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2015/01/11

  • 鳴かぬなら 信長転生記 120『浦島太郎の言い訳・2』

    鳴かぬなら信長転生記120『浦島太郎の言い訳・2』信長『鬼ヶ島に行くには舟がいるでしょ』『そうじゃそうじゃ』あっちゃんが当たり前のことを言って、思金神(おもいかね)が相槌を打つ。「舟なら、子どもの頃から漕いでいるぞ」『それは、尾張のお百姓の子どもたちとでしょ』『用水路やため池で舟を漕ぐのとはわけが違うぞ』『鬼ヶ島は、沖の向こうだし、沖に出たら陸地が見えないから方角も分からなくなるわ』『さいわい、こやつは信長のことを乙姫と勘違いしておる』『乙姫で押し通して鬼ヶ島に案内させなさい』「なるほど、分かった。ついでに、こやつの性根も叩き直してやろう」『あ、余計なことは……』うるさい!と思ったら再び時間が動き出した。俺は腰に手を当て、サルを叱る時のように吠えた。「浦島太郎、乙姫は、これから鬼ヶ島の鬼退治に参るのだ!」...鳴かぬなら信長転生記120『浦島太郎の言い訳・2』

  • RE・かの世界この世界:080『遭遇戦・1』

    RE・かの世界この世界80『遭遇戦・1』テルポチーーーーーーーーーーッ!!叫んでみたが、ポチの姿はすぐに小さくなって見えなくなってしまった。「落ち着いたら帰って来るさ」ロキの頭をワシャワシャ撫でて慰めてやる。ケイトも「こんなこともあるさ」と、ロキに付き合って空を見上げている。「ポチは我が使い魔でもある。必ず戻って来る」中二病全開だけど、ヒルデも慰めている。慰めながらも思った。ヴァィゼンハオスで初めて見た時は空飛ぶ桃くらいにしか思っていなかったのだが、だんだん反応が犬っぽく……どうかすると人間の子どものようになってきた。シリンダーというのは口もきけない原始生物なのだが、ポチは個体進化の可能性を秘めた特異体なのかもしれない。そして、ポチの騒ぎで、みんなの車酔いはきれいさっぱり治ってしまった。ピピピピピピピピピ...RE・かの世界この世界:080『遭遇戦・1』

  • せやさかい・403『王宮某重大事件・2・』

    せやさかい・403『王宮某重大事件・1・救急搬送』ヨリコ王宮の廊下をこんなに長く感じたのは初めて。ソフィーからの連絡を受けて、ケージと呼ばれる皇太子用の別棟から渡り廊下を通って母屋の宮殿に向かっている。王族の者は空襲や襲撃にでも合わない限り宮殿の中では走ってはいけない。だから到着まで五分もかかった(あとで確認したら一分ちょっとだったけど、その時は、それくらいに感じた)。「お祖母ちゃん!」プライベートで二人っきりの時以外、王宮では「陛下」と呼ばなくちゃいけないんだけど、この時は「お祖母ちゃん」になってしまった。そして、イザベラさんやソフィー、それに王宮警備の衛士さんたちが跪いて取り囲んでいる女性に気付いて悲鳴が出るところだった。ソフィーのメッセージは――陛下が階段から転落なさいました、第二図書室下の階段です...せやさかい・403『王宮某重大事件・2・』

  • RE・かの世界この世界:079『ポチの冒険・2』

    RE・かの世界この世界79『ポチの冒険・2』テル上昇気流に乗って尾根を越え、勢いのまま雲を突き抜けるとシリンダーの群れが居た。ポチはシリンダーの幼生であるけど、ごく小さいころからロキたちヴァィゼンハオスの子たちと暮らしてきたので、大人のシリンダーを見ても親近感などは湧かない。ヤ、ヤバイところに出てきてしまった!とっさに思ったのは、このままUターンして尾根一つ戻ったところを上って来る四号に戻ることだ。しかし、軽い体を思いっきり強い上昇気流に吹き上げられているので容易には速度が落ちない。プニョ~ンプニョ~ン大人のシリンダーに二度ばかりぶつかって、やっと群れのど真ん中で停まった。「おや、お母さんとはぐれてしまったのか?」「保育所のお散歩の途中かい?」「ここらじゃ見ない顔だね」人間とは違う言葉で話しかけられるが意...RE・かの世界この世界:079『ポチの冒険・2』

  • 銀河太平記・158『47人救えた』

    銀河太平記・158『47人救えた』越萌マリ(児玉元帥)47人救えた。西海岸で集めた半導体で使えるものは半分に満たない。予想に反して上陸用舟艇も作業機械も旧式のものは少なく、中には見かけだけ旧式で中身は最新というものもあった。フェイクなのか間に合わせなのかは分からないけど、漢明の装備は見かけほどにポンコツではない。せっかくマイさん(児玉元帥)が時間を稼いでくれたのに申し訳ない。「なあに、こっちも色々分かったし、橋頭保としては使い物にならないくらい破壊できたし、問題ないわよ」明るく答えるマイさんだけど、手足の包帯が痛々しい。「手足にパルス砲を仕込んでたんですね」「あ、ナイショね。これ使う時って凄い格好になるから(^_^;)」「すみません、大きなことを言っておきながら半分しか救えませんでした」「ううん、47人救...銀河太平記・158『47人救えた』

  • RE・かの世界この世界:078『ポチの冒険・1』

    RE・かの世界この世界78『ポチの冒険・1』テル前にも言ったが、ムヘンは菱餅の形をしている。ムヘンブルグ城塞を出た我々は菱餅の頂点である北辺の港町ノルデンハーフェンを目指している。あたりまえに行けば三日ほどの行程なのだが、あちこち用事が出来てしまって二週間ほどになるというのに、いっこうにノルデンハーフェンには向かえない。いまは、ローゼンシュタットのミュンツァー町長の石化を解くために東のエスナルの泉に進路を取っている。「こんな山道だとは思わなかったぞ……(-_-;)」ヒルデがキューポラの縁に突っ伏してしまった。操縦しているタングリスを除いた全員がハッチから半身を出している。つづら折れの山道は険しくて、四号戦車は、今までになくグニャグニャ揺れるのだ。戦車と言うのは鉄の塊で、走る感じはガタゴトという擬音が相応し...RE・かの世界この世界:078『ポチの冒険・1』

  • くノ一その一今のうち・52『大阪へ』

    くノ一その一今のうち52『大阪へ』魔石は戻ってきたようだね。高速にはいったところでルームミラーの嫁持ちさんが目を細める。「戻ってるんですか?」「手ごたえはあったんだろ?」「あ、でも消えてしまって」セーラーの胸当てを引っ張た時の感触が蘇って顔が熱くなる。「魔石とのキズナが深まったんだ。喜ばしいことだよ」「そうなんですか?」「頭領として経験を積めば、そうなるらしいよ。これは、意識しなくても魔石の力が使えるかもしれない」「そうなんですか?っていうか、大阪で何をするんですか?」うすうす分かっているけども聞いてみる。「信玄の埋蔵金、その一部が大阪に持ち込まれた」やっぱり。「それが、いささか厄介なところに隠されたようで、ボクたち下忍では手が出せないようなんだ」「わたしだって下忍です」「でも、風魔流の頭領だ、魔石だって...くノ一その一今のうち・52『大阪へ』

  • RE・かの世界この世界:077『ローゼンシュタットを出発』

    RE・かの世界この世界77『ローゼンシュタットを出発』テル見送りは町長夫人だけだった。ローゼンシュタットの町は降誕祭の後始末……というよりは、メデューサ被害の後始末で、とてもわたしたちの見送りどころではないのだ。石化した町長に成り代わって夫人が指揮を執っている。その蝶々夫人が少しの間助役に指揮を任せて見送ってくれる。「あくまでも、降誕祭の後始末です」きっぱり言い切ったのは、町の人々が落ち込まないようにとの配慮からだろう。広場を中心に道路や建物が破壊されただけではなく、石化が解けた人たちも倦怠感の他に関節痛などの後遺症が出ているのだ。「じゃ、出来るだけ早く金の針を手に入れて町長さんを治療してお返しします」「よろしくお願いします」ブロンブロロロ~~~~~四号戦車は軽快に走り出した。町長は石化して文字通り石像の...RE・かの世界この世界:077『ローゼンシュタットを出発』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・021『春高楼の花の宴』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記021『春高楼の花の宴』身体測定の日は学食はお休み。お弁当ってほどじゃないけど、城山(宮之森城址公園)には売店も自販機も無いということなので、ちょっとお買い物。学校を出て道を渡ったところにお店がある。いちおう大手パンメーカーの看板は掛かってるんだけど、お店の中ではもんじゃやらお好み焼きとかも食べられて、子供向きの駄菓子とかも置いてる。「あら、お花見?いいわねえ、オバチャンの時代は女子挺身隊だったからね、お花見どころじゃなかった」お店のオバチャンはリアル女子挺身隊(^_^;)「五人分はかさばるから、紙袋あげるね」ひとり二個のパンと飲み物。一人分ずつを小袋に入れて、それをまとめて西武百貨店の袋に入れてくれる。この時代、レジ袋もコンビニも存在していない。「なにシゲシゲ見てん...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・021『春高楼の花の宴』

  • RE・かの世界この世界:076『町長はあとまわし!』

    RE・かの世界この世界76『町長はあとまわし!』テル戦隊物の女戦士のようになっていたタングリスだけがまともだった。ヒルデはドレスのスカートがズタボロで、なんだか腰蓑のようにバランバランになっている。ケイトは肩紐とブラのストラップが切れたので、弓を持った手で押さえている。ロキは何もしなかったはずなのに、シャツのボタンが三つもとれて、右袖が肩の所で千切れかけている。頭の上でポチがせわしなく回っているところをみると、興奮したポチを押さえ込もうとして、逃げ惑う人たちにもみくちゃにされたようだ。わたしは、ドレスの右袖がとれただけで比較的マシ……と思ったら、タングリスが後ろを指さす。え?後ろに手を回す……なんと、ドレスの後ろがきれいさっぱり無くなっていた(#^_^#)。「これをどうぞ」「すみません(#^_^#)」無事...RE・かの世界この世界:076『町長はあとまわし!』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 119『浦島太郎の言い訳・1』

    鳴かぬなら信長転生記119『浦島太郎の言い訳・1』信長トンビに見守られながら鬼ヶ島への道を進むと、いつの間にか海辺に出てきた。砂浜の背後は崖になっていて、見上げると見覚えのある巨木の上半分が見える。巨木は、あの桃の木だ。なんだ、ここは村長(むらおさ)の屋敷の裏だったのか。よく見ると、崖の上辺は石垣になっていて容易には登れない仕組みになっている。石垣に上にはダビット(救命ボートやラッタルの上げ下げに使われる小さなクレーン)があって、船の舷梯のような階段が吊り上げられている。そういうダビットが見ただけで五六個はあって、日ごろは、ここから出入りしている様子だ。この階段を上げてしまえば、容易に村には入り込めない。我々がここにたどり着くまでは桶狭間を小型にしたような谷があって、うかつに通れば、谷の上から攻撃されて全...鳴かぬなら信長転生記119『浦島太郎の言い訳・1』

  • RE・かの世界この世界:075『広場の激闘』

    RE・かの世界この世界75『広場の激闘』テル目を見てはならん!わたしたちと同時に気づいたゼイオン司祭が叫んだ。「この中にメデューサが紛れ込んでおる!」声を出したのが間違いだし、順序も逆だ。声に出せばパニックになる。パニックになれば、互いに顔を見かわしてしまう。瞬くうちに、十数人が驚愕の表情のまま石化してしまった!しかし、石化した人たちの中央にいる少女がメデューサだと見当は付いた。見当が付いたとたんに、メデューサは逃げ惑う人々に混じってしまう。「みんな、広場から出るんだ!」「しゃがんで目をつぶれ!」相反する指示が下される!タングリスは歴戦の経験から、司祭は言い伝えられてきたメデューサ対処法からの、とっさの指示を叫んだのだ。広場は混乱するばかり、阿鼻叫喚の中を1/3ほどの人々は広場から逃れ、次の1/3ほどは目...RE・かの世界この世界:075『広場の激闘』

  • せやさかい・402『王宮某重大事件・1・詩の災難』

    せやさかい・402『王宮某重大事件・1・詩の災難』詩(ことは)ヤマセンブルグには『妖精飛び出し注意』の道路標識がある。大阪の幹線道路からちょっと生活道路に入り込んだところに『子どもの飛び出しに注意』の標識がよく出ている。そんな感じ。地元の人たちが子どもを妖精に例えて安全運転を喚起するために私的に設置したものでは無くて、ちゃんと警察が大まじめで建てた公的な標識。教習所の筆記試験の標識問題のところにちゃんと出ている。それに気づいたのは、去年。頼子さんやさくらといっしょエディンバラとヤマセンブルグを訪れたとき。宮殿に向かう車の中で発見して、ディズニーランドでミッキーマウスに出会った時みたいに興奮してしまった。女王陛下(頼子さんのお祖母ちゃん)が、その時のわたしの目の色をご覧になって「そんなに興味があるのなら、も...せやさかい・402『王宮某重大事件・1・詩の災難』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・020『春たけなわの身体測定』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記020『春たけなわの身体測定』女子の身体測定は午前10時30分から。ずいぶんゆっくりみたいだけど、10時までは男子がやっている。男女で時間を分けるというのは合理的だよ。中学までは、種目っていうのか、メニューを工夫することで男女が被らないようにしていた。被らないと言っても、学校の中に居るというのは同じなので、時どきふざけた男子が覗きとか問題を起こして叱られていた。測定が終わったら普通の授業だったしね。それが、女子の開始時間の10時30分になると、男子は検査場になる校舎や体育館には立ち入り禁止。まあ、たいていの男子は10時で帰ってしまう。そう、測定が終わったら、もうその日は学校お終いなのさ。でもね、令和の高校はフッてきたから分からないけど、同じなら令和の方がいい。だってさ...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・020『春たけなわの身体測定』

  • RE・かの世界この世界:074『タングリスと以心伝心の目配せ』

    RE・かの世界この世界74『タングリスと以心伝心の目配せ』テル乾杯の後は宴になった。いつの間にか広場のあちこちにテーブルが出され、そのテーブルを中心に人々が思い思いに集まってビールを飲んだり、山ほど用意された料理に手を伸ばして盛り上がっている。二十人ほどの楽隊がポルカのような軽快な音楽を奏で、町の人たちが二人一組で手を取り合ってステップを踏みはじめた。誰が指揮をしているわけでもないのに、ステップの輪は広場の噴水ステージを二重に取り巻く大きな輪に育ち、文字通りのフェスティバルになった。「オイラたちも入っていいかなあ」ロキが目を輝かせながらも、しおらしくタングリスに聞く。「ああ、いいとも。ここから見ていてやる」「よし、行くぞ!」「こら、引っ張んなあ!」ロキはケイトの手を取って踊りの輪の中に入っていく。――見物...RE・かの世界この世界:074『タングリスと以心伝心の目配せ』

  • 銀河太平記・157『邂逅する者たち・5・王春華』

    銀河太平記・157『邂逅する者たち・5・王春華』越萌マリ(児玉元帥)最初に目に着いたのは大きな漢明国旗と、漢明陸軍の連隊旗だ。景色としても風水的にもいい場所を選んでいる……と思ったら。旗竿は鳥居の縦の柱に括り付けられている。そうか、あそこは氷室神社だ。すでに、本殿拝殿ともに破却されているが、鳥居はカンパニーのシゲ老人が鉱山技師の技術で建てた堅固なものだ。堅固な上に無駄のない神明造で、二本の縦柱は垂直に立てられているから、竿を括り付けるだけで立派な掲揚台になる。しかし、宗教施設を掲揚台にするのは下品だという感覚は無いらしい。視力を等倍から三倍、十倍、二十倍と切り替えて敵基地になりつつある空港と、その周辺を観察する。露出した坑道や巨人輸送機の残骸、砲撃の穴などに少人数が屯しているが固定した基地施設を構築する様...銀河太平記・157『邂逅する者たち・5・王春華』

  • RE・かの世界この世界:073『プリンツェシン・ローゼンの御業』

    RE・かの世界この世界73『プリンツェシン・ローゼンの御業』テルフラワーポッドは祭りの参加者がよく見えるように、式台の上に円形に並べられている。丸い広場の奥には野球場のスコアボードのようなプロジェクターがあって、祭りの様子を映し出している。プリンツェシン・ローゼン役のヒルデは悠然と剪定鋏を構えてポッドの周りを周り始めた。わたしたちには見えないが、ヒルデには司祭が示したバラが黒く見えているのだ。チョキンヒルデが歩くとドラムロールが鳴って、一つ剪定するごとに音楽隊の小さなシンバルが鳴らされ、広場の空気はいやましに高まっていく。おお!選定されたバラは、そういう仕掛けなのか悪しきものの性なのか、切られて空中に浮いたとたんにムクムクと大きく膨らみ、クルクル旋回しながら五メートルほど空中に舞い上がる。それに呼応して、...RE・かの世界この世界:073『プリンツェシン・ローゼンの御業』

  • せやさかい・401『早川のお婆ちゃん 一年の宿泊学習』

    せやさかい・401『早川のお婆ちゃん一年の宿泊学習』さくらヘルメットを被って一週間。初日は自転車を降りて戸惑った。「どないしょ?」自転車を降りると、とたんにヘルメットは邪魔。「持って行こうか?」ヘルメット被って電車に乗るわけにもいかへん。「持って行こうか?」持っていけんこともないけど、満員電車では気が引けるし、きっと迷惑。校門入るとこで生指の先生に呼び止められそうやし。さくらちゃ~ん!留美ちゃ~ん!お店の方から声がかかったんでビックリ!瑞穂さんが亡くなってからずっと閉めてたはずのハンゼイが開いてる。で、開けたドアから、檀家の早川のお婆ちゃんがオイデオイデしてる。「あ、おはようございます!」「お婆ちゃん、そのかっこう!?」早川のお婆ちゃんは、瑞穂さんが着てたんと同じコスで、あっぱれ喫茶店の超ベテランフロア係...せやさかい・401『早川のお婆ちゃん一年の宿泊学習』

  • RE・かの世界この世界:072『ローゼンシュタッテンの儀』

    RE・かの世界この世界72『ローゼンシュタッテンの儀』テルいつまでこのナリでいなければならないのだ……(-_-;)まったく……(-_-;)わたしとタングリスの思いは同じだ。夕べは試着と言うことで、ほんの十分ほどで解放されたが、今朝はプリンツェシン・ローゼンの降誕祭本番。顔を洗うと、すぐに昨夜のフランス人形のようなナリにされてしまった。ロキとケイトはハローウィンの仮装のように喜んでいる。ヒルデは日ごろのナイトメア設定とは違う赤バラのドレスに戸惑いはあるが、まんざらでもない様子で、朝食のベーコンエッグにナイフを入れている。「食べておかないと夕方までもたぬぞ」「食べてからの着替えにしてほしかった」「こうコルセットを締め上げられては……レンジャーの訓練の方が百倍もましです……」タングリスの判断でパンは残すことにし...RE・かの世界この世界:072『ローゼンシュタッテンの儀』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・019『暫定学級委員選挙』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記019『暫定学級委員選挙』オリエンテーションのあくる日、学級委員選挙。まだ顔もろくに分からない者同士、どうするんだろうと思った。「学年の始めはクラス全部で動くことや配布物、提出物が多いので、四役だけ決める」先生はあっさり言うけど、大丈夫かなあ。委員長副委員長保健委員体育委員黒板に書かれたのは忙しそうな役職四つ。「連休明けに本選挙をやるから、とりあえずの暫定だ。だれか立候補する者はいないか?」暫定と言っても、こういうのは、そのままになって、半年だか一年だかやらされる。こういうのは先生が指名した方がいいよ。先生は調査書とかの資料で情報握ってる。だから調べれば適任者とか経験者とか分かると思うんだけど。下手に選挙なんてやったら、こじれないかなあ、とにかく、みんな分からないんだ...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・019『暫定学級委員選挙』

  • RE・かの世界この世界:071『ローゼンシュタット・4』

    RE・かの世界この世界71『ローゼンシュタット・4』テル月は人を化かすという。漱石は「月が綺麗ですね」と愛を告白させ、受けた女性に「もう死んでもいいわ」と物騒な応えをさせている。中島敦は『山月記』でこじらせ男を虎に変え、伊達政宗も兜の前立てを月にしたばかりでなく「曇りなき心の月を先だてて浮世の闇を照らしてぞ行く」と辞世の句まで月を頼りにした。月の女神アルテミスは自分の沐浴を垣間見た男を鹿に変えて猟犬に嚙み殺させた……そもそも、このヴァルハラを目指す旅も、月の光がヒルデの戒めを解いたから……。なんだか、無駄に月のアレコレを思い出してしまう。タングリスが迎賓館に戻ってからも月を見上げていたせいだ。「く、来るなああああ!」庭とホールを隔てるドアに手を掛けると、タングリスの慌てた声がした。「どうした!?」緊急事態...RE・かの世界この世界:071『ローゼンシュタット・4』

  • くノ一その一今のうち・51『魔石の感触』

    くノ一その一今のうち51『魔石の感触』事故や病気で手足を失うことがある。失ってしばらくは、失くした方の手や足が痒くなって、掻こうと手を伸ばして――ああ、無いんだ――ということがあるらしい。それに似ている、失くした魔石。七日ぶりに学校へ行く電車の中、もう二回も感じている。胸の谷間に魔石がぶら下がってる感じ。その都度手を当ててみる。むろん失くした魔石があるわけもなく、胸をさすって俯いておく。アイドルグループの子に、緊張すると胸をさするクセの子がいたっけ。胸をさする仕草と、ヘタレ眉が可愛くて、物真似タレントが決め技みたいにやってウケていた。わたしがやったって可愛くない。物真似タレントみたいにウケることもない。よし、もうやらないでおこうと決心する。今朝は運よく座れた。前にいっぱい人も立ってるし、目立つことは止めて...くノ一その一今のうち・51『魔石の感触』

  • RE・かの世界この世界:070『ローゼンシュタット・3』

    RE・かの世界この世界70『ローゼンシュタット・3』テルプリンツェシン・ローゼンの降誕祭にやってきたのは偶然だ。ノルデン鉄橋が装甲列車の爆発で通行不能となり、ムヘンの首邑ムヘンブルグとムヘン最大の港湾都市ノルデンハーフェンを結ぶ街道はグスタフで途切れ、街道上の宿場は足止めを食らった隊商や旅人で一杯になってしまった。やむなく街道を逸れた町か村で泊らざるを得なくなり、広げた地図で、たまたま見つけたのがローゼンシュタットだったのだ。見つけたのが、気まぐれ姫のブリュンヒルデなのだから、深慮遠謀などあるはずもない。それが、ローゼンシュタットの司祭で老魔導士でもあるゼイオン・タングステンの予言通りで、横断幕やら迎賓館まで用意しての歓待ぶりだ。「なにか隠していることはないのか?」歓迎レセプションが終わった後、迎賓館の庭...RE・かの世界この世界:070『ローゼンシュタット・3』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・018『オリエンテーション』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記018『オリエンテーション』和式にビックリしたあくる日は対面式から始まった。対面式っていうのは、新入生が二三年生に初めて会って、まあ、挨拶する儀式。教室で担任の藤田先生から対面式を含む一日の説明を聞いて体育館へ。と、その前に本館前でクラスごとに並ぶ。体育館には、すでに二三年生が離任式を終えて待機しているので、その列の中に速やかに整然と入っていくためらしい。離任式っていうのは、この春で退職したり転勤した先生が生徒にお別れを言う儀式。新入生には関係ない。わ(*o*)!フロアに踏み込んでビックリ。モーゼの出エジプト記で海が割れるみたいにフロアが開いている。二三年が脇に寄って、その真ん中に一年生が入っていく。両側からメッチャ視線を感じる。いや、視線以上、もう圧だね。それに狭い...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・018『オリエンテーション』

  • RE・かの世界この世界:069『ローゼンシュタット・2』

    RE・かの世界この世界69『ローゼンシュタット・9』テルローゼンシュタットは町ぐるみバラの海に浮かんでいるように華やかだ。町の周囲だけではなく、町の中のちょっとした空き地にも花壇があって、色とりどりのバラが咲き誇っている。「ようこそ!ローゼンシュタットへ!」「ブリュンヒルデさま!」「いらっしゃいませ!」歓待の声に目を向けると、家々の玄関先や窓辺にもバラの鉢植えやフラワーポットがひしめいている。町の中央は広場になっていて、居並ぶ人々によって、我々の四号は誘われていく。「すごいバラの香り!」「バラだらけだ!」広場の噴水の飛沫が飛んでくると、それにもバラの香りがして、ケイトもロキも無邪気に喜んでいる。ロキがハッチから身を乗り出すので、ポチも飛び出してロキの周囲を飛び回る。ポチは幼生とは言えシリンダーなのでマズイ...RE・かの世界この世界:069『ローゼンシュタット・2』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 118『桃拾いの翁と媼』

    鳴かぬなら信長転生記118『桃拾いの翁と媼』信長これはこれは神薙(かんなぎ)さま!村長らしいジジイが前に出て巫女服のあっちゃんを拝跪した。村人たちは、それに倣うように跪く者、蹲踞する者、地面に頭をこすり付ける者。いろいろの反応だが、完全にあっちゃんが一番と判断した。まあ、あっちゃんの本性は熱田神宮の草薙剣で天照大神の分身でもある。神に仕える神薙と判断してもおかしくはない。「そちが村長(むらおさ)であるな」「はは、村長の桃拾いの翁、こちらは女房の桃拾いの媼でございます」こいつら、ひょっとして桃太郎の?「わらわは、熱田大神に使える神薙である。大神様が『民草たちに難渋の兆しあり、疾く様子を見て参れ』とのご神意を被り、この地にまかり越した。これに従うは思金神(オモイカネノカミ)と毘沙門天に仕える神薙じゃ。安心して...鳴かぬなら信長転生記118『桃拾いの翁と媼』

  • RE・かの世界この世界:068『ローゼンシュタット・1』

    RE・かの世界この世界68『ローゼンシュタット・1』テルどっちが早かったのか……峠に差し掛かったところで「停まれ」とヒルデは命じた。同時に四号は停車した。当たり前なら、車長であるヒルデが命じて、即座に操縦手であるタングリスがブレーキを踏んだということなんだけど、すこし違うのだ。タングリスは、自分の判断で停車している。同時にヒルデも判断して命じている。四号は一匹の像が耳をそばだてるようにして停止した。具体的な変異や脅威を感じたわけではない。戦慣れした二人が同時に反射的に反応したことに車内に緊張が走る。五人の乗員は息を潜め、クリーチャーのポチもロキのポケットに潜り込んでしまった。ブルブルブルブルブル…………マイバッハV12エンジンの音だけが車内に響く。「エンジンを切れ」「エンジン切ります」ブリュン……四号はヒ...RE・かの世界この世界:068『ローゼンシュタット・1』

  • パペッティア・009『みなみ大尉の家』

    パペッティア009『みなみ大尉の家』夏子みなみ大尉の家はカルデラの北側にある。カルデラっていうのは、ファーストアクトでヨミのミサイルが命中して出来た巨大クレーター。ミサイルの弾頭には広島型原爆の何十倍とかいうアクイが籠められている。アクイというのは悪意からきてるんだけど、現時点では解析不能なヨミのエネルギーのことで、日本の学者が「悪意としか言いようがない」と評したことでアクイという表現が定着したんだって。破壊力はすごいんだけど、核兵器のように放射能とかは無いから、気持ちさえ折れなければ回復はできる。同じところに墜ちる可能性は低いだろうということで、その巨大クレーター中を特務のベースが作られた。クレーターの縁には高さ100メートルのカルデラの壁が出来た。真上から落ちてくるミサイルや航空攻撃には意味のない壁な...パペッティア・009『みなみ大尉の家』

  • RE・かの世界この世界:067『腹が鳴る』

    RE・かの世界この世界67『腹が鳴る』テルローゼシュタットに向かうには街道を西に外れる。西に外れるまでには宿場町が二つある。シュタインドルフを出てからベッドで寝たことが無いので、ホテルや軍の宿泊施設を横目に殺すのは努力がいった。燃料補給に立ち寄った補給処はちょうど昼食の準備中で、揚げ物のいい匂いがしていた。「燃料補給が済めば直ちに西に進路をとる。昼食は走行中にレーション(携行食糧)で済ませるぞ」ヒルデの、ちょっとムキになった宣言は命令と言うよりは自分自身への戒めの響きがある。タングリスが車長に指名したのは正解だと思う。ヒルデは与えられた立場によって変わっていく性格のようだ。ムヘンブルグを出発する寸前、ケイトを連れて小学生のようにお八つを買い込んでいたのがウソのように思える。補給処の整備兵がエンジンとトラン...RE・かの世界この世界:067『腹が鳴る』

  • せやさかい・400『灌仏会 二つのヘルメット』

    せやさかい・400『灌仏会二つのヘルメット』さくら三年ぶりの灌仏会、お花まつりは盛況やった。うちの如来寺は、都会のお寺としては広くて檀家さんの数も多い方。せやけど、檀家さんのほとんどはお年寄り。お年寄りのほとんどはお婆ちゃん。大方が昭和も戦前のお生まれで、数人は大正生まれいう人も居てる。いえ、居てはります。「さくらちゃん、セブンチーンやなあ(^▽^)!」歳に似合わん真っ白な歯ぁを剥きだして、田中のお祖母ちゃんが喜んでくれる。「早いなあ、さくらちゃん来て、もう十年かあ」早川のお婆ちゃんがスカタンを言う。「やあ、まだやっと五年目ですよぉ」「せやがな、歌ちゃんと戻って来て、すぐ中学やったもんなあ。ポニーテールをキリっと結い上げて、なんかタカミナみたいで、かいらしかった(^〇^)」「タカミナてなに?」「AKBの総...せやさかい・400『灌仏会二つのヘルメット』

  • RE・かの世界この世界:066『鉄橋閉鎖』

    RE・かの世界この世界66『鉄橋閉鎖』テルノルデン鉄橋は閉鎖されてしまった。装甲列車が橋の上で立ち往生してしまったからだ。十二両連結のうしろ二両が手ひどく痛めつけられている。タングリスの見積もりでは中破の状態で、本来なら連結を解除して健康な車両だけで帰還すべきであったらしい。指揮官の判断か上からの命令か、全車両を帰還させることになって、無理くり鉄橋を渡ろうとしたところ、不発弾か積載していた弾薬かが爆発。うしろ二両はグチャグチャに壊れて鉄橋を塞いでしまった。「とうぶん渡れんな」砲塔の上に地図を広げ、タングリスは腕を組んだ。他の乗員も各々のハッチから出てきて覗き込む。「ここはノルデン鉄橋を渡った北岸の街でグスタフと言います。ここの軍施設で一泊する予定ですが、この騒ぎで混乱が予想されます。南下する旅行者や物資が...RE・かの世界この世界:066『鉄橋閉鎖』

  • 銀河太平記・156『邂逅する者たち・4・南を目指す』

    銀河太平記・156『邂逅する者たち・4・南を目指す』越萌マリ(児玉元帥)初期戦闘で敵は空港の制圧と占領を目論んだ。南北の空港に同時に二個空挺大隊を降下させ、同時に空港周辺の防空施設を破壊。降下した空挺大隊は滑走路周辺の迎撃部隊を殲滅しつつ、旅団主力の着陸援護の態勢を整えた。軍事的には瞬間と云っていい90分余りで制圧し終え、作戦は成功したかのように見えた。見えたからこそ、敵は間髪を置かずに空挺旅団の主力を載せた巨人輸送機を着陸させようとしたが、輸送機が無事に着陸し、停止したとたんに滑走路直下の坑道を爆破。輸送機を擱座させ、同時に坑道から飛び出したロボットたちが残った空挺部隊に対して自爆攻撃を加え、十分余りで形勢を逆転した。空挺二個大隊の降下成功の時点で作戦成功と踏んだ陸戦隊は西海岸に取りついた。戦術的な思考...銀河太平記・156『邂逅する者たち・4・南を目指す』

  • RE・かの世界この世界:065『装甲列車の進入』

    RE・かの世界この世界65『装甲列車の進入』テル鉄橋上の制限速度は時速15キロと自転車並みだ。文字通り歩道を走る自転車と並走して……いや、抜かされてしまった(^_^;)。「なんで停止するんだ!」車長ハッチから身を乗り出していたヒルデが潜り込みながら苦情を言う。「停止信号です」「信号?」「ヒルデねえちゃん、車長なんだから信号くらい見とけよ」ロキがえらそうに言って、ポチが笑うように身を震わせる。「そんな、橋の上に信号なんか……」再びハッチから身を乗り出して沈黙、トラス上部にある赤信号に気づいた。「なんで信号なんか付いてるんだ!?」ご機嫌斜めのお姫様に、タングリスは操縦手ハッチを開けて答える。「古い鉄橋なので、橋の土台の間隔で重量制限をやってるんです。1スパン二百メートルで1000トン、四号は自重30トンありま...RE・かの世界この世界:065『装甲列車の進入』

  • くノ一その一今のうち・50『まだまだ未熟なんだ』

    くノ一その一今のうち50『まだまだ未熟なんだ』魔石は無くすわ、埋蔵金は取られるわ、一世一代の大不覚に天を仰ぐ。仰いだところで空は見えない。ここは甲斐善光寺の地下戒壇、それも『心』の形をした、その内側の秘密戒壇の最奥部。クソックソクソクソクソクソ…………吐息が怨嗟の呟きを載せてしまい、長大な地下洞窟に響き渡る。まだまだ未熟なんだ。地下戒壇に間違いないと閃いて、でも、どこか自信が無くて、課長代理にも言わずに突出したことが悔やまれる。まずは確かめて、確証が持てたところで……悠長に過ぎた。仰いだところに見えるのは、冷たい岩肌、それがフニャフニャ歪んで、溢れた涙のせいだと知ってしゃがみ込んでしまう。だめだ、いまのわたしは忍者はおろかアルバイトとしても失格だ。口の中に血の匂いが広がる。悔しさと絶望のあまりに唇を噛んで...くノ一その一今のうち・50『まだまだ未熟なんだ』

  • RE・かの世界この世界:064『ノルデン鉄橋』

    RE・かの世界この世界64『ノルデン鉄橋』テルノルデン鉄橋は全長八百メートルのトラス式大鉄橋だ。四車線もある幅広の鉄橋で、西側から単線の鉄道、二車線の車道、一車線分の歩道になっている。そのノルデン大鉄橋が目前に迫っている。四車線を覆い、かつ支えている鉄の構造物は、いかにも軍都の入り口に相応しい。右手の南側には、その軍都ムヘンブルグ城塞都市。一週間前にムヘンブルグの北門を出て、そのまま、この大鉄橋を渡るところをシュタインブルグに行っていた。あの時以上に人や車両の動きが盛んだ。軍用車両に民間のトラックなども見えるし、自転車や徒歩で歩道を行く人たちも居る。ムヘンは流刑地ではあるが未開の荒れ地ではないようだ。「北部に限られているようだが、ちょっとした開拓ブームなんだ」全開したハッチに寄り掛かりながらタングリスが呟...RE・かの世界この世界:064『ノルデン鉄橋』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・017『開けてビックリ!』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記017『開けてビックリ!』ちょっと後ろ向いて。家に帰るなり、玄関先でお祖母ちゃんが「ただいま」を言う間もなく命じる。「え、なんか憑いてんの!?」小学校の時、いつもとは違う道を通って帰ってくると、これをやられた。古いお屋敷が珍しくって、しばらく眺めて帰ったんだけど、その時にいけないものが憑りついたみたいで、そうやって祓ってくれた。バシーン!!「イタイ(*◇*)!」「よし、これでいい」「なにが憑いてたの?メッチャ痛かったんですけど」「憑き物じゃないわ、防御力を上げておいたの」「防御力ぅ?」「あの70年代はメグリと相性が良すぎる感じがしたんでね、ボーっとしてると、良からぬものと出くわす気がする。まあ、予防注射」良からぬものと言われて10円男の加藤高明の顔が浮かんだ。フルフル...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・017『開けてビックリ!』

  • RE・かの世界この世界:063『ペギーとの再会』

    RE・かの世界この世界63『ペギーとの再会』テルケイトの石化を解いてやると金の針が無くなってしまった。「面倒だが、車外に出る時は必ずゴーグル着用だ。車内でも覗視孔から外を見る時はゴーグルだ。石化しても直しようがないからな」「メデューサなんて聖戦以来だな」タングリスの注意に応えながら、タングニョーストはアクセルを踏む。ブルンと身震いして四号は再び走り始めた。「来るときは、強敵だったがシリンダーと融合体に出会っただけだった。プレパラートとかメスシリンダーだとか、クリーチャーが多すぎないか」「主神オーディンの力が弱っているのかもしれない、心して進まなければな」「下手をすれば、また戦争が始まるかもしれない……」「あれ、真っ赤に錆びついてるよ……」ペリスコープから先ほどの戦車を見てケイトが呟く。わたしも意外だ。メデ...RE・かの世界この世界:063『ペギーとの再会』

  • せやさかい・398『灌仏会の前日は始業式』

    せやさかい・399『灌仏会の前日は始業式』さくら昨日は一日中雨やった。散り始めてた桜は、この雨で一気に花を落として山門の桜は完全に終了。まあ、雨のお蔭で境内の掃除はやらんで済んだんやけどね。その雨の中、昨日の七日は始業式やった。一年の始まりが雨というのは、ちょっと凹む。制服はクリーニングしたてやのに、堺東まで自転車で行ったらスカートびちゃびちゃに濡れるし。「よし、わしが連れてったろ」お祖父ちゃんが車で送ってくれる。帰りはテイ兄ちゃんが迎えに来てくれることになる。「お祖父ちゃん、ありがとう……ウワ!」ブゥィーーーーンベシャ!車降りたとたんに、原チャがすり抜けて盛大に水しぶき。ドアがガードしてくれて制服は無事やけど、足と頭にけっこうな水しぶき。まあ、ええねんけど……これは学校に着いてからのさらなる不幸の序曲に...せやさかい・398『灌仏会の前日は始業式』

  • RE・かの世界この世界:062『メデューサに徹甲弾!』

    RE・かの世界この世界62『メデューサに徹甲弾!』テル地図で見るとノルデン鉄橋に向かう道は東への直線だ。しかし、実際には微妙に蛇行しているし高低差もある。時おり、左にムヘン川が見える他は、道の両側は草原か灌木林で、道の蛇行や高低差と相まって、地図で見るほどに見通しはよくない。時々、車載機銃や75ミリの主砲で榴弾を撃ったりする。見通せない向こうを警戒するためだ。これまでに、シリンダーやプレパラートを発見し、避けたり駆除しながらここまでやって来た。「2シュトリヒ先の灌木林、機銃掃射」「2シュトリヒ先の灌木林、機銃掃射」タングリスの発声を復唱してトリガーを引く。タタタタ乾いた発射音、灌木林の中で火花が四つする。「いい勘をしているな、岩か何かがあるぞ」火花がたつということは固いものがある証拠だ。「少し左にも当てて...RE・かの世界この世界:062『メデューサに徹甲弾!』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 117『また例の田園風景』

    鳴かぬなら信長転生記117『また例の田園風景』信長目が覚めると、また例の田園風景。この前とは逆の方向に体を捻る。ガチャリやはり草摺りの鳴る音がして鎧を着こんでいることが分かる、手で触れればやはり鶴姫の胴丸鎧だ。しかし、反対側に体を捻ったので見えているのは土煙を上げて進軍する軍勢ではない。子どもの頃に遊びまわった尾張の村々だ……が、少し様子が変だ。尾張は美濃と並んで実り豊かなところだ。平手の爺に習った知識では、平安の昔から上国に分類され、都の中級貴族どもは進んで国司になりたがった。中級だから都での出世は望めないが、甘い汁をいっぱい吸って私腹を肥やすために都に近い上国に行きたがる。そんな国司は迷惑千万なのだが、そういう国司たちにむしり取られても、まだ余りある豊かさがあった。だから、尾張の村々は、どこでも活気が...鳴かぬなら信長転生記117『また例の田園風景』

  • RE・かの世界この世界:061『草上のバーベキュー』

    RE・かの世界この世界61『草上のバーベキュー』テル教室ほどの広さに草が刈られている。特徴がある。ほとんど真円に刈られた草地は絨毯のようで、草の丈は二センチほどでしかなく、腕のいい庭師が精密に刈ったみたいなのだ。「プレパラートの巣の跡だ」砲塔の上、双眼鏡で周囲を見渡しながらタングリスが言う。「プレパラート?」「クリーチャーさ。単体では一センチ四方ほどの薄いガラス片にしか見えないんだが、生き物だ。川岸に巣を作って、蟻のように集団で生活している。多くなりすぎると巣を放棄して、新しい営巣地を求めて移動するんだ。全個体が集合するまで、巣の上を円を描いて飛びまわる。それで草が綺麗に刈り取られるんだ」「相当鋭利に出来ているんだな……」「ああ、大型のクリーチャーを集団で襲うこともある」「そんな奴らの巣の上で休憩して大丈...RE・かの世界この世界:061『草上のバーベキュー』

  • 銀河太平記・155『邂逅する者たち・3・』

    銀河太平記・155『邂逅する者たち・2・スロットル』越萌マリ(児玉元帥)なんだ、付いてこないのか。パルスバイクの側車を示すと、孫大人はニヤリと笑った。「命が惜しい」「満州じゃ地平線の向こうまで馬を走らせた仲じゃないか」「何十年前の話アルカ」「そうだな、あの頃、俺は新米の中隊長。大人は西域公司の五番番頭……」「四番番頭アルよ、それに、勝ったらグランマが一晩付き合ってくれるって話だったアル」「そうだったのか。勝ちを譲ってやるんじゃなかった!」「あれは、実力アル!それに、一晩付き合ってやらされたのは、超アナログな帳簿の整理だったアル」「アハハ、そうだったな。じゃあ、今度も西之島のロジスティクスは頼んだぞ」「任せろアル。大事なお得意様アルからなアル!」「だから、その変な中国語はよせ」「普通に喋ったら泣きそうだ、劉...銀河太平記・155『邂逅する者たち・3・』

  • RE・かの世界この世界:060『Cアラーム』

    RE・かの世界この世界60『Cアラーム』テル前にも触れたが、ムヘンは菱餅の形をしている。横に長い◇(菱形)と言ってもいい。菱形の、ほぼ真ん中を東西に流れているのがムヘン川。ムヘン川の真ん中と西の端に玉がぶら下がっている。真ん中の大きいのが城塞都市ムヘンブルグ。西の小さいのが今朝まで居たブァイゼンハオス(孤児院)があるシュタインドルフ。そのシュタインドルフとムヘンブルグを結ぶ川沿いの道を東に向かっている。ノルデン鉄橋を渡って北辺の港ノルデンハーフェンを目指しているのだ。何事もなく進んで行けば、ノルデン鉄橋までは三日の行程だ。二号戦車の倍ほどの広さのある四号戦車の車内だが定員五人のところを子どものロキを入れて六人が乗っている。大きいと言っても戦車だ。長距離バスのように休憩用のベッドも無ければ、シートがリクライ...RE・かの世界この世界:060『Cアラーム』

  • くノ一その一今のうち・49『してやられる!』

    くノ一その一今のうち49『してやられる!』「450年も昔なら、いっしょに戦えたんだろうけどね」ちょっと昔の人工音声のように抑揚が無い、いや、特徴が無い。多田さんは、顔ばかりではなく声もつかみどころがない。「そのっちはいいものを持っているよ。素直なくノ一だが、自分を殺しているわけではない。九割九分任務と弁えても一分のところで自分を捨てないでいる。忍びと云うのは非情なものだが、非常の根元にあるのは情けだ。伊賀も甲賀も百地や風魔も、元をただせば山や谷でしか暮らせない弱い里人の群れだ。役小角の昔から、おのれの技を売って里の生活を守ってきた。おのれ一人安穏に暮らすには十分な知恵と才覚、技を持っているのに、おのれ一人の為に生きることはしない。里の妻や子、年老いた親を養うためにワザを生かす。それは、つまりは人への執着。...くノ一その一今のうち・49『してやられる!』

  • RE・かの世界この世界:059『仮想タブレット』

    RE・かの世界この世界59『仮想タブレット』テルムヘン川の南岸を東に進んでいる。本来ならムヘン街道を北に進んでノルデンハーフェンを目指さなければならないんだけど、ひょんなことからシュタインドルフのブァイゼンハオスに寄った。のんびりしていられる旅でもないんだけど、ムヘン川の鉄橋に出るまでは単調な川辺の道だ。インタフェイスを仮想タブレットにして、ここまでのあれこれに思いをいたしてみる。これまでにも散文とも言えないメモのようなことを書いている。ブリュンヒルデ主神オーディーンの娘にしてムヘンの囚人。始まりの草原からやってきたわたしとケイトと行動を共にして脱走。そして、わたしたちを引き連れてヴァルハラを目指している。父オーディンにぶつけなければ収まらない想いがあるようだ。もし、ヴァルハラが川の向こう程の近さなら、天...RE・かの世界この世界:059『仮想タブレット』

  • RE・かの世界この世界:058『ロキの本気』

    RE・かの世界この世界58『ロキの本気』テルピンポン玉よりは大きく、テニスボールよりは小さい。ロキが思わずポチと呼んだシリンダーだ。我々がビックリしたので、ポチも驚いたんだろう、狭い四号戦車の車内を飛び回って、砲塔の壁や床や天井やらにビシバシと当たる。当然、車内の五人にもポコポコ当たるわけで、悲鳴やら怒声が響き渡る。「大人しくしろ、ポチ!」立ち直ったロキが慣れた手つきで掴まえて、両手で胸に抱くようにしてやると、十秒ほどで大人しくなった。「おまえ、そんなの飼ってたのか!?」険しい顔でタングリスが睨む。タングリスは、車長のシートに座っているので、砲尾の下のロキは見下されて怖さ百倍。我々には礼儀正しいタングリスだが、わんぱく坊主にはカマシテおこうという姿勢だ。むろん異論はない。「そんなもの、さっさと捨てなさいよ...RE・かの世界この世界:058『ロキの本気』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・016『メグ・ロコと呼び合う』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記016『メグ・ロコと呼び合う』トキツカサッ……!はんぱな呼びかけに振り返ると、横断歩道の向こう側に宮田さん。わたしと同じ電車だったんだろうか。改札出たところで信号が変わりそうだったので、小走り。宮田さんは信号に間に合わなかったみたい。やれやれ、信号変わるまで待ってあげよう……と、思ったら、変わったばかりの赤を無視して走ってきた(^_^;)「おはよう」「おひゃようごじゃいま……」「あ、ひょっとして舌噛んだ?」「あ、いしゃしゃか(^皿^;)」トキツカサは微妙に言いにくいんだけど、それに『さん』を付けるとトキツカササンで、サが重なってはっきり言いにくい。「下の名前でいいよ、メグリとか、中学じゃメグって呼ばれてたし。言いやすいでしょ?」「いいですね!じゃ、わたひのこともロコっ...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・016『メグ・ロコと呼び合う』

  • せやさかい・398『もうじき灌仏会』

    せやさかい・398『もうじき灌仏会』さくら山門の桜も盛りを過ぎた。遠目には分からへんねんけど、近くで見ると、桜の花群れの下に若葉が芽吹いてるのが分かる。もう三日もしたら、若葉の方が花群れを圧倒する。なによりも、地べたに落ちる花びらの量が多くなってきた。「全部掃いてしもたらあかんねんで」先週、メグリンやらソニーが来てお花見してる頃は、お祖父ちゃんは、こない言うてた。花びらにしろ落ち葉にしろ、全部掃いてしもたら風情が無いらしい。それが、四月三日の今朝は、掃いてる尻から花びらが降ってくる。「まあ、こんなもんやろ。キリないし」「そうかな、もういいかな?」「ええよ、もう行っといで(^▽^)」「あ、うん。じゃあ、行ってくるね」「箒は片づけとくから、早よぅ」「うん」留美ちゃんは、箒をうちに渡すと、つっかけをカラカラいわ...せやさかい・398『もうじき灌仏会』

  • RE・かの世界この世界:057『さらばシュタインドルフ!』

    RE・かの世界この世界57『さらばシュタインドルフ!』テルえ、あいつか!?ジャンケンの勝負は一発で付いた。連れて行くなら、子どもながらにイケメンで品行方正なフレイがいいと思った。フレイアも女の子なので、少々お転婆でも扱いやすいだろう。それが、わんぱく坊主のロキだ(-“-)。ただのわんぱくなら、まだいい。カエルを投げつけてきた首謀者、それも、捕まっても素直に認めずフレイやフレイアのせいにしようとした。そういう性格が気に入らない。それに、なんでジャンケンなんだ?なんだか、院長先生にしてやられた感じがしないでもない。十三人の子どもたちの中から、よりにもよって。単に、厄介者のロキを放り出したいから……そう勘ぐってしまうほど、ロキを連れて行くのには気が進まない。皆さんの旅に神のご加護のあらんことを!ウダウダ思ってい...RE・かの世界この世界:057『さらばシュタインドルフ!』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 116『天照のゆで卵』

    鳴かぬなら信長転生記116『天照のゆで卵』信長鬼退治が終わって戻ったのは御山の頂上、例の石の前だ。日輪は、ようやく東の空に顔をのぞかせたばかりで、日輪の本性たる天照は、まだ現れていない。石に耳を寄せると、クーークーーと寝息が聞こえる。チャランポランに見えて、あれでも扶桑の総鎮守、神さまの元締め。疲れも溜まっているのかもしれない。昔の俺ならキレているところだが、俺も扶桑の空気に馴染んだか。まあ、機嫌を損ねたらホットケーキが食えなくなるかもしれないしな。「ごめんね、あんまり力になれなかったかもしれない」振り返ると、あっちゃんが見慣れた第一形態(俺の次に可愛い美少女)で済まなさそうにしている。「まあいい、鬼退治では活躍してくれた。俺一人で百匹は鬼を切ったからな。並の陣太刀なら五匹も切れば、脂が載って駄目になると...鳴かぬなら信長転生記116『天照のゆで卵』

  • RE・かの世界この世界:056『堕天使ブリュンヒルデだぞ!』

    RE・かの世界この世界56『堕天使ブリュンヒルデだぞ!』テル二号のエンジンでポンプを動かすのだ!普段の倍ほど目を輝かせて、ヒルデは宣言した。ムヘン街道での出会い以来、中二病的に言動が大げさなブリだが、この時は最高に大げさだった。「タングニョーストが主命により四号を運んできたのは天啓である!シュタインドルフの村とヴァイゼンハオスを救い、その善行により我と我が眷属たちのステータスを上げるのだ!さあ、みな打ち揃って庭に集い、このブリュンヒルデの奇跡を目に焼けつけるがいい!」「無理です、二号は十トンに満たない軽戦車とは言え、エンジンの重量だけで七百キロはあります。クレーンはおろか、目ぼしい工具も無い状態では作業できません」ここに至って身分を隠しても仕方がないので、タングリスは臣下の物言いで、しかし、キッパリとNO...RE・かの世界この世界:056『堕天使ブリュンヒルデだぞ!』

  • 銀河太平記・154『邂逅する者たち・2・スポンソン』

    銀河太平記・154『邂逅する者たち・1・スポンソン』越萌マリ(児玉元帥)孫大人と二人でブンカ―のスポンソン(海側に張り出した連絡通路)に出る。「あんたと喋っていると男言葉になってしまうからな」「儂は、越萌マリでもいいぞ。ネットで時々見とるが、カルチェタランのマダムに負けん女っぷりだ(^▽^)」「冷やかすな。あそこに見張り所がある、あそこまで行こう」「あんなとこまでかぁ……足もとがスノコというのは、どうも落ち着かん」「あそこなら、鉄板の床がある、キャッツウォークよりはいいだろ。なんなら、アンテナのスポンソンまで行くか?」「勘弁してくれ、あそこはジャッキステーを上らなきゃならん。儂はサーカスをしにきたわけじゃない」「じゃ、見張り所だ」見張り所と云ってもリアルに見張りが立っているわけではない、将来の拡張性を考え...銀河太平記・154『邂逅する者たち・2・スポンソン』

  • RE・かの世界この世界:055『女神の子たち』

    RE・かの世界この世界55『女神の子たち』テル朝食が終わって、子どもたちが後片付けや掃除に取り掛かる。我々も出発の準備にかかろうと腰を上げると――ちょっとお待ちを――という風に院長先生が手を挙げた。「少しよろしいでしょうか?」「あ、はい」ヒルデたちは子どもたちと庭に出て、ダイニングはわたしとタングリスの二人で、今日の行程を確認するために部屋に戻ろうとしていた。「ユグドラシルをご存知でしょうか?」「はい、世界の時間を司っているという伝説の木と心得ますが」「子どものころに、おとぎ話で聞いたような……」「実は、伝説でもおとぎ話でもなく、ユグドラシルは存在します。この世界とは、ほんの少しだけズレた亜空間に存在するので、世界樹とはいえ、普段は目に見えません。先の聖戦は実に悲惨な戦争で、この実世界だけではなく、この実...RE・かの世界この世界:055『女神の子たち』

  • くノ一その一今のうち・48『胸の魔石と隧道の金塊』

    くノ一その一今のうち48『胸の魔石と隧道の金塊』トックン……トックン……心(地下戒壇)の闇の中で自分の心臓の音だけが際立つ。闇の向こう、たった今まで老忍の多田さんが身をもって隠していた風穴が露わになった。その向こうは、さらに奥行きを感じさせる。目を凝らせば、かなり先の方では微かに灯りの灯る隧道になっているような気がする。心臓の音は忍びの臆病虫の声だ。単なる怖れではない。この先に踏み込めば命にかかわる。それを告げる忍者の本能的なアラームなんだ。ここへ来るにあたっては、まあやはもちろんのこと、課長代理にさえ告げていない。上忍の課長代理なら夜明けまでには気付くだろうが、今ではないだろう。でも、頭の別のところでは、これが埋蔵金の正体や、その行方、背景を見届ける最後のチャンスだと呟く者がいる。ク…………足が動かない...くノ一その一今のうち・48『胸の魔石と隧道の金塊』

  • RE・かの世界この世界:054『』

    RE・かの世界この世界54『早朝の四号』テル朝の諸々の音で目が覚めた。子どもたちのさんざめき、キッチンでお湯が沸いて食器を並べる音、古びた床の軋みと軋ませている足音、野鳥のさえずり、微かな瀬音……それらは騒音ではなく、朝の微睡みをいやますような心地よさがあった。遠い子どものころ、ひょっとしたらわたしが、いまのわたしであるもっと前のわたしであったころに田舎の祖父母の家で目覚めた時のような安堵感のある諸々の音。その優しい音たちに、もう一つの聞き慣れた音が混じって来た。キュロキュロキュロキュロ……二号ではない、三号……四号か……?四号の履帯の音であると気づくと同時に、一気に現実に戻った。パンツァージャケットを掴むと片方袖を通しただけで庭に出た。子どもたちも二人の先生も出ていたが、上り坂に差し掛かった四号に目を奪...RE・かの世界この世界:054『』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・015『入学式・2』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記015『入学式・2』威風堂々のBGMが流れる中、式場の体育館に入る。BGMは威風堂々だけど、全員サンダル履きなので微妙に締まらない。ペッタンペッタンペッタンペッタンペッタンペッタン………………なんだか人に化けた両生類が行進してるみたい。あ?サンダルに気を取られて気づくのが遅れたけど、お祖母ちゃんのオーラを感じる。振り向くわけにはいかないけど、新入生の保護者席に普通に座ってる感じ。最後までグズってたけど、やっぱり来てくれたんだ。ちょっと嬉しい、家に帰ったら正直に「ありがとう」って言おう。真ん中の通路を挟んで右が男子、左が女子に分かれて座る。チラ見すると、足を組んだりだらしなく座ってる子が一人もいない。背筋が伸びてない子はいるけど、みんなちゃんとしてる。ヨイショ深く座りな...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・015『入学式・2』

  • RE・かの世界この世界:053『院長先生』

    RE・かの世界この世界53『院長先生』テルここの子たちは、みな戦災孤児です。院長先生は、ごく当たり前のことを言った。ヴァイゼンハオスというのは孤児院という意味なのだから、当たり前だ。「そうですね、当たり前のことです」表情を読んだのか、言い当てられてしまった。「ムヘンで一番安全なところですが、最も辺鄙なところでもあります。だから、ここが孤児院であることを誰も疑いません」「なんだか意味深ですね」「じつは、大切な人を預かっているのです。それをカモフラージュするために孤児院をやっています」「どういうことでしょう?」グリとふたりで顔を見合わせてしまった。「十年前に、さるお方からとても大切な人を匿うように言いつかりました」「……子どもなんですね?」院長先生は、黙って頷いた。「その子を送り届けてはいただけないでしょうか...RE・かの世界この世界:053『院長先生』

  • せやさかい・397『うちの桜』

    せやさかい・397『うちの桜』さくらそろそろ桜も満開の春休み。「来週あたりは大変になるだろうねえ……」境内の掃除が一段落して、山門横の桜を見上げる留美ちゃん。「ああ、せやねえ……」これだけで意味が通じるうちらは、ほんまの姉妹みたい。姉妹みたいやけど、ほんまは中学一年から、ずっと同じクラスやいうお友だち。お家の事情で一人暮らしせんとあかんようになって、それなら「いっしょに暮らそう!」ということになって、早や三年、足掛け四年。うちも留美ちゃんも体動かすのん好きやから、特に決められたわけやないけど、本堂やら境内やらは二人の受け持ち。都会のお寺にしては広い境内で、曽ばあちゃんの頃は幼稚園やろかと本気で思たことがあるらしい。境内の塀の際には花壇があって、檀家の婦人部の人らが手入れしてはったんやけど、コロナの影響で足...せやさかい・397『うちの桜』

  • RE・かの世界この世界:052『ポンプ小屋』

    RE・かの世界この世界52『ポンプ小屋』テルポルシェティーガーだな……ポンプ小屋の残骸を取り払い、ポンプとパワーパックを露出させるとタングリスが結論付けた。屋根やら壁の焼け残りを取り除いた下には孤児院の水汲みポンプとしては大げさすぎるメカが出現した。「ポルシェのトラ?」付き添ってくれているフリッグ先生がランプを差し出しながら質問する。トラが居るの?こわ~い!かっこいい!食べられる~!子どもたちもティーガーという言葉に触発されてふざけている。本来なら就寝時間が迫って来る時間らしいのだが、作業が面白く、夕食後みんなで見学しているのである。「試作で不採用になった戦車です。ガソリンエンジンで電気を起こして、その電気でモーターを回す仕組みです。ガスエレクトリックと言うんですが、不採用になったんでシステムが宙に浮いて...RE・かの世界この世界:052『ポンプ小屋』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 115『目指せバケツ谷』

    鳴かぬなら信長転生記115『目指せバケツ谷』信長篠突く雨の中、行軍しつながら再度出した偵察隊が戻って来る。「御注進!御注進!敵はバケツ谷にて休息し雨やみを待っております!」「俺たちも雨宿りするか、もうパンツの中までグチュグチュだし(^_^;)」桃太郎が情けないことを言う。「このまま前進だ!敵の軍列は伸びきったままバケツ谷で停まっている。ならば、三千の軍勢でも容易に本陣が突けよう!大将の首さえ獲ってしまえば、この戦は勝ちだ!このまま突撃しろ!」「あ、でもでも、雨の中走ったら体が冷えて……」そこまで言うと、桃太郎は人よりも大きな顔を寄せてくる。「な、なんだ(;'∀')!?」「オレ、お腹弱いから、冷えると……したくなる」「え、なにがしたくなるのだ?」すると、いっそう顔を寄せてくる。「……鶴ちゃん、いい匂いがする...鳴かぬなら信長転生記115『目指せバケツ谷』

  • RE・かの世界この世界:051『自己紹介の前にバケツリレーだ』

    RE・かの世界この世界51『自己紹介の前にバケツリレーだ』テル近づいてみると半分近くが焼け跡だ。残りは火事の後に住めなくなって放棄され、雨風に晒されて朽ち果てた様子だ。ムヘンで一番安全と言われたシュタインドルフ。こうなってしまうには事情があったんだろうけど、事情に思いいたす前に無残さに気持ちが萎えてしまう。S字の坂道を上れば入り口というところで子どもたちが駆けだしてきた。ウワー戦車だ!カッコイイ!兵隊さんだ!オレも乗りた~い!あたしも~!後ろから修道女、おそらく先生が追いかけて、なにやら注意しているが、子どもたちの馬力は、その上を行く。孤児院の敷地に入って停めようと思っていたが、取り囲まれてしまったので、やむなくゲートの前で停車した。「辺境警備隊のタングリス一等軍曹です、支援物資を搬送してまいりました、あ...RE・かの世界この世界:051『自己紹介の前にバケツリレーだ』

  • 銀河太平記・153『邂逅する者たち・1・ブンカ―』

    銀河太平記・153『邂逅する者たち・1・ブンカ―』越萌マリ(児玉元帥)ブンカ―のドックは中型小型の船や水陸両用車でごった返していた。ドックを上がった待機エリアや整備エリアも足の踏み場が無い状況だ。到着したボランティア、配置の指示や装備の配給を待つ者、補給品の整理や管理をする者、装備を修理する者、負傷者の手当てをする者とされる者、戦死者を確認しながらシュラフに収める者、戦闘配食の用意をする者、片づける者、ドック各所に設置されたモニターを睨んで、どこまで正確か分からない戦況に一喜一憂する者、見ているだけで魚のように表情のない者、そういう、もう戦争と言っていい西之島紛争の前線基地の様子をマスとして捉える。数字としての戦闘経過や戦闘配置を見るよりも確かな戦争の『現在』が分かる。活気と疲労がせめぎ合っているが、負け...銀河太平記・153『邂逅する者たち・1・ブンカ―』

  • RE・かの世界この世界:050『バケツとジェリカン』

    RE・かの世界この世界50『バケツとジェリカン』テルペチャペチャペチャ……ペチャペチャペチャ……ペチャペチャペチャ……葦の草叢を三つの足音が逃げていく。タングリスと目配せして川下と川上に分かれて追いかける、それぞれケイトとブリを従えている。融合体との戦いで、四人は阿吽の呼吸で行動できるようになったようだ。タングリスの掲げた手が草叢の上に上がり「そこ」を示している。「そこ」とは、カエル投げの犯人が一秒後に到達する位置だ。今現在の場所を指しても、飛び込んだ時には手遅れになる。セイ!その未来位置にケイトと一緒に飛び込む。タングリスとブリも飛び込んで瞬くうちにご用!襟首と腰の後ろを掴んで持ち上げると、ジタバタと手足をもがかせて抵抗するが、いかんせん小さい。はなせ!はなせ~!はなせ~ヘンタ~イ!「おまえたち、ヴァイ...RE・かの世界この世界:050『バケツとジェリカン』

  • くノ一その一今のうち・47『心の奥』

    くノ一その一今のうち47『心の奥』心(甲斐善光寺の地下戒壇)の中は陰圧が掛かっていて、外の戒壇に空気が漏れないようになっている。だから、ニオイも気配も外に漏れることが無く発見が遅れた。しかし、陰圧が掛かっているということは、吸い込まれた空気がどこかに抜けているということだ。抜けていく方向に何かがある、恐らくは信玄の埋蔵金の大半を収めた洞窟が。甲府城の地下にあったのは、埋蔵金のパートワンというか見せ金だ。本命の埋蔵金に寄せ付けないためのダミーに過ぎない。立ったままの姿勢でじっと動かない。感度をよくするために両手をパーにして伸ばしている。動いてしまえば、空気をかき回してしまい、この微かな空気の流れを見失ってしまう。両手を広げて立っているなんて、忍者にあるまじき無防備さだ。腕のいい忍びが吹き矢でも吹けば逃げよう...くノ一その一今のうち・47『心の奥』

  • RE・かの世界この世界:049『シュタインドルフのヴァイゼンハオス』

    RE・かの世界この世界49『シュタインドルフのヴァイゼンハオス』テルムヘンブルグの西端、シュタインドルフのヴァイゼンハオスを目指している。シリンダー融合体との闘いが苛烈だったせいか、単調なムヘン川の景色のためか、武骨な二号戦車のエンジンの振動さえも心地よく、つい居眠りしてしまいそうになる。「よく、こんな体勢で寝られるなあ」知恵の輪のように絡み合って寝ているヒルデとケイトに感心したのは、寝てはいけないと思う自分への戒めであるのかもしれない。敵の襲撃に備えて、狭い車内に居るようにしているのだ。「この緩い峠を越すとシュタインドルフです。車外に出ても大丈夫でしょう」「どんなところなんだろう、シュタインドルフというのは?」「厳つく聞こえますが、日本語に訳せばシュタインが石、ドルフが村ですから、石村です」「石村……」...RE・かの世界この世界:049『シュタインドルフのヴァイゼンハオス』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・014『入学式・1』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記014『入学式・1』こんなに可愛いんだよ、元気出してがんばれo(>ω<)o!証明写真のメグリがこぶしを握って励ましてくれる。魔法じゃないんだ、アプリだよ。白黒の証明写真にアプリを使って色を付け、もう一つのアプリで動かしてみた。メッセージを打ち込むと写真に見合った人工音声で喋ってくれる。「へえ、なんだか魔法みたいね」引退魔法少女のお祖母ちゃんも珍しそうにのぞき込んでいたよ。有料アプリなんだけど、5人分は無料の体験版。月も改まって4月1日の今日は入学式。クラスも発表されるし、本格的な高校生活が始まる。靴下までおニューの制服。おニュー独特の匂い。袖口や首筋に触れるブラウスの襟の微妙な硬さ。歩くたびに胸元から新品の香り。ローファーも新品で足を下ろすたびにコツコツと音がする。髪...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・014『入学式・1』

  • RE・かの世界この世界:048『ブロンズですか?』

    RE・かの世界この世界48『ブロンズですか?』テルケイトの回復スキルによってHPを全快したタングリスは、一本だけ残った鞭を高速回転させて突っ込んでいく!ビシビシビシビシビシビシ!我々のために時間稼ぎをするつもりなんだ……タングリスの自己犠牲の精神に胸が熱くなる!しかし逃げるわけにはいかない!タングリスの自己犠牲に甘えるわけにもいかない!旅は始まったばかりだ!一瞬ケイトを見上げるが、十字姿勢のまま呆然と浮遊するばかりで、わたしやヒルデのHPまで回復してくれる様子はない。「テル、突っ込むぞ!」「おう!」ヒルデとわたしは、HPを回復することなくタングリスに続いた。数秒の間に事態は変わった。ヒルデの突進力はすごく、瞬くうちにタングリスに追いつき、首が千切れるんじゃないかという勢いでツィンテールを旋回させた。ブビュ...RE・かの世界この世界:048『ブロンズですか?』

  • せやさかい・396『うちのWBC』

    せやさかい・396『うちのWBC』さくらWBC…………字面で見ると、トイレのドアを二本の指で開けてるとこに見える。言葉で聞いても、ダブルビーシ、ダブルシー、なんかトイレっぽい。思わへん?思わないよ(´艸`)。コタツに向かい合って座ってお煎餅齧りながらテレビを見てる。テレビ言うても放送局の実況と違って、ユーチューブ。留美ちゃんと二人、ライブでは見られへんかったWBC決勝戦、日本VSアメリカ戦のダイジェストを観てる。留美ちゃんは感動しまくりやねんけど、うちはあかん。どうも、野球というのは性に合わん!どうも、うちは日本人としてはかなり珍しい部類に入るんやと思う。たとえばさ、古典の授業で万葉集とかあるでしょ。うちは、言葉の意味が分からんでも、なんとなく耳に心地い言葉を聞いてるだけで面白い。――あかねさす紫野(むら...せやさかい・396『うちのWBC』

  • RE・かの世界この世界:047『シリンダー融合体との激戦!』

    RE・かの世界この世界47『シリンダー融合体との激戦!』テル連携して戦うのは初めてだ。にもかかわらず、四人はベテランのパーティーのように展開した。弓を得物とするケイトは後方から矢を射かける。タングリスは戦車兵なのだが、いつのまにか五メートルはあろうかという鞭を構えて融合体の右翼にまわっている。ブリはヘリコプターのようにツィンテールを旋回させて左翼でホバリング。わたしは、ソードを右手にダガーを左手に構えて二刀流。合図があったわけではない。四人とも、無意識に全員の態勢が整うのを待っていた。そして、ほんのコンマ二秒で占位し終えると、一斉に融合体に跳びかかって行った。トリャー!ブリュンヒルデは一声を放つとツィンテールを高速回転させながら融合体の周囲を飛んで蹴散らしていく。セイ!セイ!掛け声も勇ましく、一振りで数十...RE・かの世界この世界:047『シリンダー融合体との激戦!』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 114『いざ出陣!』

    鳴かぬなら信長転生記114『いざ出陣!』信長敵部隊を発見しました!五組の偵察隊の内三組が敵を発見した。「三組とも発見だと!どれが本当なんだ(;'∀')!?」矢継ぎ早に三隊の報告を聞いて桃太郎は焦った。当然部下たちにも動揺が走る。「落ち着け、三隊とも正しい報告をしておる」「どうしてだ、偵察隊は一里(4キロ)の間隔をあけて出してある、三組とも敵部隊を発見するのはおかしいじゃないか!?」「同じなんだ。二番から四番の偵察隊が発見している、それぞれ、同じ軍勢の頭と腹と尻尾を発見したんだ。敵の行軍は、少なく見積もって三里、常識的に考えれば四里ほどになるだろう」「四里……16キロの行軍か!?」「敵の行軍は何列だった?」二列!三列です!四列でした!「バラバラじゃないか!役に立たん偵察隊だ!」気の短そうな猿が顔を赤くする。...鳴かぬなら信長転生記114『いざ出陣!』

  • RE・かの世界この世界:046『荒ぶるブリュンヒルデ!』

    RE・かの世界この世界46『荒ぶるブリュンヒルデ!』テル待てっ!!タングリスがイグニッションを押そうとした時、凛として制止の声があがった。え?それがブリの声だと脳みそが理解するのに数秒を要した。いつもの気まぐれで小学生気分が抜けない中坊のようなブリではなかった。凛とした声に瞬時戸惑ったが、身を乗り出したブリの表情は幼いながらも天晴れヴァルキリアの姫騎士のそれであった(゚Д゚)!驚く間もなくブリは続ける。「禍々しいものがやってくるぞ!」そう続けてペリスコープに食らいつくブリ。タングリスもキューポラの八つあるペリスコープを舐めるように確認した。「「あれは……!?」」発見の声は主従同時だ。「おまえたちも見ろ」促されて、わたしもケイトとペリスコープに食らいついた。なんだ、あれは……(°д°)?それは、数千個の泡が...RE・かの世界この世界:046『荒ぶるブリュンヒルデ!』

  • 銀河太平記・152『ブンカ―へ救急出動』

    銀河太平記・152『ブンカ―へ救急出動』メグミ島のロボットの9割が戦死した。並列化を解いて、相互の連絡は手旗信号を使ったり発光信号に変えてみたり、全てアナログ。デジタルでなくとも電気やパルスを使った通信であれば、漢明軍はいかようにもアクセスし、数秒で発信元を突き止めて攻撃を加えてくる。ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ発光信号が二度繰り返され、こちらは――ピ――と一度だけの了解信号を送る。○○地区で重傷のロボットが出た。その救援要請に――了解――の信号を送ったところ。平時なら救援と回復に関するスキルを送ってやれば、インストールしたロボットが99%わたしと同じスキルで修理、回復をする。しかし、今は島でA級スキルを持っているエンジニアはわたしとお岩さんだけだ。ついこないだまでは、わたし程度のエンジニ...銀河太平記・152『ブンカ―へ救急出動』

  • RE・かの世界この世界:045『シリンダー』

    RE・かの世界この世界45『シリンダー』テル異世界から持ち込まれた愛玩動物なんです「シリンダーは愛玩動物なんですか?」ハッチの縁に腰を預け、戦い慣れた下士官の余裕でグリは語る。シュタインドルフまでの道のりはムヘン川の南岸を一本道なので、操縦をオートにしてキューポラから上半身を晒している。ブリとケイトは最初っからエンジンルームの上にドンゴロスを敷いて寝っ転がっている。四人乗りに改造されているとはいえ、定員三人の二号戦車の中で長時間大人しくしているのは厳しい。じっさい、ムヘンブルグの北門で出会った前線帰りの二号戦車は同じように砲塔やエンジンルームの上に乗員を載せていた。車内にいるとストレスのエンジン音だが、外に出てみると心地よい振動になるので、ブリとケイトは眠ってしまっている。「トール元帥の平定が落ち着いたこ...RE・かの世界この世界:045『シリンダー』

  • くノ一その一今のうち・46『心の中』

    くノ一その一今のうち46『心の中』その二日後の夜、甲斐善光寺に忍んだ。誰にも言っていない。まあやに言えば心配をかけるし適当な嘘もつかなきゃならない。課長代理に言えば大事になる。金堂には破風から入った。ホタ音がするような着地はしないが、表現すると、こんな感じ。草原の国に忍んだことを思い出す。あの時も寺院の破風から侵入した。まだ何カ月もたっていないけど何年も前の事だったような気がする。次は破風からの侵入は避けよう。忍者のワンパターンは身を亡ぼす。いっそ真っ暗ならいいんだけど、うっすらと常夜灯が点いている。誰かに見られているような錯覚。分かっている、天井に描かれた八方睨みの竜だ。戒壇巡りと並ぶ善光寺の名物。最初に来た時に三村紘一に化けていた課長代理が教えてくれた。真下で手を叩けば「天人の警蹕のように響く」と課長...くノ一その一今のうち・46『心の中』

  • RE・かの世界この世界:044『ムヘン略記』

    RE・かの世界この世界44『ムヘン略記』テルムヘンの地は菱餅のような形をしている。菱餅の中央に城塞都市ムヘンブルグがあり、その北を東西に荒川ほどのムヘン川が流れている。昔は化外の地ムヘンと呼ばれ、主神オーディンの力も及ばぬ蛮族と化け物の地と嫌われ、神族でさえ足を踏み入れることは稀であった。しかし、オーディン紀元千年紀のころに、ムヘンの南端、菱餅の下のほうが『始りの荒野』と繋がっていることが発見された。始まりの荒野は、他の異世界と繋がっていて、そこから様々な異世界の神々や人間やクリーチャーが現れてはオーディンの知ろしめす大地や国々を脅かしていることがジークフリートの冒険で知られた。ジークフリートの非業の死のあと、ムヘンの地の平定を任されたのがトール元帥だ。トール元帥は、城塞都市ムヘンブルグを築き、ムヘンと始...RE・かの世界この世界:044『ムヘン略記』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・013『よど号と須之内写真館』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記013『よど号と須之内写真館』川辺の柵の工事は予想に反して三日もかかって、三月も末日の31日。リアルの橋は工事中でも渡れるけど、わたしのは1970年に渡るための戻り橋。ガチガチに工事用フェンスで囲われては渡れません。今日もダメだったら、令和の世界で白黒の証明写真を撮り直しとビビっていたら、なんとか、昨日の夕方には終わった。Mの標も無事に再発見して戻り橋を渡る。自動でない改札やガックン電車にも慣れて、昭和の宮之森駅が見えてくる。あれ?軽く驚く。令和では八分咲きだった桜が、まだチラホラの二分咲きでしかない。乗った駅はすでに昭和の奥宮駅だったんだけど、写真のこととか気になって桜には気付かなかった。令和とは桜の種類が違うとか?スマホを出して調べてみる。わたしのスマホは魔法少女...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・013『よど号と須之内写真館』

  • RE・かの世界この世界:043『え、マジか!?』

    RE・かの世界この世界43『え、マジか!?』テルああ、なんでも使ってくれグリ(タングリス)が鷹揚に返事をすると、小さな敬礼を返してこちらのゲペックカステンを開ける軍曹。「なんだこりゃ、お菓子屋でもやるつもりなのか?」「…………(゚ロ゚;)Σ(゚ロ゚#)」焦るブリとケイトを尻目にタングリスは方頬に笑みを浮かべて、こう言った。「シュタインドルフのヴァイゼンハオスの慰問を兼ねているんだ。ツ-ルはノルデンハーフェンで補給してもらうことになっている」戦争でいろんなものを見てきたのだろう、軍曹はしみじみとした横顔で続ける。「ヴァイゼンハオス……戦災孤児たちだな」「ああ、仰々しい慰問じゃ、シスターたちもかえって困るだろうからな」「なるほど、いや、停めてすまなかった。ツールは他の奴から借りるわ」「せっかくだ、キャンディー...RE・かの世界この世界:043『え、マジか!?』

  • せやさかい・395『湘南からの写真』

    せやさかい・395『湘南からの写真』さくら朝に本堂であげるお線香の順番。ご本尊の阿弥陀さま⇒聖徳太子ご尊像⇒歴代住職絵像いつもやったら、この三つなんですけど、昨日から一つ増えた。釋恋女(しゃくれんにょ)さんのお骨。釋が付くのは浄土真宗の法名です。他の宗派で言うところの戒名。法名は、お葬式で導師を務めた坊さんが付けます。釋恋女と付けたのはテイ兄ちゃん。「恋の字使うのは、ちょっと艶めきすぎてへんかあ」おっちゃんは反対したんやけど、テイ兄ちゃんは押し切った。「昴が『恋』の一字は入れてくれて言うしなあ、俺も『恋』は外されへんと思うんや」そない言うて仮位牌にけっこう上手な字で書いたんが六日前。そうなんです、この釋恋女さんは、俗名今井瑞穂。つまり、うちと留美ちゃんが毎朝自転車を預けてるスナック『はんぜい』の奥さん。奥...せやさかい・395『湘南からの写真』

  • RE・かの世界この世界:042『ゲペックカステン』

    RE・かの世界この世界42『ゲペックカステン』テル北門は南側の正門ほどの大きさではないが賑わいは比べ物にならない。城塞都市の日常生活をまかなう物資を積んだ大小さまざまのトラックが行き来し、商売や仕事で出入りする人々がバスや車、あるいはバイク、あるいは荷車や自転車、近隣の者は行商の大荷物を背負って行き来している。道の中央二車線は軍用車優先で、軍用のハーフトラックや装甲車、戦車が通る。中でも快速で軽快な二号戦車が半分近くを占めていて、我々の二号戦車も、その中に混じっている。「なるほど、これなら目立たないな」そう呟くと、タングリスがクスリと笑う。「目立たないもなにも、われわれ四人は正規の警備兵として登録されています。遊撃警備隊に属しているので、どこをどう通ろうと怪しまれません」「でも、こんな子供みたいなの連れて...RE・かの世界この世界:042『ゲペックカステン』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 113『なんでこうなるんだ?』

    鳴かぬなら信長転生記113『なんでこうなるんだ?』信長ヒヒーーーン!!なに奴!?俺の登場に馬が棹立ちになり危うく振り落とされそうになっているが、さすがに素戔嗚の化身たる桃太郎。カツカツと輪乗り(その場で丸く回って、馬の勢いを鎮める乗り方)し『待ったなし!』をかけられた関取のような目で睨んできた。はてさて、どうやっていなしてやろうか。すると、奴の方が恋人を発見したように瞳孔と口を全開にして意外な反応を示す。「や!やややや!大三島の鶴姫ではないか!」え?あ!?そうか、俺が身に着けているのは、大三島は大山祇神社に伝わる重要文化財の鶴姫の胴丸鎧。鶴姫は全国区的なヒロインではないが、大山祇神社は厳島神社と並ぶ瀬戸内の伝統ある大神社。桃太郎にしろ素戔嗚にしろ面識があっても不思議ではない。それに、うかつに飛び出したが、...鳴かぬなら信長転生記113『なんでこうなるんだ?』

  • RE・かの世界この世界:041『二号戦車』

    RE・かの世界この世界41『二号戦車』テル冗談のように見えたのは、数時間前まで乗っていたラーテのせいだろう。ラーテは1000トンもある超重戦車だったが、目の前の石畳で停車したのは10トンあるかどうかの軽戦車だ。呆気に取られて、気づくのに数秒を要したけど、それは二号F型だ。ほら、『ガルパン』の劇場版で、幼いころの西住姉妹が乗っていたやつ。大きさは宅配便のトラックほど。いや、高さは2メートルを切るから、宅配便のトラックよりも低いかもしれない。カチャキューポラのハッチを開けて出てきたのは別行動をとっていたタングニョーストだ。「二号でいくのか?」「ああ、操縦はタングリスがやってくれ」「やっぱり、ここを出ると顔が指すんだな」「城塞は元帥のコントロールが行き届いているが、街道にはいろんな者がいるからな」「二号では心も...RE・かの世界この世界:041『二号戦車』

  • 銀河太平記・151『西之島への迎え』

    銀河太平記・151『西之島への迎え』越萌マイ貴様が来てくれたのか!?無人のはずのオートパルス車のドアが開いたことにも驚いたが、そこから出てきたドライバーに驚いた。「元帥閣下の一大事、駆けつけるのは自分の職分であります」さすがに軍人丸出しの敬礼は控えて、それでも国防軍礼式通りの気を付けで応えてくれる。「貴様の事だ、抜かりは無いだろうが、仔細は車の中にしよう」脊髄反射で、こちらも越萌マリの口調が陸軍元帥に戻ってしまう。「はい、ではご乗車ください」「うむ」パルス車は、他の観光用や個人のパルス車、それに伝統的なヨットたちが出入りするのに紛れて江ノ島ヨットハーバーを出発した。「まだ現役なのか?」「心意気です」車に乗ってハンベをオンにすると、表示された運転手のIDは現役の陸軍准尉になっていた。「政府の西之島への対応に...銀河太平記・151『西之島への迎え』

  • RE・かの世界この世界:040『噴水の縁に腰掛ける』

    RE・かの世界この世界40『噴水の縁に腰掛ける』あれだけ寄って来た子どもたちが見向きもしない。無辺街道で出くわしてから、ずっと『ブリ』と呼んでいるが、それは、ただの短縮形、あるいは愛称だ。正しくはブリュンヒルデで、厳密にはブリュンヒルデ姫。呼びかける時は『殿下』あるいは『ユアハイネス』を付けなければならない。囚われの身であることを考慮しても、最低『様』は付けなければならないだろう。トール元帥が『ュンヒルデ』を取ったのは、ヴァルハラに着くまでの心得くらいに思っていたのだが、本営を出てからのムヘンブルグの人たちは一向に関心を示さない。「たいした力なのだなあ、トール元帥は」「これなら、ブァルハラに着くまで誰にも気づかれないかもね。元帥はおっかなかったけど、ちゃんとブリのこと思ってくれてるんだね(´∀`)」ケイト...RE・かの世界この世界:040『噴水の縁に腰掛ける』

  • RE・かの世界この世界:039『トール元帥』

    RE・かの世界この世界039『トール元帥』広いのか狭いのか……高いのか低いのか……真っ暗で見当が付かない。踏みしめる足の裏の感触が硬質なのと、外よりもヒンヤリした空気なので石造り……でも、足の裏に床の凹凸や石材の継ぎ目は感じられない。石材だとしたら、相当にカッチリ作られた建造物だろう。タングリスが運転手みたく先頭になっている電車ごっこの縄は微かに発光していて、前に居るケイトの緊張した輪郭が仄かにうかがえる。その前に居るはずのブリの姿は気配でしかない。数十秒……いや、数分も歩いただろうか、前方の景色がウッスラと浮かび上がる。太い二本の柱が立っている。タンクローリーのタンクの部分を垂直に立てたほどの太さがあって、エンタシスになって下の方がわずかに細い。なにかの結界だろうか……柱の上部に二本桁を渡せば極太の鳥居...RE・かの世界この世界:039『トール元帥』

  • くノ一その一今のうち・45『念願のお墓詣り』

    くノ一その一今のうち45『念願のお墓詣り』撮影というのは水ものだ。ちょっとしたトラブルが撮影の進行を遅らせる。夕べ、あたしと課長代理は甲府城の地下で木下の忍びたちと死闘を繰り広げていたけど、地上の甲府城でも監督たちが、これからの撮影について頭を絞っていた。『吠えよ剣』はアクション系エンタメドラマで、見る側は茶の間でドキドキしたりアハハと笑ってるだけでいいんだけど、ドキドキアハハにするためにはチャンネルを合わせてもらわなくてはならない。たとえ、仕事の疲れで寝てしまったり、ミカンの皮を剥いていたり、スマホの操作をしながらでも、チャンネルさえ合わせてもらっていれば視聴率が稼げる。業界用語でいう数字が取れる。限られた予算と製作時間で成し遂げるのは大変なんだけど、監督やスタッフたちは、その限られた中で全力を尽くす。...くノ一その一今のうち・45『念願のお墓詣り』

  • RE・かの世界この世界:038『ムヘンブルグ城塞都市』

    RE・かの世界この世界038『ムヘンブルグ城塞都市』ムヘンブルグ城塞都市の正門はダムに似ている。頂部のムヘンブルグの亀の子文字が無ければ、下から見上げた黒四ダムに間違えたかもしれない。正門の下半分は重厚な額縁のように段々になっていて、一番奥の下方は学校の昇降口ほどの大きさで、宅配便の車が通れるほどでしかない。ガクンガクンガクンガクンガクンガックン超重戦車ラーテが近づくと、二層目、三層目、四層目、五層目と広がっていき、最後に一番外側の六層目ゲートまで開いて、小学校の講堂程のラーテは微速で入っていく。入った直後から六層のゲートが閉じていき、ラーテの尻が入ると同時に全てが閉じられた。「わたしはラーテを格納しますので、タングニョーストが鎮守府までご案内します」タングリスに先導されてラーテを降り、中央通りに足を踏み...RE・かの世界この世界:038『ムヘンブルグ城塞都市』

  • 巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・012『戻り橋が使えず志忠屋に行く』

    巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記012『戻り橋が使えず志忠屋に行く』今日は無理だよ。新聞を取りに行って戻ってきたお祖母ちゃんがキッパリと言う。「ええ、なんでぇ!?」今日は証明写真を受け取りに行く日だ。一日の入学式に間に合えばいいんだけど、それだとギリギリになる。「川の柵を替えるんだって工事が始まっちゃった」「ええ、そんな予告なかったよ」ご近所で公共工事がある時は回覧板とかで予告が出て、現場にも――〇日から工事やります――的なお知らせが貼ってある。前触れもなくいきなりというのは勘弁してほしい。「ほら、石見銀山と堺だったかで、川の柵が壊れて人が亡くなったり怪我したりってのがあったじゃない」「あ、ああ……他に渡る手段ないの?」「時空を渡る橋なんて、そうそう無いわよ」「だろうねえ……」そこで予定を変更した。...巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・012『戻り橋が使えず志忠屋に行く』

  • 宇宙戦艦三笠50[そして再びの始まり]

    宇宙戦艦三笠50[そして再びの始まり]修一「キャ!」「イテ!」ぶつかったことと二人で悲鳴を上げたことだけが確かな現実だった……あとは唐突に切り替わった夢のよう。さっきまでいたピレウスも、たった今ぶつかって二人そろって尻餅をついている横須賀国際高校の校門の前も夢かリアルかよく分からなかった。街の喧騒と例年になく早い木枯らしが頬をなぶっていく感覚で、少しずつ現実感が蘇ってきた。「なんか、唐突な帰還……帰還ですよね……?」「いつまでひっくり返ってんだ。みんな見てるぞ」天音に言われて、トシは意外な素早さで立ち上がった。――やっぱ、旅立ち前のトシとは変わってる。あの時は電柱の陰に隠れて、目が合うと逃げ出したもんな――天音は、そう思ったが、もうひとつのことが気になった。「修一と樟葉はやっぱり、ピレウスに残ったんだ……...宇宙戦艦三笠50[そして再びの始まり]

  • RE・かの世界この世界:037『超重戦車ラーテ』

    RE・かの世界この世界037『超重戦車ラーテ』それは巨大な戦車だった。重量1000トン、全長35m、全幅14m、高さ11m小さな小学校の講堂ほどもある。それで名前は『ラーテ』で、ネズミという意味だから恐れ入る。上がったところはエンジンルームと操縦室の隔壁の間で、車外と車内の各所に移動するための空間になっている。最大50人の戦闘部隊を収容できる兵員室でもあるので、ブリーフィングもやるため、壁にラーテの三面図と諸元が貼ってあるのだ。「昔は、おまえたちが曳く二頭立ての戦車だったのにな」ブリが触れると、三面図が、古代ローマにあったような二頭立ての戦車になった。赤いチュニックの上に甲冑を着た金髪のマッチョが乗っている。勇ましくはあるんだけど、どこかマンガだ。マッチョの振りかぶっている得物は巨大なンマー、戦車を曳いて...RE・かの世界この世界:037『超重戦車ラーテ』

  • パペッティア・008『久々の親父』

    パペッティア008『久々の親父』晋三『そのまま前に進みなさい』親父の声が言うので、夏子は予防注射の順番が迫ってきたようにオズオズと前に出る。すると、前のモニターに親父の上半身が現れた。背景はビデチャをやる時のようにボカシが入っていてよく分からない。「この部屋に居るんじゃないの?」『居るとも言えるし居ないとも言える』「えと……なぞなぞ?」『いや、そこが一番よく聞こえる。三つのメインスピーカーから等距離なんだ』「あ、ああ、そういう意味……ここがベストね」5センチほど微調整、ちょうど、目の前に親父が立って喋っているような感じになる。『ハハ、夏子は賢い。わたしが言ったポイントでは近すぎるか』「ハハ、頭の中で声がする感じだから。で、リアルお父さんはどこにいるの?」『ちょっと訳があって、今は、この画面を通してしか話が...パペッティア・008『久々の親父』

  • せやさかい・394『せや、花粉症やってんわ!』

    せやさかい・394『せや、花粉症やってんわ!』さくら歳を取ると鈍くなる……て、言うたらお祖父ちゃんに怒られそうやけど(^_^;)頼子さんがヤマセンブルグに行ってしもたことも、江戸川アニメに行って人生初の声優(花園あやめさんの相手役で、3カットだけやけどメチャビビった)やったのも、遠い思い出みたいな感じになって、この四五日は、すごく穏やかに一日が過ぎていく。子どもの頃は、大好きな人形の腕が取れて、ムリクリ直そ思て、がんばったら、今度は首が取れて――もう人類なんか滅びてしまえ!――なんて何カ月も落ち込んだり。お父さんが珍しく「三人でご飯食べにいこ!」言うて連れてってくれたファミレス、そのお子様ランチに立ってた日の丸の旗を世界最高のラッキーアイテムや思て、ダイソーで買うてもろた宝箱の中に入れて、時どき開いてはニ...せやさかい・394『せや、花粉症やってんわ!』

  • 宇宙戦艦三笠49[そして、トシとみんなの決意]

    宇宙戦艦三笠49[そして、トシとみんなの決意]修一三笠を飛び出したトシは地理的にも心理的にも自分の居場所を見失っていた。人類が滅亡してから数百年。惑星ピレウスは密林状態になっている。みんなからはぐれてしまうと、もう元の場所が分からない。――自分が残る!――そう宣言して、クローンだから能力が無いと言われて、今まで人間だと思っていたロボットが「おまえはただの機械なんだぞ」と言われたように滑稽で惨めだ。生体反応を示すモジュールは、駆けだすと同時にオフになった。これは、仲間同士位置を見失わないための測位システムで、身に危険が迫ると自動でオフになる。敵に位置を知られないためのセキュリティーでもあるのだ。――スイッチオン――と思いさえすれば、いつでもモジュールはトシの居場所を発信する。が、トシはその気にはならなかった...宇宙戦艦三笠49[そして、トシとみんなの決意]

  • RE・かの世界この世界:036『タングリスとタングニョースト』

    RE・かの世界この世界036『タングリスとタングニョースト』その声はタングリスか(⚙◇⚙)!?穴からの声にブリの目が輝いた。ブリの声に勢いづいて飛び降りてきたのは戦闘服に身を包んだ二人の美少女だ。「タングリス!タングニョースト!」100ワットの電球が点いたような明るさで立ち上がったブリに二人の美少女が駆け寄り、ハッシと抱き合った。「やっとお出ましになられたのですね!」「ああ、神のお導きで、この二人に出会えてな。紹介する、こっちの大きい方がソードマン(剣士)テル。小さい方がアーチャー(弓士)ケイトだ。たった今、シリンダー連結体を駆逐して、結界を張って一息ついているところだ」「姫がお世話になりました。自分たちは無辺方面軍戦車教導隊のタングリス、こちらが……」「タングニョーストであります、お見知りおきを」「こち...RE・かの世界この世界:036『タングリスとタングニョースト』

  • 鳴かぬなら 信長転生記 112『桃太郎おおおおおおお!!』

    鳴かぬなら信長転生記112『桃太郎おおおおおおお!!』信長ガチャリ尾張の田園風景のようだ……体を捻ってロケーションを確認すると草摺の鳴る音がした。甲冑を身に着けているのだ。桃太郎(素戔嗚)の鬼退治に付き合うのだから武装はオモイカネ(思金神)のサービスか……しかし、これは、またしても鶴姫の嫌味なくらいに細身の女鎧。胸と脇の防御はゆとりもあって完ぺきなんだが、ウエストが細すぎる(-_-;)。先だっての陣触れアラートの時は茶姫の迎えだけで短時間で済んだが、今度は鬼退治、何日かかるか分からん。それをこんなに締め上げては長時間は無理だぞ。背中には桃形(ももなり)の兜を掛けて、馬手(右)の腕(かいな)には種子島……で、腰の左側が軽いと思ったら、太刀が無い!種子島は火縄銃、一発撃ったら、次の弾込めには三十秒はかかるぞ!...鳴かぬなら信長転生記112『桃太郎おおおおおおお!!』

  • 宇宙戦艦三笠48[小惑星ピレウスの秘密]

    宇宙戦艦三笠48[小惑星ピレウスの秘密]修一三笠のクルーはみんな同じ思いだった。「ピレウスに来て三日たつけど、オレたちなんともない……」「スキャンしても、みなさん健康そのものです」クレアがトシの言葉を裏付けた。三笠のクルーはレイマ姫とジェーンの顔を交互に見た。「んだんず。地球人は、このピレウスでも影響受げねんだ……」「レイマ姫、君の狙いは……」「寒冷化防止装置、なんど(あなたたち)に渡すて、地球救うごどだ」「それだけかい……?」「…………」修一の問いかけに、レイマ姫は黙ってしまった。「あたしが代わりに言ってやろう」「……なんで、ジェーンが」「これは、レイマ姫のお願いであって、交換条件じゃない。ただ、自分から言いだすと、気のいいあんたたちに強制するようで言えなかったのさ」「……言えないことって?」「ジェーン...宇宙戦艦三笠48[小惑星ピレウスの秘密]

  • RE・かの世界この世界:035『穴の向こうから』

    RE・かの世界この世界035『穴の向こうから』こ……これからどうするんだ……(╥﹏╥)?シリンダー連結体の群れが遠ざかり、口から飛び出しそうになっていた心臓が胸の真ん中に収まったころ、思わず口をついた疑問にブリが応えた。「待っておる」「「なにを(;'∀')?」」ケイトと声が重なった。結界の中にいれば安全なのだろうが、いつまでも居るわけにはいかない。とにもかくにも無辺街道を抜け出し、ヴァルハラを目指さなくてはならない。ヴァルハラを目指せと言いだしたのはブリ自身なのだからな。それに、丸めた背中にグッタリとツインテールを垂れさせているブリの姿は、いかにも心もとない。「無辺街道の警備を任されている者たちの内に力を貸してくれる者が現れる」「それは誰なんだ?」「連絡とかとれるの?」「……夕べの月が、そう言っていた」ち...RE・かの世界この世界:035『穴の向こうから』

  • 銀河太平記・150『児玉神社にて』

    銀河太平記・150『児玉神社にて』越萌マイ仮想モニターの前で腕を組んでいると、メイからメールが来た。――事変拡大の兆し、事業展開に意見ありや?――メイなりに気を使っているんだと、キーボードに手をかざして止めた。返事を打つには、まだ決心が固まっていない。越萌姉妹社の共同経営者としても、在野の立場で時局を監視する本来の任務からも、軽々に動くことはできない。西之島を護らなければならないのは言うまでもない。西之島のパルス鉱、特に近年発見されたパルスギは、人類に初めて恒星間旅行を可能にする新エネルギーだ。二百年前の『宇宙戦艦ヤマト』以来、人類の見果てぬ夢であったワープ航法が実現するだろう。兵器に組み込めば、核兵器以来の革命的兵器になる。もし、独占する者が現れたら、地球はおろか、まだ見極めても居ない銀河の半分を手にす...銀河太平記・150『児玉神社にて』

  • 宇宙戦艦三笠47[小惑星ピレウス・4]

    宇宙戦艦三笠47[小惑星ピレウス・4]修一ジャングルのいくらも離れていないところにテキサスは着陸していた。「こんな近くで、どうして探知できなかったんだろう?」クレアが、半ば不服そうに腕を組む。「三笠の倍の航路をとって、惑星直列になるのを待ってピレウスに来たんだ。三笠程じゃないけど、レイマ姫が時間をかけてステルスにしてくれたから」「他のアメリカ艦隊は?」俺が艦長として聞くと、ジェーンは微妙に視線を外した。「大規模な戦闘になることが避けられないので戦略的に撤退。で、テキサスだけが大回りしてピレウスに着陸したんだ、三笠と連携して作戦行動をとるためにね。日本とは集団的自衛権を互いに認め合っているから、合理的な判断だよ」「……アメリカ人が自信満々で言う時は、どこかに嘘か無理があるんだよな。要はアメリカが全面撤退した...宇宙戦艦三笠47[小惑星ピレウス・4]

  • RE・かの世界この世界:034『迫りくるシリンダー連結帯!』

    RE・かの世界この世界034『迫りくるシリンダー連結帯!』ブリ…………大きくなった?顔を洗って、やっと気づいたケイト。「やっと気づいたのか」「うん……なんてのか……雰囲気はちっとも変わってないから、気づくのが遅れたみたい」「いろいろあるのだ、この世界では。おまえだって……」「あたし?」「さっさと朝食をとれ、食べたら、早々に出立するぞ!」チーズを挟んだだけのライ麦パンを投げると、もう歩きはじめるブリ。「ちょ、食べる時間くらいちょうだいよ!」「これより先はクリーチャーどもの巣窟、寝坊助の朝食などにかまって……などおれぬ」「ブリの言う通りだな、気配がする……」月の光の中、ツインテールを解いたり結ったり。その戒めのことやら主神オーディーンのこと、わたしとケイトの事情なども知っている様子のブリに聞いておきたいことも...RE・かの世界この世界:034『迫りくるシリンダー連結帯!』

  • くノ一その一今のうち・44『まやと朝ごはん』

    くノ一その一今のうち44『まやと朝ごはん』気が付くと相変わらずの真っ暗。でも、瞬間で分かった。ここは甲府城の地下ではない…………昨日訪れたばかりの甲斐善光寺の戒壇巡りの中だ。忍者の五感は常人の倍は鋭い。特に肌感覚と嗅覚は数倍の鋭さがある。例え同じ闇の中に居ても、肌で感じる空気とニオイが違うんだ。善光寺の戒壇は人の出入りが多く、その出入りによって、寺院特有の抹香や木の匂いが混ぜられて独特なんだ。たった今まで居た甲府城の地下にはそれが無い。それに、あれだけ押し寄せてきた水のニオイや土砂の埃臭さがまるでしない。――気が付いたか――――どうして、善光寺の戒壇?それに!?――そうだ、意識を失ったのは課長代理に当身をくらわされたからだ。――あれは佐助の幻術だ――――あの謝恩碑の、すごい勢いで流れ出した水が?――――あ...くノ一その一今のうち・44『まやと朝ごはん』

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