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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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岐阜市
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伊万里市
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2014/10/10

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  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百五十六)

    自宅にもどり、千勢からきょうの武士を聞くにつれ、すやすやと眠っている武士を見るにつれ、小夜子のこころにまた、たゆたう想いがうまれた。〝武士のいまは、千勢だけが知ってるのよね。つかまり立ちした、ヨチヨチ歩きをした、ことばを発した。千勢のことばでしか、わたしは武士を知らないんだわ〟いま。家のあちこちにあった武蔵のにほいが、日いち日とうすれていく。おとといは玄関からにほいが消えた、そして廊下のかべからも。「ガラガラ」と音をたてて、武蔵がかえってくる。ドタドタと音をたてて。千勢が走ってくる。「騒々しいぞ、千勢。せめてパタパタにしてくれ」。そう武蔵が言う。ところが二階からは、ドカドカという音をたてて、こんどは小夜子が下りてくる。苦笑いをしながら、こりゃだめだと肩をすくめる武蔵だ。「おかえり!」。そのひと言に、武蔵の...水たまりの中の青空~第三部~(四百五十六)

  • ポエム ~黄昏編~(愛・昇華)

    ジュリエット君の名はじゅりぇっとロミオはどこだろみおはここにいる中世と現代ビッグバンが起こったそして弾けた光と闇堕天使ルシフェルぼくは今もここにいる=背景と解説=これわあああ、なんというかあああ、、、キモはですね、お分かりかと思うのですが「ぼくは今もここにいる」ですよね。ビッグバン、つまり予期せぬ大ごとが起きた、ということですわ。チャンスなんですよ、一気呵成に行くべきところなんですよ、気持ちも「弾けた」んです、リミッターが外れたということなんですよ。「堕天使ルシフェル」が現れたんです。でも、でもなんです。足踏みをして、一歩を踏み出せない、ということですよね。躊躇しているんですが、まあ、いつものことですわ。アクション後の、リアクションを怖がるというか、自分に自信が持てないので、裏切られるのじゃないかという、...ポエム~黄昏編~(愛・昇華)

  • 小説・はたちの日記 二月十日 (雪):後

    [お迎え]でその夜、やさしいチコのことばに促されて、チコを抱いた。というより、抱いてもらった。暖かいチコの胸のなかで、気持ちよく眠った。おふくろの胸で眠ったような感じだ。えっ?なにもないよ。ただ、眠っただけだよ、ほんとに。おっぱいには触ったけどね。大晦日の夜、というより元旦の早朝だった、チコに男にしてもらったのは。ますます、チコが好きになった。だけど、そのことが……二日の朝だった。急にドアを激しくたたく音がして、チコの顔がこわばった。隠れようとしたぼくに、”そのままで”と目で言うと、チコはドアの外に出た。なんだか異様な雰囲気だった。「やっぱりか!」。はげしい怒鳴り声に、ぼく、体が硬直した。低いチコの声は聞こえなかったけど、断片的にあいての声はきこえてきた。耳をふさぎたくなる話だった。興行主との約束事をやぶ...小説・はたちの日記二月十日(雪):後

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (十五)

    「大体がですね。かけた相手については、なにも知らないことが多いんですよ。適当な番号に電話をかけて、相手が老人だったり女性だったりしたときに、脅しをかけるんです。良いですか、みなさん。けっして、お名前をなのらないように。住所もだめですよ。そうそう。はじめはね、若い女性の場合もあるんです。荷物をとどけたいので、住所を教えて下さい、とかね。おかしいと思うでしょ?住所がわからないのに、名前すらわからないのに、なんで電話番号がわかるんです?おかしなところはね、冷静に考えるとたっくさんあるわけです。でもね、そこは、相手はプロですから。つけ込んできますからねえ、いろいろと。ねえ、前列からうしろに3列めのおじいちゃん。そう、あなたですよ。若い女性との会話が楽しいからとスケベごころを出したら、相手の思うつぼですよ。ほらほら...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(十五)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (六)裸身

    いまが青春まっ盛りのこのむすめを羨ましく思った。しかしまた、無軌道すぎるむすめが哀れでもあった。目的のつかめないままに、まいにちを無為にすごす若者たちが哀れにおもえた。男が部屋のロックを確認してふりかえると、むすめは窓ぎわに立って外をみている。〝やはり後悔しているのかな〟と思いつつ、冷蔵庫からビールとりだしテーブルに置いた。「おいしい?」と、上目づかいに尋ねるむすめに、「苦いよ」とみじかく答え、タバコに火をつけた。むすめは空になったコップにビールを注ぐと、”こんやは1本だけにしてネ”と目で告げた。そして娘は、にが笑いの男のうしろろにまわると肩をつついた。「今夜はおとなしく寝なさい。明日になって後悔しても、取り返しがつかないんだ。そうしなさい」と、肩の手をやさしくにぎりかえしながら男は言った。しばらく無言を...[淫(あふれる想い)]舟のない港(六)裸身

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ!(十七)すみません、横道にそれすぎました。

    すみません、横道にそれすぎました。海地獄です。でもなんで海地獄なんですかね。海に面しているわけでもないし、大きな池がありますが――ああひょっとして、この池が大きいから海に例えたのかな?きれいなコバルトブルーですしねえ。そういえば、琵琶湖もそうですね。「海に見えれば、こころが広い人です」とかなんとか、修学旅行でのバスガイドさんのことばだったような……。父の話によると、わたしが幼少のみぎり、みぎりですよ――そのころは、お大尽のお坊ちゃまですからね。で、みぎりに連れられてきたおりには「うみ、うみ」と大騒ぎしたらしいんです。ぜんぜん覚えていないのですけれど。大はしゃぎしたのはいいのですが、とつぜんに泣き出したというのです。金棒をもった鬼が池のそばに立っていて、それを見たとたんに金縛りにあったように立ちすくんだらし...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(十七)すみません、横道にそれすぎました。

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (二十一)ここで、坂田善三の備忘録を

    ここで、坂田善三の備忘録を披露させてもらいます。-----大正十年生まれで、呉服屋の長男。東京帝国大学に三年生として在学中。「民は我々の指導下にあるべきで、君なぞを級友だと称することはできんよ」と、級友からは蔑視される。「人類皆平等!」を叫ぶグループに共鳴。当初は物品調達係という役目を与えられたが、要は金ヅルに過ぎず。以降、幹部連たちの連絡係となる。現状において、アジ演説の作成に関わっている疑いあり。他人を見下すくせあり。それが友を作れない大きな要因。女性蔑視が激しい。『女は馬鹿な生き物だ。子を産むことしかできない。子の才能を育て上げる能力を持たない人種なんだ。男に尽くすということが、女の本分だ』。そう公言してはばからない。-----とんでもない事態に陥られたことはすぐに理解できました。しかしその事態が小...愛の横顔~RE:地獄変~(二十一)ここで、坂田善三の備忘録を

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百五十五)

    「ありがとう、徳子さん。でもね、あたし、もうすこし頑張ってみようとおもうの。せっかく武蔵が起ち上げた会社でしょ?武蔵の思いがいっぱいつまってる会社よ。あたしももっとお勉強をして、みんなのお話にはいっていけるようにしたいの。待って、さいごまで聞いてちょうだい」思わぬことばを発しはじめた。「やめたいの」。そう告げるつもりだったはずが、なぜか〝ここで踏みとどまらなきゃだめ〟という思いがわいてきた。〝それでこそ小夜子だ〟。武蔵がそう言ってくれた気がした。立ち入ってはならぬゾーンへ小夜子が一歩を踏みだそうとしているのではないかと、危惧するおもいにとらわれた徳子だった。現在の社員たちの思いを勘違いしていると感じた徳子が、小夜子に一線を越えることばを発せないためにいまここで止めないと、と口をはさもうとした。「最近ね、な...水たまりの中の青空~第三部~(四百五十五)

  • ポエム ~黄昏編~(光と闇)~ミカエルとルシファー~

    低く垂れ込めるどんよりとした雨雲を鋭く抉り去り力強き光がこの地上に下り給ふかぶつき太陽は今その全貌を現す地上の生きとし生ける物すべてが光と影の織りなす輪唱に……酔い……しれる……詩人アガトン邸での饗宴皆が皆口々に恋の神エロスを称えるその狂態ぶり太陽をして沈ませる一台の車が静かに現れ前照灯を煌々とさせ暗き闇の世界を求めて走る……走る……走るその暗黒さ何と喩えよう重く圧しかかるその重量感今にも大地は押し潰されるが如くに暗黒の切れ間に僅かの空を持つそれとても光は出でず慰めとも哀れみともつかぬ……高層ビルの立ち並ぶ路に風に吹かれて右往左往する捨てられた新聞紙にも等しい=背景と解説=まだまだサイケデリックの影響を受けている頃です。さすがに前回の[Bluenight]ほどにはかぶれていませんがね。この作品のキモですが...ポエム~黄昏編~(光と闇)~ミカエルとルシファー~

  • 小説・はたちの日記 二月十日 (雪):前

    [ただいま……]冷たい雪だった。風もつめたかった。けれども、外の方がまだ暖かい。わかっているよ、きみの言いたいのは。あれ程きみに約束したのに、結局もどってきてしまった。わずか四十日ちょっとだけど、耐えられなくなったんだ。仕方ないんだ……チコと別れたのは、正月休みのあとだったよ。そのあと、一ヶ月あまりがまんした。耐えたんだ。じっくりと、お互いのことを考えつづけたけれど、どうしてもダメなんだ。いや、けっして嫌いになったんじゃない。いまでもすごく好きだし、会いたい。だけど、ダメだった。耐えられないんだよ。ぼくが子どもなのかもしれない。ぼくのエゴかもしれない……いまは、自分が身の毛もよだつほどキラいだ。こんな嫌悪感ははじめてだ。こんやは、きはみに全部はなすつもりだ。わかっている。所詮、きみは日記であり、ぼくの一方...小説・はたちの日記二月十日(雪):前

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (十四)

    「ほかにも、架空請求というものがあります。覚えのないことでの請求には、けっして応じないように。まず警察に相談してください」“そうだ、そうだった。相手の言うなりになっちゃだめなんだ”冷静さをとりもどしたわたしは、意をけっして「警察に連絡します。そちらさんの会社名を教えてください」と、ふるえぎみの声ながらもきっぱりと言い切った。受話器をもつ手が、激しくふるえた。心臓の鼓動も、これ以上ないというほどの早鐘状態になった。“しっかりしろ!ここが正念場だぞ”。ともすれば弱気になりがちなこころを叱咤し鼓舞して、ふるえる手をもういっぽうの手でおさえつけた。「なんだと、こら!ふざけたこと言うと、いわすぞ、こら!どこの警察だよ。新宿か、渋谷か。そこらの警察には話が行ってるんだよ、こら!相手になんかされねえよ。聞いてんのかよ、...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(十四)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (五)ホテル

    「結婚しょう!」と言いだすこともない日々をつづけ、その間いくどか中絶をさせた。そして、「これ以上は母体に異常をきたし二度と子どもが産めなくなるよ」と、医者に注意された。〝いまのままではだめだ。何とかしなくては。しかし、定職に就いていない俺では…。あいつを水商売でよごれさせている俺だ。あのこと以来なにをやってもうまくいかない。なんど転職しただろうか。いまじゃ、アルバイトの毎日だ。いまは、なにに対しても情熱が湧かない。ヒモ同然の生活だ〟しかし焦ればあせるほどに、両手から水がこぼれおちる。こぼれおちた水は大地に吸いこまれて、二度と男には見つけることも触れることもできない。幾人かの友人の伝手をたよって就職活動を行ってみるが、職を失った理由を詮索されてはいかんともしがたい。男の不手際から会社に損害をあたえ、落伍して...[淫(あふれる想い)]舟のない港(五)ホテル

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (十六)ビビったと言えば、

    ビビったと言えば、わたしの息子もそうでした。3歳か4歳だったと思います。名古屋の東山動物園に出かけたおりのことなんですがね。虎舎でのことなんです。小動物ばかりを観てきた息子に、猛獣をみせたくなったんです。男は強くなくちゃ、と教えるつもりでした。それがですね、入り口で立ちすくんだまま動こうとしないんです。薄暗いなかをのぞき込んで「なにがいるの?」と、後ずさりをしていく始末でした。そういえば、自宅でのことなんですが。夜のこと、灯りの点いていない2階からなにかを取ってこなくちゃいけないらしく、階段下に立っているんですわ。どうしたのかと思って見ていましたら、みっつ年下の娘にたいして「おまえ、先に行け」と言うんです。このときは小学校にはいっていたと思うのですがね。まだ幼稚園児だった妹に先陣をきらせたというわけです。...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(十六)ビビったと言えば、

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (二十)ですが、ことはそこで終わりは

    ですが、ことはそこで終わりはしませんでした。これからが本番ですよ、とばかりに「申しわけありませんでした。初恋でございました、はじめてで最後の恋でした」と、ひときわ通る声でおっしゃいます。忘れもしません。昭和二十年一月二十二日の、火曜日でした。そのころには学徒勤労動員によって、わたくしたち女学生も軍需工場などに派遣されておりましたことは、みなさまもご記憶のことと思います。でその日は、早朝に時雨れていた空もおちつき、お昼すぎから小春日和となりました。その日も軍需工場での奉公でしたが、女の特性を生かして早退を申し出ました。ひごろの優等生としての行いにより、なんの疑いも受けることなく許可をいただけました。両親には内緒のことですよ。陽の高いときの空襲はございませんので、安心して出かけられます。土曜日でもない日に、と...愛の横顔~RE:地獄変~(二十)ですが、ことはそこで終わりは

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百五十四)

    いつもは小夜子の意に反することはしない武蔵だったが、このときばかりは「すまん。それだけは勘弁してくれ。もう関係は切っている。今後もいっさい男女の関係はもたん」と、土下座をせんばかりに懇願した。以降もことあるごとに噛みつく小夜子にたいし、「こればかりは許してくれ。あいつほど優秀な事務員はいないんだ」と、そのつど頭をさげた。そしていま、残ってもらって良かったと、心底おもう小夜子だった。「そうなの。夜はね、武士との時間にしたいの。なんとかなる?」手を合わせんばかりの小夜子にたいし、「お姫さま。誤解しないでいただきたいのですが」と、徳子が思いもよらぬことを告げた。「どうでしょう。そろそろ会社から身を引かれては。せめて武士坊ちゃんが中学に上がられるまでは。社長ではなく、嘱託として残られませんか」小夜子も、考えないで...水たまりの中の青空~第三部~(四百五十四)

  • ポエム ~黄昏編~(Blue-night)

    灼し闇き闇四方八方おほつかなしよしゑやしもれるおほうちの灯りとておほいかぶさる重たき雲見るからに灰色!そこにチカチカとred-starlovelyblue_moonみなおほみかみのプレゼントThanksGod,thanksgod!赤・青・黄のネオンサインあ3美しき女人の涙9!香のにほう咲き乱れる花園たむろする花の妖精たちみなデビルのプレゼントThanksDevil,thanksdevil!蒼きかぶつき太陽の目醒め静かなる朝の儀式に今悪魔は滅ぶBlue-night!今終わるFin=背景と解説=かぶれ、です。病気でした。いにしえの文語体のもつ柔らかさに憧れてついつかってしまいました。隣のクラスの女子が文語体の詩を書いていましてそれがとても心地よい響きを与えてくれるんです。なんとかデートをするまでにこぎつけまし...ポエム~黄昏編~(Blue-night)

  • 小説・はたちの日記 十二月三十日 (曇り)

    [へっへっへえぇぇだ!]いま、ぼくが何処にいるか、わかるかい?長い付き合いだったけれど、いよいよきみともお別れだ。もう、きみに愚痴をこぼすこともなさそうだょ。そんな悲しい顔をするなよ。それとも、楽になった?まだたくさんの白いページが残っているのが惜しい気もするけど、きみだって、きみの愚痴を書きたいだろうから、そのために残しておくよ。だけど、訳もわからぬままにきみと別れたんじゃ、きみも変な気持ちだろうから、すこし説明しょうか。というより、聞いてほしいんだよ。そして、本日をもって書きおさめだ。長い間、日記くん、ご苦労さまでした。さくや、十時すこし前に駅に着いたんだ。そうしたら、改札口でひとり寒そうにふるえているチコを見つけたんだ。間に合わないと思っていた電車に、間一髪ですべりこみセーフ。それで、三十分ほど早く...小説・はたちの日記十二月三十日(曇り)

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (十五)坊主地獄は、あっという間に

    坊主地獄は、あっという間にまわり終えました。ご存じだと思いますが、泥がボコボコと盛り上がって、さながら坊主頭のごとくに見えることからの命名でした。国道500号線を走り、いよいよ「べっぷ地獄めぐり]へ向かいます。時間は9時半をまわったところですから、駐車場に余裕はあると思うのですが。と心配するひまもなく、到着です。5分、もかかりましたでしょうか。上り坂となっていますが、係員のおじさんが手招きしています。車に貼ってある身障者マークを見つけてくれて、誘導してくれました。ありがとさん、です。海・山・鬼石坊主地獄の三ヶ所がとなりあっていまして、すぐ傍らにかまど地獄があります。そしてすこし歩きましたが、白池地獄とこれまたとなりあうように鬼山地獄です。&、そう、アンドです。後述しますが、大変なことになった、血の池地獄と...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(十五)坊主地獄は、あっという間に

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (十九)母親にしてみれば、

    母親にしてみれば、まるで縁談話が持ち上がったかのような高揚感を持っていたようでした。わたくしの本音を見透かされたような気がしまして、顔を赤くしていたかもしれませんわね。それで週に一度だけというお約束で、お勉強をみていただきました。学校での授業はすくなくなり、毎日を防空・武術訓練等についやしておりました。良い子ぶるわけではないのですよ。不思議なもので、手に入れられないことというのは、多少の無理をしてでも欲しくなるものです。勉学が好きだということはありませんでしたが、知識を得るということは楽しいことでございました。三郎さまの下宿先は、湯島天神のそばででございます。大学へは徒歩で歩ける地区にしたいとのご希望からということでした。三四郎池の散策がお好きとかで、授業の前後にかならず立ち寄られているとか。わたくしもご...愛の横顔~RE:地獄変~(十九)母親にしてみれば、

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百五十三)

    幸いにも武蔵亡きあとの富士商会の業績はよい。武蔵の号令一下で動いていた社員たちにも、さほどの動揺もなくすんでいる。「自分で考え、判断し、動く」。受動態だった風潮が能動態に、うまく切り替わっていた。「知恵を出せ、汗を出せ、出せない者は去れ」強権的な会社風土が、いまでは上長の指示がなくとも、己の判断で動いている。もちろん失敗はある、トラブルもある。武蔵の時代では、即減給となる。それが緊張感をうみだしていた。いまではそれが懐かしいと感じるほどに、寛容な会社になっていた。ひとりの天才軍師が動かすのではなく、それぞれの部門長たちの協議で指針が決まり、それをもとにそれぞれが動いている。ひとりの天才プレーヤーが動かすのではなく、組織体として全員が動くようになりつつあった。組織としてのルールが設定され、人治ではなく法治体...水たまりの中の青空~第三部~(四百五十三)

  • ポエム ~黄昏編~(落 日)

    花開く幻の都その影をふるえる水面に映すギターの爪弾きとゴンドラの哀しい叫び声は水面を刺す落日がガナル=グランデに洸々と映えそしていよいよ落日!=背景と解説=久々の三行詩です。[ローマの休日]に感化されたような気がします。ヨーロッパに憧れてたくさんのヨーロッパを題材とした詩を書き上げていました。おかげさまで、2012年に、フランスはパリへ行かせてもらいました。もう、感激!感激!でした。1年後の6月に[わたしの見た、おフランス・パリcity]というタイトルでその旅行記を発しています。よろしかったら、そちらも覗いてみて下さい。ポエム~黄昏編~(落日)

  • 小説・二十歳の日記 十二月二十九日 (晴れ)

    [突然のベル]ビックリした、まったく。半日で片づいた大掃除の後、先輩と世間話をしていたところへ、けたたましく鳴り響いた電話のベル。事務所はもう閉じていたから、現場の電話に回ってきたようだ。「仕事おさめです。誰もおりませんので、年があけてからおかけなおしください」一気にまくしたてて、電話を切ろうとしたんだ。ところが、”待って!”の声。チコ?と思ったけれど、まさかだよ。きょうは、東北地方に行ってる筈だから。だけど、チコだった。長距離電話をわざわざかけてくれた。何度もなんども、ぼくの名前をくりかえして確認してた。”そうだよっ”て、答えたけれど、たぶん上ずった声だったんだろうな、ぼくの声が。とつぜんの予定変更で、いますぐ来るって。到着が十時ごろになるから、駅まで迎えにきてほしいって。みじかい会話だったけれど、いつ...小説・二十歳の日記十二月二十九日(晴れ)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (十二)

    「ですから、あたし、田中じゃありませんて。ひと違いなんですよ。ホントですよ」弱々しくか細い声になってしまった。相手に聞こえているのかどうか…、自分自身にすら聞こえない声だった。「いいんだよ!名前なんか、どうでもいいんだよ!お前が払ってくれさえすれば、それで万事めでたしめでたしなんだよ!なあ、佐藤さんよ。いいかげん、往生しなよ。俺だってさ、ヒマじゃないんだから。まだあちこちに、電話しなくちゃいけないの。佐藤さんよ、あんたも疲れたろ?ここらでさ、楽になろうや」相変わらず、むちゃくちゃな論法で押してきた。いつの間にか田中という名前が佐藤に変わってしまい、わたしではないことが明白となっているにも関わらず、わたしに払えという。「よし、分かった。それじゃ、こうしようか。金額をね、減らしてあげるよ。依頼主さんに交渉して...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(十二)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港(三)コップ

    空になったコップを見つめながら、少女は小さな声ではなしはじめた。「じつはね、こんなこというと笑うかもしんないけど、あたい、まだバージンなんだ。おんなじへやの子は、みんな誰かにあげたらしいんだけど。あたいはまだなんだ。それで、あたいも誰かにあげなくっちやと思って。ユキオにね、あげようかなあって思って。べつにハンサムでもないんだけど、すっごくジョーダンがじょうずでね、いっつも笑いころげているの。それでね、はじめてユキオのアパートに行ったの。はじめのうちは、ジョーダンをいいあって良かったんだけど。急にね、ユキオの顔が。なんて言うのかナ。ほらよく言うでしょ、けわしいヒョージョーって。あんなふうになって、あたいの上に、おおいかぶさってきたの。それで、あたいのここをギュッっとつかんだの」と、娘は自分の乳房を服のうえか...[淫(あふれる想い)]舟のない港(三)コップ

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (十四)七時前に、コンビニに

    七時前に、コンビニに立ちよることにしました。眠くてたまらんのです。ふだんですと、夜の10時台にベッドに入ります。おそくなっても、11時をすこし過ぎたぐらいですかね。まあ、休みの前日となると、12時をまわることがありますが。で翌朝の起床は、8時半ぐらいでしょうか。ときには9時近くになることもありますけどね。ということは、10時間近くの睡眠となります。ねむりが浅いのでしょうかね、そのくらいの時間でなければ、しごとに支障が出るんです。午後からの仕事で4時間なんですが、もうヘトヘトになるんです。年齢もなんですが、心臓が常人のはんぶん程度しか機能していませんからね。お医者さんに言われているんです。「ムリをしないこと、これが大前提ですから。だるくなったり眠気におそわれたりしたら、すぐに休むこと」。耳にたこができるほど...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(十四)七時前に、コンビニに

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (十八)もうとおい昔のように感じますが、

    もうとおい昔のように感じますが、じつはつい先日なのです、はじめてお会いしたのは。おそらくは、みなさまはお忘れでしょうがご経験があるはずでございますよ。ほら、その人を思うだけで胸がチクチクと痛み、キューッと締め付けられる……。そう!恋、恋です。ない?それはそれは、おかわいそうなことで。この人のためならばなんでもしてやりたい。できないことでも、なんとか叶えてあげたいと思う、まさしく恋心でございましょ?家庭教師のこと、いとも簡単に決まったという風にお思いでしょうが、これがなかなかに。まずはこのところの成績の下落を詫びました。いえ別に順位が落ちたとか、そういったことではありません。たしかに、試験の点数は落ちてしまいました。しかしそれはどなたもご一緒でございます。そこで、他の上位の方たちは家庭教師が付いてると言いま...愛の横顔~RE:地獄変~(十八)もうとおい昔のように感じますが、

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百五十二)

    あいかわらず社員たちは、小夜子を社長ではなくお姫さまと呼んでいる。新しい経営者としての己を思いえがいていた小夜子にとって、あるいみ屈辱的呼称なのだが、いまは〝お飾りに過ぎないのだ〟と自覚している。その証拠に社長としての決裁事項は、すべて五平が行っている。月に一回の業務会議にしても、すべて五平が仕切っている。小夜子には議題にのぼるすべてが理解できない。黒板に書き込まれる数字だけはわかる。売り上げと仕入れの額をグラフ化されたものをみれば、業績向上もわかる。そしてそれが小夜子効果だと説明され、拍手が起きると嬉しくなる。貢献しているのだと自覚できる。しかし武蔵がのこした負の遺産ともいうべき、証文騒ぎの処理でミソをつけてしまった。相手の言うがままに押し切られてしまった小夜子に、社員の評価が真っぷたつにわかれた。女子...水たまりの中の青空~第三部~(四百五十二)

  • ポエム ~黄昏編~(みそひと)

    吐く息の凍りし窓辺暖炉の火外には雪が音のするなり吐く息の凍えし手にぞ伝わりて恋しき想ひなぜに届かぬ身を縮め凍てつく指にかけし息勢ひあまりて眼鏡ぞくもる=背景と解説=季語もなにも考えていない、わたしの[担架]じゃない[短歌]三編です。以前にお話ししたかどうか覚えていませんが、4年間通う定時制高校で文芸部に所属していました。一年生の折ですわ、三学期のことです。突然に「来年、部長をやってくれ」と4年生の部長に言われました。青天の霹靂ですよ、まったく。部員数が少ないことは分かっていました。更には運動部との掛け持ちが多いことも知ってはいました。[灯]という文集発行のためだけに、存在しておられる部員ばかりでしたから。普段の活動などまるでなく、期待していた「小説の書き方」やら「語彙の勉強」など、まるでありません。まった...ポエム~黄昏編~(みそひと)

  • 小説・二十歳の日記 十二月二十四日 (晴れ)

    [わがまま]なんてつらい日だ。仕事、そんなもん、なんだよ!どうして仕事をする?生活のかてのためだったら、べつに定職をもたなくてもいい。アルバイトでもいいじゃないか。”デカンショ、デカンショで、半年暮らす。あとの半年は、寝て暮らす”大体、チコがいけないんだ。せっかくのイブだというのに、仕事をするなんて。しかも他県だなんて。それに最近は、ナイトクラブでの仕事を増やしたりして。酔っぱらい相手に、歌をうたっても仕方ないじゃないか。からまれたりもして……。いや、わかってる。ぼくのわがままなんだ、チコには言えないことだ。きみだからこそだ。[休みの日]チコの休みは、平日ばかり。ぼくの休みは、日曜日。わかってはいた、時間が合わないことは。それを承知のことだったはずだ。いっそのこと、会社を辞めようか。チコに合わせようか……...小説・二十歳の日記十二月二十四日(晴れ)

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