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2015/01/11

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  • 銀河太平記・152『ブンカ―へ救急出動』

    銀河太平記・152『ブンカ―へ救急出動』メグミ島のロボットの9割が戦死した。並列化を解いて、相互の連絡は手旗信号を使ったり発光信号に変えてみたり、全てアナログ。デジタルでなくとも電気やパルスを使った通信であれば、漢明軍はいかようにもアクセスし、数秒で発信元を突き止めて攻撃を加えてくる。ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ発光信号が二度繰り返され、こちらは――ピ――と一度だけの了解信号を送る。○○地区で重傷のロボットが出た。その救援要請に――了解――の信号を送ったところ。平時なら救援と回復に関するスキルを送ってやれば、インストールしたロボットが99%わたしと同じスキルで修理、回復をする。しかし、今は島でA級スキルを持っているエンジニアはわたしとお岩さんだけだ。ついこないだまでは、わたし程度のエンジニ...銀河太平記・152『ブンカ―へ救急出動』

  • RE・かの世界この世界:045『シリンダー』

    RE・かの世界この世界45『シリンダー』テル異世界から持ち込まれた愛玩動物なんです「シリンダーは愛玩動物なんですか?」ハッチの縁に腰を預け、戦い慣れた下士官の余裕でグリは語る。シュタインドルフまでの道のりはムヘン川の南岸を一本道なので、操縦をオートにしてキューポラから上半身を晒している。ブリとケイトは最初っからエンジンルームの上にドンゴロスを敷いて寝っ転がっている。四人乗りに改造されているとはいえ、定員三人の二号戦車の中で長時間大人しくしているのは厳しい。じっさい、ムヘンブルグの北門で出会った前線帰りの二号戦車は同じように砲塔やエンジンルームの上に乗員を載せていた。車内にいるとストレスのエンジン音だが、外に出てみると心地よい振動になるので、ブリとケイトは眠ってしまっている。「トール元帥の平定が落ち着いたこ...RE・かの世界この世界:045『シリンダー』

  • くノ一その一今のうち・46『心の中』

    くノ一その一今のうち46『心の中』その二日後の夜、甲斐善光寺に忍んだ。誰にも言っていない。まあやに言えば心配をかけるし適当な嘘もつかなきゃならない。課長代理に言えば大事になる。金堂には破風から入った。ホタ音がするような着地はしないが、表現すると、こんな感じ。草原の国に忍んだことを思い出す。あの時も寺院の破風から侵入した。まだ何カ月もたっていないけど何年も前の事だったような気がする。次は破風からの侵入は避けよう。忍者のワンパターンは身を亡ぼす。いっそ真っ暗ならいいんだけど、うっすらと常夜灯が点いている。誰かに見られているような錯覚。分かっている、天井に描かれた八方睨みの竜だ。戒壇巡りと並ぶ善光寺の名物。最初に来た時に三村紘一に化けていた課長代理が教えてくれた。真下で手を叩けば「天人の警蹕のように響く」と課長...くノ一その一今のうち・46『心の中』

  • RE・かの世界この世界:044『ムヘン略記』

    RE・かの世界この世界44『ムヘン略記』テルムヘンの地は菱餅のような形をしている。菱餅の中央に城塞都市ムヘンブルグがあり、その北を東西に荒川ほどのムヘン川が流れている。昔は化外の地ムヘンと呼ばれ、主神オーディンの力も及ばぬ蛮族と化け物の地と嫌われ、神族でさえ足を踏み入れることは稀であった。しかし、オーディン紀元千年紀のころに、ムヘンの南端、菱餅の下のほうが『始りの荒野』と繋がっていることが発見された。始まりの荒野は、他の異世界と繋がっていて、そこから様々な異世界の神々や人間やクリーチャーが現れてはオーディンの知ろしめす大地や国々を脅かしていることがジークフリートの冒険で知られた。ジークフリートの非業の死のあと、ムヘンの地の平定を任されたのがトール元帥だ。トール元帥は、城塞都市ムヘンブルグを築き、ムヘンと始...RE・かの世界この世界:044『ムヘン略記』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・013『よど号と須之内写真館』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記013『よど号と須之内写真館』川辺の柵の工事は予想に反して三日もかかって、三月も末日の31日。リアルの橋は工事中でも渡れるけど、わたしのは1970年に渡るための戻り橋。ガチガチに工事用フェンスで囲われては渡れません。今日もダメだったら、令和の世界で白黒の証明写真を撮り直しとビビっていたら、なんとか、昨日の夕方には終わった。Mの標も無事に再発見して戻り橋を渡る。自動でない改札やガックン電車にも慣れて、昭和の宮之森駅が見えてくる。あれ?軽く驚く。令和では八分咲きだった桜が、まだチラホラの二分咲きでしかない。乗った駅はすでに昭和の奥宮駅だったんだけど、写真のこととか気になって桜には気付かなかった。令和とは桜の種類が違うとか?スマホを出して調べてみる。わたしのスマホは魔法少女...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・013『よど号と須之内写真館』

  • RE・かの世界この世界:043『え、マジか!?』

    RE・かの世界この世界43『え、マジか!?』テルああ、なんでも使ってくれグリ(タングリス)が鷹揚に返事をすると、小さな敬礼を返してこちらのゲペックカステンを開ける軍曹。「なんだこりゃ、お菓子屋でもやるつもりなのか?」「…………(゚ロ゚;)Σ(゚ロ゚#)」焦るブリとケイトを尻目にタングリスは方頬に笑みを浮かべて、こう言った。「シュタインドルフのヴァイゼンハオスの慰問を兼ねているんだ。ツ-ルはノルデンハーフェンで補給してもらうことになっている」戦争でいろんなものを見てきたのだろう、軍曹はしみじみとした横顔で続ける。「ヴァイゼンハオス……戦災孤児たちだな」「ああ、仰々しい慰問じゃ、シスターたちもかえって困るだろうからな」「なるほど、いや、停めてすまなかった。ツールは他の奴から借りるわ」「せっかくだ、キャンディー...RE・かの世界この世界:043『え、マジか!?』

  • せやさかい・395『湘南からの写真』

    せやさかい・395『湘南からの写真』さくら朝に本堂であげるお線香の順番。ご本尊の阿弥陀さま⇒聖徳太子ご尊像⇒歴代住職絵像いつもやったら、この三つなんですけど、昨日から一つ増えた。釋恋女(しゃくれんにょ)さんのお骨。釋が付くのは浄土真宗の法名です。他の宗派で言うところの戒名。法名は、お葬式で導師を務めた坊さんが付けます。釋恋女と付けたのはテイ兄ちゃん。「恋の字使うのは、ちょっと艶めきすぎてへんかあ」おっちゃんは反対したんやけど、テイ兄ちゃんは押し切った。「昴が『恋』の一字は入れてくれて言うしなあ、俺も『恋』は外されへんと思うんや」そない言うて仮位牌にけっこう上手な字で書いたんが六日前。そうなんです、この釋恋女さんは、俗名今井瑞穂。つまり、うちと留美ちゃんが毎朝自転車を預けてるスナック『はんぜい』の奥さん。奥...せやさかい・395『湘南からの写真』

  • RE・かの世界この世界:042『ゲペックカステン』

    RE・かの世界この世界42『ゲペックカステン』テル北門は南側の正門ほどの大きさではないが賑わいは比べ物にならない。城塞都市の日常生活をまかなう物資を積んだ大小さまざまのトラックが行き来し、商売や仕事で出入りする人々がバスや車、あるいはバイク、あるいは荷車や自転車、近隣の者は行商の大荷物を背負って行き来している。道の中央二車線は軍用車優先で、軍用のハーフトラックや装甲車、戦車が通る。中でも快速で軽快な二号戦車が半分近くを占めていて、我々の二号戦車も、その中に混じっている。「なるほど、これなら目立たないな」そう呟くと、タングリスがクスリと笑う。「目立たないもなにも、われわれ四人は正規の警備兵として登録されています。遊撃警備隊に属しているので、どこをどう通ろうと怪しまれません」「でも、こんな子供みたいなの連れて...RE・かの世界この世界:042『ゲペックカステン』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 113『なんでこうなるんだ?』

    鳴かぬなら信長転生記113『なんでこうなるんだ?』信長ヒヒーーーン!!なに奴!?俺の登場に馬が棹立ちになり危うく振り落とされそうになっているが、さすがに素戔嗚の化身たる桃太郎。カツカツと輪乗り(その場で丸く回って、馬の勢いを鎮める乗り方)し『待ったなし!』をかけられた関取のような目で睨んできた。はてさて、どうやっていなしてやろうか。すると、奴の方が恋人を発見したように瞳孔と口を全開にして意外な反応を示す。「や!やややや!大三島の鶴姫ではないか!」え?あ!?そうか、俺が身に着けているのは、大三島は大山祇神社に伝わる重要文化財の鶴姫の胴丸鎧。鶴姫は全国区的なヒロインではないが、大山祇神社は厳島神社と並ぶ瀬戸内の伝統ある大神社。桃太郎にしろ素戔嗚にしろ面識があっても不思議ではない。それに、うかつに飛び出したが、...鳴かぬなら信長転生記113『なんでこうなるんだ?』

  • RE・かの世界この世界:041『二号戦車』

    RE・かの世界この世界41『二号戦車』テル冗談のように見えたのは、数時間前まで乗っていたラーテのせいだろう。ラーテは1000トンもある超重戦車だったが、目の前の石畳で停車したのは10トンあるかどうかの軽戦車だ。呆気に取られて、気づくのに数秒を要したけど、それは二号F型だ。ほら、『ガルパン』の劇場版で、幼いころの西住姉妹が乗っていたやつ。大きさは宅配便のトラックほど。いや、高さは2メートルを切るから、宅配便のトラックよりも低いかもしれない。カチャキューポラのハッチを開けて出てきたのは別行動をとっていたタングニョーストだ。「二号でいくのか?」「ああ、操縦はタングリスがやってくれ」「やっぱり、ここを出ると顔が指すんだな」「城塞は元帥のコントロールが行き届いているが、街道にはいろんな者がいるからな」「二号では心も...RE・かの世界この世界:041『二号戦車』

  • 銀河太平記・151『西之島への迎え』

    銀河太平記・151『西之島への迎え』越萌マイ貴様が来てくれたのか!?無人のはずのオートパルス車のドアが開いたことにも驚いたが、そこから出てきたドライバーに驚いた。「元帥閣下の一大事、駆けつけるのは自分の職分であります」さすがに軍人丸出しの敬礼は控えて、それでも国防軍礼式通りの気を付けで応えてくれる。「貴様の事だ、抜かりは無いだろうが、仔細は車の中にしよう」脊髄反射で、こちらも越萌マリの口調が陸軍元帥に戻ってしまう。「はい、ではご乗車ください」「うむ」パルス車は、他の観光用や個人のパルス車、それに伝統的なヨットたちが出入りするのに紛れて江ノ島ヨットハーバーを出発した。「まだ現役なのか?」「心意気です」車に乗ってハンベをオンにすると、表示された運転手のIDは現役の陸軍准尉になっていた。「政府の西之島への対応に...銀河太平記・151『西之島への迎え』

  • RE・かの世界この世界:040『噴水の縁に腰掛ける』

    RE・かの世界この世界40『噴水の縁に腰掛ける』あれだけ寄って来た子どもたちが見向きもしない。無辺街道で出くわしてから、ずっと『ブリ』と呼んでいるが、それは、ただの短縮形、あるいは愛称だ。正しくはブリュンヒルデで、厳密にはブリュンヒルデ姫。呼びかける時は『殿下』あるいは『ユアハイネス』を付けなければならない。囚われの身であることを考慮しても、最低『様』は付けなければならないだろう。トール元帥が『ュンヒルデ』を取ったのは、ヴァルハラに着くまでの心得くらいに思っていたのだが、本営を出てからのムヘンブルグの人たちは一向に関心を示さない。「たいした力なのだなあ、トール元帥は」「これなら、ブァルハラに着くまで誰にも気づかれないかもね。元帥はおっかなかったけど、ちゃんとブリのこと思ってくれてるんだね(´∀`)」ケイト...RE・かの世界この世界:040『噴水の縁に腰掛ける』

  • RE・かの世界この世界:039『トール元帥』

    RE・かの世界この世界039『トール元帥』広いのか狭いのか……高いのか低いのか……真っ暗で見当が付かない。踏みしめる足の裏の感触が硬質なのと、外よりもヒンヤリした空気なので石造り……でも、足の裏に床の凹凸や石材の継ぎ目は感じられない。石材だとしたら、相当にカッチリ作られた建造物だろう。タングリスが運転手みたく先頭になっている電車ごっこの縄は微かに発光していて、前に居るケイトの緊張した輪郭が仄かにうかがえる。その前に居るはずのブリの姿は気配でしかない。数十秒……いや、数分も歩いただろうか、前方の景色がウッスラと浮かび上がる。太い二本の柱が立っている。タンクローリーのタンクの部分を垂直に立てたほどの太さがあって、エンタシスになって下の方がわずかに細い。なにかの結界だろうか……柱の上部に二本桁を渡せば極太の鳥居...RE・かの世界この世界:039『トール元帥』

  • くノ一その一今のうち・45『念願のお墓詣り』

    くノ一その一今のうち45『念願のお墓詣り』撮影というのは水ものだ。ちょっとしたトラブルが撮影の進行を遅らせる。夕べ、あたしと課長代理は甲府城の地下で木下の忍びたちと死闘を繰り広げていたけど、地上の甲府城でも監督たちが、これからの撮影について頭を絞っていた。『吠えよ剣』はアクション系エンタメドラマで、見る側は茶の間でドキドキしたりアハハと笑ってるだけでいいんだけど、ドキドキアハハにするためにはチャンネルを合わせてもらわなくてはならない。たとえ、仕事の疲れで寝てしまったり、ミカンの皮を剥いていたり、スマホの操作をしながらでも、チャンネルさえ合わせてもらっていれば視聴率が稼げる。業界用語でいう数字が取れる。限られた予算と製作時間で成し遂げるのは大変なんだけど、監督やスタッフたちは、その限られた中で全力を尽くす。...くノ一その一今のうち・45『念願のお墓詣り』

  • RE・かの世界この世界:038『ムヘンブルグ城塞都市』

    RE・かの世界この世界038『ムヘンブルグ城塞都市』ムヘンブルグ城塞都市の正門はダムに似ている。頂部のムヘンブルグの亀の子文字が無ければ、下から見上げた黒四ダムに間違えたかもしれない。正門の下半分は重厚な額縁のように段々になっていて、一番奥の下方は学校の昇降口ほどの大きさで、宅配便の車が通れるほどでしかない。ガクンガクンガクンガクンガクンガックン超重戦車ラーテが近づくと、二層目、三層目、四層目、五層目と広がっていき、最後に一番外側の六層目ゲートまで開いて、小学校の講堂程のラーテは微速で入っていく。入った直後から六層のゲートが閉じていき、ラーテの尻が入ると同時に全てが閉じられた。「わたしはラーテを格納しますので、タングニョーストが鎮守府までご案内します」タングリスに先導されてラーテを降り、中央通りに足を踏み...RE・かの世界この世界:038『ムヘンブルグ城塞都市』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・012『戻り橋が使えず志忠屋に行く』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記012『戻り橋が使えず志忠屋に行く』今日は無理だよ。新聞を取りに行って戻ってきたお祖母ちゃんがキッパリと言う。「ええ、なんでぇ!?」今日は証明写真を受け取りに行く日だ。一日の入学式に間に合えばいいんだけど、それだとギリギリになる。「川の柵を替えるんだって工事が始まっちゃった」「ええ、そんな予告なかったよ」ご近所で公共工事がある時は回覧板とかで予告が出て、現場にも――〇日から工事やります――的なお知らせが貼ってある。前触れもなくいきなりというのは勘弁してほしい。「ほら、石見銀山と堺だったかで、川の柵が壊れて人が亡くなったり怪我したりってのがあったじゃない」「あ、ああ……他に渡る手段ないの?」「時空を渡る橋なんて、そうそう無いわよ」「だろうねえ……」そこで予定を変更した。...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・012『戻り橋が使えず志忠屋に行く』

  • 宇宙戦艦三笠50[そして再びの始まり]

    宇宙戦艦三笠50[そして再びの始まり]修一「キャ!」「イテ!」ぶつかったことと二人で悲鳴を上げたことだけが確かな現実だった……あとは唐突に切り替わった夢のよう。さっきまでいたピレウスも、たった今ぶつかって二人そろって尻餅をついている横須賀国際高校の校門の前も夢かリアルかよく分からなかった。街の喧騒と例年になく早い木枯らしが頬をなぶっていく感覚で、少しずつ現実感が蘇ってきた。「なんか、唐突な帰還……帰還ですよね……?」「いつまでひっくり返ってんだ。みんな見てるぞ」天音に言われて、トシは意外な素早さで立ち上がった。――やっぱ、旅立ち前のトシとは変わってる。あの時は電柱の陰に隠れて、目が合うと逃げ出したもんな――天音は、そう思ったが、もうひとつのことが気になった。「修一と樟葉はやっぱり、ピレウスに残ったんだ……...宇宙戦艦三笠50[そして再びの始まり]

  • RE・かの世界この世界:037『超重戦車ラーテ』

    RE・かの世界この世界037『超重戦車ラーテ』それは巨大な戦車だった。重量1000トン、全長35m、全幅14m、高さ11m小さな小学校の講堂ほどもある。それで名前は『ラーテ』で、ネズミという意味だから恐れ入る。上がったところはエンジンルームと操縦室の隔壁の間で、車外と車内の各所に移動するための空間になっている。最大50人の戦闘部隊を収容できる兵員室でもあるので、ブリーフィングもやるため、壁にラーテの三面図と諸元が貼ってあるのだ。「昔は、おまえたちが曳く二頭立ての戦車だったのにな」ブリが触れると、三面図が、古代ローマにあったような二頭立ての戦車になった。赤いチュニックの上に甲冑を着た金髪のマッチョが乗っている。勇ましくはあるんだけど、どこかマンガだ。マッチョの振りかぶっている得物は巨大なンマー、戦車を曳いて...RE・かの世界この世界:037『超重戦車ラーテ』

  • パペッティア・008『久々の親父』

    パペッティア008『久々の親父』晋三『そのまま前に進みなさい』親父の声が言うので、夏子は予防注射の順番が迫ってきたようにオズオズと前に出る。すると、前のモニターに親父の上半身が現れた。背景はビデチャをやる時のようにボカシが入っていてよく分からない。「この部屋に居るんじゃないの?」『居るとも言えるし居ないとも言える』「えと……なぞなぞ?」『いや、そこが一番よく聞こえる。三つのメインスピーカーから等距離なんだ』「あ、ああ、そういう意味……ここがベストね」5センチほど微調整、ちょうど、目の前に親父が立って喋っているような感じになる。『ハハ、夏子は賢い。わたしが言ったポイントでは近すぎるか』「ハハ、頭の中で声がする感じだから。で、リアルお父さんはどこにいるの?」『ちょっと訳があって、今は、この画面を通してしか話が...パペッティア・008『久々の親父』

  • せやさかい・394『せや、花粉症やってんわ!』

    せやさかい・394『せや、花粉症やってんわ!』さくら歳を取ると鈍くなる……て、言うたらお祖父ちゃんに怒られそうやけど(^_^;)頼子さんがヤマセンブルグに行ってしもたことも、江戸川アニメに行って人生初の声優(花園あやめさんの相手役で、3カットだけやけどメチャビビった)やったのも、遠い思い出みたいな感じになって、この四五日は、すごく穏やかに一日が過ぎていく。子どもの頃は、大好きな人形の腕が取れて、ムリクリ直そ思て、がんばったら、今度は首が取れて――もう人類なんか滅びてしまえ!――なんて何カ月も落ち込んだり。お父さんが珍しく「三人でご飯食べにいこ!」言うて連れてってくれたファミレス、そのお子様ランチに立ってた日の丸の旗を世界最高のラッキーアイテムや思て、ダイソーで買うてもろた宝箱の中に入れて、時どき開いてはニ...せやさかい・394『せや、花粉症やってんわ!』

  • 宇宙戦艦三笠49[そして、トシとみんなの決意]

    宇宙戦艦三笠49[そして、トシとみんなの決意]修一三笠を飛び出したトシは地理的にも心理的にも自分の居場所を見失っていた。人類が滅亡してから数百年。惑星ピレウスは密林状態になっている。みんなからはぐれてしまうと、もう元の場所が分からない。――自分が残る!――そう宣言して、クローンだから能力が無いと言われて、今まで人間だと思っていたロボットが「おまえはただの機械なんだぞ」と言われたように滑稽で惨めだ。生体反応を示すモジュールは、駆けだすと同時にオフになった。これは、仲間同士位置を見失わないための測位システムで、身に危険が迫ると自動でオフになる。敵に位置を知られないためのセキュリティーでもあるのだ。――スイッチオン――と思いさえすれば、いつでもモジュールはトシの居場所を発信する。が、トシはその気にはならなかった...宇宙戦艦三笠49[そして、トシとみんなの決意]

  • RE・かの世界この世界:036『タングリスとタングニョースト』

    RE・かの世界この世界036『タングリスとタングニョースト』その声はタングリスか(⚙◇⚙)!?穴からの声にブリの目が輝いた。ブリの声に勢いづいて飛び降りてきたのは戦闘服に身を包んだ二人の美少女だ。「タングリス!タングニョースト!」100ワットの電球が点いたような明るさで立ち上がったブリに二人の美少女が駆け寄り、ハッシと抱き合った。「やっとお出ましになられたのですね!」「ああ、神のお導きで、この二人に出会えてな。紹介する、こっちの大きい方がソードマン(剣士)テル。小さい方がアーチャー(弓士)ケイトだ。たった今、シリンダー連結体を駆逐して、結界を張って一息ついているところだ」「姫がお世話になりました。自分たちは無辺方面軍戦車教導隊のタングリス、こちらが……」「タングニョーストであります、お見知りおきを」「こち...RE・かの世界この世界:036『タングリスとタングニョースト』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 112『桃太郎おおおおおおお!!』

    鳴かぬなら信長転生記112『桃太郎おおおおおおお!!』信長ガチャリ尾張の田園風景のようだ……体を捻ってロケーションを確認すると草摺の鳴る音がした。甲冑を身に着けているのだ。桃太郎(素戔嗚)の鬼退治に付き合うのだから武装はオモイカネ(思金神)のサービスか……しかし、これは、またしても鶴姫の嫌味なくらいに細身の女鎧。胸と脇の防御はゆとりもあって完ぺきなんだが、ウエストが細すぎる(-_-;)。先だっての陣触れアラートの時は茶姫の迎えだけで短時間で済んだが、今度は鬼退治、何日かかるか分からん。それをこんなに締め上げては長時間は無理だぞ。背中には桃形(ももなり)の兜を掛けて、馬手(右)の腕(かいな)には種子島……で、腰の左側が軽いと思ったら、太刀が無い!種子島は火縄銃、一発撃ったら、次の弾込めには三十秒はかかるぞ!...鳴かぬなら信長転生記112『桃太郎おおおおおおお!!』

  • 宇宙戦艦三笠48[小惑星ピレウスの秘密]

    宇宙戦艦三笠48[小惑星ピレウスの秘密]修一三笠のクルーはみんな同じ思いだった。「ピレウスに来て三日たつけど、オレたちなんともない……」「スキャンしても、みなさん健康そのものです」クレアがトシの言葉を裏付けた。三笠のクルーはレイマ姫とジェーンの顔を交互に見た。「んだんず。地球人は、このピレウスでも影響受げねんだ……」「レイマ姫、君の狙いは……」「寒冷化防止装置、なんど(あなたたち)に渡すて、地球救うごどだ」「それだけかい……?」「…………」修一の問いかけに、レイマ姫は黙ってしまった。「あたしが代わりに言ってやろう」「……なんで、ジェーンが」「これは、レイマ姫のお願いであって、交換条件じゃない。ただ、自分から言いだすと、気のいいあんたたちに強制するようで言えなかったのさ」「……言えないことって?」「ジェーン...宇宙戦艦三笠48[小惑星ピレウスの秘密]

  • RE・かの世界この世界:035『穴の向こうから』

    RE・かの世界この世界035『穴の向こうから』こ……これからどうするんだ……(╥﹏╥)?シリンダー連結体の群れが遠ざかり、口から飛び出しそうになっていた心臓が胸の真ん中に収まったころ、思わず口をついた疑問にブリが応えた。「待っておる」「「なにを(;'∀')?」」ケイトと声が重なった。結界の中にいれば安全なのだろうが、いつまでも居るわけにはいかない。とにもかくにも無辺街道を抜け出し、ヴァルハラを目指さなくてはならない。ヴァルハラを目指せと言いだしたのはブリ自身なのだからな。それに、丸めた背中にグッタリとツインテールを垂れさせているブリの姿は、いかにも心もとない。「無辺街道の警備を任されている者たちの内に力を貸してくれる者が現れる」「それは誰なんだ?」「連絡とかとれるの?」「……夕べの月が、そう言っていた」ち...RE・かの世界この世界:035『穴の向こうから』

  • 銀河太平記・150『児玉神社にて』

    銀河太平記・150『児玉神社にて』越萌マイ仮想モニターの前で腕を組んでいると、メイからメールが来た。――事変拡大の兆し、事業展開に意見ありや?――メイなりに気を使っているんだと、キーボードに手をかざして止めた。返事を打つには、まだ決心が固まっていない。越萌姉妹社の共同経営者としても、在野の立場で時局を監視する本来の任務からも、軽々に動くことはできない。西之島を護らなければならないのは言うまでもない。西之島のパルス鉱、特に近年発見されたパルスギは、人類に初めて恒星間旅行を可能にする新エネルギーだ。二百年前の『宇宙戦艦ヤマト』以来、人類の見果てぬ夢であったワープ航法が実現するだろう。兵器に組み込めば、核兵器以来の革命的兵器になる。もし、独占する者が現れたら、地球はおろか、まだ見極めても居ない銀河の半分を手にす...銀河太平記・150『児玉神社にて』

  • 宇宙戦艦三笠47[小惑星ピレウス・4]

    宇宙戦艦三笠47[小惑星ピレウス・4]修一ジャングルのいくらも離れていないところにテキサスは着陸していた。「こんな近くで、どうして探知できなかったんだろう?」クレアが、半ば不服そうに腕を組む。「三笠の倍の航路をとって、惑星直列になるのを待ってピレウスに来たんだ。三笠程じゃないけど、レイマ姫が時間をかけてステルスにしてくれたから」「他のアメリカ艦隊は?」俺が艦長として聞くと、ジェーンは微妙に視線を外した。「大規模な戦闘になることが避けられないので戦略的に撤退。で、テキサスだけが大回りしてピレウスに着陸したんだ、三笠と連携して作戦行動をとるためにね。日本とは集団的自衛権を互いに認め合っているから、合理的な判断だよ」「……アメリカ人が自信満々で言う時は、どこかに嘘か無理があるんだよな。要はアメリカが全面撤退した...宇宙戦艦三笠47[小惑星ピレウス・4]

  • RE・かの世界この世界:034『迫りくるシリンダー連結帯!』

    RE・かの世界この世界034『迫りくるシリンダー連結帯!』ブリ…………大きくなった?顔を洗って、やっと気づいたケイト。「やっと気づいたのか」「うん……なんてのか……雰囲気はちっとも変わってないから、気づくのが遅れたみたい」「いろいろあるのだ、この世界では。おまえだって……」「あたし?」「さっさと朝食をとれ、食べたら、早々に出立するぞ!」チーズを挟んだだけのライ麦パンを投げると、もう歩きはじめるブリ。「ちょ、食べる時間くらいちょうだいよ!」「これより先はクリーチャーどもの巣窟、寝坊助の朝食などにかまって……などおれぬ」「ブリの言う通りだな、気配がする……」月の光の中、ツインテールを解いたり結ったり。その戒めのことやら主神オーディーンのこと、わたしとケイトの事情なども知っている様子のブリに聞いておきたいことも...RE・かの世界この世界:034『迫りくるシリンダー連結帯!』

  • くノ一その一今のうち・44『まやと朝ごはん』

    くノ一その一今のうち44『まやと朝ごはん』気が付くと相変わらずの真っ暗。でも、瞬間で分かった。ここは甲府城の地下ではない…………昨日訪れたばかりの甲斐善光寺の戒壇巡りの中だ。忍者の五感は常人の倍は鋭い。特に肌感覚と嗅覚は数倍の鋭さがある。例え同じ闇の中に居ても、肌で感じる空気とニオイが違うんだ。善光寺の戒壇は人の出入りが多く、その出入りによって、寺院特有の抹香や木の匂いが混ぜられて独特なんだ。たった今まで居た甲府城の地下にはそれが無い。それに、あれだけ押し寄せてきた水のニオイや土砂の埃臭さがまるでしない。――気が付いたか――――どうして、善光寺の戒壇?それに!?――そうだ、意識を失ったのは課長代理に当身をくらわされたからだ。――あれは佐助の幻術だ――――あの謝恩碑の、すごい勢いで流れ出した水が?――――あ...くノ一その一今のうち・44『まやと朝ごはん』

  • 宇宙戦艦三笠46[小惑星ピレウス・3]

    宇宙戦艦三笠46[小惑星ピレウス・3]修一その人は、ゆっくりと近づいてきた。近づくにつれて知っている人だという気がしてきた。だが、分かるのは知っているという気持ちだけで、肝心のどこの誰であるかは分からない。まるで、夢の中で出会った人のように、その人に関する記憶はおぼろの中だった。「みなの衆、お元気であっただがぁ?」その訛言葉で思い出した。暗黒星団のレイマ姫だ(゚Д゚)!。レイマ姫、どうして……クルーの誰もが混乱した。ナンノ・ヨーダから姫の事を託され、アクアリンドを発つまでは姫の記憶は有った。そして、虚無宇宙域ダル……いや、アクアリンドの海を離水した時には、姫の存在はきれいに忘れてしまっていた。それが今、その姿を、訛った声を聞いて忘れた夢を思い出したようにレイマ姫のあれこれが思い出された。「もうすわげね。ア...宇宙戦艦三笠46[小惑星ピレウス・3]

  • RE・かの世界この世界:033『ゆるキャン△とツインテールの戒め』

    RE・かの世界この世界033『ゆるキャン△とツインテールの戒め』無辺街道の真ん中に至り、五十坪ほどの草原でキャンプを張った。ブリが魔法でテントを出してくれた。「キャンピングカーがいいのにぃ」ケイトが口を尖らせる。「もんく言うなあヽ(`Д´)ノ!」「いいじゃないか『ゆるキャン△』の雰囲気で、わたしは好きだぞ」「あ……そう言えばそんな感じ」ケイトは暗示に弱い。『ゆるキャン△』の雰囲気に納得させてキャンプ飯。食べ終わると、とても『ゆるキャン△』的な境遇ではないことが夜露と共に沁みてくるので、そそくさと寝ることにする。少しは微睡んだが、なんせ一人用のテントに三人。体が痛くなってくる。それでも露天よりはましと膝を抱えると、テントの隙間からこぼれ入る月光が頬をくすぐって目が覚めてしまう。傍らではケイトが女を捨てたよう...RE・かの世界この世界:033『ゆるキャン△とツインテールの戒め』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・011『茶筒の檻の正体』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記011『茶筒の檻の正体』「これはガスタンクだわよ」茶筒の檻の写真を見ると、老眼鏡もかけないで、あっさり言った。「だって、お祖母ちゃん、こっちのは中身が無いんだよ、ただの檻だよ!」証明写真を撮りに行った日の檻だけになった写真も見せて説明する。「昔はガス圧が足りないとかで、あちこちにガスタンクがあってね、溜めておいて少しずつ流したり、ガスを融通しあったりしたとか。それで、ガスが少なくなったら縮むんだよ」「ええ、ほんとう!?」「ガス会社に勤めていたわけじゃないから専門的なことは分からないけどね、みんな、そう思ってたよ」「な~んだ……」「そんなのググったら出てくるでしょ」「んなの、いちいち検索しないよ。それに、茶筒の檻だって思ってたし。ひょっとしたら、ガンダムとかエヴァの格納...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・011『茶筒の檻の正体』

  • RE・かの世界この世界:032『無辺街道半ば』

    RE・かの世界この世界032『無辺街道半ば』こんなやつでも街道の主なんだろう。魔物やクリーチャーに出くわさない。まあ、無辺街道程度の化け物なんか屁でもないんだけど、バトルの度に足を止められるのもかなわない。しかし「ブリのお蔭だな」なんてことは口にしない。誉めたりお礼を言ったりすれば、見た目四五歳の幼女にしか見えないブリは見かけ通りに「ニヘヘヘ」とか笑っていい気になるのに違いないからだ。こいつがいい気になったら、プラウダ高校のカチューシャよりも鼻持ちならないに違いない。タタタタブリがいきなり駆けだした。駆け出して、そのまま消えてくれてもいいんだけど、また、シリンダーとかの化け物に出くわすのも嫌だ。ちょっと待ちゅのだ!言おうとしたら立ち止まり、ピョンとジャンプして両手を広げて振り返った。「ここが無辺街道の真ん...RE・かの世界この世界:032『無辺街道半ば』

  • せやさかい・393『江戸川アニメの危機・2』

    せやさかい・393『江戸川アニメの危機・2』さくらその三時間後、うちは真鈴先輩に連れられて都内のスタジオに着いた。ちなみに移動手段は、車⇒飛行機⇒車パムアフレコスタジオやから、ドアはスポンジケーキで出来てるんちゃうかいうくらいに小さい音で閉まった。ブン音がしたわけやないけど、雰囲気としては『ブン』という感じでスタジオ中の人らの首がうちに向けられる。ほぼ全員の目ぇが血走ってる。「や、やあ、急なことで、めんごめんご(^▽^)!」宗武真監督一人がハイテンションの笑顔。他に、見覚えのある制作進行さんやら脚本さんやらプロデューサーさんやら……それ以外は、見覚えのないスタジオのスタッフさんやらが顔を引きつらせてる。「おはようございます……て、もう昼やけど、ほんまにうちで間に合うんですか(^△^;)?」「だいじょぶだい...せやさかい・393『江戸川アニメの危機・2』

  • 宇宙戦艦三笠45[小惑星ピレウス・2]

    宇宙戦艦三笠45[小惑星ピレウス・2]修一「間もなく完全惑星直列。一時間でピレウスに着けば、見つかる可能性はないわ」舵輪を握りなおして樟葉が呟く。俺たちは、完全に惑星が直列になるのを待っていた。それが今、グリンヘルド、ピレウス、シュトルハーヘンの三ツ星が串刺し団子のように一列になりかけている。惑星直列に成れば、三つの惑星の磁場が影響して直列の垂直方向に盲点ができるらしい。一番発見されにくい瞬間だ。「最大戦速10分。あとは慣性速度でピレウスに到達」「周回軌道に入ったら発見されてしまうわ」「周回軌道は1/6周で、ピレウス火山風上の森の中に着陸」「針の穴に馬を通すようなものね」「樟葉の腕を信じてるよ……」「横須賀に帰ったら、ホテルのスィーツバイキングおごりね……クレア、目的地までアナログでいくから」アナログ……...宇宙戦艦三笠45[小惑星ピレウス・2]

  • RE・かの世界この世界:031『無辺街道の眠り姫・2』

    RE・かの世界この世界031『無辺街道の眠り姫・2』寝た子を起こすな……。言った時は遅かった。ケイトがツインテールのお尻を爪先でツンツン。プギャーーー!アニメ調の悲鳴を上げて、ツインテールは地上五メートルくらいに跳び上がった。「な、なにやちゅ!?気配を消して機嫌よく昼寝をしておりゅところを!」「と、飛んだ!」羽もないのにホバリングしているのに感心。ケイトは見かけによらず乱暴な反応をするツインテールにビビっている。「我は主神オーディンの娘(むしゅめ)にして無辺街道を統(しゅ)べるブリュンヒリュデなりゅじょ!狼藉は許さぬじょ!」「あ……えと……起こして悪かった。な、ケイトも謝れ」「あ、ご、ごめん」自分でチョッカイ出しておきながら、ちょっとそっけない。「わたしは剣士のテル、こっちは妹分のケイト。なんだかメッチャ...RE・かの世界この世界:031『無辺街道の眠り姫・2』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 111『柿食えば……』

    鳴かぬなら信長転生記111『柿食えば……』信長ごっくん一齧りした干し柿を呑み込むとキッチンのアレコレが消えて床だけになった。ドアがあったあたりに、小柄な人型の輪郭が現れる。この輪郭が人の姿をとったら干し柿どころではなくなるような気がして、もう一齧り。ムシャムシャムシャ…………けして急がない。美味いものを急いで食うのは下劣なことだ。茶人が言うところの一期一会だ。食べたいときが美味い時。何の用事か知らんが、ここで急く奴は小人だ。思い出す。こういう時、光秀はムスっと表情を殺して待っている。とたんに口の中にあるものまで不味くなる。サルなら笑顔になる。主が美味そうに食っているのが嬉しそうで、そして、美味そうに食っているのが羨ましくなってきて唾を飲み込み、それでも美味そうに食っていると、ついにはヨダレを垂らす。「お前...鳴かぬなら信長転生記111『柿食えば……』

  • 宇宙戦艦三笠44[小惑星ピレウス・1]

    宇宙戦艦三笠44[小惑星ピレウス・1]修一三笠は、用心しながらピレウスの衛星アウスの陰に回った。ピレウスは目的地だが、正体が分からない。それは覚悟の上だったが、グリンヘルドとシュトルハーヘンの中間に位置し、両惑星から絶えず監視されているに違いない。ピレウスの大気圏内に入ってしまえば、どうやらピレウスが張っているバリアーで分からないようだが、そこにたどり着くまでの間に発見されてしまえば、元も子もない。「ピレウスが、グリンヘルドとシュトルハーヘンの間に入るのを待つ」「そうするだろうと思って、惑星直列になる時間を狙ってワープしておいた」俺と樟葉は艦長と航海長としてツーカーであった。「でも、ピレウスに敵が侵入していたらどうするんだ」天音が珍しく弱気なことを言う。普段は心の奥にしまい込んでいるが、父が中東で少女を救...宇宙戦艦三笠44[小惑星ピレウス・1]

  • RE・かの世界この世界:030『無辺街道の眠り姫・1』

    RE・かの世界この世界030『無辺街道の眠り姫・1』無辺街道は単調だ。シリンダーをやっつけた後のしばらくは思わなかった。小さな起伏はあるし、街道の両側は草むらやら林や小川やらの変化があって、ちょっとした遠足気分。途中、もう一度だけ空間が歪んでシリンダーの団体が現れたけど、単調な攻撃パターンに慣れてきて一撃で倒せるようになると、あまり姿を見せなくなった。「こんど現れたら、あたしがやっつけるのに!」言葉遣いまで女子化したケイトがぼやく。ただの強がりだとは分かっているんだけど「そうだね」と合わせておく。そうして五時間も歩いていると、慣れてきたというよりは飽きてきた。景色は相変わらず似たような、というか完全に同じ草むらやら林や小川の繰り返しで、たまのクリーチャーの出現も同じ。遊園地のアトラクションをグルグル回って...RE・かの世界この世界:030『無辺街道の眠り姫・1』

  • 銀河太平記・149『まなびや通りで綸旨を知る』

    銀河太平記・149『まなびや通りで綸旨を知る』越萌メイ週に一度は街に出る。事業が拡大して世界を相手にするようになってからは東京にいることが多くなって、渋谷、新宿、原宿、池袋。大阪の恩智本社に居る時はミナミが多い、ミナミっていうのは心斎橋や道頓堀界隈、アメ村や阿倍野。ランダムに近鉄線の駅で降りて気ままに歩くこともある。息抜きでもあるし仕事でもある。越萌姉妹社(こすもしまいしゃ)は総合商社のように思われているけど、出発はアクセを中心としたファッション小物。今では売り上げの10%ほどでしかないけど、本業はこれだと思っている。まあ、越萌姉妹社そのものがカモフラージュなんだけど、カモフラージュであるからこそ手は抜かない。街に出る目的は、若い人たちの興味や流行りの今と将来の方向を観察するため。観察というのは肩ひじ張っ...銀河太平記・149『まなびや通りで綸旨を知る』

  • 宇宙戦艦三笠43[宇宙戦艦グリンハーヘン・5]

    宇宙戦艦三笠43[宇宙戦艦グリンハーヘン・5]修一「ミネアさん、無理するのはよそうよ」ミカさんの言葉に、ミネア司令は微かにたじろいだが、それはミカさんにしか分からなかった。俺たちは、ミネアがミカさんの挑発に一歩前に出たようにしか見えなかった。「そうやって、なにかあると、いつも一歩前に出てしまうのよね」「なに……!?」ミカさんは、ミネアの厳しい視線と言葉をサラリと躱して言葉を続けた。「グリンハーヘンというのは悲しい名前ね。グリンヘルドにもなれずシュトルハーヘンにもなれない人たちのアイデンティティー。両方の母星から疎外された人たち。二つの母星は、地球侵略については共同戦線を張っているけど、内心では信じあっていない。だから、二つの母星の間に生まれたあなたたちは疎外され、軍の中でも、遊撃隊でしかいられないんでしょ...宇宙戦艦三笠43[宇宙戦艦グリンハーヘン・5]

  • RE・かの世界この世界:029『無辺街道のシリンダー』

    RE・かの世界この世界029『無辺街道のシリンダー』ペギーの店を出てしばらく行くと、すっぽりと草原が落ち込んでいた。ここまでの『始まりの草原』を山の手だとしたら、そこから本格的な関東平野が広がっているような感じ。例えば、本郷あたりから東に進んで日暮里当たり。山の手の端っこから下町を眺めたようなところに出てきた。と言っても眼下に荒川区の下町の賑わいがあるわけではない。ザックリと台地から平地への境目に来たと言うことだ。歩いてきた道は、その境目を下って川のように北東に伸びている。「無辺街道と言うらしいわね」コクンウィンドに表示された名前を言うと、ケイトは頬を強張らせながら頷いた。女子化したことで気弱になったのか、気弱さの為に女子化したのか、最初の意気込みはどこへやらだ。まあ中二病の空元気なんて金魚すくいのポイ(...RE・かの世界この世界:029『無辺街道のシリンダー』

  • せやさかい・392『江戸川アニメの危機・1』

    せやさかい・392『江戸川アニメの危機・1』さくら春、夏、冬の三つの休みで一番ええのんは春休み。気候はええし、宿題もないしねぇ~。その春休みにはまだ間ぁがあるけど、春休みの予告編か体験版かという感じの麗らかな日曜の朝。朝食と、後片付けの手伝い、本堂やらの掃除も早々と終わって部屋に戻る。「ちょ、じゃま」ニャブタネコのダミアを跨いで、ベッドの上に寝転がる。まあ、朝のルーチン終わって一休み……で、寝てしまう(^_^;)「そうだったんだ!」留美ちゃんの声で目が覚める。時計を見ると三十分過ぎてた。「え……なにがそうだったん?」「あ、ごめん、起こしちゃったね」「ううん……なに調べてたん?」留美ちゃんはパソコンで、なにやら調べてる最中。留美ちゃんは、時間を大切にする子ぉで、ボンヤリとネットサーフィンとかはせえへん。「ほ...せやさかい・392『江戸川アニメの危機・1』

  • 宇宙戦艦三笠42[宇宙戦艦グリンハーヘン・4]

    宇宙戦艦三笠42[宇宙戦艦グリンハーヘン・4]修一「いったい、どんな仕掛けになってるのだ!?」前の壁が消えて、ミネアが怒りに震えている。「仕掛けも何も、クルーは全員ここに居るし、三笠は大破したままだ」「……なにか隠している。三笠と君たちの情報は全て取り込んだけど、こんな能力が隠されているなんて分からなかった。手荒なことはしたくなかったけど、もう容赦しない!」ミネアが手を挙げると、残りの三方の壁が消えて、バトルスーツに身を包んだグリンハーヘンの兵たちが100人ほど現れた。「情報が得られれば、それでいい。本当のことを言うまでだ、一人ずつ死んでもらう……まずは、アナライザーのクレアから。クレアは本当の人間じゃない。ボイジャー1号が擬態化しただけのガイノイド。最初の見せしめにはちょうどいい……構え!」ガチャリ!1...宇宙戦艦三笠42[宇宙戦艦グリンハーヘン・4]

  • RE・かの世界この世界:028『ペギーの店・2』

    RE・かの世界この世界028『ペギーの店・2』テルキは剣士レベル1、ケイトは遠距離攻撃の弓兵レベル1がいいでしょ。エフェクトが満開の花火のようになって、それがチラチラと煌めきながら消えていくまでの十秒ほどで、ペギーさんは属性と装備を決めてしまった。「あ、えと、装備はともかく、どうしてIDネームまで知ってるんですか(^_^;)?」「ビミョーに間違えてるし……」「そのナリでケントはないでしょ、女の子らしくケイト。装備は、これよ……」ペギーさんが指を振ると、目の前にトルソーに着せた装備一式が現れた。わたしのは、チュニックに皮鎧。ベルトにはタガーが挟まれ、ソ-ドはレイピアのように細身だけど実用本位で、鞘も柄も鉄地剥き出しの鈍色だ。ミニのアーマースカートが付いていなければ、男性用と言われても分からない。ケント、いや...RE・かの世界この世界:028『ペギーの店・2』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・010『証明写真を撮りに行く』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記010『証明写真を撮りに行く』……ブラウスだけにしとく。そう言うと、お祖母ちゃんは上着とボータイを紙袋に入れてくれる。「そうだね、フル装備は入学式までとっておこう」「うん、一式持つとけっこうな量だからね……じゃ、言ってきます」ブラウスの上にカーディガンひっかけ、下駄箱の上のローファーに――キミも入学式の本番でね――と一撫でして、いつものスニーカーを履く。「ってらっしゃい……」半身で手を振ってキッチンにとって返すお祖母ちゃん。糠漬けをするんだって夕べから張り切ってたんだけど、新品の制服にニオイが移っちゃいけないって待ってくれていたんだ。コンクリの『M』の標を確認して一歩踏み出すと『戻り橋』が現れる。いちど写真に撮ろうかと思ったけど、あっちの世界に行くのを見られるわけには...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・010『証明写真を撮りに行く』

  • 宇宙戦艦三笠41[宇宙戦艦グリンハーヘン・3]

    宇宙戦艦三笠41[宇宙戦艦グリンハーヘン・3]修一「ええ!また偽物!?」樟葉が警戒心丸出しの表情で後ずさる。気づくと天音もトシも、クレアでさえ疑惑の目で俺を見て、ネコのままのネコメイドたちは「フーーーー!」って唸りながら毛を逆立てる。「どうやら、おまえらもホログラムの偽物に会ったみたいだな……」そう言いながら壁を叩く。ドンという音がして、みんな安堵のため息をつく。ちょっと、手が痛かったけどな(^△^;)。「こっちも体が触れ合うまでは、分からなかった」「触れるって、どんな風に?」「何気なく肩に手を掛けたら、素通しになった」「修一が、あんまりグダグダ聞くんで、おかしいと思って……」「オレといっしょだ。樟葉がくどかったから、おかしいと思った」「いっしょだ。あたしは頭をはり倒したら、空振りになった。修一は?」「キ...宇宙戦艦三笠41[宇宙戦艦グリンハーヘン・3]

  • RE・かの世界この世界:027『ペギーの店・1』

    RE・かの世界この世界027『ペギーの店・1』しばらく行くと道は二つに分岐していた。二つの道は、いずれも畦道ほどのものでしかないけど、左側の方は、少し進んだところに宝箱が見える。「あ、宝箱(^▽^)!」わたしの陰に隠れるように付いてきた健人は宝箱を開けようと駆け出した。「ちょっと待って」「え、なんでえ?」「序盤でミミック(宝箱に化けた魔物)ってことは無いだろうけど、大事な選択肢だと思う」インタフェイスを開いて調べてみる。――開ける前に難易度を選択すること、選択肢は、A・イージーB・レギュラーC・ハードD・ベリーハードE・ナイトメア――「どれにする?」「もちろん、イージー!サクサク進みたいからね♪」わたしの意見も聞かずにA・イージーをクリックする健人。ま、いいけど。パッカーーーン子ども向けアニメのようなエフ...RE・かの世界この世界:027『ペギーの店・1』

  • くノ一その一今のうち・43『甲府城・4・地下蔵』

    くノ一その一今のうち43『甲府城・4・地下蔵』広いと言っても地下のこと、単線のトンネルぐらいの、奥行きは三十メートルほど。中央に通路が通っていて、両側は重いものを置いていたのか枕木状に石が並んでいる。――レールを撤去した複線トンネル?――――いいや、石は三本ごとに間隔が広くなっている。三本の石を土台にして重いものを置いていたんだ。広い間隔はその重いものを動かすか中身を出し入れするための通路だ――そう言われて、三本を一組で見れば、図書館や大型書店の書架の配置にも見えてくる。本というのは書架にまとめると非常に重たいもので、床はしっかりと補強がしてあると聞いたことがある。――本よりも重たいものだ。三本の石を敷いているのは隙間を作って空気の流れをよくして、湿気やカビから守る必要があった……おそらくは木箱に小分けし...くノ一その一今のうち・43『甲府城・4・地下蔵』

  • 宇宙戦艦三笠40[宇宙戦艦グリンハーヘン・2]

    宇宙戦艦三笠40[宇宙戦艦グリンハーヘン・2]修一意識が戻ると独房に入れられていた。セラミックのような独房には、床も壁も継ぎ目が無かった。ただ、出入り口と思われるところだけが、薄い鉛筆で書いたように、それと分かる程度。独房内はベッドが一つあるだけで無機質この上ない。――お目覚めのようだね。体には異常はない。ドアを開けるから、通れる通路だけをたどって、わたしのところまで来てくれ――司令のミネアの声がした。通路に出ると、さすがに船の通路らしく、パイプや電路が走り、いたるところの隔壁はロックされていた。通れる隔壁は、あらかじめ解放されていて、十数回行き止まりに出くわして、やがて小会議室のようなところにたどり着いた。樟葉が先に来ていて、背もたれのない椅子に座っていた。「艦長のくせに、遅いのね」「通路で、ちょっと迷...宇宙戦艦三笠40[宇宙戦艦グリンハーヘン・2]

  • RE・かの世界この世界:026『風の向くまま』

    RE・かの世界この世界026『風の向くまま』わたしには、有るべきものは有って、有ってはならないものは無かった。「……健人だけがカミングアウトしたんだ」「カ、カミングアウト言うなあヽ(≧Д≦)ノ」腕をブンブン振って抗議する健人、エキサイトすればするほど黄色い声になるので何ともおかしい。「ちょ、慣れるのに時間かかるから、興奮しないでくれる……ハ、ハハハ、ハーーおっかしいよ~(≧∇≦)」「おかしくなんかない……(;_;)」「さて……」右手を上げてウィンドウを開いて、ステータスを確認する。HP:200MP:100属性:?持ち物:ポーション・5マップ:1所持金:1000ギル装備:始りの制服ポーションがエントリープライズのようだ。使ってみなければ分からないが、ポーションの効き目は250くらいのものだろう。いろいろやっ...RE・かの世界この世界:026『風の向くまま』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 110『風呂上がりに干し柿!』

    鳴かぬなら信長転生記110『風呂上がりに干し柿!』信長口に出して言ったことはないが、転生国家扶桑はなかなかのものだと思っている。信玄や謙信、生まれ変わっても天下を望む化け物ども。まあ、俺もその中に入っているがな。そういう化け物めいた者たちを美少女の姿で蘇らせ、来たるべき転生に備えさせる。なんで美少女なのか?一つは、その心身の軽やかさだろう。周囲の変化に敏感で、身体的にも心の上でも機敏に反応する。戦国大名というものは時に鈍重さも必要ではある。土岐氏を追い出すまでの斎藤道三、関東統一を成し遂げる前の北条早雲、「どうする!?」と自問自答してばかりだったころの家康とかな。だが、ここ一番、時至らば手のひらを返して行動に出る俊敏さ、心身の軽やかさを養うには十代の肉体と感性が適している。俺を含め戦国大名や英雄どもは、上...鳴かぬなら信長転生記110『風呂上がりに干し柿!』

  • 宇宙戦艦三笠39[宇宙戦艦グリンハーヘン・1]

    宇宙戦艦三笠39宇宙戦艦グリンハーヘン・1]修一虚無宇宙域ダルの正面はガラ空き。……の、つもりだった。ワープし終わってもしばらくは分からなかった。それとの距離が50万キロという、宇宙単位では目と鼻の先になって知れた。「正面50万キロに大型宇宙戦艦。ロックオンされている!」念のためCICに入っていたクルーがホッとして出ようとした時に砲術長の天音が叫んだ。「取り舵一杯。右舷シールド展開。砲雷戦ヨーイ!」ドゴーーーン!!天音と樟葉が、操艦と砲雷戦の用意をし終えたころに、着弾があった。「右舷装甲版、第四層まで破壊される。右舷舷側砲、全て損傷!」「次の砲撃には耐えられない」「そのまま旋回、左舷を敵に向けろ!」敵は、三笠が大破したことで一瞬の油断があった。旋回も舵の惰性だと思っている。「光子砲、雷撃、テー!!」「照準...宇宙戦艦三笠39[宇宙戦艦グリンハーヘン・1]

  • RE・かの世界この世界:025『あるはずのモノ ないはずのモノ』

    RE・かの世界この世界025『あるはずのモノないはずのモノ』バフッ!グニュ!二つの衝撃が同時にやって来た。うつ伏せに落ちたお腹側がバフッ!背中側がグニュ!わけがわからないが、コンマ五秒くらいで爽やかな香ばしさが鼻孔をくすぐり、露出した顔や手足にチクチク触るものがあって、乾草の上に落ちたのだと分かる。背中側のグニュ!重さがあるので健人が重なっているんだと見当はつくんだけど、感触が変だ。「ちょっと、健人……」反応がない、落下のショックで気絶しているようだ。しかし、下敷きにされた方がしっかりしていて、わたしをクッションにした健人が気絶しているのは面白くない。「ちょっと、どいて!」払いのけるようにして起き上がると、意識のない健人はサワサワと軽やかな音をさせて乾草の山から転がり落ちてしまった。「もう、だらしのない…...RE・かの世界この世界:025『あるはずのモノないはずのモノ』

  • 宇宙戦艦三笠38[虚無宇宙域 ダル突破]

    宇宙戦艦三笠38[虚無宇宙域ダル突破]修一「……遼寧が撃沈されたの」クレアから聞いてもあまり驚かなかった。まだ20年の仮死から覚めきっていないのかもしれない。遼寧……ウレシコワにとってはヴァリヤーグの撃沈は、その拠り所の喪失を意味する。つまり、ヴァリヤーグの船霊(ふなだま)としては存在できないことになる。日本の船は、たいがいどこかの神社の御神体を分祀する。だから、船が無くなっても、それぞれの神社に帰れば済む話だが、ウレシコワは、ヴァリヤーグが出来上がるにしたがって現れた船霊なので、船が無くなると居場所が無い。一瞬三笠の艦首にメーテル姿のウレシコワが見えたような気がしたが。それは遼寧に成り果てたヴァリヤーグに居場所が無くなって三笠にやってきたときの残像。三笠に来てからは、ニコニコとサモワールを沸かして機嫌よ...宇宙戦艦三笠38[虚無宇宙域ダル突破]

  • RE・かの世界この世界:024『 屋上 』

    RE・かの世界この世界024『屋上』ひょっとしたらと思った。健人が――屋上!屋上!――と言うもんだから、わたしの意識は屋上を排除していた。昔っからそうなんだけど、意識の底で、健人はヘタレで、言うことやること真逆のスカタンだと決めつけていたのかも。もし屋上に鍵穴があったら、生まれて初めてだけど健人に頭を下げよう。思ったんだけど……屋上ドアの鍵穴は合っていなかった。「くそ!」落胆……でも、鍵は開いていた。「開いてる!」屋上に飛び出したけれど、そこが異世界であるはずもなかった。午前九時前の屋上は、この件がなければ昼寝をしたいくらいの穏やかさだ。「へたり込むのは早い。屋上は広いんだ、もっと探そう!」ゲシ!ムギュッ!へたりこんだ健人を蹴ると、あっけなくカエルみたいにのびる。勢いでセーラーの上が捲れ上がる。「キモ、あ...RE・かの世界この世界:024『屋上』

  • 銀河太平記・148『及川軍平走る』

    銀河太平記・148『及川軍平走る』及川軍平舐められている!口には出さないが、電信文を握りつぶした手には力が籠り直ぎている。「お預かりします」手を差し伸ばした通信員の目は困惑している。漢明の攻撃を予想して、三日前から災害対策本部を設置している。軍事攻撃を受けても自治体が設置できる司令部は『災害対策本部』の名称しか付けられない。地方自治法に明記されているからだ。数千、数万の犠牲者が出る軍事攻撃を受けても、日本国政府は地震や台風と同じ『災害』という名称しか使わせない。砲弾やミサイルやパルス波が飛び交い、本部が血まみれの特設救急病院(世界の常識では野戦病院)を兼ね、五分おきに死者や再生不能のロボットが出ても、戦争と戦争を思わせる名称は使えない。元来が通産官僚だったから、役所の杓子定規や前例主義には慣れている。しか...銀河太平記・148『及川軍平走る』

  • 宇宙戦艦三笠34[20年の歳月]

    宇宙戦艦三笠37[20年の歳月]修一体が鉛のように重い……手足も痺れたように動かない……視界もボケている。でも、どうやら20年の眠りから覚めたんだ……そう理解するのに30分ほどかかったんじゃないだろうか。「オ!艦長の目が覚めたニャー!」一瞬ネコミミの女の子の顔が覗いたかと思うと、パタパタと音が続いて、ネコミミが四つに増えた。ネコの惑星……いや、耳以外は人間だし?「ウフフ、寝ぼけているニャ」「可愛いニャ」「おひさニャ!」あ……シロメ……クロメ……チャメ……ミケメ……?「おーい、はやくはやく、艦長目覚めたニャ(^▽^)/」あ……パタパタパタ……ネコメイドたちだと認識できた瞬間、四人とも誰かを呼びに行く気配。プシュっと音がしてカプセルの蓋が開く、恐る恐る上体を起こし、首をひねって息を呑んだ。え……!?「もう、大...宇宙戦艦三笠34[20年の歳月]

  • RE・かの世界この世界:023『8時58分 わたしのリアル』

    RE・かの世界この世界023『8時58分わたしのリアル』こうなったら屋上から飛ぶしかないのかも……学校中を捜してもピッタリの鍵穴は見つからず、昇降口の階段でヘタってしまう。ヘタってしまうと、さっきまでの勢いはどこかに行ってしまって、わたしの呟きにギクッとする健人。「もう飛ぶ気も無くなったんでしょ?」「ん、んなことねー」熱しやすく冷めやすい健人、これ以上言うと、このまま家に帰って布団をかぶってしまいそう。とりあえず……お互い呼吸を整えてからだと口をつぐむ。無人の昇降口に、せわしない二人のブレスだけが際立つ。ダイブは、三年に一度、学校で七人だけが許される。この世界は、わたしが寺井光子として存在していた世界に酷似しているけど、根本のところが違う。この世界は対応する異世界と対になっていて、異世界が混乱すると、その...RE・かの世界この世界:023『8時58分わたしのリアル』

  • 宇宙戦艦三笠36[虚無宇宙域 ダル・2]

    宇宙戦艦三笠36[虚無宇宙域ダル・2]修一20パーセクワープしたつもりが、わずかに0・7パーセクで停まってしまった。つまり、直径1・5パーセクある虚無宇宙域のど真ん中で立ち往生してしまったわけだ。――20パーセク行ける出力で、たった0・7パーセクしか進めないのか!?――さすがに言葉もなかった。「非常電源で、艦内機能を維持するのが背一杯です。もう三笠は一ミリも動きません」機関長のトシが肩を落とした。他のクルーたちも元気は無かったが、俺の決定を責めるような空気は無かった。ダルを抜けなければ迂回する以外に手立てがないが、迂回すれば、待ち構えているグリンヘルドとシュトルハーヘンとの戦いは避けられない。20万の敵を相手にしても顎が出ていた。推定100万の敵艦隊に抗する術は無いのをみんな知っているんだ。「もう20パー...宇宙戦艦三笠36[虚無宇宙域ダル・2]

  • RE・かの世界この世界:022『鍵穴はどこだ!?』

    RE・かの世界この世界021『鍵穴はどこだ!?』え、これが……?涙を拭いながら、わたしの手を見つめる健人。そのまま手肌クリームのCMに使えそうなほどきれいな手に感心したのでもなく、わたしの手相に世界の運命を見たわけでもない。わたしの手の平に載っている、なんの変哲もない真鍮製の鍵に感動しているんだ。鍵に触ろうとした指はまだ涙に濡れている。こういう感情と好奇心の起伏は子供なんだけど、健人の憎めない所でもある。「真鍮の鍵って珍しいよ」「そう言えば……」いまどき真鍮製の鍵なんて、昭和、それもアルミサッシとか無い時代の木造校舎の窓とか住宅の玄関とか、木製ロッカーとかでしかお目に掛かれない。アニメとか昔の映画とかで観る感じ、例えば『トトロ』のさつきの家とか『けいおん!』の桜が丘高校とか。何の変哲もないと感じたのは、自...RE・かの世界この世界:022『鍵穴はどこだ!?』

  • せやさかい・391『ヤマセンブルグの卒業式』

    せやさかい・391『ヤマセンブルグの卒業式』さくら前回は飛行機の他に鉄道を使ったり、途中で泊まったりして四日もかかったけど、今回は大回りしたとはいえ、なんとか二十時間ほどでヤマセンブルグに着いた。全行程の操縦を覚悟してたソニーやけど、操縦桿を握ってたのは離陸の時と途中の四時間余り。今回の操縦は、操縦技能の昇級テスト兼ねてるんやとか。大半はお馴染みのジョン・スミスのおっちゃん。おっちゃんは、ソニーの昇級テストの教官と検定官も兼ねてるんやとか。ジョン・スミスは領事館の勤務を解かれて情報局に戻ってたんやけど、ソフィーが頼子さんと共に国に戻ると決まった時に、また領事館に戻ってきた。ヤマセンブルグはNATOの中で一番小さな国やけど、大国に任せっきりにすることなく、積極的に動いてるらしいです。空港には、頼子さん自身と...せやさかい・391『ヤマセンブルグの卒業式』

  • 宇宙戦艦三笠35[虚無宇宙域 ダル・1]

    宇宙戦艦三笠35[虚無宇宙域ダル・1]修一宇宙戦艦三笠35[虚無宇宙域ダル・1]修一アクアリンドのクリスタルは、クレアが送った情報をもとに三笠でレプリカをつくって交換した。「組成や形態がいっしょだから、80年たたなければ偽物とは気づかないわ」クレアも、レプリカを作ったトシも自信満々だった。本物は、三笠の二つある機関の真ん中に置かれた。仮にも一つの星の運命を握っていたクリスタルだ、いまは眠っているような状態だが、数百年の記憶を取り戻し稼動し始めた時に巨大なエネルギーを放出する恐れがあった。三笠の中央に置かなければ、いざと言う時に、船のバランスを崩すおそれがあるという僧官長の意見に従ったものだ。「微弱だけど、クリスタルから波動が出るようになった。なにか感じているみたいだよ」トシがインジケーターを指さした。「さ...宇宙戦艦三笠35[虚無宇宙域ダル・1]

  • RE・かの世界この世界:021『ダイブの鍵』

    RE・かの世界この世界021『ダイブの鍵』ドッシーーーーーン!!いまどきアニメでも使わないような擬音が鳴り響いて倒れた。アイターーー!!これまた戦車アニメの戦車隊長が吶喊直後に撃破された時のような悲鳴が出た。「ごめんなさい、急いでたもんだから」スカートを掃いながら立ち上がって絶句した。「け、健人!なに女装してんのよ!?」「イ、イテーなあ……くそ、食べかけのトーストがあああああ、邪魔すんなよテル!」砂まみれのトーストを投げ捨て、ズレたボブのウィッグを直しながら健人は行ってしまった。「なによ、意地も誇りもないってかあ!舐めてんのか照姫を!」ドラゴンボールの敵役みたく仁王立ちしたわたしはテル、小早川照姫(こばやかわてるき)と名乗るようだ。前回は三十年前の世界にデフォルトの自分で飛び込んだけど、今回は、その上に上...RE・かの世界この世界:021『ダイブの鍵』

  • 宇宙戦艦三笠34[水の惑星アクアリンド・4・水に流す]

    宇宙戦艦三笠34[水の惑星アクアリンド・4・水に流す]クレア「この星では、全てのものの寿命が80年しかないのです」長い沈黙のあと、僧官長は覚悟を決めたように言った。「どういう意味でしょう……」「クレアさん、御神体のクリスタルに手を触れて、アナライズしてくださらんか」全て見通している僧官長は、クレアを偽名ではなく、本名で呼んだ。そしてクレアのアナライザーとしての役割も知った様子たった。「……この星、80年以上の寿命を持っているのは、星本体と、僧官長さまだけです……なんということ……海の中には四つの大陸が沈んでいる」「「え?」」「待って、続きが……」「やはり、続きは、わたしからお話しましょう。辛いことを先延ばしにしたり人任せにすることはアクアリンド人の悪い癖です」僧官長は後ろ手を組んで、クリスタルにも修一やわ...宇宙戦艦三笠34[水の惑星アクアリンド・4・水に流す]

  • RE・かの世界この世界:020『みっちゃん飛んで!』

    RE・かの世界この世界020『みっちゃん飛んで!』あ………中臣先輩は息をのんだ。切り揃えた前髪で眉が隠れ表情が読めない。中臣先輩は表情の核心が眉、特に眉頭に現れる人なんだ。ピクリとしたかと思うと前髪で隠れてしまった。眉を見せてください……とも言えずに志村先輩に目を向ける。キリリとしたポーカーフェイスで、さっきまでの陽気さが無い。次の任務は、さらに大変そうだ。モニターには、どこにでもある一軒家が映っている。二階建てで、カーポートと十坪ほどの庭が付いている。ラノベの主人公が住んでいそうな中産階級の見本のような家。今にもトーストを咥えた女子高生が飛び出してきそうな雰囲気。そして、最初の角を曲がったところで男の子とぶつかって――失礼な奴!――お互いに思う。そして学校に着いたら、そいつが転校生でビックリして、そこか...RE・かの世界この世界:020『みっちゃん飛んで!』

  • せやさかい・390『卒業式のサプライズ』

    せやさかい・390『卒業式のサプライズ』さくら…………と、いろいろな出来事やさまざまな思いがありましたが、無事に目出度く卒業の日を迎えることができました。こんな身勝手な三年生に付いて来てくれた在校生のみなさん、導いてくださった先生方、職員のみなさん。お父さんお母さん、家族のみんな。商店街を始めとするご近所の方々。そして、入学以来ここまで見守り、我々の魂を磨いてくださったマリア様に感謝の誠を捧げ、卒業の言葉といたします。2023年2月24日卒業生代表田中真央シーーーーーーーーーーーンパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!さすがは百武真鈴!いや、卒業生代表田中真央!式場の全員、聞きほれてしもて、とっさには拍手がでけんと、シーンとしてしもてからの大拍手!三年に及...せやさかい・390『卒業式のサプライズ』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・009『宮田博子』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記009『宮田博子』ジャンボジェットの子だ!ほら、合格者説明会が終わって帰ろうとしたら、空見上げててぶつかってきた子。「どこの航空会社のなんですか?」「え、ああ……家にあったの持ってきただけでぇ」「ロゴとか……無いのは、きっと特別製なんですねえ、聞いたことあります。ベテランのスチュワーデスは特注のキャリー持ってるって!へーー、いいなあ、カッコいいなあ」「アハハ(^_^;)」「え、ひょっとして椅子になるんじゃないですかあ!?」「え、椅子?」「ちょと、失礼……ここを、こうやって……」カチャカチャ「ほら!」「あ、ああ……」これは究極のババキャリーだ……ほら、くたびれたお婆ちゃんが、公園とかでキャリーを椅子にして寛いでる。若者は絶対持ち歩かない奴だよ(-_-;)。「スゴイです!...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・009『宮田博子』

  • 宇宙戦艦三笠33[水の惑星アクアリンド・3]

    宇宙戦艦三笠33[水の惑星アクアリンド・3]修一あくる日は視察と親善訪問でいっぱいのスケジュ-ルだった。アクアリンドのIT施設、生命科学研究所、老人介護施設、交通システム管理センター、軍の閲兵、そして、たまたま日が重なった三年に一度の高校総合文化祭の観覧と目白押しだった。――やっぱ、この星おかしい――クレアの言葉が、直接頭に飛び込んできた。老人介護施設の訪問が終わろうとした時だった。「この星の歓待ぶりは格別だね……」俺は、会話の流れとしては自然な一言を発した。次の瞬間、俺とクレアはデコイと入れ替わった。昨夜、クレアとバーチャル映像を監視カメラなどにかましながら決めた合言葉だった。クレアが用意した修一とクレアそっくりのデコイと瞬時に入れ替わっていた。瞬間各種のカメラに微弱なノイズが入るが、気が付く者はいない...宇宙戦艦三笠33[水の惑星アクアリンド・3]

  • RE・かの世界この世界:019『新しい任務が表示された』

    RE・かの世界この世界019『新しい任務が表示された』……白い闇の真ん中がドーナツ状に凝縮していき、二呼吸するほどの間にUFOのような発光体になった。拉致られる!?キャトられる!?異世界にとばされる!?弾けるように妄想が膨らむと、リング状の蛍光灯だと合点がいく。どこかで見たような……考えていると霧が晴れるように白い闇が消えていき、部室の天井だと分かる。ウ……分かると同時に背中に引力を感じる。何のことは無い、見えているのが天井ならば背中は床だ。床方向に引力があるのはあたりまえ。どうも、わたしの感覚は視覚的なようだ。気が付いたか?ギクッとした。視界の左にピーターパンみたいな志村先輩の心配顔。ホッと吐息が漏れる。右側にかぐや姫みたいに中臣先輩。突然見えたみたいだけど、さっきから居たんだろう。私の感覚は聴覚的?「...RE・かの世界この世界:019『新しい任務が表示された』

  • くノ一その一今のうち・42『甲府城・3・夜の稲荷曲輪』

    くノ一その一今のうち42『甲府城・3・夜の稲荷曲輪』その深夜、改めて天守台に潜んでいる。昼間は中断した。観光客に化けた敵がうろついていたからだ。眼下の稲荷曲輪では監督やスタッフたちが来週撮影予定の深夜ロケの下調と準備に余念がない。「昼間の続きだ」声まで違う。今は、課長代理の服部半三そのもので、軟弱脚本家三村紘一の片鱗も見せない。「稲荷櫓が再建されたのは、再建工事にことよせて信玄のお宝を探すためだ」「木下が工事を請け負ったんですか?」「いや、甲府の地元にもお宝を狙っている者がいる」「地元にもですか?」「見ろ、あの謝恩碑」本丸の対角線方向に聳える謝恩碑はライトアップされて発射の時を待っているロケットのようだ。「あの明治の大水害でも、信玄の埋蔵金には手を付けなかった。まあ、探しても容易に見つかるお宝ではないがな...くノ一その一今のうち・42『甲府城・3・夜の稲荷曲輪』

  • RE・かの世界この世界:018『相席』

    RE・かの世界この世界018『相席』B駅へ向かうために下りのホームへ。B駅は下りの先頭方向に改札があるので、ホームの前の方、一両目の印があるところに立つ。電車がやって来る上り方向を覗うと、三十年前のお母さんとお祖母ちゃんが現れた。同じ電車に乗るんだ。嬉しくなって少しだけ寄ってみる。――あの娘さんのお蔭ね――――そうね、クーポン券、今日が期限。気が付かなきゃ、そのまま帰ってた――お母さんがヒラヒラさせているのは令和でもB駅近くにあるBCDマートだ。昭和六十三年だったら新規開店で間もないころかな。素敵な靴が手ごろな値段で手に入るので有名。三十何年後のお母さんもちょくちょく利用しているご贔屓の量販店だ。ウキウキしているお母さんが新鮮で、わたしは、やってきた下り電車の一両隣の車両に乗った。連結部分のガラス窓を通し...RE・かの世界この世界:018『相席』

  • パペッティア・007『初めてのベース』

    パペッティア007『初めてのベース』晋三陸軍特務旅団のベースは首都の南にある。ベースは二十年前のヨミのファーストアクトで出来た巨大なクレーターの中に潜むように存在している。クレーターの直径は差し渡し三キロほどもあり、所狭しと対空兵器が並んでいる。中央にはベースのコアに通じる入り口があり、入り口はカメラの絞りのような構造になっていて、出入りするものの大きさに合わせて変化する。直径二十メートルほどに開かれた入り口を、夏子たちを乗せたオスプレイが巣に着地する猛禽類のように下りていく。バラバラバラバラバラバラバラバラ!絞りの上十メートルぐらいに差しかかると、とたんに爆音が大きくなる。元祖のオスプレイよりもプロペラの効率がいいんだろう、巻き起こした風圧は、あまり横には逃げず真下に圧を掛けている。絞りの周囲の排気ダク...パペッティア・007『初めてのベース』

  • 宇宙戦艦三笠32[水の惑星アクアリンド・2]

    宇宙戦艦三笠32[水の惑星アクアリンド・2]暗黒星団ロンリネス以上の歓待だった。アクアリンドは、夕刻の入港を指定してきた。船の入港は朝が多く、異例といえたが俺たちは素直に従った。二十一発の礼砲を鳴らすと、それが合図であったように、港街であり首都であるアクアリウムの各所から一斉に花火が上がり、花火には無数の金属箔が仕込んであって、それが他の花火や夕陽を反射して、ディズニーランドのエレクトリカルパレードの何倍も眩く、この世のものとは思えない美しさだった。三笠のクルーは正装して上甲板に並び、登舷礼の姿勢のまま美しい歓迎を喜んだりビビったり。「悪いけど、わたしは神棚にいるわね。この星の雰囲気、どうも肌に合わない」で、ミカさんを除く全員で上陸し、アクアリンドの大統領以下、この星の名士やセレブの歓迎を受けた。「いやあ...宇宙戦艦三笠32[水の惑星アクアリンド・2]

  • RE・かの世界この世界:017『なにかお困り?』

    RE・かの世界この世界017『なにかお困り?』無意識にポケットをまさぐる。分からない事があると脊髄反射でスマホを探してしまう。今は昭和63年だから、スマホはおろか携帯も存在しない、どうしよう……どうしよう……。意味も無く胸を押える。なんとも落ち着かない。スマホがあれば、A駅近辺の喫茶店で検索できる。それ以上にスマホを持っていないという現実を突きつけられ、とても不安になる。スマホ無しで、どうやって調べたら……。人に聞くしかない……至極当たり前の解決策が湧いてくるが、これが簡単なことじゃない。子どものころから見知らぬ人は不審者という決めつけがある。小学校入学時から防犯ブザーを持たされ、見知らぬ人に気をつけましょうと注意されてきた。当然世間の大人たちも子どもにものを尋ねるようなことはしない。路上でものを尋ねて警...RE・かの世界この世界:017『なにかお困り?』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 109『』

    鳴かぬなら信長転生記109『天照大神との交渉』信長ああ、やっと来たぁ!見かけは平手の爺が『本朝神仙図絵』で見せてくれた通りの天照大神の装束なのだが、機嫌の悪い時の濃(俺の女房)そっくりの不機嫌面で現れた。「大相国信長である」「ん?ダイショウコク?なにそれ?」「死んでから天皇にもらった称号だ、知らんのか?」「あ、官職名か、太政大臣のことだな。官職名なら上総介にしておけ」「上総介は桶狭間までだ。それに自称だぞ」「上総介の方がかっこいい」「かっこいいか、まあいいだろ。『やっと来た!』と言っていたが、俺が来るの知ってたのか?」「転生してきた者たちは大勢いるけど、この天照に会いに来たのは上総介が初めてなのじゃ。だから、そういう意味で初めてなわけさ」「ん?あっちゃんは『簡単には会えません』的なことを言っていたぞ。今日...鳴かぬなら信長転生記109『』

  • RE・かの世界この世界:016『喫茶みかど』

    RE・かの世界この世界016『喫茶みかど』「先輩!先輩なんですね!?」女神さまの声は中臣先輩だった!ほんの一時間足らずぶりなんだけど、海外のどこかで財布もスマホもパスポートも無くして知り合いに出会った感じ。『どうやら、とても難しい世界に行ってしまったようね』「はい、えと、わたしどうしたらいいんでしょう(;'∀')」『あのね……ちょっと待って……』電話の向こうでボシャボシャと話声、どうやら志村先輩と話し合っているようだ。『……わかった、うん……いい、みっちゃん。一つ課題を解決すれば、その世界から離脱できるの。いま、時美に探してもらってるから……うん、こっち?えと……みっちゃん』「はい」『駅一つ向こうに『みかど』って喫茶店があるの』「あ、A駅の方ですね」リアルでっていうか元の世界のA駅前で見かけたことがある。...RE・かの世界この世界:016『喫茶みかど』

  • せやさかい・389『三方さんの引き継ぎ』

    せやさかい・389『三方さんの引き継ぎ』さくら夜中に目が覚めた。なんやら、ヒソヒソと話声がする。ひょっとすると夢?以前も、夜中に話し声がして、それが夢やったことがある。十七年も生きてると、五千回ぐらいは夢見てる。せやさかい、夢やという予想はついた。横を向くと、留美ちゃんが幸せそうに寝息を立ててる。親友の幸せは、うちの幸せ。このまま寝てもええねんけど、夢の中のヒソヒソ話というのは、めっちゃ気になる。ニャゴニャゴ……耳を澄ますと、話声のひとつはダミアの声。もっかい薄目を開けると、ちょっとだけ部屋の襖が開いてて、その隙間に向かってブタネコとは思えん甘えた声でニャゴニャゴいうとおる。誰と喋ってんねん?お布団は目の下まで被って、心眼を凝らす……見えてきた。襖を素通しにして見えてきたのは、なんとマリーアントワネット!...せやさかい・389『三方さんの引き継ぎ』

  • 銀河太平記・147『待ち伏せ』

    銀河太平記・147『待ち伏せ』メグミズッボオオオオオン!ゴジラがうがいをしている最中にキングコングか何かに腋の下をくすぐられたらこうなるどだろうという勢いで海水が噴き出す。ドゴゴゴゴーーーン!洗鉱用の海水タンクを爆破して500トンの海水を一気に放出した!A鉱区の崖下を北に走っていた漢明兵がまとまって隘路の岩や崖に叩きつけられる。ロボット兵だから溺れることも無ければ、岩に激突しても死ぬわけでもない。しかし、文字通りの鉄砲水に翻弄されて転がる様は、お岩さんの手に掛かって洗濯機改造の皮むき機で皮を剥かれる芋のようだ。食堂なら、そのまま大きなザルに拾い上げられ、巫女服にタスキ掛けのハナによってスライスされたりザックリ切られたりしてお惣菜の具やフライドポテトになる。その巫女服のハナが崖の上で目覚まし時計のネジを巻く...銀河太平記・147『待ち伏せ』

  • 宇宙戦艦三笠31[水の惑星アクアリンド・1]

    宇宙戦艦三笠31[水の惑星アクアリンド・1]修一「両舷10時と2時の方向に敵艦体!」「距離4パーセク!」Jアラートみたいな警報とともに当直のクレアとウレシコワが叫んだ。「両舷共に10万隻、クルーザーとコルベットの混成艦隊、あと1パーセクで射程に入ります」「敵艦隊、共にエネルギー充填中の模様。モニターに出します」クレアとウレシコワが的確に分析し、報告を上げてくる。モニターには、敵艦一隻ずつのエネルギー充填の様子がグラフに表され、まるで、シャワーのようなスピードでスクロールされている。「全艦の充填には3分ほどだな。両舷前方にバリアー展開!」俺が命じたときに、砲術長の天音が遅れて駆け込んできた。「ごめん!ミカさんバリアーお願い!」天音は、濡れた髪のまま、いきなり船霊のミカさんに頼んだ。「天音、冷静に。ボタンぐら...宇宙戦艦三笠31[水の惑星アクアリンド・1]

  • RE・かの世界この世界:015『中島書店』

    RE・かの世界この世界015『中島書店』ネガを見ているようだ。むろん日の丸のネガが赤字に白丸なわけないんだけど、見事に赤白逆転なので、ネガの感じに見えてしまう。社務所の窓に宮司さんの後姿、一瞬足が動いたけど思いとどまる。日の丸以外は元の世界にソックリだけど、何が起こるか分からない。知り合いと接触するのは、ひとまず避けよう。神社を離れて駅の方に向かう。まずは自分の生活圏を見てみよう。それに、人通りの中に居た方が気が楽だし。途中、小学校の横を通る。そうだ、校舎の屋上に日の丸があったはず……見上げたそれは、やっぱり赤地に白丸だ。立ち止まっていると、下校途中の小学生に怪訝な目で見られる。エホン。軽く咳払いして、小学生とすれ違う。エホン。やつも咳払いして、ニタ~っと笑いやがる。こいつ、小悪魔かなにかか?構わずに先を...RE・かの世界この世界:015『中島書店』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・008『キャリーバッグ』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記008『キャリーバッグ』えーー!付いて来てくれるんじゃないの!?脳みそを経由しないで文句が口を突く。今日は諸々の書類提出やら手続き。でもって、教科書販売と制服の受け渡し!荷物がハンパない!学校でも――保護者同伴が望ましい――って言ってたし、とうぜんお祖母ちゃんが付いて来てくれると思ってた!「1970年だって特務はいるんだよ、まだまだ様子も分からないし、ウカウカ行くわけにはいかないわよ」「ト、トクム……」そうなんだ。お祖母ちゃんは特務ってとこに務めてたベテランの魔法少女だった。内勤ばっかりで、アップグレードもろくにやってない型落ちだけど、みなし公務員のMS(魔法少女)だった。警察よりも自衛隊よりも公安よりも内閣調査室よりもベールに包まれた秘密組織で、その存在は例え総理大...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・008『キャリーバッグ』

  • 宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]

    宇宙戦艦三笠30[グリンヘルドの遭難船・3]クレアエネルギーを注いであげると、エルマは話を続けた。「……グリンヘルドの人口は200億を超えて久しいのです」その一言は衝撃的だった。グリンヘルドもシュトルハーヘンも地球型の惑星で、大きさも大陸の面積も地球とほぼ変わらないことが分かっている。……とすれば、惑星としてのキャパは80億ほどが限界で、惑星全体として手を打たなければならないのは容易に想像がつく。「そこまで文明が発達しているのに、どうして人口の抑制を考えなかったんだ」修一艦長は当たり前な質問をした。わたしがボイジャーとして宇宙に出たころの地球は、まだ60憶ほど。現在は80億を目前に、人口の抑制を考え始め、その成果も出始めている。「その文明の発達が災いなんです。増えた人口は他の惑星に移住させればいい。なまじ...宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]

  • RE・かの世界この世界:014『』

    RE・かの世界この世界014『ああれ?』……戻って来たのかと思った。だって、同じ鳥居の前だよ。時間は……たぶん昼?鳥居も自分の影も真下にある。……爽やか……南中したお日様に猛々しさはない、お日様を直に見ることなんてできないけど、イメージとしてはニコニコと穏やかに笑っている感じ。これは春か秋?社務所に戻って聞いてみれば、現在(いま)がいつなのか分かる……でも、なにか憚られる。もう少し観察してからでないと、うかつには動けないという気がする。鳥居の陰から周囲を観察。神社の前には昔からのお屋敷街、見慣れた百坪や五十坪ほどが落ち着いたたたずまいで並んでいる。五月か十月ごろの鳥居の前……てことは学校行かなきゃ……でも日曜で休みとか?スマホでカレンダーを見ようと思った……え、このポシェット?いつものリュックじゃなかった...RE・かの世界この世界:014『』

  • せやさかい・388『おお、これが雛人形か!』

    せやさかい・388『おお、これが雛人形か!』さくら来週から学年末試験。せやさかい、こんなことしてる場合やないねんけど。「おお、これが雛人形か!」本堂に入るなり、ソニーが感嘆の声を上げた。「やっぱり、昔の人がやると飾りつけも違うわねえ!」留美ちゃんもカバンを下ろすのを忘れて感動。「こんな間近で見るのは初めて!」先週ペコちゃんとこで巫女服着でお神楽やった時と同じくらい感動のメグリン。今年は、檀家のお婆ちゃんらが飾りつけをやってくれた。なんでかいうと、一昨年飾りつけをやったとき、実は、いろいろミスしてたらしい。それでも婦人部のお婆ちゃんらは、今どきの子ぉらがお雛さんを大事にしてるいうことだけで感動してくれた。去年は流行り病でお雛さんどころやなかったしね。うちには、詩(ことは)ちゃんのと、お母さんのと二組のお雛さ...せやさかい・388『おお、これが雛人形か!』

  • 宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]

    宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]樟葉遭難船の女性クルーは衰弱死寸前だった。と言って、見たは目は健康な女性がうたた寝をしているようで、とてもそうは見えない。――残った生命エネルギーを、外形の維持にだけ使っていたようです――スキャンした彼女のデータを送るとクレアから答えがトシといっしょに返ってきた。「なんで、トシが来てるんだよ?」「クレアさんの意見で、三笠から携帯エネルギーコアを持ってきました。これを船の生命維持装置に取り付けて、この女の人を助けたらってことで。オレ、一応三笠のメカニックだから」「でも、グリンヘルドの船の中なんて、初めてでしょ。トシにできるの?」「フィフスの力で……うん、なんとかなりそう」トシは目をつぶって、調査船のメインCPとコンタクトをとり、船体の構造概念を知った。「トシ、ツー...宇宙戦艦三笠29[グリンヘルドの遭難船・2]

  • RE・かの世界この世界:013『時の神、空の神』

    RE・かの世界この世界013『時の神、空の神』世界の綻び……このわたしが?わたしは、ヤックンに告白させないことだけを願っている。告白させたら、冴子がブチギレる。ブチギレた冴子は鬼になって跳びかかって来る。昇降口の階段をもつれ合いながら転げ落ち、不可抗力とは言えわたしは冴子を殺してしまうんだ。冴子を殺したわたしは旧校舎の屋上に追い詰められ、飛び降りて死んでしまうんだ。それを回避したいために過去に戻っているんだ。先輩には悪いけど、自分のためなんだ。世界の綻びと言われても困る。「旅立たなければ、この半日が無限にループするしかないの。108回ループして分かったわ」「で、でも、この帰り道に冴子が告白するかもしれないし」「冴子は、そんな子じゃない」「……知っているでしょ、あの子はヤックンが告白してくれるのでなければ受...RE・かの世界この世界:013『時の神、空の神』

  • くノ一その一今のうち・41『甲府城・2』

    くノ一その一今のうち41『甲府城・2』え、わたしからですか?待ち合わせの稲荷櫓の前で落ち合うと「ノッチが想うところを聞かせて」と涼しい顔で言われる。三村紘一、いや、課長代理なんだから、なにか見通しがあってのことだとお昼ご飯もロケ弁一つで済ませた。もう一つや二つ食べたかったんだけど(忍者は食べられるときに食べておく=風魔流極意)、猿飛佐助たち木下の忍者たちとの戦いも予想される。食べ過ぎては体が重くなる。「僕なりに見えてきたこともあるんだけど、十分とは言えない。被っても構わないからノッチの感想を聞かせてほしいんだけどね」脚本家三村紘一として喋っているから優しいんだけど、課長代理服部半三としての狙いが潜んでいる。上忍として下忍を教育すると意味もあるだろう、ゴクンと唾を呑んで答える。「城はJRによって南北に分断さ...くノ一その一今のうち・41『甲府城・2』

  • RE・かの世界この世界:012『ループ』

    RE・かの世界この世界012『ループ』いちど帰宅してから神社に向かう。巫女神楽は三度目だけど、二度目が終わった時に心の糸が切れているので、形はともかく気持ちが入ってこない。日数が無いのですごく集中する。バイト同然の巫女仕事に力を入れてもと思われるかもしれないけど、わたしも冴子も、そういう性格だから仕方がない。左手に榊、右手に神楽鈴を持って、舞台中央で冴子と交差する。シャリン!トン!鈴を打ち振ると同時に、右足で床を踏み鳴らし、踏み鳴らした勢いのまま旋回して冴子と向き合う。勢いも良く平仄も合って、宮司さんも満足そうに微笑んでいる。三間(5・4メートル)向こうの冴子、軽く眉間に力が入って、それがとても美しい。――光子も美しいよ――冴子が目の光だけで言っている。――でも、わたし負けないから――そう続いて、さらに冴...RE・かの世界この世界:012『ループ』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 108『御山に登る』

    鳴かぬなら信長転生記108『御山に登る』信長ユッサユッサユッサ……腰の運びが小気味い。久々に太刀を佩いて山道を跋渉する。山路の緑鮮やかにして、渓流の流れわが心を洗わんとす、飛鳥山峡に鳴くは警蹕の声に似て、悠久の時を我に感得せしめ、もって、その天命を知らしめる……フ、言葉までが昔に戻りかけている。これが本来の姿とはいえ、熱田大神、いや、あっちゃんは寡黙に過ぎる。ゆうべ、俺の部屋のドアを叩いたあっちゃんは、いつになくシリアスだった。「なんだ、ご飯会はこれからが本番だろう」「少しだけ真剣な話があるのよ」「なんだ、そんなマジな顔をすると、まるで神さまのようだぞ」「…………」ジョークに付き合う風もなく、立ったまま間合いを詰めてきた。まるで、本能寺で首になって初めて会った時のような圧を感じる。あの時は、見下ろしながら...鳴かぬなら信長転生記108『御山に登る』

  • 宇宙戦艦三笠28[グリンヘルドの遭難船・1]

    宇宙戦艦三笠28[グリンヘルドの遭難船・1]樟葉――国境の長いトンネルを過ぎると、雪国だった。宇宙の底が白くなった――変なフレーズを口づさんで苦笑してしまった。「なんだ?」艦長席の修一が目だけ向けて聞いてきた。「ううん、こんな穏やかな宙域に出て、思わず出た感想。でも川端康成の借り物なんで、笑っちゃった」「雪国か……おれ読んだことないよ」「わたしは……」「ボクは……」「わっきゃ……」星団を抜けてホッとしたのか、わたしの独り言に応えてくれるんだけど、ほとんど同じ。元ボイジャーのクレアは、タイトルだけは知っていた。ボイジャーとして打ち上げられたときに、世界文学の中で、ただ一つ入っていた日本小説が、この『雪国』だったんだって。「素敵な書き出しですね。雪国の前に『そこは』なんて、余計な言葉を入れてないところがいいで...宇宙戦艦三笠28[グリンヘルドの遭難船・1]

  • RE・かの世界この世界:011『世界を助けて(^▽^)』

    RE・かの世界この世界011『世界を助けて(^▽^)』2000人助かると、時美のお母さんは別の人と結婚することになるの。中臣先輩は、学食でお蕎麦が売り切れだったらラーメンを食べるのというくらいの気楽さで言う。「時美には生まれて来て欲しいから、やっぱり震災の犠牲者は6000人」え?さすがに、ギョッとする。だって人の命、簡単すぎ……「ただいまあ(^▽^)」先輩が訂正すると、隠れん坊で最後まで隠れおおせた子どものように志村先輩が現れ、年表も元の姿に戻った。「いくつもの小さな変化を加えると、2000人助けた上で時美が生まれるようにもできるんだけどね、すごく難しい方程式を解くようにしなくちゃならない。たとえできたとしても、遠い将来に別の影響が出る」ヤックンの告白を無かったことにして、冴子を殺すことを回避していなけれ...RE・かの世界この世界:011『世界を助けて(^▽^)』

  • 銀河太平記・146『連隊長 胡盛徳大佐』

    銀河太平記・146『連隊長胡盛徳大佐』意識が戻ったのは工作艦雷陽のファクトリーのハンガーだ。空母のハンガーほどの広さは無い。収容しているのは艦載機ではなくて、ロボットの予備機体だからだ。いかつい軍人ロボットでも、飛行機ほどのサイズは無い、せいぜい人の1・5倍。艦載機一機分のスペースに一個小隊50体分は収納できる。工作艦には艦載機で20機分、1000体の予備機体が格納されている。「お目覚めですね胡大佐、もう五分お待ちください。電脳と各部の調整をします」「二分でやってくれ、まだ戦闘中だからな」「では、簡易調整で済ませます。簡易調整の場合は、以後の換装と調整は兵器廠に戻るまでできませんが」「かまわん」「では、調整に入ります」ピーーーーンチェッカーの起動音、聞いてはいたが不快な音だ。軍事用のハイスピードだからだろ...銀河太平記・146『連隊長胡盛徳大佐』

  • 宇宙戦艦三笠27[フィフスのクレージードリル(訓練)]

    宇宙戦艦三笠27[フィフスのクレージードリル(訓練)]最初は、単なるジャンケンだった。ロボットが相手だったが、スキルを人間程度に設定してあったので、まあ、十回勝負で六勝四敗というところだった。「さあ、これが出発点だ」と、言われても、先が読めない。「こんなので訓練になるのか?」天音が口を尖らせる。天音は父が職業自衛官だったので、横須賀の親類に引き取られるまで、父の転勤に付き合って何度も引っ越している。ゆく先々で頼れる者は自分一人「揉まれているうちに度胸も付いて勘も良くなった」と言っているが、俺は、持って生まれたものだと思う。ケンカや勝負ごとに勝った時に「天音の強さは生まれつきだもんな」と言って張り倒されたことがある。「強いなんて言うなっ!」褒めたのに、なんでキレるんだ?後で樟葉が話してくれた。「天音はね、自...宇宙戦艦三笠27[フィフスのクレージードリル(訓練)]

  • RE・かの世界この世界:010『志村先輩』

    RE・かの世界この世界010『志村先輩』最初に崩れた東側のビルは、結果的に三か国の共同でつくられた。実際の工事に入ってみると、日本以外の二か国の技術では対応できないことが分かったからだ。その時点で二か国を撤収させ、日本企業だけで作るべきだった。しかし、メンツを重んじる二か国は継続を固執し、日本企業もことを荒立てることを好まず、東棟の建設に部分参加させた。結局二か国が担当したところは、三棟を屋上プールで連結する部分で重量に耐え切れずに挫滅し、東棟全体を傾かせることになったのだ。そして、傾いた東棟は中棟と西棟をも巻き込んで大崩壊に至ったということみたい。これは、責任を擦り付け合う、グロテスクな争いになるだろうなあ……。「悲惨な事件だけど、これは、ただのたとえ話なの」「今から説明することのな……」「たとえ話……...RE・かの世界この世界:010『志村先輩』

  • 宇宙戦艦三笠26[ダススターとヨーダ]

    宇宙戦艦三笠26[ダススターとヨーダ]一言で言って、クレーターの中は一見ガランドーだった。モニターで拡大すると、ガランドーの中には神経細胞のシナプスのようなものがあって、それぞれがニューロンのような突起を張り出している。突起の先にはゴミのようなものが付いているが、よく分からない。なんだ、あのシナプスとニューロンは?「シナプスはベース(基地)、ニューロンは港の埠頭のようなものよ」クレアが冷静に解析してくれるガチーーン誘導ビームは――しっかり掴まえたぞ――という感じの牽引ビームに切り替わって、速度は落ちたがレールに載っているような確かさで引っ張られていく。三笠は、アルファ星のど真ん中にある巨大シナプスのニューロンの一つに接岸した。「おお、これは……」「ニューロンの突起のように見えてたのは、全て戦闘艦や戦闘機だ...宇宙戦艦三笠26[ダススターとヨーダ]

  • RE・かの世界この世界:009『三つ子ビルのたとえ』

    RE・かの世界この世界009『三つ子ビルのたとえ』落ち着いてくると部室の様子が分かって来た。教室一つ分ほどの部室は畳敷きで窓が無い。三方が障子と襖で、そこを開けると廊下とか別室に繋がっているのかもしれないけど、なんだか、そこには興味を持たない方がいいような気がする。中臣先輩が立ち上がって、つられて首を巡らすと、驚いたことに上段……というのかしら、一段高くなっていて、壁面は全体が床の間みたい。三つも掛け軸が掛かっていて、その横は違い棚で、香炉やら漆塗りの文箱みたいなのが上品に置いてある。これって、時代劇とかである……書院だったっけ、お殿様が太刀持ちのお小姓なんかを侍らせて家来と話をしたりするところだ。大河ドラマのセットみたいだ。中臣先輩は、襖の向こうへ行ったかと思うと、お盆に茶道で使うようなお茶碗を載せて戻...RE・かの世界この世界:009『三つ子ビルのたとえ』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・007『ショーウィンドウの写真たちから』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記007『ショーウィンドウの写真たちから』「お祖母ちゃん、うちは写真館で写真とか撮ったことある?」家に帰るまで、写真館のあれこれが頭に浮かんだ。ショーウィンドウには、七五三の子どものや、袴姿の女子学生や、結婚式やら、記念の家族写真やらが大小いっぱい並んでいた。ドアの向こうにはスタジオが覗いていて、ライトや傘みたいなレフ板、ごっついスタンド付きのカメラやらが見えて本格的。写真なんて、スマホやデジカメでしか撮ったことが無いから、ちょっと新鮮。半分以上はカラー写真なんだけど、白黒の写真もある。昔の写真だからなのか、そういう仕様なのかは分からない。令和の時代にも、わざとセピア色にしてレトロ感出した写真もあるしね。……みんな真面目な顔で写ってる。校長室に並んでる歴代校長の写真みた...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・007『ショーウィンドウの写真たちから』

  • 宇宙戦艦三笠25[暗黒星団とど根性レイマ姫]

    宇宙戦艦三笠25[暗黒星団とど根性レイマ姫]「ただ今の戦闘ぉ、三笠大破ぁ、航行不能ぉ。艦長と砲術長戦死だ~す(´▽`)」可愛い顔で、レイマ姫は宣告した。「今の設定ありえねーよ!両舷から10万機の飽和攻撃なんて、攻撃側も味方の弾くらって、二割がたの損失は出てるっての!なあ、クレア!?」子どもみたいに拳を上げるトシ。「あ、えと、10万機の戦闘機を、一度に管制して攻撃する能力は、わたしの知っている限り、ありえません」「そりゃ、クレアさんは、元ボイジャーでぇ、相当の宇宙情報持ってらげども、全ででねわ。わんど暗黒星団観測すた限りは、グリンヘルドもシュトルハーヘンも、こぃぐらいの戦闘は普通にこなすだ」「でも、同士討ちの二割に、三笠が撃破した分を入れれば6万機の喪失よ。部隊としては壊滅。次の作戦に差し支えるわ」「そうだ...宇宙戦艦三笠25[暗黒星団とど根性レイマ姫]

  • RE・かの世界この世界:008『旧校舎の中廊下』

    RE・かの世界この世界008『旧校舎の中廊下』それは予感していた。旧校舎の中廊下のドアは、どれも目をつぶったように閉まっているのだ。授業に使われることが無くなって久しく、倉庫になっている他はいくつかが部室として使われているらしいけど、廃部になったりマイナーな部活で、人の出入りはほとんどない。ギシ……ギシ……ずっと奥の方だと記憶しているので、板張りの廊下を踏みしめながら、手前のドアから試してみる。そして、一番奥のドアまで試してみるが、開くドアは無かった。やっぱりだ。予感はしていたんだけど、常識的な選択肢から試してみるのは性格なのかもしれない。二階?そう思って打ち消す。記憶をたどっても階段を上がったのは、最初に屋上を目指した時だけだ。真っ直ぐ屋上に上がり、迫って来る足音に耐えられなくなって飛び降りたんだ。一瞬...RE・かの世界この世界:008『旧校舎の中廊下』

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