日本には、奈良期頃から遊行僧というものがいた。いわゆる「聖(ひじり)」と呼ばれる人たちである。仏僧の格好はしてはいたが、きちんとした学識があったかどうかは怪しいものである。民間呪術の使い手でもあった彼らは、地方を回りながら祈祷・まじないを行う存在であった。 平安期になり浄土思想の流行によって、彼ら聖の多くは「念仏聖」へとジョブチェンジする。寺院に定住せず、「南無阿弥陀仏」を唱えながら遍歴修行する半僧半俗の存在である。代表的な聖として、平安中期「市聖(いちのひじり)」と呼ばれた空也がいるが、彼は傑出した存在であって、その殆どはもっと怪しげな存在であっただろう。 さて鎌倉期に登場した時衆であるが、…