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  • 人知れぬ葛藤と涙『わたしは食べるのが下手』(天川 栄人)

    友だちに人の悪口を言って欲しくないと 感じる少女の人間性が刺さりましたわ~。 児童ペン賞、日本児童文学者協会賞など この1年ほどで様々な賞の受賞歴がある 天川栄人先生の6月発売の新作2冊目だ。 この先生はここ数年で入試に出るように なってきていて界隈でも知られつつある。 今期も先生の本を何冊か紹介しているが、 その中では最も素材文にしやすそうだよ。 序盤から少女の苦しい心情で始まるけど、 出会いをきっかけに彼女は変わっていく。 心が晴れわたる場面が待ってると信じて つらい部分の先へと読み進めて欲しいな。 間違いなく得るものがあると思うからよ。 文章難易度は普通で中学入試標準レベル。 素材文適性…

  • 読みやすさが際立つ『すきなあの人』(神戸遥真, 令丈ヒロ子, 少年アヤ, こまつあやこ)

    わたしたちはいつだって、“みんな”の輪からはみでないように、気をつけているはずなのに。(本文より) 有力作家4人が好きをテーマに競作した 君色パレットシリーズのなかの一冊だよ。 2期の3作品の中では最も読みやすそう。 面白さって点では令丈先生の作品を推す。 あんなオチ、誰も予想できないっしょ! 神戸先生の作品は主人公の後ろめたさが どう転がっていくかに引き込まれたよ~。 ラストの青々とした気づきも良かったな。 こまつ先生の作品は表面からわからない 人間関係の可能性を教えてくれそうだわ。 難易度って点ではかなり平易になるかな。 どちらかと言うと女子向けな作風だろう。 以下、俺のレビューをちょっと…

  • 謎めく舞台の真相は?『六月のぶりぶりぎっちょう』(万城目 学)

    『八月の御所グラウンド』が頻出だった 万城目学先生の6月に発売された続編だ。 前作は1月の直木賞受賞効果が残るので 引続き要チェックということになりそう。 今作は不思議&ミステリ色が濃いぃので 素材文適性っていう面での注目度は低め。 ただ、登場人物の魅力はもんのすごいよ。 主人公の高校教師仲間の個性はその一例。 歴史こぼれ話にも惹かれるものがあった。 本能寺の変の渦中に黒人男性がいたとか。 難易度は難しいに分類されるこの作品に、 俺が書いたレビューの前半パートがこれ。 短編『三月の局騒ぎ』は、奇妙なしきたりのある女子寮に住むことになった大学生の人生を変えた経験。 中編の表題作は、歴史好き高校女…

  • 大人が教えてくれないこと『あるいは誰かのユーウツ』(天川 栄人)

    思いがけないドラマがとびっきり楽しい 天川先生の先月発売されたばかりの新作。 物語の舞台は共学の公立中高一貫校だよ。 題材はよくある物からそうでない物まで 実に多彩でしかも考えさせられるんだわ。 コンプレックスの闇に囚われる子供達に あるがままだって、いいんじゃない?と 優しく囁くようなストーリーがいいよ~。 読めば心が軽くなりそうな連作短編集だ。 素材文には扱いにくい題材も含んでるが 1話目と5話目等は作問に使えるかも? また俺のレビューの要約版を付けとくよ。 はた目にはたいしたことないように見える悩みでも、当人には切実ということ、ありますよね? そんな人にはわかって貰えない心の悲鳴を、優し…

  • 最頻出作家に会える!

    子どもにとって読んだことのある作品の 作家に会うのって特別な体験になるな~。 うちの娘は去年いとうみく先生に会って ますます作品の世界にのめりこんでたよ。 サイン本は嬉々として学校に持ってって とびきり仲良しの子に貸したりもしてた。 すると、お返しに何か貸してくれたりで 興味の輪がいい感じに広がってたんだな。 そういう土台は勉強に限らず活きてくる。 さて、中学受験界隈で脚光を浴びている 村上雅郁先生に会えるイベントの情報だ。 紀伊國屋書店新宿本店で7/14の午後 トーク&サイン会をやってくれるそうな。 詳細についてはコチラで確認するといい。 『かなたのif』刊行記念 村上雅郁さんトーク&サイン…

  • 先入観をぶっ飛ばせ『いつか、あの博物館で。: アンドロイドと不気味の谷』(朝比奈 あすか)

    人間みたいに行動して人間みたいに会話できるようになったら、そのアンドロイドは人間と何が違うというのだろう。(本文より) 人間に似せるよう作ったモノの好感度は リアルなほど上がるんだが、ある水準を 越えると不気味って声が増えるんだって。 その境界線を不気味の谷って呼ぶそうだ。 さて、7月の最注目作品の紹介をするよ。 著者は中学受験界隈では知られてるよな。 サブタイトルがちょっと紛らわしいけど ロボットが出てくる冒険小説じゃないよ。 個性がバラバラな中学生4人の群像劇だ。 博物館でのユニークな体験に感化されて 彼らが人間らしさを見つめ直していく話。 当初は想像もしなかったようなところに 太い絆が生…

  • 仰天、ミラクル小学校『6年2組なぞめいて』(吉野 万理子)

    別に好きじゃないことでもいっしょうけんめいやると、本当にすきなものが見えてくるのかもしれないな。(本文より) 短編小学校シリーズの先月発売の新刊は、 タイトルから連想できるように奇想天外。 現実の壁を軽々と蹴破る愉快な15短編。 それでいて学び要素も多分に含んでいる。 とはいえ、不思議要素が濃いもんだから 前作より素材文適性は控え目になるかな。 挑戦的な作品が多いこのアンソロジーに 俺が書いたレビューの前半部分がこれだ。 6年編2作目はSFテイストが濃厚。 タイムスリップあり、幽霊あり、超科学ありの自由自在ぶり。 とはいえ、軽いだけではなく戦争の哀しさや障害の苦悩のような重厚なテーマもきっちり…

  • 軽妙テイスト、ほんのり甘い『ひみつの相関図ノート』(望月麻衣, 如月かずさ, 神戸遥真ほか)

    読者を驚かせる楽しい罠が盛り込まれた 8人の児童文学の旗手による競作短編集。 トコトン子供の感性に寄り添う作風だし 胸の高鳴る作品との出逢いになるだろう。 不思議要素やびっくり要素が濃いぃから 問題文にはあまり向かないかもしれない。 とはいえ、娯楽作品としてはアリでしょ。 俺にはスランプの文芸女子を描き上げた 如月かずさ先生の短編が刺さりまくった。 学年トップの陽キャ女子とガリ勉男子の 交流を描いた神戸遥真先生の話も印象的。 ほかにも思わずニヤリとする作品が少々。 例によって俺のレビューの一部を以下に。 青春の甘酸っぱさがぎっしり。驚きの結末を約束する彩り豊かな短編集です。 いっそ清々しいほど…

  • わかり合えることの祝福『girls』(濱野 京子)

    自分のことをわかってほしいとか、相手をわかりたいとか、そういうのは必要ないと思ってきた。(本文より) わりと入試に出る作家の6月の新作だよ。 苦悩を抱え込んだ3人の少女たちの絆が お互いを知ることで深まっていく筋書き。 彼女達が前を向き困難に立ち向かう姿が たくさんの若者に力をくれそうですわ~。 女子の読者層を想定した小説ではあるが 何がハラスメントになるか等も学べるし 男子にも参考になる要素が多い気がする。 以下は俺のレビューのごく一部になるよ。 共学の中高一貫校が舞台。 男性にまつわるトラウマのある中3の少女たちが、思わぬ流れから親しくなり、心の距離を縮めるなかで、それぞれの悩みに自分なり…

  • 新米部長のステップアップ『凜として弓を引く 初陣篇』(碧野 圭)

    知ってる?弓道は高校から始めても全国に行ける、数少ない運動部なんだぜ。(本文より) 弓道モノは中学入試より高校入試の方で 出題されてるのを見るような気がするな。 今回紹介するのはシリーズ三作目だけど 前の作品は都立西高の入試で使われてた。 高校生が弓道に出会いのめりこんでいく ストーリーの中でついに対外試合が開幕。 緊張の舞台で素人集団はどうなる?って まぁ、こんな筋書きになっていくわけよ。 主人公の弟のアドバイスや顧問の先生の 奮闘ぶりってのもかなりの見どころだわ。 一応俺のレビューを少し貼っときまっせ。 経験の浅い主人公が、立ち上げたばかりの弓道同好会で初めての試合に臨むストーリー。 右も…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年7月前後)

    7月発売の本はちょっと少な目のようだ。 いつも言ってるが、大部分が未読なんで 多分出題向きじゃない本も混じってるよ。 7/1発売 『いつか、あの博物館で。: アンドロイドと不気味の谷』(朝比奈 あすか) 4人の中学生男女の3年間を描く群像劇。 7/18発売 ポプラ社小説新人賞奨励賞 『夏のピルグリム』(高山 環) 居場所も気力もなかった中1女子の旅路。 7/25発売 『6年3組さらばです』(吉野 万理子) 完結?卒業を迎える子どもたちの15編。 8/8頃発売 ☆先行レビュー済☆ 『みかんファミリー』(椰月 美智子) 中1女子は自由すぎる母に振り回されて。 8/8頃発売 ☆先行レビュー済☆ 『い…

  • 情熱よ、燃えうつれ『光の粒が舞いあがる』(蒼沼 洋人)

    つらいときは、今までもたくさんあった。そのたびに息を吸って、歯をくいしばって、がまんしなきゃ、って自分にいいきかせてきた。(本文より) 前作のクオリティはハンパじゃなかった。 作問後の8月末に出たため中受界隈では 注目されなかったが2ヶ月早く出てれば 今年の入試で使われまくっていたはずだ。 その点、明日発売の今作はオッケーだよ。 受験界に蒼沼先生の名を轟かせるかもな。 そんだけパンチのある作品が来ちまった。 母の勝手に振り回される少女達の物語だ。 ボクサー女子のキャラがもの凄く強烈で そのカッコいい生き様に主人公の少女が めちゃめちゃ影響されていくんですわ~。 家でも学校でも窮屈に感じていた少…

  • 疎外感と生きてゆく『あの空の色がほしい』(蟹江 杏)

    ママは私をユニークな子だって言ってたけど、私だって本当は自分が仲間はずれにされるのが怖いんだ。(本文より) 頻出作家を追っていては気づけない新作。 画家が初めて描いた小説ってことなんで あんま期待してなかったが、超いいわ~。 所謂発達グレーゾーンとおぼしき少女の 心のゆらめきがめっちゃ胸に迫って来る。 気づけば完全に物語の虜になっていたよ。 半分は実話というのがリアルさの肝かも。 素材文適性は好奇心に負けて手に汗握る 展開となる4章から急上昇していく印象。 委員会トラブルに胸が詰まる6章だとか 親友の話に揺れる13章も適性は高そう。 あとは7章、8章、16章も使えるかな。 ま、問題文に使えると…

  • エピソードに宝あり『女の子たち風船爆弾をつくる』(小林 エリカ)

    「ごきげんよう」は伝統あるこの学園発祥の挨拶なのだから。(本文の跡見学園を描いたパートより) 麹町学園の歩みを紹介する公式ページに 戦時中、雙葉や跡見の生徒たちとともに 風船爆弾の製造に従事したと書かれてる。 何を作っているのか知らされないままで 勤労奉仕という名の労働をしてたんだな。 そういう話を掘り下げてるのが今回の本。 雙葉、跡見、麹町学園と、宝塚歌劇団に かかわる少女たちの人生を紐解いてゆく。 多視点で語る文体があまりに独特なので 正直、小学生にはあまり薦められないが 興味深い史実に触れられる作品ではある。 特に戦時中の話は未知のネタが多かった。 男は大学に入らないと召集されるからと …

  • 未来を照らしてくれる『いつか月夜』(寺地 はるな)

    なんでわたしが親の都合で住む家をここまでコロコロ変えられなあかんの。(本文より) 『タイムマシンに乗れないぼくたち』や 『水を縫う』で有名な著者の8月の新刊。 ひとことで言うと、煮え切らない青年が 出会いをきっかけに変貌を遂げる物語だ。 道に迷ったとき決断を後押ししてくれる このうえない地図が得られる本だと思う。 大人に振り回される中学生の嘆きだとか 心にズシリとくる部分もあったんだけど そういうのがあるからこそ終盤がキラリ。 面白かったのは、女子は好きな人の話が 仲良しのファストパスになるってネタだ。 例の難易度分類では難しいになるだろう。 以下は出版社に送ったレビュー全文だよ。 「善く生き…

  • 終末のドラマ『それでも私が、ホスピスナースを続ける理由。』(ラプレツィオーサ 伸子)

    人生は作者のいない物語だ。(本文より) 教師だった母は志願して病院内の学級に 赴任したが長くは持たず異動を願い出た。 教え子の命の灯が次々と消えていくのが 繊細な俺の母にはつらすぎたんだろうな。 さて、今回紹介する本は、死にゆく人に 向き合い、その願いを叶える職を求めて 渡米したナースの実体験を元にしている。 描かれるのは過酷で生々しい命の現場だ。 これでよく続けられると何度も思ったわ。 病人だけでなく家族のケアでも前に出る。 ほんっとどこまでも頭が下がるお人だよ。 何が彼女をそうさせるかは本で確かめて。 日本では7割の人が家で最期を迎えたい のに8割が病院で亡くなってるそうだよ。 ホスピスナ…

  • 救いの泉『あなたの言葉を』(辻村 深月)

    学校のテストと違って、実は世の中には「正解」がないことがほとんどです。(本文より) 毎日小学生新聞に連載されたエッセイ集。 子どもたちに上からではなく同じ目線で 語りかけるから共感を呼びまくりそうだ。 つらい気持ちを救ってくれるさまざまな エッセンスがぎゅっと詰まってるんだわ。 綺麗ごとに終始しないところもGOOD。 注目したいのは自分自身に向き合う話が 生きていくため指針になりそうな第1章。 しょっぱなから、これいいな!と感じて 2話目で技アリ選書になると思ったわ~。 2章以降にも興味深いネタが山盛りだし 著者のファンでなくてもそそられそうだ。 以下、オレが書いたレビューの一部だよ。 最初の…

  • 『きみの話』の快記録

    『きみの話を聞かせてくれよ』といえば、 今年の入試で話題をさらった作品だよな。 現在わかっているだけで出題校数20校。 これは今年だけでなく、過去に遡っても 出題件数の新記録になるんじゃないかな。 【2024年中学入試出題リスト】 駒場東邦中学校 海城中学校(2回目) 学習院中等科(2回目) 立教女学院中学校 横浜雙葉中学校(1期) 大妻中学校(2回目) 日本女子大学附属中学校(2回目) 昭和女子大学附属昭和中学校(A) 足立学園中学校 国立音楽大学附属中学校 栄東中学校(A2) 武南中学校 専修大学松戸中学校(2回目) 土浦日本大学中等教育学校 同志社女子中学校(前期) 関西大倉中学校(A2…

  • 家族の絆が沁みてくる『みかんファミリー』(椰月 美智子)

    割と入試で見る作家の8月に出る新作だ。 近年のこの先生の作品の中では多分最強。 中1女子の困惑に満ちた新生活ってのに 引き込まれ、家族の気持ちの移ろいには もう完全にノックアウトされちまったよ。 テーマも文章難易度も素材にピッタリで、 それでいて面白さって点でもバッチシだ。 作問選書シーズン終盤の発売ではあるが これは選んでほしいとオレは感じたわ~。 同い年の少女との物理的・心理的な壁が なくなる場面や母に感情をぶつける場面 などなど素材によさげなシーンは多めだ。 脇役だけど、まっすぐで偏見を持たない 主人公の友人の立ち回りもよかったわ~。 変わった家族のカタチに触れられる本作。 いちおう俺の…

  • そこかしこに人生訓『6days 遭難者たち』(安田 夏菜)

    こんな山、どうってことないって思ってたのに・・・・・こんなことになるなんて。(本文より) 安田夏菜先生の先月発売された新作だよ。 現実に折り合いをつけることに悩んでた 3人の女子高生が山で絶体絶命に陥る話。 追い込まれた彼女たちがどう変わるかが この作品のいちばんの見どころだろうな。 終盤にかけてはもう圧巻というしかない。 友のため動く決意、メソメソからの脱却、 確固たる意志への目覚めなどが響く響く。 手厳しいことでもズケズケと言ってくる 教師の根っこに透ける優しさもいいわ~。 弱さを受け入れてこそ強くなれるという 言葉には普遍的な価値があると感じたよ。 勉強だって何だって、自分の至らなさを …

  • 葛藤が心を射抜く『王様のキャリー』(まひる)

    この俺が、わざわざお前のために嫌なこと我慢すると思うか?(本文より) 講談社児童文学新人賞の大賞受賞作だよ。 発売日は2ヶ月以上先の8月下旬ですわ。 eスポーツをめぐる友情を描いた新作だ。 ふだんは本に見向きもしない子たちさえ 振り向かせるような題材を扱ってるのに 頭の固い大人にも響くような物語だわ~。 やっぱ大賞作品ともなるとダテじゃない。 問題文には主人公が自分自身の想像力の 足りなさを思い知る部分が特に使えそう。 場面的には、病院の前や教室での会話で 思わぬ流れになるところもいいだろうな。 親がかかわる会話にも注目シーンがある。 ネタバレ禁止なんでぼかして書いてるが 素材文適性はかなり高…

  • その印象はどう変わる?『きらいなあの人』(工藤純子, 蓼内 明子, 花里真希, 黒川裕子)

    傷を治すためには、痛くても怖くても、ほんの少しだけ勇気を出さなきゃ。(本文より) 入試でおなじみの作家さん達が揃い踏み。 君色パレットシリーズ2期の注目作品だ。 タイトル通り嫌な誰かが登場するんだが もちろんそのままで終わらないんだな~。 各話でおこる変化のトリガーが何なのか、 主人公がどう成長するかが見どころだよ。 収録作品 『パーフェクトじゃないオレたち』(工藤 純子) 『妖怪オレ様』(蓼内 明子) 『帰国子女』(花里 真希) 『まひるは絶滅することにした』(黒川 裕子) 難易度は普通と平易の間に収まる感じで 素材文適性は多分2期3作品の中で最強。 以下は俺のレビューのほんの一部ですわ。 …

  • 令和のクラスメイツになるか?『6年1組すきなんだ』(吉野 万理子)

    大人になるというのは、自分のすきなものにお金を使えるようになる、ってことだと思うな。(本文より) 一話10ページあまりでサラリと読める 6年男女15人の視点で描かれた短編集。 ここではあえて紹介してこなかったけど、 この短編小学校シリーズは5年版もある。 そっちは4年生の模試に合いそうな感じ。 6年版は微妙にレベルアップしているよ。 今のところ3冊出る予定のようなんだが 後に続く作品しだいでは、森絵都先生の 『クラスメイツ』ばりに注目されるかも。 いや、悪ぃ、さすがにこれは言い過ぎか。 もうちょい難度が上がるといいんだけど。 登場人物が多いせいかよく解らない子も。 逆に誰かに似ていて解りすぎる…

  • あきらめない、くじけない『浅草蜃気楼オペラ』(乾 緑郎)

    帝劇でも、ローヤル館でもない。自分が一番輝ける場所は浅草だった。(本文より) かつて大正の頃、活動写真が流行る前に 浅草で歌劇ブームがあったってハナシだ。 大衆の中で燃え広がったオペラへの熱は 時代や世相に流されつつ冷めてくんだな。 その浮き沈みの中にドラマが詰まってる。 大人向けで、時代背景的にも難しいゆえ 普通の小学生には全く薦められないけど 当時の文化を知る意味でも面白い作品だ。 華やかな世界の舞台裏には驚かされるよ。 並の学校での出題は考えにくいんだけど 少女の成長&友情の物語っていう路線は 作問者の目に留まってもおかしくはない。 俺のレビューの一部だけ以下につけとく。 主人公は劇団に…

  • 脇役が舞台に!『なんでもないあの人』(濱野京子, 林けんじろう, 椰月美智子, 昼田弥子)

    人間は、わからないことがそこにあるなら、わからないまま向き合うしかない。(本文より) 多様性をみつめるショートストーリーが うたい文句の君色パレットシリーズ2期。 豪華な作家陣がズラリと並ぶ凄い企画だ。 3~4年生に丁度良い難度だった1期も ほんの少しとはいえ一応中学入試に出た。 2期のレベルは微妙に上がっている印象。 特に『異ロンナ』は出題標準級の難度だ。 こき下ろされてもヘラヘラする人を見た 中学二年生の心の揺らぎを描いた短編で 主人公や新米作家の優しさが沁みるよ~。 『レッドさん』など他の作品は割と平易。 どの話にも驚きと気づきがあふれてるよ。 楽しくて読みやすいこのアンソロジーに オレ…

  • こんな爽快なのアリ?『夜と跳ぶ』(額賀 澪)

    そう、スケートボードはストリートで生まれたスポーツなのに、街では邪魔者なわけ。(本文より) 割と入試に出る作家の来月発売予定の本。 スケートボードって珍しい題材を扱うよ。 パリ五輪に無関心すぎる金メダリストと 五輪を撮りたくて仕方ないカメラマンが ストリートを舞台に駆け回る筋書きだわ。 読めば熱いものがこみ上げてきそうだよ。 かつ間違いなく未知の世界を感じられる。 アウトローのイメージが付きまとうから 普通の作問者は避けるかもしれないけど こういうのを出せたらある意味すごいよ。 お行儀がいいと魅力が伝えきれないから 思いっきり弾けたレビューを書いてみた。 奴らはスケボー界のバンクシーだ! 華麗…

  • 島から慶応目指せちゃう!?『グリーンデイズ』(高田 由紀子)

    もっとがんばりたいという気持ちがふつふつと湧いていることに、自分でおどろく。(本文より) 割と入試で見る作家の先日発売された本。 この先生、佐渡島への思い入れがヤバい。 今作もその大好きな場所で勝負してるよ。 父を亡くした少女が、付属中受験予定の 同い年の少年の影響で聖央大にあこがれ、 それまでの生き方を変えていくって話だ。 意志の力で周囲を巻き込んでいく少女が 子どもたちに力を分けてくれそうだよ~。 金持ちが通う有名難関私大という聖央の モデルは普通に考えて慶応になるだろう。 公立高校入試などでも使われた前作より 素材文としては扱いやすいかもしれない。 目指す大学ができてがんばる子の話だし。…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年6月前後)

    高田由紀子先生の『グリーンデイズ』は 23日発売予定だったんだがまだ書店に 配本されておらずどこでも買えない模様。 小6女子が同い年の親戚と行った大学に 一目惚れして頑張ろうとする話のようで 期待値が高く入手でき次第レビュー予定。 さて、6月は後半に発売ラッシュですわ。 毎回言ってるけど未読の作品が多いんで 出題向きじゃないのも多分混じってるよ。 6/3発売 『変身ー消えた少女と昆虫標本ー』(佐藤 いつ子) 少女の友人が失踪、残された手がかりは。 6/6発売 『6年2組なぞめいて』(吉野 万理子) 彩り豊かな個性が躍動する不思議な物語。 6/14発売 ☆先行レビュー済☆ 『かなたのif』(村上…

  • そうだ、風を切って進め『ブルーラインから、はるか』(林 けんじろう)

    古いママチャリで家を飛び出すのも、最高にバカバカしくて、わくわくする。(本文より) ちゅうでん児童文学賞の大賞受賞作品だ。 この賞の凄いところはハズレがないこと。 しかも、入試で出題される可能性も高い。 実際ここ数年は発売年度に多数出ている。 受賞で箔が付いた本は選び易いんだろう。 さて、今作は家にいづらい小6の少年が 図書館で出会ったいや~な小4に誘われ 無理めのチャリ旅に行くってストーリー。 先輩なのに頼りない主人公、最悪の相棒。 それがたび重なるトラブルを乗り越えて 風を切って進むなかで変わってくんだわ。 これを読むと何かに挑戦したい気持ちが ふつふつと湧いてくるんじゃねーかな? そんだ…

  • 凍える想いをあたためて『冷蔵庫のように孤独に』(村木 美涼)

    十四歳だったわたしは自分のために、何もしないことを選んでしまった。(本文より) カバーが作問者の目にとまりそうな新作。 25歳の看護師が中学生の頃に出会った 恩人との日々をある出来事をきっかけに 鮮烈に思い出すっていうストーリーだよ。 自分にまったく自信がなかった女の子が 先生の教えを大切にしながら生きつづけ 立派な女性になっていく流れがいいよ~。 描かれていたのは悲劇と胸アツの師弟愛。 俺は受容と共感がいかに大切か実感した。 ちょっとミステリ要素を含んでいるけど 上手く切り取れば素材文にもできそうだ。 大人編よりも悩める中学生編に注目かな。 文章の難易度は例の分類ではやや難相当。 俺が付けた…

  • なんでもない日々こそが尊い『川のある街』(江國 香織)

    長年愛されてきた『つめたいよるに』等、 入試定番作品のある作家の期待の新作だ。 作問者がとりあえず手にしそうではある。 短編が3つ収録されているが素材文適性 という観点では2つに注目したいところ。 1話目の目立ちたくない小3女子の話は この短編集の中で最注目になるだろうな。 とことん地味な彼女はある意味新鮮かも。 2話目は人間達とカラスの視点が混じる。 おそらく小学生は幻惑されるだろうから 初回はカラスパートを読みとばすといい。 それでも連作掌編集のように人間模様が つながるし再読でカラス話も読めばOK。 この話は小学生男女の視点も含み適性△。 3話目は俺はグイグイ惹かれたんだけど 認知症の人…

  • 敗者たちの気迫『俺たちの箱根駅伝』(池井戸 潤)

    勝敗はどんなスポーツにもある。だが、勝者だけが輝くのではないはずだ。(本文より) 入試ではあまり見ない大物作家の最新作。 上下巻合わせ700ページには怯んだが、 頻出の駅伝モノなのでチェックしてみた。 『十二月の都大路上下ル』なども含めて このテーマは今年も良く出ていたからよ。 駅伝を描いた作品の例 『あと少し、もう少し』(瀬尾 まいこ) 『タスキ彼方』(額賀 澪) 『風が強く吹いている』(三浦 しをん) 『駅伝ランナー』(佐藤 いつ子) 『白をつなぐ』(まはら 三桃) 『襷を、君に。』(蓮見 恭子) 結論から言うとシーンが次々に流れてく 下巻よりも問題文の素材に選ぶとしたら 人物の掘り下げが…

  • はずむ、ふくらむ恋心『ナカスイ!海なし県の海洋実習』(村崎なぎこ)

    ナカスイの授業って、とても不思議。いままで国語数学英語・・・・・それが勉強というものだと思ってたから。(本文より) 今年の聖光学院で出た作品の続編ですわ。 より軽妙になりサラッと読めるテイスト。 女子ウケ全振りの乙女小説って印象だな。 前作と比べると学び要素が控えめになり かわりに恋要素が前面に打ち出されてる。 男どもにはついていくのがつらいかもな。 まぁ女の子の楽しい読書にピッタリだよ。 おそらく素材文適性は前作のほうが高い。 こんな学びがあるのか!という新鮮さは 今作にもあるので読めば世界が広がるよ。 俺のレビューの序盤だけ以下に付けとく。 シリーズ二作目は前作よりも弾けてる! 普通な自分…

  • 自分を貫く勇気『あしたをみがけ 姫川中学校みがき部』(横沢 彰)

    どんな石ころだって、磨けば輝いてくる。(本文より) 今年の1月からこれまでに3冊出ている こんな部活ありますシリーズの1つだよ。 糸魚川中学に実在する研磨部がモデルだ。 どうやら日本に一つしかない部活っぽい。 ま、そんな世にも珍しい部活の物語だが 地味男子の地味な学校生活が描かれてて 正直、途中で読むのをやめそうになった。 ちょ~っと盛り上がりに欠けていたから。 けど、バレー部が関わってくるあたりで おっ!となって後はずっと熱中できたよ。 後半以降で盛りかえすのでそれを念頭に アッサリ切らないことをお勧めしたいな。 素材的に特にすすめたいのは9~10章。 陽キャの意外性に触れる11章もよさげ。…

  • 青春のエール『アルプス席の母』(早見 和真)

    一人の選手の野球生命は、もっと言うとその子の人生は、たかが高校野球のために潰されるべきじゃない。(本文より、少年の憧れ校の監督の言葉) やたらいい評判をきくので読んでみたよ。 家族愛という言葉だけでは言い表せない エモーショナルさ溢れる物語だったわ~。 ストイックな野球少年の母親が主人公で 中学編が2割程度、メインは高校編だよ。 受験対策って点での優先順位は低いけど 多くはないものの素材になる箇所もアリ。 親思いの少年の本心が垣間見える部分や 子供同士のウルッと来るやりとりとかな。 印象的だったのは大人同士の嫌がらせを まるで中学の教室のようと母が思う場面。 大人になれば、居場所も逃げ場も自分…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年5月前後)

    出たばかりの『俺たちの箱根駅伝』だが 池井戸潤先生は界隈注目ではないものの 書店で存在感を示し続けることが確実だ。 駅伝は入試頻出テーマってこともあるし 作問者が手に取っても不思議じゃないな。 上下巻で約4千円は俺にはキツいんだが。 さて、5月も注目作品がバンバンくるよ。 毎度言ってるように未読作品が多いから 出題向きじゃないのも多分混じってるよ。 5/9発売 ☆先行レビュー済☆ 『学校に行かない僕の学校』(尾崎 英子) 中2男子が森の中の学校で見つけたもの。 5/23発売 『6days 遭難者たち』(安田 夏菜) 高校生の日帰りゆる登山で起こるまさか。 5/23発売 ☆先行レビュー済☆ 『ぼ…

  • わかり過ぎる親たちの葛藤『君の背中に見た夢は』(外山 薫)

    中学受験?思い出すだけでゾッとする。いやもう考えただけでも無理、二度とやりたくない。(一章冒頭より、慶應中等部に息子を入れた母親の述懐) 小学校受験を描きあげた話題の新作だよ。 パワーカップルの妻がお受験にはまって 周囲が見えなくなっていくストーリーだ。 慶應幼稚舎、洗足、横浜雙葉、カリタス、 学習院などが実名で登場しまくるんだわ。 出題候補じゃないし子供には薦めないが、 親目線では学びと共感が詰まっていたよ。 特に合格請負人みたいな先生の言動には うなづくしかないものが多々あったな~。 模試の好成績に浮かれる親への言葉とか。 まず最初に言っておきます。今回の結果は忘れてください。(本文より)…

  • 最頻出作家が上野に降臨、そしてテレビでは・・・

    5/5は村上雅郁先生に会えるチャンス。 前作の『きみの話を聞かせてくれよ』が 少なくとも15校で出たときの人ですわ。 入試問題に採用した15校 駒場東邦、海城、学習院中等科、立教女学院、横浜雙葉、大妻、日本女子大附属、昭和女子大昭和、栄東、専修大松戸、同志社女子、修道、佐久長聖、東山、帝塚山、その他公立高校入試などでの採用もあり 現場は上野の森親子ブックフェスタだよ。 14:30~16:00フレーベル館の ブースでサイン会をしてくれるってんだ。 この催事、幼児向け作家の列は割と込む。 一方で、YA作家はポツーンとなり易い。 だから色々と話したければまさに絶好機。 6月に出る新作の宣伝をするって…

  • 見よ、この魂の輝きを『再会の日に』(中山 聖子)

    わたしは、自分の家のややこしい事情を、友だちや先生には知られたくない。(本文より) 受賞歴豊富だけど入試ではあまり見ない ベテラン作家の4月に出たばかりの作品。 中学受験界隈での注目度は低そうだけど これは稀に見るエモさのストーリーだよ。 しかも素材文適性が中盤から急上昇する。 この本に先生方が気づけるか未知数だが 教室、駅周辺、屋上、植物園など各所で 出題者が惹かれるであろう場面があった。 具体的には5、7~10、13~14章。 特に少し荒れるシーンが描かれる9章や 14章は素材文適性がMAXだった印象。 8・10・13章も〇印がつくレベルだ。 文章は平易だが姉妹の心情に寄添うには 高い共感…

  • 美味しさぎっしり『要の台所』(落合 由佳)

    周りとちがうからって仲間はずれにしたり、からかったりするやつらのほうが、どう考えたっておかしいだろ。なのになんでそいつらに合わせてやらなきゃならないんだい。(本文より) 何でもズケズケ言う老婆の物言いが爽快。 今年、普連土学園で出た作品の続編だよ。 自分に自信のない中1の女子が夏休みに やりたいことを見つけてがんばるって話。 前作より先にこれを読んでも問題はない。 平易すぎた前作より対象年齢が高めゆえ 今作のほうが入試素材には適していそう。 特に主人公が優しさの押し売りに気づく 三章のシーンなどはちょっとアリかもね。 他にも問題文なる箇所はあるだろうけど。 ま、そういうのは抜きにして食育になり…

  • 待ってたのは、コレ!『やすらぎハムエッグ』(宮島 未奈)

    こんなキャラ、うちの学校にいたら間違いなくいじめられてたと思うんだけど、これまでの人生なんともなかったんだろうか。(本文より) 成瀬は天下を取りにいくシリーズ最新話。 小説新潮5月号掲載の未刊行作品ですわ。 短編の話をあんまし詳しく書いちまうと ネタバレが過ぎるんでサラッと触れとく。 神奈川の外れにある進学校出身の少女が 失意のまま進んだ京大で成瀬に出会う話。 もうね、成瀬が名乗っただけで鳥肌だよ。 コレだよコレって叫びたくなる例の濃さ。 で、その猛烈キャラが主人公を変えずに おかないといういい意味でのお約束展開。 主人公の張り裂けそうな葛藤などもあり 素材文適性はめっちゃ高かった印象だよ。 …

  • 正義の声は高らかに『はなしをきいて: 決戦のスピーチコンテスト』(マギー・ホーン)

    みなさんが、この本に書いたような経験をしていないことを心から願っています。(あとがきより) 海外作品はあんまし出題されないんだが テーマがよくて面白かったんで紹介する。 あと3週間ほどで発売される新刊本だよ。 同級生のハラスメントに、地味で孤独な 中学生が立ち上がるっていうストーリー。 主人公のスクールライフの起伏が凄いわ。 友情、ジェンダー、ネットリテラシー等、 注目したい要素があって学びもたっぷり。 日本との文化の違いってのも体感できる。 難易度分類ではやや難といったレベル感。 以下は俺のレビューの書き出し部分だよ。 優等生の仮面を脱ぎ捨てる少女が超クール! 主人公は秘密を抱える陰キャ女子…

  • 未来につながる翼『同じ星の下に』(八重野 統摩)

    わたしは、そんなお父さんとお母さんの姿を見てはいつもぞっとして、心底恐ろしくなって、学校ではとにかく必死に、家では隠れてでも勉強をする。(本文より) 『ペンギンは空を見上げる』著者の作品。 小学生が読むにはNGの部分があるんで ここで取り上げてもしょうがないんだが めっちゃ刺さる小説だったんでレビュー。 クソ親のもとで暮らす少女が逃げた先は まったく予期しない場所だったって話だ。 これを読むとごく普通の家庭に生まれた ことが奇跡のように幸せだと感じるかも。 誘拐された少女とそれを追う刑事視点で 素材文適性はほぼナッシングなんだけど 超面白いし出典予想では最下位に据える。 以下は毎度のマイレビュ…

  • 行動力が駆けてゆく『アフリカで、バッグの会社はじめました』(江口 絵理)

    失敗だと思ったらそこで終わるけど、次に何かをするときに生かせればそれは「失敗」とは言わない。(本文より) 前から思ってたけど、青少年って言うが 青少女って言わないのはなんでだろうな。 さて、青少年読書感想文全国コンクール 中学校の部の2024年課題図書を紹介。 素材文適性はあまりないが優良図書だよ。 目標のためにがんばり人生を切り開いて しかも人の役に立ち喜ばれるって話だし これはいい刺激になりそうなルポだわ~。 中学受験して名門一貫校に入り早大法→ 一橋大院→大手銀行と進んだ女性の熱意、 夢に向かう勇気、挫折も糧にする柔軟さ。 感じて欲しい学びが凝縮されてるんだわ。 受験とか関係なくぜひ読ん…

  • 心の壁を取っぱらえ!『透明なルール』(佐藤 いつ子)

    自分の才能を恨んだ。普通でいいのに。普通がいいのに。(本文より) 『真実の口』とこの本は外せないっしょ。 明日発売の今期最注目といえる新作だよ。 おとなし目の主人公が、あれよあれよと 一軍女子グループに取込まれ無理するが やがてほころびが広がっていくんだわ~。 超名門校から転校してきたギフテッドの 苦悩みたいなテーマも盛り込まれている。 かなり道徳的な要素が濃い目な物語だし 作問する側としては選びやすそうな印象。 特にリボンパート、学級会パートがよく 他にも使えそうな箇所が山盛りって感じ。 今ならかなりのためし読みが可能なので 気になったらチェックするといいだろう。 文章難易度は中学入試では標…

  • 挑戦に欠かせないもの『マジックに出会って ぼくは生まれた』(涌井 学)

    大丈夫。落ち着いてるよ。今の僕の全力を、完全に出し切ってみせるから。(本文より) 新作ではないが素晴らし過ぎるので紹介。 昨年の品川女子学院で使われた作品だよ。 伝記ベースなので素材で扱いにくいかと 思っていたが予想は大ハズレだったわ~。 優れた物語に必要な要素が全てある印象。 これは滅多に見られないほどの優良素材。 友人たちと進路に悩むシーンであるとか、 打ちのめされた時の思わぬ檄であるとか、 不幸になりにくい人生を推奨される場面、 はるかな目標をもつ少女との交流なども。 品女の先生、よくこんなの見つけたな~。 大袈裟でなくローティーン必修にしたい。 俺のレビューはこんなにも前のめりだよ。 …

  • 意表を突く展開の『天国からの宅配便 時を越える約束』(柊 サナカ)

    やはりわたしは、数学が好きなんだ。一度しかない人生の中で、そういうものを見つけられたことはよかったと思う。(本文より) 『天国からの宅配便』シリーズ1作目は たしか前に栄東の素材文になってたはず。 今回紹介するのは本日発売の3作目だよ。 この作品は2作目にずば抜けていい話が あるので、そっちも薦めてみたいところ。 短編集だがそれぞれが独立した話なので どこから読みはじめても大丈夫ではある。 今作で特に注目したいのは高校生の話だ。 『食堂ミツコ最後の日』って短編だけど うしろめたさを抱える水球部員の少女が 思いがけないギフトに戸惑うって筋書き。 この話はニヤリとできて後味も良いよ~。 ほかの大人…

  • 想像力は無限大『かなたのif』(村上 雅郁)

    「友だちの助けに、なってあげなさい」ぼくはうなづいた。それ以上、大事なことなんて、きっとこの世界にはないもんね。(本文より) 先月開催の四谷大塚の入試報告会の席上、 ホールを埋め尽くす受験生の父母の前で 大スクリーンに映し出された本があった。 それが『きみの話を聞かせてくれよ』だ。 今年少なくとも15校で出たこの前作で 一躍ときの人になった著者の2ヶ月後に 発売される予定の本を今日は紹介するよ。 文章難度は例の分類だと平易になるから 小5なら十分に読めそうな間口の広さだ。 素材文適性が高そうなシーンもあったよ。 一例を挙げると、5章の後半にかけて等。 ネタバレで台無しにしたくなかったので レビ…

  • スポーツの見方が変わりそうな『鳥人王』(額賀 澪)

    最初に目指したものが実は自分には向いていなかった、なんて人間の方が大半なんだから、そこからの身の振り方が人生の見せどころだ。(本文より) たまに入試に出る作家の2月に出た本だ。 棒高跳びを描いた極めて珍しい作品だよ。 関心ゼロの題材だし大丈夫か心配したが 読み始めたら止まれなくなっちまったわ。 気づけば競技の映像なんかも見ていたよ。 やっぱしこの先生のスポーツものはイイ。 国語素材になりそうな箇所は多くないが この著者は『競歩王』も使われていたし めっちゃオモロ熱いんで薦めたい本だよ。 難易度は例の分類でやや難になる本作の マイレビューのカケラはこんなんですわ。 さえない芸人がバラエティ番組の…

  • アクが強い、強すぎる?『サクラサク、サクラチル』(辻堂 ゆめ)

    二つ違いの姉は、かつて、両親の自慢の娘だった。中学受験で第一志望校に受かり、両親を喜ばせた。(本文より) 名作『山ぎは少し明かりて』の著者の本。 毒親に東大合格を強要される少年の話を 東大出身の実力派作家がどう描くのか? 関心があって手にしたのがこの作品だよ。 教育虐待しまくりの話だから小学生NG。 中学生ならギリOKといったところかな。 親世代にも学びがある本だと俺は感じた。 主人公の親にはまったく共感できないが、 反面教師としてはとびきり優秀だからよ。 俺のレビューの終わりの方はこんな感じ。 一部の描写を胸糞悪いと感じる向きがあるかもしれませんが、程度の差こそあれ、子どもをトロフィーにした…

  • どこまでも響け、そのメロディー『うたう』(小野寺 史宜)

    わたしもこの数年で学んだわけ。牛後のときは重かったけどね、鶏口になると動きは軽いのよ。(本文より) 音楽にかかわる4人の男女が描かれてる たまに入試に出る作家の2月の新作だよ。 夢を応援する妻とか、人気者の先輩とか 登場する一人ひとりの魅力がヤバすぎる。 この先生、人情を描かせると最っ強だわ。 いい人のふるまいってのが胸に迫るよ~。 で、しょーもないキャラもいい味をだす。 なんだコイツと思ったのが変わっていく。 それなりの年でも成長していけるんだな。 自分にも何かできるかもって気になるよ。 この作品は難易度ではやや難しいんだが 中学生女子を描く最初の章は読みやすく ここに限り中学入試の出題標準…

  • 心がほぐれてゆく一冊『学校に行かない僕の学校』(尾崎 英子)

    今の学校は、考える前に与えすぎてるんやと、俺は思う。(本文より) 『きみの鐘が鳴る』で中学受験を描いた 著者の約1ヶ月後に発売される新作だよ。 これは多様な価値観を体感させてくれる。 今が辛い子どもたちに届いて欲しい本だ。 国語素材文としてもかなり面白いだろう。 特に名門校に入り壁にぶつかった少女と 主人公の少年との会話シーンが使えそう。 タイトル的に扱いづらいかも知れないが よさげな場面が複数あり素材適性は高め。 きみ鐘も複数校で出てたし要注目だろう。 文章レベルはきみ鐘よりちょっと難しい。 まぁ、出題標準レベルといったところだ。 以下、俺の長文レビューを付けておくよ。 主人公は重いトラウマ…

  • 合不合判定テストの国語出典(続 模試に出る作品は当てられる)

    去年の合不合判定テストの物語文だけど 俺がレビューした作品からしか出てない。 一昨年はここまで当たってなんかないし たまたまだが、まぁ数撃ちゃあたるわな。 2023/04/09実施 合不合判定テスト 第一回 『給食アンサンブル2』(如月 かずさ) (2022/10/12発売)(2022/12/10投稿) 2023/07/09実施 合不合判定テスト 第二回 『神無島のウラ』(あさの あつこ) (2023/02/24発売)(2023/04/01投稿) 2023/09/10実施 合不合判定テスト 第三回 『おくることば』(重松 清) (2023/06/26発売)(2023/08/08投稿) 2023…

  • 荒波を超えて『遠い町できみは』(高遠 ちとせ)

    誰かを責めるんじゃない。誰かに誇れるように胸を張ろう。(本文より) 3月14日に出たポプラ社小説新人賞の 特別賞受賞作ってのが今回の紹介本だよ。 海辺の田舎町を舞台にして3人の男女が 小5から中学時代を駆け抜けていく話だ。 過酷な運命にあらがう少年少女の成長と 友情のきらめきってのがまぶしかったよ。 ちょっと児童虐待を描く瞬間があるので 気がかりなら親が先に見ておくのもアリ。 少女の波乗りに少年が圧倒される部分等 素材文適性△な箇所もチラホラな印象だ。 レベル感としてはやや難といったところ。 俺のレビューの一部を以下に付けとくよ。 主人公は都会から来た少年と、地域のはみだし者の少年少女。 大人…

  • しあわせを願う意味『風に立つ』(柚月 裕子)

    恵まれた人生と充実した人生って同じじゃないのかもな。(本文より) ミステリや推理モノで有名な作家の新作。 入試でほぼ見ない先生なんだがこの本は ちょっと使える要素が混じってるんだな。 地域一の進学校に入学したものの問題を 起こし南部鉄器工房に流れてきた少年の 更生に向き合う人びとを描いた小説だよ。 主人公は38歳の職人、少年は16歳だ。 問題少年に関わりたくないと思っていた 主人公がどう変わっていくかに注目だわ。 問題を起こして高校を追い出された彼を 追い詰めたものの正体ってのが驚愕モノ。 ボタンのかけ違いってせつないもんだな。 ま、これは子どもより親が読むべきかも。 書店では一般文芸コーナー…

  • リアルな小学生ライフ『小田くん家は南部せんべい店』(髙森 美由紀)

    冷たい思い出より、温かい思い出の方が涙をこみ上げさせるのは、どうしてなんだろう。(本文より) たま~に出題される作家の先月の新作だ。 地元ならではの名産品作りが家業という 少年の小4~小5のあゆみを描いた物語。 これがまたMAXレベルでエモいんだわ。 人情、友情、家族愛がビシバシ響くから。 かつ素材文適性も極限と言えるほど高い。 途中まで使えそうな箇所をメモしてたが ありすぎて途中からは読むのに没頭した。 とりあえず一章の分だけを羅列しとくよ。 素材文に使えそうなくだり(一章より) 適性○ 教室で課外授業の行き先が決定 適性○ 課外授業での思わぬドタバタ劇 適性◎ 帰宅すると意外な出来事に遭遇…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年4月前後)

    4月の新刊は現在判明分では少な目だが 注目作品が2つあり熱量は圧倒的に多い。 その後にも気になる作品がバンバン来る。 毎度言ってるが、未読の作品が多いんで 多分出題向きじゃないのも混じってるよ。 3/27発売 『スタート』(楠 章子) 子どもの危機に差し伸べられる怪しい手。 4/11発売 ☆先行レビュー済☆ 『真実の口』(いとう みく) 中学生たちが保護した少女はもしかして。 4/17発売 『天国からの宅配便 時を越える約束』(柊 サナカ) 真心があったかい天宅シリーズの三作目。 4/24発売 『透明なルール』(佐藤 いつ子) 一軍ぽさを演じる少女が自分の殻を破る。 5/23発売 『6days…

  • 響け、伝われ、先生の願い『ぼくの色、見つけた!』(志津 栄子)

    ぼくは平気だよ。不自由なんかじゃない。そう伝えたいのにうまく伝えられない。(本文より) 今年の入試で少なくとも3校で出てた 『雪の日にライオンを見に行く』での ちゅうでん児童文学賞大賞受賞により 注目作家の仲間入りした先生の新作だ。 発売日は2ヶ月先の5月下旬の見込み。 同時期に直近のちゅうでん受賞作家の 『ブルーラインから、はるか』も出る。 新旧の大賞作家の本が書店に並ぶよ~。 さて、今作では個性に負い目を感じる 少年が自分の特性を軸に変わってく話。 道徳的要素がちょっと強めな物語だし 先生や司書に好まれやすい気がするよ。 素材文適性の面では少なくとも5つは 使えそうなくだりを見つけたんだけ…

  • 大作家、久々の降臨『ともだち』(椰月 美智子)

    弱いほう、人数が少ない側を大事にするのはわかります。でも、優遇するのは違うと思います。(本文より) 椰月美智子先生は児童文学界の大作家で 旧作が頻出だけどこれは今月発売の新作。 毎日小学生新聞連載作でかなり平易だし 小4あたりでも読めそうな印象だったよ。 クラスに大勢の海外ルーツの子供がいる 一風変わった学校の6年生の日常を描く。 もちろん平穏などではなく荒れまくるよ。 とくに生徒たちの連携で先生が動揺する 場面が俺が見たところでは最注目パート。 素材文適性の面ではなんとも言えないが 後半にかけて魅力ある話が多めだろうな。 俺のレビューの一部を以下に置いとくよ。 国際色豊かな小学校で、おっちょ…

  • 【本気レポート】わたしたちの記念日 ~或るゆる受験女子の誓い~

    日頃のメンタルと受験本番のそれは別物だという言説を目にしたことがあります。 実力を発揮できるかどうかは、当日になってみなければ解らないというのです。 今回紹介するのは直前期にもあっけらかんと「受験が楽しみ」と言ってはばからなかった元気女子。 天性の陽気をまとうムードメーカーは、十二歳の二月に何を見たのでしょうか? ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 人生最悪の日(2022年2月4日) ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 私、どこで道を間違ったんだろう。 ソファの隅で膝を抱えたまま考えてしまう。 白すぎるLEDに煌々と照らされた部屋で、さっきから頭の中を同じ言葉がグルグル巡っている。 「こわ…

  • 人間らしさってなんだろう『嘘吹きアンドロイド』(久米 絵美里)

    その時、その瞬間は、真実だった気持ちや言葉も、あとから嘘になることもある。過去の言葉の意味は結局、その人が今をどう生きてるかどうかに左右されるんだ。(本文より) まれに出題される作家の先月発売の新作。 このシリーズは物語で起こる事件により ネットやスマホの問題が自然に学べるよ。 受験に関係なくすすめたくなる一冊だな。 ちなみに、大人の俺にも発見があったわ。 接客ロボットは、見た目とキャラ設定を 子供っぽくしたほうがクレームが出ない みたいな話は特に興味深い話だったわ~。 弱さが愛される理由になるなんて新鮮だ。 確かにガストのロボとか妙にかわいいし。 さて、今作は曲がったことが大きらいな 少女が…

  • 部活動の”三種の神器”『こんな部活あります──ココロの花──華道部&サッカー部』(八束 澄子)

    たまに入試に出る作家の1月の新作だよ。 このタイトルはシリーズ化狙いなのかも。 かなり平易なんで小5でも十分に読める。 尊敬できる先生や、高め合えるライバル、 目標となる先輩などとの出会いを契機に 新入生の男女が変わっていくストーリー。 部活ならではの魅力が凝縮されているよ。 国語の問題文には少女が先生に認められ ますます部活が好きになるエピソードの 周辺などがちょっと使えるかもしれない。 やっぱ尊敬できる人に解って貰えるって 子どもの運命を変える瞬間になるよな~。 また俺のレビューの一部だけ付けとくよ。 主人公は中1の男女。 自分の軸があやふやだった2人が、部活動を通じて憧れの対象を見つけ、…

  • 燦然!これぞ金字塔『カラフル』(阿部 暁子)

    「本当は誰にも迷惑なんてかけたくないよ、私だって」(本文より) 『カラフル』といえば森絵都先生だけど 今回紹介するのは阿部暁子先生の新作だ。 この先生は『パラ・スター』が頻出だな。 今作は車いすユーザーの少女に出会った 高1男子の意識が新生活の中で変化する。 ヒトコトでいえばこんなストーリーだよ。 サラッと書いたがかなり考えさせられる 深みもある物語だからぜひ見て欲しいな。 テーマ注目度、素材文適性はともに◎だ。 希少な優良素材なのは間違いないんだが 児童書ではなく一般文芸カテゴリだから ちょ~っと埋もれやすいような気もする。 何せ書店の一般文芸棚は生存競争が苛烈。 かなり探求心のある問題作成…

  • ボッチに訪れた春『17シーズン 巡るふたりの五七五』(百舌 涼一)

    たった一文字、いや一音にそこまでこだわるのかと音々は驚く。同時に、たった十七音しかないのだから、一音一音にこだわり抜かないといけないのだと悟る。(本文より) 2024年2月に発売されたばかりの本。 出題実績ゼロの児童文学作家の新境地だ。 タイトルで高校生モノと誤解しやすいが 17はおおむね俳句を意味してるんだわ。 で、ストーリーほぼ全てが中学生編だよ。 短歌・俳句扱う作品は入試でわりと出る。 ちょっと思いつくだけでこんだけあるし。 短歌・俳句モノのYA本(出題実績あり) 『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』 『そらのことばが降ってくる: 保健室の俳句会』 『私の空と五七五』 『南風吹く…

  • スーパー校務員の流儀『17歳のビオトープ』(清水 晴木)

    生死に直結しないことに対して、深く悩んで考えられるのは人間に許された贅沢の一つですよ。(本文より) 都立高校入試等で出題実績のある作家の 2023年11月に発売された作品だよ。 人気者の校務員が子どもたちを救う話だ。 校務員がキーマンってなかなか珍しいが キモは授業では触れられない人生論だわ。 これは悩める十代なんかに特に効きそう。 大人にもハッとさせられる部分があるし。 万能校務員の活躍は、どこまでやるのか 面白ネタとして楽しみつつ見て欲しいよ。 それより人生の教科書になる部分がカギ。 しあわせの国ブータンにおける幸福度が インターネットの普及で下がった話では 人と比べることの不幸がよく伝わ…

  • 威風堂々たる『成瀬は信じた道をいく』(宮島 未奈)

    やっぱり、あかりの入試が一筋縄でいくわけないのよ。(本文より) 豊島岡女子や栄東・東大特待での出題で 注目度上昇中の作家のシリーズ二作目だ。 本屋大賞候補作の一作目とともに書店の 目立つ位置を占め続けるのは確実だろう。 つまり、作問者が気づかないわけがない。 今作もスケールの大きい少女が躍動する 楽しさ抜群の作品に仕上がってんだわ~。 全5話の連作短編集だが小4女子視点の 『ときめきっ子タイム』に注目したいな。 本作の中では最も読みやすい短編であり、 それでいて後半の素材文適性が高めだよ。 あとは大学受験編と観光大使編あたりが 適性では△になるけど面白さは抜群だわ。 とくに合格発表のあたりが俺…

  • ラストがヤバイほど沁みる『答えは旅の中にある』(小手鞠 るい)

    「人は死んでも、人の言葉は死なない」(本文より) たまに入試に出る作家の1月の新作だよ。 詩人でもあるためか言葉選びがいいわ~。 冒頭に挙げたフレーズ以外にも百花繚乱。 日本文化が海外でどう見られているか等 米国在住作家だけに未知の話題も多いよ。 つまり、学びがたっぷり盛り込まれてる。 今作は少年と少女の視点で描かれた作品。 彼らが迷いながら自分の求めてる答えに 辿り着こうとあがくストーリーがですわ。 正しさを追い求めようとする流れがよく かっこいい生き方をする大人も魅力だよ。 難易度は普通なので6年生なら読めそう。 以下は俺のレビューからの一部引用なり。 日本にゆかりのある中学生達の人生が旅…

  • エンタメ万歳!『あいにくあんたのためじゃない』(柚木 麻子)

    日本でははっきりした主義主張をすると、必ず大勢の敵を作る。(本文より) この著者は去年、開成で採用があったな。 恵泉女学園を描いた『らんたん』もいい。 さて、本作は極上のエンタメ小説ですわ。 ストレスがたまってたまって限界になり そこから胸のすくような流れに持ってく ジェットコースターみたいな落差が最高。 そうきたかーって叫びたくなる意外性も あるから気持ちいいほどよく騙されるよ。 素材文によさげな箇所は少ないんだけど 弾むようにページが進む楽しい作品だな。 発売日は来月21日で間違いなく書店の 目立つ場所に置かれることになるだろう。 文章の難易度は例の分類で、やや難相当。 以下、出版社に送っ…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年3月前後)

    3月の新刊も現在判明分では少な目かな。 追加でわかったらこの記事に書き足すよ。 毎度言ってるが、未読の作品が多いんで 出題向きじゃないのも多分混じっている。 2/26発売 『なんでもないあの人』(濱野 京子,林 けんじろう,椰月 美智子,昼田 弥子) 『きらいなあの人』(工藤 純子,蓼内 明子,花里 真希,黒川 裕子) 君色パレットシリーズから二冊同時発売。 2/26発売 『カラフル』(阿部 暁子) 高校入学の日、二人は事件を機に出会う。 2/26発売 『17シーズン 巡るふたりの五七五』(百舌 涼一) 俳句で未来を切り開く中学生たちの物語。 2/29発売 ☆先行レビュー済☆ 『さよならミイラ…

  • 鳴りひびく警鐘『となりのきみのクライシス』(濱野 京子)

    子どもの権利を守るのは、大人の責任です。でも、世の中には、いい大人ばかりではありません。(本文より) 割と入試に出る作家の先月発売の新作だ。 思わぬ気づきをくれる異色作という印象。 児童書でここまで子供達に警鐘を鳴らす 作品ってなかなかないんじゃないかな? 何しろ先生の犯罪やらいかれた親やらが 次から次へと出てくるから、さあ大変だ。 一方で、主人公の兄だとか新しい先生が いい役を演じていて救いになっていたよ。 テーマ的に扱いが容易でない素材だけど 素材文適性は中盤以降に少しあるかも? 俺のレビューの始めの方はこんな文章だ。 「子どもが親の責任なんか取れるわけないだろ」という言葉が刺さりました。…

  • ジャケ買いアリの鷗友選書『お菓子の船』(上野 歩)

    いいか、大事なものがあるから、生きる価値が生まれる。おまえたちも生きるに値する大事なものを探せ。(本文より) 鷗友学園での出題を機に出会った良本だ。 お仕事小説なんだが一生懸命な主人公が 力をくれるから幅広い層に薦めたくなる。 海軍時代の祖父のあゆみを追う部分には 思わぬ発見なんかもあってトクした気分。 旧海軍に給糧艦という食糧庫、食品工場、 料理店を兼ねる艦があったなんて初耳だ。 大勢の腕利き職人を乗せてたその軍艦で お菓子も作っていたと知り二度ビックリ。 さらにその船の運命には言葉を失ったよ。 これは平和のありがたみを教えてくれる。 以下、俺のレビューの中盤から一部抜粋。 心に刻まれた亡き…

  • エネルギー溢れる『オランジェット・ダイアリー』(黒川 裕子)

    目標が無いんじゃなくて、目標を作りたくない。かなわないのに、努力するのが怖いだけ。(本文より) 悩める少女の心情がリアルに感じられる たまに出題のある作家の11月の作品だ。 序盤のノリの良さはこの著者の特色だな。 スッと物語に入り込めそうな作りですわ。 主人公からは太陽のように思われていた ガーナハーフの少年の葛藤もみどころだ。 普段何気なく食べていたチョコレートの 原料を作るために危険な手作業がある等 かな~り勉強になる話も詰まっていたな。 国語素材によさげなのは中盤の職場体験、 終盤の祖父の見方が変わるシーンなどか。 平易で小5でも十分読めそうな本作品の 俺が書いたレビューの断片がこれです…

  • 深みも魅力な本郷選書『君が残した贈りもの』(藤本 ひとみ)

    どんな人間も、一つのことに専心すれば自分を超えた何者かになれるかも知れない。(本文より) 毎年のことだが、出題作を追っていくと 未知のいい本に出会えるから嬉しくなる。 これは今年の本郷中入試で使われた作品。 探偵チームKZシリーズの著者が書いた 重厚で読み応えのある青春小説だったわ。 長編だが謎要素を複数織り交ぜてるから 飽きるヒマもないまま一気読みできたよ。 本筋とは離れるけど、野球部の前監督の 卒業後を見据えた教育理念も素晴らしい。 車いすの先輩の願いにも気づきがあった。 KZシリーズの一つだと後から知ったが 過去作品を未読でも何ら問題なかったな。 純粋に楽しみつつ学びも得られましたわ。 …

  • 闇堕ちしないための妙薬『苺飴には毒がある』(砂村 かいり)

    どす黒い感情に巻き込まれたくない。その気持ちを手放したら、人間として何かが終わってしまう気がする。(本文より) たぶん出題実績のない作家の11月の本。 中受界隈では誰も注目してなさそうだわ。 友のハラスメントっていう異色テーマで 入試向けには選びにくそうではあるけど なかなかどうして、これが面白いんだよ。 それでいて、道徳的な良本では扱わない 生きていくうえで必要な知恵が得られる。 頑張ればわかりあえるって価値観なんて 時としてクソの役にも立たないだとかな。 毒をまき散らしまくる幼馴染が邪魔だし 素材文には多分しにくいが強いて使える かもしれない箇所を以下に挙げてみたよ。 微妙に狙い目っぽいく…

  • 雨のちハテナ『彼女たちのバックヤード』(森埜 こみち)

    しんどいときってさ、言いたくもないことを言ったり、したくもないことをしちゃったりすんの。(本文より) たまに出題される作家の1月の新作だよ。 女子中学生3人が主人公の連作短編集で 過去作品よりも選ばれやすそうな印象だ。 序盤に友人関係が荒れるが、それが何を きっかけに変わっていくか見て欲しいな。 素材文適性は3章後半の公園での二人の 会話シーンが◎、4・5章が△、6章は これまた公園が舞台になるあたりが○か。 ラストの7章は無印だが最も心に効いた。 読み終わった瞬間に、すっげえぞコレは な~んて吠えて家族に驚かれちまったわ。 平易で読みやすく後味も素晴らしい本作。 俺のレビューの後半部分はこん…

  • あまりに偉大な長編作品『山ぎは少し明かりて』(辻堂 ゆめ)

    個性も、特技も、肩書も、目標もない。だからこそ、これからの自分次第で、何者にだってなれるんじゃないか。自分が何者か、分からない今が貴重なのだ。(本文より) 今年の桜蔭作品と肩を並べるような大作。 入試では見ない作家の11月発売の本だ。 当然、中受界隈での注目度はゼロだろう。 読友さん達の推奨が激しいんで読んだが いっぺんで重厚さに魅せられちまったよ。 この本に気づける作問者は稀だろうけど 素材文適性はそれなりにありそうですわ。 特に注目したいのは主人公の10歳から 23歳あたりまでを描いている三章序盤。 素材によさそうな三章序盤のシーン △足を負傷し少年に助けられる10歳時 △幻想的な蛍の光が…

  • 新たな知見に満ちた桜蔭選書『百年の藍』(増山 実)

    美しいものが、アメリカの匂いがするというだけで排撃される世の中なんて、狂っています。私は狂っている世の中に合わせるつもりはありません。(本文より) 今年の桜蔭は大人向け重厚作品だったな。 これはサレジオ学院でも使われていたよ。 さっそく読んでみたが小学生は超上級の 読書力がないと序盤で挫折しそうな印象。 それだけ大正から戦間期の描写は難しい。 大人としては十分に楽しめるんだけどな。 六章の男子高校生視点で始まる章などは 舞台が戦後だし割と取っつき易そうかな。 桜蔭で使われた箇所とは違うんだけどよ、 三章と六章に素材文適性がありそうだわ。 特に三章のずっと憧れてたセーラー服を 初めて着る日の話は…

  • その生き様が魅力的な『あけくれの少女』(佐川 光晴)

    大人には大人の事情がある。多少は気になるじゃろうが、子どもは知らん顔をして、よくあそび、よく学べばいい。そして世の中に放りだされても生きのびていけるだけの力を、どうにかして身につけるんじゃ。(本文より父の言葉) 有力な出題候補作の紹介が続いていくよ。 佐川光晴先生は入試でおなじみだよな? 本作品は昨年12月に発売された新作だ。 合理的に考えるクセが身に付いた少女が 心に描く夢に向けて突き進むストーリー。 本人はすんごい頑張るのに環境がヤバイ。 それでも折れずに生き抜く生き様が凄い。 夢のために必死に学んだ英語が身を助け 一生懸命な姿が周囲をも惹きつけていく。 自学力が幸せにつながる点でもいい話…

  • 私たちにできること『真実の口』(いとうみく)

    終了組のみなさまは大変お疲れ様でした。 ゆっくり羽を休め、次に進めるといいな。 紹介本からの2024年入試出題実績は、 引き続き各種情報を元に更新していくよ。 今回は作成中の来年入試向け出典予想で いきなり暫定首位になった作品の話題だ。 ちなみに次点は『リカバリーカバヒコ』。 発売は2ヶ月先の4月9日頃になりそう。 高校生が思わぬ流れで気づきを得ていく。 一言で言っちまうとそんなストーリーだ。 頻出作家が選書ドンピシャの時期に出す 注目テーマの作品としても目が離せない。 のほほんと生きてる坊ちゃん嬢ちゃんに 見とけや!と言いたくなる内容だったな。 かつ大人にも刺さるストーリーなんだわ。 アキラ…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2024年2月前後)

    2月の新刊はちょっと少な目のようだね。 追加で判明したらこの記事に書き足すよ。 1/30発売 『こんな部活あります──ココロの花──華道部&サッカー部』(八束 澄子) 入学式で運命的な出会いをする少年少女。 2/1発売 『すきなあの人』(神戸 遥真,令丈ヒロ子,少年 アヤ,こまつ あやこ) 多様性を体感する君色パレットシリーズ。 2/13発売 ☆先行レビュー済☆ 『八秒で跳べ』(坪田 侑也) 若き俊英が描いた青春バレーボール小説。 2/26発売 『なんでもないあの人』(濱野 京子,林 けんじろう,椰月 美智子,昼田 弥子) 『きらいなあの人』(工藤 純子,蓼内 明子,花里 真希,黒川 裕子) …

  • おちゃらけドタバタ劇とは違う『キオクがない!』(いとう みく)

    人ってつくづく、経験や体験の上に成り立っていくものなんだと思う。それを失った状態の僕は、僕自身の軸がどこにあるのかがわからない。(本文より) 入試頻出作家が昨年11月に出した新作。 この先生はシリアス作品がよく選ばれる。 本作はエンタメ色が強いと予想してたが、 読んでみたら意外にもシリアス系だった。 記憶を失った少年の苦悩がガチで描かれ 胸にズシリと迫るものがあるんだもんよ。 序盤に提示される謎要素を引っ張るから 読み始めたら多分止まれなくなるだろう。 相手の立場で想像することの大切さなど、 道徳要素が濃い目なのにメッチャ面白い。 説教臭くならずにこれができるところが いとうみく先生の凄いとこ…

  • ジャイアンのかなしみ『神さまのいうとおり』(谷 瑞恵)

    みんな、いろんな壁にぶつかってきているのだから、人並なんて、どこにもない。(本文より) 子どもの受験のときに栄東で出たもんで 慌てて買った本だが当時は読めなかった。 本命の入試まであとわずかだと思ったら 気が急いて文章が頭に入ってこなくてよ、 あのころは本のレビューも書けなかった。 自分自身の受験でもないのに笑えるだろ。 さて、本作は前触れなく複数校で出た本。 風習や言い伝えを残す田舎に越してきた 訳アリ家族を軸に描かれた連作短編集だ。 未知のしきたりやその背景が面白いけど 序盤の不穏さは少し入り込みづらいな~。 素材文適性◎の第三話『猫を配る』から グッと面白くなると俺なんかは感じたわ。 ジ…

  • 切なさ、ここに極まれり『さよならミイラ男』(福田 隆浩)

    どうしてみんなと同じことができないんだろう。小さいころは、そう何度も思った。(本文より) 入試ではあまり見ない作家の来月の新作。 この先生の本は優良図書が多いんだけど あんまし使われない理由はなんだろうね。 今度の作品は過去最高に気に入ったわ~。 家庭に深刻な問題を抱え学校で問題児と みなされる少年があがくストーリーだよ。 いじめられっ子の彼が立ち上がる場面は 涙腺的にも鳥肌的にも、くるものがある。 重いテーマなのに読後感がいいのが凄い。 テストの素材にも使えそうだと感じたわ。 アノ要素の扱いがちょっと難しいんだが そこは逆に作問者の腕の見せどころかな。 今回は俺の先行レビュー全文をあげとく。…

  • さすがの受賞作『夜に星を放つ』(窪 美澄)

    つらい思いをするのはいつも子どもだけれどね。(本文より) 2022年に発売された直木賞受賞作だ。 今更ながらに読んでみて見事にやられた。 傷ついた人々の話だが読むと救われるよ。 実にいい短編がたっぷり詰まってるから。 とくに鉄人会予想『星の随に』は桁違い。 少年の心情をキレイにすくい取ってるし、 素材文適性でいえばまちがいなく◎だよ。 長年愛される作品になるんじゃないかな。 『銀紙色のアンタレス』は少年の慕情が 瑞々しくって素材文適性△という印象だ。 やや難しいがマセた子なら小5でいける。 俺のレビューのカケラはこんな感じだよ。 『夜に星を放つ』感想・レビュー 年代も性別も様々な主人公たちがあ…

  • 戦火のもと、不可能に挑む『タスキ彼方』(額賀 澪)

    自分のことを、小説の主人公だと思い込むんです。すると不思議なもので、自分の意識と体が切り離される感覚がして、緊張せずに言いたいことがすらすら出てくるんですよ。(本文より) たまに入試に出る作家の12月発売の本。 新旧両方の箱根駅伝の魅力を味わえるよ。 特に戦時中のエピソードにはやられたわ。 次から次へと感情を揺さぶる展開がくる。 知っておいて損のない知識も出まくるし これは出来たら読んで欲しいところだよ。 例えば戦時中の甲子園は選手交代が禁止、 なぜなら突撃精神に反するから、とかな。 球場で赤紙が来た観客の名前が放送され 観客が一斉に拍手する慣行もあったそう。 いかに狂った時代だったかがわかる…

  • 学びをトコトン楽しんで『線は、僕を描く』(砥上 裕將)

    成功を目指しながら、数々の失敗を大胆に繰り返すこと。そして、学ぶこと。学ぶことを楽しむこと。失敗からしか学べないことは多いからね。(本文より) わりと入試で出ている2019年の旧作。 旧作の推奨リストに入れなかった理由は 映像化され回避されるかもと感じたから。 けど名作だしせっかくだから紹介しとく。 大変な境遇の青年が、思わぬきっかけで 水墨画の世界に足を踏み入れていく話だ。 人の心の温かさに心を打たれると思うよ。 つらいときに力をくれそうでもあるわ~。 断片だがオレのレビューはこんな感じだ。 心が通い合うことの美しさを教えてくれる作品。 主人公は大きな喪失体験で心が動かなくなった青年です。 …

  • 驚きが止まらない『ずっとそこにいるつもり?』(古矢永 塔子)

    陽キャにばっか愛想笑いして、自分がターゲットにされないように振る舞うだけで精一杯なんですよ。(最終話『まだあの場所にいる』の本文より) 入試では見ない作家の10月の新作だよ。 短編集で大人視点の話が多くて子供には 共感しづらいだろうな~とは思うんだが ひとつ強烈に薦めたい話があったんだわ。 それがラストの『まだあの場所にいる』。 中高一貫校に転校してきた子の生き様が きっと読む人の心をとらえて離さないよ。 不自然な程クラスに馴染み過ぎる少女が 騒動に巻き込まれてどうなるか要注目だ。 ラストシーンの躍動感があまりに強烈な この短編は小学生にも刺さると思うな~。 あとは、子ども食堂に生きがいを感じ…

  • みなぎる活力『風が吹いたり、花が散ったり』(朝倉 宏景)

    なんで、俺たちはもっと器用に生きられないのだろう?(本文より) 『あめつちのうた』が頻出な作家の旧作。 文庫化を機に読んでみたが大当たりだわ。 過ちを犯した少年が負い目を隠しながら 目の不自由な少女のサポート役になって マラソン走破の手助けをするストーリー。 大別すると職場編と競技編になるんだが とくに職場エピソードがエモいんですわ。 しかも競技編の方も胸熱展開になるしよ。 で、それらの話が絡み合っていくもんな。 いやー、楽しく読んで元気までもらった。 これ、作問者の先生は気づかないかな~。 素材文適性も結構あると俺は感じたけど。 以下、満ち足りた俺のレビューから抜粋。 なんて美しい物語なんだ…

  • 短歌少女が駆け抜ける『わたしたちの歌をうたって』(堀 直子)

    稀に出題される作家の2022年の作品。 小4あたりからいけそうなレベル感かな。 つまり紹介本の中ではかなり平易な部類。 オレは軽い気持ちで読み始めたんだけど、 主人公が自分の殻を破る場面で涙目だよ。 泣いてるのがバレないよう必死で堪えた。 これには自分自身が一番驚いちまったな。 マイレビューの序盤は以下に引用しとく。 主人公はクラスで浮いてる小学四年生。気持ちを出していくのが苦手な彼女が、まわりに生意気扱いされる訳アリ転校生の事情に触れ、関わり合う中で、自分の殻を破るきっかけを掴んでいきます。 『わたしたちの歌をうたって』感想・レビュー 短歌×友情(2022年10月)

  • 知識欲までそそられる『はじまりは一冊の本!』(濱野 京子)

    ちがうタイプだからいいのかな、とも思うの。自分には考えつかないようなことを言ったりするから、新鮮っていうか。(本文より) たまに入試に出る作家の昨年9月の新作。 この先生は明日発売の本にも要注目だよ。 今回の紹介する作品の主人公は小6男子。 目標がある級友をまぶしく感じてた彼が、 自身を輝かせるものを見つけていく話だ。 本ができるまでの流れが解りやすくって 小4あたりでもスイスイ読めそうな感じ。 知ることのワクワク感も伝わってくるよ。 しかも、いい終わり方をするんだよな~。 俺のレビューの断片はこんなテイストだ。 本の向こうに著者だけでなく、編集者を含めたさまざまな役割の人々の貢献があると解り…

  • 紹介作品からの出題(2024年度中学入試の国語出典・随時更新)

    相変わらず笑っちゃう程アクセスが無い 寂れ切ったサイトからお知らせしますよ。 俺の情報網では一部しか拾えないんだが、 旧作も含めて紹介本から出た学校のうち、 現時点で判明しているものは以下の通り。 『教室のゴルディロックスゾーン』(こざわ たまこ) 栄東A1 『きみの話を聞かせてくれよ』(村上 雅郁) 栄東A2 『成瀬は天下を取りにいく』(宮島 未奈) 栄東(東大特待) 『街に躍ねる』(川上 佐都) 愛光 『シタマチ・レイクサイド・ロード』 (濱野 京子) 佐久長聖(2回目) 『あと少し、もう少し』(瀬尾 まいこ) 埼玉栄 以上はここでレビューを書いた作品たち。 +++++++++++++++…

  • 決意を胸に『優等生サバイバル: 青春を生き抜く13の法則』(ファン・ヨンミ)

    プレッシャーもかけすぎると逆効果だよな。大人はそういうところをわかってない。(本文より) 海外作品はそれほど頻出にはならないが 去年の『5番レーン』みたいに複数校で 出題された韓国文学なんかもあるからな。 今回紹介するのは昨年7月に発売された 韓国の進学校の青春を扱った作品ですわ。 サバイバルって題名にいい印象がなくて 軽い気持ちで読み始めたがこれがアタリ。 俺は主人公の熱い決意が気に入ったよ! 成績のことで悩む子が何人も出てくるし 受験生には特に刺さりそうな作品だな~。 様々な解決策があり参考にもなるだろう。 主人公は討論するクラブに入っているが そこでの会話にも気づきが多いんですわ。 自分…

  • 可能性を無駄にしないために『毒をもって僕らは』(冬野 岬)

    昨年3月発売のポプラ社小説新人賞作品。 少年視点の物語だけど、中学受験界隈で 話題になっていないのはダークさゆえか。 いじめの凄惨さなんかちょっと引くもん。 主人公の心情の危うさも教科書的でなく そこが読者を惹きこむ要因でもありそう。 毒が強く素材文適性はあんまりないけど 読みだすと怖いもの見たさで一気だろう。 俺のブックレビューはこう締めくくった。 驚かされ、そうきたか!と膝を打つものもあれば、私の感性が追いつかない部分も少々。ともあれ、響いてくるものは確かにあり、時間を忘れ読み耽りました。 安っぽい感傷をバッサリ切り捨てるくだりは特にド迫力! 持てる可能性を無駄にしないために何ができるのか…

  • 少年の本気度『アオナギの巣立つ森では』(にしがき ようこ)

    身近にある物を見直すきっかけになる本。 たまに出題される作家の10月の作品だ。 素材文適性はそれなりにありそうな印象。 文章難易度は5年生でも読める水準だよ。 オオタカや刀鍛冶がいる土地が舞台ゆえ 非日常な暮らしぶりが新鮮に映るだろう。 自然界と人の身勝手さの相克も見どころ。 目標を見つけて目の色が変わる主人公に 読んでるこちらまで影響されそうな物語。 俺のレビューの内容紹介パートがこれだ。 主人公は本気になれるものが何もない小学6年生。まわりの子との温度差に焦りを抱いていた彼が、夢に真っ直ぐな少女や、世にも珍しい生き物などと関わるなかで、とことん熱くなれる道を見つけていくストーリーです。 『…

  • 弓の素晴らしさも伝わってくる『たまごを持つように』(まはら 三桃)

    一歩一歩しか歩けないのなら、長い間歩いていればいい。(本文より) 2009年に出た優先度Aランクの旧作。 これも長年にわたり愛されてきた小説だ。 努力し続けることの大切さを訴えかける 青春小説なんであらゆる層に薦めたいよ。 弓道を扱うけど斜面と呼ばれる少数派を 題材にしてて主流とは様々な面で異なる。 オレも大学までは弓道部員だったんだが よく調べてんな~と驚かされちまったよ。 日置流弓道の普及にも貢献しそうな本だ。 以下は、俺の古いレビューの要約部分だ。 主人公は弓道に打ち込む中学生。不器用で壁にぶつかっていた彼女が決して順調でない経過をたどりながら、個性あふれる仲間とともに心・技の両面で力強…

  • 月並みじゃない青春『ナカスイ!海なし県の水産高校』(村崎 なぎこ)

    中学入試で出題実績が無さそうな著者の 昨年3月に発売された10代向け小説だ。 読みやすい文章で知らない世界のことを 身近に感じさせてくれるストーリーだよ。 素材文適性は程々だが学びは多そうだわ。 12月に続編も出てるから気に入ったら そちらのほうも読んでみるといいだろう。 俺のレビューの前の方はこんな文章っす。 主人公は自分を変えたい普通女子。 下宿してまで水産高校に通うと決めた彼女には、表向きの理由とは別の意図がありました。 驚いた!栃木の水産科って実在するんですね。 ありもしないものを面白おかしく書いた本なんかじゃないです。 世にも変わった授業や実習、個性派ぞろいの先生や生徒たち。 ページ…

  • まぶしさ溢れる夏の日々『14歳の水平線』(椰月 美智子)

    『しずかな日々』で知られている作家の 2015年に出た優先度Aランクの旧作。 この本もまだまだ入試で見ることがある。 ありふれた新刊より先に読むべき名作だ。 すべてにムカついていた主人公の少年が 父の故郷の島でどう変わるかに注目だよ。 読めばキャンプの魅力に取り憑かれそう。 以下は俺がむかし書いたレビューの一部。 父と二人暮らしの中学2年生の少年が都会の喧騒から遠く離れた小さな島で体験する”しずかじゃない日々”。同じ夏休みの非日常体験を描いている『しずかな日々』と比べると、物語の舞台も人物もキラキラしていて、読みながら明るい気持ちになれましたよ。 『14歳の水平線』感想・レビュー みんな、こん…

  • アイデア冴える『満月のとちゅう』(はんだ 浩恵)

    興味がない。だからやる、見る、聴く。発見がある。(本文より) コピーライター兼作家の10月の新作だ。 フレーベル館ものがたり新人賞で大賞の 『ソラモリさんとわたし』の続編ですわ。 この先生が紡ぐ言葉はとてもユニークで ちょっとしたフレーズにも煌めきがある。 最初のアイデアに飛びついてはいけない、 筆が止まったら心に風を通したらいい等、 幅広~くで役立ちそうな名言もしばしば。 なにより、今作でもスイーツに滅法弱い 子供みたいな大人ソラモリさんが面白い。 かつ仕事モードとのギャップで魅力倍増。 大人にも子供にも学びのある愉快な本だ。 俺のレビューの前半はこんな勢いですわ。 言葉選びが凄い! コピー…

  • ようこそ、活字の世界へ『さがしもの』(角田 光代)

    開くだけでどこへでも連れてってくれるものなんか本しかないだろう。(本文より) 『この本が、世界に存在することに』は 2005年にでた作品集だが、改題して 『さがしもの』になったっていう話だよ。 優先度Aランクの旧作だが今も人気抜群。 同じ作品でも読むときの気分によっては 全く違った印象になるって話が刺さった。 つい懐かしい本を再読したくなったな~。 俺はかつて表題作を人生を変え得る作品 な~んて評しながらこう要約していたよ。 悪い出来事が起きるよりも、悪いことが起きるのではないかと思う考えの方が怖い。出来事より考えが怖い。だから悪い方へ考えないようにしよう。目先のことを一つずつ片付けながら。 …

  • 抑圧と混乱のさなかで『尊敬する人はいません(今のところ)』(中山 聖子)

    「その人たちは僕じゃない」(本文より、他人を引き合いに諭そうとする親に対して少年が放った言葉) まれに出題される作家の10月の作品だ。 母と暮らす普通の少女と優等生然とした 少年の視点で子どもの抱えるモヤモヤを 思い切ったストーリーで露わにしてくよ。 ときに生易しくない現実を活写していて 児童書らしからぬ瞬間もあって面白いわ。 以下は俺が書いた感想からの一部抜粋だ。 子どもたちの感情の発露が圧巻!親たちの反応には虚を突かれた感もありました。少女の割り切れない感情への気づき、少年の不完全さへの気づき、どちらも大切ですね。大人の私にも心地よい読書体験になりましたよ。 『尊敬する人はいません(今のと…

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