大賞ノンフィクション本大賞

    「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」(川内有緒著2021年9月集英社インターナショナル刊)本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞!目が見えない白鳥さんは何か視覚障害者らしくないことをしたいと考えていた。大学生時代、ガールフレンドに誘われて美術館に行ったらとても楽しかったのでそれから方々の美術館に電話をして「視覚障害者なのだけれど、サポートの人をつけてもらえないか」と依頼してきた。初めは断られていたけれどだんだんに受け入れいてくれるところも増えて白鳥さんの趣味は美術鑑賞になった。そして今では美術鑑賞家になっている。視覚障害者なら手に職をと言われて資格を取ってマッサージ師をしていたけれど辞めて美術鑑賞家として立っている。「白鳥さんと作品を見ると、ほんとに楽しいよ」と友人のマイティに誘われて著者は白鳥さんと一...「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」本屋大賞ノンフィクション本大賞

  • 「マーダー・ミステリ・ブッククラブ」 手がかりが多すぎるミステリ

    この秋はミステリが豊作らしい。「マーダー・ミステリ・ブッククラブ」(ラーマー著2022年8月創元推理文庫)を読みました。お固いブッククラブにうんざりしたアリシアは同居する妹リネットの勧めで自分でブッククラブを立ち上げることにする。ミステリを読む読書会だ。新聞広告のメンバー募集に応募して来たのは古着店を営むクレア開業医のアンダース博物館の学芸員のペリー図書館員のミッシー専業主婦と名乗るバーバラところが2回目の読書会にバーバラが現れない。家族に問い合わせるとバーバラの行方が知れないという。ブッククラブのメンバーたちは読書そっちのけでにわか探偵をはじめることになる。それにしても手がかりが多すぎる。バーバラの家のキッチンの冷蔵庫に貼ってあったシェルターの電話番号乗り捨てられたバーバラの車車の中にあったアガサ・クリ...「マーダー・ミステリ・ブッククラブ」手がかりが多すぎるミステリ

  • 「喫茶の効用」 自宅喫茶も

    ぱらぱらととめくったら「お会計時に「いつもありがとうございます」などと言われてしまった日には……」と書いてあるではないか。そうそう、そうなんです(常連客扱いが苦手)ということで「喫茶の効用」(飯塚めり著2021年11月晶文社刊)を読んでみました。著者は喫茶店観察家。◯雨の日に気分を明るくしたい◯都会の真ん中で旅気分を味わいたい◯とにかくひとりになりたい◯朝から気分が上がりません◯悩みごとをちっぽけにしたい◯どっぷり読書につかりたいなどの項目で、喫茶店を紹介している。(イラストも著者)読めば東京に旅に出て喫茶店でひと休みした気分が味わえる。(旅本の効用と同じ)◯巣ごもり期間も心を動かしたいの項目ではコロナの中で、喫茶店を控えていた時に考え出したことが書かれている。家の中にカフェスペースを作って喫茶店からテイ...「喫茶の効用」自宅喫茶も

  • 「物語の役割」

    「物語の役割」(小川洋子著2007年2月ちくまプリマー新書)を読みました。講演を一冊にしたものです。語りでさえも静かだなぁ、この人は。取り上げられているのは「博士の愛した数式」と「リンデンバウム通りの双子」作品の発想が少しずつ広がっていく過程を語っている。「博士の愛した数式」ではさまざまの数学の本を読んで「友愛数」について知った著者の脳裏に「数学者が新聞広告の裏か何かに鉛筆で一所懸命それらの数字を書いて「君の誕生日と僕の腕時計に刻まれている文字は友愛の契りを結んだ特別な数なんだよ」と、家政婦さんに教える場面が浮かんできたのです」↓「そうすると、もう自然にその人物の声の感じとか立ち居振る舞いとか二人の関係が見えてくるわけです」のようにある一場面がまず浮かび上がってきてそこからいろいろなものが見えてくるという...「物語の役割」

  • 「窓辺の愛書家」 ミステリ

    ようやく庭の秋仕舞いを終えました。「窓辺の愛書家」(グリフィス著2022年8月創元推理文庫)を読みました。原題はThePostscriptMurdersPSは手紙に追伸と書くあれ窓から道を見下ろして通行人の記録をとる老婦人ペギー・スミスのイニシャルでもあるから「追伸殺人事件」でもあるし「ペギー・スミス殺人事件」でもある。(表紙にある)高齢者向け住宅・シービュー・コートに住む90代のペギーは窓辺の椅子に座ったまま死んでいた。部屋にはたくさんの本(ミステリ)が残されその多くにペギーへの献辞が記されていた。ペギーは何人ものミステリ作家に殺人のアイデアを提供していたのだ……ストーリが進むにつれて被害者は増え容疑者も増えていく。名前のある人物の中に犯人がいるという法則なのだからと思っても、覚えきれないほどに。(何度...「窓辺の愛書家」ミステリ

  • 「人口革命 アフリカ化する人類」 

    書評で見かけた「人口革命アフリカ化する人類」(平野克己著2022年7月朝日新聞出版刊)を読みました。ヒトはアフリカを出て世界に広まったというけどそれがもう一度起こる?「子どもは何人欲しい?」と訊かれたとき日本では、たいていの人は1〜3人と答えるだろう。ところがアフリカではこれが8人、人によっては10人を超えることもある。どうして?アフリカでは、今、耕地を拡大している(開墾)ところだ。機械化があまりされていないアフリカでは子どもは生まれて数年たてば労働力になるから子どもはたくさんいればいるほどいいのだ。女の子は結婚することになれば(そんなに先のことではない)相手の家から婚資が支払われる。どちらも資産の拡大に結びつく。それが望む子供の数の多さに表れているのだ。アフリカというと不毛の地というイメージがあるけどそ...「人口革命アフリカ化する人類」

  • 「此の世の果ての殺人」 

    「此の世の果ての殺人」(荒木あかね著2022年8月講談社刊)を読みました。第68回江戸川乱歩賞を受賞した著者のデビュー作です。あと2ヶ月で小惑星テロスが阿蘇に衝突する地球人々は南アメリカに逃げたりシェルターを求めて右往左往したりロケットでの地球脱出を計画する金持ちもいる。どこに逃げても大量の粉塵が対流圏に停滞し、太陽光を妨げて異常気象が起こる(キョウリュウの絶滅が起こったような)というのに九州の(!)自動車学校で教習を受けるハルと指導教官のイサガワ先生は自動車学校の教習車のトランクの中で滅多刺しにされた女性の死体を発見する……もうすぐほとんどの人が死んでしまう日が来るというのにイサガワ先生はこの殺人事件を捜査しようとする。イサガワ先生は自動車学校の教官になる前は警察官だったというのだ。ハルはイサガワ先生に...「此の世の果ての殺人」

  • 「優しい地獄」 ルーマニアから弘前へ

    「優しい地獄」(イリナ・グリゴレ著2022年8月亜紀書房刊)を読みました。エッセーというのとも少し違う。エッセーと物語の間のような著者はオートエスノグラフィーという研究をしているのだそうです。(個人的経験を調査しそれをより広い文化的、政治的、社会的な意味・理解へと結びつけるという研究の仕方)ルーマニアで生まれて現在は弘前(青森県)の大学で研究をしている若い2児の母である著者のルーマニアでの生い立ちから現在までが語られている。映画監督になりたかったという著者は画像で思考する脳のタイプだというが3才で初めて村の図書館の本を読んでから読書を重ねルーマニア語ばかりでなくフランス語、英語、日本語をするすると身に付ける。母親は出産後すぐには母乳が出なかったので同じ日に出産したジプシーの母親から乳を分けて貰った。「あな...「優しい地獄」ルーマニアから弘前へ

  • 「物語のカギ 読むが10倍楽しくなる38のヒント」

    「物語のカギ「読む」が10倍楽しくなる38のヒント」(渡辺祐真著2022年8月笠間書院刊)を読みました。著者は書評系YouTuberという方だそうです。作業をするには適した道具があればそれに越したことはないということでたくさんの「道具」を読者に見せてくれる一冊です。全体に口調が柔らかくてとても読みやすい。「はっきり言います。作者の意図は正解じゃありません!!!!」という感じに。さらに文学史をさらりと付け加えています。「ついに1968年にロラン・バルトという人物が作品解釈に作者という存在を持ち込まない「作者の死」を宣言します」自分の主張も「読み方には大きく2つの潮流があります。第一は(アレゴリー的解釈)読者の生きる時代においてどのような意味があるかを重視する解釈。もう一方は(文献学的解釈)書かれた時代にどの...「物語のカギ読むが10倍楽しくなる38のヒント」

  • 「仕事でも、仕事じゃなくても 漫画とよしながふみ」

    「仕事でも、仕事じゃなくても漫画とよしながふみ」(よしながふみ語り2022年7月フィルムアート社刊)を読みました。2023年1月からドラマ「大奥」(NHK)が放送されるらしい。ひところ流行ったあのドロドロ系の「大奥」ではなくて女性が将軍という設定の漫画「大奥」を原作としたもの。その原作者のよしながふみに山本文子がインタビューしてまとめたのが本書。共働き家庭のひとりっ子だったよしながは小学生の頃からとにかく漫画を読んでいた。好きな漫画を描き続けるためには手に職をつけなくてはと弁護士になろうと決意大学の法学部に進んだ。よしながの漫画は個性的だ。それは「登場人物に寄り添う形で物語を作るタイプではなく作品に対して引きぎみな視点で作るタイプだからだと思います」と言っているように独特の視点を持っているからだろう。よし...「仕事でも、仕事じゃなくても漫画とよしながふみ」

  • 「若葉荘の暮らし」 ただのシェアハウスものではありません

    10月10日なのに雨(と言ってもいい日だと思う)「若葉荘の暮らし」(畑野智美著2022年9月小学館刊)を読みました。よくあるシェアハウスものかなと思ったら、これがちょっと違う。若葉荘は40才以上の独身女性しか入れないという条件付きのアパートなのだ。主人公のミチルは40才。小さな洋食屋のホール係のアルバイトとして生計を立てている。仕事が性に合っているし昼食と夕食が店のまかないでまかなえるので何とかやって来れた。ところがコロナの世の中になって店が時短営業になり収入が減ってしまったので部屋代の安い若葉荘に引っ越すことになったというのがはじまり。収入(正社員でない)住居将来の展望(結婚など)のどれ一つも確たるもののないミチル。ミチルは言う(けっこうよく語る主人公)「平均寿命を考えるとまだ折り返しにも達していない。...「若葉荘の暮らし」ただのシェアハウスものではありません

  • 萩尾望都がいる

    「萩尾望都がいる」(長山靖生著2022年7月光文社新書1212)著者は同時代の三大漫画家として萩尾望都、山岸涼子、大島弓子をあげている。リアルタイムでは大島弓子のファンであったので萩尾望都作品は振り返ってみるとこうであったのかと知らないことが多々たいへん興味深く読みました。論理的に分析しているというよりは熱烈なファンの書いたものというポジションでしょうか。(資料は多岐にわたっています)著者は言う。「人は孤独でなくては自由になれず孤独と自由を経験したうえでなければ真に自立することはできず本当に他者と向き合うことできない。この過酷で明快な真実を萩尾はこれから先繰り返し描いていくことになります」批判されるかもしれないことを覚悟の上でここまで萩尾熱を書き上げた著者に敬意を表したいと思います。最近大島由美子全集を手...萩尾望都がいる

  • 「優等生は探偵に向かない」 ミステリ

    「優等生は探偵に向かない」(ジャクソン著2022年7月東京創元社刊)を読みました。「自由研究には向かない殺人」の続編のミステリです。主人公のピッパが「自由研究」で解決した殺人は(この作品の)現在は裁判中だ。学校に行っているピッパは裁判を傍聴できないので前作で一緒に探偵をした(恋人の)ラヴィが傍聴に行ってピッパに報告してくれる。最初だけかなと思ったのにこの裁判は作中ずっと続き今回の事件にも関わってくるのが珍しい。前作で危険な目にあったピッパはあれはたまたまでもうそんなことはしないと両親に約束したのにある日、友人のコナーが駆け込んで来る。コナーの兄のジェイミーが行方不明になったというのだ。否応なくピッパは「探偵」役をすることになってしまう。否応なく?前作と違って事件を解決した高校生として有名になってポッドキャ...「優等生は探偵に向かない」ミステリ

  • 「映画を早送りで観る人たち」 

    面白いと聞いたので「映画を早送りで観る人たち」(稲田豊史著2022年4月光文社新書)を読みました。本は飛ばし読みはしないけれど録画しておいたものを早送りでザッと見してしまうことはあるという立ち位置で読んでみた。こう思っていた→◎→こう思うようになったという構成が明快でとても読みやすい。「こう思っていた」はどうして早送り視聴をするのということだ。こう思う人は、まだまだたくさんいるだろう。しかし今は早送り視聴をしても大丈夫なような分かりやすい作品が求められている(からたくさんある)ので早送り視聴をしても大丈夫なのだという。「エヴァンゲリオン」の庵野秀明も「謎に包まれたものを喜ぶ人が少なくなってきている」と言っている。「全部説明したら観ている人の思考がそこで止まるから多少視聴者を置いていくくらいじゃないと」など...「映画を早送りで観る人たち」

  • 「独学の思考法」 

    「独学の思考法地頭を鍛える考える技術」(山野弘樹著2022年3月講談社現代新書)を読みました。独学とは学ぶにあたって、先達者の指導を仰ぐことなく独力で目標をたてて習熟しようとする学習方法とある。イメージとしては部屋にこもって机に向かっている感じ。ところが出てこないぞ読んでも読んでも「独学」が。読んでいる間ずっとそう思っていた。でも、著者に罪はない副題にもある「考える技術」について一貫して書いているのだから。そこに今関心を持たれている「独学」という題をつけてしまったのが残念の源かなと。前半は原理編後半は応用編となっている。後半の「会話の技術」が面白い。①相手に問いを投げかけましょう。でも、文頭に力を入れてはいけません。例えば「どうして宿題をやっていないの?」の文頭に力を入れると詰問になってしまうけど力を入れ...「独学の思考法」

  • 「タネは旅する」 人類も広まったけれど植物も広まった

    庭にはもうキキョウだけ。「タネは旅する種子散布の巧みな植物」(中西弘樹著2022年6月八坂書房刊)を読みました。植物は動けないなんてとんでもない。植物のタネは海さえ渡る運ばせて。運んでくれるものは風水動物バネの力有名なのは風に乗って飛ぶタンポポのタネ海を漂うヤシの実という誰でも知っているところから上向きのカップ型の果実の中にタネをつくり雨滴がカップの中に入った時にその跳ね返りでタネを撒き散らすチャルメソウ(チャルメラから付いた名前)果実を動物に食べてもらうことで動物のフンに混じって地面に落ちるという戦略を持つ植物の中でも世界一大きな果実を持つバラミツ(バラミツは波羅蜜)果実は長さ90㎝、重さ50kgにもなる。人間の食用としても重宝されている。動物には食べてもらいたいけれどタネを齧って粉砕されては困るのでタ...「タネは旅する」人類も広まったけれど植物も広まった

  • 「水まきじいさんと図書館の王女さま」 児童ものミステリ

    「水まきじいさんと図書館の王女さま」(丸山正樹著2022年7月偕成社刊)を読みました。児童書です。手話通訳者を主人公にしたミステリ(シリーズ)を書いている丸山正樹が(「デフ・ヴォイス」「龍の耳を君に」「慟哭は聞こえない」「わたしのいないテーブルで」)シリーズ中に登場する子どもたちを主人公に初めて書いた児童書です。児童書には少ない現代ものミステリになっています。場面緘黙の少年・英知が美和のお母さんの結婚した相手アラチャンから手話を習うことになったので美和も一緒に習って学校帰りの二人の会話はこの頃では手話が多くなっている。アラチャンは耳の聞こえない両親のもとで育った聞こえるひと(コーダ)で手話通訳士をしている。そんな4年生の二人が出会った謎が描かれる。ぽこぽこと現れる謎は4つも!日常は謎に満ちているのだ。草一...「水まきじいさんと図書館の王女さま」児童ものミステリ

  • 「失われた世界への時間旅行」 石器時代にタイムトラベル

    「13歳からの考古学」シリーズの第1巻「失われた世界への時間旅行」(堤隆著2019年7月新泉社刊)を読みました。中学一年生のハヤトがスマホの画面に現れた「石器時代への招待」についついログインしてしまい石器時代にタイムトラベルをする話。といっても「戻る」ボタンがあるのでハヤトは母親と2人暮らしの現代と石器時代を自由に行き来出来る。行った先でハヤトはさまざまの体験をする。毛皮を貼った小舟をヘトヘトになるまで漕いで島に渡って黒曜石を採集したり土器を作ったり石で毛皮の脂をこそげ取ってなめすところを見たり(どちらも女の仕事とされている)鮭を獲って干し魚を作ったり食べ物がなくて飢えたりマイギリ法で火をおこしたり……現代に戻って来て考古学者たちと知り合いになるとハヤトは知識の深さに驚かれるがなんと言ってもそこは体験した...「失われた世界への時間旅行」石器時代にタイムトラベル

  • 「なんで洞窟に壁画を描いたの?」 物語仕立て

    「13歳からの考古学」シリーズの第2巻「なんで洞窟に壁画を描いたの?」(五十嵐ジャンヌ著2021年1月新泉社刊)を読みました。中学校1年生の理乃は元世界史教師の祖父と上野で開かれた「ラスコー展」を見に行って強く興味を持った。話はトントン拍子に進み祖父のキシローじいちゃんと理乃はキシローじいちゃんの教え子で研究者のタバタさんの案内でラスコー洞窟を見にフランスに行くことになる。とここまでは夢のような話なのだけれどド・ゴール空港に到着してからはなかなかリアル。(ラスコーの壁画のことはよく考えてみると何も知らない)理乃は現地に行って本物の洞窟はもう立ち入り禁止なので近くに洞窟と壁画がそっくり再現されているとかそれをラスコー4と言うとかラスコー4の外には現代風の建物があってそこから入るとかラスコーには複数の洞窟があ...「なんで洞窟に壁画を描いたの?」物語仕立て

  • 「なんで信長はお城を建てたの?」 物語仕立て

    13歳からの考古学シリーズ「なんで信長はお城を建てたの?」(畑中英ニ著2022年5月新泉社刊)を読みました。児童向け。物語仕立てで「お城」について語っている一冊です。京都に住む中学1年のホタカがひとりで電車に乗って安土城を訪れるところから物語ははじまる。歴史好きのお父さんに連れられてあちこちの城や旧跡に行ったことはあるけれど一人で行くのははじめてだ。はじめての一人旅の目的地は信長の安土城。山の上にある安土城にひいひい言いながら登って自分なりにあちこち見てはみたものの家に帰ってお父さんと話してみると見落とした所がたくさんあったと知ってホタカはがっかりする。なぜお父さんは事前に教えてくれなかったのか?(そこがお父さんの作戦だった)次に行ったのは姫路城。駅にはガイドを自称する人が待っていてホタカを案内してくれた...「なんで信長はお城を建てたの?」物語仕立て

  • 「線と管をつながない好文×全作の小屋づくり」 

    「線と管をつながない好文×全作の小屋づくり」(中村好文、吉田全作著2022年7月PHP研究所刊)を読みました。建築家の中村好文さんが「線と管をつながない家」を作ったことを書いた本を読んで牛師(うし牛飼いのこと)の吉田全作さんは「線と管をつながない」小屋を好文さんに依頼しようと考えた。線は電気管は水道つまり、電気も水道も引かない家ということだ。沢水を飲んでランプの灯りと囲炉裏の火で煮炊きして暮らすというような昔風の暮らしではなく冷蔵庫もある現代の暮らしをするというところが興味深い。まず電気は風力発電と太陽光発電を比べた結果設備費の安さから太陽光発電に決定。屋根の上にソーラーパネルを敷き詰めそれを鉛バッテリーに蓄電するという仕組み。水は雨水を樋から集め、ドイツ製のステンレスフィルターを通して濾過し地下の水タン...「線と管をつながない好文×全作の小屋づくり」

  • 「サウンド・ポスト」 子どもを「窓」として

    残暑。「サウンド・ポスト」(岩城けい著2022年7月筑摩書房刊)を読みました。サウンド・ポストとはバイオリンなどの楽器の内部にある支柱のこと。オーストラリア。日本料理店の調理人・崇はフランス人の妻エリースを亡くし3才の娘メグ(メグミ)と残される。メグは友だちがバイオリンの稽古をしているのを見て(ノコギリを引くような音だったのに)バイオリンに魅せられる。崇の働く日本料理店を経営する瑛二は自分の姉の経験から「音楽は金がかかるからやめろ」と止めるが崇はメグの望みを叶えることを決める。バイオリンとともに歩むメグの成長譚と読むことが出来るがメグという窓から外の世界とつながる崇の物語とも読める。(だからサウンド・ポスト?)メグのレッスンに付き添って先生の言葉をメモする。(ことによって崇の音楽に対する知識も耳も豊かにな...「サウンド・ポスト」子どもを「窓」として

  • 「ホール ブレイン 脳の動かし方」 脳を半分しか使えなかった学者の書いた本

    「WholeBrain(脳の全部)脳の動かし方」(ジル・ボルト・テイラー著2022年6月NHK出版刊)を読みました。前著「奇跡の脳脳科学者の脳が壊れたとき」がとてもよかったのでこちらも読んでみました。何といっても著者は左脳脳出血によって右脳しか使えなかったという貴重な体験を持つ脳科学者なのだ。(8年後に回復)統合失調症の兄を持つ著者は幼い頃から、兄と自分の感じ方に違いがあることを感じていた。それで脳を研究するようになった。左脳脳出血になって、左脳が停止した瞬間ものすごい幸福感が著者に押し寄せた。(でも、助けを求める電話を掛けるのは大変だった)この幸福感は何?というところから研究が始まった。右脳型、左脳型性格とか言われるけれど右脳だけ、左脳だけが働くということはないのだ。著者は脳を4つに分けた。右脳1、右脳...「ホールブレイン脳の動かし方」脳を半分しか使えなかった学者の書いた本

  • 「揺籃(ようらん)の都」  時代ものミステリ

    ツルボが咲いています。「蝶として死す」の羽生飛鳥の2作目「揺籃の都」(羽生飛鳥著2022年6月東京創元社刊)を読みました。時代ものミステリとしてはめずらしい平家の時代が舞台です。前作と同じく探偵役は平頼盛(平清盛の父忠盛と正室・池禅尼の子清盛とは15才離れている)清盛が旅から帰った日福原(遷都後)の清盛の館に偶然頼盛、清盛の子息・宗盛、知盛、重衡が集まった。その夜は雪。いくつもの事件が起こる。頼盛の追っていた青侍の遺体が切り刻まれた状態で塀の外に散らばっていた。厩では清盛のペットの猿が殴り殺されていた。清盛の枕元にあった刀が紛失した。厳島神社の巫女の小内侍という少女が「神」を見たと言う。その小内侍は清盛の書で封印された祈祷所の中から消え逆さ釣りにされた姿で発見される。屋敷内の多くの人が巨大な鳥が飛ぶのを見...「揺籃(ようらん)の都」時代ものミステリ

  • 「夏休みの空欄探し」 謎解き+ミステリ

    「夏休みの空欄探し」(似鳥鶏著2022年6月ポプラ社刊)を読みました。シンデレラ・ストーリーです。学級カーストの最下層にいる主人公・成田頼伸(ライ)が好きなのは謎解き。クイズ研究会の部長をしている。といっても部員は2人だけ。学級の人気者・成田清春(キヨ)と同じ姓なので「じゃない方」と言われている。夏休みのある日ライはふと入ったカフェの隣の席で2人の少女が謎解きをしているのを聞きつける。謎が解けたライはついレシートに答えを書いて置いてきてしまう。すると何と2人の少女が追いかけて来て謎解きを手伝って欲しいと言うのだ。大学2年の姉の雨音と高校1年の妹の七輝は古本屋の本に挟まれていた「ある資産家が出題した一連の謎」を解くのを手伝って欲しいと言う。偶然現れたキヨも謎解きのメンバーに加わることになる。ライの夏休みは一...「夏休みの空欄探し」謎解き+ミステリ

  • 「あきない世傳 金と銀 13」 完結編です

    「あきない世傳金と銀13大海篇」(髙田郁著2022年8月角川春樹事務所刊)を読みました。両親と兄を失い妹に離反され3人の夫を失った主人公の幸第1巻では少女だった幸も40を過ぎている。今回もさまざまな苦難が押し寄せる。最初は(ドラマや映画にもなっ)「みをつくし料理帖」シリーズには及ばないなぁと思っていたけれどこのシリーズのスケールの大きさにだんだん惹かれて行った。アイデァを駆使して呉服屋の商品を生み出すところが読みどころと思っていたけれどそればかりではない。そのアイディアを自分の店ばかりではなく同業者組合全体で取り扱う。それが火災による被害を経て町内の他の業者とも協働してキャンペーンを張るというところまで広がるところがすごい。大阪に奉公に出た身寄りのない少女がここまでのスケールを持つとは……(著者は、最初か...「あきない世傳金と銀13」完結編です

  • 「本屋という仕事」 多角的にとらえている

    「本屋という仕事」(三砂慶明著2020年6月世界思想社刊)を読みました。本屋が減っているそうです。個人的にも最近はもっぱら借読(カリドク)買うときは、一度読んだものを応援消費として買っているので(出版社への)強く「本屋」というものを意識したことはなかった。本書は、本屋の存続を◯火を熾す◯薪をくべる◯火を焚き続けるためにという3つの章に分けて書いている。(著者は各地の書店経営者、書店員」そうなのだ。はじめることよりも続けることが難しいのだ。本を差別していないか…ハード系のパンを好む人がスーパーの菓子パンを見下すようにと思うことが時々ある。沖縄の市場に古本屋を開いている宇田智子さんは「そもそも哲学書とダイエット本のどちらが立派だとかいうことはない。読むことで新しい知見が得られたり自分の動きが変わったりして心身...「本屋という仕事」多角的にとらえている

  • 「凍る草原に鐘は鳴る」 この世の中が変わったら…

    「凍る草原に鐘は鳴る」(天城光琴著2022年7月文藝春秋社刊)を読みました。災厄の起こった世界……コロナが蔓延している世界を下敷きに書いているような作品です。主人公マーラは生き絵司という仕事をしている。羊を飼って季節ごとに移り住む暮らしをしているアゴール族は草原に額を立ててその中で演じられる演劇・生き絵を娯楽として芸術として楽しんで来た。その生き絵の演出をするのが生き絵師あまたの生き絵師の中で最上の位に位置し族長たちの集う会議の時に披露する役目を担うのが生き絵司なのだ。マーラたちはある日突然、全員が「動くものが見えなくなる」病に罹ってしまう。静止しているものは見えるけれど話している口、瞬きしている目、動かした手が消えてしまう。飼っている羊も見えない。マーラの演出した生き絵を見た族長たちは表情も動きも見えな...「凍る草原に鐘は鳴る」この世の中が変わったら…

  • 「お金」で読む日本史 

    「「お金」で読む日本史」(本郷和人監修BSフジ「この歴史おいくら?」制作班編集祥伝社新書2022年7月刊)を読みました。「私が青年であった頃はお金のことを云々するのは恥ずかしいという風潮が明らかにあった。しかし、最近の学生を見ているとお金を稼ぐ=素晴らしいという図式が、すっかり定着している」(本郷)確かに、先立つものがなくては大きな志も実現できないだろう。あの歴史を動かした事件には、いったいいくらのお金が必要だったのか?本書では源頼朝武田信玄忠臣蔵徳川吉宗河井継之助勝海舟が取り上げられている。お金の話なのに(偏見?)感動的なのは河井継之助の章と勝海舟の章旗本だった勝海舟は23才で結婚すると蘭学者永井青崖に学ぶため近くに引っ越すが父、病気の母、妹、妻、娘、下人の7人が俸禄41石(年収400万ほど)で暮らして...「お金」で読む日本史

  • 「言語学バーリ・トゥード」 なるほどねぇ

    面白いと聞いたので「言語学バーリ・トゥード」(川添愛著2021年7月東京大学出版会刊)を読みました。バーリ・トゥード(ポルトガル語で「何でもあり」を意味し、20世紀においてブラジルで人気を博すようになった、最小限のルールのみに従って素手で戦う格闘技の名称)日ごろ何となく思っていたことが(表紙に登場する人たちを例に)スパッと語り解かれるので爽快。言語学といってもお堅い話ではありません。中でもこれはと思ったのは第8章「たったひとつの冴えたAnswer」出てくる人はGLAYのTERUと氷室京介。(会話における反射神経が低いので「あ、今、違った意味にとられたなぁ」と思った時には、もう会話はかなり先へ流れて行ってしまってあああ、と思いながら呆然と流れを見ているというのがいつも。この章にあるように、リアクションに困っ...「言語学バーリ・トゥード」なるほどねぇ

  • 「臼月トウコは援護りたい」 援護になっていないけど

    裏庭にネジバナが一本咲いています。葉の段階でとってしまわないことが秘訣なのですがこれが難しい。「臼月(うすづき)トウコは援護(まも)りたい」(そえだ信著2022年6月早川書房刊)を読みました。ミステリです。中年の刑事・笠置が遭遇する事件でなぜか出会うおかっぱ頭で眼鏡をかけた若い女以前にも会ったような気がする……その臼月トウコの決まり文句「〇〇さんは犯人じゃない、です。証明できる、です」ところが、なぜかその証言が逆に決定的な証拠になってしまう。本当に援護りたいの?ある時はゲーム会社のアルバイトある時は漫画家のアシスタントある時はファミレスの店員……姿は変わっても言う言葉は同じ。「〇〇さんは犯人じゃない、です。証明できる、です」犯人たちは思う。(この女さえいなければ……)水戸黄門や刑事コロンボのパターン。でも...「臼月トウコは援護りたい」援護になっていないけど

  • 「ボンベイのシャーロック」  ロマンチック・ミステリ

    「ボンベイのシャーロック」(マーチ著2022年5月早川書房刊)を読みました。ポンペイではなくインドのボンベイが舞台。ホームズ要素多めの「辮髪のシャーロック・ホームズ」と違ってこちらはホームズ要素は少なめ。ロマンス要素多めです。負傷して入院中に友人の差し入れてくれたホームズものを読んだジム・アグニホトリは新聞の「2人を失っても、私は生きつづけるのですから」という一文に心惹かれて図書館の時計塔から2人の女性が転落死した事件を調べてみたいと思うようになる。名も知らぬイギリス人の父とインド人の母の間に生まれ孤児院で育ったジム。軍隊を退役し依るもののない今青年の「生き続けるのですから」という言葉に共感したのだ。ジムは青年を訪ねて捜査させてくれるよう申し出る。青年は裕福なパールシー(ボンベイに多く住むゾロアスター教徒...「ボンベイのシャーロック」ロマンチック・ミステリ

  • 「水曜日は働かない」 東京オリンピックといだてん

    「水曜日は働かない」(宇野常寛著2022年5月集英社刊)を読みました。(今朝の新聞の記事に週休3日があった)本書、水曜日は働かない会社を作った話かなと思ったら違いました。著者は(テレビにも出ている人(評論家)らしいのですが存じ上げません)仕事が終わったら夜に遊ぶという生活を変えて朝起きたら、走って午前中執筆をして午後には事務的な仕事をして人と会うのは夕方というやり方に変えた。そして、週末と水曜日には休んでいる。それはさておき東京オリンピックとドラマ「いだてん」について書いている章が面白かった。(「寅さん」「トットちゃん」についても書いている)著者は東京オリンピック反対派。何と、ただ反対するのではなく建設的な反対をしようと考えて対案を作ってしまった。それは、テレビに縛られているオリンピックをやめてインターネ...「水曜日は働かない」東京オリンピックといだてん

  • 「カレーの時間」 寺地はるなの新作

    「カレーの時間」(寺地はるな著2022年6月実業之日本社刊)を読みました。う〜んこのピースで組み立てる?というものを集めて一作を組み立ててみせる著者決して性格がいいとはいえない高齢の祖父(3人の娘ともうまくいっていない)女性蔑視ゴミ屋敷そしてレトルトカレーう〜んレトルトカレー……主人公の桐矢はよんどころなく祖父と暮らすことになる。祖父が自分の3人の娘とも3人の孫娘とも暮らしたくないと言ったからだ。唯一の男の孫である三女の子桐矢だったらと祖父は言う。祖母と離婚している祖父はひとり暮らしなのだ。かくしてはっきり言えない男桐矢と祖父の物語が交互に語られる。親を亡くし親戚の家をたらい回しにされいつも腹を空かせていた子どもだった祖父カレー会社に勤めてレトルトカレーの売り上げを伸ばすことに心血を注いでいた祖父こころの...「カレーの時間」寺地はるなの新作

  • 「ニューロダイバーシティの教科書」 脳の多様性

    「ニューロダイバーシティの教科書」(村中直人著2020年12月金子書房刊)を読みました。ニューロダイバーシティ=脳の多様性のことについて書いています。コロナで「教室で集団で受ける」授業でなくなってずいぶん楽になった人たちがいたという。教室スタイルが脳の個性に合っていなかったらしい。たぶん逆にそのスタイルが合わなかった人もいただろう。脳、つまり学び方には個性があるのだから。小学校6年生の時、担任の先生がこのグループは図書館に行って好きなテーマを調べていいよと言った時の嬉しさといったら…(今ならそんな授業は珍しくもないけれど)著者は脳の個性が一般的ではないからといってそれを障害と言うのはいかがなのもかと言っている。障害ではなくて文化の違いと似たようなものなのだ、と。ちょうど自分の家に日本と全く文化の違う人がホ...「ニューロダイバーシティの教科書」脳の多様性

  • 「本が語ること 語らせること」 青木夫妻の読書案内

    「本が語ること語らせること」(青木海青子著2022年5月夕書房刊)を読みました。「奈良県東吉野村に借りた築70年の平家で「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」を開いて6年が経ちました」とはじまる本書は司書の青木海青子さんのエッセーと寄せられた「相談」に対する答えとオススメの本で構成されています。海青子さんの文章はとても静かです。村の林の奥にある図書館の空気感がある。「窓を持つ」という章には「本棚は私にとってたくさんのすばらしい窓のついた壁でした。その向こう側にはめくるめく世界が広がっていていつかはその場所にたどり着けるかもしれないと思うと何度でも心に明かりが灯るのを感じました。もしあなたが今いる状況をしんどいと感じているならぜひ心に窓を持ってみてほししいです」「待つのが好き」には「雨音が屋根を弾き出したしもう...「本が語ること語らせること」青木夫妻の読書案内

  • 「辮髪(べんぱつ)のシャーロック・ホームズ」 翻訳ミステリ

    キキョウの花が咲いています。「辮髪のシャーロック・ホームズ神探福邇(フー・アル)の事件簿」(莫理斯・トレヴァー・モリス著2022年4月文藝春秋刊)を読みました。中国ではシャーロック・ホームズは福爾摩斯と書くそうです。その爾を邇にしたのが主人公福邇(フー・アル)ワトスンは華笙(ホア・ション)舞台は香港2人は生年も本物と同じに設定されています。連作短編集です。ホームズもので楽しいのは謎解きはもちろんだけれどホームズが来客のあれやこれやを「当てる」ところ。期待に違わずこれがたっぷり。「孟さん、あなたはスコットランド人でオックスフォード大学で理雅閣教授に中国語を学びましたね。先に学んだのは北京官話で広東語を学んだのはその後でしょう?」といった調子。フー・アルは言語から法律、政治、科学にも造詣が深く武術に巧みで戦闘...「辮髪(べんぱつ)のシャーロック・ホームズ」翻訳ミステリ

  • 「目で見ることばで話をさせて」 ろうの少女が主人公の物語

    「目で見ることばで話をさせて」(レゾット著2022年4月岩波書店刊)を読みました。ろうの著者が書いたろうの少女が主人公の物語です。11才のメアリーの住むヴィンヤード島(アメリカ)にはろう者が多い。(この島は実際にろう者が多い島として知られている)メアリーのお母さんと兄さんは聴こえる人だけれどお父さんとメアリーは聴こえない人だ。いつも面白い話を(手話で)語ってくれる老船乗りのエズラも聴こえない人だ。村の人たちは、聴こえる人も聴こえない人もみな手話を使って話をする。メアリーにとってはみんなが手話を使うのは当たり前のことなのだ。父さんは聴こえなくても牧羊場を立派に経営している。主婦になるために家の仕事の練習をするよりもメアリーは外に行くのが好きだ。そして、物語を書くのが好きだ。そんなヴィンヤード島に「なぜ、ろう...「目で見ることばで話をさせて」ろうの少女が主人公の物語

  • 「13歳からの地政学」 児童書とあなどれない

    「13歳からの地政学カイゾクとの地球儀航海」(田中孝幸著2022年3月東洋経済新報社刊)を読みました。地政学…国際政治を考察するにあたって、地理的条件を重視する学問だそうです。高校生1年生の大樹と妹で中学1年生の杏はある日、骨董屋のウインドウで古い地球儀を見て心動かされる。店主のカイゾクは7日間の講義を受けてその後の試験に合格した方にこの地球儀を与えるという。2人は、店に通ってカイゾクの講義を受けることになる。その講義録という形で地政学が語られる。杏が13歳なので「13歳からの」となっているけれどいやいや知らなかったことばかりで自分の無知さ加減が恥ずかしくなるばかり。中国が東シナ海を欲しがる理由は?中国は核ミサイルは持っている。それを積んで海底から発射できる原子力潜水艦も持っている。でも、それを隠しておく...「13歳からの地政学」児童書とあなどれない

  • 「気候変動と日本人20万年史」 歴史の分量多め

    「気候変動と日本人20万年史」(川幡穂高著2022年4月岩波書店刊)を読みました。陸奥湾の真ん中で調査と聞けば読んでみずにはいられません。加えて三内丸山の分量も多め。◯地球上のヒトの数はおよそ78億なのに遺伝子が均一過ぎるのは一時期絶滅寸前にまで追い詰められたからだ。◯温暖だった縄文中期に三内丸山は大繁栄した。三内丸山が巨大化したのはクリの半栽培を考え出した天才縄文人がいたからだと考えられる。ところが4200年前に寒冷化したため(4200年前イベント)人々は三内丸山を放棄して分散して暮らすようになった。(人口は減少していない)◯エジプト古王国は乾燥によりナイル川の水位が異常に低下したため作物が採れず飢餓に見舞われ4200年前に崩壊した。◯ペルシャ湾岸のウンム・アンナール文化は乾燥化により崩壊した。◯アッカ...「気候変動と日本人20万年史」歴史の分量多め

  • 「リリアンと燃える双子の終わらない夏」

    「リリアンと燃える双子の終わらない夏」(ウィルソン著2022年6月集英社刊)を読みました。心が燃える…などという比喩があるけれど10才になる双子のベッシーとローランドは本当に燃えるのだ。服が燃え側にある椅子が燃え…でも、双子の体には火傷ひとつできない。タイトルにあるリリアンは28才。スーパーの店員をしている。年に何回か手紙のやり取りをしている学校時代からの友人マディソンから頼まれてひと夏双子の面倒を見ることになった物語。マディソンは今では上院議員の妻になっていて双子は彼の先妻との間の子だ。双子は母親が亡くなって一時的に高齢の祖父母に引き取られている。上院議員は次期国務長官と目されていてそのため、特にこの夏はスキャンダルはご法度なのだ燃える子どもがいるなんていう。この世界の「邪魔者」であることを自覚している...「リリアンと燃える双子の終わらない夏」

  • 「ハレム」 あやしいものではありません

    「ハレム女官と宦官たちの世界」(小笠原弘幸著2022年3月新潮選書)を読みました。真面目な研究書です。ハレムというところは、緻密な記録が残っているそれがこの頃になってデータ化され誰でも見ることができるようになって、研究が一気に進んだということでこの本が出版されたという。ハレムはご存知のように閉鎖された空間なのだけれどハレムで働いていたのはオスマン帝国の出身者ではなかった。多くは外国の人だった。船で移動中に海賊に拉致されて奴隷になった人戦争で負けて捕虜になって奴隷になった人ヨーロッパから連れて来られた人アフリカから連れて来られた人モンゴルの国の人……学国の人に囲まれた暮らし(日本の大奥とはだいぶ違う)中には王の妃になって、王母になった奴隷もいたという。ハレムには唖者もいた。王よりも大きな声を出すことは禁じら...「ハレム」あやしいものではありません

  • 「明日のフリル」

    「明日のフリル」(松澤くれは著2022年2月光文社刊)を読みました。洋服が好きなので洋服モノと聞いて手に取りました。洋服モノといってもこれは作る人が主人公ではなくて売る人の話というのがめずらしい。大好きなブランド・フラットフラワーの売り手をしているあやめは仕事に行き詰まっていたある日上野公園の中にあるホワイトキューブのようなショップ「あなたのクローゼット」でブランドYou&MIEのデザイナー梓振流(あずさふりる)と出会う。とここまででもカタカナ語の多さにへきえきするけれどこの作品のカタカナ語の多いことと言ったら…著者が洋服好きというだけあってあやめが振流のデザインした服に初めて出会う場面「背骨に絡まるようにガーベラが伸びて胸骨の隙間からミモザが顔を覗かせて尾てい骨を囲むようにキキョウが茂って頭蓋骨の中でア...「明日のフリル」

  • 「水中考古学」

    「水中考古学」(佐々木ランディ著2022年2月エクスナレッジ刊)を読みました。副題が「地球最後のフロンティア」「海に眠る遺跡が塗り替える世界と日本の歴史」帯には「溺れるほど面白い」と、まぁ盛りだくさん水中考古学というのは何を対象にしているの?と思ったらそれが多種多様沈没船だったり水に沈んだ町だったり遺物だったり遺物にしても土器から銅線、焼きものなどなどさまざまこれを一冊にまとめるのは、さぞ大変だったことだろうと思う。興味深く読んだのは日本の水中遺跡の章完全な形の縄文時代の土器が発掘された葛籠尾崎(つづらおざき)遺跡(琵琶湖)江刺港の海中に眠る開陽丸幕府の船だったが榎本武揚が奪って北海道に向かった。しかし、嵐にあって難破→沈没戊辰戦争の趨勢を決するきかっけの一つだった。3万点の遺物が引き上げられたが船体は銅...「水中考古学」

  • 「気候適応の日本史」 

    「気候適応の日本史」(中塚武著2022年3月吉川弘文館刊)を読みました。歴史上の出来事と気候は関係があるらしいとはうっすら分かっていたけれどそれをさらに深掘りしているのが本書。温暖だった縄文時代食糧が得やすくなって人口が増え三内丸山のような大集落が出来た。(大集落の人口を養うほどの食糧が得られた)生活の余裕は大きな建造物を作ることにも向けられた。ところが気候が寒冷化して食糧は思うように手に入らなくなり集落は小さくなり分散していった。弥生時代稲作が朝鮮半島から伝わって来たと習ったけれどどうして稲作を朝鮮半島の人は日本に伝えたのか?(自分達だけでこっそり作っていればよかったのに)それは気候が寒冷化したので朝鮮半島での稲作が難しくなり温暖な土地を求めて「人びと」が九州にやって来たからなのだ。古墳時代どうしてあん...「気候適応の日本史」

  • 「香君」 上橋菜穂子の新作

    「香君」(上下巻)(上橋菜穂子著2022年3月文藝春秋社刊)を読みました。植物のことを書きたいと思っていたという著者が植物の声を聴くことのできる少女を主人公に描いたファンタジーです。ウマール帝国はオアレ稲によって発展してきた。水田ばかりではなく陸稲としても栽培でき冷害にも干害にも強く連作障害もなく、雑草取りの必要もなく、虫もつかない。薄焼き、飯、餅としても食べられ、食べた人は体が丈夫になる…帝国の人口はあっという間に増えた。ただ、オアレ稲の周りには、他の作物は作れない。そして種籾も肥料も、帝国から配付されるものしか使えないのだ。一つの作物だけに依存する生活を密かに危惧する人々がいた。その一人視察官マシュウは帝国の西で殺されようとしていた少女アイシャの命を助ける。特異な嗅覚を持つアイシャをマシュウは都の香君...「香君」上橋菜穂子の新作

  • 「母の待つ里」 一泊50万円のふるさと

    「母の待つ里」(浅田次郎著2022年1月新潮社刊)を読みました。「母」「里」う〜んそしてクラッシクな表紙絵、う〜んまあ、でも、それで終わるわけがないし…この作家ならと思って読み始めました。60才になったばかりの3人の登場人物大手食品会社の社長の松永徹(ここまで独身を通した)薬品会社を退職したばかりの室田精一(退職を機に妻に離婚を切り出されてひとり暮らし)循環器の医者の古賀夏生(ナツオ)(母を亡くしてひとり暮らし)共通点は年会費35万円のカードの会員だということだ。そして、それぞれにアメリカのユナイテッド・ホームタウン・サービス(帰郷)の日本版のゲストになっている。ゲストとは…東北新幹線と在来線を乗り継いでさらにバスで40分あまり。バスを降りると軽トラに乗った「同級生」が声をかけて来る。この辺りも様子が変わったか...「母の待つ里」一泊50万円のふるさと

  • 「ラブカは静かに弓を持つ」 

    「ラブカは静かに弓を持つ」(安壇美緒著2022年5月集英社刊)を読みました。「天龍院亜希子の日記」「金木犀とメテオラ」と独特なタイトルの付け方についつい手に取ってしまう安壇美緒今回もついつい。(ラブカというのは水深1,000m近くの深海に生息している深海魚。体長は2m3億5,000万年前から生息していたので生きた化石とも言われる)全日本音楽著作権連盟に勤める橘樹(いつき)は上司の命で大手音楽会社ミカサの音楽教室に生徒として潜入調査をすることになる。ミカサと著作権連盟の間では裁判が行われようとしていた。音楽教室で使われている楽曲から著作権料を徴収できるかどうかという問題だ。樹は、子供の頃チェロを習っていたことがあるのだ。毎回チェロのレッスンの様子をペン型マイクに録音しあえてポピュラー曲を選んでレッスンしてもらう樹...「ラブカは静かに弓を持つ」

  • 「ライトニング・メアリ」 イクチオサウルスを発掘した少女

    庭はツリガネスイセンが終わってシレネの季節「ライトニング・メアリ竜を発掘した少女」(シモンズ著2022年2月岩波書店刊)児童書です。映画にもなったメアリ・アニングの少女時代が描かれます。1才半の時、雷に打たれていっしょにいた人たちはみな死んでしまったのに1人助かったメアリは父親からライトニング(稲妻)メアリと呼ばれる。その名のとおり、メアリは稲妻だ。大人にもズバズバとものを言うし頑固で、一度こうと思ったら決して引かない。メアリの家は貧しい。(某朝ドラでの貧乏の描き方がリアルじゃないと言われているけれどここでは胸が痛くなるほどの貧しい生活が描かれる)父さんは家具職人をしながら海辺でめずらしい石(化石)を拾って避暑客に売っているが生活は楽ではない。父さんは、化石探しの名人なのだけれど。(化石にはラベルが貼ってあるわ...「ライトニング・メアリ」イクチオサウルスを発掘した少女

  • 「喜べ、幸いなる魂よ」 

    「喜べ、幸いなる魂よ」(佐藤亜紀著2022年3月角川書店刊)を読みました。18世紀のヨーロッパを舞台にした作品です。亜麻糸商人の家に生まれたふたごの姉弟ヤネケとテオは父の商売仲間の遺児ヤンと兄弟のように育てられる。優秀だったテオは長じて進学し(実はヤネケはもっと優秀)家にはヤネケとヤンが残る。ヤネケは独学で身に付けた数学の成果をテオの指導教授に送り返事を貰っては学びを深めて行く。と同時にヤネケはテオとの間に子どもをもうける。秘密裏に子どもを産むために家から出されたヤネケは出産後、家には戻らず(母親も、ヤンも結婚を望んだが)子どもを、秘密の出産でできた子どもを育てる家に預けてペギン会という修道会に入って暮らすようになる。信仰があったわけではない。好きな学問を続けるための手だてだった。ペギン会では女たちは教会の周り...「喜べ、幸いなる魂よ」

  • 「図書室のはこぶね」 

    「図書室のはこぶね」(名取佐和子著2022年3月実業之日本社刊)を読みました。タイトルに「図書室」とか「図書館」とあるとついつい手に取ってしまいます。学園ものミステリです。体育祭が近いある日友達から図書委員のピンチヒッターを頼まれた百瀬花音は入学して初めて図書室に足を踏み入れた。バレー部の部活動に忙しかった百瀬は3年の今まで、図書室に縁がなかったのだ。でも、足を怪我してしまったので体育祭に出場することはおろか準備に関わることさえもできない。そんな百瀬にとって、図書委員のピンチヒッターは渡に船だった。ビーバーのような前歯をした図書委員の朔太郎を手伝っているうちに百瀬は不思議な本を発見してしまう。『方舟はいらない大きな腕白ども土ダンをぶっつぶせ」と書かれた紙が挟まった「飛ぶ教室」だ。土ダンというのは、学級対抗で行わ...「図書室のはこぶね」

  • 「自由研究には向かない殺人」 容疑者が増えていく

    「自由研究には向かない殺人」(ジャクソン著2021年8月東京創元社刊)を読みました。ミステリです。高校生のピッパの自由研究のテーマに対して指導教師は「このテーマは題材としてはデリケート過ぎる。私たちの町で発生した犯罪だから」とコメントする。犯罪とは5年前に高校生のアンディが行方不明になり彼女のボーイフレンドのサリルが犯行を自供した(メールで)上で自殺した事件だ。サリルの一家(父、母、弟のラヴィ)はペンキでいたずら書きをされたり石を投げられたりとひどい扱いを受けている。ピッパは、サリルが人を殺すとはどうしても思えなかった。幼い自分に優しくしてくれたサリルの記憶があるからだ。(ナイジェリア人の義父を持つピッパは、なかなか生きにくい)ピッパは捜査を始める。マスコミ、アンディの友人たち、当時の同級生……そして、それをレ...「自由研究には向かない殺人」容疑者が増えていく

  • 「おんなの女房」 予想を裏切る展開

    「おんなの女房」(蝉谷めぐ実著2022年1月角川書店刊)を読みました。「武家の娘が歌舞伎の女形に嫁に行ったら女形は舞台を降りてもおんなとして暮らしている人だった」という紹介文を読んでこれは武家娘が歌舞伎役者の女房として成長していく修行話かな?と予想して読みはじめたらこれが大違い。主人公の志乃は米沢藩の武士の娘で父に言われるままに江戸の役者のところに嫁入った。夫は燕弥というトップの次のあたりの女形。家でも女の格好をしているのはもちろん言動までもが役になり切ってしまうから厄介だ。父から武家の娘として厳しく育てられた志乃はどうやって女形の女房になったらいいのか分からない。モデルがないのだ。生真面目な性格の志乃は、どうしても正解を求めてしまう。知り合った寿太郎という役者の女房お富は行きたければ禁制の芝居の楽屋にまで入り...「おんなの女房」予想を裏切る展開

  • 「ナチスのキッチン(決定版)」 台所はどこへ行く?

    「ナチスのキッチン」(藤原辰史著2016年7月株式会社共和国刊)を読みました。「ナチスの」とあるようにドイツの食の歴史について書いています。ドイツでは(寒いので)かまどは家の中にあった。居間に。居間に設置されたかまどには鍋が掛けられかまどの火は暖房にも照明にもなったので、家族はみな居間にいた。居間には煮炊きの湯気と、煙が常に充満していた。居間キッチンだ。熱効率のよいかまど(料理用ストーブからやがてガスコンロを経て電気コンロになる)が作られキッチンは独立した部屋になる。労働キッチンと名付けられた。家の中は清潔になったけれど(この時代、奉公人のいる家は少なくなっていた)料理を作る人(主に女性)は孤立した。キッチンが家の外に作られるという流れもあった(これはアメリカ)団地のそれぞれの家に台所はなくセントラルキッチンで...「ナチスのキッチン(決定版)」台所はどこへ行く?

  • 「山學ノオト」

    「手づくりのアジール」の著者・青木真兵、海青子夫妻の日記「山學ノオト」①②(青木真兵、海青子著エイチアンドエスカンパニー刊)を読みました。①は2019年、②は2020年の日記です。奈良県の山村に引っ越して私設図書館「ルチャ・リブロ」を開いて暮らす日々が綴られます。(著書「彼岸の図書館」に関する講演活動も)s=真兵m=海青子s午後は久しぶりに落ち着いて読書。本が読めない日々を送っているようじゃ働き過ぎ。s名古屋からの帰りのバスの車中では「彼岸の図書館」の対談箇所をパチパチと直したり疲れてなくても目を閉じたり。s現代社会は「みんなのため」にできている。近代以前は社会が「一部の人のため」のもので、これを封建制と呼ぶ。僕はこの近代社会が間違っているとは思わない。ただ、この「みんな」に含まれなかった人たちや含まれないと感...「山學ノオト」

  • 「手づくりのアジール」 寅さんの存在について考えた

    「手づくりのアジール土着の知が生まれるところ」(青木真兵著2021年11月晶文社刊)を読みました。「彼岸の図書館」を書いた著者の新刊です。(山田洋次は、なぜ寅さん(あの映画の)という人物を造形したのだろうかと、たまに考える。そんなに魅力的かなぁ寅さんなどと)著者は古代地中海史の研究者で障害者の就労支援の仕事をしながら東吉野村で私設の人文学系図書館「ルチャ・リブロ」を運営している。表紙の植物画を描いたのは、妻の海青子(みあこ)さん。「ルチャ・リブロ」の司書をしている。お金を稼いで、自分で自分の口を養って一人前という考えが満ちている。海青子さんは、司書の仕事をしていたところを退職して別の仕事に就くも職場でうまくいかず心身を病んでしまう。大学への就職を目指して論文を書いていた著者も追い詰められる。そもそも、それで賃金...「手づくりのアジール」寅さんの存在について考えた

  • 「花屋さんが言うことには」 日常の謎ミステリ風味

    「花屋さんが言うことには」(山本幸久著2022年3月ポプラ社刊)を読みました。主人公の紀久子は2年勤めたブラック企業をやっと辞めて次の仕事が決まるまでの間(グラフィックデザインの仕事をしたいと思っている)駅前の花屋の店主・外島李多(とじまりた)に誘われてアルバイトをすることになる。(李多は女性)花屋のお仕事小説(ちょっと日常の謎ミステリ風味)なので花と花言葉のうんちくがたっぷり。加えてどの人物にも奥行きがあるところがいい。もと高校の国語教師で今は花屋でアルバイトをしている光代は短歌や俳句に詳しくて店頭の黒板に毎日花にちなんだ短歌や俳句を書いている。ヒマワリをたくさん並べた日は「列車にて遠く見ている向日葵は少年のふる帽子のごとし寺山修司」というふうに。もう一人のアルバイトの芳賀は農大の研究助手で岩登りが得意。自分...「花屋さんが言うことには」日常の謎ミステリ風味

  • 「塞王の楯」 成長小説+お仕事小説の時代小説

    「塞王(さいおう)の楯」(今村翔吾著2021年10月集英社刊)を読みました。直木賞受賞作です。主人公の匡介は幼い頃に戦に巻き込まれて父と母と妹をなくし石垣を積む技能者穴太衆(あのうしゅう)の飛田屋の頭領・源斎に助けられた。石を見る目を持つ匡介を源斎は後継に決めている。誰も破れないような石垣を築いたならばこの世から戦は無くなると信じて匡介は修業に励んでいる。時は関ヶ原の合戦の少し前。戦、また戦で石垣づくりの需要が絶えなかった時代は終わろうとしている。強度のある野面積みよりも表面が滑らかで見栄えのする石垣が求められるようになるのかもしれない。「切込接(きりこみつぎ)に代表されるような見せる石垣を造り絵師や塗師のようになることなのか田の畔の石垣を造るよう小さな仕事をするようになるのか穴太衆も変わる時が来たのかもしれな...「塞王の楯」成長小説+お仕事小説の時代小説

  • 「米澤屋書店」  米澤穂信の読書エッセー

    「米澤屋書店」(米澤穂信著2021年11月文藝春秋社刊)を読みました。デビュー以来20年の読書エッセーや作家との対談を集めたものです。どちらかといえば図書館よりも(図書館で執筆したことも多いけれど)「書店が好き」だという著者。それで、題名が「米澤屋書店」?とにかく膨大な量のミステリを読んでいる。で、ミステリーを紹介する隙間にちょっと語る。◯本を選ぶとはどういうことか?「自由なのだけれどその自由は、努力しなければ保つことが出来ない。はずれを引くことが怖くて話題作ばかり読むことも天邪鬼な気持ちで話題作は決して読まないこともどちらも自由とはいえない。自らの好奇心と感受性を信じてそれを鍛え自分の時間を支払って(!)本を選ぶ自由を守ることだ」◯ミステリーの面白さとは「ミステリーは割り算みたいなものです。この割り切れない「...「米澤屋書店」米澤穂信の読書エッセー

  • 「同志少女よ敵を撃て」 意外にあとあじがよい

    現実に「戦争」が起っているのに「戦争」ものを読むのは……と思って積んであった「同志少女よ敵を撃て」(逢坂冬馬著2021年11月早川書房刊)本屋大賞に選ばれたということはそれだけたくさんの人に支持されたということだろう。どういうところが支持されたのだろうそれが知りたくて読みました。うロシアがソ連だった時代人口40人ほどの小さな村イワノフスカヤに母と暮らす16才のセラフィマは高校に通う傍ら母と銃で害獣を駆除することもしていた。高校ではドイツ語を学び、将来は外交官になりたいと思っている。大学進学も決まっていた。そんなある日ドイツ軍によって村は襲撃され、母も村人たちも殺されてしまう。そこに赤軍(ソ連軍)の一団が現れセラフィマは危ういところで命を救われる。何を聞かれても、何も答えられないセラフィマにリーダーの女性兵士は聞...「同志少女よ敵を撃て」意外にあとあじがよい

  • 「だれでもデザイン」 義手、義足、子供用放射線測定機をデザインする

    「だれでもデザイン」(山中俊治著2021年11月朝日出版刊)を読みました。著者は自動改札機、義手、義足、放射線測定機などをデザインした人。中高校生に、デザインについての講義をした記録です。(なので、語りはゆっくり目)第6章「使いやすいものを作る」では「ベビースキャン」という放射線測定機をデザインしたことが語られている。東日本大震災の後体内の放射性物質がいつもより増えているかをホールボディカウンターというもので測定していた。ところが子どもは厚い鉄で出来た暗い箱の中で4分間じっとしていることができない。それをデザインの力で解決したのだ。巻貝のような入り口から滑り込んでうつ伏せになって動画を見ながらだったら4分間じっとしていることが出来る。ブルーとグリーンのさわり心地のよい素材で作った。装置の形も曲線的で恐怖心を与え...「だれでもデザイン」義手、義足、子供用放射線測定機をデザインする

  • 「ガラスの海を渡る舟」 ガラスの骨壷をつくる工房の物語

    もう1冊寺地はるなを読みました。「ガラスの海を渡る舟」(寺地はるな著2021年9月PHP研究所刊)発達障害だと思われる兄の道(みち)と(診断は受けていない)妹の羽衣子は亡き祖父のガラス工房を引き継いでやっている。道は主に骨壷を羽衣子はアクセサリーを制作している。人の脳にはいろいろな特性がある。道は曖昧な表現が理解できないタイプ。幼い頃から、些細なことが出来るたびに褒められる道学校で問題ばかり起こす道を羽衣子は嫌いだった。子供の頃から兄妹で祖父の手伝いをしていたからそれなりに出来ると思っていたガラス工芸をひとりでやろうと思っていたのに道もやるという。発達障害モノの作品も最近は増えているけれど寺地はるなはもう一歩踏み込む。同じように作っているつもりでも道の作品は望まれて買われていく。羽衣子は焦る。焦る衣羽子に先輩の...「ガラスの海を渡る舟」ガラスの骨壷をつくる工房の物語

  • 「タイムマシンに乗れないぼくたち」 ドラッグストアで売ってほしい(松井ゆかり)

    裏庭に、チューリップの芽が2㎝ほど出ています。「『タイムマシンに乗れないぼくたち』は寺地作品の中でもこれまでで最大級の効き目が期待できる小説でもう薬局やドラッグストアでも売ってくれたらいいと思えるレベルだ」という松井ゆかりさんのおススメを読んだので(web本の雑誌)「タイムマシンに乗れないぼくたち」(寺地はるな著2022年2月文藝春秋社)を読みました。短編集です。「コードネームは保留」の主人公優香は、小さな音楽関係の会社に勤めながら殺し屋という設定で生きている。会社の昼休みにはコードネームを考えている。今のところは保留だ。「女の子たち」4人は、いつも一緒にランチに行き帰って来るとお揃いのマグカップでココアやラテを飲んでいる。優香の昼休みは、電話番だ。設定を生きるのは初めてではない。小学校4年生の頃は、宇宙人とい...「タイムマシンに乗れないぼくたち」ドラッグストアで売ってほしい(松井ゆかり)

  • 「レニーとマーゴで100歳」 人が死ぬ話なのに読むと元気が出る

    「レニーとマーゴで100歳」(クローニン著2022年1月新潮社刊)を読みました。著者が(7年かけて)初めて書いた作品です。メイ病棟で終末期医療を受けているレニーは17才マーゴは83才2人は病院のアートセラピークラスで出会う。2人合わせたら100才じゃない?2人はその一年で一番印象的な出来事を一枚の絵に描き絵に描いたことを語り100枚の絵を仕上げることを決める。もう長くない時間を使って。心を病んでいた母親は死に父親は、レニーの病に打ちのめされている。レニーは父親に「もう来ないで」と告げる。父親にはレニーを支える力はもうないのだ。レニーはいきいきと動き回る。そして、出会う。病院附属の教会の神父アーサー(バスルームの紙魚を大事にし、家政婦に洗剤を使わないように頼んでいる)レニーを担当している新人看護師(レニーのベッド...「レニーとマーゴで100歳」人が死ぬ話なのに読むと元気が出る

  • 「博物館の少女」 怪異もの・ミステリ・児童文学

    「博物館の少女」(富安陽子著2021年11月偕成社刊)を読みました。タイトルは地味ですが怪異ものでありミステリであり児童文学でもある本書一粒で何度も美味しい作品です。ワトスン役を務めるのは13才の少女イカル。(イカルは鳥の名前)大阪で骨董屋を開いていた父を亡くしその後母も亡くして東京の親類に引き取られたばかり。よくしゃべり、よく動く元気者だが、お針は苦手。門前の小僧として育ったので骨董の目利きは、なかなかのものだ。でも、それを生かすことはもうない、と思っていたら意外なチャンスが飛び込んで来た。イカルの引き取られた家は絵師・河鍋暁斎の妻の実家だったのだ。暁斎の娘で弟子でもあるトヨ(15才)に連れられて出来たばかりの博物館に行ったイカルはひょんなことから館長のテスト(骨董の目利き)に合格し博物館の敷地内にある古蔵で...「博物館の少女」怪異もの・ミステリ・児童文学

  • 「ニワトリと卵と、息子の思春期」

    「ニワトリと卵と、息子の思春期」(繁延あづさ著2021年11月婦人之友社刊)を読みました。著者はカメラマンで、もの書き主に出産と狩猟をテーマに活動している。(おもしろい子どもモノが好きなので(「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」のブレイディみかこさんの息子とか「神さまたちの遊ぶ庭」に出てくる、宮下奈都さんの長男とか)ニワトリを飼って卵を販売し利益を得ようという「息子」に興味を引かれました。東京から、ふと思いついて転居したのが長崎そこで3番目の子どもが生まれて一家は5人家族になる。長男が6年生になったある日「ニワトリを飼う」宣言が起こった。長男と次男のゲーム機欲しいコールがずっと続いていたのだがゲーム機の代わりにニワトリが欲しいという。著者が読んでいた本「ニワトリと暮らす」を長男も読んだらしい。しょっちゅ...「ニワトリと卵と、息子の思春期」

  • 「オオルリ流星群」 

    伊予原新の新作「オオルリ流星群」(2022年2月角川書店刊)を読みました。高校の同級生の死の謎が解かれると同時に天文台が出来上がっていく(この部分の描写が緻密でDIY好きの人にはいいだろうなぁ)という筆者お得意の理系ミステリです。高校3年生の文化祭恵人の提案で空き缶を繋げたタペストリーを作った5人は今では、45才になっている。薬剤師で実家の薬局を継いだ久志(薬局は、近くに出来た大型店の煽りを受けて売り上げが落ちていた)獣医になる夢をあきらめて中学校の教師になった千佳の2人が一章ごとに語り継いでいく。テレビ局に勤めていた修は仕事を辞めて実家に帰って来て司法試験の勉強をしている。会社を辞めて実家に帰って来た和也は家にこもって3年、久志たちにも会おうとはしない。(空き缶タペストリーを提案した恵人は卒業した年に駅のホー...「オオルリ流星群」

  • 「ゆきあって しあさって」 ー文学フリマから生まれた一冊ー

    雪もだいぶ融けてきました。「旅書簡集ゆきあってしあさって」(高山羽根子酉島伝法倉田タカシ著2020年1月東京創元社刊)を読みました。題名をぐるりと取り囲んでいるこのモノは何だろう?土偶?紙粘土細工?絵葉書?これが全部作者たちの「作った」モノだなんて(唖然)おまけにページを開くと挿絵までついている…これは文も絵もかける作者たちが2013年に文学フリマで売った「旅のお土産つき書簡集」なのだそうだ。(表紙のモノは、そのお土産)さて書簡集の方は…架空の土地を旅した時のものでそれがまたかなり濃い。「地面を覆い尽くしている泥水のあちこちで泡が浮かんでは弾け硫黄くさいにおいをあたりに漂わせます。わたしはスーツケースを引き、水音を立てて泥水の中を歩きだしました」という泥の街からの手紙。「床につくほど大きいシャンデリアの周りで老...「ゆきあってしあさって」ー文学フリマから生まれた一冊ー

  • 「読むという冒険」 ーロビンソン・クルーソーは山羊を飼い過ぎているー

    「読むという冒険ーイギリス児童文学の森へー」(佐藤和哉著2022年2月岩波ジュニア新書)を読みました。お定まりの日々でも視点を変えてみると、今まで見えていなかったものが見えて来る。そんな本です。取り上げているのは「マザー・グース」「ロビンソン・クルーソー」「クリスマス・キャロル」「不思議の国のアリス」「クマのプーさん」「ライオンと魔女」「第九軍団のワシ」筆者は何を伝えようとしたのか…という「ありがち」な読み方をやめてみようと著者は言っている。(確かにそうだ)例えば「ロビンソン・クルーソー」ではフライディを救出したり、イギリス船を奪還したりする戦いの場面もカッコいいし自給自足が達成されるのも魅力的。でも実はロビンソンの乗っていた船は奴隷を密貿易しようとしていた船だった「というところから当時の三角貿易に踏み込んでみ...「読むという冒険」ーロビンソン・クルーソーは山羊を飼い過ぎているー

  • 「ヘルシンキ生活の練習」

    「ヘルシンキ生活の練習」(朴沙羅著2021年11月筑摩書房刊)を読みました。社会学の研究者でこれまで何冊もの本を出している著者が「できればよその国で働きたい」という中学生以来ののぞみを叶えて2才と6才の子供を連れて夫と離れてフィンランドに移住した話です。「朴」という韓国の姓を持っている著者は日本生まれなのに「日本になじんでるわね」などと言われる。そんな日本に息苦しさを感じていたいた。日本人の憧れの国フィンランド……(著者はフィンランドに憧れていたわけではない)でも夫や実家の「手」のない子育ては予想以上に大変だった。(コロナ禍で、夫はなかなか来られない)そんな中でも著者は考える。どこまでも深く考える。(時に精神の不調をきたしたりもする)そして結論を出す。フィンランドで子育てをして行こう、と。2人の子供が育っていく...「ヘルシンキ生活の練習」

  • アニメ「犬王」の原作 「平家物語 犬王の巻」

    アニメの原作と聞いて「平家物語犬王の巻」(古川日出男著2017年5月単行本刊行河出書房新社)を読みました。著者は池澤夏樹が個人編集「日本文学全集」の「平家物語」の現代語訳をぜひにと依頼したひとです。壇ノ浦で父とともに海に潜って平家の船の遺品拾いをすることを生業としていた少年友魚(ともな)は三種の神器の一つである剣を拾った瞬間閃光に焼かれて目が見えなくなってしまう。友魚は琵琶法師に出会って弟子になりやがて名高い琵琶法師になる。能の比叡座の棟梁の子犬王は父の願によって醜怪な体を持って生まれる。父は美貌と芸の練達と人気を子の美と引き換えにしたのだ。犬王は面をつけ、手足を足袋と手袋で覆った姿で育てられる。やがて二人は出会う。何か一つを成し遂げるたびに足が、手が、やがて顔が美を取り戻していく犬王。(いかにもアニメで描かれ...アニメ「犬王」の原作「平家物語犬王の巻」

  • 「世界のはての少年」 ー救うのは物語ー

    すごいと聞いたので「世界のはての少年」(マコックラン著2019年9月東京創元社刊)を読みました。無人島モノが好きなので(「ロビンソン・クルーソー」とか「十五少年漂流記」とか)これも、そんな感じかな…それにしては表紙絵が怖いと思ったらまさにその通り。舞台はスコットランドの離島・セント・キルダ諸島にあるヒルタ島8月9人の少年と付き添いの大人3人は船で戦士の岩島に向かった。2、3週間の間無人島でツノメドリを捕る作業をするためだ。ツノメドリの肉はもちろん、羽根も、油も島の過酷な生活を支える収入源なのだ。捕獲は進み迎えの船を待っていた12人にいつまで経っても迎えは来なかった。信仰の篤い島の育ちの少年たちは世界が滅亡したのではないかと怯える。捕ったツノメドリを食べるしかない暮らし……やがて季節は変わって冬がやって来る……年...「世界のはての少年」ー救うのは物語ー

  • 「ガラスの顔」 ー「面」(マスク)を持たない少女は世界を動かすー

    すごいと聞いたので「ガラスの顔」(ハーディング著2021年11月東京創元社刊)を読みました。チーズ職人のグランディブル親方の洞窟で暮らしている少女ネヴァフェルは来客がある時には、いつも布の面を付けるように命じられている。そして、外に出ることを禁じられている。「わたしの顔がとんでもなく醜いからだ」とネヴァフェルは思っていた。地下都市カヴェルナでは人はみな、「面」(おも)で装っている。子供の頃から訓練を受けて、100を超える面(表情)を身につけるのだ。富裕な人々はフェイススミス(面細工師)から新しい面を習って面の数を増やしていく。「青緑の瞑想」「リンゴの枝の憂鬱」……ある日、ウサギの開けた穴からネヴァフェルは脱出する。洞窟の外の世界が見たくてたまらなかったのだ。ネヴァフェルの顔を見た外の世界の人たちは悲鳴をあげる。...「ガラスの顔」ー「面」(マスク)を持たない少女は世界を動かすー

  • 「あきない世傳金と銀 12」 ーこれは、ジェンダーもの時代小説だったのねー

    「あきない世傳金と銀」第12卷出帆篇(高田郁著2022年2月ハルキ文庫)を読みました。大阪の呉服屋・五鈴屋の奉公人だった幸(さち)はあとつぎの後妻になり夫の死後自由な商いを求めて江戸に出て「五鈴屋江戸本店」を開く。その江戸本店が十周年を迎えるのがこの巻。いつものように困難→解決となるので指圧効果抜群。(ぎゅっと押された後、ぱっと血行がよくなる)この巻の面白さは敵役の実妹・結(ゆい)の影が薄くなり登場人物たちの自立の方向が見えてくるところだろう。幸の盟友の菊栄(きくえ)は自分の小間物屋を大阪の実家・紅屋の支店ではなく新たに「菊栄(きくえい)」という屋号にし自分が初代になると宣言する。廓で年季が明けた後芸者としてひとりだちしようとしている歌扇も登場する。(この時代の廓の芸者は男)おりしも桃園天皇が崩御し幼い皇子に代...「あきない世傳金と銀12」ーこれは、ジェンダーもの時代小説だったのねー

  • 「アーバニスト」  ー情報社会の次は創造社会がやって来るー

    書評を読んで、面白そうだと思って「アーバニスト」(中島直人・一般社団法人アーバニスト著2021年11月ちくま新書)を読みました。アーバニストは、まち人間と訳される。(この場合まちはむらでもいい)単なる計画者ではなくてまちに住み、まちの生活を楽しんでいる人という意味だ。でも「あなたは、アーバニストですね」と言われて喜ぶほどに「アーバニスト」という言葉(概念)は広まってはいない。著者たちは「アーバニスト」という言葉を広めるために奮闘している。(この本の中でも)前半では縦軸で(歴史上、アーバニストと思われる人をピックアップし)後半では横軸で(現代の)アーバニストを拾い出し、紹介している。こういう場合読者を納得させるには魅力的な「事例」が大事になってくるのではないだろうか。その点で、第4章の書き方(三谷繭子、官尋著)が...「アーバニスト」ー情報社会の次は創造社会がやって来るー

  • 「ボタニカ」 -朝井まかてが語る牧野富太郎-

    「ボタニカ」(朝井まかて著2022年1月祥伝社刊)を読みました。以前読んだ絵本「草木とみた夢」の絵が好きだったので同じような雰囲気の表紙絵(村上千彩)に惹かれて。(何とNHKの朝ドラにもなるというし)富太郎は、両親を幼い頃に亡くし義理の祖母(祖父の後妻)である浪(なみ)に育てられた。家は造り酒屋で荒物などを扱う商売もし、裕福だった。いくつかの塾に通って学問をするうちに富太郎は、植物学に興味を抱くようになる「物心ついた時分から無性に、ただひたすらに植物が好きでもっと知り合いたいと思うて、植物学の道に入りましたき。一歩進むごとに謎が増えるばかりですけんど昼夜を分たずして励んじょります」「知りたい」のではなく「知り合いたい」のだ。頭の中が植物のことでいっぱいな富太郎はさまざまな軋轢を発生させていく。上司には嫌われ、身...「ボタニカ」-朝井まかてが語る牧野富太郎-

  • 安徳天皇漂海記

    まだまだ雪は続いています。「安徳天皇漂海記」(宇月原晴明2006年2月中央公論社刊)を読みました。船から祖母の二位尼に抱かれて海に飛び込んだ安徳天皇が生きていて……ということは義経が実は生きていたというような話かなと思ったら違いました。今、大河ドラマに描かれている時代より少し後鎌倉幕府の将軍は頼朝と政子の子・実朝になっている。第一部はその実朝の話実朝は、なぜ華麗な宋船を建造させたのか?という謎が解かれる第二部の舞台は50年後の大陸。マルコ・ポーロはクビライ・カーンに「面白い話を語る」役目に就いていた。(アラビアンナイトのように)そしてなぜ元は2度も嵐にあって敗退したのか(元寇)の謎が解かれる。共通しているのは「安徳天皇」美文調とでもいう文章がいい。「それは(マルコが語ったのは)、ジパングの若き王の話。稀代の覇王...安徳天皇漂海記

  • はじめての考古学

    2008年に出版された「日本の歴史」(小学館)の第一巻「列島創世記」を読んで著者のファンになった(最近はNHKの「英雄たちの選択」でもお目にかかれる)ので「はじめての考古学」(2021年11月ちくまプリマー新書)を読みました。大学で講義をする予定だったのがコロナ禍で出来なくなったので講義の代わりに「作成した資料を読んでレポートを提出してもらう」形式にしたその資料です。(なんて贅沢な)旧石器時代から古墳時代までを取り上げているのだけれどそれだけではちょっと面白くないので旧石器時代は「進化科学に基づく考古学」縄文時代は「認知考古学」弥生時代が「戦争の人類史的な位置づけ」古墳時代は「比較考古学」「ジェンダー考古学」という考古学の手法を説明している。(なんて贅沢な)◯縄文土器は日常づかいの道具であったのにどうして使いに...はじめての考古学

  • あかずの扉の鍵貸します

    どうやら冬も底を打ったようです。「あかずの扉の鍵貸します」(谷瑞恵著2021年10月集英社刊)を読みました。主人公の朔実(さくみ)は高校生の時に両親を亡くしてそれまで会ったことのない遠縁の不二代に引き取られる。その不二代が病気で亡くなって朔実は北鎌倉のはずれにある「まぼろし堂」に下宿することになる。まぼろし堂はいくつもの小部屋を継ぎ足したような造りになっている。背後は岩山で岩をU字に囲むように建物が造られているので背後は見えない。その小部屋と「あかずの扉」を人に貸しているのだ。あかずの扉には借り手のモノが納められ鍵は借り手が持つことになっている。祖父の持ち物だった館を引き継いでいるのは幻堂(げんどう)風彦という青年でここを設計事務所として使っている。古い建物を保存したいという相談がけっこうあるのだ。風彦は父を知...あかずの扉の鍵貸します

  • 黒牢城

    米澤穂信の新作「黒牢城」(2021年6月角川書店刊)を読みました。ミステリ作家なのに時代小説?と思ったら時代モノミステリなのでした。登場人物は荒木村重と黒田官兵衛(しばらく前の大河ドラマの登場人物の顔が浮かぶ…)荒木村重は信長の家臣だったが信長に対する反旗を翻して、有岡城に篭城した。毛利から援軍が来るのを待って籠城し続ける村重を説得するための使者として来たのが黒田官兵衛。村重はその官兵衛を城の地下牢に幽閉してしまう。そして、村重と言えば城も家臣も置き去りにして単身毛利家に駆け込んだことで有名だ。これだけでも十分美味しいのに「冬の摂津に戦雲がたなびく」「天下は春で…」「夏は死の季節である」「夜風が涼を含むようになると…」とはじまる冬、春、夏、秋の各章で一つのずつの事件が起こる。村重は、その度に地下牢に降りて行って...黒牢城

  • 利他学

    利他的行動をヒトはなぜふっとしてしまうのか?(「思いがけず利他」にあった)今度は脳の作りからのアプローチを読んでみました。「利他学」(小田亮著2011年5月新潮選書)利他というのは状況をよく観察した上で相手が必要としているだろう(推測)ことを頼まれもしないのにすることだ。霊長類の中でも1番人間に近いと言われるチンパンジーでも「相手が要求すれば」助けるけれど(ここでポイントになるのは「自分の利益にならなくても」という点だ)頼まれなくてもやったりはしない。(コモンマーモセットという霊長類だけは頼まれなくても相手の利益になるような行動を取る。)ヒトはどうして利他的な行動を取るように進化したのだろう?それは食物を得るためだった。食物には3つの種類がある。採集食物ーそのまま食べることができるものべリー類など抽出食物ー処理...利他学

  • どこにもない編み物研究室 ものづくりのすべてに共通する考え方とコツがここにある!

    雪も、ちょっとひと休み。「どこにもない編み物研究室ものづくりのすべてに共通の考え方とコツがここにある!」(横山起也著2021年9月誠文堂新光社刊)を読みました。編み物作家の著者が北川ケイ(近代日本西洋技芸史研究家)渡辺晋也(牧師)ソウマノリコ(糸作家)光恵(あみぐるみ作家)西村知子(主に編み物の本の翻訳家)と対談した対談集。中でも6才で編み物をはじめたという渡辺さん(牧師)との対談が面白い。渡辺さんが対談場所に選んだのはシェットランド毛糸を扱う毛糸店。(この画像がステキ)前身頃、後ろ身頃、袖…とパーツを編んではぎ合わせる日本の編み物の仕方に何となく違和感があった渡辺さんはフェアアイル・セーターに出会って衝撃を受ける。身頃をずっと輪のまま編んであとから切って(それでもほどけない)そこから袖を編むフェアアイル・セー...どこにもない編み物研究室ものづくりのすべてに共通する考え方とコツがここにある!

  • 土偶を読む

    「土偶を読む130年解かれなかった縄文神話の謎」(竹倉史人著2021年4月晶文社刊)を読みました。昔は、土偶といえばシャコちゃん(遮光器土偶)であったけれど最近は色々な土偶が写真付きで紹介されるようになったので土偶って、色々あるなぁと思うようになった。縄文人は土偶を作るとき、何かからデザインのヒントを得たに違いないというのがこの本の主張。そうだったのかもしれないそうではなかったのかもしれないでも、面白いです。遮光器土偶の手足は、どうしてあんな風に楕円形なのか?それは里芋デザインだったから。寒い北東北では、里芋を地中に埋めて次の年に蒔くまで保存するのは危険が伴った。低温で種芋がダメになってしまうかもしれないからだ。だから、北東北の縄文人は里芋型の土偶を作ってお祈りをした。是川遺跡の合掌土偶の顔の中央に線があり、下...土偶を読む

  • ハムネット

    毎日雪が降って今が冬の底かと思われます。「ハムネット」(オファーレル著2021年11月新潮社刊)を読みました。歴史上に「悪妻」と言われる人はたくさんいるけれどこの作品もその1人、シェイクスピアの妻が主人公。生涯郷里のストラトフォードに留まり年上の(8才上)、文字の読み書きができない人だった。というけれどそんな評価から救い出したいという著者の熱意が伝わって来る。タイトルの「ハムネット」は、シェイクスピアの息子の名前だ。ハムネットはつまり、ハムレット。なぜ、シェイクスピアは、息子の名前を戯曲の題名にしたのか?という謎は読者にとっての謎である前にシェイクスピアの妻・アグネスにとっての謎であもある。町の名士であったシェイクスピアの父親は今ではすっかり零落し、一介の手袋職人になっている。家が裕福だった時代に学校に通わせて...ハムネット

  • 彼岸花が咲く島

    あけましておめでとうございます今年も、どうぞお付き合い下さい。「彼岸花が咲く島」(李琴峰著2021年6月文藝春秋社刊)を読みました。言葉という絵の具で描くのがモノガタリだけれど(書くにせよ、語るにせよ)言葉を意識していると感じさせられるものは意外に少ない。これは言葉が前面に出た作品になっている。島の少女游那(女へんがつく那ヨナ)は彼岸花の咲く浜に流れ着いた少女を助け少女を宇実(ウミ)と名付ける。ウミには島の言葉が分からない。「リー、メンズはなにヤー?」(あなた、名前は何?)「リー、海の向こうよりライしたダー」(あなたは、海の向こうから来た)全く分からないのではなく、分かる言葉も混じっている。ヨナは島のリーダー集団ノロを目指している。ノロには女しかなれないというきまりがある。ノロになるには日常に使っている「ニホン...彼岸花が咲く島

  • 勝手にベスト10 ③

    今年読んだ170冊ほどの中から勝手にベスト10を選んでみました。順位はありません。7冊目は「分水嶺ドキュメントコロナ対策専門家会議」(河合香織著2021年4月岩波書店刊)「コロナ対策専門家会議」の立ち上げから解散までが書かれている。尾見会長は、オリンピックを「普通なら、やらない」と発言した。言わなければいいのにと思う人も多いだろう。(まして、身内や友人、知人は)尾見会長は、敢えて言っていたのだ。2020年2月「国から頼まれもしないのに専門家独自で見解を発表したり、会見をするなんて普通はやらないわけです。だが、我々は政府に嫌われてもなお、ルビコン川を渡ろうと思った」(尾見)(ルビコン川を渡るーもう後戻りはできないという覚悟のもと、重大な決断や行動を起こすこと)このころクルーズ船で感染が起こっていた。専門家会議は「...勝手にベスト10③

  • 勝手にベスト10 ②

    今年読んだ170冊ほどの中から勝手にベスト10を選んでみました。順位はありません。4冊目は「ペンダーウィックの四姉妹」シリーズの第4巻「春の嵐」(バーズオール著2020年6月小峰書店刊)第3巻から6年後この巻の主人公は11歳になった四姉妹の末っ子(だった)バティ。8歳になったベンはバティの弟になりさらにリディア(2歳)が生まれてペンダーウィック家は8人家族になっている。バティの母代わりだった長女のロザリンドは大学生になって家を出、二女のスカイと三女のジェーンは高校生になった。背中に蝶の羽を背負っていた内気なバティは11歳になった今も、ひどく内気だ。音楽の先生に声を褒められて正式なレッスンを受けるように勧められて(もう、ピアノのレッスンは受けているしペンダーウイック家は、なかなか生活が苦しいのでこれ以上のレッスン...勝手にベスト10②

  • 勝手にベスト10 ①

    今年読んだ170冊ほどの中から(読んだ本は手帖に記録しているのですが題名だけは思い出せないので表紙写真もプリントして貼ってある)強く記憶に残った10冊を選びました。順位はありません。1冊目は直木賞候補にもなった「黒牢城」(米澤穂信著2021年6月角川書店刊)青春モノからスタートした米澤さんが時代小説とはと、ちょっと感慨深い。謎解きとしても、時代小説としても、心理ドラマとしても一級の作品(だと思う)登場人物は荒木村重と黒田官兵衛(しばらく前の大河ドラマの俳優の顔が浮かぶ…)荒木村重は信長の家臣だったが信長に反旗を翻して、有岡城に篭城した。毛利から援軍が来るのを待って籠城し続ける村重を説得するための使者として来たのが黒田官兵衛。村重はその官兵衛を城の地下牢に幽閉してしまう。そして、村重と言えば城も家臣も置き去りにし...勝手にベスト10①

  • 「木」から辿る人類史

    雪は休み休み降っています。「「木」から辿る人類史ヒトの進化と繁栄の秘密に迫る」(エノス著2021年9月NHK出版刊)を読みました。森林を破壊→地球温暖化という式が定着している今だからこそ木とヒトとの歴史を見直そうという著者の知識を詰め込んだ一冊このページ数では足りないと思われる情報量が詰め込まれている。え、そうだったのと思わせられることばかり。ご先祖様は木の上に、枝で巣を組んで眠っていた。夜に狩りをするケモノから身を守るために。(長い睡眠はヒトの脳を大きくした)それなのに、なぜヒトは地上暮らしをするようになったのか?それは、「木」を火で燃やすことによってケモノが近づいて来なくなることを知ったからだ。木の上では火を燃やすことはできない。ヒトは石を拾って「道具」として使いやがて加工して石器を作るようになった……拾っ...「木」から辿る人類史

  • 剛心

    どうやら根雪になったもよう。「剛心」(木内昇著2021年11月集英社刊)を読みました。地味目な表紙地味なタイトルこれは、自信があるのだな、とお見受けしました。(剛心ー建物の、強さの中心のことをいう建物には重さの中心としての「重心」があるが、それとは別に地震に耐えようとする強さの中心点を「剛心」と呼ぶ)主人公の妻木は旗本の子だったが、幼いころ父を亡くしつましく暮らしながら育ててくれた母と、姉も亡くし親類に頼って成人した後(ちょうど明治維新)日本がつまらなくなったと家屋敷を売って、貨物船でアメリカに渡ってアルバイト暮らしをしていた時に在米留学生の監督役だった目賀田に見出され日本に帰って、日本語で基礎から建築を学ぶように諭される。工部大学校造家学科(のちの東大建築学科)に入学するがつまらなくなったと、卒業の1年前に退...剛心

  • かぐや姫、物語を書きかえろ!

    「かぐや姫、物語を書きかえろ!」(雀野日名子著2021年11月河出書房新社刊)を読みました。ライトノベルかなと思って読みはじめたらすごい歯応え。「男」の物語として物語を整理しようとする物語の神と物語の中で転生し続ける2人の少女・さよとごうが竹取物語源氏物語平家物語忠臣蔵舞姫(森鴎外)蟹工船(小林多喜二)を書き換えていく。「源氏物語」の書き手は女だし、たぶん読み手の多くも女であったはずだ。それなのに雨夜の品定めでは、男たちはさんざんに女たちをこき下ろし末摘花は醜女だということで人げない扱いをされる。読者の投稿(噂話)に敏感であった紫式部は少女の若紫を拉致して、自分好みに教育しようとする光源氏に対する読者の「気持ち悪い」という評判を耳にする。(作中ではごうは目をつけた女のもとに忍んで行っては一夜を過ごした後に悪口を...かぐや姫、物語を書きかえろ!

  • ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2

    道に、雪がとけ残っています。「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」(ブレイディみかこ著2021年9月新潮社刊)の第2巻を読みました。イギリスのブライトンでアイルランド人のブルーカラーの夫と中学生の息子と暮らしている著者(日本人)が月に一度、雑誌「波」に書いたイギリスだより(子育ての配分多め)です。第1巻より成長した「息子」の言葉が印象的だ。リサイクルをするために外に出しておいたものを鉄屑集めの移民の一家が貰って行くようになって配偶者は、大事にとっておいた息子のベビー服をあげた。もうすぐ赤ん坊が生まれると聞いたからだ。しばらくして移民の青年は律儀にベビー服を返しに来る。赤ん坊は死産だったと言うのだ。ぽつんと息子が言う。「リサイクリングが逆流して戻ってきちゃったね」担任に推薦されて学年委員に応募した息子の部...ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2

  • 7.5グラムの奇跡

    朝、玄関を開けたら一面の雪景色。「7.5グラムの奇跡」(砥上裕将著2021年10月講談社刊)を読みました。「線は、僕を描く」でデビューした水墨画家でもある著者の第2作です。今度は眼科モノ。眼科モノかぁ………と、ちょっとためらっていたけれど(目弱・めよわ者なので)新聞の書評欄でおススメされていたので、思い切って読んでみました。相手の瞳を覗き込んでしまう癖(職業病?)のある野宮は新人の視能訓練士(眼科の検査などをする人)まだまだ半人前だ。野宮の周囲にいるのは医師の北見先輩視能訓練士の広瀬看護師の剛田、丘本……彼らが一緒に、患者の謎を解く物語です。(症状を手がかりに病名を診断するということが既に謎解きなのかもしれない)短編集ですが中でも「夜の虹」がいい。30代前半の患者・門村は緑内障だが、あまり治療には積極的ではない...7.5グラムの奇跡

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