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義母の短歌 https://okamura920.hatenablog.com

義母が98歳で永眠いたしました。義母が書き溜めた2,000首以上の短歌を少しづつ公開いたします。コメント願えたら幸いです。

定年退職後気ままな半農半X生活をしています。今年傘寿を迎え半農も少しずつ調整中です。

okamura920
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2022/01/18

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  • #727-740 物体の・・・

    関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌> 物体のごとく伸びいる脚四本工夫は午を深く眠れり 被写体となりて砂丘に立つ駱駝燥けるまなこの視線を逸らす 観光バスに調子外れの歌唱う男の心本日晴天 地の窪みに残る雨水濁りいてそこを世界と遊ぶ水蜘蛛 垂乳根の胎内にいるやすらぎに視界狭めて畑にくぐまる 凡庸に過ぐるがひとりの保身術心平らに畑打ちて足る 酔う人の足に程よき月明かり濁声ともに影吸われゆく ひと日経て死者の瞼の濃き翳り斯くて釘打つ終焉は来る 娘の来りひと刻愉しむ厨ごと女に還るガスの火燃ゆる 何喰わぬ貌もて生きる七十歳夜叉も仏も身に棲まわせて 目を凝らす闇にうつそみ抜けいでて紡徨う魂か蛍光…

  • #713-726 こと切れし・・・

    手製の松本みさ枝歌集(三) <短歌集(二)の掲載を終えて>昨日までに、義母の手作り短歌集(二)に蒐集された280句の掲載を終わりました。これらの短歌は平成7年(1995年)の春から夏に詠まれたものと思います。引き続き今日からは短歌集(三)に蒐集されている短歌を順次掲載していきます。 平成4年からご指導いただいた久後地平先生が、平成7年にお亡くなりになりました。この短歌集(三)の巻頭に、ー久後地平先生哀悼の歌ーと記載されています。 今後ともこのBlog(義母の短歌)のご愛読をお願いいたします。(管理人記載) <義母の短歌>#713-726 ー久後地平先生哀悼の歌ー こと切れし師の貌さすり手を握り…

  • #701-712 信じられぬ・・・

    関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌>#701-712 信じられぬ思い出ひとつ夫征きわれ牛使いて代掻きしこと 視力ある無上の喜び身に沁みて今日を支える本を選りつつ 朝よりの視界の跡をなぞりゆく昨日と異なる何かがある筈 表戸は施錠のままに昏れんとす天の岩戸か外より開かず しがみつく蝉の抜け殻落とさぬようにいずれ命のなきもの乍ら 骨拾う思いよぎれり山茶花の白きひとひら掌に握りしむ 枕の上に乗せる拳に顎重ね考える葦何も浮かばず 人生は終りを知らぬひとり旅わざわざ汽車に乗らずとも良し 行事表に記すを持たず淘然と写る湯煙にうつつともなし 小暗きに朝刊配る自転車の軋み音凍る霜置く路に 注連飾り…

  • #691-700 割れ硝子・・・

    関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌>#691-700 割れ硝子思わぬ光を陽に反し光を持たぬ吾が眼を射せり 如月の天を荒びて吹く風の絞る雫か頬打つ氷雨 水底に眠る小石に寝返りを打たせて湍る雪の谷川 丸木橋渡る童は風の子吹かるるごと枯れ野に消ゆる 草の灰汁滲むTシャツを身につけてわれ一っ端の農婦に還える 雑草に雑草の春あり魁けて犬のふぐりの泪色に咲く かたつむりにマッチの箱を曳かせては玩具なき子を遊ばせたし 天秤棒かたげぬ日のなき古き農思い起こせば呪いのごとし 雨上がりに合羽脱ぐ間も惜しみいて田の草取る背に熱かりし太陽 事ごとにおなごのくせにと怒鳴りたる舅も老いては穏やかなりし <管…

  • #681-690 ビラに笑む・・・

    関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌>#681-690 ビラに笑む瀟洒に装う美男美女燃やせば炎となりて天界を行く 目に馴染みの山を見上げ五十年やさしきものはことばを持たず 日月もとどかず深く死者眠る土を犯して雨降り沈む 夫婦とは元は他人と人は言う逝かれてみれば替わるものなし 過去持たぬみどり児何を夢みるか笑まう唇によだれの透りて こりこりと手応えのある蕗の薹親株より摘む罪のごと摘む 昏れ際の水面きららに活きづきてうねり昴まる流れ膨らむ 闇のなか闇より濃ゆき庭松の翳り起たせて明日に対える 頁繰るはざまの羽虫鮮明に手脚伸して冬の終焉 敷妙の央地がなかに降る雪の天にし舞えばかそか彩持つ …

  • #671-680 わくら葉を・・・

    関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 <義母の短歌>#671-680 わくら葉をかぶれる魚も抱くならん冬の川面の蒼の窮まり ぐるぐると感情線は裡めぐり胃のあたりより哀しみは涌く 独りにも新年は来る隣家の餅搗く音にむらぎも冴ゆる 桧葉は桧の匂いの音たてて爆ぜまっとうす灰になるまで 亡き人の残せる古き鍵の束夢のひとつも隠れておらぬか 硝子戸に写る吾が身は透明体通り抜けゆく二人三人 山繭の淡きみどりにこもらへる刻が揺れいる冬のもみぢに 何刻む包丁かとも刻かけて研ぐ刃が冷たき光を反す 「今日はお婆ァが居らんのや」笑む老い人が華やぎてみゆ 東北弁耳尖らせて聴くわれは受話器を握り片目を瞑れり <管理人のおま…

  • #661-670 ゆく先を・・・

    関西花の寺25ケ所 第6番 隆国寺 ご朱印 <今日からの写真> 平成14年7月に訪れた、関西花の寺 第6番 隆国寺の写真を掲載いたします。 公式ホームページは http://ryukoku-ji.com/ を参照ください。 <義母の短歌>#661-670 ゆく先を持てるごとくに蜘蛛糸をつたいて垂れる雫の痛み 風に撓み雨に敲かるくも糸の蜘蛛は見えずて露きららなり 軒と屋根重なる狭間の真上過ぐ鈍色冬鳥はいづくともなし 戻り来て峡に仰げる月親し椿静けく凍らんとする 夜なべする母の占めいるひとつ灯に宿題解くも楽しかりしが ことごとく葉の散り尽くす裸木はよろうことなき老境に似る 吊り革を握るてのひら交々…

  • #651-660 へだてなく・・・

    関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#651-660 へだてなく太陽は輝り野良猫は手脚ほどきて眠り呆ける 聞き馴れぬ獣の呻き闇をゆく応えなき人の棲む彼方にて 争いて尖れる声もややに笑む独りにあらぬ若夫婦の会話 売り出しのスーパーに来て漠然と華やぐ彩のなかを泳げり 移り香のすでに失せたるヘルメット車庫の出入りの度びに目を遣る 雄を食む性癖の顎許されてかまきりの腹いよいよ太し 吾が畑に投げ捨てらるる空缶を蹴り上ぐる馬鹿元にころがる 夕茜とどかぬ芒の陰に居て畑打つ翁は明治生まれなり 未知映すカーブミラーに影のさし忽ち迫る巨体トラック 刃物屋の無愛想な髭親父笑わぬことが舗の看板 <管理人…

  • #641-650 瞑る眼に・・・

    関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#641-650 瞑る眼に己が自在の古家は累々と起つ低屋ながらに 此の影が我のものかやすんなりと月を背にして長きが愉し 天を指す銀杏黄葉の真盛りにゆらめき靡く落ち葉焼く煙り 明けきらぬ窓に鴉のしゃがれ声からすには鴉の愛のあるべし ひび割れるひとつの生きを置き去りに米研ぐ水は澄きて溢るる せせらぎに垂るるもみぢの美しやけし冬菜を洗う媼も去れり 往く先々落ち葉裸か木枯れすすき夕暗の道雨にけぶらう 吹く風のうねりに身を揉むもみぢ葉のざわっーと寒く岸になだるる うすら陽に残る力をふり絞り咲かんとすらし花魁草なおも 物を煮る匂いを亡夫はよろこべり湯気ぐも…

  • #631-640 開店を待つ・・・

    関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#631-640 開店を待つ駐車場広々と水蜘蛛の遊ぶにわたずみを持つ 吹く風のうねりに生るる彩山の折り伏し川を越えて迫り来 売り出しに満車となりいる駐車場ここには枯れ野の匂いがしない うるおえる花も実もなき家裏にも季はあるなり落ち葉掃き寄せる じんわりと山肌滲む地下水を土の泪と寒に視つむる 商人の世辞をまともに聞く程若くはあらず雨宿りの舗 ピエロ役こなしてわれの人前にほがらほがらとやがて寂しく たくましき男等画面を闊歩する刑事ドラマのひとりを視つむ みどり児は母の腕にビードロの柔き唇溶けて眠れる 矢はすでに弦を離れて的遙か浜田歌集を声上げて読む…

  • #621-630 喜びも・・・

    関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#621-630 喜びもはた悲しみも稀まれに田の字の型の部屋ぬち平穏 人は皆いづくを指すや渋滞のなかのひとりに我が行く方も 電線も途切れてここより墓参道風渉る音父母の呼ぶ音 我が魂の浮遊しはじむ涙腺の弛まん朝を雨降り止まず 朽葉踏む音聴き止めて振り返る人にはあらず腹を擦る猫 戻り来て厨にたてり紋平よりいのこづち散る板間の寂に 風圧にあうられ走る車にて私の残生も煽られている 待つのみの古きおみなを連想す直立のまま黄ばむ半夏生 軍手とう名も消え残る手袋の白きに泥のなお染みており 内裏雛の簪色に山椒の赤実は揺れて雀を待てり <管理人のおまけ> ぬち(…

  • #611-620 聞く耳・・・

    関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#611-620 聞く耳持たねば言葉もただに音に聴く人の背かなしくてならず 羽をもて撫ずらるるごときよ独り棲む我れに寂しくなきかと問うは 遠足に人と離れて妹と貧しき弁当食みしを忘れず 饒舌の女が聴き手に廻りいて受話器置くとき溜め息を吐く 川上を見やれば亡夫が帽振りて戻り来るような空の青さに 聞き慣れる欝の字枠に収まれり飼い馴らしゆくペットの如く 庭石の揺がざるごと頼もしくも見ゆれ魂など絶対になし 派手かなと置くブラウスを同年輩の色白の女求めゆきたり 野の戻り汗の肌着の冷えしるくひと足ひと足に体温奪う バランスの崩れて危うき一輪車ひと世の翳りを曳…

  • #601-610 コトコトと・・・

    関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#601-610 コトコトとおくらを刻む俎板のかそか凹むにもひとり馴染みて 梅干しの紅にじむ白飯にたまゆら浮かぶ父の弁当 我がともす明かりの破片窓にこぼれあるかなきかの温み地を這う 下校の児乗せやればはなやぐ第一声「オバちゃん運転うまいね」 山葡萄の斑に実る不犯の垂れふふめば原始の酢ゆきひと粒 そこはかとなつかしくあるTシャツに残る体温のまだ仄かなり 花柄のシャツの少年髪赤くむなしきままに空缶を蹴る パントマイムか否かふと疑念す思いつくまま吾が動く影 欲るものは食パンのみに人群を惹かるるメダカのごとく従きゆく 貌の相に和みのありと人言えり翳り持…

  • #591-600 並び起つ・・・

    関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 <義母の短歌>#591-600 並び起つ若竹の葉を縫うひかり夏の青さに泪さしぐむ 横切れる仔猫不意にふりかえる戻る巣のある確かなまなこ 此の峡に命与けて悔ゆるなし耳朶に親しき瀬音ひびきて 手をあげて便乗したる軽トラックにかそかにあらぬ牛糞臭う 率くものも追うものもなき我が常を奥処にたたみ野良着に替える 裏庭を風渉るときポリバケツ後追う如く音立てまろぶ チリチリと侘しき音を確かめるバックのなかの小さき鍵の 山襞に煙りは直ぐにたちのぼり人住むことをやわやわと告ぐ 岩つつく鮎のひと群れ目に促う刻のゆるゆる流るる真午 酔芙蓉地に落つる間のたまゆらを見たり看取りし後の…

  • #581-590 学ばせたしと・・・

    関西花の寺25ケ所 第5番 高照寺 御朱印 <今日からの写真> 平成14年7月に訪れた、関西花の寺第5番高照寺の写真を掲載いたします。 公式ホームページは http://koosyoji.sakura.ne.jp/ を参照ください。 <義母の短歌>#581-590 学ばせたしと呟くごとく言い呉し俯向ける母を今も忘れず 野に草を食むことのなき乳牛の物怖じもせぬ目はつぶらなり 朝顔のくれない写す溜まり池うすきいのちを尾鰭がゆらす 汗匂う野良着を脱ぎて変り身の歩みを運ぶ白きサンダル 手もて廻す発動機にゆく木炭車の在りし日茫々と眼裏残像 カナカナのひとしきり啼く音絶えて陽は傾けり燃えつきるがごと Tシ…

  • #571-580 かたつむり・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#571-580 かたつむり行きつく先を住まいとし振り向きもせずわれも独りぞ 傾く樋たぎり落つ雨足のいよいよ侘し暮れてゆく軒 旬という言葉を添えて差し出す産毛の露の乾かぬわらび 吹く風に背中衝かれて戻る道鍬を逆さに杖突きながら 脅えつつ表戸繰れば雨傘のコトコト揺れが干されたるまま 鎌置きて腰を下ろすもひとりなり山の静寂に膝を抱くも 出口なき洞に吹き溜まる風の息わくら葉ひとつ陽の隅にあり 三段池に番の家鴉睦み合う離るる一羽目を瞑りいる 懸命に手話にて語る人に対いうなずく女のやわらかき笑み 桃食べに来よという友は乳癌の手術なせりとさりげなく言う <…

  • #561-570 梅雨晴れの

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#561-570 梅雨晴れの厳しき照りにしとどなる汗の短駆の影を歩ます つづまりはひとりの家に安らぐと雑踏ゆ戻り湯桶に流す 音もなく降る雨のなか紫陽花の大きにかくれ人等うごめく もの言わぬ人を肌えに抱く夢の醒めては冷たき腕のしびれ 午後往くと木株に置き来て雨の二日鎌と鋸の錆びておらんか ささやかな木にささやかな実をつけて花咲き継げり伏見唐辛子 煌々と明かりをともす厨辺にとろり流れるカレーを掬う 人工の池に金魚の口あけて我が呟きを吸いてもぐりゆく 見舞われしことなき幸を思いつつ病院の扉見舞う為押す 折々に異なる唸り伝えくるこの扇風機二十五年経つ …

  • #551-560 二瀬川に・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌> 二瀬川に脚濯ぎたる鬼の子もあるべししんしんと渓流は澄む 杉の秀に昼蛍かと光る露こえ登りくる天の岩戸に 谷深き天の岩戸に人声のたちてさざめく泉ならなくに 夜の更けに無言電話かけてくる侘しき人よガム噛むらしき 四分の三の人生越え来たり明日食ぶる一合をきしきしと研ぐ 十年を花なき黄藤と思いおり咲きたる証の葵揺れており 冷えびえとどくだみの咲く家の蔭しろ濁るまでの命を見守る 鋸を使いし日の宵つくづくと男手欲しく夕餉を欲らぬ 咲く花の側よりすれば鋏持つ姿を鬼と見てをるならめ 燃えぬ芥捨てて帰るさ行交える人も独り居小さき袋 <管理人のおまけ> 濯(すす)…

  • #541-550 皇太子・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#541-550 皇太子ご婚儀の午を墓に来て華やぎに遠くひとり草引く 柚子花に万匹の蜂群がりて羽音の唸り棒状に落つ からすの芋鴉の豌豆からす瓜嫌な鴉に人らは近き O型の貴方はけろり天国で酒もたばこも自由でしょうね 我を待つ家ありき戸口の親しさや崩るるごとく身を横たえる 気のおけぬ妹夫婦と汲む酒に纏うことなくいたく酔いたり 幼日は我にもありぬ草分けて野苺摘めばほろほろ濡れる 信楽の急須に新茶汲みをれどなにも変わらぬひとりの夕べ 雨の日は押し黙りいる術なさに開き初めたる紅百合の花 車より下りる足裏にかたつむり踏みたる触感曳きつつ歩む <管理人のおま…

  • #531-540 投稿の・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#531-540 投稿のハガキ一枚ためらうにあっさりと呑むずん胴ポスト 誘わるる如く来たりてぽつねんと座るベンチの冷え固かりき おんぶに抱っこ纏りつきし孫達が囲みて言えり「おバァちゃんちっこい」 汝の齢には二人の子持つ母なりき短パンの脚長き女孫よ 川隔て昼間見るなき向う家の木の間隠れの灯が呼びかける 自己主張するか鴉等杉の秀に異なる声に啼きたつるなり 生活のどこかが古ぶネジひとつ畳に拾う何のネジか知らず クラクション鳴らして挨拶送りくる野辺の交わりほのぼの温し 野にありて戻りて口をひらくなし洗濯物の匂うをたたむ 帰省せし嫁にゆだねる台所我が常な…

  • #521-530 農の行く・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#521-530 農の行く先かたみに論じらるるなか存在感なく身を置きており 新生児いまか生まれるがに春蘭の柔毛の蕾土持ち上ぐる とみこうみ腰をかがめて見極める花びらの芯ささやき持てり 枯れてゆく脈とる医師の目礼に頭蓋はしろき塊となる 夜半過ぎて逢いも久しき男の孫の大人の貌と交わす冷酒 俱にある時きざまれゆくいらだちに目醒めをうながすコーヒー匂う 此の橋をゆこか戻ろか散歩みち独りに見上ぐるたもとの桜 招かれて広き河原に石くれの瀬音聴きつつ村仕事終ゆ ヘッドライトに煌めく道路息つめて濡れてしとどの狭間をかえる 滅多には動ぜぬドラマに泣かされて今宵は…

  • #511-520 風の径・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#511-520 風の径さけて憩える陽溜りに誰待つとなく刻流れゆく ウインドの己が姿に眼を反らしこごみて探す春の花鉢 ふと想う下降の終の安らぎかエスカレーターに運ばるるとき 孵らざる卵を抱きて瞑りおり東天紅に声なく母の日 ひと組の肌着の渦の洗濯機目盛り通りの刻を動けり すれ違う人は他人の匂いする不意に背筋を伸ばして歩く 雪明りあつめるガラスのテーブルに細く影曳く水仙孤独 引取りては貰えぬ芥の脱穀機野曝しのまま四とせを座わる ひといろに枯れ葦すだれとたつ河原煩悩払う石塊のなか 戦いの日々に短き青春過ぎ流さるるごとく母となりにし <管理人のおまけ>…

  • #501-510 温風機・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#501-510 温風機切ればたちまち襲いくる寂涼に騒だつ耳底の声 籠るにもほとほと飽きて冬日中素手のしびれるまでを草引く 一尺の糸も無駄なく使いたりし七十年を反古には出来ず 腹筋の躍動おろかこみあげるこんな笑いが残っていたか ゆくときの歩幅が示す衰えを見乍ら戻る雪の坂道 Uターンの中学生がひとりゆく自転車の背に揺れる反骨 今日街へ出でてゆかんか書読むかパン焼くしばしの小さき惑い 哀れあわれと覗く鳥もなし長閑けくも炬燵にまどろみ醒めぬ 自転車の空気はいつも抜けている納屋に置かれる古き分身 掛け違いしボタンひとつのずれを知る「しらがに籾」の身に滲…

  • #491-500 川岸の・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#491-500 川岸の拓かれて陽を浴ぶ幾つ岩なかに寄りあう夫婦岩あり 水底に尺余すなる大鯰ゆらり影曳く寒中の泳 終駅にも似たる吾が背かかたえより旅人のごとく子等発ちてゆく 三戸五戸小聚落のちりぢりに一戸をひらく女あるしぞ 霜柱踏めば崩るる音かそか消えゆくものを足裏に覚ゆ 命の火いのちの刻がぢりぢりと雨に研がれて捲きとられてゆく 手放せるわが田のあとのひこ生えを褐色の風はげしく揺らす にわたずみ濁れるままに写しいる立看板のそよろの濁り 常小屋に初めて視たるトーキー映写は荒木陸相の演説なりき 臘梅の透ける花片臈たけて剪らむとする掌にこぼれ落つ蕾 …

  • #481-490 眺めやる・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#481-490 眺めやる峰のたたずみ唯ひそか四季を描きて彩は移ろう 堆く掻き寄するわくら葉灰にして土に還さん緑にかえれ 外灯を透かしてみれば尚寒し闇に細かき雪降り止まず 月の径何やら駆けくる気配して動かず佇てり地の風の音 班陽の庭石に揺れ風寒し人も揺れいて足早に過ぐ 古ゆ蒼き流れに研がれ来て角ある岩の見えぬ二瀬川 金銀をかすめて帰路の一服に鬼も此の水汲みしと思う 此の路を鬼駆け下りしかゆく先の渓深くして茶店など無し 茶はゆるりと呑むべかりけり九十まで在りて座しいし父も然りき 茄子の葉もて繭を繰り糸を引く古きを辿る刻をいとしむ <管理人のおまけ…

  • #471-480 為すべきを・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#471-480 為すべきをひとつ余して昏れなずむ窓にかそかなる焦りゆらめく 葉牡丹の紅に積む雪払いやり蕊より生きるる生気溢るる 育てたる馬鈴薯にあらず徒生えの摂理に実るを堀り上ぐ感謝 乙女とはまだよべざりし十三才紡ぎたる工場の窓破れしまま ワゴン車のミラーに己が姿見て遊ぶ鴉の数分を居たる 自らの眼が染みゆくか枯れ色の山も草木も耀よいて写る 農為さぬ我に黒豆賜いたる老いこそ侘し独り居五年 ひたぶるに和紙漉く人の掌の業に刻さかのぼる遥か移り夜 乳牛の牡に生まれし宿命によろめく仔牛いずく運るる 里に古りて残る一棟の物置へ吾が脚誘う父母の幻 <管理人…

  • #461-470 抱かれて・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#461-470 抱かれて帰りし幼の残し置く小さな靴の静かな存在 ひと足の歩みがなかに取り落とすふたつ転げし湯呑みが睨む 亡夫の席そのまま空けて変うるなしテレビ斜めにひとりみている 夫ありてうからはらから民宿に蟹食みし日のありひとり蟹焼く 降りしきる雪に視界のしんとして新聞配達の足跡も消ゆ 黄昏の雪を運び来啾啾と音なき夜を耳盲のごと 掌に受くる雪束の間に露となり帰らぬものがお指こぼるる 真蒼なる水の底辺に沈もれる芥のつぶやき我が独り言 流れゆく雲を写せる潦おさなの投げる石に砕ける コーヒーの香り漂う厨変わらぬコースのパン皿運ぶ <管理人のおまけ…

  • #451-460 闇に灯る・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#451-460 闇に灯る膝の車の免許証村田教官厳しかりしよ 彼の谷に三椏咲くと聞きしより登れぬ山の見えぬ花みる 竹藪に囲まる峡に竿売りの生業の声虚しく過ぎぬ 生くる身が今カルシュウム欲る故に常に好まぬ干魚を焼く 臥す虎の姿に似たる奇岩石夜毎せせらぎを干すにあらずか 昼と夜の狭間の山に風もなし刻止まるがに樹木の動かぬ 渦捲ける底いに静寂のありと言う身の揺れるまま揺れて佇ちおり 床下に野良猫するりと消え失せぬ猫には猫の先のある闇 無意識にポケットの鍵もて遊ぶひとりに憩うスーパーの椅子 岩萌え道賃運びする炭焼きの荷重たかりき子育ての頃 <管理人のお…

  • #441-450

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 <義母の短歌>#441-450 この鎖外せば犬は真先に何を為すかとふとも思えり 指程の虫に逃げ出す幼子が靴音たてて蟻追いまわす 吾が棲みて子に戻れとは言い難し老いの昂ぶる事もなき峡 のうのうと意のまま生くる折りふしを逝きたる人に詫ぶるなるべし 枯れ枝もくらしの芥も火に入れてひとつの区切りさばさばと起つ 国境を越えて芽生えし南瓜苗馴染み実るか日本の土に 藪椿の落花に描く点々の踏み難き色に一花を拾う 冬眠の醒めて陽の下の雨蛙まなこ虚ろに動くともなし 雪の彼岸のたこ焼き屋台も無口なり声を落としてひと舟を買う 七十路の目にたり花の蕊濡れて愁い深かり無気には剪らず <…

  • 短歌集(一)の掲載を終えて

    義母の手作り短歌集(二) <短歌集(一)の掲載を終えて> 昨日までに、義母の手作り短歌集(一)に蒐集された432句の掲載を終わりました。これらの短歌は平成6年(1994年)の秋から冬に詠まれたものと思います。 引き続き今日からは短歌集(二)に蒐集されている短歌を順次掲載していきます。 今後ともこのBlog(義母の短歌)のご愛読をお願いいたします。 <義母の短歌>#433-440 欠伸して背筋伸ばせば人並みの体型写すウインドウ硝子 夜をこめて雪婆地上を浄めたり此の煌きを猫も走るな 踏み切りを超すもの待つもの数分に大きく変わる人歩みいる 繋がれてひとつの生きの物憂げに尾を振らぬ犬他人のわれに 月と…

  • #421-432 草木みな・・・

    関西花の寺25ケ所 第4番 高源寺 御朱印 <Top写真> 今日から写真を関西花の寺25ケ所 第4番高源寺とします。 公式ホームページは、http://www.kougenji-tanba.or.jp/ をご覧ください。 <義母の短歌>#421-432 草木みな朽ちるにあらで葉を落とす目覚めて欲しき人の幾たり 子の帰路の景色浮かべ刻はかり車の音の度に顔上ぐ 案ずるなと言葉に出さず子に伝え澄ましてかむる赤茶のベレー 訪う人の指かと思う友が家の玻りに映れる笹の葉の揺れ 我が涙こぼれる間は生きていて欲しと子はいたわりを熱く伝える 我が頭上一尺高き子の声が星の名称語りくれいる 人波のあふれて孤独の街中…

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