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コトバの試し斬り=(どうぶつ番外物語) https://blog.goo.ne.jp/s1504

斬新な切り口で展開する短編小説、ポエム、コラム等を中心にブログ開設17年目に入りました。

自然と共生しながら、生きてきました。 ここでは4,000字(原稿用紙10枚)程度の短い作品を発表します。 <超短編シリーズ>として、発表中のものもありますが、むかし詩を書いていたこともあり、コトバに対する思い入れは人一倍つよいとおもいます。

正宗の妖刀
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2010/09/26

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  • 新作KAIDAN その2 『自然薯の涙』

    修二さんは秋になると零余子〈むかご〉の収穫をしながら自然薯の蔓の位置に目印の竹竿を刺ししっかりと記憶しておく。晩秋から冬にかけて本命の自然薯を掘るために欠かせない作業である。修二さんの家の裏山は大昔、合戦に敗れた坂東武者が逃げ込んだ場所と言い伝えられていて、武具が持ち去られた後には亡骸が放置されていたとも言われている。時代を経て亡骸は海に近い湿地に集められ、その場所はしばらく白骨が砕けて夜目にも白く光って見えたという。修二さんはこれまでに草の下から何かが出てきたといったことがなかったもので、気にすることもなく自然薯掘りに熱中した。この日も印をつけておいた蔓を探し出し、長柄のスチール製自然薯掘り器で周囲を掘りはじめた。やがて蔓の先に細い自然薯が現れた。修二さんは鎌で穴の一方を切り崩し、自然薯の全容が見えるよ...新作KAIDANその2『自然薯の涙』

  • 新作KAIDAN① 『忘れ物』

    喜一さんはヘラブナ釣りの名人である。ふだんは僅かな田畑を耕して生計を立てているが、冬場は釣ったフナの甘露煮を作って貝の佃煮とともに引き売りしていた。喜一さんが活動する場所は茨城県の牛久沼、流れ込む大きな川がないことから湖ではなく沼と呼ばれている。フナは溜まり水のような環境のほうが生息しやすい。県外からもヘラブナ釣りに訪れる客がいるぐらい有名な場所であった。最近では釣った魚をリリースして帰るのがマナーになっているが、喜一さんが活動した昭和の中頃には捕った魚は当然食用にされていた。ついでながら入漁料などを払う習慣もなかった。制度はあったのかもしれないが地元の人間は払わなくてよかったのだろう。ともあれ喜一さんは週に何回かはヘラブナ釣りに出掛けた。午前中から夕方まで田舟を操ってヘラブナとの駆け引きを楽しんだ。春と...新作KAIDAN①『忘れ物』

  • 紙上大喜利55 『じじいの時事ばなし』

    〇「おい、シーチキンて海の鶏肉という意味にとれるがおかしくないか」「マグロなど魚肉のオイル漬けなのにね」〇「知ってるな、それなら海ブドウはどうだ」「プチプチした食感の海藻ですよね、グリーン・キャビアという別名でも呼ばれています」〇「知っているのか、じゃあ何食わぬ顔ってどんな顔だ」「来た来た、大谷翔平に寄り添ってたあの人のことでしょう?」〇「信頼するのもいい加減にしないとな」「その点ご隠居は心配いりませんね」〇「トンコロとかトンずらとか、豚を馬鹿にしてないか」「知りませんよ、それよりトン死〈頓死〉しないように気を付けてくださいね」紙上大喜利55『じじいの時事ばなし』

  • ありえへん話1 『国破れて山河ナシ』

    〇歯医者で治療が終わったのでカッターやドリルの音がすごくて道路工事みたいだったと言ったらフフフと笑った。〇大谷翔平の主張が捜査当局によって裏付けられたとか。〈水原一平氏が罪を認め起訴される見通し・よかったけど一抹の疑念〉〇二階さんの後釜候補は世耕さんの鞍替え出馬のうわさに戦々恐々らしい。〈血で血を洗う抗争とか〉〇岸田総理が国賓待遇で訪米だと。〈そりゃ大変だ。マイクロソフトなど巨大企業の日本招へいは実質占領だ〉〇自衛隊と米軍の連携強化もヤバいぞ。〈指揮系統を握られ先兵として出撃だ〉〇自民党のゴタゴタ騒ぎの隙にゴールド球をにぎられたか。〈国が敗れても権力維持にいそしむ人〉〇憲法審査会が開催されたらしい。〈誰の思惑か岸田総理のうちに改正=改悪?を目論む〉ありえへん話1『国破れて山河ナシ』

  • ポエム378 『花筏』

    堤防沿いの桜並木が満開になったばかりの今日冷たい風雨にさらされたたくさんの花びらが散歩道を覆い水面に飛んだ花が川岸に吹き寄せられる花筏になって川岸にまつわりつく乗ってみたいなあ花筏幾重にも重なり分厚い布団のよう花筏の上で眠ったらいい夢見るだろうなポエム378『花筏』

  • どうぶつ番外物語トピックス1 『アライグマ』

    先にポムに登場したアライグマの画像です。スマホの写真ではわかりづらいでしょうが、とりあえず見てください。捕まって観念したのかおとなしくしていました。そろそろ畑に出たくなってきました。時期遅れのフキノトウの画像を載せておきます。どうぶつ番外物語トピックス1『アライグマ』

  • 紙上大喜利54 『じじいの時事ばなし』

    〇「とうとう出たな」「大谷翔平のホームラン第1号ですね」〇「高めが打てたから今度は膝つきスウィングだな」「昨年の活躍を思い出しますね」〇「世耕さんにも処分が出たな」「離党勧告でしょう?自民党を追い出されたら困るでしょうね」〇「萩生田殿下と松野アルマジロは御咎めなしか」「組織がしっかりしているので切るに切れないんでしょう」〇「岸田総理も処分対象のはずだがほっかむりか」「職にとどまって改革するという決まり文句で逃げましたが国民は納得していませんよ」紙上大喜利54『じじいの時事ばなし』

  • ポエム377 『アライグマ御用!』

    仕掛けた罠にアライグマがかかった覗きに行くと織の奥で蹲っている夜行性だから昨夜のうちの出来事だろう観念したのか暴れることもないおいラスカルこっちを見ろよ案外可愛い顔をしているじゃないかお前がやった所業は人間の仕業なみだゴミを収納する戸棚の戸を引き開け袋を外へ出してひっかき食い破る最初は悪意のある人間がやったと疑った市役所の開庁を待って電話をした環境保全課に回されて10時には係が来た書類を何枚も書かされ張本人は業者の手にそうかお前は特定外来生物か在来種じゃないから立場悪いなハクビシンや台湾リスと同じ扱いだ確認書を渡されてお前とはバイバイだラスカルみたいな顔で訴えたってどうにもならんわしゃ知らんそれが法治国家の定めだ許せよ人間だって入管法で隔離されるんだ日本にやってきたのが運の尽きだ・・ポエム377『アライグマ御用!』

  • 俳句川柳5 『センバツ春は健大高崎』

    〇元気くん〈健大高崎のピッチャー〉が今朝丸〈報徳学園ピッチャー〉破って初優勝〇健大高崎ツワモノの名が並びおり〈石垣元気のほか佐藤龍月、箱山遥人など〉〇佐藤龍月上州気質の不敵な笑み〈決勝戦でリリーフに回った〉〇国定の忠治魂直球ズバ〈決め球で見逃し三振〉〇優勝校と準優勝校は紙一重〈報徳学園も強かった〉俳句川柳5『センバツ春は健大高崎』

  • ポエム376 『幽霊草』

    母は鬼無里から逃げ帰るとき幾つか渡った川の土手で幽霊草を見た旦那様に離縁されたとも知らず盆休みを口実に生家へ戻された父には後添いがいて手紙を見ると烈火のごとく怒りだしたおまえ誰と乳繰り合ったんだ旦那には子種がないはずだと書いてある母は身ごもった腹を抱え善光寺裏の口入れ屋に泣きついた後継者を欲しがる銀座の国旗屋に雇われ僕が生まれて老夫婦に可愛がられた母さんその後どうしていますか養子になった僕と以後一切の縁を絶たれた母いつか探し出して銀座で余生を送ってもらいます満月に照らされて揺れていた幽霊草の話も恐ろしかった気持ちとともにもう一度僕に聞かせてください*幽霊草という学名はありませんポエム376『幽霊草』

  • 俳句川柳4 『センバツ高校野球ほか』

    〇報徳〈学園〉と大阪桐蔭死闘終わる〈4対1で報徳の勝ち〉〇報徳の今朝丸〈ピッチャー〉午後の試合も丸〈正確なコントロール〉〇トケマッチ時計〈ロレックス〉預かり溶けマッチ〈消えちまった代表らを国際手配〉〇東京はあと一輪で二日待ち〈標本木に4輪のままで開花宣言なし〉〇宝ジェンヌの後輩いじめで火傷する〈阪急宝塚側が被害者へのいじめ認め謝罪〉俳句川柳4『センバツ高校野球ほか』

  • ポエム375 『獺祭』

    リビングルームのsファーの陰から『獺祭』の2お22年物が出てきたすわッ、プレミアム価格はいくらぐらい?調べてみたら大したことはない我が家ののん兵衛がいつか飲もうと大事にしすぎて家族が偶然見つけてしまったようだ我が家に『獺祭」ねえ似合わない似合わないそう思いつつまんざらでもない気持ち日本酒は若いうちに消費するもの洋酒のように古さが価値を上げるものではないスコッチでいえばシーバースリーガル12年物これなら秘蔵の価値もあるともあれそうした趣向は我が家にはないお祝いの時に多少グレードの高いサジェをグラスに分けてまずk時パイ獺祭の発見などまれなハプニングなのだポエム375『獺祭』

  • 紙上大喜利53 『じじいの時事ばなし』

    〇「おい、尊富士が優勝したぞ」「新入幕力士が優勝するのは110年ぶりの快挙だそうですね」〇「前日の相撲で足を怪我してたのに気力で勝ち取った優勝だ」「見上げたものです、尊富士もご隠居も」〇「大の里も石川県を代表して健闘したな」「ご隠居が10日目に予想した尊富士と大の里の直接対決が事実上の優勝戦でした」〇「錦木も最後2連勝して3勝12敗だった」「そうそう錦木は足とか腰とかどこかケガしていませんか」〇「大関陣のもろさも目立ったな」「霧島が崩れて貴景勝もバタバタ琴ノ若も伸び悩み強さを見せたのは豊昇龍だけでした」紙上大喜利53『じじいの時事ばなし』

  • 俳句川柳3 『ショック』

    〇大谷の飛球ショックで塀越せず〈水原イッペイ違法賭博・解雇〉〇世耕さんついに証人喚問か〈政倫審では安部派5人衆は誰も責任をとらず〉〇尊富士上位者〈大の里・琴ノ若・若元春〉破って2差を維持〈きょう勝てば新入幕優勝〉〇ロレックス預かりトンズラあれッ?クス〈客の気持ち〉〇口封じ圧政強める習・プーチン〈権力維持のため悪法連発〉俳句川柳3『ショック』

  • ポエム374 『球春』

    投げた打った一二塁間を抜けそうな球に食らいつく二塁手が膝まづいて送球間一髪アウトセンバツ高校野球が始まった北国からの代表南国からの球児みなキビキビと溌溂と声援を背に白球を追ういいな球春古豪も初出場校も奢〈おご〉らず竦〈すく〉まず練習で鍛えた通りの実力を発揮する優勝校を予想するのはまだ早い東北・関東・近畿・九州それぞれのブロックから勝ち上がり互いに星の潰しあいだテレビを見ながら畑に目をやると呆けたフキノトウが春はどこだとうろたえているスイセンが集団で春を謳歌するこちらも球春にまけず球〈根〉春だバスを連ねた応援団が毎日地元の春をに届けに来る旬の食べ物をお重に詰めて食え食えと無理強いしなければいいが・・ポエム374『球春』

  • 紙上大喜利52 『じじいの時事ばなし』

    〇「政倫審にキーパーソンの下村さんが出席したな」「出るには出ましたが安部派は誰も責任をとりませんでした」〇「予想されたこととはいえこの国の将来が危ぶまれるな」「岸田政権も手をこまねいているだけで支持率は20パーセントと低迷したままです」〇「大谷翔平は韓国でも人気だが最後のオープン戦は快音が聞けなかったな」「3ペコでしたね。開幕戦を期待しましょう」〇「大相撲は今日が事実上の決勝戦だな」「え?またご隠居気が早い、まだ10日目ですよ」〇「9戦全勝の尊富士と8勝1敗の大の里の直接対決だ」「二人とも終盤に上位者に当てられますすよ」〇「大関・関脇に勝てばいいんだろう」「簡単に言いますが地力が違いますからね」〇「日銀のマイナス金利解除期待で株価が1000円以上値上がりしたぞ」「そうですね、再び日経平均4万円越えが間違い...紙上大喜利52『じじいの時事ばなし』

  • 俳句川柳2 『まほろばの・・』

    〇まろばの地表騒がす不義不正〇日夜プレート地下でもあえぐまほろばよ〇高深度トンネルの下龍が住む〇渡米してまたもお荷物〈カンボジア〉預けられ〇岸田さん外交ホイホイばらまき旅〇ひかる君やたら忍びや群れ夜盗〇白鵬〈宮城野〉は弟子ごと部屋を没収ーと〇白鵬は土俵の外へ押し出され俳句川柳2『まほろばの・・』

  • 紙上大喜利51 『じじいの時事ばなし』

    〇「株価は乱高下だな」「ていうか4万2千円の天井を付けた後3千円の急落です」〇「NISAに資金を呼び込んだら外国ファンドはさっさと売り逃げだ」「将来の資産形成を夢見た初心者が泣きを見る構図ですか」〇「岸田さんが渡米した際大手ファンドの会合でスピーチした通りの展開だ」「NISAはお土産だったんですか」〇「政権の支持率アップのためなら何でもやるからな」「どうりで日経平均4万2千円越えの時は市場も評価してくれてありがたいとか言ってましたね」〇「石川県出身の大の里が5勝0敗で快進撃だぞ」「ご隠居の贔屓力士錦木は1勝4敗ですけど大丈夫ですか」〇「栄枯盛衰は世の習いじゃ」「え?もう見限ったんですか錦木を・・」〇「オスプレイが国内でも飛行再開だってよ」「原因も教えてもらえず木更津駐屯地の自衛隊員も不安でしょうね」〇「嘘...紙上大喜利51『じじいの時事ばなし』

  • ポエム374 『パソコンあるなし』

    パソコンがあるおかげで便利は便利だ情報集めも買い物もパソコンなしじゃどうにもならない一方パソコンがあるおかげで苦労も多い小さな文字を読むのにルーペは必需品メールを開けば次から次とフィッシュング詐欺正常な連絡も開くのが恐ろしいウィンドウズ11にも少し慣れたとはいえウィンドウズ10の機能が懐かしいああ問答臭いじれったい検索機能いくら使用頻度を上げても覚えてくれない変換機能もう投げ出しちゃうぞパソコン廃業ちょっと待ってブログはやめられない生きてる限りクレジットカードもやめられはい病院通いもコンビニ通いもやめられない視力当落ギリギリンなのにまだハンドルにしがみつくクルマの運転免許もやめられないポエムのポの字もないポエムを書いて生涯文学を捨てきれないポエム374『パソコンあるなし』

  • 紙上大喜利50『じじいの時事ばなし』

    〇「おい、錦木が横綱を寄り切ったぞ」「もう大相撲が始まったんですか」〇「だから春場所の初日に照ノ富士からいきなり金星だ」「ご隠居にとってはビッグニュースですね」〇「大関陣の不甲斐なさも目立つしな」「霧島も豊昇龍もあっさりはたきこまれましたね」〇「新大関の琴の若に期待するか」「そうですね、はち切れんばかりの充実ぶりですからね」〇「とにかく錦木の四つ相撲には惚れ直したぞ」「へい、へい、また錦木ですか。春場所じゅう聞かされそうですね」紙上大喜利50『じじいの時事ばなし』

  • 俳句川柳1 『春近し』

    〇目ン玉に目薬一滴かじか鳴く〇紅梅の花の中らしホーホケキョ〇春の川葉陰に集うメダカかな〇海苔弁のちくわ半分ハンチクな〇コンビニのおでん戻りの寒の手に俳句川柳1『春近し』

  • 紙上大喜利49 『じじいの時事ばなし』

    〇「スーパー・チューズデイでもトランプが勝ったな」「驚きましたね、民主党はヘイリー元国連大使しか候補がいないんですかね」〇「あのヘリテージ財団がトランプで完全シフトを敷いたらしいぞ」「保守派の動向を左右する牙城ですから共和党の大統領候補はほぼ決まりですね」〇「それにしてもバイデン大統領は何をやっているんだ」「ウクライナに肩入れしたもののロシアに勝てずに立ち往生の感じですね」〇「このままじゃトランプが大統領に復帰するぞ」「プーチンとアメリカの保守系資本が大喜びしますよ」〇「嘘つきが世界の頂点に立つ日が1年後にくるなんて悪夢じゃ」「ゲッペルスの言う通り嘘も百万遍つきとおせば真実になるんですかね」紙上大喜利49『じじいの時事ばなし』

  • ポエム373 「気になる」

    たけしが首都直下型地震について言及したらしい普段はすっかり忘れて生活していたがかんの鋭い大御所の発言と聞くとどうにも気になって仕方がない発言を詳しく読むとおふくろさんが関東大震災にあって入谷の山に逃げたところから始まっているそこが墓地でお墓の陰というのがいかにもビートたけしの話らしい要は首都直下地震の予言ではなくいつ起きても不思議はないのだから命を守る準備だけはしておこうと至極当たり前の発言であった過去のことだが予想していなかった東日本大震災をその5~6日前に「明瞭な前兆」として電気通信大学の研究グループが確認していた同グループが注目するのは地震の前に現れる大気上空の電離層の乱れだという地震学者にはない視点で独自の観測網を整え彼らの研究を続けていた地震予報はできなかったが確実に前兆をとらえていた受け止め方...ポエム373「気になる」

  • 紙上大喜利48 『じじいの時事ばなし』

    〇「おい、大谷翔平が結婚したな」「ご隠居、古い、古い、その話題古すぎますよ」〇「新婚なのに古いっというのか」「え?それっていいがかりに聞こえますよ」〇「デコピンも祝福してるんだからこんな芽出度いことはないじゃないか」「わかりました、末永くお幸せに」〇「今日はひな祭りだな、雛あられ用意したか」「へえ、へえ、コンビニで買ってきます」〇「プーチンが戦術核を使ったって本当か」「最近のニュースはフェイクが多いから何が真実か判断が付きません」〇「アメリカも核戦争を恐れてウクライナ支援を控えてるようだな」「チキンレースじじゃプーチンに適うわないですね」紙上大喜利48『じじいの時事ばなし』

  • ポエム372 『令和枯れすすき』

    「昭和枯れすすき」でのさくらと一郎の歌いだしは<貧しさに負けた~~<いいえ世間に負けた~~<この街も追われた<いっそきれいに死のうか<力の限り生きたから昭和は夢に満ちた時代かと思っていたがこのような歌詞が生まれる要素はあったのだろうか信じられない思いで歌詞をまさぐった<未練などないわ<花さえも咲かぬ二人は枯れすすきおかしいどうも実感がわかない秋吉久美子さんが出演していた映画があったなお兄さんの刑事がいつも気にかけている妹役で新宿の不良に魅かれていて兄の目を盗んで会いに行くだけど映画は後から制作されたのではないのかよくわからないが歌詞の切実さは尋常じゃない令和の時代に当てはめれば<貧しさ>とはマーケットの買い物かごに安売りの品を2,3個仕入れてレジに向かう買い物客の姿を指すのだろうか<世間>とは所得格差を助...ポエム372『令和枯れすすき』

  • 新企画『ととのいました』(24)

    〇「異次元の少子化対策」とかけて「ハーメルンの笛吹き男」とときますそのこころは「本当に子どもを育てやすい社会が作れるのか(約束が反故にされないか)注視」しています。新企画『ととのいました』(24)

  • ポエム371 『山茱萸の花』

    旅先でミツマタの花を山茱萸と言い張った友よあなたが去ってもう15年が過ぎました民俗学を研究していたあなたにとって山茱萸はきっと憧れの存在だったのでしょう恋愛小説の創作に長けたあなたの胸中にはあるいは訪れたことのある椎葉村の風景があったのかなと今にして思うのです鈴の音がしたらあなたの送った便りと信じますポエム371『山茱萸の花』

  • 紙上大喜利47『じじいの時事ばなし』

    〇「おい、大事件がぼっぱつしたな。北青鵬が引退したぞ」「弟弟子への度重なる暴行が明らかになった以上引退勧告もやむを得ないですね」〇「親方の宮城野(白鵬)も監督不行き届きで2階級降格だそうだ」「的確な相撲解説で信頼していたのにね」〇「もう広報にはいられない。駐車場係とかに追いやられる」「親方の耳に入っていたということなのになぜ厳しく指導しなかったんですかね」〇「そこが不思議なところよ、相撲協会に対し挑戦的な態度が感じられる」「そうですね。大横綱だったオレに処分なんかできないだろうという不遜さですね」〇「現役時代からバンザイしたり協会の慣習に逆らっていたからな」「そうそう、双葉山を尊敬していると言いながらモンゴル優位の意識が強かったですからね」紙上大喜利47『じじいの時事ばなし』

  • 新企画」新企画新企画『ととのいました』(23)

    〇「ジャンボジェット」とかけて『悪ガキ」とときますそのこころは『どりらも飛行機(非行期」でしょう」松「相撲の立ち合い」とかけて『息の合った漫才コンビ」とときますそのこころは『どちらも阿吽(あ・うん)の呼吸」でしょう〇「話題の大物芸人とかけて」「お茶会と飲み会」とときますそのこころは『菓子と献上も抹茶(まっちゃ・・〉に関係が」あるでしょう新企画」新企画新企画『ととのいました』(23)

  • ポエム370 『ひまわりをもう一度』

    ソフィア・ローレンさんもう一度あの映画に出てくださいジョバンナ役で世界を感動の渦に巻き込んだ映画「ひまわり」に・・ロケ地はかつてのソ連邦(現ウクライナ)一面のひまわり畑で繰り広げられる恋物語兵士アンオニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)の12日間の結婚休戦を永遠にと精神疾患を装うがもくろみは入院後にばれて戦地へ送られる汽車の中と外のホームで見つめ合う二人の別れ二度と会うことのない運命を知りつつも夫を探し戦地をさまようジョバンナの姿に戦争の影を見る映画から50年の歳月を経て侵略を受けるウクライナソ連邦から解放され独立したウクライナを再び手中に収めようと攻撃を繰り返し市民を標的にするロシアの軍人たち世界中が待ちのぞむ小麦と共にヒマワリを破壊されたウクライナの国土復興のための切り札にしようとするアイディアが提案さ...ポエム370『ひまわりをもう一度』

  • 紙上大喜利46 『じじいの時事ばなし』

    〇「大谷は化け物か」」「始動したと思ったら150メートル弾ですからね」〇「アメリカの医者はサイボーグ造りに自信満々だな」「星飛雄馬は強力なバネをつけて練習してましたが・・」〇「空想はあっさり超えられたようだ」「それでも大谷翔平のイメージは好青年のままですからね」〇「もう野球選手の枠は取っ払われて理想像の一人歩きだ」「どんどん大きくなる雪だるまですね」〇「ドジャースには幾らカネが入ってくるんだ?」「ご隠居、この際ハシタナイ話はよしましょう」紙上大喜利46『じじいの時事ばなし』

  • 川柳復活13 『春一番』

    〇春一番吹いて鼻水とめどなく〇抗ヒスタミン剤鼻炎薬さま仏さま〇目薬をさして益々しょぼしょぼと〇めん玉をできることなら丸洗い〇株一番NISAの日〔2月13日)から吹き上げぬ〇作られしインフレ弾ける日も近し〇投資家の心理透視しファンド動く〇まだボレる企業物価の上げラッシュ〇支持率を下げても涼し株高で川柳復活13『春一番』

  • 短期連載『ルリ色の石を探して』〈6〉最終回

    タム・ソーヤたちはお兄さんの手伝いをした後ただひたすら多磨川の土手を歩いていた。すると広い河原の一角に臨時キャンプ場という看板がかかっている場所を発見した。「おおっ、どこの区か知らないけど夏休みの子供たちのためにキャンプ場を開いてくれたらしい。ラッキー、俺たちもここで一泊しよう」タム・ソーヤが管理責任者らしいおじさんに近づき「すみません、4人ですけど今夜ここを使わせていただけますか」「事前申し込みの許可証は?」「あ、お母さんがリュックに入れてくれたんですけどどこへ行ったかな・・」タム・ソーヤは必死に探すふりをした。「許可証がないとここは使えないよ」「そんな、殺生な・・このキャンプ場に泊れないと僕たち野宿ですよ」「君、殺生なんて言葉どこで覚えたの?おじさんを脅しているみたいだな」「いえ、僕の家の電話は〇〇ば...短期連載『ルリ色の石を探して』〈6〉最終回

  • 短期連載『ルリ色の石を探して』〔5)

    堤防の下で待っていた大学生のお兄さんが、「この前はありがとう」とタム・ソーヤたちを迎えた。「実は君たちに採取してもらったウグイやオイカワは最近外来魚の餌食になって数を減らしているんだ。大分前からここはタマゾン川と呼ばれていて、熱帯魚のグッピーやブラックバスが定着している。下流域の川崎市近くで<おさかなポスト>を運営する方の発表ではペットショップで買い求めた珍しい熱帯魚を設置した生け簀に入れていくケースが増えているそうだ。ところが中には勝手に川へ捨てる人も多いので多摩川に外来魚が住み着いてしまった。一時は死の川と呼ばれていたが下水処理施設が整備されて水質がよくなったのと生活排水の温度が高くなったことから冬場でも熱帯魚が住みつき繁殖までできる環境になった。ぼくは在来魚の生息を守る立場から、君たちに手伝ってもら...短期連載『ルリ色の石を探して』〔5)

  • 短期連載『ルリ色の石を探して〈4〉

    タム・ソーヤたちは多摩川の堤防に寝そべって明け方まで天の川や夏の星座を見続けた。背後が北で多摩川の方向が南なので月明りが残っているうちから天の川がはっきりと見えた。「ミルキー・ウェイか、多摩川の上は街の明かりが届かないからきれいに見えたよね」ビルがうっとりとした表情で言った。「まさか、こんなことになるとは思いもしなかったよ」タム・ソーヤが自慢げに応じた。「ぼく、一度も見たことなかったからベガやアルタイルを目に焼き付けておくよ」ジミーもビルと同じように感激していた。明け方月明りがなくなるころ、天の川は多摩川をまたいではるかに雄大な天空の川を作っていた。消防署や警察署はタム・ソーヤの言葉を信じて星座観察を許してくれた。午前中にでもひとっ走りしてお礼を言おうという気になっていた。しかし多摩段丘の亀裂の浅いところ...短期連載『ルリ色の石を探して〈4〉

  • 短期連載『ルリ色の石を探して』〈3〉

    タム・ソーヤに誘導されながらもハックがぶつぶつ呟いている。「ムロって冬場に樹木や野菜をかこうものだろう?真夏にムロなんてあるわけないだろう」実はタム・ソーヤも自分の間違いに気づき始めていた。しかし、言い出した手前引っ込みがつかない。「ほら、夏でもちゃんとムロがあるじゃないか」たしかに4人の前方に屋根のついた小屋があった。だが、よく見ると戸が閉まっていて小屋全体に鎖ロープが巻かれている。「あれ、これってムロじゃなくて無人の野菜直売場じゃないかな?」ビルが言った。「そうか、それじゃ引き返して今夜は野宿だな」タム・ソーヤの方針転換に皆一斉に「ええーっ」と不満を漏らした。しかし、現状は変えようがない。幸い満月の夜だったので足を引きずりながら多摩川の堤までもどった。誰一人とおおらない道にレジャーシートを広げ、拾い集...短期連載『ルリ色の石を探して』〈3〉

  • 短期連載『ルリ色の石を探して』(2)

    多摩川の堤に這い上がったもののタム・ソーヤにも次の行動予定があるわけではない。もたもたしているうちに大学生が近づいてきて「君たちぼくのお手伝いをしてくれないかな」と笑いかけた。「お礼はできないけど、個人的に多摩川に生息している魚や甲殻類を調査する仕事もしているんだ。世界の学会に発表するかもしれないんです」「はあ・・」タム・ソーヤがつられたように返事をした。世界という言葉に弱い田村一郎は仲間を見回して「どうせ暇だし暑いから水遊びしてみようか」と積極的になった。昼過ぎの一番暑い時間帯にタム・ソーヤたちはズボンもシャツも脱ぎ捨て、パンツ一丁で川に入った。川といっても本流に沿って流れる人工の支流である。本来は飲料水や灌漑用水にするための取水口で、詳しい人の話では自治体ごとにそうした工夫をしているらしい。タム・ソー...短期連載『ルリ色の石を探して』(2)

  • ルリ色の石を探して〈1〉

    昭和〇〇年の夏休みに、田村一郎の提案で遊び友達総勢4人がルリ色の石を探すことになった。ガキ大将の田村一郎は関西出身の大柄な中学一年生で、何かにつけ「そうや」と返事をするのでタム・ソーヤのあだ名をつけられていた。そうなると当然、ほかの三人も八田はハック、蛭田はビル、おとなしい舟木はジミーと愛称で呼ばれることになった。「俺たちは今夜家を抜けだしルリ色の石を見つけるまで帰らない。家族が心配すると厄介だから田村の家で宿題をやると書き置きしてきてくれ。それと一週間分の食料、飯盒、マッチ、レジャーシート、毛布などを忘れないように。」あいんしゅたいんは「ところでルリ色の石ってどんなものなの?」ビルが聞いた。「お前らもアインシュタイン博士は知ってるだろ。おれの読んだ本によれば地球に降り注いだ隕石のうちルリ色の隕石には宇宙...ルリ色の石を探して〈1〉

  • 川柳復活13 『じじいの時事ばなし』

    〇「おい。検察は司直の剣を振るわずに目的を達したと自画自賛しているらしいな」「たしかに二階派をはじめ雪崩を打ってだけど派閥解散に動いたんだから実効はあったのでしょうが・・」〇「だけど安部派6人衆は顔を合わせたとたんに薄ら笑いを浮かべてたな」「あれは同じトカゲ同士が不貞腐れた照れ笑いじゃないですか」〇「世耕さんだけは不機嫌そうだったが何か企んでるのか」「わかりませんが政治の復権を考えている可能性はありますね」〇「大相撲も終わっちゃたし気抜けのビール状態だぞ」「あとは森安ジャパンを応援しましょうか」〇「照ノ富士の気迫と錦木の勝ち越しが心の支えじゃ」「ご贔屓の二人が活躍したほかに琴の若の大関昇進がありましたね」川柳復活13『じじいの時事ばなし』

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(21) 最終回

    それぞれの退場休暇が終われば出勤してくる人間に、課長はなぜ電話をかけてきたのだろう。吉村は、熊本から帰ってきたばかりの疲れた頭で考えていた。(契約のことで、また不備でも探し出したのか)それとも、辞めさせることができなかったので他局へ放り出す算段でもしているのか。蒲団にくるまっても真意が分からないために苛立ちを感じていた。となりの部屋では、久美と乳児が休んでいる。何時間置きかに授乳させる久美とは、寝床を別にすることで互いの睡眠を確保する方法をとった。眠れないまま転々としていると、苛立ちの原因がもう一つあることに気付いた。どんな用件があったにせよ、家庭にまで電話をしてきたことへの不満だった。久美から報告を受けたとき、ほんとうは家の中まで押し入られたような嫌悪を覚えたことを、いまになってはっきりと思い出していた...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(21)最終回

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(20) 次が最終回

    密息その日仕事から戻ると、課長から局長室へ出頭するよう申し渡された。「すぐにですか」と問い返すと、事務処理を済ませてからでいいと歯切れの悪い言葉が付け加えられた。何事だろう。頭が高速回転をしている。集金カードの集計が覚束なくなるほど気になった。(こんなときこそ密息だ・・・・)いつか雑誌で読んだ気功の記事が頭に浮かんだ。もともとは高僧が修行のなかで会得した呼吸法らしいのだが、武術や芸術の世界でも、奥義を極めたような人はこの息遣いの秘密に気付いていたようなのだ。吉村などにできるワザではないが、たまたま試みた手かざしで熱とも圧力とも解らない<気>を掌が感知したことがあるので、密息なるものも習得できそうな気持ちになっていたのだった。金銭授受が終了すると、待ち構えていたように課長が近付いてきた。「あとは、後でいい」...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(20)次が最終回

  • 川柳復活12 『じじいの時事ばなし』

    〇世耕さんそれはセコイよしっぽ切り(会計責任者に罪を押し付けて恥じない人=橋下徹が怒っていました)〇平然と萩生田もシラなすりつけ(安倍派幹部はドイツもバウムクーヘン=生地のグルグル巻き}〇翔平は犬(デコピン)まで稼ぐポチ見習え(広告業界あたふた)〇ウクライナ主役奪われ資金切れ(ハマス・イスラエル紛争の勘にアメリカの支援細る)〇伊藤美誠代表漏れかつるべ落とし(パリ五輪卓球女子シングルス代表枠2名に入れず)川柳復活12『じじいの時事ばなし』

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(19〉

    流砂のごとく急いで事務室に戻ると、内務の総務主任が慌てたように立ち上がった。返還しておいた集金カードをめぐって何かの動きがあったらしい。「吉村さん、遅いですよ」「おお、こっちだって気になってるさ。だけど課長が放してくれないんで仕方がないんスよ」言いながら壁の掛時計に目をやると、二時五十五分を指していた。吉村は思わずヒェ―ッと奇声を上げた。いままさに客の要請してきたタイムリミットを目前にしているではないか。「少し前にポケベルで代理を呼んで持っていってもらいましたけど、すごい剣幕で怒ってましたよ」「えっ、どっちが?」「外務代理ですよ」「へえ、仕事だからね・・・・」契約募集の途中で急遽呼び戻された課長代理の仏頂面が目に浮かんだ。いくら文句をいっても、緊急事態が起これば遊軍としてなんでも処理しなければならないのが...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(19〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(18〉

    視線のゆくえ夏の日差しが顕著となった休みの一日、吉村は久美と連れ立って近くの水天宮にお参りにいった。ふたりの住むマンションからはゆっくり歩いても二十分ほどの距離だから、その程度の運動はむしろ久美にとって望ましいものだった。梅雨明け宣言のあと、ぐずついた天候が戻ってきて気象庁が慌てる一幕もあったが、この日は朝から夏到来に太鼓判を押してもいい気温の上昇が見られて、部屋の中にはいられない気分になっていたのだ。「暑いけど大丈夫かな」「わたしのこと?」「そうだよ」「日傘を差しているんだし、むしろ気持ちがいいわよ。ねえ・・・・」そろそろ目立つようになった腹部に手を置いて、育ち始めた命に語りかけるような仕種をした。水天宮はいかにも都会の神社というたたずまいで、コンクリートで固めた竜宮城のようにせり上がった場所にある。目...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(18〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(17〉

    新世界より腰を痛めて集配課から貯金課に移った間宮が、久しぶりに演奏会のチケットを送ってきた。今回のプログラムには、ドボルザークの『新世界より』が入っていた。他の楽曲も含めて三つのパートで構成されていた。アマチュア・バイオリニストの彼は、休日や勤務終了後の時間を使って練習に励んでいるらしく、郵便局の同僚とはあまり交流する時間がないようであった。酒は嫌いではないので、仕事帰りに気の合った仲間と居酒屋に寄ったりすることもあるらしいが、趣味の違いが大きすぎてとことん付き合うところまではいかないようであった。むかし一緒に草津へ旅行したときは、年上の八田とウマの合うところを見せていたが、今はどうしているのだろう。同じ局舎の中とはいえ間宮が貯金課へ転属してしまってからは、以前のような付き合いはできないだろうとおもった。...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(17〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(16)

    天草薫風吉村と久美の新家庭がスタートして半年、こんどは八代の兄が嫁取りを考え出したとの連絡が母からの手紙に記されていた。相手は地元のスナックで働く二十八歳の女性とのことだった。兄が米屋の会合の流れで立ち寄った際、カウンターの奥でママを手伝う控え目な女の様子に心を引かれたらしい。「本人がいうには天草生まれの家庭的なオナゴで、浮いた話など何もないんじゃと。ばってん、よかオナゴがこれまで嫁の話がなかちゅうんはどうしたわけじゃろと、かえって身分ば心配しとんのよ」その相談のためによこした手紙のようであった。しかし吉村にも相手のことはわからないし、かといって母の危惧も理解できないではなかったので、ありきたりのことを書き送るしかなかった。兄は、弟の洋三が完全に実家を離れ東京に所帯を持ったことで、長年わだかまっていた心が...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(16)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(15)

    カウベルの響く町唐崎の後について会社訪問を繰り返す中で、中堅の旅行代理店との商談が有望になりつつあった。そうした進行の途中、経理畑の役員との懇談の際、近ごろの若者の旅行事情が話題になったことがあった。「まあ、短期のレジャーではハワイ、グアム、韓国、台湾といった近場が主流ですが、このごろは新婚旅行も含めてタヒチ、モルディブ、バリ島あたりが人気になってますねえ」「いやいや、豪勢ですなあ」唐崎がうなずいてみせた。「・・・・それじゃあ、御社はますます儲かる一方ですな。うらやましい限りですわ」「まあ、しかし経費のほうもかさみますから・・・・」会社契約の有利さに興味を示しながらも、あと一歩の踏み出しができないでいた。そんな役員に、何か決断させる決め手はないかと策を練る唐崎の表情を見ながら、吉村は自分の新婚旅行のことを...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(15)

  • 紙上『大喜利』(44)

    〇「おい、近ごろ空耳を聞くことが多くなってな」「ご隠居、空耳って空が何か言うんですか」〇「ゴリアルタイケンとかいうんだが何のことかわかるか」「わかりませんよ、ひょっとしてラーメンでも食べたくなったんですか」〇「能登はいらんかね・・はどうだ?」「それは多分、坂本冬美の『能登はいらかいね』の覚え違いじゃないですか」〇「気になってしょうがないんだが意味わかるか」「さあ、あとで歌詞を調べてみますよ」〇「このままじゃ夜も眠れない、早く調べて教えてくれ」「ハイ、ハイ、のと、のと、のと・・」紙上『大喜利』(44)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(14)

    かわたれどき十二月半ばに転勤の辞令が出た。翌日から皇居をはさんで反対側の郵便局へ出勤することになった。通勤時間は以前より短くなった。職種が変わった際の規定に従い、二週間ほど局内での職場研修が行なわれることになった。課長が講師になって、保険業務の基礎的な知識を教えられた。その間に、送別会と歓迎会が相次いで催された。片や居酒屋チェーン店、他方も寿司屋の二階と似たり寄ったりの会場だったが、拍手で迎えられた保険課の二次会で、初めてクラブというものに付き合わされた。その日がちょうどクリスマスイブに当たっていたからだろうか、店内は混みあっていた。吉村は経験したことのない嬌声を聞いて、落ち着かない表情であたりを見回した。職場環境が変わったことを、実感した瞬間だった。そうした喧騒のなか奥まったテーブル席の一郭で、保険課の...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(14)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(13)

    瓢箪から駒秋の将棋大会で保険課の蜂谷を破ったことが、吉村の予想もしない評判を呼んでいた。同じ屋根の下に居ながら、自分の所属する課以外の職員に妙な対抗意識を持っている者が少なくないことを、つくづく感じさせられる顛末でもあった。「あいつ今年も優勝できると思ってそっくり返っていたけど、おまえに負けてへこんでたぞ」吉村を讃えるというより、蜂谷をくさすことに熱中しているのだ。蜂谷が背を反らすのは、単なる癖かもしれないし、もしかしたら腰が悪いための姿勢ではないかと考えられる。どちらにしても人を見下すような仕種には見えないと、吉村は仲間の言に戸惑いを覚えていた。そして、一部の人間とはいえ集配課に漂う卑屈な空気を、あらためて思い知らされるのだった。「将棋が強いからって威張る人は、あんまり居ないっスよ。大体勝負なんて、どっ...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(13)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(12)

    指運郵便局の公社化を睨んで、集配課への締め付けも更に厳しくなってきていた。民間企業を見学した足での業務研修や、デパート地下売り場での体験実習など、組織の活性化とサービス向上を念頭においてのスケジュールが頻繁に組まれるようになってきた。流行の自己啓発セミナーにも中堅の職員を参加させ、さらには郵政局のホールに講師を招いて主任クラスの意識改革を図ったりした。局内では班の編成を再構築する試みも勧められていた。人員削減が現実のものとなって、班員一人ひとりの受け持つ作業量を増やすことで定数減に対応する方針が示された。吉村はいままでの伸びやかな環境が、しだいに失われていく状況を肌で感じ取っていた。九州の地から東京へ、下へも置かぬ扱いで迎えられた日のことが懐かしく思い出される。わずか十年で、磐石に見えた組織がほころび始め...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(12)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(11〉

    不知火の町一度はお母さまに会っておきたいという久美の希望で、五月の連休を利用して八代に帰郷することになった。東京駅を朝の九時前に出て、八代に着いたのは午後五時近かった。新幹線と特急で熊本へ。在来線に乗り換えて八代まで、ほぼ八時間をかけての長旅は、慣れているはずの吉村の方が音を上げそうになった。「久美さん、疲れなかった?」「岡山から先は来たことがないから、楽しかったわよ」新大阪を出てから買った車内販売の弁当を、二人であれこれ批評しながら食べたのも楽しかったと吉村を見上げた。この日の久美は、萌黄色のワンピースに白いリングのベルトでアクセントをつけていた。オレンジ系のニットのボレロが若々しい印象を与えている。この日のために新調した気配が、足先まで漲っていた。「おふくろは迎えに来たいと言ったんだけど、到着時刻がは...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(11〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(10)

    年賀状狂想曲富士山に初冠雪があったとのニュースが、朝のテレビ画面に流れていた。平年より一週間ほど早かったとのことで、吉村の住む高円寺のアパートでも、明け方の寒さは冬近しを思わせるものだった。一昨年までなら、ウールのシャツ一枚でせんべい布団に横たわり、冬山に備える訓練を課していた時期だが、去年は久美の祖母の他界、自分のバイク事故と続き、今年は早川の滑落死が追い討ちをかけるなど、身辺に暗雲が漂った感じであまり前向きの気持ちになれないでいた。振り返れば、早川が笑顔を残して逝ってから四ヶ月が経つ。岳沢へ下る途中で見た焼岳が、なぜか早川の笑顔と重なって想い出されるのだった。遭難現場から戻ったあと、結局早川の遺体を確認することなく東京に戻った。あのとき松本から松代病院に向かうには、時間も気力も残っていなかった。奥穂高...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(10)

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(9)

    滑落七月の第二月曜日、早川が無断欠勤したというので、集配課はみな大慌てしていた。班長は欠員となった配達区の穴埋めに、自ら郵便物の区分を始めていた。その間、課長は早川の自宅に電話を入れて状況把握に努めていた。しばらく呼び出し音が続いた後、やっと電話口に出たのは早川の母親らしかった。それは課長席から聞こえてくる会話のやり取りから推察できた。「えっ、息子さん家に居ないんですか」課長の不満そうな声があたりに響く。「・・・・ええ、金曜日の夜に自宅を出て行ったきり、まだ帰っていないんですか」今度は不安げなトーンに変わっていた。一体どう解釈したらいいのか、課長が思いあぐねて助けを求めるように周囲の者を見回した。「はい、はい、愛用のオートバイで出かけたのですか。お母さんにも行き先を言ってなかったんですね。・・・・そうです...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(9)

  • 紙上『大喜利』(12〉

    (ウェブ提供画像)より〇「おい、今年は甲辰(キノエタツ)だそうだが東京地検特捜部のように見えてこないか」「ご隠居、たしかに雲中に炎を吐く勢いはいかにも今年もやるぞと宣言してるみたいですね〇「むかしリクルート事件というのがあって自民党の派閥領袖クラスが軒並み摘発されたんだがその中に安倍慎太郎の名前も登場しているんだ」「へえ、そのころからですか」〇「江副浩正という人物からリクルートの未公開株が渡されていたんだがこの時の大騒動で政治家は襟を正したはずなんだが・・」「今度はパーテイ券売り上げのキックバックですか」〇「あの時は野党や有力省庁のトップまで摘発されたから政治とカネの問題は繰り返して起こっている」「ご隠居、リクルート事件は1998年のできごとですね、干支で言えばほぼ二巡りですね」〇「安倍派6人衆をはじめ全...紙上『大喜利』(12〉

  • ポエム369 『真綿色のシクラメン』

    繭玉(画像はウィキペディア)より真綿って見たことありますか真綿色したシクラメンほどいとしいものはない、と小椋佳が詞にしたあの真綿です真綿は蚕が作る繭玉のうち生糸にできない品質のものを苛性ソーダなどで処理し水洗いの後繭の繊維を伸ばして重ねたものです色はやや黄色みが乗った白とでも言いましょうか真珠の色に近いかもしれません綿花の白と違って動物性の共通性があるようですむかし近所のおばあさんが縁側の廊下に座って繭から糸を紡いでいましたあれは輸出されていた生糸です絹布に織られて貴婦人のドレスなどになりました真綿は布団の四隅などで木綿の移動防止に張られました家族の防寒着である綿入れなどにも真綿のチャンチャンコは温かいです脱いでおくと猫に占領されます真綿色のシクラメンは素朴で愛しさを感じます小椋佳の詞は古風ですなぜか真綿...ポエム369『真綿色のシクラメン』

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(8)

    キリキリシャン今年こそ結婚をと誓いあった矢先に、久美の祖母が亡くなった。何年かぶりの寒波に見舞われた二月半ば、一週間ほど臥せったあと入院して三日目に還らぬ人となった。最期は呼吸困難に陥り、正視できなかったと久美が涙ぐんだ。医師が示す肺のレントゲン写真は、壊死した細胞の墓場と化していた。酸素吸入でも軽減できない肺炎の苦しみが、久美の話から想像できた。「ごめんなさい、つい取り乱してしまって」久美が腫れた瞼を上げた。「・・・・おばあちゃまから、見苦しい様子をお見せしないようにと、きつく言われていたのに」睫毛の先で水滴が光った。光の源は霊安室の蛍光灯である。八畳ほどの畳敷きの部屋に、膝元を温める電気ストーブが置かれ、細長い組み立て式の机をはさんで久美と対している。赤く熱したニクロム線の周囲にだけ、温度を上げた空気...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(8)

  • ポエム368 『トマートー』

    我が家の隣人の外国人が何を思ったか9月頃トマトの種を播いた市場ではそろそろ品薄になる時期で露地栽培のトマトは撤収の最中だろうちょっと外人さん今ごろ種からというのは遅過ぎませんか言葉が出てこないので胸の内だけの思いであるところが何週間か過ぎるとトマトの種がビッシリと芽吹く早く間引いてあげないと苗が息できないよやきもきして見ていると競うように成長する強い苗木はどんどん伸びる弱いやつは地に這いつくばってそれでも生きるまさかと思ううちに花が咲き10月には実がなったさすがに赤くはならないがかなり大粒だ11月に入ると青い実がカラスの標的になった大きい実から咥えて近くの路上はトマトの残骸だらけう~ん、トマートーは逞しい南米の荒れ地で鍛えられてきたルーツに思いをはせる2023年もいろいろのことがあったがトマートーのように...ポエム368『トマートー』

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(7)

    草津にてなぜ、そんな気になったのだろう。湯もみを見ようなどという気に・・・・。湯畑をひとめぐりしたとき、右手の古びた小屋から入場開始を告げるアナウンスがあり、鼻にかかった案内嬢の呼び込みに好奇心をくすぐられたという面はたしかにあった。吉村は、祭りや見世物に人一倍の興味を持っていた。ただ、人ごみの隙間に仄見える影のようなものを意識する癖があって、子供のころから手放しで騒ぐといったことができない性質であった。このときも、チケット売り場を前に気持ちを決めかねていたのだが、「せっかく来たのだから・・・・」と仲間の佐々木に勧められて、やっとその気になったのだった。「行こうよ」「そうだね、入ってみようか」佐々木のことばを引き取って、吉村は横の二人に声をかけた。だが、八田も間宮も気乗り薄で、何でそんなものを観る気になっ...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(7)

  • 紙上『大喜利』(42〉

    〇「とうとう東京地検の強制捜査が入ったな」「久しぶりに特捜が本気を出しましたよ」〇「安倍派だけかと思ったら二階派もやられたぞ」「アベの陰に隠れてうまくやっていたのにね」〇「屋上屋を重ねるというのはこのことだな」「土台がしっかりしてないのに無理に建て増ししたからですか」〇「ついこの前までは最大派閥でキングメーカーだったから倍安心(安倍〉して乗っかっていたんだろう」「どうもそのようで」〇「どっちにしろ国民不在で政界地図は殺伐つとしているな」「窮地にあった総理の岸田派が清潔そうに見えますものね」〇「おい、山本由伸のドジャース入団が決まったらしいぞ」「クリスマスと正月がいっぺんに来たような話ですね」〇「日本製鉄のUSスチール買収はどうなるんだ」「バイデン大統領がどう判断するかですね」〇「いくら同盟国でもエンパイア...紙上『大喜利』(42〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(6〉

    飛ぶ四月二十日の逓信記念日に永年勤続を表彰された課長代理が、問われるまま苦労話を披露した。報告がてら職場巡りをしている最中だった。「勤続四十年とは驚きました。いろんなことがあったんでしょうね」水を向けられると、もう止まらない様子だった。「当時はね、臨時補充員という身分で入って、一年間じっくりと勤務態度を見られたもんだ。まあ見習い期間だから、必死に働いたなあ。・・・・きみらのように採用されてすぐ公務員になれるわけじゃない。郵政事務官なんて、わしらから見れば夢みたいな話なんだよ」「そうですか。・・・・いまは誰でも事務官ですから、ありがたみは薄いですがね」「給料だって、半月ごとの支払いさね。一遍に渡すと毎月晦日に足りなくなるから、やり繰りし易いようにという親心だったんだろうけど」「へえ、堪らないスね。初めて聞き...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(6〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(5〉

    日々是好日マリオン・クロックの前は、人ごみでごった返していた。有楽町駅から流れてくるJR利用客と、真近の地下鉄銀座駅から湧き出てくる乗客が一緒になって広場にあふれていた。久美はこの場所なら待ち合わせに最適と考えたのだろうが、吉村は人出の多さに不安を感じていた。待ち合わせ時刻の十一時までに、久美の姿を見つけることができるだろうか。吉村は車道と歩道を隔てる金属フェンスに寄りかかって、伸び上がるように久美を捜した。折りしもビルの壁面に設置された大時計がせり上がり、小人の音楽隊がキラキラとメロディーを奏でながら正時を告げはじめた。西欧仕込みのカラクリが、この時刻を待って集まってきた人びとの期待に応えて、ひとしきり夢の世界を紡ぎだしてみせた。これまでに幾度も装いを変えた広場は、人と人との出会いをたくさん見てきた。名...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(5〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(4〕

    逃げる朝から霙もようの天候になっていた。ここ数年暖冬が続いていて今年も例外ではなかったが、ときおり寒い日がやってきて人々をあわてさせた。吉村は朝一番の速達を配達し終えて、次の便に備えていた。濡れた合羽は腰高の丸椅子にかけてある。室内の暖房によって少しずつ乾きはじめていたが、床に滴った雫がその染みを拡げていた。窓外に目を転じると、近くを通る首都高速道路の入口がスキーのジャンプ台のようにスロープを描いていた。今でこそ慣れてしまったが、大きな窓ガラスに切り取られた都会の風景は、当初吉村に戸惑いと苛立ちをもたらした。八代の海と田園が奏でる柔らかな音色に育てられてきた男にとって、無機質の展示物は夾雑物以外のなにものでもなかった。コトッと音がして、ビル街を担当する佐藤が席を立っていった。隣接する郵便課での速達便の区分...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(4〕

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(3〉

    舟艇暮色十月のある一日、吉村は休みをどのように過ごそうかと迷ったあげく、スポーツ新聞に載っていたレース・ガイドに誘われて多摩川競艇に出かけることにした。山男の彼とギャンブルの間に、親和するものがあるようには思えなかった。しかし相性はともかく、彼自身は遥か以前から賭け事に惹かれる自分の性質に気付いていた。「おれだって、破れたり崩れたりすることはあるよ・・・・」金銭だけの賭博ではなく、人生の要所要所で出合う岐路を前に、運命を賭けてみたい衝動に駆られることがある。吉村はかねがね、ギャンブルが形を変えた祈りのようなものだと信じているところがあった。祖母の手で育てられてきた環境が、いままでは彼に堅実な生き方を選ばせてきた。誠実で礼儀正しい人間性に、嘘偽りがあるわけでもない。しかし、平穏な日常に仕掛けられた危険な罠の...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(3〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(2〉

    紫陽花郵便配達中の職員が犬に咬まれたというので、集配課は大騒ぎになっていた。広いフロアの窓に面した課長席を取り巻いて、三人の男たちが声高に話し合っている。真ん中で受話器に向かって頭を下げているのは、定年間近の課長である。断片的に聴こえるやり取りから察すると、総務課長の指示を仰いでいるらしかった。吉村はその日二度目の速達を配達して、ちょうど戻ったところだった。次の便まで若干の手空き時間があり、待機しながら深田久弥の『日本百名山』を読みつごうと心積もりしていた。速達を扱う部屋は書留郵便物も授受することから、一般の集配室とは区切られている。吉村は騒動のゆくえを横目に窺いながら、離れた通路を大股に通り過ぎようとした。「吉村くん、ちょっと」課長席のあたりから春風のような声が流れてきた。あらためて見直すと、ズボンの上...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(2〉

  • 思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(1)

    黄金の紐「郵便屋さん、そりゃないよ」遠くから凛とした声がひびいた。春とはいっても、まだ寒気が緩むまえの朝十時である。その滞った空気を貫いて、容赦をしない女の声がぴしりと飛んできた。吉村はおもわず歩みを止めて、からだを固くした。二十センチほどの細い銀線が背後で煌き、彼の後頭部を光のように射貫いていったのを、はっきりと意識した。(なるほど、神様の目は誤魔化せないな)それが女の声だとわかっていても、あまりにも間がいいものだから、日常を超えたところの存在に想いが行ったのだ。すべて見通されてしまった仕方なさが、逆に落ち着きをもたらした。『天網恢恢疎にして漏らさず』・・・・心のうちで呟きながら、ゆっくりと後ろを振り向いた。かなり遠くからの声と思っていたのに、足早に近付く女はもう吉村から数歩のところに来ていた。女は小豆...思い出の連載小説『吉村くんの出来事』(1)

  • 詩情『大喜利』(41)

    〇「国民をなめ切ってるな」「ご隠居、ご立腹ですね、もしかして政治資金のことですか」」〇「ノルマ以上にパー券売った分はポッポに入れてもいいことにしたんだと」「もともと緩い政治資金規正法が独り歩きを始めたみたいですね」〇「暗部派の幹部3人はそれぞれ1年で1000万円のキックバックを受けていたらしいな」「通算1億円以上ですからね、甘い汁とはこのことでしょうか」〇「有意見者はどう反応するんだ」「有権者のことですね、さすがに呆れたとは思うんですが特捜部が立件しなけりゃ少し票を減らす程度でしょう」〇「ウィンターミーティングが終わったら即大谷の移籍先が発表されると思ったがまだ待たせるようだな」「昨日はドジャースに決まったと発表されませんでした?」〇「メディアもスクープ合戦だな、見込みでぶち上げるんだろう」「ご隠居も、け...詩情『大喜利』(41)

  • ポエム367 『地球は借り物』

    いつも拝見するブログの記事の中に地球は子孫からの借り物です・・という石碑の写真が掲載されていたふと思い出したが誰の言葉かわからない地球を汚さずに子孫に渡すようにという願いだが大型台風や洪水・山火事など地球を汚した罰をすでに受けている気候変動と化石燃料に関係性はない御用学者の説を持ち出したトランプをグレタさんが睨みつけたわれらは過ぎ去った寸劇を思い出すが飛行機にも乗るし化石燃料の恩恵にもあずかる昔の耐乏生活には戻れないだろう過剰な生産とコマーシャルと消費のサイクル資本主義が作り出した悪しき生活習慣だが誰もそれらを手放そうとはしない地球の肺といわれる熱帯雨林は一年で日本のひとつの県ほどの面積が焼失する肺が少しずつ壊れていくのだそうだ火星に移住した一部の人間が変わり果てた地球を眺めながらかつて地球は青かった・・...ポエム367『地球は借り物』

  • 川柳復活12 『じじいの時事ばなし』

    〇さあCOP28(首脳級閣僚会議〉メンツそろって成果出た?(化石燃料使用削減については具体策決まらず〉〇COP28再生可能エネルギー発電量3倍に(2030年までに110か国誓約〉〇温室効果ガス排出売り買いしても効果なし(その場しのぎの削減〉〇まだ間に合う悲痛な叫びも馬耳東言(グレタさんの声も届かなかった〉〇愚低レス(グテーレス国連事務総長)と侮る世界の地球レス(結局人類は焦熱地獄に苦しむ〉川柳復活12『じじいの時事ばなし』

  • 川柳復活11 『じじいの時事ばなし』

    〇つつがなく過ぎし日ガザは筒だらけ(日本は平和なの?)〇逃げ惑うドッジボールの敵味方(ハマスはイスラエルの攻撃で一方的に逃げ惑うのか)〇阪神はアレ?で頂点(日本シリーズ)大賞(流行語)も〇岡田(監督)さん掛布・バースをしのぐ締め(大ホームラン)〇大相撲弱い大関の生き残り(大関・霧島が面目保つ)〇熱海富士あたふた突っかけ自滅する(対霧島の事実上の優勝戦で)〇錦木は負け越し(7勝8敗)構えはいいけれど(役力士への再浮上に期待)〇いよいよだ大谷翔平残留か(エンゼルスは居心地いいんだろうな)〇ヌートバー見ない日はなしCM王(野球もガンバレ〉〇由伸(山本〉は絶対エースと期待され(大リーグも研究してくるぞ)川柳復活11『じじいの時事ばなし』

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(15) 最終回

    (双頭の蛇)師走も押し詰まった頃、調査を依頼しておいた滝口から耳寄りな報告があった。<年明けに、村上紀久子と電力界の黒幕が金沢の主計町で会う>という情報だった。経済団体の賀詞交歓会は、例年通り13日頃に行われるらしいが、老人が大手町へ行くことはなく、もっぱら裏街道が似合っていると承知している。陽のあたる場所より、芸者の寮を改装した村上紀久子の住まいに客人を呼んだほうがよほど実質的だ。そのために、前以て資金を渡し隠れ家を買わせておいたのだ。この女、老人が原子力ムラで力を蓄えていった時代に、山陰のある温泉旅館に呼んだ田舎芸者に過ぎなかったが、巧まずに人の心に入り込む才に恵まれていた。たぶらかすとか、くすぐるとかいう類のわざとらしい技ではない。むしろ他人に尽くすひたむきさのような心に、相手は知らず知らず引き込ま...思い出の連載小説『折れたブレード』(15)最終回

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(14〉 あと1回で最終

    (アサリの味噌汁)正孝は、滝口に連絡するつもりが、間違って艶子の電話番号を押していることに気づいた。どういうことだろうと、自分のとった行動を訝しむ。選りに選って、なぜ艶子の電話に?すでに、この世に存在しない女性の持ち物。警察に押収され、現在どこにあるかもわからないケータイが、意思を持ったかのように呼ぶのだろうか。正孝は、艶子が何かを訴えかけているような気がした。天高く澄み渡った空を、幽かな風が移動している。通じなくなった回線の代わりに、何かが空を駆けている。(艶子・・・・)熱い思いが胸元をよぎる。艶子を殺した犯人は、出雲の警察に身柄を移動されたという。山根刑事は、動かぬ証拠を固めて堂島を逮捕したのだろうが、被害者も犯人もいなくなった東京には空虚だけが残った。正孝は、呆然としたまま辺りの風景を見回す。薫風社...思い出の連載小説『折れたブレード』(14〉あと1回で最終

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(13) あと2回で最終

    (そして神無月)堂島秀俊が殺人容疑で逮捕されたのは、朝の8時ごろ東京むさし野市の自宅マンションを出たところでだった。街路樹の葉が色づき始めた季節、きちんとスーツを着た三十代後半の男に、物陰から現れた私服刑事が3人擦り寄ったかと思うといきなり令状を示したのだ。自分の名前を呼ばれると、男は一瞬たじろぎ、「な、なんですか」と刑事の一人に声を荒らげて抵抗した。「福田艶子殺人容疑だ。詳しいことは所轄署で聞く。これから同行願いたい」未公開株をめぐる詐欺容疑での摘発には、堂島なりの対策を練っていた。福田艶子を利用したのは、ダイレクトに責任が及ばないようにするためである。しかし、殺人と聞いた途端に思考が停止し、頭の中が白んだように感じられた。そうした彼の表情を確認しながら、山根刑事が堂島の両手に手錠を掛けた。堂島は直ちに...思い出の連載小説『折れたブレード』(13)あと2回で最終

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(12) あと3回で最終

    (企みの交差点)思い出したくもないことだが、福島第一原子力発電所の過酷事故は、何年たっても伊能正孝の心を打ち震わす。安全をうたいながらメルトダウンにまで至った責任は本来誰かが負うべきものだが、実際には想定を超える大地震と津波を理由に言い逃れを繰り返してきた。原発を推進した政党と監督官庁は、政権を奪還するや当該電力会社を矢面に立たせつつ、当面の補償や運営の国家的バックアップ体制をとって、主体を曖昧にした。気が付けば、国民は何一つ責任のない事故に対して、復興特別税のような心情的に支持せざるを得ない施策のもと、いつの間にか責任を負わされた。この裏には、長年培われてきた官僚機構の狡猾な仕組みがある。「失われた年金」と呼ばれた、年金積立金の消失事件の幕引きがいい例だ。積極的に悪用した人物は既にこの世になく、シロアリ...思い出の連載小説『折れたブレード』(12)あと3回で最終

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(11)

    (巨魁の影)ホテルでの目覚めは快適だった。病院や役所をめぐった柏崎での一日は、気疲れの連続であった。一夜過ぎて、その時の疲れはほぼ解消していた。さすがに金沢は癒しの街だった。それもそのはず、伊能正孝の投宿したホテルは、緑の多い金沢城に近い場所にあって、空気の匂いも聴こえてくる物音も違っていた。彼がこれから訪ねようとする村上紀久子の転居先は、金沢市主計町となっている。フロントで市内の観光地図をもらい、ついでにここへ行きたいのだがと指で示すと、「ああ、カズエマチですね」と予想外の読み方で町名が告げられた。「ええ、主計町って、どんな雰囲気の場所ですか」正孝は、鸚鵡返しに目的の町名を口にし、市内のことならなんでも知っていそうな四十代のフロント係に質問した。男はカウンターから乗り出すようにして、主計町の成り立ちを説...思い出の連載小説『折れたブレード』(11)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(10)

    (善悪の彼岸)伊能正孝は柏崎市役所の市民課におもむき、村上紀久子の転居先を調べるべく住民票の交付を申請した。窓口職員は、申請者である正孝の住所を一瞥して、東京の法人が何かの調査のために来たのかと勘違いしたようだ。「お身内の方ではないですよね?」型どおりに質問しておいて、「・・・・弁護士さんか業者さんでしょうか」と質問を切り替えてきた。そうじゃないと答えると、「どんなことで必要なのでしょうか」と、意外そうな面持ちで追及した。「実は、村上紀久子さんのご主人の娘さんが亡くなられまして、そのことを入院中のお父様にお伝えしようと東京から来たんですよ」ところが、総合医療センターまで行ったところ、そのお父様まで亡くなったと言われ、途方に暮れているのだと訴えた。「唯一のお身内は村上紀久子さんしか居られないので、先ほど柳橋...思い出の連載小説『折れたブレード』(10)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(9)

    (逃げ水)艶子と父親が並んで写っている写真を見た夜、正孝は三番町の事務所で仮眠をとり朝を迎えた。調査会社からもたらされた資料は、もう少し精査する必要があったが、正孝の関心はまだ見ぬ村上紀久子の存在に移っていた。艶子に送った彼女の礼状から、柏崎市にある老人福祉関係の病院に入っている父親を見舞ったことが判明した。松江で不祥事を起こした「おやじさま」が、妻と子供を残して失踪したのが約20年前、それ以来傍で支えてきたのが村上紀久子と思われた。安来節の師匠であった芸者が彼女で、無一文で放り出された「おやじさま」を長年支え続けたものと推定できる。(彼女に会ってみたい・・・・)艶子と父親の写真を撮ったと思われる人物と、直接言葉を交わしてみたい。撮影者の姿こそ見えないが、被写体に向ける親しみの感情が、波動となって伝わって...思い出の連載小説『折れたブレード』(9)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(8)

    (発光する神経)正孝は、滝口から渡された写真の中に、艶子が見慣れない男と写っている一枚を発見した。男はかなり年老いた感じで、ベッドのクッションに寄りかかるように坐っていた。その横に立って微笑んでいるのが、艶子だった。春先なのか、萌黄色のセーターを着ている。ベッドの傍らには、タオルや下着を収納できる縦長のキャビネットが置かれている。天板の上には、水差しと湯呑、ティッシュボックスが並んでいる。採光の具合からも、その場所が病院の一室であることが覗える。病室。・・・・しかも老人とベッドの凹み具合に、長期に馴染んだ親しみのような関係性が感じられる。(見つけたんだな、父親を・・・・)正孝は、そう直感した。艶子が幼いうちに失踪した父親と、二十年近い空白を挟んで再会したのだ。事業で失敗し、その後も不始末を重ねた父親は、本...思い出の連載小説『折れたブレード』(8)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(7)

    (欲と二人連れ)艶子の変死事件に関する新聞報道は、伊能正孝に大きな衝撃を与えた。松江に帰省中の出来事ということで、半分はプライベートな要因を想定していたが、その考えが楽観的すぎたことを思い知らされた。やはり、今回の事件は正孝の足元から起こっている。正孝の気づかないところで、何かが動いていたのだ。艶子の尋常でない死に直面して、正孝も初めてそのことを確信した。迂闊といえば言えた。急ぎ帰って、艶子の身辺を調べなければならない。事務所の艶子の事務机には、これといった手がかりは残されていなかった。だが、艶子が住居にしている九段下のマンションには、何かが残されているかもしれない。正孝としては、住居費を充分に賄える金額を住宅手当の形で支給していたが、賃貸マンションの借主はあくまでも艶子である。さすがに正孝名義にするよう...思い出の連載小説『折れたブレード』(7)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(6)

    (ミクロの空気砲)その晩、伊能正孝は松江市内の温泉街に宿を取り、ホテルの一室でこんがらがっている現在の状況を分析した。まず明らかにしなければならないのは、艶子の死因である。弥山の山中で発見された艶子の遺体は、当初、服薬自殺と思われていたのだが、現場周辺の状況から警察も違和感を抱いたらしい。そして、自殺と事件の両面から捜査を進めた。司法解剖に回したのは、そのあたりの事情を反映してのことだろう。警察は、詳細な所見を発表していないが、遺体をすでに家族に返していることから、何かを突き止めた可能性がある。疲れきった表情の母親の様子から、よからぬ結果を告げられたのではないかとの疑いも頭を掠めた。翌日、正孝は出雲駅に近い所轄署をめざした。窓口カウンターで刑事課の山根に面会を求めると、いま会議中なので終わり次第伝えておく...思い出の連載小説『折れたブレード』(6)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(5)

    (逆縁)正孝は、空港ターミナルのタクシー乗り場に向かい、さてどうしたものかと迷いを感じていた。艶子の実家をめざして来たものの、先に訪問の了解を得た方がいいか、近くまで行って様子を見た方がいいのか悩んでいたのだ。ショルダーバッグを肩にかけ、一方の手に観光地図を持ったまま歩いていると、待機するタクシーの扉がいきなり開いた。ハッとしたが、すでに運転手が身をよじって正孝の目を捉えていた。誘われるように後部座席に乗り込むと、中年の男が甲高い調子で「お客さん、どちらへ行きなさいますか」と声をかけてきた。「うーん、とりあえず一畑電車の最寄駅へ・・・・」体を押し込んだ拍子に、手にしていた地図が目に入ったのだった。「ばたでんですか。何駅へ着けましょうか」「そうか、畑電というのですか。ここから一番近い駅でいいんだが、運転手さ...思い出の連載小説『折れたブレード』(5)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(4)

    (消えた風紋)市民会館で目にした江戸手妻師の印象は、翌日になっても正孝の脳裏から離れなかった。昨夜のネオザール社との電話では、堂島という男の風貌をしっかりと確認することはできなかったが、写真などでもう一度突き合わせる必要を感じていた。そのためには、パンフレットで目にした手妻師一門の弟子の舞台姿を探すことだ。調べてみると、艶子の母親が似ているといった公演時の男のプロフィールが見つかった。そこに載っていた画像を拡大して、顔まで鮮明な全身像を複写することができた。(よし、これではっきりする)謎の一つが解ければ、艶子の死に関わる闇に少しは光が射すはずだ。正孝は、再びネオザール社に電話を入れ、画像をメールに添付して送るから、堂島という人物に似ているかどうか確認してほしいと頼んだ。すると、それを見た担当者から、折り返...思い出の連載小説『折れたブレード』(4)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(3)

    (風車の仕掛け)正孝は閉館間際の市民会館に駆けつけ、広報担当の職員に過去の公演について情報を求めた。「公演の全てですか」職員はシャツの袖をたくしあげて、困惑したように正孝を見た。「いや、何年か前に江戸手妻の出し物があったかどうか、それを知りたいのですが」「ああ、それなら覚えていますよ。配布したパンフレットがファイルされていると思いますが」そう言って、背後のロッカーから束ねたファイル帳を探し出してくれた。「これがそうです。・・・・ところで、この公演について何かお調べでも?」「いやいや、ある方から評判を聞き、わたしも一度観てみたいと思いましてね」正孝は如才なく答えながら、出雲で公演した男の舞台姿を確認した。「はあ、この方ですか。若いのになかなかの押し出しですね。・・・・うーん、これは格好いい」「そうでしょう。...思い出の連載小説『折れたブレード』(3)

  • 思い出の連載小説『折れたブレード』(2)

    (手妻師)翌朝、伊能正孝は、7時10分発のJAL便で、羽田から出雲縁結び空港へ向かった。約1時間30分のフライトで、宍道湖に突き出た滑走路に着陸すると、到着ロビーの端に空港派出所と表示された一角を見つけそこに立ち寄った。地元警察の管轄だろうから、ここで聞けばある程度の見当を付けられると思ったのだ。「出雲署に山根さんという方はおられますかな」「さあ、合併以来大所帯になりまして・・・・。本署に電話してみましょうか」「いや、それはご厄介でしょう。直接こちらから連絡してみますよ」「番号、わかっているのですか」「へえ」どことなく要領を得ない痩躯の老人を、係官が胡散臭げに見上げた。正孝は、たしかに自分でも怪しげだと思いながら、頭を下げてターミナルビルのエレベーターで三階に向かった。うまい具合に、簡単な食事が摂れそうな...思い出の連載小説『折れたブレード』(2)

  • 思い出の連載小説『折れたたブレード』(1)

    (風神雷神)京都での自然エネルギー関連のシンポジウムを終え、伊能正孝は東京の事務所に戻っていた。彼の事務所は、千鳥が淵を臨む三番町のビルの二階にあった。近くにはエドモントホテルがあり、事務所では差し障りがある面会などの時、ホテルの一室を使うことが多かった。永田町の先生方は、概ね国会周辺に事務所を構えているので、交渉事が生じた場合ここからならスピーディーに移動できる。また、資源エネルギー庁をはじめとする役所にも、しばしば情報の確認に行く必要があった。その点、正孝の拠点とする場所は、中枢にある人びとと付かず離れずの関係を保つための程よい距離にあったのである。正孝は京都から帰ったあと、関わりを持つ大学や企業の研究施設に自ら電話して、わが国の再生可能エネルギーを取り巻く環境について情報交換したところだった。いずれ...思い出の連載小説『折れたたブレード』(1)

  • 川柳復活10 『じじいの時事ばなし』

    〇日大は相撲のあとは元検事(林真理子理事長は相撲部出身の元理事長の逮捕で後任に推されたが今度は澤田副学長にてこずっている)〇中国(習近平)はピンチ背(対米強硬姿勢)に腹(経済成長率鈍化)変えられず(両国の首脳会談浮上か)〇人質は利息取ったら放すもの(ハマスはイスラエル国籍以外の一部解放を示唆したが)〇記録的円安進みただ悲鳴(日銀は打つ手なし)〇それなのに株価は上がる摩訶不思議(外国人投資家の跳梁跋扈)川柳復活10『じじいの時事ばなし』

  • 紙上『大喜利』(40)

    〇「ことしも物故者が続いたな」「そうですね、いろいろの方が亡くなりました」〇「大江健三郎や坂本龍一はニュースでも取り上げられていたからここではやめとこう」「みんな知ってますからね・・」〇「作家の加賀乙彦や永井路子は長生きしたな、ファンの人には惜しまれるだろうが」「天寿を全うしたことが素晴らしいですよ」〇「漫画家の松本零士は長生きしたけど生涯現役の迫力を保っていたな」「そうそう、宇宙戦艦ヤマトや銀河鉄道999は不朽の名作ですからね」〇「もんたよしのりはこのところ名前が登場してなかったのでビックリしたな」「ご隠居も朝まで踊ったくちですか」〇「とにかく新鮮だったな。ダンシング・オールナイトはそれまでの楽曲を全部ひっくり返した」「相当入れ込んでますね」〇「犬塚弘はドリフターズの最後の生き証人だったが・・」「おふざ...紙上『大喜利』(40)

  • ポエム375 『シャボン玉飛んだ』

    シャボン玉液をストローの先につけて静かに吹くふくらむ膨らむ大きくなるジャガイモのように二つ三つ引っ付いて親子のように夕方の空を昇っていく子どもは夢中になって次々にシャボン玉を飛ばす表面に「夢」と書きたいところだがいくら界面活性剤が入っていてもそれはできない相談だいいさ字を書くことはできなくても空高くで弾けたとき思いを届けてくれるだろう西日を受けて虹色の橋を架けるかもしれない長い歳月のうちにはあの子もこの子も橋を渡ったお~いよかったら戻ってこないかみんなキミの写真を飾って懐かしんでいるぞ季節季節の花を活けて手を合わせているキミは大事な家族の一員だったのだシャボン玉飛んだ天まで飛んだ昔の石鹼水のシャボン玉は薄い膜で軒までやっとだったがたまには空高くまで飛んで見えなくなったきっと神秘的な出来事だったんだ可愛いよ...ポエム375『シャボン玉飛んだ』

  • 川柳復活9 『じじいの時事ばなし』

    〇減税の話世耕(自民〉のジャブが飛ぶ(今まで岸田総理を担いでいたのに、そりゃセコイ〉〇消費税下がる期待は泡と消え(値上げラッシュで税収はうなぎのぼり〉〇岸田さんカネ配るのが外交か(世界の首脳の仲間入り気分〉〇支持率は下がる一方みくだり半(自民党役員が相次いで首相批判〉〇国連でグテーレス非難のイスラエル(国連事務総長の人道発言に〉〇ガザ地区の地上侵攻延期なる(イスラエルが自国の防空システム完成までの期間同意〉〇人質解放カタール仲介全方位外交(テロ組織などとも一定の交流〉〇藤井聡太八冠どころか栄誉賞も(愛知県民栄誉賞につづき国民栄誉賞も検討か〉川柳復活9『じじいの時事ばなし』

  • 紙上『大喜利』(39)

    〇「元旦の目玉・芸能人格付けチェックは例年どおりやるのかな」「ご隠居、気が早いですね。ガクト様次第でしょう、彼がいないと映えませんからね」〇「ガクトは病気で出演しないという話も出てたな」「そうなんですよ。免疫不全という発表ですから、完治までには時間がかかるでしょう」〇「浜ちゃんの腕で新年を乗り切り、翌年のガクト復帰を狙う可能性もあるな」「ガクト様の過去の映像を挟んで無敗神話で引っ張るとか」〇「あとは暮れの井岡一翔のボクシングだな」「ご隠居、紅白は見ないんですか」〇「紅白の餅でも撒いてエンデイングにすれば面白いから見るかもしれんが歌は飽きた」「NHKは必死で歌番組を続けているんですから見てあげなさいよ」紙上『大喜利』(39)

  • ポエム374 『モンキー・オーキッド』

    モンキー・オーキッド(ドラクラ属)画像は(ウェブ無料画像)より南米エクアドルやコロンビアの高地に広がる雲霧林にはいきなり木の茂みから顔を出し捕食者をびっくりさせる小さな猿がいるその名はモンキー・オーキッドドラクラ(小さな竜)という属名でも呼ばれている昼も夜も大汗かくほどの湿気に包まれてそれなりに快適に過ごしてきたがいつの頃か縦間を飛び回る猿に憧れてガクを変化させ猿の顔のように咲くようになったこれならどんな小動物も虫たちもおいそれと手を出せなくなる他にもエクアドルには光るゴキブリがいる毒を持つ昆虫を真似て警告し鳥の捕食を免れる擬態だがモンキー・オーキッドほどの衝撃はない植物には足がないけれど動物を巧みに利用して種を遠くまで運ばせたり自ら弾けて莢の中の実を飛ばしたり枝から離れる時クルクルと保護板の羽根のように...ポエム374『モンキー・オーキッド』

  • 新作短編小説『晩秋のエクトプラズム』

    立東大学の浦部教授は去年の暮れに妻に先立たれた。日に日に寂しさが募り、妻の面影を追うことが多かった。若いころは実験室にこもって研究を続け帰宅も遅かったから妻と会話をする時間も少なかったが、大学を去る頃になって妻の献身的な愛情に気づき感謝の気持ちを伝えるようになった。「キミには面倒なことを全部押し付けて迷惑をかけたな」「そんな、あなたは研究に没頭していたんですから家のことは私がやるのは当り前ですわ」「子供の進学のときも入学式にすら出なくてほったらかしだった・・」「あら、気にしていたの?」「まあな、証文の出し遅れだが一応気になっていたんだ。息子がいつの間にか大学を卒業し、就職もして立派な社会人になれたのもすべてキミのおかげだよ」「ありがとう、私あの世から呼ばことになったけれど、チャンスを見つけてあなたのところ...新作短編小説『晩秋のエクトプラズム』

  • ポエム373 『男郎花(おとこえし)』

    男郎花の姿は艶やかでありながら末枯れ行く野原にすっくと立った偉丈夫だ夕闇の中でも目立つ白い顔名女形の坂東玉三郎を連想するもちろん周囲の女郎花(おみなえし)は黄色い声を張り上げてもてはやすがしょせん君らとは付き合えないとおとこえしは独自の世界を生きている奥さんはもらわないの?揶揄する声にも動じることはない仲間は少なくても自然な交配で充分さ後世に引き継ぐ芸を持ってるわけでもない潔いのね男郎花秋の七草に取り上げられることもなく野原の一角をボーっと染める夜更けの月明りポエム373『男郎花(おとこえし)』

  • 紙上『大喜利』(39)

    〇「む」かし背嚢(はいのう)いまリュック詰めてよろける泪橋」「ご隠居、何を言いたいんですか。兵隊にとられたお兄さんの事でも思い出したんですか」〇「涙ながらに住まいを追われるガザ地区の人びとを見ていたら争うことの虚しさが急にこみ上げて来たんだ」「そういうことですか。パレスチナ側の100万人が右往左往していますからね」〇「憎しみの木は育つが幸福の果実はな永久に生らない」「ご隠居、まるで旧約聖書を読んでいるみたいですね」〇「ガザ地区から地下トンネルを通ってイスラエルを攻撃してるらしい。ハマスは神出鬼没だな」「ゲリラ作戦ですね、だけど地上侵攻されたら対抗できないでしょう」〇『アメリカはイスラエル支持だけどガザ地区の占領には反対してる」「そりゃそうでしょう。人道を保てるかどうか、厄介ごとを抱え込むだけですからね」紙上『大喜利』(39)

  • 川柳復活6 『じじいの時事ばなし』

    〇蟷螂の斧振り上げて威嚇せり〇宝石盗一人は出刃で威嚇せり〇蝶道を飛ぶ高からず低からず〇コカコーラ値上げ髙からず低からず〇天高く物みな高し秋深し〇物価高馬も肥えてる暇はなし〇群れガラス思い思いの松の枝〇労組スト思い思いのプラカード〇上品に鳴けよいがみ合う猫の恋〇医療機器まず金儲けのち治療川柳復活6『じじいの時事ばなし』

  • 新企画『ととのいました』(22)

    〇「A1予想1パーセント確率から一いつの間にか99パーセント勝利にした藤井聡太8冠」とかけて「青天の霹靂とときます」そのこころは「えー(A)そんなと、予報士も開い(ⅰ)た口がふさがらないほどの衝撃」でしょう〇「藤井聡太8冠のAIの一歩先を行く読みに負けた棋士」とかけて「UFOと遭遇したパイロット」とときますそのこころは「過去の知識を網羅しているが未知との遭遇には手も足も出ない」でしょう〇「ハマスがイスラエルにロケット攻撃」とかけて『仲間外れのいじめを受けた生徒の腹いせ」とときますそのこころは「中途(中東)で味方を引きはがすイスラエル外交に我慢ならなかったから」でしょう〇「FA大谷翔平の移籍先球団」とかけて「家具のニトリ」とときますそのこころは「手術後の活躍は未知数でも招へい(翔平)出来たらきっと<お値段以...新企画『ととのいました』(22)

  • ポエム372 『母ヤギがいた飼育小屋』

    父は俳号を「牛歩」と称して自己流の俳句を作っていたどこの結社にも属さず農作業で目にしたり感じたことを農協の発行する雑誌に投稿していた中学生だったぼくの目から見ても上手くはなかったがたまに入選して大きめの活字で掲載される句の中には我が家に起こったことだけに胸を打つものがあった<母ヤギを売ってガランと秋の暮れ>父の目には母ヤギがいなくなった飼育小屋がガランとしていてその空間に秋の夕暮れが忍び寄る様を読んだのだろうぼくとしては田舎道を引き立てられながら鳴きかわす母ヤギと小屋に残る子ヤギたちの声が耳に残りしばらくは子ヤギに餌をやるのもつらかった父「牛歩」の作品は句集などでまとめられることもなくぼくの記憶の中に留まるだけだ農協の雑誌など翌月にはもう見る人もいないぼくは銀杏落葉が散る早朝の公園を牛の歩みのようにノロノ...ポエム372『母ヤギがいた飼育小屋』

  • 新作短編小説『千葉勝浦の食堂で』

    勝浦の夏は観測史上一度も猛暑日(35度以上)がないらしい、そのため観光に訪れる人や移住者が増えているのだそうだ。理由は海岸には絶えず海風が吹きこんで内陸より気温の上昇が抑えられるらしい。菅家一家は船橋に住んでいたころ行楽と言えば千葉の各地をドライブすることだった。なかでも勝浦がお気に入りで、「ホテル三日月」の前の砂浜で子供を遊ばせ、昼になると道を渡ったところにある食堂に入って新鮮な魚介類の刺身や天婦羅を注文することが多かった。「ここの天婦羅はおいしいね」海老好きの菅家が妻や子供に同意を求める声が聞こえていても、店主の料理人はニコリともせずに黙々と包丁を動かし続けた。この店の壁の上部には、岩礁を配した海の絵がかかっていた。菅家はいつも椅子席の絵がよく見えるところに座り、黒々とした岩礁に当たって砕ける波しぶき...新作短編小説『千葉勝浦の食堂で』

  • 紙上『大喜利』(38)

    〇「やっぱり秋だなあ」「ご隠居どうしました?乙女のように感傷に浸っているんですか」〇「いやいや、スポーツも佳境に入ったということだ」「バレーボールにバスケ・ラグビーと目が離せないですよね」〇「ソフトボールは中国に4対0で勝ってアジアナンバーワンになったしな」「アジア大会はともかく世界で優勝しましょうよ」〇「うちの孫も運動会の玉入れで白組に勝ったし秋はスポーツだ」「ご隠居、それが言いたかったんですか」〇「源平合戦みたいで面白かったぞ」「ヘイ、ヘイ。赤勝て・・赤勝て・・って連呼したんですね」紙上『大喜利』(38)

  • 新作短編小説『ぬすびと萩』

    秋田県の能代郡に属するある小さな村では、山野に萩の群生する一帯がある。この村の庄屋の佐藤新左エ門という男は、村の寄り合いのたびに奥の間から大きな蕾を持ち出して来て先祖代々伝わる小判や二朱銀のコレクションを見せびらかせていた。「どうだ、お前らもせっせと働いて少しでも蓄財することを忘れるな。長い歳月の内にはこうして山吹色の銭が拝めるようになるぞ」庄屋としては本気で村人を鼓舞する気持ちもあったが、小作との厳然たる格差を感じてもいた。優位な位置にいる自分を少なからず誇らしく思っていたことは確かである。そのためか、機会あるごとに大した危惧も抱かずに小判の入った壺を人目にさらした。夏が過ぎ、村人が稲の刈り入れを心待ちにしていた九月下旬、そろそろ日が傾き始めた時刻に庄屋の家に捕吏を名乗る三人の男があらわれた。「警察の方...新作短編小説『ぬすびと萩』

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