**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
ツンデレ姫と美貌の付き人などの恋愛ファンタジー毎日連載。『アルファポリス』『小説家になろう』参加。
男勝り姫君ユーノと美貌の付き人アシャのハーレクインロマンス的なファンジー小説『ラズーン』毎日連載。『これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー』は出戻り姫シャルンと腹黒王レダンのラブコメディ、時々連載。
2090000ヒット、ありがとうございました!『ラズーン』第七部 5.欺かれた『運命(リマイン)』(3)
**************** 残念ながら、移動先での一休みと食事にはありつけなかった。 周囲を警戒しながら進んでいたはずだが、燃え続けて収まる気配のない『氷の双宮』に皆が気を取られた一瞬、「敵
**************** 大輔は京介が『ぼけ』にかまけて自分と遊ばないとたびたび癇癪を起こしていた。そうして、ある日、『そんなにこいつが大事か』『大ちゃんっ』『こんなちっこいやつが』『やめ
2090000ヒット、ありがとうございました!『ラズーン』第七部 5.欺かれた『運命(リマイン)』(2)
**************** 一群れの軍を制圧した、と言えばいいのだろうか。 戦い方を変えてからは、勝敗はあっさり決した。死屍累々とはまだ早いか、大怪我をしつつ未だ死んでは居ない者も転がる広場
**************** 「ここだよ」 黙って手を繋いだまま山を登って、京介は慣れた場所に辿りつく。「綺麗なところですね」 じっと見ていた伊吹がぽつりと言って、思わず振り向いた。「綺麗? こ
2090000ヒット、ありがとうございました!『ラズーン』第七部 5.欺かれた『運命(リマイン)』(1)
**************** 「シートス!」「隊長!」 周囲に満ちる剣戟の隙間からも、重なり合った2つの声は届いた。その一つが、奇跡的な救いに繋がると感じてシートスは振り返る。炎に彩られた道なき
**************** 「わぁ…」「気に入った?」「いや、気に入ったというか、なんて言うか」 ゆっくり足下に気をつけながら歩いたから、結構な時間が立ったはずだ。 美並が額にうっすら汗を感じ
**************** あの日は月がなかったな、と京介は空を見上げて思った。 遮るように差し出している枝を押し退けて広げ、月があれば何か変わっていただろうかと思う。 こうして明るく照らさ
**************** 月が明るく昇っていた。 先に立つ真崎が、道の上に差し出した枝を押し退けつつ振り返る。「怒ってる?」「………」「怒ってるの?」「……」「怒ってるんだ」「……怒ってません」「
**************** あー、吐きそう。 夕食の間中、京介は緊張し続けていた。 大輔が親しそうに伊吹に話し掛けるのが気に触る。これみよがしに低い声で呟いて、え、すみません、なんて、と伊吹
**************** それから後、大輔ははしゃがなかった。ほどほどに愛想よくて、けれど微妙に警戒している。 きっと今頃どうやって伊吹の情報を得ようか、いつ京介を問い詰めようかとあれこれ
**************** バスが遠ざかっていくのを見ていた伊吹がそのままぽつりと尋ねてきた。「課長」「はい」「……動物霊園に行くって言ってませんでしたか」 伊吹は細身に珍しく紺のロングスカー
**************** お風呂は総檜、しかも風呂の蓋も手桶洗面器まで檜という豪勢さ、山の中だから自然でしょ、などと嘯く男は放っておいて、美並はひさしぶりにのんびり体を伸ばしたが、「あたた
**************** ったく。 美並は溜め息をついて、ここを使って下さい、と招き入れられた部屋に腰を降ろす。 あれこれ事情があるんなら、先に話しとけっつーの。 微妙にふて腐れた気分なのは
**************** 車が止まったのは一山上り切った平地だった。本当に小さな集落だけで、後は田んぼがぽつぽつ広がっているのどかな風景だ。 こっちです、と促されて、車を降りると、旅行誌でよ
**************** 「いや、まさかね、ほんとにこいつが女を連れてくる日が来るとは思ってなくて!」 がははは、と相手は豪快にハンドルを切りながら、切り立った崖に張り付くような山道を上って
**************** 長時間揺られたバスは土煙を立てて道を遠ざかっていく。「課長」「はい」「……動物霊園に行くって言ってませんでしたか」「近くにないって言ったよね?」「ここ、山の中じゃな
**************** 「真崎君はいるかっ」 流通管理課のドアが大きな音をたてて開き、いらいらした顔で仁王立ちしている男が細いきつい顔で怒鳴った。「はぁい」 いささか間抜けた声とともに、真
**************** 伊吹を連れて実家に行く、と京介は連絡をいれた『京介、か?』 電話の向こうで大輔は訝しそうな声を出す。そりゃ、そうだよね、もうずっと連絡を取ってなかった。こっちの連
**************** ネクタイは明るい色で。ジャケットは渋めに。シャツは少し甘い印象でいい。「ん、よし」 鏡の前で念入りに服装を改めて京介は部屋を出る。 思わず知らず零れている笑みを自
**************** 「おはよう、伊吹さん」 夕べのダ-ティさはどこへやら、翌朝真崎はにこやかにシュレッダー前の美並に声をかけてきた。「わあ、今日もいっぱいあるんだねえ」「………おはよーご
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**************** 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ
**************** それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか
**************** 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている
**************** 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた
**************** 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前
**************** 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか?」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。
**************** 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸
**************** 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん?」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち
**************** 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと
**************** 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい
**************** 「う~」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん
**************** 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う~……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔
**************** もがいたり逃げたりするかと思っていた伊吹は、抱き竦めても動かなかった。 動けない、ということではない。余分なところに力が入っていない。自分の意志で動こうとしていな
**************** 「………だから見せに来たんですか」「え?」「大輔さんと恵子さんに」「……」 黙り込んだ真崎に、やっぱり、と思った。 ただのイブキの墓参りなら、まっすぐここへ来ればいいだ
**************** 残念ながら、移動先での一休みと食事にはありつけなかった。 周囲を警戒しながら進んでいたはずだが、燃え続けて収まる気配のない『氷の双宮』に皆が気を取られた一瞬、「敵
**************** 大輔は京介が『ぼけ』にかまけて自分と遊ばないとたびたび癇癪を起こしていた。そうして、ある日、『そんなにこいつが大事か』『大ちゃんっ』『こんなちっこいやつが』『やめ
**************** 一群れの軍を制圧した、と言えばいいのだろうか。 戦い方を変えてからは、勝敗はあっさり決した。死屍累々とはまだ早いか、大怪我をしつつ未だ死んでは居ない者も転がる広場
**************** 「ここだよ」 黙って手を繋いだまま山を登って、京介は慣れた場所に辿りつく。「綺麗なところですね」 じっと見ていた伊吹がぽつりと言って、思わず振り向いた。「綺麗? こ
**************** 「シートス!」「隊長!」 周囲に満ちる剣戟の隙間からも、重なり合った2つの声は届いた。その一つが、奇跡的な救いに繋がると感じてシートスは振り返る。炎に彩られた道なき
**************** 「わぁ…」「気に入った?」「いや、気に入ったというか、なんて言うか」 ゆっくり足下に気をつけながら歩いたから、結構な時間が立ったはずだ。 美並が額にうっすら汗を感じ
**************** 何を考えているのか。「私が聞きたいところだ」 冷ややかに嗤いながら、リヒャルティを置き去りに、セシ公は自室から持ち出した紫の布包みを手に、パディスへ馬を走らせ