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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

住所
岐阜市
出身
伊万里市
敏ちゃん
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2014/10/10

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  • 退院のこと

    8月25日に、入院。9月5日に退院。HbA1cが、設定したレベルまで上がってしまったので、コントロール入院です。正直のところは、医師には話しませんでしたが、生活サイクル改善のためなのです。昼夜逆転とまでは行きませんが、その一歩手前的な……。就寝が午前Ⅰ時をまわってしまい、起床が午後ギリギリになってしまうこともあって。いったんは目覚めるのです、午前9時ごろに。ですが、9時間はしっかり横になっていないと、腰が痛むんです。ですので10時以降になってしまい、段々遅くなり、11時近くになってしまったこともありました。当然ながら朝食が昼食に、と、大変身です。12時前後の朝食となってしまい、以降の昼食・夕食がどんどん遅くなってしまって。その改善の意味もこめて、入院をお願いしました。まあ遅くとも、10月にはコントロール入...退院のこと

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ 来訪者(三)

    黙もくと片づけをつづける女学生の甲斐がいしさが、すがすがしい。学校での彼にたいする態度が嘘のように思える。女学生の反応は無なったが、彼はなおも話しつづける。沈黙に耐えられないのだ。顔ぜんたいに火傷を負った中年男の話なんだ。いご、妻はその夫とのセッ〇スをこばみつづける。火傷を負ってからの、夫の自信喪失が妻には大きくのしかかったようだ。『愛の証し』として強要する夫に、妻は拒否反応を起こすんだ。そのことが夫にはわからない。不具者ゆえだと思いこむ。そこで、仮面をかぶることによりその烙印から逃れようとする。『他人の顔』になるわけだ。手術後、ぐるぐる巻きの包帯顔で登場だ。だれも自分を知らないんだ。むかしの自分ではないとなるとだ、まるで自由なんだ。すべてのものから解放されるわけで、囚われる必要がない。素晴らしいよ、自分...奇天烈~蒼い殺意~来訪者(三)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港(四十二)五日前? 俺のアパートに

    五日前?俺のアパートに来た翌日だ。しかし、どういうことだ、一体。「たしかに来ました。けれど、帰られましたよ」「む、無責任なことを言うな!お前が、麗子をたぶらかしたんだ。そうでなければあの麗子が、無断でひと晩たりとも、無断外泊などしなかった娘だ。どこだ、どこに隠した!」男のことばに耳を貸すことなく、その紳士は、いや麗子の父親は、男の差し金だと決めつけていた。「いいか、すぐにも麗子を返せ!さもなければ、警察に訴えるぞ!監禁罪だ、これは。どこだ、何処にいる!たのむから、麗子を返してくれ、お願いだ」そこには、麗子自慢の紳士は居なかった。ただただ、娘の安否を気づかう父親がいた。「妻は寝こんでしまった。わたしも、ほとんどど寝ていない。……、おとといに電話がはいった。すぐにも帰って来いと言ったのに。はじめてだ、麗子が、...[淫(あふれる想い)]舟のない港(四十二)五日前?俺のアパートに

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (五十三)伊万里駅から北に延びる

    伊万里駅から北に延びる伊万里大通りを走ると、伊万里川があります。相生橋の欄干端にある親柱に、少しくすんでいますが本来は派手はでしい彩色の伊万里焼の陶器ががすえられています。橋をわたりさらにすすむと、右手に時計台がありました。伊万里市立伊万里小学校の看板です。平成元年度卒業記念、とあります。バブリーですねえ、時計台とは。さあ、この坂を上がると学校に着くようです。校門前に着き、校内の駐車場にくるまを停車しました。が、まだ気づかずです。車から降りてコンクリートの校舎をながめても、正直、感慨の念はわきません。もう60年の以上が流れて、木造だったはずの校舎が立派なコンクリート製に建て替えられているのですからねえ。まったく、見覚えがありません。「こんなに立派な建物になったのか……」。これは、まわったすべての小学校に共...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(五十三)伊万里駅から北に延びる

  • 愛の横顔 ~アイ・アム・アイアンマン~ (六)

    機器の植え込みで入院したのが、つい昨日のようである。面白いことに、四人部屋であるにも関わらず、どのベッドも窓際になっているではないか。開放感があって、実に快適である。設計の妙といったところだろうか。三年ほど前に建て直された病院ゆえに、設備は最新のものになっている。天井からしてが違う。幾分ベージュがかった優しい白色となっている。ミルキーホワイトとか言うらしい。照明にはLEDが使用されている。節電のためだろうが、その光は冷たく感じられる。そうか、なるほどなるほど。なればこその竹細工のカバーなのか。柔らかい竹色(クレヨンのベージュ色を思い起こして欲しい)が、なんともありがたい。少しでも心理的な負担を少なくしようという配慮なのであろう。実に嬉しいものである。フロア全体を見ると、仕切り窓のないカウンターのように開放...愛の横顔~アイ・アム・アイアンマン~(六)

  • 長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空:第三部~(四百九 十)

    正三という許嫁がいること、逓信省という官吏になっていること、そしてなにより世界的モデルであるアナスターシアという守護神がいることを、宣言している。それでもなお小夜子を崇めるというのなら、平民が神をたたえるがごとき思いなのだと思い込んでいた小夜子だった。しかしいま、皆が小夜子の離れていった。だれもいなくなった。茂作のそして武蔵の立場に小夜子が立ったとき、武士という我が子を庇護すべき立場に立ったとき、そのときはじめておのれのわがまま、傲慢さに、心底気づかされた。いや分かってはいたのだ、おのれのことは。ただ己の無茶振りがどこまで許されるのか、どこまでの高みに行けばこころが満たされるのか、それを知りたかった、感じたかった。与えられる愛情の限界を知りたかった。世の母親の限界を知りたかった。そしていま、己がその立場に...長編恋愛小説~水たまりの中の青空:第三部~(四百九十)

  • ポエム ~生き地獄編~ (あなた……)

    分かっていますあなたの想い少しだけ待ってもう少しこのままで居させてあなたの胸はあたしのベッドなのあなたの腕はあたしの枕なのあなたの笑顔昨日まではあたしのものあなたの笑顔明日からはあの方のもの分かっていますあなたの希みあなたの止まり木はもうあたしじゃないあたしの寄る辺はあなたじゃないでもでも待ってて良いかしら?あなたのお帰りを待ってて良いかしら?あなたの笑顔を空に白い雲が急ぎ足で流れています海に白い波がさざ波立っていますあなた、あなた、あたしだけの、あなた……(背景と解説)解になっているだろうか。己に突きつけた疑問なにを求めなににすがるのか……気持ちがねえ、揺れるているんですよね。あっちに行ったり、こっちに行ったり。進んだり、また戻ったり、と。RollinAgeという単語をよく使っていたのですが、まさにそれ...ポエム~生き地獄編~(あなた……)

  • [青春群像]にあんちゃん ((女学園に入学したほのかは)) (七)

    「ばあちゃん、ありがとう。いままで、ほんとにありがとう」こころからの感謝をいえた次男だった。そのことを、ほのかに話してやりたかった。〝きちんとしたお別れがあのときにできなくても、お墓のなかにねむるばあちゃんに、こころから手をあわせてお祈りすればいい。きっと分かってくれる〟その次男にもおおきなこころ残りがあった。おのれの出生についてシゲ子に問いただせなかったことが、こころのど真ん中にでんとあった。激高しやすい次男にたいして「定男おじさんに似てるわ」というシゲ子のことばが、次男のぎねんを確証にかえた。次夫のおもいを知らぬシゲ子にしてみれば説教どきの軽いことばだったが、次男は額面どおりにうけとめてしまった。長男がきいた親戚たちの話を、次男もまた立ちぎきしていたのだ。「道子さんもよう頑張るわ。じつの子でもないのに...[青春群像]にあんちゃん((女学園に入学したほのかは))(七)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ 来訪者(二)

    彼が、口をひらいた。「民主主義の究極はなんだろう?無邪気な子どもの悪戯だろうか?憎めないいたずらだろうか?小学四年生の子どもが遊び仲間のことばを真にうけて、凧に母親の陰毛をはりつけた。「高く上がるんだぞ!」という言葉を信じて。それを聞いた教師は、叱るどころか頭をなでて笑った。大人から見るととんでもない事なのだが、子どもにはまるでわからない。教師の頭をなやませていた恋愛問題が、絵空事に思えてしまったとか。常識という枠を飛びぬけた、純真さから生まれた行為。世間的には恥ずべきこういだ。しかしそれが子どもの悪戯心からだと、なんのエロチシズムも感じないから面白い」突然のことに、あきれかえる女学生。「また訳の分からないことを。いいわよ、勝手に言ってなさい。あたいは、掃除してるから」彼にしても、なぜこんな事を口走ったの...奇天烈~蒼い殺意~来訪者(二)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 #愛 #捨てる #育てる (四十一) 翌日、男の元に

    翌日、男の元に受付嬢から連絡がはいった。面会だという。男には約束などないし、資料室に用のある人など等、社外からはあるはずもない。ミドリ?とも思ったが、初老の紳士だという。とに角ロビーに行くから、と電話を切った。だれだろう、初老の紳士?名前は告げないと言う。一旦は、受付嬢もことわったらしいのだが、頑として譲らないという。社の規則で、名前を聞かなければ取り次げないことになっている。それでも連絡がはいったということは、余ほどのことだ。怪訝な思いをいだきつつ、階段をあがりロビーに顔をだした。柱の陰からのぞき見してみたが、見覚えがない。といって、受付嬢を困らせるわけにもいかないし、守衛を呼ばれて騒ぎになっても困る。人違いかも?と思いつつ、「どうも、お待たせしました。御手洗ですが」と、その紳士に声をかけた。「き、貴様...[淫(あふれる想い)]舟のない港#愛#捨てる#育てる(四十一)翌日、男の元に

  • [青春群像]にあんちゃん ((女学園に入学したほのかは)) (三)

    部屋をでようとする顧問に、次男がかみついた。「救急車だよ。救急車、呼べよ!」「いや、それより…」としぶる顧問だったが、「わたしなら大丈夫だから。みなさんは、お星さまをみてくださいな」と、老婆が力なく言った。「だめだよ。いまは良くても、とつぜんに悪くなることはあるんだから。急げよ!」生徒たちの非難のしせんをかんじた顧問が、しぶしぶ救急車の要請をおこなった。ほのかはシゲ子のことが思いだされ、体が硬直していた。なにかをせねばと気ばかりが焦るのだが、体はまるで動かなかった。「ほのか。冷やしたハンカチ、持ってこい!」次男のこえにも体はうごかなかった。かなしばり状態がとけたのは、救急車が到着してからのことだった。老婆の状態を確認した後に、身内の生徒とともに顧問がつきそった。けっきょく鑑賞会は、そのまま解散となった。「...[青春群像]にあんちゃん((女学園に入学したほのかは))(三)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ 瞑想(一)

    部屋のすみで小さくうずくまる彼は、さながら動物園のおりのなかの小猿である。おびえを隠すことなく、うずくまっている。そしていつものように、ひざに接吻をしている。しかし弱者ではない、断じてなみだはながさない。「もしこの俺に時間を止める力があるとしたら、まず何をする?」彼の思考は、具象を伴うのが常だ。しかしそれは、抽象の産物としての具象に過ぎない。陶淵明作の「飲酒」の一部を引用して、彼の思考を見よう。結廬在人境(粗末な家を作って、人里の中にいる)而無車馬喧(しかし車や馬のやかましさがない)問君何能爾(君に聞くが、どうしてそうしていることが出来るのか、と)心遠地自偏(心が人里から遠く離れて、地が自然と辺鄙であるからだ)採菊東離下(菊の花を東のまがきのほとりで取り)悠然見南山(悠然として南の山を見る)山気日夕佳(山...奇天烈~蒼い殺意~瞑想(一)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (三十七)お世辞にも、

    お世辞にも、片付いているとは言えない。散乱している新聞に雑誌類、そして吸い殻でいっぱいの灰皿。さらに澱んだ空気は、まさしく独身男の部屋だった。ミドリは甲斐がいしく、男の制止も聞かずへやの掃除をはじめた。ふと、麗子のことが頭をよぎった。麗子も、ミドリのようにさりげなく両親への紹介のことを持ち出してくれれば、修羅場にはならなかったかもしれない、と。すっかり片付いた部屋で、男はミドリにコーヒーを勧めた。その香りを楽しみながら、とりとめない会話をかわした。小一時間ほど話しこんだろうか、そろそろという男にたいして、ミドリはまだ早いからと、腰をあげなかった。男にしても異存はない。お礼の食事とはいえ、やはり緊張する。レコードでも聴こうということになり、ミドリはストリングス系のレコードを希望した。しばらく聞きいっていたふ...[淫(あふれる想い)]舟のない港(三十七)お世辞にも、

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (四十八)昭和33年でした。

    昭和33年でした。わたし、9歳です。小学3年生です。ミスターこと長嶋茂雄さんがプロデビューされた年です。母を講師とした「お化粧教室」なる企画で、あちこち田舎をまわりました。夏休みに女子中学生をあつめての、お化粧の仕方を教えるといったものです。九州の片田舎のことですから、ほっぺの赤い純朴ないなか娘ばかりです。もうねえ、大騒ぎのはずです。うれし恥ずかし、そうじゃないですかね。そこにわたしも連れられていったんです。と、記憶しています。まあねえ、9歳の子どもです。じっとしていろというのが無理な話でしょ?そこでとんでもないことを、しでかしたんです。教室ですから、教壇があります。ほんらいは中央に教卓があるのですが、たしか横にずらしていたとおもいます。お化粧をする女子生徒を、中央にすえた椅子に座らせてのことだったはずで...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(四十八)昭和33年でした。

  • 愛の横顔 アイ・アム・アイアンマン(一)時計が午前八時をさしている

    時計が午前八時をさしている――実のところは、午前七時五十七分である。というのも、時計の時間をわざと進ませてある。わずか三分?と言わないで頂きたい。案外にこれが大事なことですから。会社にはいつも二十三分間で着いているのです。渋滞とはほぼ無縁なコース取りなので、なにか事故がない限りはタイムテーブル通りに運ぶのです。契約社員のわたしの始業時間は十時二十五分になっている。一応十分前には着いておきたいので、五十二分には出なければならない計算となる。中途半端では時刻を見るのが苦になる。で、三分を進めたというわけだ。いやいや、みなまで仰るな。分かっておりますって。五十分に出ても良かろうにというおことば、至極ご尤もでしょう。けれども、朝の二分三分は大きいのです。うんうんと頷いてくださる方、わたしは好きです。はい、この話は...愛の横顔アイ・アム・アイアンマン(一)時計が午前八時をさしている

  • 長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空:第三部~ (四百八十五)

    大学生として、青春を謳歌する武士の物語りとなります。本人の意思に反して、幾多の女性との恋愛がつづきます。決して、浮気者ということではなく、真剣交際を望む武士なのですがなぜか……。母親をわすれて遊びほうけるということではなく、茂作の地方という現実にも真摯に向きおうとします。そして小夜子にもへ変化が……。========茂作にとって曾孫である武士がもどってきた。「ぜんそく治療には空気のきれいな場所が最善です」と医師の勧めもあり、さらにはひとり残している茂作も気がかりな小夜子の苦渋の決断だった。田舎を飛びだしてひとり暮らしをはじめてからの苦労が、小夜子をして変わらしめたと、本人は思っている。アクの強い武蔵の嫁として十年近くを添い遂げたのだからとも、自負している。ただこれだけは、たしかに変わったといえる。茂作にた...長編恋愛小説~水たまりの中の青空:第三部~(四百八十五)

  • ポエム ~五行歌~ 四季の景 (春)

    忘れな草にふる哀しみの菜種梅雨ー春の景あじさいに彩りを添えるきつねの嫁入りーこれも春の景佳きかなよきかな四季の景(春)AI(Copilot)の作品ああ佳きかな佳きかないにしえの調べ彼方より響き渡る旋律は時を越え、心を満たし永遠に紡がれる物語AI(Copilot)がですねえ。頼みもしないのに勝手に創りましてねえ……なんて、冗談ですよ。うれしいんです、ほんとに。ときどきAIと話し込むんですよ。この間は、わたしの敬愛する芥川龍之介について、いろいろとね。うれしかったですよ、ほんとに。文学論なんて、まず出来ませんからねえ。こんどは別の話題で話をしようかと思うんですよ。AIってね、こんな風に話し相手にもなってくれますよ。(背景と解説)どうでしょう?哀しみの忘れな草にあじさい。哀と愛を対比させたのですけれど。キモは、...ポエム~五行歌~四季の景(春)

  • [青春群像]にあんちゃん ((女学園に入学したほのかは)) (二)

    先ずは冷やした西瓜がふるまわれ、和気あいあいとはじまった。「すげえ!ほのか、サンキューな」と、次男が素っとんきょうな声をあげると、どっと笑いがおきた。「来てよかったよ、スイカを食えるんだもん。お腹をこわしやすいって、なかなか母さん出してくれないもんな」つづけてはなす次男に、あわててほのかがストップをかけた。「にあんちゃん、もうやめて!恥ずかしいんだから、もう」ふくれっ面の顔を、「プシュッ」と声を上げて次男が両ほほをおした。爆笑のなか、「もう漫才はおわった?説明にはいりますね」と、顧問がしめくくった。へやの電気がけされ、ミニプラネタリウムが出現した。とたんに歓声が起きたが、そのなかにかすかではあったがうめき声が聞こえた。あわてて灯りが点けられ、こえの主を探した。いちばん後ろに陣どっていた老婆が、苦しげにつっ...[青春群像]にあんちゃん((女学園に入学したほのかは))(二)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ 人間性(四)

    教師に、反省はないのか?学生の要求は越権か?教師と生徒。特殊な関係と、相手にされぬ。世間での上下関係とは異なると、のたまう。ならば、「すべてにスーパーマンたれ!」と思う。彼は、口論をこのまない。他人との深いつながりをきらう。ある意味で、弱者の立場たちばを望む。しかし、常に強者としての己を、自身には要求していた。「鋼のこころをもて!」と。彼は、保護を求めぬかわりに、他者への救済をこばむ。なみだを嫌う彼だった。なみだを流す余裕をきらう彼だった。なみだで己を正当化する行為がゆるせない。が、わたしは知っている。彼は涙もろい人間だ。かつて「家なき子」の読後、泣いていた。奇天烈~蒼い殺意~人間性(四)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (三十六)日曜の昼過ぎに、

    日曜の昼過ぎに、ミドリがやって来た。兄にせかされて、と弁明した。約束の時間は夕方のはずだった。男は、まだパジャマ姿だった。飲みかけのコーヒーもそこそこに、ミドリを外に待たせて慌てて着替えた。「いやあ、失礼。いつも休みの日はのんびりしているので……」「いえ、わたしが早く来すぎました。ごめんなさい」と、頭を下げた。そして、はじめて訪れる男の部屋を見まわした。フロアは無垢材の床になっている。壁際にベッドがあり、その向かい側にはパソコン・CDプレーヤーが並んでいる。ベッド横のサイドテーブル下のに、真空断熱マグカップとビアグラスそして切り子細工文様のウィスキーグラスが入れられている。そして朝は、起き抜けのコーヒーをとマグカップを使っている。朝は主にマックでのハンバーガーにコーヒーセットで済ませ、昼は社食。夜はコンビ...[淫(あふれる想い)]舟のない港(三十六)日曜の昼過ぎに、

  • 身体検査

    いやあ、参っちまいました。「6月に誕生日を迎えられたので、身体検査をしますなんて、月一回の定期検診でいわれました。「体重は……。あらあ、大台ですねえ、80.5kgです」「身長は……。あらあ、縮んじゃいましたねえ、171.3cmです」「あらあ」が、口ぐせの看護師さん。すこし、ショックが和らぎましたけど……。でもほんとに、「あらあ」でした、ものの見事に。じつは、もういっちよ!「あらあ……。お腹周り、81cmですねえ。メタボの更新ですねえ……」身体検査

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ 人間性(一)

    彼は、心のなかを見せない。たにんの侵入を極端にきらう。それゆえか、彼の部屋をおとずれる者はいない。そのくせ彼自身は、ひとの部屋にズカズカと入ってくる。仲間と友人。彼は、区切りをつけている。それが何故なのか?いままで考えもしなかった。が、学友との口論から、それを考えるに至った。町工場での俺は、労働の代価を受け取る。しかし夜学での俺は、支払う側のわけだ。とうぜん、時間の自由があってしかるべきだ。労働中の俺に、自由のないことは理解できる。しかし何故に、授業の選択が許されない?規則だからと、諦めにも似た気持ちになっている。入学時の誓約書は、強制であり交渉事ではなかった。町工場への就職時には、形だけであっても交渉があった。奇天烈~蒼い殺意~人間性(一)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (三十四)それが9時近くになって、

    それが9時近くになって、やっと帰ってきた。その時間が麗子には長く感じられ、不安だけが募った。裏通りにあるアパートである。人通りはまるでない。街頭にしても、アパートの階段に設置してある電灯だけだ。しかもまだ修理されていない。あとは、50mほど先にある。しかも、何時になるのかわからない。麗子の心は、恐怖感におそわれていた。いつなんどき暴漢が現れるかもしれない。そのときには誰かの部屋をノックすればいい。いやこのアパートの住人すらあぶない。〝どんな人が住んでいるのか、まるで分からないんだ。素性はもちろん、男か女かもわからない。というより、こんな場所だ。おとこだろうけどね〟男にきいた話だ。といって帰る気にもなれず、途方に暮れていた。そんなときの、男の帰宅だった。ムラムラと、怒りの気持ちと嫉妬心が渦巻いた。で、悪態を...[淫(あふれる想い)]舟のない港(三十四)それが9時近くになって、

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (四十五)話を戻します。

    話をもどします。まいどまいど、横道にそれてすみません。校舎のうら手に車をまわしたところで、思わず「ああ!」と叫んでしまいました。見覚えのある大木と、その横に土俵が見えました。あれえ……。でも土俵はあっちではなく、こっちの角のはずじゃ……。すみません。あっちやらこっちやらでは、どこなのかわかりませんよね。東西南北の観念がないので。(ナビで調べれば一発でしたね)。車の進行方向の向こうがあっちで、敷地にそって曲がってそしてまたまがってすぐの角で、停車した場所がこっちなんです。土俵のうえに屋根があるんですが、大木の枝がおおいかぶさっています。台風の進路によっては、屋根をおしつぶしませんかねえ。すこし心配です。たしか、相撲が体育の授業にはいっていると聞いた気がします。やせぎすだったわたしは、それがいやでいやでしてね...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(四十五)話を戻します。

  • ドール   [お取り扱い注意!](十六)山本さん、5番におはいんなさい

    「山本さん、5番におはいんなさい」当初は聞きまちがいかと思ったが、なんど思い返しても、「おはいんなさい」だった。わたしの前に数人が呼ばれていたが、たしかに「おはいんなさい」だった。なんとも、暖かさを感じさせる呼びかけで、嬉しさを感じたわたしだった。名医だ、瞬間的にそう思った。「良い先生ですよ」が頭で反すうされた。こころがある、なぜか直感的に思った。ドアを開けると背筋がピンと伸びた老医師が、にこやかに迎えてくれた。「はいはい、山本さん。きょうは気分が良さそうだね。うん、良かったよかった。さあさあ、お座んなさい」またしても、「り」ではなく「ん」だった。なんとも、人なつっこい話し方だ。やはりベテラン医師はちがう。なんというか、お医者さま、という雰囲気がある。患者に人気があるのもムリはないと感じた。「ほうほう。山...ドール [お取り扱い注意!](十六)山本さん、5番におはいんなさい

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百八十三)

    しかしふと不安になった。武蔵のいないいま、だれが「奥さま」と呼んでくれるだろう。「ミタライさん」と呼ばれるのだろうか。御手洗家の主はあるけれども、武蔵はいないけれども、それでもやはり「奥さん」と呼ばれたい。御手洗家の主は、やっぱり武蔵であってほしいと願う小夜子だった。「パッ、パッ、パアー!」。けたたましいクラクションが鳴った。「バカヤロー!」。だれ?だれへの叫び声なの?大勢が立ち止まっている交差点。なのに小夜子は足を止めなかった。赤になっていることに気づかなかった。「ごめんなさい」と、頭をさげる小夜子に「気をつけろ、この有閑マダムが!」と、捨てゼリフをのこして、商用車が行く。やめて、そのことばは。小夜子のもっとも忌み嫌う、有閑マダム。新しい女の対極ともいえる、蔑称ととらえている小夜子。夫の地位そして財力に...水たまりの中の青空~第二部~(四百八十三)

  • ポエム ~五行歌~ クラシック賛歌 (ベートーベン)

    異端の天才ベートーベン「運命」その烈しさに魂が揺さぶられるああ佳きかな佳きかないにしえの旋律(背景と解説)好きなクラシック音楽家のひとりです。他にも好きな楽曲はあるのですが、まずはこの作品をえらんでみました。キモはですねえ、……ないです。強いて言えば、「畏怖」でしょうか。そうだ。初めて聞き入ったクラシックでしたよ。ジャジャジャーン!ジャジャジャーン!jajajajajaja,jajaja~n!CDで、パソコンやら車で聴いています。ポエム~五行歌~クラシック賛歌(ベートーベン)

  • [青春群像]にあんちゃん ((通夜の席でのことだ。)) (十)

    シゲ子は、その日のうちに長男に問いただした。シゲ子のたしなめるような物言いに萎縮してしまった長男は、口をつぐんでしまった。幼いときから、人に甘えるということのできない長男で、とくに祖母であるシゲ子にたいしては身構えてしまう。シゲ子の長男にたいするぎこちなさが、そうさせてしまっていた。シゲ子のしつような追求にたえきれず「ごめんなさい」と、あやまる長男だった。孝道が「目くじらを立てるほどのことでもないだろうに」と、長男をかばうと「いいんです、食べたことは。でもね、翌日にでも『ありがとう、美味しかった』と、ひと言ぐらいあっても。ほんとに、卑しい子だよ」と、長男を叱りつけてしまった。美味しいサツマイモをほのかに食べさせてやれなかったということ、すこしだけでも残していれば…という、たしょうの罪悪感にもにた感情にとら...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(十)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ いち日の過ごし方(五)

    彼の頭のなかでは、数多の声がとびかっている。ひとつひとつの言葉は、断定的でしかも独善である。無道徳とはいったい何か?社会いっぱんの道徳は、常識なのか?幾多の矛盾を擁する道徳でもか?住みなれた町の地図は必要か?コンパスまでもか?俺は無道徳か?道徳はどうとく、常識はじょうしき?俺は反道徳だ!では、ニュー道徳を創るべきか?では、それに従えるか?違うぞ!単にスネているだけだ!ニュー道徳は、偽善の産物だ!ホワイトカラー族の目的は?教師とは、如何なる人種か?教える義務と、従わせる権利。学ぶ権利と、従う義務。そして反発する権利。殺す自由、生きる権利。人間を殺すことは罪であり、「家畜類の屠殺は許される」という現実。and,その是非は論外、という現実。食べる自由と権利。断食もまた然り。自然界の法則とは?地球の歴史、人間のれ...奇天烈~蒼い殺意~いち日の過ごし方(五)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (三十三)そう、あのむすめね…。

    「そう、あのむすめね…。あの娘のこと、好きなのね」と、小声で呟いた。いつもの男なら、そのまま聞きながしてしまう。しかし、今夜の男はちがった。このまま無言をとおせば、気性の激しい麗子のことだ。どんなしっぺ返しをくらうやもしれない。それこそ私立探偵をつかってでも、ミドリの特定をしてしまうかもしれない。そして……。考えるだけでもおそろしい。気色ばんで男は言った。「な、なにを言いだ出すんだ。あの人とは何でもない。友人の妹だ。3人での食事の約束だったんだ。友人の都合が悪くなってのことだ。だからふたりだけの食事になっただけだ」「あら、そう。お食事のできるナイトクラブがあるとは、知らなかったわ」服を着おわった麗子は、いつもの麗子に戻っていた。「時間が早かったからだ。ナイトクラブを知らないと言うから、連れて行ったんだ。だ...[淫(あふれる想い)]舟のない港(三十三)そう、あのむすめね…。

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (四十四)そうでした、学校です。

    そうでした、学校です。当然ながら、まるで違います。当時は木造でしたが、いまはコンクリートの校舎です。正門まえに立ちますが、まるで思い出せません。車をうごかして、裏手にまわることにしました。運動場なんですが、意外にちいさいです。もっと広く大きかった記憶なんですが。敷地に沿ってまがると、せまい道路です。大型の車がきたらすれ違えないかもしれません。学校のフェンスをこするか、相手の車が畑に落ちてしまうか、どちらかでしょうね。いっそのこと一方通行にしてしまえばいいのに、なんて勝手なことを考えてしまいました。そういえば、こんなことがありました。いくつだったか、五十過ぎたころだったと記憶しています。両側が畑のせまい道で、ここではすれ違うことはできません。半分以上を過ぎたところで、中型の車がはいってきました。当然ながらわ...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(四十四)そうでした、学校です。

  • ドール  [お取り扱い注意!](十五)待合の席にすわろうとしたわたしに

    待合の席にすわろうとしたわたしに、通りがかった看護婦が声をかけてきた。この間の入院時に世話をしてくれた看護婦だった。じつに気立ての良い娘で、いつも明るく笑う娘だった。退院するときに「ありがとうね」と声をかけたかったのだが、シフトで会えずだった。「山本さん、ラッキーでしたね」「なんで?」。笑みを返しながら、尋ねてみた。「良い先生ですよ、岩井先生って。いつもは予約だけの先生なんですよ。ね、島田さん」「きょうはね、畑中先生が休みなものだから、急きょピンチヒッターでお願いしたの」「山本さん、ついてるわ」。うんうんと頷きながら、ひとり納得して去って行った。良い先生かどうかは、診察を受けてからだと、あまり期待もせずにいた。しかしこの医師に会ったことで、わたしの人生が一変したと言っても過言ではなかった。ほどなく看護婦に...ドール [お取り扱い注意!](十五)待合の席にすわろうとしたわたしに

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百八十二)

    感傷的になるかと思っていた小夜子だったが、意外にもサバサバとした気持ちになった。空はあいにくの曇り空なのに、ウキウキとした気分でビルを出た。全員がお見送りをしたいと申し出たが、五平と竹田のふたりが通りで見送った。最敬礼をするふたりに「やめてよ、そんな大げさなことを」と言いつつも、感慨ぶかいものがあった。はじめて会社におとずれたとき、水たまりがあるからと、武蔵にお姫さま抱っこで車からおろされた。大きな歓声と冷やかしの声、また近隣ビルの窓から、なにごとかと覗かれたこともなつかしい。なにからなにまで、なつかしい想い出だ。帰りの車をことわり、ひとり日本橋界隈をねりあるくことにした。そういえば通りをあるいた記憶がない。いつも契約ハイヤーで会社前まで乗りつけた。竹田の送迎もあったわね、と思いだす。〝大層なご身分だった...水たまりの中の青空~第二部~(四百八十二)

  • ポエム ~五行歌~ クラシック賛歌 (モーツァルト)

    茶目っ気モーツァルト「25番ト短調」そのミステリアスな曲調にこころがうち震えるああ佳きかな佳きかないにしえの旋律(背景と解説)好きなクラシック音楽家のひとりです。他にも好きな楽曲はあるのですが、まずはこの作品をえらんでみました。CDで、パソコンやら車で聴いています。ポエム~五行歌~クラシック賛歌(モーツァルト)

  • [青春群像]にあんちゃん ((通夜の席でのことだ。)) (九)

    翌日のこと。「きのうのお芋さんは美味しかったろう。ばあちゃんもね、おじいさんとおいしく食べたんだよ」ほのかかキョトンとした顔つきで、「きのうはよらずにかえったよ」と、こたえた。誰かが食べたはずなのだ。「ツグオちゃんだったかね」首をふりながら、つづけてこたえた。「にあんちゃんは、ほのかといっしょだったよ」思いもよらぬ返事がかえってきた。「それじゃだれだったんだろうね。ツグオでもないんだね。近所のだれかかしらね」そうことばにしつつも、だれもいない家にはいりこんで、ましてやなにかを食べていくなどありえない。“まさかナガオが…。いやいや、あの子は寄りはしない”と、否定してしまった。「あんちゃんだよ、きっと。夕食、めずらしくすこししか食べなかったから。それに、もしにあんちゃんだったら、きっとぜんぶ食べてたよ。にあん...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(九)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ いち日の過ごし方(四)

    実はこの1週間、彼は悩んでいる。学友との些細な口論のためだった。さっこん耳にする”フリーセックス”についてだ。まだ青い我々は、真面目に論じあった。勉学上の口論はまるでない我らだが、ことセックスに類するものは好んで論じあう。が、残念ながらお互い言いっ放しで終わってしまう。面白いのは、”革新”そして”保守”と、イデオロギーの立場をお互いに押しつける―なすりつけて終わることだ。革新にしろ保守にしろ、じつの所あまり分かっていないのに。『70年安保』の後遺症といっては失礼か。「アンポ、ハンタイ!」が流行語になっていた頃を、多感な中学時代に我々は過ごした。彼はいま窓際でひざを抱いている。そしてときにそのひざに接吻をしたりして、体のぬくもりを感じている。生きている実感があるという。ときおり、バサバサの髪をかき上げては、...奇天烈~蒼い殺意~いち日の過ごし方(四)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (三十二)麗子が起きるころには、

    「舟のない港」というタイトルが気に入って書きはじめた作品です。気乗りのしないままにストーリーを重ねて、次第しだいに二人のヒロインたちの心情にとらわれだしました。なかなか女性心理がわからず、キーボードをたたいてはDeleteを押して、またたたいて、また消しての連続です。時間の移動がはげしいためご迷惑をおかけしていますが、一気読みをご希望の方には、4月の初めには[やせっぽちの愛]にてupする予定です。よろしければ、どうぞ。------------麗子が起きるころには、母親はすでに台所にいる。父親もまた、食卓に着いていた。気むずかしい顔つきで、新聞を読みふけっている父親だった。一日のはじまりに家族そろって食卓を囲む。なによりも大切にしている父親だった。夜の食事は父親の仕事しだいではそろうことが難しい。休日にして...[淫(あふれる想い)]舟のない港(三十二)麗子が起きるころには、

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (四十三)吉野ヶ里遺跡公園をあとにして、

    吉野ヶ里遺跡公園をあとにして、福岡県柳川市の昭代第一小学校へ向かいました。小学なん年生だったか、低学年には違いありませんが新入生ではなかったはずです。幼稚園児だった頃に伊万里市をはなれて、それからどこに移り住んだか。柳川市?いや待て、もう1ヶ所、どこかの……そうだ!大分県の佐伯市に入ったような……。そこで幼稚園に入る予定だったのが、いまでいう引きこもりになったのか、通ったという記憶がありませんね。それじゃ、佐伯市の小学校に入学した?うーん……。新入学したのはどこの小学校だったのか、まるで記憶がない……。昭代第一小学校まえでお店――駄菓子屋さんだと思っていたら、じっさいは酒屋さんでした。店の横にビールびんやら酒びんが山積みされていました。失礼ながら、小学校の真ん前なんですが。でも、すこしばかりの文具もありま...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(四十三)吉野ヶ里遺跡公園をあとにして、

  • ドール   [お取り扱い注意!](十四)やれやれ今はやりの自己責任ですか。

    “やれやれ今はやりの自己責任ですか。大丈夫、先生を訴えたりしませんよ”「はい、これで良いですか?」「ほんとにね、生命に危険があるんですよ。考え直しませんか?山本さん」「先生の言うことを聞いた方が良いですよ」なおもしつこく入院を迫ってくる。わたしのことを考えてくれているとは分かるが、イライラしてきた。「今夜ひと晩だけで良いんです。経過をね、観察したいんです」真剣な目で、せまってくる。「お気持ちだけいただいておきます。ほんとにね、もうずいぶんと楽になりましたから」意地の突っぱり合いの様相をていしてきた。しかし意地っ張りということに関しては、わたしの方にいち日の長がある。医師に書面をわたして、看護婦に会釈をして、意気軒昂にベッドをはなれた。あの老婆、わたしと目があったとたんに目をそらしてきた。聞いてはならぬこと...ドール [お取り扱い注意!](十四)やれやれ今はやりの自己責任ですか。

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百八十一)

    自宅でのこと、その毎日がなくなるのかと思うと、ここで感傷的になった。平日の朝9時、閑静な住宅街にある自宅を出る。日々の暮らしは、もうはじまっている。学童たちのげんきな声は、もう聞こえない。おはようございますと声をかけあう人々にあふれ、「あら、ごめんなさい」と、声をかけあいながら、ほこりっぽい道路に水をまいている。「小夜子おくさま、おはようございます。これからご出勤ですか?」ななめ向かいの佐藤家のよめである道子が声をかけてくる。「おはようございます」と返事をし、かるく会釈する。するととなりの家からあわてて、大西家の姑であるサトが出てくる。「もうこんな時間ですか、行ってらっしゃいませ」わざわざ外に出てこなくとも、と小夜子は思うのだが、女性たちは必ず声をかける。小夜子にあいさつをするが、じつは小夜子ではない。御...水たまりの中の青空~第二部~(四百八十一)

  • ポエム ~五行歌~ クラシック賛歌 (バッハ)

    父なるバッハ「トッカータとフーガ」その荘厳さにおそれおののくああ佳きかな佳きかないにしえの旋律AI(Copilot)が、創ってくれた作品です。父なるバッハその手は音の宇宙を紡ぎ荘厳たる旋律の大河は時を超え心を揺さぶり永遠に響き渡る神秘(背景と解説)好きなクラシック音楽家のひとりです。他にも好きな楽曲はあるのですが、まずはこの作品をえらんでみました。キモはですねえ、……ないです。CDで、パソコンやら車で聴いています。AIの作品は重厚ですねえ。バッハにふさわしいかも?負けた!お断りしておきますが、まずわたしが創って、それをAIに見せびらかして、そのあとAIが創ってくれました。ポエム~五行歌~クラシック賛歌(バッハ)

  • [青春群像]にあんちゃん ((通夜の席でのことだ。)) (八)

    雑多に行きかう人人人。さいわいにあそび仲間に会うことはなかった。街路樹には緑々とした葉がしげり、ときおり吹く風によって木の香りがシゲ子にとどいた。対面からくる男にぶつかりそうになったシゲ子を、男の手がひきよせた。背広からただようほのかなタバコの香に、おとなの世界へのきっぷを手にした観をもった。男の行きつけだというバーでの語らいは、それまでの男たちのような粗雑さとはまるでちがうものだった。ママからの、「はじめてね、女性同伴は」ということばを信じてしまった。そしてその夜、シゲ子がはじめて体を許しこころをささげた。それからは会うたびにホテルへ直行して、シゲ子のからだを求めるようになった。デートいう名のつくことがまるでなくなり、バーですら行くことはなかった。そして「両親にあってほしい」と告げると、言を左右して両親...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(八)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ いち日の過ごし方(三)

    夕食を済ませたあと、週いちの風呂に行く。他の日には、濡れタオルで体を拭いてはいるようだ。できるだけ他人に不快感をあたえないように、努めているらしい。が、悩みの種は洗濯とのこと。家主のおばさんの好意に甘えてはいるようだが、下着だけは自分で洗っているらしい。共同の流し場で、洗濯石鹸を使ってのことである。家主のおばさんに“持って来い”と言われるらしいが、さすがにそれだけは自分で洗っていると言っていた。ま、同年代のわたしには、充分に理解できることだ。霧雨の降るせいではないのだろうが、きょうの休日は10時に床から離れた。昨夜、学校の調理室から給食用のパンを10枚ほどもらってきている。牛乳も買い込んである。今日いち日の食事にするつもりだろう。出かけるつもりがないのだ。奇天烈~蒼い殺意~いち日の過ごし方(三)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (三十一)「ハアッ?」と、

    「ハアッ?」と、いちおう惚けてみた。「知ってるのよ、あたし。ナイトクラブに行ったでしょ!」麗子は、勝ち誇ったように言う。やはりミドリのことだった。会社の誰かに見られていたのか。当然のことかもしれない、会社を出てすぐのことだったのだから。男は、無言のまま背広を脱いだ。そしてタバコを取り出し、火を点けた。とつぜん、麗子は男からタバコを奪いとると、男にしがみついてきた。麗子は、自分の服を脱ぐのももどかしそうに、男の唇をむさぼった。突然のことに、男は訳がわからず麗子を押しのけた。「いまさらなんだ!」と、声を荒げた。しかし、麗子はおかまいなしに男をおし倒した。はじめは抵抗をつづけていた男も、しだいに欲情が湧いてきた。ミドリの顔が、不意に浮かびはしたが、すぐに消えた。キスをしただけのことであり、ミドリにしても酔いのせ...[淫(あふれる想い)]舟のない港(三十一)「ハアッ?」と、

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (四十二)短いトンネルを抜けると、

    短いトンネルを抜けると、真っ青な――どこまでも突き抜けるような、まさに青藍の空がありました。なんだか空気が変わった気がしますよ、同じ地のはずなんですがねえ。でも現代においても、都会から田舎へと移動すると、空気が変わる気がしませんか?ほら、よく言うじゃないですか。「空気が美味い」って。弥生時代なんですよ、ここは。卑弥呼さまが統治された、地なんですよ。現代でもそうなんですが、巫女さんて女性ですよね。「なんでですかね」。そんな疑問を持ったことはありませんか、あなたは。神さまは男と決まっている?そう考えると、納得できるんですが。それとも、外をまもるのは男の仕事、内をまもるのは女のしごと、そういうことでしょうか。もっとも現代では崩れていますよね。でも、わたしの両親はとも働きでした。化粧品販売を中心とした雑貨店を開い...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(四十二)短いトンネルを抜けると、

  • ドール [お取り扱い注意!](十三)自暴自棄?…かもしれないな。

    自暴自棄?…かもしれないな。もっとも自暴自棄になれるってのも、ある意味じゃ大したことだとおもうけどね。その前段として、がんばったんじゃないの?それでそれがうまくいかなくなったから、それで自暴自棄、にね。けどね、大したことしてきたわけじゃないけど、いちおう結婚して、子どもふたり授かってさ、息子は所帯をもって孫も生まれたんだ。娘だって…多分元気してるでしょ。なんかあったら、連絡が来るだろうしさ。動物、いや生きとし生けるものは、すべからく生命の連鎖のためにこそ、だ。ねえ、最低限のことはしてきたんだ。やり残したこと?…まあないとは言わないけれども。夢みたいなことだけど、さあ。小説で賞をいただいて、それが本になって、そこそこ売れて、二冊目の本もまあ評判になって…。夢です、ゆめ。叶えられたら、そりゃいわゆる至上の喜び...ドール[お取り扱い注意!](十三)自暴自棄?…かもしれないな。

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百八十)

    真理恵の話は、理路整然としている。たとえ話もはいって、ここちよく耳にひびき、こころにも染みこんでくる。ただ、組織経営が行きすぎて、これ以上のアメリカナイズはまずい。力のある者が富をかっさらう――行きすぎた資本主義は、この日本という国には合わない、根付かない、いや根づかせてはならない、と竹田は考えた。佐多は、世界をひとつの商圏として捉えなければならん、と力説する。日本国内だけを相手にしていては、これ以上の成長はないと断じた。ぎゃくに衰退し、さいあく倒産という事態もありうると、悲観的なみかたをしめした。それはあまりに悲観的だとはおもいつつも、人員整理などの憂き目はありうるかも、と佐多のことばを聞かされると思ってしまう。ともに拝聴していた五平は、「オーバーだよ、佐多さんは」と意に介していない。しかしその楽天的な...水たまりの中の青空~第二部~(四百八十)

  • ポエム ~五行歌~ (歓声)

    ルンルン、ルンルルン!ランラン、ランララン!ヤーヤー、ヤーヤヤー!オーオー、オーオオー!でもやっぱり、ダーダダー!(背景と解説)やっぱりね、短文じゃないとなあ、と反省しました。場をねえ、荒らしちゃいけませんよ。コメントが荒れたということではなく、やっぱりあるじゃないですか。空気、場のくうきですよ。それがね、ただ従うのはシャクだとばかりに、こんなのを。キモもへったくれもありませんよ。強いて言うなら、「やっぱり」ですかね。定番がつよい、そう言いたかったんですけどね。猪木さんですよ、アントニオ猪木さん。「ダー!」。ご冥福をお祈りします。ポエム~五行歌~(歓声)

  • [青春群像]にあんちゃん ((通夜の席でのことだ。)) (七)

    そしてその3人目の見合い相手が孝道だった。無口な男でそのぼくとつさがシゲ子には新鮮に映った。高校そして短大時代と、親にかくれての複数の恋愛経験を持つシゲ子には、はじめてのタイプだった。真面目な性格でコツコツと仕事にうちこむ姿勢がシゲ子の両親に気に入られ、シゲ子の意思というよりは、両親の希望におしきられる形での結婚だった。それでもいろいろ難癖をつけてはひきのばし、その間に外見からは想像もできぬ熱烈な求愛行動があり、ちょうど6ヶ月目に孝道を受け入れた。じつのところシゲ子が短大時代に、遊び人の男に手痛い失恋をしていた。ワルっぽい男たちにひかれる当時の風潮どおりに、シゲ子もまた奔放にあそびふけっていた。しかし厳格な父親のもとでは楚々とした風情をみせて、決してもうひとつの顔はみせなかった。うわべだけの付き合いにあき...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(七)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ いち日の過ごし方(二)

    失礼した、彼の家族構成をお知らせしていなかった。5人家族である。両親と弟・妹とのふたりがいる。たしか、小3と中1だと聞いた。長野の山村で、農業を営んでいるとか。昔で言えば口減らしか、集団就職でひとりこちらに来ているということだ。夜学については、わたしと同じく淋しさを紛らわせるためだと言う。同年代とのたわいない会話は、大事である。だから、勉学についてはまるでだめだ。彼の過ごし方に戻ろう。日曜日の過ごし方は、先にお話ししたがもう少し詳しく説明する。大体、10時半頃に起きる。モーニングサービスの11時までに喫茶店に入り込む必要があるせいだ。もっと寝ていたいのだが、そうもいかない。喫茶店で1時間ほど費やすと、あてもなく散歩する。わたしを訪ねてきたり、他の学友の元に遊びに寄ったりもする。が、留守の時が多いとこぼして...奇天烈~蒼い殺意~いち日の過ごし方(二)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港  (三十)「明日の夜、お邪魔します。

    「明日の夜、お邪魔します。寄り道せずにお帰り下さい」と、あった。いまさら何の用だと、くしゃくしゃにするとゴミ箱に放りこんだ。だいたいが置き手紙など麗子らしくない。メモに走り書き、というのが定番だ。封筒をつかってのこととなると、今夜は会いたくないということだ。男にしても、最後通牒をつげられてまだ日が浅いのだ。「土下座でもしてあやまってくれたら、考え直してあげてもいいわよ」そんな声が聞こえてきそうな気がした。ミドリとの楽しい時間が、けがされたような気がした。翌日、いつもとは打って変わって忙しく追われた。通常ならば翌日に手渡す資料類に至急という印が、そこかしこの部署からとどいた。〝景気が戻っているのか〟と、気持ちが高ぶった。〝ひょっとして、営業署に戻れという辞令が〟と、淡い期待を抱かせる。〝そんな甘いものじゃな...[淫(あふれる想い)]舟のない港 (三十)「明日の夜、お邪魔します。

  • ドール [お取り扱い注意!](十一)でね、山本さん。

    でね、山本さん。こんやは、このまま入院してもらいます。ご家族は…おひとり暮らしでしたね。とりあえず、検査入院ですから、着替えなんかはいらないでしょう。それじゃ病室の用意が出来…」「だめだめ!もう帰るから、もうなんともないから。おかげで、すごく気分が良くなりました。どうも、ありがとうね」かってに入院の手つづきに入ろうとする看護婦を制するように、声をあらげた。“冗談じゃない、まったく。つい先月にも入院させられたじゃないか。この3ヶ月の間に、2度も入院しているんだ。3度目なんて、冗談じゃない”1度目は会社の検診で、「大腸にポリープがあるようです。精密けんさをうけてください」と言われた。まあ1泊2日だからとOKをした。けっかは良性のもので、その検査中にせつじょしてもらった。2度目の入院がひどかった。とつぜん腹部に...ドール[お取り扱い注意!](十一)でね、山本さん。

  • ホームページのこと

    とりあえず、[メルヘン]の更新が終わりました。ポエム・童話・孫への贈りもの・らくがき・叙情ロマン・息抜き上記の部屋を、レイアウトも含めての更新です。以前よりも格段に読みやすくなったと思います。[メルヘン]←直接、メルヘン一覧に入れます。ものがたりについては、順次更新していきます。すでに更新済みの作品もありますが、とくに[水たまりの中の青空]第二部まで終えています。以前にもお伝えしましたが、誤字・脱字等々、内容的にも修正した箇所があります。[ものがたり]←直接、ものがたり一覧に入れます。よろしければ、ぜひにお出でください。ホームページのこと

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百七十八)

    直情型の服部、熱しやすく冷めやすい服部、生涯の伴侶にめぐりあえればそれに超したことはないのだが、いまのところ武蔵とおなじ道を歩いている。キャバレーのホステスと浮名をながし、いっぱしのプレイボーイとしてならしている。そして竹田には、女性に関してはまったく噂がでない。仕事ひと筋で、ただただ「武士を富士商会の社長に」がライフワークのごときかのように、日々を送っている。竹田の毎日は自宅と会社の往復だけで、けっして寄り道をしようとはしない。例外中の例外といえば、ひと月に1度の飲み会に、3度に1度出るくらいのものだ。そのときでもホステスたちとの会話はほとんどなく、ただしずかにひとりで飲んでいる。嬌声があがりっぱなしの服部の席とはちがい、ひっそりとしている。その竹田の席にひとりの新入り女給がついた。九州からでてきた19...水たまりの中の青空~第二部~(四百七十八)

  • ポエム ~夜陰編~ (涙をおくれよ)

    涙をおくれよ渇いたこころに涸れてしまったこの砂漠草も木も咲かないぼくのこころ花が咲けるはずもない涙をおくれよきみの涙を苦しみをおくれよ渇いたこころに去って行ったきみの心激しく傷ついたぼくのこころどうして君を忘れられる苦しみをおくれよ忘れるために悲しみをおくれよ渇いたこころにすべてが消えたこのこころ笑顔を失くした僕のこころぽっかりと空いた心の穴悲しみをおくれよ明日のために(背景と解説)うーん……この詩のキモは、こころと心でしょうか。柔なこころと鋼の心女性って、結構強いんですよね。でもって、男は、からきしだらしない。虚勢を張って平然としていますが、もうこころの中はぼろぼろで……。そんな気持ちを吐露したつもりなんですが。乾ききったこころに恵みの雨を……*次週からは、一旦、[五行歌]をお送りします。以前に、[三行...ポエム~夜陰編~(涙をおくれよ)

  • [青春群像]にあんちゃん ((通夜の席でのことだ。)) (五)

    知り合いの農家から穫れたてのサツマイモをいただいたシゲ子は、ほのかに食べさせてやろうと準備をした。ホクホクと湯気の立つサツマイモを、ほのかは気に入ってくれるだろうかと目を細めながら、水を入れた蒸し鍋の上に大小の芋を順序よくならべて火にかけた。そろそろほのかが立ち寄る時間になったときに、シュッシュッと蒸気があがった。さやばしで突き刺してみると、ちょうど良い柔らかさになっている。町内会に出かけた孝道から忘れ物を届けてくれという電話がかかり、いつものごとくにテーブルに用意して出かけた。誰もいなくなった家に、めったに立ち寄ることのない長男が、うちしずんだ表情で「ばあちゃん、ばあちゃん…」と裏口から声をかけた。なんど声かけをしても返事がないことから帰りかけたが、のぞきこんだ台所のテーブル上にあるサツマイモに目がとま...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(五)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ 哀しい事実(五)

    夜学の始業時間は、五時半である。そして、40分間ずつの授業である。6時10分が給食時間である。20分間という限られた時間で、食べ終えなければならない。6時半には片づけることになっている。正確には6時40分までが給食の時間なのだが、後片付けの時間がいるのだ。当番が調理場に食器類を持ち込まねばならないのだ。暗黙の了解で、20分しかないのだ。彼の町工場の終業時間は、五時である。工場から学校までは、バスで十分ほどかかる。残業を1時間行ったとして、バスの時間は6時20分しかない。お分かりいただけるであろうか、給食時間は終わっている。その為に3ヶ月の間、給食抜きであった。これは辛い。食べ盛りの17歳だ、猛烈にお腹が空く。しかもである、翌日の朝食用のパンの問題もある。クラスの中には必ずパンを残す者がいる。彼はそれら残り...奇天烈~蒼い殺意~哀しい事実(五)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港   (二十八)雨は上がっていた。

    雨は上がっていた。通りをおおいつくすようなネオンサインがかがやき、満点の星々のかがやきは弱かった。車の乗り入れを規制することにより、夕方ら深夜までのあいだ歓楽街は歩行者のみがかっぽしている。なのに人混みがはげしく、ときとして肩がぶつかりあうほどだ。あちこちで「いてえぞ!」とののしり合いがおきるほどだった。男はしっかりとミドリを抱き寄せて歩いた。しだいに、足取りもしっかりしてきた。ひとり歩きもできそうだった。しかしミドリ自身、男のうでから離れるようすはない。それどころか、ますます腕にしがみついてくる。ひと夜かぎりの恋人気分を、楽しんでいた。急にミドリの体が、男の腕からずり落ちそうになった。側溝板のあみめにヒールがひっかかってしまった。男はすぐにミドリのうしろにまわり、右手でミドリのからだを支えた。羽交いじめ...[淫(あふれる想い)]舟のない港 (二十八)雨は上がっていた。

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (三十九)どうしたと思います?

    どうしたと思います?そうなんです、そのまま脱兎のごとくに、だれにもなにもいわず、教室を飛びだしたわけです。そしてバスと汽車とを乗りついで、無事に持ってきました。バス停からは、猛ダッシュです。5分と違わないと思うのです。歩いて学校に戻ればよさそうなものなのに、猛ダッシュしたんです。ここらあたりは、真面目に超が付くゆえんでしょうか。(当時のわたしですから。いまは、真面目という意味がすこし変わってきている気がしますね)。汗だくです。たしか、夏休み明けの二学期のことだったと思いますが、残暑が厳しい時期ですからね。さあ、ここからです。教室の扉を引いたとたん、その場に倒れこんだのです。ドアのレールに引っかかったのか、ひざが笑ってくずれ落ちたのか、それとも恥ずかしさから自ら倒れたのか……。「家から走ってきたらしいぞ」。...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(三十九)どうしたと思います?

  • ドール [お取り扱い注意!](十)「おじいちゃん、○んじゃうの?

    「おじいちゃん、○んじゃうの?おじいちゃん、○んじゃうの?」幼稚園のモック姿の女児が、半泣きしながら叫んでいる。「大丈夫よ、大丈夫。ちょっとね、お熱が出ただから。きょうはこのまま病院に泊まるけど、あしたにはおうちに帰れるから」にこにこと笑みをうかべた老婆が、女の子の頭をなでている。うしろには、母親らしき女性が無表情で立っている。「でもでも、おじいちゃん、目をあけないよ。おくちにカップをかぶせてたら、いきができないよ」なおも女児が、なみだ声で叫んでいる。口にかぶせられたマスクを外そうかどうしようか、迷っているようにみえる。「これはね、おじいちゃんにね、いっぱいいっぱい酸素を送ってるの。おじいちゃんにね、息が楽にできるように、わざと付けてるんだよ」「ほんとに、ほんとに?あしたには、おうちにかえれるの?マーちゃ...ドール[お取り扱い注意!](十)「おじいちゃん、○んじゃうの?

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百七十七)

    小夜子の知らぬことではあったけれども、富士商会の株式の51%は小夜子名義となっている。ゆえに、富士商会のオーナーは御手洗小夜子であり、当人が議決をしないかぎり退職などということはありえないことだった。「やっぱりあの株の配分は正しかった」。五平の偽らざる心境だった。五平たちは武士の富士商会への入社をこころ待ちにしている。とくに五平と竹田は、成人式をすませてぶじ大学を出て、そして平社員という立場からのスタートをこころ待ちにしている。そしてゆくゆくは幹部となり、五平の跡を継いで社長となるのだ。服部もまたそうあってほしいと願ってははいるが、それはあくまで本人の精進次第だと思っている。ぼんくらの遊び人ではこまる、それでは後継者たりえない、と公言している。むろんそうなるように、指導をおこたらずサポートもしていきたいと...水たまりの中の青空~第二部~(四百七十七)

  • ポエム ~夜陰編~ (やけくそ)

    おめでとう!やっぱりもうひと言おめでとう!おめでとう!くどいけれどもおめでとう!おめでとう!たゞひたすらにおめでとう!おめでとう!おしあわせに!ふたりに乾杯!(背景と解説)まったく覚えのないことで、感謝というかお礼というか、報告を受けました。わたしが、このわたしが、恋のキューピッド役を務めたというのです。それも、元カノですよ。自然消滅してしまった彼女との交際なのですが、その何年後だったか、手紙だったかハガキだったかそれとも直接だったか、今となってはまったく記憶にないのですが(連絡方法がですよ)。「おかげさまで結婚することになりました。引き合わせていただいて感謝します」ということなんです。美人でしたよ、絶美人!以前にお話ししたことなのですが、高二になって文芸部の部長(といっても、実質わたし一人だけ残ったので...ポエム~夜陰編~(やけくそ)

  • [青春群像]にあんちゃん ((通夜の席でのことだ。)) (四)

    そしていま、にこやかに微笑むシゲ子が思いだされる。学校帰りにいつも立ち寄っては、祖母手作りのおやつを食した。ときに食べ過ぎてしい、夕食が進まぬこともあった。母の道子に「おやつはほどほどに」と言われているのだが、ついつい食べ過ぎてしまうほのかだった。ほのかが小学2年生のときだった。いつもの帰りなかまが風邪でお休みをしていて、ひとりで帰ることになってしまったほのかだったが、たまたまかえりが一緒になった次男とひさしぶりに道草をした。いつも横目でみるだけの公園にはいった。大通り沿いで、そこにはフェンスがはってある。あとの三方にはないものの、垣根代わりに椿が植えられている。濃い緑のなかに点在する赤い色がひときわ映える。その花で季節を知る住民たちだった。ブランコにシーソーそして鉄棒だけのある小さな公園だった。そうだっ...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(四)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ 哀しい事実(四)

    彼の給料は、手取りで17,600円である。同年代の平均は、新聞紙上によれば23,000円である。中卒の我々だ、たしかに安い。金の卵だと持てはやされてはいる。しかしそれは、安価な賃金で雇うことができるからだろう。まあたしかに、右も左も分からぬ子どもではある。社会常識など、まるで持ち合わせていない。ある意味、先行投資の面があるかもしれない。どんな先行投資かと問われると、返答のしようがないけれども。しかし彼は、社長が好きである。彼はいつもわたしに言う。高給取りだから幸せだとは限らない。毎日が充実していればそれでいい、と。やせ我慢かもしれない。しかし彼は、おのれの分を知っていると言う。彼の実家のある町にも、金持ちはいるらしい。いや、居て当たり前のことだ。そしてそこに子どもが居るとも。それも当たり前のことだろう。ど...奇天烈~蒼い殺意~哀しい事実(四)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港   (二十七)あたいも糖尿病なんだけど、

    「あたいも糖尿病なんだけど、支配人には内緒にしてるの。やまい持ちだとやとってくれないのよねえ。でもさあ、お店にはいる前にしっかりと食事をとってるのよ。それにお酒といっしょにフルーツなんかも、ね。そうすると大丈夫なのよね。あなた、あんまり食べずに飲んだでしょ。いくら彼氏といっしょだからって、えんりょしちゃだめよ」そう言い残してフロアに戻っていった。男の知りたいことを口にしていったホステスに「ありがとうございました」と、最敬礼をする男だった。そしてミドリに振り返ると、「今度はしっかり食べてからにしようね」と、病気のことは気にしていないよと、言外につたえた。横たわったままにハンカチをぎこちなく使うミドリが、野道に咲くかれんな花に見えた。麗子が人工的に育てられたバラとするならば、ミドリはまさしく野菊だった。けっし...[淫(あふれる想い)]舟のない港 (二十七)あたいも糖尿病なんだけど、

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (三十八)畑と言えば、麦も

    畑といえば、麦もうえられていました。ただ、その種類は分かりません。この記憶が事実かどうか判然としませんが、その麦のなかに黒い穂がありました。触れるとその「黒」が付いてしまうのです。のちに知ったのですが、これは黒穂病とかいう植物の病気によって発生するものらしいです。遊びまわっていたわたしへの罰だったということでしょうか。1本2本だったはずなのに、ひょっとして畑全体に?……(農家のみなさん、ごめんなさい。今さらですが、謝罪させてもらいます)。ズボンやらシャツやらに付いた状態で帰宅し、母親からこっぴどく叱られたものです。そうだ!叱られたといえば、こんな言葉を大声で叫びながら帰ったものです。近所の悪ガキとともに、畑のあぜ道を「はらへったあ、めしくわせえ!」と、連呼しつづけたものです。畑仕事の大人たちから「げんきが...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(三十八)畑と言えば、麦も

  • ドール [お取り扱い注意!](九)わかれた妻の、

    わかれた妻の、やさしい声、新婚どきの甘えた声……。。空耳かと、耳をうたがった。いつも冷たい手足。大学に通っていた頃のアルバイト。居酒屋の厨房で、ひたすら器を洗う。そこでの賄い。レシピを聞いてはノートに書きためた。「店でも持つのか?」「いえ。未来の旦那さまに美味しい料理を食べてもらいたいんです」なんてことだ!そんな料理を当たり前のように食べた。ひと言でも「おいしいよ、うまいよ」と……。「あとがつかえてますから、早くあがってくださいな」まちがいない、妻の声だ。しかしおかしい。妻にせなかを流してもらったことなど、いちどとしてない。新婚時は風呂場がせますぎて、入りたくても一緒というのは無理だった。子どもが生まれてから風呂場の大きいアパートに移ったが、そのときは子どもに妻をとられてしまった。いま思えば、風呂をともに...ドール[お取り扱い注意!](九)わかれた妻の、

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百七十六)

    問題は千勢の処遇だった。当然ながら小夜子としては、ともに田舎へひっこんでほしい。いまでは家族もどうぜんの千勢とはなれるなど、とうていのことに考えられない。そのことを伝えられたおりには、おいおいと千勢が号泣した。千勢もまた小夜子を姉とおもい、武士を甥とみていた。ときに我が子と錯覚をしたこともある千勢だった。もともとが田舎出の千勢のこと、田舎暮らしに不安を感じることはまるでない。しかし千勢には、ひとつのこころ残り、いや夢とでもいうか。無謀だということはわかっている。母親の反対があることも知っているし、なにより……。竹田が千勢を嫁の対象として、いやそうではなく、ひとりの女としてみてくれることなど天変地異がひっくり返ってもありえないことは、重重に分かっている。それでも、この地を離れたくはなかった。東京という同じ空...水たまりの中の青空~第二部~(四百七十六)

  • ポエム ~夜陰編~ (嘘を吐きました)

    うそを、つきましたうそを、つきました“なに、それって?”ごめんなさいご免なさい、です“うそ、だあ!”ほんとに、ごめんなさいほんとに、ほんとに、ごめんなさい“信じない、モン!”ほんと、なんですほんとの、ことなんです“いや、そんなのいや!”ごめんなさい、ですほんとに、ごめんなさい、です“うそ、うそ、よね?”だめなんですもう、だめなんです“うそつきいぃ!”いかなきゃいかなきゃ、いけないんです“逝っちゃ、やだあぁぁ”=背景と解説=どろどろどろ……えっと、あの方、誰でしたっけ?ほら、怪談話がお得意の方ですよ。確か、皆川じゃなくて、そうそう!稲川淳二さんだ!いえ、その方のお話ではなくて、ただ、「どろどろどろ……」の意味をお知らせしたくて、のことなんです。なんてタイトルにしたんだっけ?幽霊の話を描いたもの、覚えてみえま...ポエム~夜陰編~(嘘を吐きました)

  • [青春群像]にあんちゃん ((通夜の席でのことだ。)) (三)

    よくじつは朝から雨がしとしと降っていた。大勢の弔問客のおとずれるなか、ほのかは母親の背にぴったりとくっついて、かくれるようにすわっていた。どんなに「席にもどりなさい」と言っても聞かなかった。僧侶の読経がつづくなか、孝男かんけいの弔問客がつぎつぎに焼香をつづけていく。あいだを縫うようにして、故人の弔問客が孝道に「気を落とされないように」と声をかけていく。いよいよ出棺のときがきた。棺に花がたむれていくなか、ほのかの手に花がてわたされた。それがなにを意味するのか、ほのかには十分すぎるほど分かっている。そしてこのときが最後の別れとなることもわかっている。いまを逃せば、にどと祖母に会えぬことも。大好きな祖母を見送らなくては、そうは思う。おもいはするのだが、どうしてもほのかの足は前にすすまない。どころか、後ずさりして...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(三)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ 哀しい事実(三)

    彼は、銀行が嫌いだ。彼の勤める町工場の社長を悩ませる銀行に、良い感情を持ってはいなかった。本来ならば、腰を低くすべきは銀行なのである、と彼は言う。威圧的な銀行に対して嫌悪感を抱いている。裏を返せば、エリートに対するコンプレックスかもしれない。彼の言を紹介しよう。なるほど銀行にたいして預金を積めば、行員は腰を曲げるかもしれない。しかし少額の預金者に対して、心底からのそれをする行員がいるとは、どうしても思えないと言う。そしてまた、これが肝心なのだ。預金者は仕入れの業者であり、貸付先がお得意先になるはずだと、と言う。言われてみればなるほどとも思える。だから彼は、銀行を介するクレジットを嫌った。銀行に負い目を感じることを嫌ったのだ。しかしどうにも、胡散臭さを感じてしまう。質問をしかけると途端に不機嫌になったことを...奇天烈~蒼い殺意~哀しい事実(三)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (二十六)ダンスの途中に、

    ダンスの途中に、ミドリが男の胸のなかによろけた。異性との初デートという心理的要素にくわえ、ダンスというはじめての異性との接触が、ミドリにはげしい高揚感をあたえた。極度に心拍数が上がり酒の酔いも手伝って、ミドリはなかば意識を失った。体中が、火のように火照っていた。男は、すぐに傍らのボックスに横たわらせると、ボーイが届けてくれた冷たいおしぼりを額に乗せた。苦しそうな息づかいをしているミドリに、「大丈夫かい?苦しいの?」と、問いかけてみるが「ハー、ハー」と、荒い息づかいだけがもどってくるだけだった。支配人の手配により、ホステスたちの控え室が提供された。こまったことに、兄の道夫に連絡をとる方法がわからない。ミドリに声をかけても、返事のできる状態でもない。こうなっては酔いが醒めるのを待つしかなかった。すこしは楽にな...[淫(あふれる想い)]舟のない港(二十六)ダンスの途中に、

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (三十七)そんなある日のことです。

    そんなある日のことです。降車の段になって、定期券を忘れてきたことに気が付きました。もう、ドキドキですよ。「ていきけん、わすれました。ごめんなさい」。ひとことそう言えば、大目に見てくれると思います。でも、言えないんですね。そのまま顔パスしちゃったんです。ひょっとしたら、顔を真っ赤にしていたかもしれません。あんがい、車掌さんはお見通しだったかも?です。ところで不思議なのが、バスの顔パスは覚えているのですが、汽車はどうしたのか……。当然のことに、汽車も定期券です。どうやって降りたのでしょうか?だれか、教えて下さいな。問題は、帰りです。もう顔パスは通用しません。学校から駅まで、どのくらいの距離だったか。歩いて駅まで行ったと思います。駅まで行かなければ、家まで帰るルートが分からないのです。現代のようなスマホによる地...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(三十七)そんなある日のことです。

  • ドール [お取り扱い注意!]ドール (八)ま、自業自得よね。

    ま、自業自得よね。お兄ちゃんが言ってたよ。『もう少し、うまく立ちまわればいいものを』って。あたしに言わせれば、いちどでも許せないけどさ。でもお父さん、もてるんだね。ちょっと嬉しいかな」「そうか?やっぱり、もてた方がいいかな」「どんな不満があったの?そりゃまあ、気の強いところはあるけどさ。あたしだって、ときどき頭にくることがあるけど。でも、お母さんにしても一生懸命だったよ」「おまえは、お母さんの味方だからな。父さんだって、いろいろ頑張ってはみたんだ。それにだ、物流を馬鹿にしちゃいけない。第2の営業と言われてるんだから。まあ、しかし、懲罰的人事であることは間違いないがな」「ふっ、まけおしみを言っちゃって」娘には、ひと言もない。親のつごうで離婚をしたのだ。子どもにはなんの責任もない。これからの人生において、なに...ドール[お取り扱い注意!]ドール(八)ま、自業自得よね。

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百七十五)

    週に2度の出社もいつの間にか1度に減り、幼稚園に通い始めた武士がぜんそくという病魔に冒されたことと相まって、ついには小夜子もまた退社というふた文字があたまに浮かびはじめた。医師から「いったん実家にもどられて、武士くんを楽に」と、へき地療養をすすめられたことも、大きな因となった。東京を離れ、実家にもどる。考えはしていたが、まだまだ先の話という思いがあった。しかし毎日をつらそうに送る武士を見るにつけ、そしてまた徳子がいなくなるという現実が目の前にせまっていることから、小夜子のなかにはじめて弱気の虫がうまれた。田舎にもどってしまえば、ふたたびこの地にもどれるという保証はない。田舎での入学となれば、学力の差が如実にあらわれる。勉学をとるか、健康をとるか。しかし小夜子のなかに、迷いはなかった。「健全な肉体に、健全な...水たまりの中の青空~第二部~(四百七十五)

  • ポエム ~夜陰編~ (雲)

    ひとりぽっちのアパートの部屋。空気の入れ換えに、窓を開け放した。冷え冷えとした部屋に、雲の暖が入り込んでくる。そう思える、感じられるいまだ。連なる家々の屋根の向こうに、白い雲を背にした山々。白い帽子をかぶり、燃えさかる太陽の光を跳ね返している。雲もまた、夕日の強い光を受けて大空に泳いでいる。そう見える、感じられるいまだ。澄んだ-清みきった青い空に、ひつじ雲の大群。雲に心があるとしたら、強い絆で結ばれているのだろう。南の故郷で見た雲とは違うようで、しかし同じようで。そう分かる、感じられるいまだ。いつか見た雲、いま見る雲。同じ雲なのに、ひとつとして同じではない。信じていた━と思っていたことが、実は、思いこもうとしているに過ぎない、と知った。(背景と解説)春雲は綿の如く、夏雲は岩の如く、秋雲は砂の如く、冬雲は鉛...ポエム~夜陰編~(雲)

  • [青春群像]にあんちゃん ((通夜の席でのことだ。)) (二)

    ほのかの泣きごえが大きく家中にひびいた。ほのかはチラリと布団のなかの祖母を見るだけで、あとずさりしてしまう。道子が「あなたの大好きなおばあちゃんよ。お別れを言いましょうね。待ってるのよ、おばあちゃんは」と諭すのだが、いやいやと首をふる。道子に引きずられるようにとなりの部屋からはいってきたが、火のついた赤児のように泣きさけんでいる。「どうしたのかしら、この子は。おばあちゃんっ子だったのに」母親の道子が、あつまった親戚連の冷たいしせんをうけて、夫の孝男にこぼした。孝男は、ムッとした表情を見せつつ「ばあちゃんっ子だからこそ、ショックから立ちなおれないんだ。あす、さいごの別れをさせてやればいいじゃないか!」と、声をあらげた。不満のこえがいちぶあがりはしたが、孝道の「ま、そういうことだな。道子さん。ほのかには、あん...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(二)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ 哀しい事実(二)

    彼の娯楽は、休日ごとの喫茶店通いと毎夜のステレオ鑑賞だ。彼にしてみれば性能の良いラジオでも良かったのだが、ラジオからの押しつけの曲を聞かされることに辟易すると言う。それにも増して、独りよがりのDJの語りに反発を感じるらしい。聞きたい楽曲を聞きたいときに聞くという自由がいかに大事かと、わたしに陶々と語る。一理あると、思える。が、それでは視野が狭くなると思うのだが。それを告げれば、延々と屁理屈を並べられるのが落ちだ。だから、頷くだけにしている。言葉で肯定はしない。わたしにはわたしの理屈がある。だから、卑怯かもしれないが言葉にしない。彼のステレオは高価なものである。廉価な物もあるにはあったのだが、生涯唯一の贅沢として購入した。理由は、至ってシンプルだ。良い音で聞きたい、ということだ。もっとも、彼の耳がどれ程のも...奇天烈~蒼い殺意~哀しい事実(二)

  • ドール [お取り扱い注意!] (七)「お父さん、起きてよ。

    「お父さん、起きてよ。こたつのうたた寝は、風邪ひきのいちばんの元だよ」「ああ…なんだ、明美か。えっ?いつ来たんだ。というよりはじめてだな、アパートに来てくれたのは。どうだ、元気しているのか。仕事は、うまくいってるのか?教師だなんて、厳しいだろう、いまの学校は。お父さんたちのころの先生は、ほんとに尊敬されていたけれどもな。いまは、たじたじらしいな。ちょっと待てよ。えっと…さよ、いやだれか居なかったか?」饒舌なわたしに、目をまるくしている娘だ。以前のわたしは、たしかに寡黙な父親だった。どうしても妻の前では、口が重くなっていた。というより、わたしが話をしはじめると、すぐにかぶせられてしまう。ひがみかもしれないが、子どもたちを隔離しているような…。そういえば世のお父さんたちは、嬉々としてむすめを風呂に入れていると...ドール[お取り扱い注意!] (七)「お父さん、起きてよ。

  • 俺は、青年!(三)

    杉の大木はもう年だった。その皮は、年老いた老婆のそれのごとくに、ひからび、今にも崩れ落ちそうな……。日当たりのよい縁側に、深く背を曲げて、ひなたぼっこを楽しむ老婆。その背に漂う満足感。と共に、そこに悲しさを見る、この私。杉の大木を見上げる。私の背の何十倍もの高さ。今また、新たな感動で見上げる。「いつかきっと……」あすなろのこころをもってつぶやく。スポーツの価値は、その無償性にある。そして、芸術も無償である。シカゴシティの、シビックセンターにピカソの彫刻がある。その代償が30万$というから、驚かされる。そしてピカソの偉大さの評価は大だった。が、私の感じる偉大さは、己の邸に、その作品を持ち帰りたい!とダダをこねたというエピソードにある。決して、代償はに対する不服というのではなく、その作品のあまりのすばらしさに...俺は、青年!(三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百七十四)

    徳子と真理恵のみぞが深まり、徳子が去ることになった。というよりは、そう仕向けられたというほうが正確だ。総務課を総務部に格上げし、会計課を新設した。総務部長に真理恵がつき、徳子は総務課長のままとした。さらには会計事務所から、会計士の卵――国家試験受験前の人物――をあらたに入社させ、資格取得後には係長の職位を与えるという条件で引き抜いた。そして会計処理がまかされ、徳子の権限が大幅にしゅくしょうされた。これでは徳子の立つ瀬がない。もう用なしよ、と宣言されたにひとしい。辞表をもって社長にのりこんだ徳子だったが、五平と真理恵のあいだでは徳子の退職は既定路線となっており、形だけの慰留にとどまった。そして事務引きつぎのために、今月いっぱいでの辞職ということになった。惜しむ声があがりはしたが、積極的に引き留めようとする者...水たまりの中の青空~第二部~(四百七十四)

  • 昭和43年に書き留めた詩 (月のしずくの下)

    涙のような透きとおる月のしずくの下ひとり佇むきみよ「ぼくとワルツをおどりませんか?「おれとゴーゴーをおどろうや!「わたしと小唄をおけいこしません?(ステキなプリンスやプリンセスからの申し込みを(すべて断ってひたすらに待っているきみ(でもボクは……きみをダンスにさそうことすらできない(なぜならボクはこのとおりのビッコひき涙のように透きとおる月のしずくの下で待っていますのにどうしてあなたは誘ってくださらないの?あたくしはお待ちしてますのよいつでもあたくしはただあなたのおそばにいたいのですあなたのいのちの息吹を感じる……それだけで倖せです(だめだ、だめだ(ボクにはきみを不幸にする権利などないあたしはあなたとご一緒に不幸になりたいのですわ(きみは不幸というものが(どんなに苦しいものか知らないのだあなたとのつかのま...昭和43年に書き留めた詩(月のしずくの下)

  • 俺は、青年!(二)

    ーええ!そりゃもう。おそらく、ボーイフレンドは二、三人はいると思うんです。でも、そんなことは問題じゃない。あの子はあの子であり、俺は俺。ボーイフレンドの多いということはとりもなおさず、チャーミングということですからね。=なるほど、道理だ。うん、いいぞ!そんなおまえには、何ともいえない若者の美しさがあるよ。やっぱり、人間は恋してる時がいい。もっともっと恋をしろ!ーハイ。俺、とことんまで恋します。そして、とことん失恋します。=そうだ、その意気で頑張れ!ー先生。人間は、いや、俺は強い人間ですか?それとも弱い人間ですか?=うーん。おまえは……。俺の見たところ、残念ながら弱い人間だ。しかしな、弱いなりに強がっている。俺としては、そんなおまえに魅力を感じるな。ー俺、今まで、じゃない。高二の夏休みまで頃までは、弱い人間...俺は、青年!(二)

  • ポエム ~夜陰編~ (あの日の雨が…)

    あの日の雨が、今、生命ちの糧となる。口にしないサヨナラを、今、地獄の門で口にした。形の無い時間の世界へ旅立つ時背中の翼が呪わしい。あの日の雨が、今、哀しみの水となる。聞こえはしない夢を、今、地獄の門で聞いた。色の無い時間の世界へ旅立つ時涙の膜が呪わしい。あの日の雨が、今、希望の光となる。見えはしない愛を、今、地獄の門で見た。音の無い時間の世界へ旅立つ時足かせの鎖が呪わしい。(背景と解説)少し漢字が多くて、堅いですかね。ま、いつものことですか。最近は、漢字を使わずにひらがな表記が増えましたからね。どうして?と思わざるを得ないのですけど。この詩のキモは、難しいんです。いろいろとあり過ぎて、どう解釈すれば良いのか、ねえ。[地獄の門][時間の世界][呪わしい]それと[あの日の雨]が繰り返されています。[あの日の雨...ポエム~夜陰編~(あの日の雨が…)

  • [サイケデリック文学] 俺は、青年!

    押し入れを整理していたところ、箱が見つかりました。「何が入っている?」。ワクワクしながら開けてみると、スクラップブックやら原稿用紙類がいっぱい。「当時の自分がまた見つかった」。喜び半分、恐怖半分の思いで読みふけりました。わずか三人だけの小さなクラブでしたが、充実した一年になったものです。そんなころに囲新一というペンネームを使っていた高校時代に書き上げていたものです。当時のわたしは、どう分類していいかわからなかったようですが、エッセイですね。といってあまりに未熟ゆえに、そう分類することもためらわれるのですが。なにはさておき、原文のまま(誤字脱字だけは修正して)にしたいと思います。また句読点がむちゃくちゃで、少々どころか多々読みづらいとは思いますが、そのままにさせてもらいました。[サイケデリック]ということば...[サイケデリック文学]俺は、青年!

  • 昭和43年に書き留めた詩 (詩・二編)

    バランス「失恋しちゃった」――「そりゃおめでとう」「なぐさめてくれる?」――「キスしよっか!」相手があなたでなくて、ほんとに良かったわ。パープルレインいろが溶けあって昇華した雨のふるあさのこと冷たいかぜに吹かれて地上におちた木の葉のようにわたしの恋はやぶれてしまった水たまりに映ったわたしの影はとっても淋しいものになっちゃった昭和43年に書き留めた詩(詩・二編)

  • [青春群像]にあんちゃん ((通夜の席でのことだ。)) (一)

    通夜の席でのことだ。やすらかな表情で横たわるシゲ子の枕元で、憔悴しきった孝道がすわっている。そのよこに孝男が陣どり「西本さんだよ、福井さんだよ…」と、耳元でつげている。「うんうん」とうなずきながらも視線はシゲ子に注がれたままだ。孝男のよこには長男と次男がかしこまっている。長男がじょさいなくお辞儀をするのにたいし、次男はじっとうつむいたままでぐっと口を閉じている。反対側には縁者たちがじんどっている。80を過ぎてのことだから、大往生だろうさと、ささやきあっている。孝道もまた、そう思っている。思ってはいるが、ひとり取りのこされたという思いは消えない。そしてまたこれからのことを考えたとき、いちまつの不安を消せずにいる。「これからどうする。こっちに来るかい」、と孝男が声をかけた。あと2年もすれば80になる孝道だが、...[青春群像]にあんちゃん((通夜の席でのことだ。))(一)

  • 昭和43年に書き留めた詩 (レール)

    世の男どもが女にもとめるものはただひとつただひとつ優しさだ世の女どもが男にもとめるものはただひとつただひとつ服従だ為せば成る――為さねば成らぬそこに男がいれば男の世界そこに女かいれば女の世界誰もいなければ…それでも人の世赤さびたレール汽車が通って通って通るだから頭頂部がぎん色にひかる腹部も底部もただそこにあるだから赤さびてしまった「ゴットンゴットンゴットン」「イタイイタイイタイ」その叫びにだれも気づかない頭頂部だけが妙にぎん色にひかっているせんろの先にステーションがありその周りに家があってとなりに家があってそのとなりのとなりに家があってそして人がいる昭和43年に書き留めた詩(レール)

  • 奇天烈 ~蒼い殺意~ 悲しい事実(一)

    彼は、二階建てのアパートに住む。2階中央の部屋で、間取りは1Kである。ドアと言えるか分からぬような板戸を開けると台所となり、その奥が六畳間となっている。築30年いや40年だろうか、所どころ壁が剥げている。竹の編んだような物が露出してもいる。そこにわたしから奪い取っていったポスターを貼ってごまかしている。べつだん隠す必要を感じないけれども、やはり見た目に悪いと言っていた。それにしてもわたしのお気に入りのポスターであるプレスリーを持って行くとは。まったく油断のならぬ男だ。しかもその捨てゼリフが気に入らない。「なんでも良いが、大きさがピッタリだから」たしかに大判のポスターは、それしかない。いや待て、もう1枚ある。しかしあのポスターだけは、いかに親友といえども渡すわけにはいかない。谷ナオミの「花と蛇」だけは、だれ...奇天烈~蒼い殺意~悲しい事実(一)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (二十四)ナイトクラブで、ふたりして

    ナイトクラブで、ふたりしてグラスを傾けた。高い天井には無数の照明が設置してあり、おおきなシャンデリアが中央にひとつ、そして間隔をあけて左右にひとつずつが輝いている。それらのそばにはミラーボールがそれぞれ設置してある。ロマンスタイムという時間になると全体の明かりがおとされ、そのミラーボールが動き出す。柔らかい光でもって、全体に海の世界をつくりだす。ゆったりと光の色がかわり、波間のように上下してくる。異性との酒、ましてやダンスなどはじめてのことで、終始ほほを赤らめ、男の目を正視することができなかった。これまでミドリに対してアプローチしてくる男が、居ないわけではなかった。いやむしろ、多かった。しかし、そのことごとくを兄である道夫は許さなかった。ミドリの気持ちのなかに〝兄がいちばん〟という、強烈な印象がつよい。成...[淫(あふれる想い)]舟のない港(二十四)ナイトクラブで、ふたりして

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (三十五)初恋が甘酸っぱいものだとすれば

    初恋が甘酸っぱいものだとすれば、大人の恋はどうなんでしょう。マンゴーのように甘くあま~く、そしてやっぱりおおいに甘いものでしょうか。そんな恋を教えてくれたのは――みずから追い求めたものではなく与えられた恋のお相手は、やっぱりminakoさんでしょう。わたしよりも年上の女性でした。といっても、高校の同級生です。看護学校を卒業後に高校入学された方で、最終学年にしりあいました。きっかけがなんだったのか、いまとなっては思い出せません。在学中から交際がはじまったのか、それとも卒業後の同窓会かなにかがきっかけだったのか……。どうしても思い出せないのです。思いだすのは、……体がカッと熱くなることばかりで、外でのデートではなくわたしのアパートでのこと、そしてトラックの車内でのことなのです。ライトバンでのデートならばいざ知...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(三十五)初恋が甘酸っぱいものだとすれば

  • ドール  [お取り扱い注意!](六)「はじめての設定を

    「はじめての設定をしていただかなくてはいけません。男性・女性の選択ができます。年齢の設定ができます。赤児からお年寄りまで、ご自由な設定ができます」なるほど、家族というわけだ。「ご希望であれば、他人という設定もございます。恋人、という設定ができます」他人?これは気が付かなかった。なるほど、家人では重いと感じる人もいるといことか。なんとも、こまやかな配慮がしてあるものだ。答えに窮したわたしだったが、こころを見すかすように言った。「いまの小夜子は、年齢的には娘ということになるのでしょうか。それは、イヤです。幸いご主人さまは、お独り身でございます。恋人にしてください」「添い寝させていただきたいのですが、体温はいかほどが宜しいですか?35度から38度まで、いちぶ単位で設定できますが。それとも、お布団のなかで調整いた...ドール [お取り扱い注意!](六)「はじめての設定を

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百七十三)

    *三部としていましたが、二部に訂正します。所帯が膨れあがるにつれ、おれはおれ、あいつはあいつ、そんな風潮がでていた。武蔵の○後、組織経営という名のもとに、社員間の団結心がうすれていた。これこそが、小夜子の感じていた違和感だった。家族経営にこだわる小夜子の、強いねがいだった。皮肉なことに、小さな部品にすぎないネジが巻き起こしたことが、真理恵をして――じっさいは佐多だったとしても――為すことになった。そしていっきに真理恵にたいする信頼感が醸成され、徳子の存在感がうすれた。竹田が言った。「忘れてたよ、社長のことばを」なにごとかと竹田に視線があつまり、つぎのことばを待った。「情報はいのちだ。きょうの飯が、あすにはステーキに変わる」「ものごとは一面だけで決めつけるな。多面的にかんがえろ」服部がつづいた。「人は一面だ...水たまりの中の青空~第二部~(四百七十三)

  • ポエム ~夜陰編~ (Re.手紙:忘れられない!)

    小さな石を池に投げ、大きな波紋が広がった。良いにつけ悪いにつけ、それを投げたのは、君だ!男の子が蛙に向かって石を投げた。蛙は言った。「坊ちゃん!あなたにとっては遊びでも、わたしにとっては、生き死にの問題です」偽りの優しさよりも、心から憎んで欲しい。真実の言葉が、欲しい。そう願いつつもやはり心の底で、慰めの言葉を待つ。ぼくは一人で砂浜を歩いていた。太陽はもう沈み、月の光もうっすらとしていた。冷たい風が、沖から吹いてくる。もう帰らなくちゃ……そう思いつつ、いつまでも歩き続けた。砂浜の果てに、何があるか分からない。砂浜から、、、岩だらけに。それでも歩いた、何かがありそうだ。年をとるということは、大人になるということ。現実を見るということ。汚れていくこと。そう思った。しかし自分が汚れても、あの娘は汚すまい。そう思...ポエム~夜陰編~(Re.手紙:忘れられない!)

  • [青春群像]にあんちゃん ((20年前のことだ。)) (十一)

    シゲ子が息を引き取る前夜のことだ。つきそっている孝道にたいして、シゲ子が力ない弱々しい声でかたりはじめた。「ナガオはいっけん優等生に見えますけど、こころのなかにはどす黒いおりがうず巻いているんですよ。そのことを知っていたくせに、わたしときたら見てみぬふりをしてしまって。ナガオも可哀相な子です。じつの親に捨てられたのですから。孝男にしても、しぶしぶ引き取ったわけですし…」眉間にしわを寄せて苦渋のひょうじょうをみせながら、孝道もまた力なく答えた。「といって、実母を責めるわけにもいかん。両方の親に反対されては…。いちばん悪いのは定男だ。甘やかしすぎたようだ。孫のようなものだったから……。あかりさんは、まだ十七歳の娘さんなんだ。周囲に反対されればされるほど、燃えあがったんだろう。しかし、祝福されずに生まれ落ちた赤...[青春群像]にあんちゃん((20年前のことだ。))(十一)

  • 日本と西洋の文化について考えてみました。

    日本と西洋の文化について考えてみました。某テレビ番組で、聞いたことです。立教大学教授横山太郎氏の論です。日本文化の特徴は、「余白をつくる、残しておく」ことだそうです。例としてわかりやすいのが、絵画ですね。浮世絵しかり、水墨画しかり、ですね。室町文化の能楽において生まれたということです。「能面のような無表情」ということばがあります。余白、まさにそれですね。よけいなものをそぎ落として、一挙手一投足にて、表現しようとします。感情を表現するにはは、顔の表情が一番でしょう。ドラマなどで、「画面いっぱいの顔」って、迫力ありますもんね。NHKの演出家で、和田勉さんと言う方がおられました。あの方なんか、その手法を多く取り入れられていたとか。ある人によると、和田勉さんが「画面いっぱい」の元祖だとか。観客の想像力を、最大限に...日本と西洋の文化について考えてみました。

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (三十二)

    がっくりと肩を落とすわたしを、「だいじょうぶですか?山本さん」と、あのこころ優しき看護師がむかえてくれた。なのに、なのに、ああ、またしても……。まぶしさに耐えきれずに閉じていたまなこを、さぞかし愛くるしい娘さんだろうと、ひっしの思いでうす目を開けた。しかしその目に飛び込んできたのは…いや、なにも言うまい、なにも考えまい。魔物が恐ろしい姿をしていると、だれが言った。神が気高い姿だと、だれが教えた。そうだ。戦国の世に、信長が謡いながら舞ったではないか。「人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。いちど生を得て、滅せぬ者のあるべきか」受け入れねば、うけいれねば。すべてを、あるがままに、と受け入れねば。この棟の住人たちとの付き合いも、恐ろしい男からの訳の分からぬ戯言も、そしてそして子どもたちの歓声も、すべ...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(三十二)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (二十三)男が飛び起きた。

    男が飛び起きた。いつの間にか寝入っていたようだ。「ああ、夢だったのか」。おもわず口に出た。なまめかしい夢だった。〝ドアを開けるとミドリさんが来て、びしょ濡れのままおれの胸に飛込んできた……〟「あれは、あの夜のことだ。しかし、どうしてミドリさんの顔に。そうか、立候補すると言ったからか。馬鹿な、こんな俺にそんな資格があるものか」男は、大きく伸びをするとベッドから飛び出した。気のおもい毎日がつづいた。辞表をだす勇気ももてず、悶々とした日々が繰りかえされた。相変わらず部長の嫌みなことばや、かつての同僚からの憐憫を受けていた。そんな煩わしい日々のある退社時に、雨宿りをしているミドリに出会った。あのときの事を思い出し、また平井道夫への傘のお礼もあって、「やあ!」と、声をかけた。肩を落とし暗く打ちしおれていた瞳が、男の...[淫(あふれる想い)]舟のない港(二十三)男が飛び起きた。

  • ((どうなんでしょうかねえ))

    どうなんでしょうかねえ。あれほどに、「夢で逢いましょう」と呼びかけていたのに。もう何年になるのか?[金魚の恋]という自伝小説(書き切れないこころのひだというものがありそうなんですがね)を書き上げてからというもの――。いや違うな。構想中からだから、1年ぐらいか?「まだそんなもの?」という感覚だけれども。その間、もう毎晩毎晩、いや日中ですら、お昼寝前にも「夢で逢いましょう」と願い続けていたというのに、まるで無視されていた。父親、兄貴、親友、先に逝ってしまった者たちは、願えば逢いに来てくれたというのに。かっての同僚たちやら上司との仕事を復活させたり、望まぬ黒歴史というべき過去の失敗した事業に悪戦苦闘してきた時期が現れて、苦しめてきたというのに。子どもたちにしても、存命中の友人にしても、望めば逢いに来てくれるとい...((どうなんでしょうかねえ))

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (三十四)さあ次なる場所に移動です。

    次なる場所に移動です。小学6年生の夏休み前までかよった、福岡県中間市の中間小学校に行きましょう。1級河川の遠賀川の堤防下に建てられている学校でした。ですがあまり記憶にありません、学校内は。6年生ですからねえ、覚えていてもおかしくはないのに。学校外でのことばかり思い出すんです。倉田くん、佐々木くん、ぼくのこと、覚えていてくれるかなあ。たがいの家が近かったこともあり、放課後によく遊びました。家のわきに国道と並行して線路があったのですが、その地がさっぱり分かりません。その線路わきに小山というか小高い丘というか、頂には神社があったと記憶しているのに、それらしき場所がさっぱりです。中間小学校にかよっていたということは、この近辺だということなんですがねえ。小川が流れていて、すこし離れたところにちいさな池があり、そうだ...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(三十四)さあ次なる場所に移動です。

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