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敏洋 ’s 昭和の恋物語り
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[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…
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281回 / 365日(平均5.4回/週)

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敏ちゃんさんの新着記事

1件〜30件

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百八)

    小夜子の不安は、杞憂に終わった。乗り込んだハイヤーは、縦横に等間隔に整備された銀座の街並みに沿って走った。礼儀正しい運転手で、田舎娘に過ぎない小夜子にさえ、丁寧な言葉遣いと仕種で以て接した。小夜子の知る東京人は、何かと言えば「田舎娘が」「小娘の分際で」等々、ぞんざいな口のききようで小馬鹿にした言葉を投げつけてくる。当初こそ言い返すこともあった小夜子だが、なんの後ろ盾もない状態では己の分を思い知らされるだけだった。あれ以来アナスターシアからの連絡はなく、いや連絡の術を互いに知らないのだと知るに至っては、あの夜のことは夢だったのではなかったのかと思えてしまう。確かにホテルに宿泊したという事実だけが、かろうじて小夜子に現実感を与えた。築地場外市場近くにある鮨店の暖簾をくぐると、奥からダミ声が聞こえてきた。「なんでい、...水たまりの中の青空~第二部~(百八)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百七)

    “仕事?そう言えば、何をしたいんだろう?アーシアと一緒に世界を旅するつもりなの、あたしは?だけどそれじゃあたしって、犬のイワンの代わりじゃない!そんなの、だめよ”“そうよ。あたしは、アーシアの妹になるの。だから、あんな田舎に居ちゃだめなの。アーシアの妹にふさわしい、新しい女性にならなくちゃ”英会話の勉強ということが、単なるの口実のように思えてきた。田舎から抜け出すための口実のように、思えてきた。そしてついには恐ろしい思い-疑念が浮かんできた。“アーシアの妹?本気でアーシアはわたしのことを?”。“遠い異国におけるお遊びだったとしたら……”。“そんなことない!あのときのアーシアは本気だったわ”。強い気持ちを持つのよと言い聞かせてはみるものの、いまの己を考えると情けなさが全身を駆け巡ってしまう。「悪かった、悪かった。...水たまりの中の青空~第二部~(百七)

  • 水たまりの中の青空 ~第一部~ (百六)

    小夜子の武蔵に対する第一印象は最悪だった。値踏みをするように小夜子を見つめる武蔵の目に、何か卑野なものを感じた。細面で端正な顔付きをしているが、人を小馬鹿にするような目つきが嫌悪感を抱かせた。「小夜子ちゃん、かあ。歳は、幾つかな?英会話の勉強をしてるんだって?どう、少しは話せるようになったの?」矢継ぎ早の質問に対し、小夜子は愛想笑いをかかすことなく答えた。以前の小夜子には考えられないことだが、茂作からの仕送りなど考えられぬ現状では、とにかく生活費と英会話学校の学費を己の力で稼がねばならない。突っ慳貪な態度を取っていては、チップはおろか、即解雇になりかねない。東京に行きさえすればなんとかなるわと軽く考えていた己が、いまは恥じられてならない。「年齢は、十八です。会話が通じるかどうかは、アメリカ人との会話がないので、...水たまりの中の青空~第一部~(百六)

  • 水たまりの中の青空 ~第一部~ (百五)

    「ああ、いいとも。但し、不足分は梅子の奢りにしてくれよ」。武蔵は無造作に懐から札入れを取り出すと、そのまま梅子に渡した。分厚い札入れを手にした梅子は、「ああ、いいともさ。月末にでも、集金に行くから。で、幾ら用意してきた?」と、中を確認した。「ほお、社長!豪気だねえ、こりゃ。たっぷり入ってるじゃないか。みんな、今夜は騒げるよ!」武蔵と梅子の掛け合い漫才をニヤつきながら見ていた五平に、「やっぱり社長だよ。しみったれ五平とはまるで違うよ」と、梅子が五平をつつく。「いいんだよ、五平はそれで。しみったれだから、俺が目立つんだよ。だからモテる男になれるんだよ」。武蔵の豪放な笑い声に呼応するように、あっという間に十数人の女給たちが集まった。店内を見渡してみると、確かにまばらな客だった。中央のホールでは、数人がダンスをしている...水たまりの中の青空~第一部~(百五)

  • 水たまりの中の青空 ~第一部~ (百四)

    なぜ愛人で留まらせているのか、武蔵にも腑に落ちない。仕事は他の誰よりもできる。無茶な要求をしても、手早く処理ができる。裏切るのではといった思いは一切感じない。信頼もしている、しかし信用ができなかった。仕事を辞めさせて家庭に入らせても良かったのだ。家事一般についても、満足とまではいかなくても――いや、苦手なことならばお手伝いを雇えばいいのだ。世間一般でも、お手伝いのいる世帯は多い。職業として認知されているし、花嫁修業の一貫として考える娘たちも多かった。聡子の容姿については申し分ない。外で連れ立って歩いていると、すれ違う者たちの殆どが振り向いていく。色気があり過ぎるとしても、他の男に気を許す女ではないし、そうさせない自信が武蔵にはある。ではなぜ?それを考えることのなかった武蔵だった。口述筆記をさせていた文書を途中で...水たまりの中の青空~第一部~(百四)

  • よもやま話に、花! (令和3年の元旦話)

    先ずは、前年の大晦日の話からしましょうか。昼過ぎからチラホラとやってきた雪でしたが、PM1:30頃か、スーパー銭湯からの帰りでも、まだチラホラと。「根性なしめが!」と呟きつつ、車を走らせました。スタッドレスタイヤをはいていますので、余裕の運転です。夕方4時にアパートの窓から覗いてみると、本降りになっていました。やっと本気になったようです。目の前の公園がうっすらと雪景色模様へ。夕方6時前、その公園は一帯すべてが真っ白に。明日には久しぶりの積雪となりますかどうですか。それにしても何年ぶりですかね、年末年始をアパートで迎えるのは。平成30(2018)年、フェリー乗船によって九州へ。平成31(2019)年、正月5日には陸路岐阜市へ。令和2(2020)年、四国に渡り、初日の出を鑑賞です。その後ですよね、日本でのCOVID...よもやま話に、花!(令和3年の元旦話)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (百三)

    「社長。どうです?今晩あたりに。あちこち出張が多くて、銀座もごぶさたじゃないですか。うるさいんですよ、女給たちが。会社にまで電話が入る始末でして、あたしも閉口してるんです。よその店にくら替えしたのか!って、つめ寄られて。それにね、以前お話した娘にも会っていただきたいんで」五平の執拗な誘いに、あまり気乗りのしない武蔵だったが「まっ、五平の顔を立てるとするか。梅子にも暫く会っていないしな」と、腰を上げた。どうにも熱海の光子を知ってからというもの、武蔵の心持ちに大きな変化が現れてきていた。所帯ということばが武蔵の脳裏にこびりついて離れない。別段、光子と所帯を、ということを考えているわけではない。持ち込まれる見合い話が多くなってきたことも一因ではある。「社長の好みに合いますって、絶対です。保証しますよ」自信ありげに五平...水たまりの中の青空~第二部~(百三)

  • 水たまりの中の青空 (そして、今……)

    差しつ差されつ飲む、このひと時は、互いにとって至福の時間だった。時折、襖の外から「女将さん、申し訳ありません」と遠慮がちに声がかかる。しかし少しの時間を離れるだけで、すぐにまた戻ってくる。武蔵はその間、所在なく庭先に目をやっている。本館の池泉回遊式庭園戸は異なり、熱海地区では珍しい枯山水の庭園様式をとっている。大女将の決断で造り上げたということで、その真意については光子も知らないという。ただ、石や砂などを用いて水の流れを表現するのは「あたくしの人生そのものなのです」と、珍しく酔った折に繰り言が飛び出したという。「無味乾燥だったということじゃないのよ」。「光子さん、あなたなら分かってくれるわね」。正直のところは、大女将の真意は分からないという。ただ推測するに、己を偽り続けたその悔悟の念ではないのか、しかしまた十分...水たまりの中の青空(そして、今……)

  • 水たまりの中の青空 (明水館女将! 光子:二)

    「ご挨拶なさい、佳枝さん。孫娘なのですよ、光子さん」。わたくしに対する声かけです。でも気のせいでしょうか、大女将に挑まれるような視線を送られました。ご自慢の若女将候補なのでございましょうか。慈愛を感じられる穏やかな光をその目に湛えられて、挨拶される佳枝さんの所作を見つめておられます。後ろに隠れるようにお座りだった娘さんから「お初にお目にかかります、佳枝と申します。お見知りおきください」と、鈴のような声でご挨拶をいただきました。お話によりますと、女将さんの娘さんは佳枝さんを出産されてからの肥立ちが悪く、わずかひと月後にお亡くなりになったそうでございます。以後は女将さんが引き取られて、と言いますのも……。いえ、これ以上はわたくしの口からはちょっと。(若女将としてはそれを語ることは出来ないようです。まあ、客商売の基本...水たまりの中の青空(明水館女将!光子:二)

  • 水たまりの中の青空 (明水館女将! 光子:一)

    明水館の門が見えてまいりました。門と言いましても、門柱2本に切妻の屋根をかけた簡便なものでございます。こんなことを申しますと、お造りになった先々代に叱られそうでございますが。でもまあ、やはり良いものでございますね、門がありますのは。なにかこう、格式めいたものを感じずにはいられません。お客さまの中には「俗世から至極の地に入るといった観になるよ」と、仰っる方もございました。わたくしなども、お遣いから帰りました折にこの門をくぐり抜けました折りには、ぐっと身の引き締まる思いが致すものでございます。重くなった足を引きずるようにしているわたくしに、突然「若女将、お帰りなさい!」と歓声が聞こえました。頭を上げて見ますと、仲居たちが勢揃いして、わたくしを待っていてくれたのでございます。驚くどころの騒ぎではございません。到着の時...水たまりの中の青空(明水館女将!光子:一)

  • よもやま話に、花! (三代目、ローンレンジャー号のこと)

    大変なことになりました。三代目ローンレンジャー号に嫌われてしまいました。それは、5月下旬に入ったばかりの雨の日のことです。会社帰りにスーパーに立ち寄ったときのことです。買い物を済ませて駐車場に向かいました。雨の中でわたしを待っていてくれる、うすむらさき色のなんと艶っぽいことか。そしてなんと上品なことか。思わず頬ずりしたくなるような風情ですよ。「待たせたね、それじゃ行こうか」。いつものようにドアに手をかけた途端、「ピーピーピーピー」と連続して鳴り始めました。いいんです、2回ならば。それが「待ってたわ」という彼女の甘える声ですから。ですが、いつまでも「ピーピーピーピーピー」と鳴り止まぬのは、一体どうしたことでしょうか。たしかに、以前にもありました。あのときは、仕事帰りの夕方でした。そういえば小雨が降っていたような気...よもやま話に、花!(三代目、ローンレンジャー号のこと)

  • 水たまりの中の青空 (去れば、去るとき、:四)

    そして大女将との約束の一年が近づいて参りました。瑞祥苑からお暇を頂くために、どう切り出して良いものやらと考えあぐねていた時でございます。「光子さん、ちょっといらっしゃい」と、女将から呼ばれました。お客さまをお迎えする前の時間帯でございます。仲居一同、忙しく準備をしております。そんな時の声かけに、なにか粗相をしたのかと気になりました。普段の穏やかな表情ではなく、口をへの字に結ばれて口角も下がり気味の不機嫌さの漂うお顔も気になるところです。女将の部屋に入るなり、「申し訳ございません。なにか粗相をしておりましたらお詫び致します」と、畳に頭をこすりつけました。ところが、急に女将が笑い出されまして。初めてのことでございます。女将の笑い声など、ついぞ聞いたことがありません。「頭をお上げなさい。そうじゃないの」。いつもの穏や...水たまりの中の青空(去れば、去るとき、:四)

  • 水たまりの中の青空 (去れば、去るとき、:三)

    そういえば、わたくしの先々に女将がおられたように思います。たとえばわたくしがお客さまのお迎えをする時に限りまして、女将が傍に立たれたような気がします。門を入られたお客さまが飛び石伝いに玄関へとおいでになりますが、その際に何枚目の飛び石付近でお待ちすれば良いのか。晴れた日ですとその石にわたくしの影がかかってはいけませんし、雨の日ならば雨水の流れがありますし。わたくしが美しく気品ある姿になる立ち位置はどこなのか。飛び石の縁を踏んではならぬということは分かっておりますが、果たして何寸ほど離れた位置なのか、気になりだしますとどうにも。教えを乞うても、おそらくは答えてはいただけませんでしょう。「どこでもよろしいですよ、あなたの好きなところでお迎えなさい。心です、お迎えの心が大事なのですから」。そう、女将の目が答えているよ...水たまりの中の青空(去れば、去るとき、:三)

  • 水たまりの中の青空 (去れば、去るとき、:二)

    大女将からのご返事のこと、お伝えしていませんでしたね。ありがたいお言葉をいただきました。「あなたの性根が気に入っての若女将なの。決して清二の子どもを身籠もってしまったから、ということではありません。もしそうならば清二の嫁として、清二と共にたたき出しています。しっかりと修行をしてきなさい」。「明水館を出たのは、若女将修行の一環だと、皆には話してありますからね」。「本音を言うと、早く帰ってきて欲しいの。あたくしも寄る年波には勝てません。でもあなたの気が済まぬと言うのなら、1年の修行を終えて帰ったということにしましょう。いですか!戻るからには、立派な、若女将ではなく女将として戻ってらっしゃい」。更には、今お世話になっております瑞祥苑の女将さん宛にも、「うちの大事な若女将でございます。しっかりと躾をお願いいたします」と...水たまりの中の青空(去れば、去るとき、:二)

  • 水たまりの中の青空 (去れば、去るとき、:一)

    うまくまとめていただけて、ありがとう存じます。ただ一点、わたくしに付け加えさせていただき存じます。他でもございません、里江さんのことでございます。あの方にだけは、わたくしが明水館の若女将であることをお話ししました。いえいえ、三水閣でではございません。如何に無鉄砲なわたくしでも、あのようなところでは詳しい素性は明かしませんです。里江さんとの秘密の連絡手段を整えた後に、わたくし逃げ出しました。といいますのも、その後のことを知りたかったのでございます。あくまでも追いかけてくるのか、それとも諦めてくれるのか、それによりまして対策といいますか対抗手段をも考えねばなりませんので。ええええ、もう戦闘態勢に入っております。例のK大先生のご紹介を受けました。さすがに垢を落としてからでなければ、明水館に戻ることは出来ません。無論、...水たまりの中の青空(去れば、去るとき、:一)

  • 水たまりの中の青空 (光子の言い分:四)

    仲居たちの間では評判が悪く、三水閣の女将もまた苦々しく思っている。しかしこの旅館の主には、金を稼ぐ雌鶏が大事だ。傍若無人に振る舞う光子に対し、大物然とした度量の大きさを示したがる客が少なからずいた。地位の高い層が多く、そんな中で一人、光子の振る舞いに興味を覚えた人物がいた。風変わりな女たちを指名してくる、ある大物政治家だった。三十路を過ぎた里江が、仲居頭として腕を振るっていられるのも、このKという政治家に可愛がられたからだった。「フェミニストとして世に知られた、えら~い政治家さんなんですよ」と、里江に教えられた。「女性を大事にしない国家は、必ず衰退していく」。「考えてもみなさい。世の男どもにはすべからく、おっ母さんがいる」。「みな、おっ母さんのお腹を痛めてこの世に出てきたんだ」。「十月十日という長い月日で育んで...水たまりの中の青空(光子の言い分:四)

  • ポエム・ポエム・ポエム =番外編= ~佳き女よ~ (よきひとよ)

    佳き女よ雨の降る日に花を愛でる女よ佳き女よ雪の積る日に花を労わる女よ佳き女よ恋獄の炎に焼かれる吾を抱かん佳き女よその赤き唇もて吾を誘わん佳き女よその乳房もて吾を惑わさん佳き女よかぐわしき香にて吾を狂わさん佳き女よいつの日も吾と共に戯れん佳き女よ命果つるまで吾と共に歩まん佳き女よいつまでも吾を愛でん(背景と解説)この作品、セクハラ、になるでしょうか。女性蔑視、と感じられるでしょうか。基本的に、女性崇拝者だと自認するわたしなんですが。以前に所属していた同人会において、発表した作品のすべて(といっても良いと思いますが)で、その女性蔑視的傾向を感じると講評されました。どの部分ですか?と反論しても良かったのですが、やめました。おそらくは不毛の議論に入ってしまう気がしましたもので。感性というものは個人個人で違うものであり、...ポエム・ポエム・ポエム=番外編=~佳き女よ~(よきひとよ)

  • 水たまりの中の青空 (光子の言い分:三)

    ではそこでのわたくし、「人のこころを失ってしまったわたくしでございます。まさに、武蔵さまが仰った地獄を見ました」と申し上げた、わたくしのことでございます。好いた殿方に裏切られた、それだけでも女にとっては十分に地獄ではございます。ですが、まだ入り口に立っただけのことでございました。先ほど申し上げましたが、料理旅館という体をとってはおりますが、その実態は売春宿に他なりません。まあ、高級という冠がつくやもしれませんが。さかのぼりますれば、江戸の世において旅籠には飯盛り女という者がおりましたこと、殆どの方はお聞き及びと存じます。その通りでございます。ただ、一応、仲居の方にも選択権があるとか。どうしても気に入らぬ客ならば断っても良いとのこと。但しその場合には、そのお客さまの一晩のお遊び代を負担せねばならぬ決まりだそうで。...水たまりの中の青空(光子の言い分:三)

  • 水たまりの中の青空 (光子の言い分:二)

    それでは三郎さんとの逃避行生活をお話しいたしましょうか。汽車内でのことは、ほとんどが眠りについておりましたのでさほどに申し上げることはございません。ああそうでございますね、三郎さんがどこの駅でしたでしょうか、お弁当を買い求めてくださいました。冷めた幕の内弁当でございますが、旅館での賄いのようにはいきませんですが、結構美味しく食べられましたわ。色々と面白いお話を交えながらの食事でございまして、久しぶりに心の底から楽しめたお食事でございました。その後眠くなったと、わたくしの膝を枕にしようと奮闘される三郎さんでしたが、汽車の席は座るものでございます。諦められました。ですが、清二の折とは違い、わたくしの気持ちの中には甘えさせてあげたいとという思いが溢れておりました。汽車の中でのこと、他にでございますか。取り立ててござい...水たまりの中の青空(光子の言い分:二)

  • 水たまりの中の青空 (光子の言い分:一)

    あらあら、まあ。ずいぶんな言われようですこと。でもまあ、それは、女の勲章とでも思うことにいたしましょうか。けれども昔々の大昔ですのに、そんなにお気になりますの?ならば、わたくしのことですから、わたくし自身がおしゃべりしてもよろしいでしょうに。確かに、わたくしという、光子という女を創り上げてくださいましたお方のことばでしたら、確かなことで間違いはないと思います。でもでも、やはり殿方でいらっしゃいますから、女の細かなこと――こころのひだといったものはお分かりにならないでしょうから。「嘘は吐かないように」ですか?それはもちろんですわ。「自分をかばうな」ですか?そんなにお疑いなら、もしも嘘を言ったり自分に都合の良いことだけしか言わなかった折には、その旨仰ってくださいましな。それでは、わたくしからお話を。大阪と言いまして...水たまりの中の青空(光子の言い分:一)

  • よもやま話に、花! (自慢話は……)

    すこし時期が戻るのですが。11月のいつだったですかね?ちょっと覚えていませんが。以前にお話ししたと思うのですが、騒音問題のことです。何年前に発生しましたかね、3.4年かな?もっとになるかな。いやあ、非道かったですねえ、ほんとに。10m、いやもうちょっと離れているかな。こちら側まで聞こえるほどの音だったらしいです。「らしいです」というのは、わたしの留守時のことなんで。「あれじゃあ、驚くは」と、聞かされました。いつもは夜間なのですが、ある日、昼日中にあったらしいんです。とにかくですね、なんどか警察を呼びましてね、わたしも立ち会うのですが、相手がドアを開けない限り警察官といえども、勝手に踏み込むわけにはいかないみたいで。それにしても、もうちょっと大きくドアを叩かないと、相手には聞こえない筈なんですがね。まあ夜間だとい...よもやま話に、花!(自慢話は……)

  • ポエム・ポエム・ポエム =番外編= ~なんで???~

    わーい、自由だーい!どんなもんだい!たっぷりと、時間があるぞお!どんなもんだい!お金だって、ほらっ、この通り!夏休み中、しっかりと、バイトしたもんね!だれかあ、アソボウよお!東京に、行った新幹線で、行った修学旅行以来だだーれも、知らないだーれも、話しかけないだーれも、見向きもしない足が、すくんじゃった体が、金縛り状態だ頭が、ビビッてた檻の中から、周りを見回してた田舎もんが!そんな声が聞こえてきた誰も口を開いていない、声で聞いたんじゃないよーだ。お前だって、あんただって、田舎もんだったろうがあ!って、言い返してやった。けど、なーんもない。つまんねえの!(背景と解説)「つまんねえの!」このひと言に尽きます。そうそう、気がつかれましたか?句点(。)のない箇所があるでしょ?あれ、忘れたんじゃないですよ。読点(、)だけ打...ポエム・ポエム・ポエム=番外編=~なんで???~

  • 水たまりの中の青空 (光子の駆け落ち:三)

    その日の昼過ぎ、あの三郎が顔を腫れ上がらせて、明水館に転がり込んできた。背広の袖口が破れ、ズボンには泥がこびりついている。泥の乾き具合から見て、まだすこしの時間しか経っていないことが分かる。騒然とした中、光子の指示の元に昨夜三郎が泊まった部屋に運び込まれた。すぐに医者を、と光子の指示かあるものと思っていたが、聞こえたのは驚くものだった。場に居合わせた二人の仲居に対して「他には漏らさぬように」と、厳命してきたのだ。「お客さまのたっての希望です」ということばも付け加えられた。一時間ほど後に、上気した表情の光子が番頭に対して「近江さまをお医者さまに診てもらうことになりましたから」と言い残して、三郎と共に出かけていった。「行ってらっしゃいませ」と声をかけつつも、何かしら違和感のようなものを感じた。旅館に転がり込んできた...水たまりの中の青空(光子の駆け落ち:三)

  • 水たまりの中の青空 (光子の駆け落ち:二)

    日一日と、光子への周りの視線が変わってきた。子を失った母親という憐憫の視線が次第に、子を産まぬ女という蔑視さえ感じるようになった。そもそもが清子を産んだ後に、二子、三子を産もうとする気配のないことに疑念が持たれていた。そして清子の死という事態を迎えて、導火線に火が付いた。光子の年齢からしてためらう必要など何もないはずなのだから、もうそろそろおめでたの話が出ても……と、口の端にのりはじめた。折に触れてかばってくれた珠恵からも、言葉には出さないが「もうそろそろ」という声が聞こえてくる気がしている光子だった。合原家という家系を考えたとき、光子は言わずもがなで清二もまた妾の息子ということで他所者として扱われている。二人の間にまた娘が産まれたとして、女将を継ぐだろう事は想像に難くない。しかしそれが果たしてその娘に良いこと...水たまりの中の青空(光子の駆け落ち:二)

  • 水たまりの中の青空 (光子の駆け落ち:一)

    清子の死から一年ほどが経ち、明水館を覆っていたどんよりとした黒雲が取れかかった頃、関西から客が来た。ビジネス関係の客は来ても、観光で訪れる人はいない。宿帳に、京都市近江三郎と書かれた折には、皆が皆、おや?と思った。案内をする仲居には、ビジネス目的とも思えず無論観光目的とも思えない。不思議な感覚に囚われながら部屋に案内した。「素泊まりで結構ですから。部屋も庭に面しているとか海の眺望が良いとか、そんな贅沢は言いません」。安い部屋で良いからと力説したが、ならば明水館ではなくもっと格下の旅館でいいのではないか、そんなことも仲居たちの間で交わされることばだった。挨拶に来た光子に対し「あなたが若女将ですか。お噂は伺っております。申し遅れました。ぼくは芦田権左衛門の親戚筋の者です。母方の繋がりなので、おじさん、いえ大おじの権...水たまりの中の青空(光子の駆け落ち:一)

  • よもやま話に、花! (よもやよもやの、長編に?)

    [水たまりの中の青空]が第2部に入るということで、すこし冷却期間を持とうかなと考えました。旅館の女将である光子に関して、わたし自身が惚れ込んでしまったわけです。これは思いもかけぬ事でした。小夜子という女性に惚れ込んでいながら、他の女性に心が動かされるとは、実生活の自分を見てしまったようで釈然としません。本編の中で、「人のこころを失ってしまったわたくしでございます。まさに、武蔵さまが仰った地獄を見ました」なんて言うものですから、一体全体どんな地獄を見たというのか、と気になり始めました。原案的なものをと思っていましたので、本音を言えば、2回程度長くても3回ぐらいのものにするつもりでした。先ずは、従業員やら同業の他旅館関係者に、思いっきり光子の悪口を言わせる。その上で、「それの何が悪いの!」とばかりに、光子の言い分を...よもやま話に、花!(よもやよもやの、長編に?)

  • 水たまりの中の青空 (周囲の目:三)

    光子が若女将修行に打ち込めば打ち込むほどに、従業員たちの反発はひどくなった。明水館の仲居ともなると、一応は名の通った商家の娘やら出自のはっきりとした娘たちが多く、世間的にも庶民という立場ながらも格の高さを誇っていた。それがどこの馬の骨とも分からぬどこぞの村からやってきた小娘に、どう紛れ込んだのかと訝る仲居たちを尻目に、あれよあれよと若女将の地位にまで上り詰めたのだ。突然に現れた跡取り息子の嫁という立場ではあるものの、清二が惚れ込んだ娘だとされているけれども「案外のところ、光子がたぶらかしたんじゃないの」という陰口が囁かれているのだ。ここぞとばかりに反発がひどくなった。そんな中、ただひとり光子をかばう者がいた。「大女将、どうされたんですか。若女将を追い出す良い機会ですよ。なんでしたらわたしが音頭を取って、仲居たち...水たまりの中の青空(周囲の目:三)

  • ポエム・ポエム・ポエム =番外編= ~なんで??~

    とうとう来てくれなかった……しょんぼり帰るぼくにいたずら?…神様の……セント=バレンタイン=デー零時を過ぎて帰ると、ドアの前にリボン付のプレゼント二人して食べるつもりだったのだろうかチョコと、フライドチキンふたつ置手紙のないプレゼント“Buwa-kuA!”もうひとりのoreが言う。約束、してたわけじゃないもんナ。oreの勝手な思い込み。oreの超能力の、効果なし!フォースが不足してんのかな?今度逢ったら、ツン!って、してやろう。今度逢ったら、ソッコー、キスしてやろう。今度逢ったら、セカチュー、してやろう。今度逢ったら……今度逢ったら…………(背景と解説)いやあ、女々しさ満載ですわ。弱さを前面に出してますなあ。「今度逢ったら、」って、何回繰り返しても繰り返したりない。ねえ、逢えなかったんですよ、というより約束がな...ポエム・ポエム・ポエム=番外編=~なんで??~

  • 水たまりの中の青空 (周囲の目:二)

    無事出産を終えて明水館に戻ったとき、大女将の珠恵を始め、番頭に板長そして仲居頭の豊子たちの出迎えを受けた。然も、玄関口でだ。初めてのことだった、これほどの人に笑顔で出迎えられるのは。思わず後ずさりをした。娘だけを取り上げられて、光子はそのまま叩き出されるのではないか、そんな思いにとらえられていた。「お帰りなさい、若女将!」。「お帰り。さあさあ早く入りなさい、奥の部屋で休むと良いわ」。珠恵の優しい言葉は心底のもので、温かい慈愛が感じられるものだった。そしてそのことばで、やっと光子はこの合原家の一員となったことを実感した。それは突然のことだった。珠恵がお使いから帰ったところを見た清子が「おばあちゃま、おかえりなさい!」と、通りの向かい側に飛び出した。急ブレーキ音とともに、ドン!という音が響いた。珠恵がオート三輪の接...水たまりの中の青空(周囲の目:二)

  • 水たまりの中の青空 (周囲の目:一)

    「光子さん、あなた、何様のつもり?若女将と周りから言われて、いい気になってませんか!いいこと、若女将というのは、雑用係みたいなものですよ。仲居たちの手が足りないところを補っても、頼まれてからでは遅いんです。気配りが足りませんよ、あなたは。豊子に聞きましたよ、『そんなことをするために、若女将になったんじゃありません』って、ご不浄の掃除を嫌ったんですって?」。「ご不浄の掃除はね、最も大切な仕事の一つです。ここで気分良く滞在して頂けるかどうか、それが決まると言っても過言ではありませんからね」と、きつい言葉で詰られた。「女将さん、違います。後でやりますって言ったんです。清二さんがお腹が痛いと言いますので、お薬が切れていましたし、ちよっと買い物に行くつもりで、、、」「口答えはやめて!清二に聞いたら、それほどでもなかったと...水たまりの中の青空(周囲の目:一)

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