エターナル・アイズ

『闇を闇から』8.開かれた過去(4)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 新年一週間たって、ようやく美並の気持ちが決まった。 大石となら頑張っていけるかもしれない、温かな笑顔を思い出しながら、そう思った。 年末から連絡はずっとなかったけれ

2025/06/14 00:00

『闇を闇から』8.開かれた過去(3)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ それが、週末、のこと。「手、動いてないわよ」「あ、はい」 石塚に指摘されて、美並は慌てて資料を捲った。 真崎に耳元で囁かれてぼうっとしていたのかと思われるのは恥ずか

2025/06/13 00:00

『闇を闇から』8.開かれた過去(2)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「やあ、おはよう」「……お、はようございます」 翌朝、大あくびをしていたところをまともに大輔に見られて、美並は引きつった。 夕べの衝撃的な真崎の告白がまだ頭に残っている

2025/06/12 00:00

『闇を闇から』8.開かれた過去(1)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 旅先で、夜中に入ってきた真崎はまっすぐ美並の枕元にやってきた。「……伊吹さん」 何かをしかけてくるようなら、力の限り抵抗してやる。 布団の中でこぶしを握り締めていた

2025/06/11 00:00

『闇を闇から』7.マジシャンズ・チョイス(7)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 夜中にまた夢を見た。 押し倒されて首を押さえられる。息ができなくてもがいたとたん、目が覚めた。「は…っ…はっ」 喘ぎながら汗に塗れて目を開けると、見上げたすぐ目の前

2025/06/10 00:00

『闇を闇から』7.マジシャンズ・チョイス(6)

​＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 意外な応えが返って目を見開くと、生真面目な顔で尋ねられた。「イブキは誰の猫なんですか？」 いぶき、は誰のものなんですか。 一瞬そう聞こえて、ことばにならなかった。

2025/06/09 00:00

『闇を闇から』7.マジシャンズ・チョイス(5)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 近付いてくる唇を拒めなかった。 伸び上がって吸いついてくるべったり濡れたそれは強い化粧品の匂いがして、押し倒されてのしかかられて、ぼんやり見上げていたら繰り返し吸

2025/06/08 00:00

『闇を闇から』7.マジシャンズ・チョイス(4)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 一瞬伊吹が来てくれたのかな、と無邪気に思って苦笑する。「京ちゃん？」 ああ、あんたか。 なるほど、そういや来てくれとか言ってたよね、すっかり忘れてたよ。 一人ごち

2025/06/07 00:00

『闇を闇から』7.マジシャンズ・チョイス(3)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 苦しくて、眠れない。 京介は唇をきつく噛み締めて目を閉じる。 布団に必死に潜り込んで、大丈夫だ、大輔はいない、と言い聞かせるのに、身体が納得してくれない。 ずっと

2025/06/06 00:00

『闇を闇から』7.マジシャンズ・チョイス(2)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 何だろう。 何だろう。 更けていく夜に美並はずっと考えている。 何かどこかが妙な感じだ。 真崎の話で行くと、真崎と前後してここから離れた孝はかなり荒れた生活をしてい

2025/06/05 00:00

『闇を闇から』7.マジシャンズ・チョイス(1)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「う～」 頭、痛ー。 眉をしかめる美並の手を引いて、ゆっくり山道を降りながら、真崎は不安そうな顔で覗き込んでくる。「見えるって大変なんだね」 あんなになっちゃうなん

2025/06/04 00:00

『闇を闇から』6.月の下(7)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 抱きたいな。 もう、ほんとに駄目だ、伊吹が抱きたい。 けれど。「う～……頭……いたー」 足下をふらつかせながら歩いている伊吹の手を引きながら京介は振り向く。 伊吹の顔

2025/06/03 00:00

『闇を闇から』6.月の下(6)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ もがいたり逃げたりするかと思っていた伊吹は、抱き竦めても動かなかった。 動けない、ということではない。余分なところに力が入っていない。自分の意志で動こうとしていな

2025/06/02 00:00

『闇を闇から』6.月の下(5)

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 「………だから見せに来たんですか」「え？」「大輔さんと恵子さんに」「……」 黙り込んだ真崎に、やっぱり、と思った。 ただのイブキの墓参りなら、まっすぐここへ来ればいいだ

2025/06/01 00:00