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  • 心の壁を取っぱらえ!『透明なルール』(佐藤 いつ子)

    自分の才能を恨んだ。普通でいいのに。普通がいいのに。(本文より) 『真実の口』とこの本は外せないっしょ。 明日発売の今期最注目といえる新作だよ。 おとなし目の主人公が、あれよあれよと 一軍女子グループに取込まれ無理するが やがてほころびが広がっていくんだわ~。 超名門校から転校してきたギフテッドの 苦悩みたいなテーマも盛り込まれている。 かなり道徳的な要素が濃い目な物語だし 作問する側としては選びやすそうな印象。 特にリボンパート、学級会パートがよく 他にも使えそうな箇所が山盛りって感じ。 今ならかなりのためし読みが可能なので 気になったらチェックするといいだろう。 文章難易度は中学入試では標…

  • 挑戦に欠かせないもの『マジックに出会って ぼくは生まれた』(涌井 学)

    大丈夫。落ち着いてるよ。今の僕の全力を、完全に出し切ってみせるから。(本文より) 新作ではないが素晴らし過ぎるので紹介。 昨年の品川女子学院で使われた作品だよ。 伝記ベースなので素材で扱いにくいかと 思っていたが予想は大ハズレだったわ~。 優れた物語に必要な要素が全てある印象。 これは滅多に見られないほどの優良素材。 友人たちと進路に悩むシーンであるとか、 打ちのめされた時の思わぬ檄であるとか、 不幸になりにくい人生を推奨される場面、 はるかな目標をもつ少女との交流なども。 品女の先生、よくこんなの見つけたな~。 大袈裟でなくローティーン必修にしたい。 俺のレビューはこんなにも前のめりだよ。 …

  • 意表を突く展開の『天国からの宅配便 時を越える約束』(柊 サナカ)

    やはりわたしは、数学が好きなんだ。一度しかない人生の中で、そういうものを見つけられたことはよかったと思う。(本文より) 『天国からの宅配便』シリーズ1作目は たしか前に栄東の素材文になってたはず。 今回紹介するのは本日発売の3作目だよ。 この作品は2作目にずば抜けていい話が あるので、そっちも薦めてみたいところ。 短編集だがそれぞれが独立した話なので どこから読みはじめても大丈夫ではある。 今作で特に注目したいのは高校生の話だ。 『食堂ミツコ最後の日』って短編だけど うしろめたさを抱える水球部員の少女が 思いがけないギフトに戸惑うって筋書き。 この話はニヤリとできて後味も良いよ~。 ほかの大人…

  • 想像力は無限大『かなたのif』(村上 雅郁)

    「友だちの助けに、なってあげなさい」ぼくはうなづいた。それ以上、大事なことなんて、きっとこの世界にはないもんね。(本文より) 先月開催の四谷大塚の入試報告会の席上、 ホールを埋め尽くす受験生の父母の前で 大スクリーンに映し出された本があった。 それが『きみの話を聞かせてくれよ』だ。 今年少なくとも15校で出たこの前作で 一躍ときの人になった著者の2ヶ月後に 発売される予定の本を今日は紹介するよ。 文章難度は例の分類だと平易になるから 小5なら十分に読めそうな間口の広さだ。 素材文適性が高そうなシーンもあったよ。 一例を挙げると、5章の後半にかけて等。 ネタバレで台無しにしたくなかったので レビ…

  • スポーツの見方が変わりそうな『鳥人王』(額賀 澪)

    最初に目指したものが実は自分には向いていなかった、なんて人間の方が大半なんだから、そこからの身の振り方が人生の見せどころだ。(本文より) たまに入試に出る作家の2月に出た本だ。 棒高跳びを描いた極めて珍しい作品だよ。 関心ゼロの題材だし大丈夫か心配したが 読み始めたら止まれなくなっちまったわ。 気づけば競技の映像なんかも見ていたよ。 やっぱしこの先生のスポーツものはイイ。 国語素材になりそうな箇所は多くないが この著者は『競歩王』も使われていたし めっちゃオモロ熱いんで薦めたい本だよ。 難易度は例の分類でやや難になる本作の マイレビューのカケラはこんなんですわ。 さえない芸人がバラエティ番組の…

  • アクが強い、強すぎる?『サクラサク、サクラチル』(辻堂 ゆめ)

    二つ違いの姉は、かつて、両親の自慢の娘だった。中学受験で第一志望校に受かり、両親を喜ばせた。(本文より) 名作『山ぎは少し明かりて』の著者の本。 毒親に東大合格を強要される少年の話を 東大出身の実力派作家がどう描くのか? 関心があって手にしたのがこの作品だよ。 教育虐待しまくりの話だから小学生NG。 中学生ならギリOKといったところかな。 親世代にも学びがある本だと俺は感じた。 主人公の親にはまったく共感できないが、 反面教師としてはとびきり優秀だからよ。 俺のレビューの終わりの方はこんな感じ。 一部の描写を胸糞悪いと感じる向きがあるかもしれませんが、程度の差こそあれ、子どもをトロフィーにした…

  • どこまでも響け、そのメロディー『うたう』(小野寺 史宜)

    わたしもこの数年で学んだわけ。牛後のときは重かったけどね、鶏口になると動きは軽いのよ。(本文より) 音楽にかかわる4人の男女が描かれてる たまに入試に出る作家の2月の新作だよ。 夢を応援する妻とか、人気者の先輩とか 登場する一人ひとりの魅力がヤバすぎる。 この先生、人情を描かせると最っ強だわ。 いい人のふるまいってのが胸に迫るよ~。 で、しょーもないキャラもいい味をだす。 なんだコイツと思ったのが変わっていく。 それなりの年でも成長していけるんだな。 自分にも何かできるかもって気になるよ。 この作品は難易度ではやや難しいんだが 中学生女子を描く最初の章は読みやすく ここに限り中学入試の出題標準…

  • 心がほぐれてゆく一冊『学校に行かない僕の学校』(尾崎 英子)

    今の学校は、考える前に与えすぎてるんやと、俺は思う。(本文より) 『きみの鐘が鳴る』で中学受験を描いた 著者の約1ヶ月後に発売される新作だよ。 これは多様な価値観を体感させてくれる。 今が辛い子どもたちに届いて欲しい本だ。 国語素材文としてもかなり面白いだろう。 特に名門校に入り壁にぶつかった少女と 主人公の少年との会話シーンが使えそう。 タイトル的に扱いづらいかも知れないが よさげな場面が複数あり素材適性は高め。 きみ鐘も複数校で出てたし要注目だろう。 文章レベルはきみ鐘よりちょっと難しい。 まぁ、出題標準レベルといったところだ。 以下、俺の長文レビューを付けておくよ。 主人公は重いトラウマ…

  • 合不合判定テストの国語出典(続 模試に出る作品は当てられる)

    去年の合不合判定テストの物語文だけど 俺がレビューした作品からしか出てない。 一昨年はここまで当たってなんかないし たまたまだが、まぁ数撃ちゃあたるわな。 2023/04/09実施 合不合判定テスト 第一回 『給食アンサンブル2』(如月 かずさ) (2022/10/12発売)(2022/12/10投稿) 2023/07/09実施 合不合判定テスト 第二回 『神無島のウラ』(あさの あつこ) (2023/02/24発売)(2023/04/01投稿) 2023/09/10実施 合不合判定テスト 第三回 『おくることば』(重松 清) (2023/06/26発売)(2023/08/08投稿) 2023…

  • 荒波を超えて『遠い町できみは』(高遠 ちとせ)

    誰かを責めるんじゃない。誰かに誇れるように胸を張ろう。(本文より) 3月14日に出たポプラ社小説新人賞の 特別賞受賞作ってのが今回の紹介本だよ。 海辺の田舎町を舞台にして3人の男女が 小5から中学時代を駆け抜けていく話だ。 過酷な運命にあらがう少年少女の成長と 友情のきらめきってのがまぶしかったよ。 ちょっと児童虐待を描く瞬間があるので 気がかりなら親が先に見ておくのもアリ。 少女の波乗りに少年が圧倒される部分等 素材文適性△な箇所もチラホラな印象だ。 レベル感としてはやや難といったところ。 俺のレビューの一部を以下に付けとくよ。 主人公は都会から来た少年と、地域のはみだし者の少年少女。 大人…

  • しあわせを願う意味『風に立つ』(柚月 裕子)

    恵まれた人生と充実した人生って同じじゃないのかもな。(本文より) ミステリや推理モノで有名な作家の新作。 入試でほぼ見ない先生なんだがこの本は ちょっと使える要素が混じってるんだな。 地域一の進学校に入学したものの問題を 起こし南部鉄器工房に流れてきた少年の 更生に向き合う人びとを描いた小説だよ。 主人公は38歳の職人、少年は16歳だ。 問題少年に関わりたくないと思っていた 主人公がどう変わっていくかに注目だわ。 問題を起こして高校を追い出された彼を 追い詰めたものの正体ってのが驚愕モノ。 ボタンのかけ違いってせつないもんだな。 ま、これは子どもより親が読むべきかも。 書店では一般文芸コーナー…

  • リアルな小学生ライフ『小田くん家は南部せんべい店』(髙森 美由紀)

    冷たい思い出より、温かい思い出の方が涙をこみ上げさせるのは、どうしてなんだろう。(本文より) たま~に出題される作家の先月の新作だ。 地元ならではの名産品作りが家業という 少年の小4~小5のあゆみを描いた物語。 これがまたMAXレベルでエモいんだわ。 人情、友情、家族愛がビシバシ響くから。 かつ素材文適性も極限と言えるほど高い。 途中まで使えそうな箇所をメモしてたが ありすぎて途中からは読むのに没頭した。 とりあえず一章の分だけを羅列しとくよ。 素材文に使えそうなくだり(一章より) 適性○ 教室で課外授業の行き先が決定 適性○ 課外授業での思わぬドタバタ劇 適性◎ 帰宅すると意外な出来事に遭遇…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年4月前後)

    4月の新刊は現在判明分では少な目だが 注目作品が2つあり熱量は圧倒的に多い。 その後にも気になる作品がバンバン来る。 毎度言ってるが、未読の作品が多いんで 多分出題向きじゃないのも混じってるよ。 3/27発売 『スタート』(楠 章子) 子どもの危機に差し伸べられる怪しい手。 4/11発売 ☆先行レビュー済☆ 『真実の口』(いとう みく) 中学生たちが保護した少女はもしかして。 4/17発売 『天国からの宅配便 時を越える約束』(柊 サナカ) 真心があったかい天宅シリーズの三作目。 4/24発売 『透明なルール』(佐藤 いつ子) 一軍ぽさを演じる少女が自分の殻を破る。 5/23発売 『6days…

  • 響け、伝われ、先生の願い『ぼくの色、見つけた!』(志津 栄子)

    ぼくは平気だよ。不自由なんかじゃない。そう伝えたいのにうまく伝えられない。(本文より) 今年の入試で少なくとも3校で出てた 『雪の日にライオンを見に行く』での ちゅうでん児童文学賞大賞受賞により 注目作家の仲間入りした先生の新作だ。 発売日は2ヶ月先の5月下旬の見込み。 同時期に直近のちゅうでん受賞作家の 『ブルーラインから、はるか』も出る。 新旧の大賞作家の本が書店に並ぶよ~。 さて、今作では個性に負い目を感じる 少年が自分の特性を軸に変わってく話。 道徳的要素がちょっと強めな物語だし 先生や司書に好まれやすい気がするよ。 素材文適性の面では少なくとも5つは 使えそうなくだりを見つけたんだけ…

  • 大作家、久々の降臨『ともだち』(椰月 美智子)

    弱いほう、人数が少ない側を大事にするのはわかります。でも、優遇するのは違うと思います。(本文より) 椰月美智子先生は児童文学界の大作家で 旧作が頻出だけどこれは今月発売の新作。 毎日小学生新聞連載作でかなり平易だし 小4あたりでも読めそうな印象だったよ。 クラスに大勢の海外ルーツの子供がいる 一風変わった学校の6年生の日常を描く。 もちろん平穏などではなく荒れまくるよ。 とくに生徒たちの連携で先生が動揺する 場面が俺が見たところでは最注目パート。 素材文適性の面ではなんとも言えないが 後半にかけて魅力ある話が多めだろうな。 俺のレビューの一部を以下に置いとくよ。 国際色豊かな小学校で、おっちょ…

  • 【本気レポート】わたしたちの記念日 ~或るゆる受験女子の誓い~

    日頃のメンタルと受験本番のそれは別物だという言説を目にしたことがあります。 実力を発揮できるかどうかは、当日になってみなければ解らないというのです。 今回紹介するのは直前期にもあっけらかんと「受験が楽しみ」と言ってはばからなかった元気女子。 天性の陽気をまとうムードメーカーは、十二歳の二月に何を見たのでしょうか? ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 人生最悪の日(2022年2月4日) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 私、どこで道を間違ったんだろう。 ソファの隅で膝を抱えたまま考えてしまう。 白すぎるLEDに煌々と照らされた部屋で、さっきから頭の中を同じ言葉がグルグル巡っている。 「こわ…

  • 人間らしさってなんだろう『嘘吹きアンドロイド』(久米 絵美里)

    その時、その瞬間は、真実だった気持ちや言葉も、あとから嘘になることもある。過去の言葉の意味は結局、その人が今をどう生きてるかどうかに左右されるんだ。(本文より) まれに出題される作家の先月発売の新作。 このシリーズは物語で起こる事件により ネットやスマホの問題が自然に学べるよ。 受験に関係なくすすめたくなる一冊だな。 ちなみに、大人の俺にも発見があったわ。 接客ロボットは、見た目とキャラ設定を 子供っぽくしたほうがクレームが出ない みたいな話は特に興味深い話だったわ~。 弱さが愛される理由になるなんて新鮮だ。 確かにガストのロボとか妙にかわいいし。 さて、今作は曲がったことが大きらいな 少女が…

  • 部活動の”三種の神器”『こんな部活あります──ココロの花──華道部&サッカー部』(八束 澄子)

    たまに入試に出る作家の1月の新作だよ。 このタイトルはシリーズ化狙いなのかも。 かなり平易なんで小5でも十分に読める。 尊敬できる先生や、高め合えるライバル、 目標となる先輩などとの出会いを契機に 新入生の男女が変わっていくストーリー。 部活ならではの魅力が凝縮されているよ。 国語の問題文には少女が先生に認められ ますます部活が好きになるエピソードの 周辺などがちょっと使えるかもしれない。 やっぱ尊敬できる人に解って貰えるって 子どもの運命を変える瞬間になるよな~。 また俺のレビューの一部だけ付けとくよ。 主人公は中1の男女。 自分の軸があやふやだった2人が、部活動を通じて憧れの対象を見つけ、…

  • 燦然!これぞ金字塔『カラフル』(阿部 暁子)

    「本当は誰にも迷惑なんてかけたくないよ、私だって」(本文より) 『カラフル』といえば森絵都先生だけど 今回紹介するのは阿部暁子先生の新作だ。 この先生は『パラ・スター』が頻出だな。 今作は車いすユーザーの少女に出会った 高1男子の意識が新生活の中で変化する。 ヒトコトでいえばこんなストーリーだよ。 サラッと書いたがかなり考えさせられる 深みもある物語だからぜひ見て欲しいな。 テーマ注目度、素材文適性はともに◎だ。 希少な優良素材なのは間違いないんだが 児童書ではなく一般文芸カテゴリだから ちょ~っと埋もれやすいような気もする。 何せ書店の一般文芸棚は生存競争が苛烈。 かなり探求心のある問題作成…

  • ボッチに訪れた春『17シーズン 巡るふたりの五七五』(百舌 涼一)

    たった一文字、いや一音にそこまでこだわるのかと音々は驚く。同時に、たった十七音しかないのだから、一音一音にこだわり抜かないといけないのだと悟る。(本文より) 2024年2月に発売されたばかりの本。 出題実績ゼロの児童文学作家の新境地だ。 タイトルで高校生モノと誤解しやすいが 17はおおむね俳句を意味してるんだわ。 で、ストーリーほぼ全てが中学生編だよ。 短歌・俳句扱う作品は入試でわりと出る。 ちょっと思いつくだけでこんだけあるし。 短歌・俳句モノのYA本(出題実績あり) 『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』 『そらのことばが降ってくる: 保健室の俳句会』 『私の空と五七五』 『南風吹く…

  • スーパー校務員の流儀『17歳のビオトープ』(清水 晴木)

    生死に直結しないことに対して、深く悩んで考えられるのは人間に許された贅沢の一つですよ。(本文より) 都立高校入試等で出題実績のある作家の 2023年11月に発売された作品だよ。 人気者の校務員が子どもたちを救う話だ。 校務員がキーマンってなかなか珍しいが キモは授業では触れられない人生論だわ。 これは悩める十代なんかに特に効きそう。 大人にもハッとさせられる部分があるし。 万能校務員の活躍は、どこまでやるのか 面白ネタとして楽しみつつ見て欲しいよ。 それより人生の教科書になる部分がカギ。 しあわせの国ブータンにおける幸福度が インターネットの普及で下がった話では 人と比べることの不幸がよく伝わ…

  • 威風堂々たる『成瀬は信じた道をいく』(宮島 未奈)

    やっぱり、あかりの入試が一筋縄でいくわけないのよ。(本文より) 豊島岡女子や栄東・東大特待での出題で 注目度上昇中の作家のシリーズ二作目だ。 本屋大賞候補作の一作目とともに書店の 目立つ位置を占め続けるのは確実だろう。 つまり、作問者が気づかないわけがない。 今作もスケールの大きい少女が躍動する 楽しさ抜群の作品に仕上がってんだわ~。 全5話の連作短編集だが小4女子視点の 『ときめきっ子タイム』に注目したいな。 本作の中では最も読みやすい短編であり、 それでいて後半の素材文適性が高めだよ。 あとは大学受験編と観光大使編あたりが 適性では△になるけど面白さは抜群だわ。 とくに合格発表のあたりが俺…

  • ラストがヤバイほど沁みる『答えは旅の中にある』(小手鞠 るい)

    「人は死んでも、人の言葉は死なない」(本文より) たまに入試に出る作家の1月の新作だよ。 詩人でもあるためか言葉選びがいいわ~。 冒頭に挙げたフレーズ以外にも百花繚乱。 日本文化が海外でどう見られているか等 米国在住作家だけに未知の話題も多いよ。 つまり、学びがたっぷり盛り込まれてる。 今作は少年と少女の視点で描かれた作品。 彼らが迷いながら自分の求めてる答えに 辿り着こうとあがくストーリーがですわ。 正しさを追い求めようとする流れがよく かっこいい生き方をする大人も魅力だよ。 難易度は普通なので6年生なら読めそう。 以下は俺のレビューからの一部引用なり。 日本にゆかりのある中学生達の人生が旅…

  • エンタメ万歳!『あいにくあんたのためじゃない』(柚木 麻子)

    日本でははっきりした主義主張をすると、必ず大勢の敵を作る。(本文より) この著者は去年、開成で採用があったな。 恵泉女学園を描いた『らんたん』もいい。 さて、本作は極上のエンタメ小説ですわ。 ストレスがたまってたまって限界になり そこから胸のすくような流れに持ってく ジェットコースターみたいな落差が最高。 そうきたかーって叫びたくなる意外性も あるから気持ちいいほどよく騙されるよ。 素材文によさげな箇所は少ないんだけど 弾むようにページが進む楽しい作品だな。 発売日は来月21日で間違いなく書店の 目立つ場所に置かれることになるだろう。 文章の難易度は例の分類で、やや難相当。 以下、出版社に送っ…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年3月前後)

    3月の新刊も現在判明分では少な目かな。 追加でわかったらこの記事に書き足すよ。 毎度言ってるが、未読の作品が多いんで 出題向きじゃないのも多分混じっている。 2/26発売 『なんでもないあの人』(濱野 京子,林 けんじろう,椰月 美智子,昼田 弥子) 『きらいなあの人』(工藤 純子,蓼内 明子,花里 真希,黒川 裕子) 君色パレットシリーズから二冊同時発売。 2/26発売 『カラフル』(阿部 暁子) 高校入学の日、二人は事件を機に出会う。 2/26発売 『17シーズン 巡るふたりの五七五』(百舌 涼一) 俳句で未来を切り開く中学生たちの物語。 2/29発売 ☆先行レビュー済☆ 『さよならミイラ…

  • 鳴りひびく警鐘『となりのきみのクライシス』(濱野 京子)

    子どもの権利を守るのは、大人の責任です。でも、世の中には、いい大人ばかりではありません。(本文より) 割と入試に出る作家の先月発売の新作だ。 思わぬ気づきをくれる異色作という印象。 児童書でここまで子供達に警鐘を鳴らす 作品ってなかなかないんじゃないかな? 何しろ先生の犯罪やらいかれた親やらが 次から次へと出てくるから、さあ大変だ。 一方で、主人公の兄だとか新しい先生が いい役を演じていて救いになっていたよ。 テーマ的に扱いが容易でない素材だけど 素材文適性は中盤以降に少しあるかも? 俺のレビューの始めの方はこんな文章だ。 「子どもが親の責任なんか取れるわけないだろ」という言葉が刺さりました。…

  • ジャケ買いアリの鷗友選書『お菓子の船』(上野 歩)

    いいか、大事なものがあるから、生きる価値が生まれる。おまえたちも生きるに値する大事なものを探せ。(本文より) 鷗友学園での出題を機に出会った良本だ。 お仕事小説なんだが一生懸命な主人公が 力をくれるから幅広い層に薦めたくなる。 海軍時代の祖父のあゆみを追う部分には 思わぬ発見なんかもあってトクした気分。 旧海軍に給糧艦という食糧庫、食品工場、 料理店を兼ねる艦があったなんて初耳だ。 大勢の腕利き職人を乗せてたその軍艦で お菓子も作っていたと知り二度ビックリ。 さらにその船の運命には言葉を失ったよ。 これは平和のありがたみを教えてくれる。 以下、俺のレビューの中盤から一部抜粋。 心に刻まれた亡き…

  • エネルギー溢れる『オランジェット・ダイアリー』(黒川 裕子)

    目標が無いんじゃなくて、目標を作りたくない。かなわないのに、努力するのが怖いだけ。(本文より) 悩める少女の心情がリアルに感じられる たまに出題のある作家の11月の作品だ。 序盤のノリの良さはこの著者の特色だな。 スッと物語に入り込めそうな作りですわ。 主人公からは太陽のように思われていた ガーナハーフの少年の葛藤もみどころだ。 普段何気なく食べていたチョコレートの 原料を作るために危険な手作業がある等 かな~り勉強になる話も詰まっていたな。 国語素材によさげなのは中盤の職場体験、 終盤の祖父の見方が変わるシーンなどか。 平易で小5でも十分読めそうな本作品の 俺が書いたレビューの断片がこれです…

  • 深みも魅力な本郷選書『君が残した贈りもの』(藤本 ひとみ)

    どんな人間も、一つのことに専心すれば自分を超えた何者かになれるかも知れない。(本文より) 毎年のことだが、出題作を追っていくと 未知のいい本に出会えるから嬉しくなる。 これは今年の本郷中入試で使われた作品。 探偵チームKZシリーズの著者が書いた 重厚で読み応えのある青春小説だったわ。 長編だが謎要素を複数織り交ぜてるから 飽きるヒマもないまま一気読みできたよ。 本筋とは離れるけど、野球部の前監督の 卒業後を見据えた教育理念も素晴らしい。 車いすの先輩の願いにも気づきがあった。 KZシリーズの一つだと後から知ったが 過去作品を未読でも何ら問題なかったな。 純粋に楽しみつつ学びも得られましたわ。 …

  • 闇堕ちしないための妙薬『苺飴には毒がある』(砂村 かいり)

    どす黒い感情に巻き込まれたくない。その気持ちを手放したら、人間として何かが終わってしまう気がする。(本文より) たぶん出題実績のない作家の11月の本。 中受界隈では誰も注目してなさそうだわ。 友のハラスメントっていう異色テーマで 入試向けには選びにくそうではあるけど なかなかどうして、これが面白いんだよ。 それでいて、道徳的な良本では扱わない 生きていくうえで必要な知恵が得られる。 頑張ればわかりあえるって価値観なんて 時としてクソの役にも立たないだとかな。 毒をまき散らしまくる幼馴染が邪魔だし 素材文には多分しにくいが強いて使える かもしれない箇所を以下に挙げてみたよ。 微妙に狙い目っぽいく…

  • 雨のちハテナ『彼女たちのバックヤード』(森埜 こみち)

    しんどいときってさ、言いたくもないことを言ったり、したくもないことをしちゃったりすんの。(本文より) たまに出題される作家の1月の新作だよ。 女子中学生3人が主人公の連作短編集で 過去作品よりも選ばれやすそうな印象だ。 序盤に友人関係が荒れるが、それが何を きっかけに変わっていくか見て欲しいな。 素材文適性は3章後半の公園での二人の 会話シーンが◎、4・5章が△、6章は これまた公園が舞台になるあたりが○か。 ラストの7章は無印だが最も心に効いた。 読み終わった瞬間に、すっげえぞコレは な~んて吠えて家族に驚かれちまったわ。 平易で読みやすく後味も素晴らしい本作。 俺のレビューの後半部分はこん…

  • あまりに偉大な長編作品『山ぎは少し明かりて』(辻堂 ゆめ)

    個性も、特技も、肩書も、目標もない。だからこそ、これからの自分次第で、何者にだってなれるんじゃないか。自分が何者か、分からない今が貴重なのだ。(本文より) 今年の桜蔭作品と肩を並べるような大作。 入試では見ない作家の11月発売の本だ。 当然、中受界隈での注目度はゼロだろう。 読友さん達の推奨が激しいんで読んだが いっぺんで重厚さに魅せられちまったよ。 この本に気づける作問者は稀だろうけど 素材文適性はそれなりにありそうですわ。 特に注目したいのは主人公の10歳から 23歳あたりまでを描いている三章序盤。 素材によさそうな三章序盤のシーン △足を負傷し少年に助けられる10歳時 △幻想的な蛍の光が…

  • 新たな知見に満ちた桜蔭選書『百年の藍』(増山 実)

    美しいものが、アメリカの匂いがするというだけで排撃される世の中なんて、狂っています。私は狂っている世の中に合わせるつもりはありません。(本文より) 今年の桜蔭は大人向け重厚作品だったな。 これはサレジオ学院でも使われていたよ。 さっそく読んでみたが小学生は超上級の 読書力がないと序盤で挫折しそうな印象。 それだけ大正から戦間期の描写は難しい。 大人としては十分に楽しめるんだけどな。 六章の男子高校生視点で始まる章などは 舞台が戦後だし割と取っつき易そうかな。 桜蔭で使われた箇所とは違うんだけどよ、 三章と六章に素材文適性がありそうだわ。 特に三章のずっと憧れてたセーラー服を 初めて着る日の話は…

  • その生き様が魅力的な『あけくれの少女』(佐川 光晴)

    大人には大人の事情がある。多少は気になるじゃろうが、子どもは知らん顔をして、よくあそび、よく学べばいい。そして世の中に放りだされても生きのびていけるだけの力を、どうにかして身につけるんじゃ。(本文より父の言葉) 有力な出題候補作の紹介が続いていくよ。 佐川光晴先生は入試でおなじみだよな? 本作品は昨年12月に発売された新作だ。 合理的に考えるクセが身に付いた少女が 心に描く夢に向けて突き進むストーリー。 本人はすんごい頑張るのに環境がヤバイ。 それでも折れずに生き抜く生き様が凄い。 夢のために必死に学んだ英語が身を助け 一生懸命な姿が周囲をも惹きつけていく。 自学力が幸せにつながる点でもいい話…

  • 私たちにできること『真実の口』(いとうみく)

    終了組のみなさまは大変お疲れ様でした。 ゆっくり羽を休め、次に進めるといいな。 紹介本からの2024年入試出題実績は、 引き続き各種情報を元に更新していくよ。 今回は作成中の来年入試向け出典予想で いきなり暫定首位になった作品の話題だ。 ちなみに次点は『リカバリーカバヒコ』。 発売は2ヶ月先の4月9日頃になりそう。 高校生が思わぬ流れで気づきを得ていく。 一言で言っちまうとそんなストーリーだ。 頻出作家が選書ドンピシャの時期に出す 注目テーマの作品としても目が離せない。 のほほんと生きてる坊ちゃん嬢ちゃんに 見とけや!と言いたくなる内容だったな。 かつ大人にも刺さるストーリーなんだわ。 アキラ…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年2月前後)

    2月の新刊はちょっと少な目のようだね。 追加で判明したらこの記事に書き足すよ。 1/30発売 『こんな部活あります──ココロの花──華道部&サッカー部』(八束 澄子) 入学式で運命的な出会いをする少年少女。 2/1発売 『すきなあの人』(神戸 遥真,令丈ヒロ子,少年 アヤ,こまつ あやこ) 多様性を体感する君色パレットシリーズ。 2/13発売 ☆先行レビュー済☆ 『八秒で跳べ』(坪田 侑也) 若き俊英が描いた青春バレーボール小説。 2/26発売 『なんでもないあの人』(濱野 京子,林 けんじろう,椰月 美智子,昼田 弥子) 『きらいなあの人』(工藤 純子,蓼内 明子,花里 真希,黒川 裕子) …

  • おちゃらけドタバタ劇とは違う『キオクがない!』(いとう みく)

    人ってつくづく、経験や体験の上に成り立っていくものなんだと思う。それを失った状態の僕は、僕自身の軸がどこにあるのかがわからない。(本文より) 入試頻出作家が昨年11月に出した新作。 この先生はシリアス作品がよく選ばれる。 本作はエンタメ色が強いと予想してたが、 読んでみたら意外にもシリアス系だった。 記憶を失った少年の苦悩がガチで描かれ 胸にズシリと迫るものがあるんだもんよ。 序盤に提示される謎要素を引っ張るから 読み始めたら多分止まれなくなるだろう。 相手の立場で想像することの大切さなど、 道徳要素が濃い目なのにメッチャ面白い。 説教臭くならずにこれができるところが いとうみく先生の凄いとこ…

  • ジャイアンのかなしみ『神さまのいうとおり』(谷 瑞恵)

    みんな、いろんな壁にぶつかってきているのだから、人並なんて、どこにもない。(本文より) 子どもの受験のときに栄東で出たもんで 慌てて買った本だが当時は読めなかった。 本命の入試まであとわずかだと思ったら 気が急いて文章が頭に入ってこなくてよ、 あのころは本のレビューも書けなかった。 自分自身の受験でもないのに笑えるだろ。 さて、本作は前触れなく複数校で出た本。 風習や言い伝えを残す田舎に越してきた 訳アリ家族を軸に描かれた連作短編集だ。 未知のしきたりやその背景が面白いけど 序盤の不穏さは少し入り込みづらいな~。 素材文適性◎の第三話『猫を配る』から グッと面白くなると俺なんかは感じたわ。 ジ…

  • 切なさ、ここに極まれり『さよならミイラ男』(福田 隆浩)

    どうしてみんなと同じことができないんだろう。小さいころは、そう何度も思った。(本文より) 入試ではあまり見ない作家の来月の新作。 この先生の本は優良図書が多いんだけど あんまし使われない理由はなんだろうね。 今度の作品は過去最高に気に入ったわ~。 家庭に深刻な問題を抱え学校で問題児と みなされる少年があがくストーリーだよ。 いじめられっ子の彼が立ち上がる場面は 涙腺的にも鳥肌的にも、くるものがある。 重いテーマなのに読後感がいいのが凄い。 テストの素材にも使えそうだと感じたわ。 アノ要素の扱いがちょっと難しいんだが そこは逆に作問者の腕の見せどころかな。 今回は俺の先行レビュー全文をあげとく。…

  • さすがの受賞作『夜に星を放つ』(窪 美澄)

    つらい思いをするのはいつも子どもだけれどね。(本文より) 2022年に発売された直木賞受賞作だ。 今更ながらに読んでみて見事にやられた。 傷ついた人々の話だが読むと救われるよ。 実にいい短編がたっぷり詰まってるから。 とくに鉄人会予想『星の随に』は桁違い。 少年の心情をキレイにすくい取ってるし、 素材文適性でいえばまちがいなく◎だよ。 長年愛される作品になるんじゃないかな。 『銀紙色のアンタレス』は少年の慕情が 瑞々しくって素材文適性△という印象だ。 やや難しいがマセた子なら小5でいける。 俺のレビューのカケラはこんな感じだよ。 『夜に星を放つ』感想・レビュー 年代も性別も様々な主人公たちがあ…

  • 戦火のもと、不可能に挑む『タスキ彼方』(額賀 澪)

    自分のことを、小説の主人公だと思い込むんです。すると不思議なもので、自分の意識と体が切り離される感覚がして、緊張せずに言いたいことがすらすら出てくるんですよ。(本文より) たまに入試に出る作家の12月発売の本。 新旧両方の箱根駅伝の魅力を味わえるよ。 特に戦時中のエピソードにはやられたわ。 次から次へと感情を揺さぶる展開がくる。 知っておいて損のない知識も出まくるし これは出来たら読んで欲しいところだよ。 例えば戦時中の甲子園は選手交代が禁止、 なぜなら突撃精神に反するから、とかな。 球場で赤紙が来た観客の名前が放送され 観客が一斉に拍手する慣行もあったそう。 いかに狂った時代だったかがわかる…

  • 学びをトコトン楽しんで『線は、僕を描く』(砥上 裕將)

    成功を目指しながら、数々の失敗を大胆に繰り返すこと。そして、学ぶこと。学ぶことを楽しむこと。失敗からしか学べないことは多いからね。(本文より) わりと入試で出ている2019年の旧作。 旧作の推奨リストに入れなかった理由は 映像化され回避されるかもと感じたから。 けど名作だしせっかくだから紹介しとく。 大変な境遇の青年が、思わぬきっかけで 水墨画の世界に足を踏み入れていく話だ。 人の心の温かさに心を打たれると思うよ。 つらいときに力をくれそうでもあるわ~。 断片だがオレのレビューはこんな感じだ。 心が通い合うことの美しさを教えてくれる作品。 主人公は大きな喪失体験で心が動かなくなった青年です。 …

  • 驚きが止まらない『ずっとそこにいるつもり?』(古矢永 塔子)

    陽キャにばっか愛想笑いして、自分がターゲットにされないように振る舞うだけで精一杯なんですよ。(最終話『まだあの場所にいる』の本文より) 入試では見ない作家の10月の新作だよ。 短編集で大人視点の話が多くて子供には 共感しづらいだろうな~とは思うんだが ひとつ強烈に薦めたい話があったんだわ。 それがラストの『まだあの場所にいる』。 中高一貫校に転校してきた子の生き様が きっと読む人の心をとらえて離さないよ。 不自然な程クラスに馴染み過ぎる少女が 騒動に巻き込まれてどうなるか要注目だ。 ラストシーンの躍動感があまりに強烈な この短編は小学生にも刺さると思うな~。 あとは、子ども食堂に生きがいを感じ…

  • みなぎる活力『風が吹いたり、花が散ったり』(朝倉 宏景)

    なんで、俺たちはもっと器用に生きられないのだろう?(本文より) 『あめつちのうた』が頻出な作家の旧作。 文庫化を機に読んでみたが大当たりだわ。 過ちを犯した少年が負い目を隠しながら 目の不自由な少女のサポート役になって マラソン走破の手助けをするストーリー。 大別すると職場編と競技編になるんだが とくに職場エピソードがエモいんですわ。 しかも競技編の方も胸熱展開になるしよ。 で、それらの話が絡み合っていくもんな。 いやー、楽しく読んで元気までもらった。 これ、作問者の先生は気づかないかな~。 素材文適性も結構あると俺は感じたけど。 以下、満ち足りた俺のレビューから抜粋。 なんて美しい物語なんだ…

  • 短歌少女が駆け抜ける『わたしたちの歌をうたって』(堀 直子)

    稀に出題される作家の2022年の作品。 小4あたりからいけそうなレベル感かな。 つまり紹介本の中ではかなり平易な部類。 オレは軽い気持ちで読み始めたんだけど、 主人公が自分の殻を破る場面で涙目だよ。 泣いてるのがバレないよう必死で堪えた。 これには自分自身が一番驚いちまったな。 マイレビューの序盤は以下に引用しとく。 主人公はクラスで浮いてる小学四年生。気持ちを出していくのが苦手な彼女が、まわりに生意気扱いされる訳アリ転校生の事情に触れ、関わり合う中で、自分の殻を破るきっかけを掴んでいきます。 『わたしたちの歌をうたって』感想・レビュー 短歌×友情(2022年10月)

  • 知識欲までそそられる『はじまりは一冊の本!』(濱野 京子)

    ちがうタイプだからいいのかな、とも思うの。自分には考えつかないようなことを言ったりするから、新鮮っていうか。(本文より) たまに入試に出る作家の昨年9月の新作。 この先生は明日発売の本にも要注目だよ。 今回の紹介する作品の主人公は小6男子。 目標がある級友をまぶしく感じてた彼が、 自身を輝かせるものを見つけていく話だ。 本ができるまでの流れが解りやすくって 小4あたりでもスイスイ読めそうな感じ。 知ることのワクワク感も伝わってくるよ。 しかも、いい終わり方をするんだよな~。 俺のレビューの断片はこんなテイストだ。 本の向こうに著者だけでなく、編集者を含めたさまざまな役割の人々の貢献があると解り…

  • 紹介作品からの出題(2024年度中学入試の国語出典・随時更新)

    相変わらず笑っちゃう程アクセスが無い 寂れ切ったサイトからお知らせしますよ。 俺の情報網では一部しか拾えないんだが、 旧作も含めて紹介本から出た学校のうち、 現時点で判明しているものは以下の通り。 『教室のゴルディロックスゾーン』(こざわ たまこ) 栄東A1 『きみの話を聞かせてくれよ』(村上 雅郁) 栄東A2 『成瀬は天下を取りにいく』(宮島 未奈) 栄東(東大特待) 『街に躍ねる』(川上 佐都) 愛光 『シタマチ・レイクサイド・ロード』 (濱野 京子) 佐久長聖(2回目) 『あと少し、もう少し』(瀬尾 まいこ) 埼玉栄 以上はここでレビューを書いた作品たち。 +++++++++++++++…

  • 決意を胸に『優等生サバイバル: 青春を生き抜く13の法則』(ファン・ヨンミ)

    プレッシャーもかけすぎると逆効果だよな。大人はそういうところをわかってない。(本文より) 海外作品はそれほど頻出にはならないが 去年の『5番レーン』みたいに複数校で 出題された韓国文学なんかもあるからな。 今回紹介するのは昨年7月に発売された 韓国の進学校の青春を扱った作品ですわ。 サバイバルって題名にいい印象がなくて 軽い気持ちで読み始めたがこれがアタリ。 俺は主人公の熱い決意が気に入ったよ! 成績のことで悩む子が何人も出てくるし 受験生には特に刺さりそうな作品だな~。 様々な解決策があり参考にもなるだろう。 主人公は討論するクラブに入っているが そこでの会話にも気づきが多いんですわ。 自分…

  • 可能性を無駄にしないために『毒をもって僕らは』(冬野 岬)

    昨年3月発売のポプラ社小説新人賞作品。 少年視点の物語だけど、中学受験界隈で 話題になっていないのはダークさゆえか。 いじめの凄惨さなんかちょっと引くもん。 主人公の心情の危うさも教科書的でなく そこが読者を惹きこむ要因でもありそう。 毒が強く素材文適性はあんまりないけど 読みだすと怖いもの見たさで一気だろう。 俺のブックレビューはこう締めくくった。 驚かされ、そうきたか!と膝を打つものもあれば、私の感性が追いつかない部分も少々。ともあれ、響いてくるものは確かにあり、時間を忘れ読み耽りました。 安っぽい感傷をバッサリ切り捨てるくだりは特にド迫力! 持てる可能性を無駄にしないために何ができるのか…

  • 少年の本気度『アオナギの巣立つ森では』(にしがき ようこ)

    身近にある物を見直すきっかけになる本。 たまに出題される作家の10月の作品だ。 素材文適性はそれなりにありそうな印象。 文章難易度は5年生でも読める水準だよ。 オオタカや刀鍛冶がいる土地が舞台ゆえ 非日常な暮らしぶりが新鮮に映るだろう。 自然界と人の身勝手さの相克も見どころ。 目標を見つけて目の色が変わる主人公に 読んでるこちらまで影響されそうな物語。 俺のレビューの内容紹介パートがこれだ。 主人公は本気になれるものが何もない小学6年生。まわりの子との温度差に焦りを抱いていた彼が、夢に真っ直ぐな少女や、世にも珍しい生き物などと関わるなかで、とことん熱くなれる道を見つけていくストーリーです。 『…

  • 弓の素晴らしさも伝わってくる『たまごを持つように』(まはら 三桃)

    一歩一歩しか歩けないのなら、長い間歩いていればいい。(本文より) 2009年に出た優先度Aランクの旧作。 これも長年にわたり愛されてきた小説だ。 努力し続けることの大切さを訴えかける 青春小説なんであらゆる層に薦めたいよ。 弓道を扱うけど斜面と呼ばれる少数派を 題材にしてて主流とは様々な面で異なる。 オレも大学までは弓道部員だったんだが よく調べてんな~と驚かされちまったよ。 日置流弓道の普及にも貢献しそうな本だ。 以下は、俺の古いレビューの要約部分だ。 主人公は弓道に打ち込む中学生。不器用で壁にぶつかっていた彼女が決して順調でない経過をたどりながら、個性あふれる仲間とともに心・技の両面で力強…

  • 月並みじゃない青春『ナカスイ!海なし県の水産高校』(村崎 なぎこ)

    中学入試で出題実績が無さそうな著者の 昨年3月に発売された10代向け小説だ。 読みやすい文章で知らない世界のことを 身近に感じさせてくれるストーリーだよ。 素材文適性は程々だが学びは多そうだわ。 12月に続編も出てるから気に入ったら そちらのほうも読んでみるといいだろう。 俺のレビューの前の方はこんな文章っす。 主人公は自分を変えたい普通女子。 下宿してまで水産高校に通うと決めた彼女には、表向きの理由とは別の意図がありました。 驚いた!栃木の水産科って実在するんですね。 ありもしないものを面白おかしく書いた本なんかじゃないです。 世にも変わった授業や実習、個性派ぞろいの先生や生徒たち。 ページ…

  • まぶしさ溢れる夏の日々『14歳の水平線』(椰月 美智子)

    『しずかな日々』で知られている作家の 2015年に出た優先度Aランクの旧作。 この本もまだまだ入試で見ることがある。 ありふれた新刊より先に読むべき名作だ。 すべてにムカついていた主人公の少年が 父の故郷の島でどう変わるかに注目だよ。 読めばキャンプの魅力に取り憑かれそう。 以下は俺がむかし書いたレビューの一部。 父と二人暮らしの中学2年生の少年が都会の喧騒から遠く離れた小さな島で体験する”しずかじゃない日々”。同じ夏休みの非日常体験を描いている『しずかな日々』と比べると、物語の舞台も人物もキラキラしていて、読みながら明るい気持ちになれましたよ。 『14歳の水平線』感想・レビュー みんな、こん…

  • アイデア冴える『満月のとちゅう』(はんだ 浩恵)

    興味がない。だからやる、見る、聴く。発見がある。(本文より) コピーライター兼作家の10月の新作だ。 フレーベル館ものがたり新人賞で大賞の 『ソラモリさんとわたし』の続編ですわ。 この先生が紡ぐ言葉はとてもユニークで ちょっとしたフレーズにも煌めきがある。 最初のアイデアに飛びついてはいけない、 筆が止まったら心に風を通したらいい等、 幅広~くで役立ちそうな名言もしばしば。 なにより、今作でもスイーツに滅法弱い 子供みたいな大人ソラモリさんが面白い。 かつ仕事モードとのギャップで魅力倍増。 大人にも子供にも学びのある愉快な本だ。 俺のレビューの前半はこんな勢いですわ。 言葉選びが凄い! コピー…

  • ようこそ、活字の世界へ『さがしもの』(角田 光代)

    開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか本しかないだろう。(本文より) 『この本が、世界に存在することに』は 2005年にでた作品集だが、改題して 『さがしもの』になったっていう話だよ。 優先度Aランクの旧作だが今も人気抜群。 同じ作品でも読むときの気分によっては 全く違った印象になるって話が刺さった。 つい懐かしい本を再読したくなったな~。 俺はかつて表題作を人生を変え得る作品 な~んて評しながらこう要約していたよ。 悪い出来事が起きるよりも、悪いことが起きるのではないかと思う考えの方が怖い。出来事より考えが怖い。だから悪い方へ考えないようにしよう。目先のことを一つずつ片付けながら。 …

  • 抑圧と混乱のさなかで『尊敬する人はいません(今のところ)』(中山 聖子)

    「その人たちは僕じゃない」(本文より、他人を引き合いに諭そうとする親に対して少年が放った言葉) まれに出題される作家の10月の作品だ。 母と暮らす普通の少女と優等生然とした 少年の視点で子どもの抱えるモヤモヤを 思い切ったストーリーで露わにしてくよ。 ときに生易しくない現実を活写していて 児童書らしからぬ瞬間もあって面白いわ。 以下は俺が書いた感想からの一部抜粋だ。 子どもたちの感情の発露が圧巻!親たちの反応には虚を突かれた感もありました。少女の割り切れない感情への気づき、少年の不完全さへの気づき、どちらも大切ですね。大人の私にも心地よい読書体験になりましたよ。 『尊敬する人はいません(今のと…

  • 採用、引きも切らず『サクラ咲く』(辻村 深月)

    断れない、はっきり言えない人は、誰かが傷つくのが嫌で、人の傷まで自分で背負ってしまう強い人だと思う。(本文より) 2012年に出た優先度Aランクの旧作。 ファンブックによればこの作品は頻繁に 著作権絡みの許諾申請が来るんだそうだ。 つまり入試・模試・テキストの定番だよ。 それだけじゃなく面白さも抜群なんだわ。 ちょっとしたことに揺れ動く繊細な心に 子どもたちが共感しまくることうけあい。 ま、あらゆる世代に薦めたくなる一冊だ。 昔書いたレビューを少し直したのが以下。 瑞々しい学園生活がメインの短編集。 それぞれが独立した話のようであって、実は繋がりがあると気づいたときには声を上げそうになりました…

  • 多彩なテーマを綺麗に織り交ぜた『わたしに続く道』(山本 悦子)

    わたしはさ、差別されるのが黒人だけってとこが気に入らない。白人は差別されないのに。(本文より) 発売日が11月下旬だったんで外したが 桜蔭向けの企画に入れるか迷った新作だ。 かなり平易だけどテーマ注目度がMAX。 主人公の揺れる心情も問題で問いやすい。 学校で人種差別って言葉が飛び交う日や、 母に気持ちを吐露する場面は特に要注目。 ま、そういうあさましい視点から離れて、 純粋に薦めたくなる一冊でもあるんだな。 これはぜひ読書感想文全国コンクールの 高学年の部で課題図書に選んで欲しいわ。 俺の気合レビュー全文はこんな感じだよ。 主人公はケニアハーフの小学5年生。 肌が黒いことでどこへ行っても特別…

  • 未来の可能性を信じて『君たちは今が世界』(朝比奈 あすか)

    親や先生が護ってくれる世界は、いつか終わってしまうからね。(本文より) 2019年に出た優先度Aランクの旧作。 この作品も長く使われている印象ですわ。 目先のことにばかりとらわれる子供達に、 自分を俯瞰するきっかけをくれる物語だ。 今がつらい人の救いになりそうでもある。 前も書いたが文庫版は『仄かな一歩』が 追加されてるんでこっちのほうがお薦め。 友だちとの約束が世界を明るくする話で 気持ちを前向きにしてくれそうな短編だ。 以下、俺のレビューの書き出し部分だよ。 学級を崩壊に導く2人がいる教室の人間模様。煽る子、流され悪事に手を染める子、傍観する子、常に正しくあろうとする子などを内包しつつ集団…

  • 鮮やかに伏線が活きてくる『小公女たちのしあわせレシピ』(谷 瑞恵)

    好きな本からはきっと、いろんな影響を受けて、成長期の心には深く刻まれているんでしょうね。(本文より) 『神さまのいうとおり』が2022年に 出題されて注目された作家の10月の本。 桜蔭の企画に入れるか迷った本でもある。 ま、作問者が相当アンテナ広げてないと この作品には辿り着けないかもしれない。 名作童話&スイーツの連作短編集だけど 小5から中2にかけての少女視点の作品 『最高のつまらないもの』がすっげーわ。 鮮やかに伏線が決まりまくるんだもんよ。 公園の邂逅、母への思わぬ言葉、そして 意外な組み合わせのスイーツづくりなど 素材になりそうな箇所も抜群に多かった。 メアリさんと呼ばれる人の影を追…

  • 白いほうの代表作『島はぼくらと』(辻村 深月)

    好きなことを続けるためには、好きじゃないこともたくさんやっといたほうがいいよ。(本文より) 2013年に出た優先度Aランクの旧作。 辻村深月先生の作風は黒いのと白いのに 大別できるけど、これは頻出の白い方だ。 地方に住む高校生たちの瑞々しい日常や 地域ならではの葛藤がリアルな作品だよ。 去年の中学入試でも使われてたようだし 教員たちに根強い人気があるようだな~。 以下はむかし書いたレビューの書き出し。 "島の子育ては、みんなでする"そんな習わしが残る瀬戸内海の島が物語の舞台。人情味溢れる大人たちが主役の少年少女の周りにいて、ここぞという場面で少しだけ背中を押してくれるのがいいですね。 『島はぼ…

  • 人生を豊かにするアイデア『今日もピアノ・ピアーノ』(有本 綾)

    自分で考えて、自分で決めたほうが、後悔しないし、なにより一生懸命になれるからね。(本文より) 小川未明文学賞大賞作品がついに出たよ。 この賞は受験界でも注目度高めだろうな。 嫌々受験塾通いしている少年の話だから ああ、後半で自己主張して撤退するん? と思ったら、流石は大賞作、テンプレと 一味ちがうストーリーを見せてくれるよ。 文章難易度は4相当でかなり平易な部類。 5年生でも十分に読めそうなレベルだわ。 新人の作品ながら素材文適性もありそう。 俺のレビューの序盤だけ以下につけたよ。 自分で考え、行動に責任を持つことの尊さを教えてくれる作品ですね。主人公は小学六年生。なにごとにも中途半端だった彼…

  • 読書が初級の高学年には『クラスメイツ』(森 絵都)

    あたしを不安にさせる影は、他の誰でもない、あたし自身がこしらえたものだ(本文より) 2014年に出た優先度Sランクの旧作。 これも受験生にはお馴染みの作品だろう。 これまで何度も入試で使われてきてるが 近年も出題がありチェックは外せないよ。 平易で面白いんで『小学五年生』よりも 受験生読書の入り口には向いていそうだ。 俺の上下巻レビュー要約版は以下の通り。 一人ひとりの個性がキラキラしてる物語。とある中1クラスの全員が主人公になるという連作短編集です。それぞれが無邪気に躍動したり、年相応に苦悩したりする場面が満載で、ローティーンの甘酸っぱい空気に浸れますね。担任の先生が教室の扉にしがみついて号…

  • 変幻自在な筆さばき『椿ノ恋文』(小川 糸)

    「ありがとう、って言葉で人生を終えられたら、幸せだよね」(本文より) たまに出題される作家の11月の新刊だ。 久しぶりに代書屋の鳩子が帰ってきたよ。 今作でも人の心を動かす手紙の書き方が 小説を読みながら楽しく学べちまうわ~。 ま、今作は微妙に子供に見せたくないと 感じるくだりもあるっちゃあるんだよな。 ちょっと反則じゃね?って部分もあるが 得るものが多い読書になったのも事実だ。 やはり感謝を伝えることが大事と再確認。 俺のレビューの要約版はこんな感じだよ。 人の書き文字をそっくり真似る技を磨いた主人公が、依頼人に代わって知恵を絞り、心を込めた手紙を綴ることで、悩める人々に救いをもたらします。…

  • 新星きらめく『私が鳥のときは』(平戸 萌)

    それぞれが自分の場所で、受験生として全力を尽くそうと約束していた。(『私が鳥のときは』の本文より) この作品がデビュー作っていうことだし 中学受験界隈では多分ノーマークだろう。 氷室冴子青春文学賞の大賞作品がこれだ。 受賞作『私が鳥のときは』が3割に対し、 書き下ろし長編がこの本の7割を占める。 意外だったのは受賞作じゃない方の話も 同等かそれ以上に素晴らしかったところ。 表題作は中3女子の受験話がメインだが 『アイムアハッピー・フォーエバー』は 中1女子の部活絡みの話が中心になるよ。 探求心溢れる作問者でないとこの作品に 気づけないと思うけど素材文適性は高い。 以下は問題文によさそうな場面の…

  • まだまだ使われそうな『大きくなる日』(佐川 光晴)

    「ご両親から支持されていないと思ったら、子供が自分の力を伸ばせるわけがないじゃありませんか」(本文より) 2016年に出た優先度Aランクの旧作。 これはテキストや模試でお馴染みだろう。 入試でも忘れたころに出てくる作品だし 普通の新作より先に読んで損は無さそう。 大人にもじんわりくるものがある本だが 子どもでも読めそうな易しいな文章だよ。 以下は俺が4年前書いたレビューの前半。 四人家族の横山家とその周囲の人びととの関わりが、9人の目線で描かれる短編集。幼児目線の第一話では戸惑いましたが、最終話ではその男児が立派な中3生に成長していて、暖かい気持ちになれました。魅力的な人物がとびきり多い作品で…

  • アメリカの自由さが際立つ『空と星と風の歌』(小手鞠 るい)

    わたしが生まれ、育ってきた日本に、こんなふうに生まれて、こんなふうに育って、こんなにも悩み、苦しんできた人がいたなんて、想像したこともなかった。(本文より) たまに出題される作家の11月の新作だ。 この先生は発刊のペースがものすごいな。 アジアの人々への差別がテーマなんだが 大人も知らないような話もたっぷりある。 学びがギューッと凝縮されてる感じだよ。 だから読書感想文を書きやすさも抜群だ。 しかもつらいとき心が軽くなる考え方も 盛り込まれているから救われたりもする。 以下は俺のレビューのラストの部分だよ。 日本では多様性が勘違いされているのではないかという部分も刺さりましたね。偏見を持たない…

  • 受験とは長距離走の苦にも似て『あと少し、もう少し』(瀬尾 まいこ)

    自分の力が発揮できる場にいるって大事だろ(本文より) 2012年に出た優先度Sランクの旧作。 頻出の瀬尾まいこ先生の本では最注目だ。 やっぱしチームの心を合わせる話になる 駅伝や合唱モノは素材の定番中の定番よ。 この作品では先生の役どころも面白いし それぞれの葛藤にも共感ポイントがある。 いつまでも使われる理由は読めば解るよ。 俺がむかし描いたレビューの前半がコレ。 主人公は田舎の中学の駅伝メンバー6人。全員が主人公になるという連作短編集です。それぞれがローティーンらしい悩みに思い苦しみながらも、チームで走るという共通の目的を通じて交流し、成長していく様がさわやかに感じられました。 『あと少し…

  • 解りあうことの難しさ『アナタノキモチ』(安田 夏菜)

    わりと入試に出る作家の先月に出た作品。 この先生は『二月の勝者』の参考文献に なっている 『むこう岸』にも要注目だよ。 今作は相手の気持ちを掬い取ったうえで 尊重することの難しさと大切さを訴える。 物語のキーマンになるのは支援級の少年。 このテーマでここまで書くのかと大人が 衝撃を受けるくらいだから、子どもにも 学びや気づきがたっぷりなストーリーだ。 人の気持ちがわからないことを自分事と 考えるきっかけになる価値ある一冊だよ。 素材には主人公の少女と新しい友達との ボタンのかけ違いが起きる場面がよさげ。 俺のレビューの始めのほうはこんなだよ。 母に棄てられた発達障害の少年を引き取ることになった…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年1月前後)

    1月の新刊はそれなりにある感じですわ。 追加で判明したらこの記事に書き足すよ。 1/10発売 『風に立つ』(柚月 裕子) 傑作の予感!少年の更生を描く家族小説。 1/18発売 『となりのきみのクライシス』(濱野 京子) どうなる?トラブルまみれの6年生たち。 1/24発売 『彼女たちのバックヤード』(森埜 こみち) 3人の中3女子が抱えるそれぞれの事情。 1/24発売 『成瀬は信じた道をいく』(宮島 未奈) あの破天荒少女がパワーアップして帰還。 1/30発売 『こんな部活あります──ココロの花──華道部&サッカー部』(八束 澄子) 入学式で運命的な出会いをする少年少女。 2/13発売 ☆先行…

  • 想像力に圧倒される『空想の海』(深緑 野分)

    読むことによって世界は広がり、あり得ないものが見え、遠くへ旅し、一度の人生では経験しえない物語を味わえる。(本文より) 5月発売の不思議要素が強めの作品だよ。 麻布の2021年入試で界隈を驚かせた 『緑の子どもたち』所収の短編集ですわ。 『緑の子どもたち』は異質世界で言葉の 通じない者たちが交流を始めるハナシだ。 物語としては後味もよくって魅力的だが 入試の素材としてはかな~り異質な部類。 同様に使い勝手って意味では微妙な話が 多いなか『髪を編む』はちょっとよさげ。 まるっと問題文にできそうな長さだしな。 『髪を編む』のさわり(素材文適性△) 大学生の妹の髪を編んでやる社会人の姉。 受験の日に…

  • 感情をブルンブルン揺さぶる『腹を空かせた勇者ども』(金原 ひとみ)

    複雑な感情に踊らされて泣いたり怒ったりすることのない人生を送りたい!(本文より) 20歳で芥川賞を受賞したが中受界隈で 注目されてない作家の6月に出た新作だ。 コロナ禍の中高一貫女子校が舞台なんで 試しにと読んでみたがびっくりしたわ~。 感情を揺さぶるって点ではもうダントツ。 リアルさを追求した会話やあえて狙った 冗長すぎる心情表現がたまにあることで 素材文適性は削がれるが吸引力が抜群だ。 以下は強いて挙げた出題によさげな箇所。 問題に使えるかもしれない場面 序盤△友人家庭の大ピンチを知るシーン 序盤△仲良し留学生が差別を打ち明ける 中盤△定食屋の少年との交流とトラブル 終盤〇マックで仲良し三…

  • 桜蔭の出題者に選んで欲しい名作たち

    普通なら入試の国語素材に選ばれるのは、 前年の夏までに発売された作品になるが、 女子最難関の桜蔭はひと味違うんだよな。 2020年出題 前年の7月25日発売 『思いはいのり、言葉はつばさ』(まはら 三桃) 2021年出題 前年の11月14日発売 『あしたのことば』(森 絵都) 2022年出題 前年の9月8日発売 『そらのことばが降ってくる: 保健室の俳句会』(高柳 克弘) 2023年出題 前年の10月12日発売 『ひみつの犬』(岩瀬 成子) こんな具合で桜蔭の出題者が選ぶ素材は 最新すぎて他校が選べない物が多めだよ。 わが校は一気呵成に問題を仕上げるから 他さんとは違うって自負があるのかもな。…

  • 【レベル別】中学受験生向け推薦図書(旧作42作品)

    相変わらず閑散としたサイトから呟くよ。 旧作の推薦図書一覧ってのも作ってみた。 リストの説明は真面目に書くことにする。 優先度Sに8作品、Aに12作品、Bに22作品 長年愛されてきた旧作を中心とした中学受験生向けのお薦め本リストです。すべて当サイトか又は読書メーターで私がレビュー済みの作品になります。 表の見方に関して、【優先度】をS・A・Bに分類していますが、これは作品の優劣を示すものではなく、作問者が選ぶ可能性を私の勘で割り振ったものに過ぎません。ただ、どれもがとびきりの優良図書であるという点は間違いないかと思います。 【難易度】は1が「難しい」で大人向け、2は「やや難しい」で中高生向け、…

  • 音楽と絆が生み出すもの『ラブカは静かに弓を持つ』(安壇 美緒)

    スパイという語でチェックから外した本。 本屋大賞2位だが読書感想文コンクール 高校の部課題図書にもなったんで読んだ。 書店の目立つ場所にずっと置かれてたし 高校課題図書は割と入試で使われるから たぶん作問者も気づきはすると思ってな。 で、感想いうとメチャメチャ面白れーわ。 もうね、語彙力吹っ飛んじまうほどだよ。 素材文適性はあんまし高くないんだけど 師匠が初めて海外経験を語る場面などは 傍線引っ張って心情を問うのによさげだ。 俺のレビューの概要部分はこんな感じヨ。 過去に縛られ雑に日々をやり過ごしていた男が、音楽を通じた出会いで自分を取り戻していく物語です。主人公は著作権団体の職員。証拠固めの…

  • 異邦人たちの葛藤『M』(岩城 けい)

    どいつもこいつも、人種を見ないで人を見ろ!(本文より) たまに出題される作家の6月に出た作品。 父の仕事の都合でオーストラリアに移り のちに母と姉が帰国しても現地に残ると 決意したマサト少年シリーズの最終巻だ。 現地に溶け込もうとする意志を阻む壁が 丹念に描かれていて勉強になる作品だよ。 一方で、今作は小学生には見せたくない くだりが数ヶ所あるんで悩ましいところ。 素材文適性はそれほど高くはないんだが アルメニア女性との対話が狙い目だろう。 役者に興味はないかと聞かれるくだりや 自分たちのルーツを語り合うシーンなど。 俺のレビューの出だしはこんな文章だよ。 進路に迷う豪在住の大学生が主人公。日…

  • 終盤がとくに刺さる『鈴の音が聞こえる 伝えるということ』(辻 みゆき)

    同じ年齢で、同じ障害をかかえてると、親兄弟でもわかってもらえない自分の気持ちを、こいつだけはわかってくれる、って思えるときがあるんだよな。(本文より) たまに出題される作家の昨年11月に 出た新シリーズで既に3冊が発売済み。 本の外見はもう完全に女子ウケ全振り。 これを手にするのは正直勇気が要った。 序盤でやはり少女小説かなと感じたが、 後半に差し掛かると止まれなくなるな。 盲学校などを併設した私立中が舞台で かなりの学び要素も含まれてるうえに ストーリーが尻上がりに良くなってく。 素材文適性も後半に若干はありそうだ。 とくに教室の女子トークに男子2人が 混ざる場面なんかはいいかもしれない。 …

  • 非合法の渦中で『金環日蝕』(阿部 暁子)

    受験界では『パラ・スター』で知られる 阿部暁子先生の昨年10月に出た本だよ。 これは読友さんたちの評判も凄かったわ。 ミステリ的要素が強めなので素材文には さほど向かないけど面白さは保証できる。 展開の妙が魅力だが会話のノリもいいよ。 尻もちをついた子の絶妙な切り返しとか 調理中に男っ気がないことを揶揄された 主人公が兄貴に言い放ったセリフとかな。 「いきなり何?ウインナーと一緒に焼かれたいの?」(本文より) ま、難易度が高いんで小学生には厳しい。 以下は前に書いたレビューの書き出しだ。 心理学を学ぶ大学2年生が主人公。正義感が強く向こう見ずな彼女が、引ったくりに出くわしたのをきっかけに、思わ…

  • 境界線の子どもたち『付き添うひと』(岩井 圭也)

    これまでのことより、今からどうするかが大事なんです。(本文より) 『生者のポエトリー』が界隈で注目され、 出題もあった作家の昨年9月に出た作品。 主人公は未成年の事案にこだわる弁護士。 大人を弁護する場合は弁護人、子どもの 場合は同じ仕事でも付添人というらしい。 ごく普通の家庭で暮らす子どもたちには 想像することも難しい境遇が描かれてて とびっきりショッキングな内容だったわ。 刺激が強すぎて素材文適性はやや低いが、 親世代にとって学びが多い本になりそう。 以下に俺のレビューから一部拾い上げた。 対少年の切り札を持つ弁護士が、大人と信頼関係を結ぶすべを知らない子どもたちに辛抱強く寄り添い、周囲に…

  • 真心が芯まで響く『水車小屋のネネ』(津村 記久子)

    性格のいい友達を見つけるのは、子どもの人間性がまだ剝き出しのまま混ざり合っている小学校ではとても難しい。(本文より) たまに出題される作家の3月に出た新作。 紹介作品の中では最大級のボリュームだ。 あらすじに「しゃべる鳥」とあるんだが 動物視点の話ではまったくないんですわ。 18歳の姉が8歳の妹と親元から逃れて、 つつましい暮らしの末に満たされていく。 ヒトコトで言うとこんなストーリーだよ。 注目は姉妹の引っ越し先の人々の優しさ。 小学校の担任の先生もいい人だったな~。 真心が連なり広がっていくさまが熱いよ。 読めば優しい気持ちになれそうな作品だ。 完全に大人向けなので子供には難しいが 素材文…

  • 無敵の笑みに誘われて『トモルの海』(戸部 寧子)

    想像や夢が、現実を追い抜く瞬間だってあるわ。(本文より) フレーベル館ものがたり新人賞大賞作品。 この賞は村上雅郁先生や蓼内明子先生を 輩出している由緒あるもので要注目だよ。 今作は小5の野球少年が不思議な少女に 出会って忘れられない日々を過ごす話だ。 とくに幻想的なシーンが印象的だったな。 こっちまで引き込まれそうになるもんよ。 受賞作だけあってやっぱし味わい深いわ。 子どもたちも夢中になるんじゃないかな。 金曜日には書店に並ぶことになるこの本。 俺の先行レビューはこんな仕上がりだよ。 生きているということは、それだけで素晴らしいんだ。 そんなメッセージが直に伝わってきました。 主人公は野球…

  • 全能男子、狼狽える『ぼくらはまだ少し期待している』(木地 雅映子)

    季刊誌『飛ぶ教室』でも紹介されていた 2022年10月発売のYA小説ですわ。 特別感ありまくりな進学校の高3男子が 同級生を探して思わぬ場所に行くって話。 チャラい内容かと思えば深いネタもあり 生きた経済や心理学、それに心理術まで 学べてしまうという思わぬオマケ付きだ。 特によかったのは養護施設関係者の言動。 スタッフの傾聴スキルも凄いんですわ~。 終盤、ちゃんと終わるかハラハラしたが ラストにかけては一気に畳みかけていく。 俺のレビューの序盤はこんな感じですわ。 主人公は重い過去にとらわれた高校三年生。心に分厚い仮面をかぶったままクールに過ごしていた彼が、大人には頼れないと残して姿をくらませ…

  • 麻布で待ってる!『御三家ウォーズ』(佐野 倫子)

    鉛筆一本で、人生を変えるんだ。麻布で待ってるよ。(本文より) 前記事紹介の『天現寺ウォーズ』収録作。 この本で最大のウエイトを占めてるのが 中学受験編にあたる『御三家ウォーズ』。 勉強が苦手な母親が高い目標をかかげる 息子のために死に物狂いで伴走する話だ。 元・塾講師だという叔母のアドバイスが いちいち適切だから得るものがあるな~。 とくに、伸びしろを出し切らせることに 疑問を投げかけるくだりは共感度MAX。 芯のしっかりした息子も応援したくなる。 これは思わぬ拾い物だ!と俺は感じたね。 一流作家の妙技とはちょっとちがうけど 当事者を惹きこめるエモさは確かにある。 この先生は年明けにお子さんの…

  • ミステリアスであったかい『ぼくらは星を見つけた』(戸森 しるこ)

    たまに入試でも出る作家の5月発売の本。 世にも不思議であったかい家族の物語だ。 魔法とかが出るわけじゃ全くないんだが どこか幻想的なストーリーが魅力だった。 作品の難易度的には小4以上が目安かな。 本自体が美しくできてて飾るとそのまま 粋なインテリアになりそうな本でもある。 以下は俺が発売時に書いたレビュー抜粋。 多彩なスキルを身につけた若者が、住込みの家庭教師として、ミステリアスな雰囲気をまとう人たちが暮らす家に赴きます。その家には「子どもに先生と呼ばせてはいけない」という特別な決まりごとがありました。 『ぼくらは星を見つけた』感想・レビュー 実物の装いはさらに美しい(2023/5発売)

  • あっぱれ!優良図書『ぼくたちのいばしょ~亀島小 多国籍探偵クラブ~』(蒔田 浩平)

    つまり、ぼくらの仲を裂いていた犯人は、意外と単純だったってこと。「お互いを知らない」、いわゆる「無知」ってやつだ。(本文より) 10歳前後の子どもに薦めてみたくなる 雑誌『日本児童文学』で激賞されてた本。 副題が「亀島小多国籍探偵クラブ」だし チャラついたストーリーかと思ってたが それは大間違いでじっくり読ませんだわ。 なにせ海外ルーツの子とどう向き合うか 真っ正面から描き切った作品だからよ~。 著者はこれが2作目で出題実績はないと 思うけどこの本は後半がやや使えそうだ。 たぶん14章が問題にはベストだろうな。 素材文適性は以下の順になりそうな感触。 14章『運命に負けない』・・・〇 ホームル…

  • 学びと共感あふれる『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(佐野 倫子)

    お受験・中受小説を出版した実績があり 2024年組母でもある佐野倫子先生の 昨日発売されたばかりの中学受験小説だ。 始めのほうは小説未満じゃねーのか?と イラっとしたんだが途中で著者の意図に 気づいてそっからは一気にのめり込んだ。 中盤からはとくにエモくなっていく感じ。 6番目のゆる受験エピソードなんて最高。 やっぱし思い通りにならない現実の中で 足掻くストーリーは訴求力が抜群ですわ。 俺のたぶん世界最速なレビューがこれだ。 お受験小説『天現寺ウォーズ』著者の新作。 お子さんが今まさに受験学年という作家が、取材と実体験をもとに描いた6つの中学受験ストーリーです。 正直、小説というよりプロット、…

  • 血が滾り放題の『エヴァーグリーン・ゲーム』(石井 仁蔵)

    僕は十代の頃に学んだのだ。悔しさこそが何よりの原動力になることを。(本文より) ごく稀に読み終わった瞬間ウオォ!って 叫びたくなっちまう作品があるんだよな。 今月発売のポプラ小説新人賞の本もそう。 あまりに見事だったんで久々に吠えたわ。 東大卒作家がチェスを題材に描いた本作。 ひりつくような勝負がとにかく熱いんだ。 これに作問者が気づけるかワカランけど 素材文適性はとくに序盤が高かった印象。 第一章 素材文適性◎ 小5男子が入院先で同い年の少年たちと 交流する筋書きで使えそうな箇所が複数。 第二章 素材文適性○ 高2男子視点で少し際どい部分もあるが 少女と喫茶店で向き合うシーンは良さげ。 第三…

  • 優しさのキャッチボールに癒される『タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』(窪 美澄)

    2023年入試でさっそく使われていた 窪先生の『夜に星を放つ』は有名だよな。 そんな著者の昨年12月に発売された本。 親に捨てられた姉妹のストーリーだけど ちょっと子供にみせたくない部分もあり 紹介するか今の今まで迷ってたんだよな。 ま、心の奥底まで温まるストーリーだよ。 大人が読むぶんには何ら問題ない感じだ。 素材文に使える箇所はさほどでない印象。 俺のレビューはこんな一文ではじまるよ。 不幸のどん底にあった少女の再生の物語です。主人公はこもりがちの夜間高校1年生。親に捨てられ姉とギリギリの生活をする彼女が、見守りボランティアに巻き込まれ、外の世界に触れる中で、ささやかな幸せを見つけていきま…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2023年12月前後)

    12月の新刊本はちょっと少な目ですわ。 追加で判明したらこの記事に加筆してく。 11/25発売 『わたしに続く道』(山本 悦子) 小5視点で日本編とケニア編がある模様。 12/8発売 フレーベル館ものがたり新人賞大賞 『トモルの海』(戸部 寧子) 野球好きの小学5年生の不思議な出会い。 12/13発売 ☆先行レビュー済☆ 『一線の湖』(砥上 裕將) 『線は、僕を描く』の続編に小学生登場。 12/15頃発売 『あけくれの少女』(佐川 光晴) 念願の学生生活には思わぬ波乱が訪れて。 1/10頃発売 『風に立つ』(柚月 裕子) 傑作の予感!少年の更生を描く家族小説。 1/24発売 『彼女たちのバック…

  • 試される絆『東家の四兄弟』(瀧羽 麻子)

    人間は、己の話を真摯に聞いてくれる相手に悪い感情は抱かない。(本文より) 『博士の長靴』を書いた瀧羽麻子先生の 10月に発売されたばかりの最新作だわ。 この先生は頻出度◎なんで注目度大だよ。 父親と次男が占い師という一家の日常を 視点をクルクル変えながら描いていくよ。 正直、序盤は視点の切り替えが早すぎて オレの頭がなかなかついていけなかった。 まぁ、慣れれば大丈夫だったんだけどな。 素材文適性は頻出作の『博士の長靴』を 10とすると6から7ぐらいという印象。 中盤以降には使えそうな箇所がパラパラ。 とくに他人のみならず家族にも無関心と 思われてた長男が関わる場面がいいかな。 技あり選書になり…

  • 経験を今につなげる『伝言』(中脇 初枝)

    みずからをわたくしと呼んだのには驚いた。作業後もお互いに「ごきげんよう」とあいさつをかわしている。(本文より) 『神に守られた島』が頻出だった著者の 8/23に発売された評判の作品ですわ。 名門女学校に通う今でいう中3が主人公。 大戦末期から戦後の満州がおもな舞台だ。 戦争の余波もあり可憐な制服はなくなり 電車通学は禁じられ、鉛筆すら持たずに ひたすら軍のための作業に追われる日々。 それでもお国のためにとがんばる彼女は 身の毛もよだつ計画の片棒を担がされる。 自分が何をしているか自覚もないままで。 まぁ、序盤はこんな感じのストーリーだ。 素材文に使えそうな箇所は少なめな印象。 強いて挙げると非…

  • どこまでも尊い生き様を感じる『一線の湖』(砥上 裕將)

    誰かのすごく良いところは、実は欠点のように見えるものの中に隠れてる。(本文より) 今回紹介するのは来月13日発売予定で、 入試頻出作『線は、僕を描く』の続編だ。 序盤で小1に水墨画を教える場面があり やさしく基本を説明してくれるおかげで 先に今作を手にした俺としては助かった。 学校が舞台になる大事なシーンもあるし 素材文適性はわりと高いって印象ですわ。 ま、テストとか関係なしに薦めたい本だ。 とくに4章の終盤が俺には刺さりまくり。 思わずダッシュで前作も入手しちまった。 今作が親切設計とはいえ、順路の通りに 読んだほうが楽しめるのは間違いないよ。 俺が出版社に送った先行レビューは以下。 主人公…

  • トコトン元気にしてくれる『あなたはここにいなくとも』(町田 その子)

    あなたたちは可能性に溢れているのよ。恋も、友情も、夢も、何もかもがこれからなの。(本文より) 今年『宙ごはん』が頻出になった作家の 2月に発売されたオトナの短編集ですわ。 ちょっと子供に見せたくない話も多くて 紹介するかどうか迷ったまま現在に至る。 面白さは間違いなくズバ抜けている印象。 特に最初の短編のドタバタ感とかいいよ。 ただ、素材に使えそうな箇所は少なめだ。 強いて挙げると幼馴染の行動が気になる 高校生を描いた最後の話になるかもな? この『先を生くひと』は子どもでもOK。 以下は2月に書いたレビューの一部だよ。 危うい生き方をする主人公たちが、意外なきっかけで「大丈夫になっていく」スト…

  • ままならない少女たち『どうしようもなく辛かったよ』(朝霧 咲)

    道徳的な正しさは、所詮他人事の時だけまかり通るのだ。(本文より) 受験勉強しながら高3で小説現代新人賞。 で、今は京大生ってこりゃまたスゲーな。 今回の紹介作品は9月発売のデビュー作。 中学のバレー部員たちを描く短編集だわ。 さわやかとは対極にある展開なんだけど 読者を惹き込む力はハンパじゃない感じ。 名のある賞をとったのはダテじゃないな。 ただ、素材文適性はさほど高くなさそう。 作問者が嫌がりそうな要素もあるからな。 特に先生達をナメすぎてる部分はヤバイ。 強いて出題によさそうな部分を挙げると 少年との対話シーンあたりになるかね? 少年が絡む素材によさげな場面2つ 愛美の章 ○ 公園で少年の…

  • スランプの先へ『八秒で跳べ』(坪田 侑也)

    「覚えておきなさい。不調のときは、成長できる最大のチャンスだ」(本文より) 慶應普通部で労作展のために書いた本で デビューして今は医学部生ってナニコレ。 中3夏休みの自由研究が商流に乗るとか、 そんだけで驚きだけど、その後も凄すぎ。 そんな作家の2作目が今回の紹介本だわ。 発売日はかなり先で来年2月になる模様。 高2男子を主人公にした部活小説だけど 読んでみてさらにビックリしちまったよ。 登場する一人ひとりが超面白いんだもの。 素材文適性は後半にかけ爆上がりしてく。 特に3章の一部と4章には注目したいね。 特にテストに使いやすそうなシーン 4章序盤 エースが語りかけてくる場面 4章中盤 食堂で…

  • 【番外編】2024年高校入試 国語出典予想20選(2023年1月~2023年10月発売)

    試しに高校入試版の予想も作ってみたよ。 中・高入試ともに選書の傾向は似てるが、 高校は10月の作品も割と出ているから、 中学入試版とは少し違う顔ぶれになるよ。 まぁ、そう当たるもんじゃないだろうな。 2024年高校入試国語出典予想20選 (タイトルによるアイウエオ順) 『アップサイクル! ぼくらの明日のために』(佐藤 まどか) 『かたばみ』(木内 昇) 『きみの話を聞かせてくれよ』(村上 雅郁) 『この夏の星を見る』(辻村 深月) 『シタマチ・レイクサイド・ロード』 (濱野 京子) 『セントエルモの光 久閑野高校天文部の、春と夏』(天川 栄人) 『宙わたる教室』(伊与原 新) 『つぎはぐ、さん…

  • 学ぶことの意味がしっかりと伝わる『クロワッサン学習塾』(伽古屋 圭市)

    学習は知識ではなく、その先にある“考える力”を、究極的には“よりよい人生”を掴むためにあるものではないか。(本文より) 入試とは無縁っぽい作家の6月の新作だ。 コチラで紹介されてたんで読んでみたよ。 意欲ある元教師が子供達の未来のために 自分に出来ることを模索していくって話。 その結果たどり着いたのが塾ってわけだ。 こいつは思わぬ大アタリ作品だったな~。 何のために学ぶか実感できる筋書きだし スリリングな要素もあって面白いからよ。 大人向けなんでちょっと難しいんだけど 小学生視点のパートは取っつきやすそう。 テーマ注目度も素材文適性も高めな印象。 ただ、ノーマークな著者だけに作問者が この作品…

  • 人をたやすく決めつけないで『川のほとりに立つ者は』(寺地 はるな)

    あの人だけじゃない。かわいそうな女に手を差し伸べたい男っていっぱいいるの。なんでだかわかります?自信がないからですよ。(本文より) 入試頻出作家の昨年10月の作品ですわ。 本屋大賞でも9位というベストセラー本。 手にした出題者もいただろうと思うけど 完全の大人の世界を描いたストーリーで 素材向きの箇所は少なかった印象ですわ。 発達障害や虐待、共感の欠如等の放置が 後々どう出るか真面目に考えさせられて 俺なんかには得るものの多い本だったが。 ありきたりな結末にしなかった点もイイ。 以下は俺のブックレビューの断片ですわ。 特に素晴らしかったのは、レッテルを貼られたくないという発達障害当事者の悲鳴に…

  • 新鮮な驚きもある『ケモノたちがはしる道』(黒川 裕子)

    たまに入試に出る作家の来週の新作だよ。 同し時期に2冊でるってんだから驚きだ。 11/9発売 『ケモノたちがはしる道』 11/14発売 『オランジェット・ダイアリー』 今回紹介する前者では、自然界と人間の 関係について考えさせる場面が多かった。 社会科の勉強になりそうな箇所もあるよ。 特にメガソーラーと馬刺しの章は要注目。 テストで使うんならこの6章がよさげだ。 主人公と行動をともにする少年の見方が 会話のなかで変わっていくくだりとかな。 学び学びって書いたが面白要素も多めだ。 特に少女の母親の言動ってのが最高過ぎ。 熊本の男達のあったかさも後からジワる。 俺の全文レビューは、こぎゃん感じばい…

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