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  • 少年の思いやりに癒される『奉還町ラプソディ』(村中 李衣)

    稀に出題される人の昨年11月発売の本。 登場する人物やお店はフィクションだが、 岡山に実在する商店街を舞台にしている。 老人と少年達のかかわりを描いた作品だ。 全6話の短編集だが3話以降がいい感じ。 特に4話の博多に老婦を連れていく話は 出題要素がちょっと多めな印象だったわ。 まぁ、小4でも読める難易度の文章だし 入試出題レベル未満かもしれないけどな。 紹介文はこんな感じの書き出しにしたよ。 歴史が古く、お年寄りだらけという奉還町商店街が舞台。主人公は越してきたばかりの小学5年生です。老人に好かれやすい彼が、元気印の友人とともに、存亡の危機にある商店街で立ち回りる姿が活き活きと描いています。 …

  • 馴染みの本が次々と出る『27000冊ガーデン』(大崎 梢)

    本から得られるものは無限であり、それは誰にとっても平等だと信じていたい。(本文より) たまに出題される作家の本日発売の本だ。 学校司書が出る話だし割と出題のあった 『教室に並んだ背表紙』も連想したけど 謎解きに重きを置いててあんま似てない。 的中狙いみたいなあざとさからは離れて 肩の力を抜いて楽しむにはよさそうだな。 俺が書いたレビューの前半はこんなだわ。 高校を舞台に、学校司書が書店員の力を借りながらちょっとした事件を解決していくストーリーです。 あせらずに子どもたちをじっくり、あたたかく見守る主人公。普段は深く立ち入らないけど、いざというときには進み出ていく彼女の活躍が微笑ましいですね。 …

  • テーマ的にも大アリな『金曜日のあたしたち』(濱野 京子)

    どこで学ぶかではない、何を学ぶかだと、中学の担任教師から言われた。(本文より) 割と入試に出る作家の6月発売予定の本。 環境問題に取り組む高校生が描かれてる。 無関心だった少女の変わりように注目だ。 貧困・格差といった問題にも触れていて、 理・社の勉強になりそうな箇所まである。 それだけだと子供ウケしにくいだろうが、 恋愛や友情の要素も絡めて飽きさせない。 しかも大人が読んでも学びがあるときた。 物語の力で行動を変えてしまえるほどに。 出題に適した箇所はあんまし多くないが テーマ的には見逃せない作品だろうな? 以下は出版社に送った感想の全文ですわ。 楽しみながら環境問題まで学べてしまう稀有な作…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2023年5月前後)

    5月前後の新作で気になってるのは以下。 追加で判明したらこの記事に加えてくよ。 4/25発売 『ノクツドウライオウ 靴ノ往来堂』(佐藤 まどか) 靴職人の世界に足を踏み入れる少女の話。 5/17発売 『鳥』(小手鞠 るい) 鳥好き少女が小鳥の死を通じて得るもの。 5/17発売 『みつばの泉ちゃん』(小野寺 史宜) 欠点だらけの愛されキャラの生きるみち。 5/25発売 『文通小説』(眞島 めいり) 親友の急な転校で始まるほんとうの文通。 6/22発売 ☆ 先行レビュー予定 ☆ 『金曜日のあたしたち』(濱野 京子) 高校受験に失敗した主人公の再生の物語。 毎度言ってるが、未読の作品が多いんで 出題…

  • 揺らぐ少年の心模様『街に躍ねる』(川上 佐都)

    もちろんぼくが受験を選んだのは周りに合わせたからじゃなく、伝記マンガを読んだ結果、なにごとも勉強が大事だということを知ったからだ。(本文より) ポプラ社小説新人賞の特別賞受賞作だわ。 率直に言って、出だしは読みにくかった。 子どもの視点に感情移入がしづらくって。 序盤を乗り切ると、ぐっと惹き込まれる。 こりゃアカンと思っても堪えて欲しいな。 中盤にかけては、面白さが尻上がりだし 入試素材に適した箇所も結構あるからよ。 俺のレビューの書き出しはこんな感じだ。 世間の同調圧力に一石を投じる作品。自閉症の兄を気遣う小5男子が主人公です。優しい兄のことを大切に思う一方で、奇行を同級生に見られたくないと…

  • 好奇心が走り出す『イコトラベリング1948−』(角野 栄子)

    疎開先から帰って来る子どもたちで、東京の私立学校はどこも満員状態だったのだ。(本文より) 『魔女の宅急便』著者による自伝的小説。 複数校で出題された『トンネルの森』の 続編にあたる作品ってことで読んでみた。 前作も素晴らしかったがこの本も凄いな。 出題って面では、特に中学生時代を描く 最初の章に素材に適した箇所が山盛りだ。 女子中学校2年に編入してからの部分で 数学教師とのやりとり、ドーナツパート、 3年次の編入生パートなどは特にいいよ。 高校編から先にも使えそうな部分がある。 素材の使い勝手って点では◎だろうな? なお、著者の経歴からみて主人公が通う 女学校は大妻中学・高校ってことになる。 …

  • さらなる高みへ『金色の羽でとべ』(高田 由紀子)

    弱みだと思っていることが、武器になるかもしれませんよ。(本文より) YA世代向け新作が出題されやすい人の 3月に発売されたバレーボール小説だわ。 5年生の主人公が思わぬ役割を任されて、 戸惑いながらも奮闘していくアツい話だ。 予想外の展開になるんで驚くと思うよ? 文章の難易度は中学入試出題標準レベル。 一方で使えそうな部分は限定されそうだ。 バレー用語が多い箇所は選びづらいから。 以下に俺のレビューの後半を引用しとく。 主人公だけでなく、チーム一人ひとりの変化もみどころ。とことん嫌味な敵役の違った一面が描かれているところも良かったです。一生懸命になることの美しさ。喜び合うことで生まれる力。この…

  • 開成で恵泉『終点のあの子』(柚木 麻子)

    今年の開成出題作品なんだが、面白いよ。 女子校の人間関係を掘り下げてる作品で、 男子校でこれ出すか?って思ったけどな。 ま、開成が意外な旧作を出してくるのは いまに始まったことでもなんでもないが。 恵泉中高出身の作家が母校を描いた本は 前に紹介したんだが、この小説の舞台も 立地からして恵泉っぽい感じ濃厚ですわ。 鴎友らしき要素も少し混じってるけどな。 多分読み始めると止まらなくなるだろう。 出題箇所の続きとかめっちゃ凄いからよ。 俺が書いたレビューの序盤はこんな感じ。 女子校生活で起こる様々な波風を描いた連作短編集。多彩なキャラクターが出てきますが、摩擦のない日々を過ごしていた子が豹変していく…

  • 自分の軸を大切に『嘘吹きパスワード』(久米 絵美里)

    小6がスマホのトラブルに巻き込まれる 筋書きだったコレのシリーズ2作目だわ。 今度は中学一年生になった彼らの物語だ。 前作も子どもに読ませたい一冊だったが 今作もなかなか勉強になる本だったな~。 スラスラと楽しく読めてマナーを学べる。 ネットだけでなくリアルも疎かにしない。 どこに落とし穴があるか解説まであるし。 ハッキングの手口は大人も知らなそうな 手法にまで触れてて、クラッカーだとか 迷惑動画をあげる人の心理も掘り下げる。 入試に出る系の作品とは毛色が違うけど 小中学生の必修にしたいとすら感じたわ。 印象的だったのは、父親が上げた投稿で 娘がストーカー被害にあったっていう話。 俺のレビュー…

  • そのとき子どもを守れるか?『神無島のウラ』(あさの あつこ)

    いろいろ抱えちょる子についつい目がいってしまうんです。じゃどん、表面的に問題なか子が内側も問題なかとは言い切れませんからね。(本文より) 令和の『二十四の瞳』だと帯で謳ってる。 もし感動の教師モノだったら出題者にも 選ばれやすそうだがさてこの本はどうか。 結論から言うとちょっと選びにくそうだ。 素材にしやすそうな箇所が少ないうえに、 難解な方言がネックになりそうだからよ。 子供に見せるのを躊躇わせる部分もある。 児童虐待がこの本の一貫したテーマだし。 強いて素材になる箇所をあげると5章か。 ここから主人公が先生らしさを見せるし。 次点は6章の標準語会話のパートかな~。 ま、入試問題になるかとか…

  • せつない境遇の子どもたち『つぎはぐ、さんかく』(菰野 江名)

    おいしいという言葉はいつでも私を助けてくれる。(本文より) ポプラ社小説新人賞の受賞作品なんだが 書店の扱いが大きいし良く売れてそうだ。 いいクチコミも急拡大中だったりするよ。 途中まではこの設定は何?なんで受賞? とか感じてたけど尻上がりに良くなるわ。 自分も誰かの心のよりどこりになりたい な~んて気持ちにさせてくれる本だった。 明日を生きる勇気をもらえそうでもある。 新人の作品ながら注目度は高めだろうな。 マイレビューの書き出し部分はこんなだ。 若すぎる3人が身を寄せ合うようにして営む惣菜店が舞台。身勝手な大人たちに振り回され、狭い世界の中であがいていた彼らが、外に目を向けしっかりとした一…

  • 新しい発見がある『私学の校舎散歩』(片塩 広子)

    コチラさんで紹介されていた新刊本だわ。 子どもが学校に関心を持つとっかかりに なりそうなんで、衝動買いしちまったよ。 ふんだんに絵を使った学校紹介なんだが、 元は『進学レーダー』の人気連載らしい。 1校あたり4ページでも情報量が凄いよ。 よく知っているはずの学校のことなのに、 この本を見て初めて知ったネタもあるし。 これは見といて損はないんじゃないかな。 現時点でアマゾンで定価以上になってる。 既に受験生の親にちょっとしたブーム? このイラストレーターにはうちの学校も 紹介してくれって依頼が来まくるかもな。 著者あとがきもイイネ!

  • 類まれなる良素材『風を彩る怪物』(逸木 裕)

    ちょっと見ただけで3つの県で出ている。 2023年度の公立高校入試で最頻出? 公立高と難関中は素材がかぶりやすいし、 今後出題されてもおかしくないだろうな。 去年の公立高頻出本も今年中学で出たし。 ※その他の素材かぶりの例 桜蔭22’&静岡県公立高校23’ 豊島岡女子学園23’&愛知県公立高校23’ 鷗友学園女子23’&三重県公立高校23’ 海城21'&山梨県公立高校22’ ※ほか毎年多数あり、上記はほんの一例。 『風を彩る怪物』はまれに見る良素材だ。 面白いって面でもそうだが特に最初の章、 素材文にしやすい箇所が目白押しだから。 とはいえ、凄~くボリューミーな本だよ。 かなりの本好きでないと…

  • 今さらながらの『水を縫う』(寺地 はるな)

    個性は大事、というようなことを人はよく言うが、学校以上に「個性を尊重すること、伸ばすこと」に向いていない場所は、たぶんない。(本文より) 2021年度中学入試の最頻出作品だが、 公立高校でも九州の四県など多数で出題。 去年も今年も続けて中学入試で出てるし、 新作をチェックする前に読むべき本だな。 受験生は第1章だけでも見ておくといい。 無気力系男子に起こる変化が面白いから。 以下は俺のレビューの書き出しの部分だ。 めんどくさがりで他人に無関心だった高1男子が、姉のウェディングドレス製作に乗り出し、疎遠だった父の協力も得ながら、唯一無二の衣装を作り上げていきます。 bookmeter.com 『…

  • 入試問題が難しかった学校(2023年 国語編)

    今年も、日能研オンザロード配布資料の 入試問題単元別難易度A~Cというのを 数値化する地味~な作業をやってみたよ。 去年は算・国の難易度を偏差値化したが、 国語はミスリーディングな値が出るので 今年は算数のみを偏差値にしようと思う。 算数の難易度偏差値は後日記事にするが、 とりあえず今日は国語の順位のみを羅列。 難関中学の国語出題難易度ランキング (1位)桜蔭(2位)麻布(2位)開成(4位)渋谷教育幕張(5位)栄光学園(5位)海城(7位)鴎友学園女子(7位)女子学院(7位)早稲田(10位)聖光学院(10位)市川(12位)浦和明の星女子 (12位)渋谷教育渋谷(12位)筑波大学附属 ※計算方法は…

  • まわり道?いいじゃない『雨にシュクラン』(こまつ あやこ)

    知りたい気持ちを刺激してくれそうな本。 異文化交流が得意な著者の4月の新作だ。 デビュー作が入試に出まくったことだし、 こまつあやこは中受界隈じゃ有名だよな。 主人公は憧れ校目指して必死に勉強する。 偏差値7ポイントアップで合格するのに、 その先はまさかまさかの展開なんですわ。 16歳女子の視点だが読み易い文章だし 受験するような高学年なら読めるだろう。 人生思い通りに歩めるとは限らないけど 柔軟にいこうって気持ちになれるかもな。 以下は俺の先行レビューの中盤あたりだ。 ままならない運命に翻弄され、自分を見失っていた彼女が、素敵な出会いに恵まれ、一番大切だと言い切れるものを見つけていく展開は爽…

  • 勇気で運命を切り開く『十四歳日和』(水野瑠見)

    勉強ってのはだれにでも与えられた、一発逆転のチャンスなんだからさ。(本文より) 日能研の資料に、水野瑠見が過去3年で 9校も使われてるとあって驚かされたわ。 なんせこの著者、1冊しかない人だから。 全部が全部『十四歳日和』ってことだろ。 となりゃ引き続き要注目ってことになる。 読めば先生達が気に入る理由がわかるよ。 1冊しかないその1冊が抜群なんですわ。 俺が昔書いたレビューの一部はこんなだ。 中学入学を機にイメージを一新し、地味な親友との距離が開いた主人公。中2になった彼女が、せっかく手にした地位を捨ててまで進むと決めたのは、周囲からは意外に見える道なのでした。 bookmeter.com …

  • 出題されるかもしれない新刊本(2023年4月前後)

    これから明るみになるのもあると思うが、 4月前後の新作で気になってるのは以下。 毎度言ってるが、未読の作品が多いんで 出題向きじゃないのも多分混じってるよ。 3/15発売 ☆ 先行レビュー済み ☆ 『シタマチ・レイクサイド・ロード』 (濱野 京子) 今年も複数校で出てる作家が描く文芸部。 3/22発売 『金色の羽でとべ』(高田 由紀子) 小学生のバレーチームにほとばしる熱気。 4/5発売 『はるか、ブレーメン』(重松 清) ちょっとSFテイストが入ってる異色作? 4/7発売 ☆ 先行レビュー済み ☆ 『きみの話を聞かせてくれよ』(村上 雅郁) 活き活きと中学生たちを描く連作短編集。 4/12発…

  • なんて美味しい作品集『ゆうべの食卓』(角田 光代)

    おいしいって言い合うと、おいしさが二倍になる。そのことに気づいたのは最近だ。(本文より) 日能研調べ(過去3年)の物語文作者で 出題件数が10件となりベストテン入り。 そんな角田光代の2月発売の新作ですわ。 3連作の短編が11セット詰まった本だ。 つまり33掌編の部分連作短編集だわさ。 いかにも使いやすそうな感じじゃないの。 とくに小5のスイミング少女の話なんか、 前編・中編がまんま素材になりそうだな。 実際のところ大人視点の話の方が多いが 学生視点の掌編は他にもいくつかあるよ。 以下は俺のブックレビューの締めの部分。 どの話も後味はじんわりな滋味がしみ込んでいて、料理をする喜びや人と一緒に食…

  • 紹介作品からの出題(2023年度中学入試の国語出典・随時更新)

    中学受験鉄人会の予想はマジでスゲーな。 とくに今年は神がかってる的中率ですわ。 今後も目が離せないこと間違いなしだな。 さて、一方で過疎まっしぐらの当サイト。 まだ断片的な情報に過ぎない感じだけど、 旧作も含めて紹介本から出た学校のうち、 現時点で判明しているものは以下の通り。 『ひみつの犬』(岩瀬 成子) 桜蔭 『博士の長靴』(瀧羽 麻子) 豊島岡女子学園、逗子開成、愛光、甲陽学院、桐光学園(2回目)、西武学園文理 『夏の体温』(瀬尾 まいこ) 鷗友学園女子、横浜共立学園、明大中野、暁星、神奈川大附属、開智(先端)、専修大学松戸(1回目)、滝 『ココロノナカノノノ』(戸森 しるこ) 洗足学園…

  • トップ校なんて通過点『成瀬は天下を取りにいく』(宮島 未奈)

    中学2年になった今でも、成瀬は他人の目を気にすることなくマイペースに生きている。(本文より) あと10日ほどで発売になる新人の新作。 ラノベ的なタイトルなんで敬遠してたが 読友さん達の激賞が凄いんで読んでみた。 で、見事にハマっちまたんだな、これが。 破天荒な主人公の生き様が圧巻だったわ。 努力で成績トップになる子をめぐる話で 東大オープンキャンパスの話題もあるし 受験生でも楽しく読めそうな感じはする。 ま、勉強の話はメインじゃないけどな? 過去に町田その子や窪美澄を輩出してる R-18文学賞大賞って触れ込みの本作。 官能要素はゼロなんで子どもでもOKだ。 以下ノリノリで新潮社に送ったレビュー…

  • 理科の学びにもつながる『ハーベスト』(花里 真希)

    知らないことは全然恥ずかしいことじゃないよ。むしろ、わくわくしていいじゃないか。(本文より) 何校か出題実績のある作家の来月の新作。 全く自信のない男子の成長物語なんだが、 園芸部の活動するさまを体感することで、 理科分野の生きた学びまでもが得られる。 それでいて素材として割と使いやすそう。 同じ園芸ものの 『天地ダイアリー』より 育てる面を深掘りしているし要注目かも。 先生達も魅力的な感じに描かれてるしな。 文章難易度は中学受験の出題標準レベル。 以下は俺の先行レビューの書き出しだよ。 主人公は話すのが苦手な高1男子。人と関わるのを避けてきた彼が、仕方なしに入った園芸部で、2人の個性派部員と…

  • 復讐の中学受験『すべてあなたのためだから』(武内 昌美)

    お母さん。小学校生活を、勉強一色にしないでください。勉強さえ出来れば良いという考え方を、させないでください。(本文より) 親のエゴが暴れ狂う点で他を圧倒する本。 これは中学入試に出ることはまずないし、 『翼の翼』と同様に子供に見せたらダメ。 参考になったり共感できる部分もあるが、 かな~り評価が分かれそうな作品ですわ。 リアリティ吹っ飛びとも感じられるけど、 現実にはもっと怖い事件も起きてるしな。 娘を医大にと執着した母子の惨事だとか。 俺は、主人公の言動を客観視することで 自分自身の中にあった醜さを自覚したよ。 俺の異質なレビューはこんな書き出しだ。 中学受験を題材にしたホラーのような作品。…

  • 尊敬できる人にめぐり逢う『バスを降りたら』(眞島 めいり)

    附属中の結果が出たとき、俺も母さんも、がっかりしたような態度を律に見せちゃったよな。あれはほんとにダメだった。すごく後悔してる。(本文より) 過去2作品とも出題された作家の新作だ。 今までより少し易しいのでどのレベルの 学校で素材文になってもおかしくないな。 特に全8章のうち6~8章がよさげだよ。 本の帯を見て恋愛小説かと思っていたが、 そういう要素は薄めの成長物語なんだわ。 特に不本意な私学に進んで不貞腐れてる 少年の気持ちの変化には注目して欲しい。 以下は俺のレビューのはじめのほうだよ。 同じ名門公立中を受験して合格した少女と不合格だった少年が主人公。面識のなかった二人が通学バスの中で出会…

  • 教科書にないけど大切なこと『きみの話を聞かせてくれよ』(村上 雅郁)

    世の中に「素直ないい子」なんて生きものが存在するはずがない。もし、そう見える子がいるのであれば、その子はなにかしらの抑圧を抱えている。(本文より) 発売日はちょっと先で4月7日の予定だ。 これまで地味に出題されてきた作家だが、 今度の新作は派手に選ばれる要素アリだ。 中1から中3までの6人と教諭の視点の 連作短編集で文章のレベルも入試に合致。 一部ラノベっぽい軽さもあるんだけどな。 ま、過去3作よりは素材にしやすそうだ。 新生活をしなやかに生き抜く知恵を得る という意味では中学生にもいいかもな? 傾聴は一生もののライフハックだろうし。 俺の先行レビューの書き出しはこんなだ。 人の声に耳を傾ける…

  • 活力を分けてくれそうな『シタマチ・レイクサイド・ロード』 (濱野 京子)

    自分ができないと思っていることを、他人からお前ならできると言われるのも、けっこう傷つくことだと悟った。(本文より) たまに出題される作家の来月発売の新作。 進学校の文芸部員を描いた作品なんだが、 出題しやすそうな箇所がやたらに多いよ。 素材の使い勝手って意味じゃ◎だろうな。 それでいて、読後感がいいのなんのって。 恋愛モノって子どもに薦めにくいんだが、 この作品は珍しく読ませたくなるタイプ。 特に終盤の主人公の心情がいいんだな~。 俺の激賞レビューの序はこんな感じだわ。 主人公は何にも本気になれないという高校2年生。文芸部なのに創作意欲がないことに引け目を感じていた彼女が、意外なところから味方…

  • 中受小説『ギフテッド』『すべてあなたのためだから』の話題など

    親世代向けで出題とは無縁っぽいんだが、 いま気になってる中学受験小説がコレだ。 2022/11/24発売 『ギフテッド』(藤野 恵美) 藤野恵美は中学入試でもたまに出る作家。 挫折エリートが発達凸凹女子という姪の 中学受験に伴走する筋書きのようですわ。 2023/2/7発売 『すべてあなたのためだから』(武内 昌美) ビリビリ装画が怖いが中身も相当らしい。 どっちも借りられるのがだいぶ先なんで、 レビューは年内にできるかどうか微妙だ。 エスカレートする教育熱の先にあったものは・・? 中受小説ではないが先行レビュー申請に 落選してそのまま忘れていた作品が以下。 2023/1/30発売 『つぎはぐ…

  • 打ちのめされたときに読みたい『青の刀匠』(天沢 夏月)

    人の痛みを知ることは難しい。その傷が深ければ深いほど、簡単にわかったような顔をされるのも癪だし、かといって理解されない孤独もまた苦痛なのだ。(本文より) 突然どん底にまで突き落とされた少年が 絶望の淵でもがく様に釘付けになったわ。 『青の祓魔師』を連想するタイトルだが 半端でない葛藤を描いた真面目な小説だ。 素材文に使えそうな箇所は意外と多そう。 兄弟子や同級生との会話シーンとかな? 毎度のレビューはこんな書き出しですわ。 普通の生活を送っていた高校生が、突然の火事で重い火傷を負い、肉親とも別れ別れになります。自暴自棄になっていた彼を引き取ったのは、遠縁にあたる島根の刀鍛冶でした。 bookm…

  • 大切な人を、より大切にしたくなる『天国からの宅配便 あの人からの贈り物』(柊 サナカ)

    先月の栄東で出題された物語文の続編だ。 4つの短編はどれも面白くてお勧めだが 特に小5女子が主人公になる話がいいよ。 『七十八年目の手紙』は曾祖母に届いた 古い友人の手紙のために少女が奔走する。 様々な国の人の優しさに触れ、助けられ、 感謝を伝えるために彼女はどうするか? まぁ、見てやって欲しいと思うんですわ。 俺のレビューの一部はこんな感じだわさ。 超常的な力で死者から贈り物が届くような話と思って敬遠していましたが、全然違いました。余計な要素抜きで丁寧に描かれているのは、人の優しさであり、別れの切なさです。 『天国からの宅配便 あの人からの贈り物』感想・レビュー 短編『七十八年目の手紙』は必…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2023年3月前後)

    これから明るみになるのもあると思うが、 3月前後の新作で目に留まったのは以下。 2/22発売 ☆ 先行レビュー済み ☆ 『つる子さんからの奨学金』(まはら 三桃) 久しぶりに来た素材文に使いやすい作品。 2/22発売 ☆ 先行レビュー予定 ☆ 『天国からの宅配便 あの人からの贈り物』(柊 サナカ) 先月の栄東入試で出題された作品の続編。 2/24発売 『神無島のウラ』(あさの あつこ) 頻出作家が離島の先生を描く期待の新作。 3/13頃発売見込 ☆ 先行レビュー予定 ☆ 『シタマチ・レイクサイド・ロード』(濱野 京子) たまに出題される作家が描く高校文芸部。 3/22発売 『金色の羽でとべ』(…

  • ちゅうでんにハズレなし『雪の日にライオンを見に行く』(志津 栄子)

    そういうやつがおってもええ。みんなは思っているのかもしれないけど、唯人はそんな自分のことが好きじゃなかった。(本文より) ちゅうでん児童文学賞の大賞作品ですわ。 引っ込み思案の少年が自分の殻を破る話。 一言で言っちまうとこんなストーリーだ。 転校生と関わって変わるという王道展開。 ただ、それだけじゃない要素もあんだわ。 バスの中のシーンとか長なわの話だとか 素材文としてかなり使いやすそうな印象。 大阪弁がネックになるかも知れないけど そういうの気にせず出す学校もあるしな。 俺の激賞レビューの後半部分はこんなだ。 弱気な自分のことで一杯一杯だった彼が、孤立へ一直線だった少女を気にかけ、ここぞとい…

  • 出題作とは毛色の違う『白ゆき紅ばら』(寺地はるな)

    「ちゃんと自立したいんです。わたし、自分の人生ってやつを手に入れたいんです」(本文より) 2023年入試で多数出題されたことで、 再び注目を集めている作家の最新作だわ。 もうじき発売なんで今回は先行レビュー。 反面教師から教育の大切さを知る意味で 大人にはぜひ読んで欲しいと思うんだが 小学生にはあんまし見せたくない内容だ。 まれに素材になりそうな場面もあるけど 学校からのラブレターには不向きだろう。 まぁ、読み始めると続きが知りたくって やめられない止まらないになるのも事実。 たぶん子供が子供らしくいられるように するのは大人の責任だと痛感するだろう。 俺のレビューの書き出しはこんなですわ。 …

  • 麻布、渋渋、明の星、さすがの選書『タイムマシンに乗れないぼくたち』(寺地 はるな)

    『タイムマシンに乗れないぼくたち』(寺地 はるな/文藝春秋) 誰かと同じ空間にいても、人間は簡単に「ひとり」になるものだと、こんなふうになるずっと前から知っていた。(本文より) 去年も感じたが、麻布はいい本選ぶな~。 こんな素材出すなんて流石だと感じたわ。 渋渋や浦和明の星などでも出題されたし 今年の台風の目は寺地はるなだった訳か。 前に国語読解の本に悪い先生の出る本は 入試には出にくいと書いてあったんだが この作品は逆に先生の役どころがいいよ。 少年の葛藤、苦悩、からのちいさな一歩。 機を逃さずさりげなくサポートする先生。 これは読んだら使わずにいられないかも。 俺のレビューの書き出しはこん…

  • 2023年度中学入試の国語出典(紹介作品からの出題・第一報)

    2023年組は悲喜こもごもだろうな? 直前期の何も手につかなくなる感覚とか、 終了後の何もする気がなくなる感覚とか、 心がカラッポになる気持ち、わかるな~。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇ まだ一部の学校しか確認できてないんで、 これから増えてくんだろうが出典予想は やっぱしあんま当たってないみたいだわ。 特に男子の最難関レベルは外しまくりだ。 まぁ、前にも書いた通り12作品程度が 入試に出てくるかな~という予想だしな。 旧作も含めて紹介本から出た学校のうち、 現時点で判明しているものは以下の通り。 『ひみつの犬』(岩瀬 成子) 桜蔭 『博士の長靴』(瀧羽 麻子) 豊島岡女子学園 『夏の…

  • 胸を張って入学することの効果『令和の中学受験2 志望校選びの参考書』(矢野 耕平)

    心構えに力点を置いた前作も良かったが 今作は各校の具体的な取組みがたっぷり。 ◎ 本書で特集が組まれていた学校 浦和明の星女子、吉祥女子、都市大等々力、本郷、普連土学園、桐朋、頌栄女子学院、不二聖心女子学院、金沢学院大附属 ◎ 本書で扱いが大きかった学校 浅野、芝国際、聖光学院、田園調布学園、法政大学第二、三輪田学園、森村学園 三輪田学園は本郷、開成、早稲田などとの交流・協働の実績あり 前に別の本のレビューで2/1合格者が 併願日程の、より高偏差値の層を入学後 追い越していくって話を紹介したんだが 三輪田学園でも同じ現象があるそうだよ。 他校の先生たちも口を揃えて言うらしい。 前向きな気持ちで…

  • 女子校イイネ!と思わせてくれる『らんたん』(柚月 麻子)

    学園だけは楽しくしましょうよ。どんな時でも、そこだけは守りましょうよ。それが私たちにできる真剣な戦いのやり方です。(戦時下の恵泉普通部を描いたくだりより) フェリスが舞台の新作『空を駆ける』も 気になってたが『らんたん』も要注目だ。 『飛ぶ教室』が紹介したんで即買いして レビュー予告までしてたが、正直言うと 難しくって序盤で挫折したままだったわ。 コチラさんのレビューで思い出したんで 再挑戦したら中盤以降はスラスラいけた。 最初は特に難しいが後半は読みやすいし 子どもは第二部から読むといいかもな? 恵泉女学園の創立メンバーの話なんだが 教科書に載ってる人や伝統ある名門校が 出まくりなんで、楽し…

  • なんてステキな反抗期『あした、弁当を作る。』(ひこ・田中)

    「いや、すげー、すげーよ、お前。反抗が弁当作りっていう、斜め上の発想がすごいよ。自分で弁当作る反抗期なんて、オレには絶対に思いつけない」(本文より、主人公の友人の言葉) 頻出ではないが、たまに出題されてきた ひこ・田中の来月9日発売予定の新作だ。 反抗期って普通は親の世話になりながら いっちょ前に反発だけはするもんだろ? どっこいこの本の主人公は一味違うワケ。 親よりむしろ頼もしい感じなんだもんよ。 ま、あんま詳しいことは書けないけどな。 出題されそうな箇所はそう多くはないが 学校の仲良し4人組の会話は狙い目かな。 俺のレビュー(前半)は以下に付けとく。 主人公は心優しい中1男子。ねっとり息子…

  • 攻める高校受験を描く『つる子さんからの奨学金』(まはら 三桃)

    もっと成績をあげたい。わかばは自分の中に芽生えた感情を、抱きしめるように感じ取った。(本文より) 来月22日発売予定の頻出作家の新作だ。 先に読ませて貰えたんでレビューするわ。 受験生の葛藤がよく描かれてる作品だな。 親との方向性の違いだとかスランプとか 友人関係に起きる変化など盛りだくさん。 さらにジェンダー問題まで絡めてくるし。 先生の描かれ方はとくに素晴らしい感じ。 この著者の最近2年間の作品のなかでは 最も出題されそうな雰囲気がある印象だ。 百人中百人が予想しないであろう展開は、 ちょっと好みが別れそうなトコだけどな。 俺のレビューの感想の部分は以下の通り。 これは予想できなかった!ま…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2023年2月頃)

    2月の終わりまでは再び豊作のシーズン。 これから読む作品が多いんで中学入試に 向かない作品もたぶん混じってるんだが ひさびさに豪華ラインナップになってる。 『どすこい! 』(森埜 こみち)1/18発売 『だれもみえない教室で』(工藤 純子)1/26発売 『放課後の読書クラブ』(小手鞠 るい)1/30発売 『雪の日にライオンを見に行く』(志津 栄子)2/1発売 『バスを降りたら』(眞島 めいり)2/7発売 『あした、弁当を作る。』(ひこ・田中)2/9発売 『つる子さんからの奨学金』(まはら 三桃)2/22発売 『神無島のウラ』(あさの あつこ)2/24発売 『雪の日にライオン~』は、ちゅうでん …

  • 弓道の魅力たっぷりの『凜として弓を引く』(碧野 圭)

    毎年この時期は大学弓道の圧倒的強者が 気の緩みの蔓延で惨敗した話を書いてる。 精神を鍛えまくってる大人に近い連中も ちょっとした油断で自滅しちまうんだな。 ま、気を引き締めてこうってことですわ。 さて、今回の作品は2021年9月発売。 弓道モノでは『たまごを持つように』や 『凛の弦音』も中高入試で使われてるし 『凜として弓を引く』もダークホースか。 弓道用語がフツーに出てくる場面以外で 学校・道場・家庭などの会話シーンには 素材に使えそうな部分が意外とあったわ。 たとえば12章や13章のあたりとかな。 ま、入試に出るかとか関係なしにいい本。 弓道の魅力がたっぷり描かれてるからよ。 俺のレビュー…

  • 【本気レポート】私らしく、いられる場所へ ~或る元サピ女子の再起~

    「第一志望を目指す彼を全力で支え、合格を祈っていた頃が一番幸せだった。」 喜びを爆発させた合格発表から1年もしないうちに、こう言い残してネットから消えたSNSユーザーがいました。 同居親の介護という重いミッションをこなしながらの伴走、大金星。けれど、その先にあったのは思い描いたのとは全く違う、廃人同様になってしまった息子との暮らしでした。 「大変だったあの日々は何だったのか?」 今ごろ彼女はこう自問しているのかも知れません。 一方で、つらいつらい日々を乗り越えた先に、たび重なる黒星があっても、いまでは幸せな毎日に感謝しながら暮らしている親子もいます。 その少女の両親は、部活に、勉強に充実した日…

  • サクサク、サクセス? 栄東

    すべり止めの星とか言われることのある 栄東なんだが、かなりいい校風らしいな。 売り出し中の進学校って勉強少年院的な イメージなのかと勝手に思ってたけどよ、 中の人の話によりゃあ全然ちがうらしい。 通える距離なら本気で考えていいかもな。 いち併願校にしとくのは勿体なさそうだ。 うちは去年、埼玉栄が試験会場だったが、 あえて東京→大宮を新幹線にしてみたわ。 かなりの遠回りになるんだが満員電車を 避けたいって考えがあったもんだからよ。 大宮からはタクシー配車アプリを使って 前日予約した車で直接学校の前に行くと 降りるときの精算の手間とかもないから サクサクとアクセスできて助かりまくり。 まぁ、車は薦…

  • 小さな事件を追いかけて『ひみつの犬』(岩瀬 成子)

    「人が自分の弱い心と闘っているときに、それを笑っていいはずがないじゃない」(本文より) たまに入試に出る作家の10月の新作だ。 絶対の正しさなんてないと教えてくれる 作品なんだが、平易で読みやすいだろう。 前半は人間関係の不協和音がギッシギシ。 けど後半には響き合ってくような感じだ。 素材になりそうな箇所はさほど多くない。 俺のレビューの書き出しはこんなですわ。 犬猫禁止のマンションに住む小5女子が主人公。こっそり犬連れで引っ越してきた少年に出会った彼女が、一緒に引き取り先を探すうちに、いつしか大人のトラブルに首を突っ込んでいくようになります。 bookmeter.com 『ひみつの犬』(岩瀬…

  • 優しくて、せつない『黄色い夏の日』(高楼 方子)

    まれに入試で使われることのある作家の 2021年9月に発売された作品ですわ。 この作家は『時計坂の家』が超お勧めだ。 今作は主人公が不思議な空間に行く点で 『時計坂の家』に少しは似ているかもな。 読めば終盤のあたりで切なくなるだろう。 俺のレビューはこんな感じではじまるよ。 絵を描くのが好きな中1男子が、誰もが心を奪われるような洋館を訪れ、黄色い小花が咲く庭で謎めいた少女に出会います。すっかり魅了されたままその家に通い詰めるうちに、少年に思わぬ変化が起きるのでした。 bookmeter.com 『黄色い夏の日』(高楼方子/福音館)

  • コロナ禍を生き抜く中学生たちを描く『マスク越しのおはよう』(山本 悦子)

    わたしね、コロナのおかげで、自分にとって何が大切なのか、考えるようになったよ。(本文より) 『神隠しの教室』で有名な作家の新作だ。 この先生はわりと低・中学年向けが多い。 今回は少し上の層がターゲットのようだ。 主人公たちは中2だが年齢の割に心情が 解りやすく描かれているのが特徴だろう。 中学生にしては幼い部分がある気もする。 それほど出題に使えそうな箇所はないが 不登校の少女が別人になろうとするのを 祖父が応援する話なんかは狙い目かもな。 以下は俺のブックレビューの一部分だわ。 5人の中学2年生たちが主人公の連作短編集。様々なコンプレックスを抱える少年少女が、もがき苦しみ、迷走したり、支え合…

  • お年寄りへの理解を深められる『エツコさん』(昼田 弥子)

    来週の火曜日に発売予定の新作なんだが、 10歳あたりでも難なく読めそうなんで、 高学年の模試にピッタリなレベル感だわ。 本番入試で使うには易しすぎるっぽいが、 認知症の老婦と子ども達の交流の話だし、 テーマ的にはアリなような気もしている。 連作短編のうち中1女子が主人公になる 最終章のあたりは微妙に狙い目かもな? テストで出題されるかとかは関係なしに、 お年寄りへの理解を深めるって意味でも、 読んでおいて損のない作品だと感じたわ。 毎度の先行レビューの前半部分はコレだ。 地域に見守られる認知症のおばあさんと少年少女の交流を描いた作品。元教師というエツコさんの唐突でぼんやりした言動に子どもたちが…

  • 桜蔭の出題者に選んで欲しい3作品

    通常、入試問題に使われるのは夏までに 出た作品だが、桜蔭は秋・冬の新作でも フツーに出題してくるから変わってるよ。 2020年出題 前年の7月25日発売『思いはいのり、言葉はつばさ』(まはら 三桃) 2021年出題 前年の11月14日発売『あしたのことば』(森 絵都) 2022年出題 前年の9月8日発売『そらのことばが降ってくる: 保健室の俳句会』(高柳 克弘) ここ数年の傾向が今年度も続くとすると 案外、絞り込めちゃったりするかもな? そこで、9月1日以降に発売された本で 超・名門校の選書に相応しいと思われる 作品を並べてみたのが以下のリストだわ。 2022年11月14日発売『ひこぼしをみあ…

  • 見て見ぬふりに一石も二石も投じる『だれもみえない教室で』(工藤 純子)

    キレイな装画だがこれで決まりとは限らない?(NetGalleyにて読了) 来月26日発売予定の気になる新作だが、 先に読ませてもらえたんで記事にするわ。 少年4人と新米教諭が主人公という物語。 連作短編の視点が子供→大人へ切替わる ところや文章の難易度は駒場東邦で出た 『あした、また学校で』と近い感じだな。 2024年入試版の出典予想を作ったら 真ん中よりも上に載ることになるだろう。 つまり注目作品の一つということになる。 まぁ入試とか関係なしに学びの多い本だ。 ただし、一点だけ大事な点を注意しとく。 中学受験の勉強を無理にさせてる場合は 大人が読むべきである反面、子どもには この本を読ませな…

  • こじらせ少年少女の転機を描く『給食アンサンブル2』(如月 かずさ)

    2020年入試で出題校数10位だった 『給食アンサンブル』の続編となりゃあ イヤでも注目が集まるってもんだろうよ。 今回は中学2年生を描いた連作短編集だ。 中2だけあって迷いっぷりが激化してる。 ひとり悩みドツボにはまっている彼らが 様々なきっかけで変わっていく筋書きだ。 前作同様に使えそうな部分が多いんだが 特に素材にしやすそうなのは吹奏楽部の 部長と副部長のエピソードだと感じたな。 章で言うと4章と5章が該当箇所になる。 俺のブックレビューの書き出しはコレだ。 6人の中学2年生が主人公の連作短編集。若さゆえに目の前のことに一杯いっぱいで迷走する彼らが、クラスメイトや部活の仲間、近隣の老婦人…

  • 実はスピカは5連星『水底のスピカ』(乾 ルカ)

    人の秘密は借金みたいなものだよ。連帯保証人になる覚悟はある?(本文より) たまに入試に出る作家の10月発売の本。 5人の高校生男女を描いた群像劇だけど、 特に3人の女子に焦点を当ててる感じだ。 完全に別タイプで接点のなさそうだった 彼らがつながっていく流れはかなりいい。 国語の素材文に使えそうなところもある。 友情の深まりってのはいいテーマだしな。 ただ、小学生に見せたくない箇所もある。 中高生に勧めたい本ってことになるわな。 以下は俺のレビューからのあらすじ抜粋。 札幌の高校が舞台。ミステリアスな転校生や、劣等感に溺れそうな子、重い過去をひた隠す子などを含む5人の少年少女の青春群像劇です。全…

  • 親ガチャがハズレだと・・・『バンピー』(いとう みく)

    「心温まるストーリーを見て感動できる人って、そこそこ幸せな人たちなんだよ」(本文より) まぁまぁ入試に出る作家の10月の新作。 ただ、この本は設定がぶっ飛んでるんで、 あんまし出題には向いてなさそうな印象。 描かれる子どもたちの背景はかなり重い。 書きぶりは軽妙なんで読みやすいけどな。 で、主人公の意志力がカッコいいんだわ。 家を守れるのは俺だけだって気概とかよ。 俺のレビューの最初の部分はこんな感じ。 描かれるのは大人に振り回される子どもたち。母を亡くし父は失踪中という家で、妹3人の世話に追われる高2男子が主人公です。ただでさえ大変なのに、さらに困った事態まで発生。それでも少年は挫けず、お母…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2022年12~2023年1月)

    12月・1月は注目の作品が少ないな~。 オレが気づいてないだけかもしれないが、 いま判ってるのは以下の3作品のみだわ。 『エツコさん』(昼田 弥子)12/27発売 『だれもみえない教室で』(工藤 純子)1/26発売 『放課後の読書クラブ』(小手鞠 るい)1/30発売 しかもこれから読む本が多いもんだから、 たぶん中学入試に向かないのも入ってる。 『エツコさん』はネットギャリーで先に 読ませてもらったんだが5年生あたりに ピッタリな読みやすい作品だと感じたわ。 認知症のおばあさんと小学生の関わりを 描いてるんでテーマ的にはアリかもな? あとの2作品は情報不足で何とも言えず。 ネタが少なすぎるんで…

  • 初めての気持ちが新鮮な『ひこぼしをみあげて』(瀧羽 麻子)

    期待していた頻出作家の今月発売の本だ。 「桜蔭の出題者に選んで欲しい3冊」で、 12月にも再度この本を取り上げる予定。 『たまねぎとはちみつ』も出題実績アリ なんだが、その続編にあたるのが今作だ。 前作を知らなくても全く問題はない感じ。 平易だった前作より難度は上がってるが、 中学受験レベルとしては標準だといえる。 重要なのは使えそうな箇所が多すぎる点。 写真のプラネタリウムの後の場面だとか、 3年生の意外な一面に気づく場面だとか、 合宿の夜の天体観測のエピソードだとか。 ここに挙げたのなんてほんの一部ですわ。 最近出た本の中では最注目の一つだろう。 俺のブックレビューはこんな風に始まる。 主…

  • 受験史に残る事件を描く『予備校のいちばん長い日』(向井 湘吾)

    駿台も河合塾も解答速報が出せない!1998年の東大入試で実際に起きた「受験史に残る事件」を題材にした創作です。主人公は大手への対抗心に燃える数学講師。塾生想いの彼女が、弱小予備校の東大コースの存続をかけて、受験史上最大の難問に挑みます。 『予備校のいちばん長い日』|感想・レビュー・試し読み - 読書メーター 以上はオレのブックレビューの前半部分。 6月発売だが入試素材向きではない感じ。 中学入試とはあんまし関係なさそうだが 難解な問題文を平易に読み解く箇所とか 参考になりそうな部分はあったけどな? こんな言葉も覚えておいてよさそうだし。 受験において「奇跡」というのは最後の一押しをしてくれるだ…

  • 国語出典予想ベスト50【2023年入試向け最終版】

    ※前回以降に追加した14作品 17位『空をこえて七星のかなた』(加納 朋子) 19位『宙ごはん』(町田 その子) 22位『両手にトカレフ』(ブレイディ みかこ) 28位『天の台所』(落合 由佳) 31位『パンに書かれた言葉』(朽木 祥) 34位『星屑すぴりっと』(林 けんじろう) 36位『日向丘中学校カウンセラー室 十人十色、1匹?色の文化祭』(まはら 三桃) 38位『本が紡いだ五つの奇跡』(森沢 明夫) 41位『ココロノナカノノノ』(戸森 しるこ) 43位『夏休みの空欄探し』(似鳥 鶏) 45位『居残りの彼女』(津村 記久子) 46位『可哀想なトマト』(二宮 敦人) 47位『記憶の中の美しい…

  • じんわり癒される読書『本が紡いだ五つの奇跡』(森沢 明夫)

    開成が『おいしくて泣くとき』を出題し、 俄かに注目が集まってそうな作家の本だ。 開成は他校の先生も意識するだろうから。 この本が発売されたのは2021年9月。 始めの方はお仕事小説だが、だんだんと 家族小説の色が濃くなっていくんだわ~。 特に最後の章の父子の対話シーンなんか 感情のゆらぎが素材にしやすそうな印象。 入試に出るとか関係なしに純粋に楽しく 癒される本なんでかなりお勧めしたいわ。 ま、小学生には難しい作品なんだけどな。 俺のレビューの書き出し部分はコレだわ。 人生崖っぷちの編集者や作家らが死にもの狂いで出版にこぎつけた一冊の本をめぐる連作短編集。それぞれに苦悩を抱えた5人の主人公たち…

  • 歴史探索にワクワクできる『皆のあらばしり』(乗代 雄介)

    『旅する練習』が今年の早実で使われた 乗代雄介の2021年12月発売の作品。 受賞はなかったが芥川賞候補だった本だ。 うさん臭い男に声をかけられた高校生が やがて男の面白すぎる生き方に惹かれて 生き方までも変えていくってストーリー。 おっさんと少年の会話シーンばかりだし 出題に使えそうな場面は多くないんだが 展開に意外感があって俺は気に入ったわ。 これが俺の感想からの部分的引用ですわ。 歴史研究部の高2男子が、驚くほど博識な男に誘われて、幻の古文書探しに巻き込まれていきます。はじめは仕方なしに協力していた彼ですが、いたずら心あふれる男とのやりとりで本格的な史料探しの面白さに目覚めていくのでした…

  • まだある出題に使えそうな『飛ぶ教室』掲載作品

    『飛ぶ教室』は季刊の児童文学雑誌だわ。 ほど良い長さの短編がいくつか掲載され、 割と出題実績もあるんでチェックしてる。 2023年受験組には67号~70号が 狙い目っぽいんで使えそうなのを選んで ザックリあらすじを書いてみたのが以下。 2021/10/25発行の『飛ぶ教室』67号より 『可哀想なトマト』(二宮 敦人) 離婚を進めようとする親たちに納得いかない女子中学生が主人公。家にいるのが嫌で、八百屋さんの手伝いに通いつめる彼女が、そこで出会った「ちょっと変わっているけど優しい人たち」との交流の中で気づきを得ていきます。 2022/1/25発行の『飛ぶ教室』68号より 『居残りの彼女』(津村 …

  • 揺れ動く中1女子の力関係『ココロノナカノノノ』(戸森 しるこ)

    戸森しるこの『飛ぶ教室』連載中の作品。 いじめは止めたいけど自分自身の安全は 最優先にしたいっていう少女が出てくる。 グループ内での立ち位置の変化みたいな 中学生のリアルな日常を描いてて面白い。 家庭より級友との場面に注目したいな~。 この作家の本はたまに入試に出てくるし ここ1年の『飛ぶ教室』掲載作の中では わりと素材にしやすそうな印象を受けた。 物語のさわりを要約するとこんな感じだ。 主人公は中1女子。誕生の際に失われたはずの双子の妹、野乃の存在を感じることのある彼女は、時折、妹と仲良く暮らしているさまを想像することがあります。架空の友人の話をしていじめられるクラスメイトに似たものを感じ、…

  • 疎外感を消し飛ばす『夏休みの空欄探し』(似鳥 鶏)

    出題実績のない著者だと思うが推す人が やたら多い話題作なんでチェックしたわ。 6月発売の新作だが作問者は見たかな? 面白いがエンタメ系の作風だと感じたわ。 出題に使えそうなところも多少あるけど 積極的に小学生に薦めたい作品ではない。 中学生の楽しい読書にちょうど良い感じ。 いつものレビューはこんな書き出しだわ。 わかりあうって素敵だな~と実感させてくれる作品です。主人公は謎解きが得意な高2男子。卑屈で内向きだった彼が、難題に取り組む姉妹に出会い、心強い味方も得ながら、ひりつくような頭脳勝負に挑むストーリーです。 bookmeter.com 『夏休みの空欄探し』(似鳥 鶏/ポプラ社)

  • 世界の広さを肌で感じられる『両手にトカレフ』(ブレイディ みかこ)

    正義なんて恵まれた人間が信じるものだ。私には、私しかいない。(本文より) そこそこ入試に出る作家の6月の新作だ。 貧困や格差について深く掘り下げてるし、 特に中学生たちに読んで欲しい作品だわ。 俺のリストの中ではトップクラスの売上。 作問者も気づく可能性が高そうなんだが、 一部に小学生に見せたくない箇所もある。 そこを外せば入試素材にはなりそうだが。 フミコが弟と引き離されるシーンとかな。 文章の難易度「やや難」、テーマ注目度 「◎」、飛ぶ教室紹介は「〇」、素材の 使い勝手は「無印」として12月に作る 出典予想の最終版では30位台の想定だ。 以下が俺のブックレビューの最初の部分。 ドラッグ漬け…

  • 助け合うってスバラシイ!『天の台所』(落合 由佳)

    自分で台所に立つたびに、小さな発見がある。それを一つ一つ拾い上げて、胸にしまう。(本文より) 地元の図書館が大量に仕入れて推してる ノーマーク著者の2021年9月発売本。 あんま期待してなかったがこれが当たり。 ごはんを作ることの尊さを学べる一冊だ。 それでいてちゃんと面白いんだもんな~。 これを読むと、おかあさんに感謝したり、 自分で台所に立ちたくなったりするかも。 俺の激賞レビューの書き出しはこれだよ。 主人公は母と祖父母を亡くした小6男子。誰もちゃんとした食事作らなくなった家で暮らす彼が、祖母の盟友のサポートを受け、料理のなんたるかを学んでいきます。家族愛あふれる作品ですね。主人公が台所…

  • 開成だとか、女子学院だとか『きみの鐘が鳴る』(尾崎 英子)

    こんなにも必死になったことなんて、十二年生きてきて、はじめてのことだった。(本文より) 昨日発売された十代向けの中学受験小説。 正直、小6の春あたり迄は退屈だったが、 夏からは面白さにエンジンがかかる感じ。 2月の修羅場とかもう凄いのなんのって。 児童書でここまで親の狂気を書くか~? 子供の方がむしろ冷静という場面もある。 実在する学校をモデルにしたと思われる 名門校が多数出るうえにサピらしき塾も。 【この本に登場した名門校】 筑波大学附属駒場、開成、桜蔭、渋谷教育学園幕張、女子学院、浦和明の星女子、栄東(東大特待)、栄東など 注目ポイントは塾の先生たちの言葉だな。 特に終盤は金言だらけだと俺…

  • 小学生には早いかな~『パンに書かれた言葉』(朽木 祥)

    今この瞬間も、この地球上で、ものすごくひどい目にあっている人がいる。自分がその人じゃないのは、ただの偶然なんだ。(本文より) 今年最もホットなテーマは平和だろうな。 そこで、読友さんたちが高く評価してた この作品にも目をつけてみた次第ですわ。 イタリア編は目新しい感じではあったが、 昔からよくあるタイプの戦争文学かな~。 ちょっとトラウマになりかねないアレだ。 まぁ学校関係者が好みそうな部分はある。 学びも多いし中学生に読んで欲しい本だ。 新時代の戦争文学とカテゴライズできる 『モノクロの夏に帰る』と併せて読むと、 原爆への米系少年の反応の差に驚くかも。 以下は俺のブックレビューの締めくくり。…

  • 中受小説『きみ鐘』の話題など

    中学受験小説『きみの鐘が鳴る』の 著者のインタビュー記事を見つけた。 受験に伴走した経験を活かしてんだ。 こいつは期待できそうな気がするわ。 ローティーンあたりがターゲットと 思うが親が読むにもいいのかもな? 『翼の翼』のときも書いたが、親の メンタルワクチンに活かせそうだし。 まぁ、俺もまだ読んでないけどな! 2022年11月9日発売予定 さて、ここで2024年組の方から いただいた質問への回答を書いとく。 日能研調べの出題が多い本について、どこで見ることができるのでしょうか? または、ベスト5の本を教えて頂けないでしょうか? 3月開催の入試報告会での配布資料に 『中学入試に出題された作品と…

  • 名門校で芽生えた友情『空をこえて七星のかなた』(加納 朋子)

    どうしても中学受験を成功させたかった私は、正直に申告することを決めた。その下心の報いがこれなら、あんまりだと思う。(短編『星の子』の本文より) 入試出題実績はなさそうな著者であるが、 『飛ぶ教室』で紹介されてたんで読んだ。 ある宇宙飛行士に関わった人々の物語だ。 ミステリの叙述トリックが使われてるが、 おもに描かれてるのは家族愛や友情だわ。 7編の連作短編の主人公はすべて子ども。 使えそうな短編が多いが1つだけ選ぶと、 中1女子の友情を描く『星の子』だろう。 学校で浮く2人が仲を深めてく筋書きだ。 次に使えそうなのは事故で大怪我をした 小4女子の葛藤を描く『星は、すばる』。 中受合格後の小6を…

  • 読ませる『七星』、『きみ鐘』は二月の勝者っぽい?

    かなり話題性のある新作に気づいたんで、 レビュー予定作品を3冊ばかし追加する。 『空をこえて七星のかなた』(加納 朋子) 2022/5/26発売済み 季刊『飛ぶ教室』最新号で紹介された本。 オモロそうなんで思わず衝動買いしたわ。 6年女子が主人公の章は読み終わってて いまは4年女子の章を読んでるところだ。 早速いくつか素材にしやすい箇所を発見。 『空をこえて七星のかなた』(加納朋子/集英社) 『マスク越しのおはよう』(山本 悦子) 2022/9/29発売済み 低・中学年向け児童書が多い大物作家が コロナ禍の中学生達を描く期待の新作だ。 『マスク越しのおはよう』(山本悦子/講談社) 『きみの鐘が…

  • たぶん、先生は気づけない『星屑すぴりっと』(林 けんじろう)

    大半の学校が出題作を決定済みであろう、 8/25という際どい時期に出た新作だ。 前にレビュー予告しておいた本なんだが、 鉄人会の出題予想にも入り注目度上昇中。 新人の登竜門といえる講談社の児童文学 新人賞で佳作だが大賞レベルの面白さだ。 佳作はあんまし出題されたことがないが さて、作問者はこの作品に気づけるか? 文章の難易度「普通」、テーマの注目度 「〇」、素材の使い勝手は「無印」かな。 尾道弁と大阪弁の掛け合いがいいんだが、 この方言がネックになる気もするんだわ。 12月に作る予定の出典予想最終版では 30~32位あたりにランクインしそう。 俺の激賞レビューの書き出しはこんなだ。 優しさあふ…

  • しとしと、しとしと、胸に迫る『雨の日が好きな人』(佐藤 まどか)

    ウソでも笑っていると、だんだん本当に気分が良くなってくる。小さいころから、そうやって嫌なことを乗り越えてきた。(本文より) そこそこ入試に出る作家の10月の新作。 9月以降発売の本は来年の表に使うんで、 2023年入試の出典予想には入れない。 試験で凄く使われそうだとは思わないが、 平易なので佐藤まどか入門によさそうだ。 体が丈夫なのがとりえという小6女子に、 家庭の事情で病弱な姉ができるって話だ。 ほんわか姉妹愛が微笑ましい部分もある。 まぁ、病状は笑いごとじゃないわけだが。 姉との出会いで、学校や家庭での生活に どんな変化が起きるかに要注目だろうな。 俺のブックレビュー(前半)はこれだわ。…

  • ”繊細な海賊”が使えそうな『日向丘中学校カウンセラー室 十人十色、1匹?色の文化祭』(まはら 三桃)

    カウンセラー室の中にいるよりも、ずっと大変でした。問題は、むしろ外の方にあるんですね。(本文より) 少し前まで頻出だった作家の7月の新作。 シリーズ2作目だが、前作は俺が珍しく 酷評するほど雑なストーリー展開だった。 今作は先に読んだ娘にうっかり「その本 つまんなかったでしょ」と言ったところ 傷ついてたので気合を入れて読んでみた。 そりゃないでしょって部分はなかったし 前作とくらべたら全然いいんじゃねーの。 確かに女の子が喜びそうなストーリーだ。 出題には1話目あたりが丸ごと使えそう。 5分で読めるし最初だけでも見とけば? 文章の難易度「平易」、テーマの注目度 「無印」、素材の使い勝手「〇」と…

  • 出題が予想される物語文『宙ごはん』(町田 その子)

    自分が作ったもので、誰かと気持ちのいい時間を過ごせる、それはすごいことなのだ。そして多分、とても大事なことでもある。(本文より) 2021年本屋大賞作家の5月の新作だ。 出題実績のない著者だと思うが心温まる ストーリーが評判なんでチェックしたわ。 出題作選ぶ時期にあんだけ目立ってれば、 作問者が手にしてもおかしくないからよ、 俺にしてはめずらしく買っておいた本だ。 ちなみに、中受鉄人会の出題予想にある 『夜に星を放つ』は本当に出るだろうが 図書館の予約が一杯で買う予定もない為 俺んとこでのレビューはしない予定だわ。 『宙ごはん』は長い期間の少女を描くが、 第2話の小6、第3話の中3だけでなく、…

  • 未知なる現実にふれて『手で見るぼくの世界は』(樫崎 茜)

    いつも言ってるが中学受験できるような 恵まれた家庭の子には想像しづらい貧困・ 障碍などを描いた作品は名門校で頻出だ。 ここから学校が求めている人物像が解る。 様々な問題を自分の世界と地続きと捉え、 想像を働かせ、他人を思いやれる子ども。 これこそが名門校が求める人物像だろう。 となりゃあ『手で見るぼくの世界は』は 視覚支援学校が舞台だし良素材かもな? 刊行は来月14日だがネットギャリーで 発売前の本のゲラを読ませてもらえたわ。 驚いた、出題に使える箇所がありすぎる。 同級生達との語らいや外出シーンだとか、 動植物の観察の授業の一コマであるとか、 歩行訓練士との驚くようなやり取りとか、 少年の決…

  • 子どもを潰さない学校選びにも『中学受験に勝つ!』(週刊ダイヤモンド2022年9月10日号)

    集団での立ち位置は、真ん中よりも上でスタートさせてあげたほうが安心して頑張りやすいでしょう。(記事本文より小川大介氏のインタビューを一部要約) 低学年からの勉強法の特集ではあったが 高学年や中高生にも当てはまる内容だわ。 塾選びだけじゃなく志望校選定のカギを 握ると言っても過言ではないだろうな? 自分は勉強が苦手という自己イメージを 強く持ってしまうのは危険きわまりない。 だから無理にハイレベルな環境に置かず やればできる、戦えるんだと信じられる 場所を選んでやる必要があるってことか。 真ん中よりも上になれる環境ってことは 学校なら80%偏差値取れるとこだな? 俺は分不相応な学校に受かり、縮こ…

  • 中盤以降で様変わり『ぼくたちはまだ出逢っていない』(八束 澄子)

    焦ることはないよ。まだ若いんだから。時が来たら、出会うべき人に出会うし出会うべきものに出会う。それまではとにかく動き回ることだ。(本文より) たま~に入試に出る作家の10月の新作。 2024年以降受験組によさそうな本だ。 とはいえ、入試標準レベルの文章だから、 これが小5で読めたらちょっとデキる子。 各章が約4分で読める長さになってるし、 成長ぶりもいい感じで描かれているんで、 入試の素材にピッタリな印象を受けたな。 伝統工芸に親しむというおまけ付きだし。 毎作品出題されるほどは頻出じゃないが、 この作家の中では注目度が高めだろうな。 ジメジメした序盤が転調する中盤以降は 出題しやすい箇所が多…

  • 【2023年入試版】出題予想本ランキング(2021年9月~2022年8月発売)

    1位 『シャンシャン、夏だより』(浅野 竜) 2位 『ななみの海』(朝比奈 あすか) 3位 『セカイを科学せよ!』(安田 夏菜) 4位 『夏の体温』(瀬尾 まいこ) 5位 『かぞえきれない星の、その次の星』(重松 清) 6位 『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2』(ブレイディ みかこ) 7位 『ソノリティ はじまりのうた』(佐藤 いつ子) 8位 『空と大地に出会う夏』(濱野 京子) 9位 『屋根に上る』(かみや としこ) 10位 『ちいさな宇宙の扉のまえで: 続・糸子の体重計』(いとう みく) 11位 『博士の長靴』(瀧羽 麻子) 12位 『風の神送れよ』(熊谷 千世子) 13位 …

  • 厳しさか、楽しさか『ラベンダーとソプラノ』(額賀 澪)

    きびしい練習をすること。きびしい指導をされること。それらを全部否定したら、わたしたちはきっと、ほしいものを何も手に入れられない。(本文より) 小学校の合唱クラブでアルトリーダーの 少女の葛藤を描いたさわやかな児童書だ。 9/14発売なんで来年出るかは微妙だ。 これがもし5月とか6月の発売だったら、 出題有力候補からは外せなかっただろう。 ま、2024年組以降には注目の作品だ。 小5の受験生でも読めそうなレベルだし。 俺のレビューの始めの方はこんな感じだ。 正しさについて考えるきっかけになりそうな本。”全国で金賞を獲る”という目標にとらわれ過ぎた合唱クラブのパートリーダーが主人公です。ギスギスし…

  • ただでは起きない文学女子『文豪中学生日記』(小手鞠るい)

    受験生にはちょうどよい難易度の文だが、 日記形式の部分は出題に使いにくいかな。 とはいえ、えぇっ、そうなの!って思う 箇所もあって思わぬ知識がえられるかも。 例えば、七夕について書いたくだりとか。 もともと七夕の短冊には、文字や習字や文章の上達を願う言葉を書く習慣があったそうです。(本文より) だから7月は文月という説すらあるとか。 欲しい物書いて吊るすだけじゃないのな。 あと、文を書く際の心構えも参考になる。 主人公が文章作法のバイブルを引用する 部分には特に注目しておきたいだろうな。 終盤の主人公の気づきってのも見どころ。 俺のブックレビュー(一部)はこんなだ。 文芸部部長の中2女子が主人…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2022年10~11月)

    今後発売される新作は、ほぼその年度の 入試に出ないが、これがいま気になる本。 ま、近年の桜蔭みたいに秋冬の新作から 出題してくる学校もあるにはあるんだが おもに2024年・2025年組向けだ。 『水底のスピカ』(乾 ルカ)10/5発売 『ぼくたちはまだ出逢っていない』(八束 澄子)10/5発売 『雨の日が好きな人』(佐藤 まどか)10/5発売 『バンピー』(いとう みく)10/11発売 『給食アンサンブル2』(如月 かずさ)10/12発売 『ひみつの犬』(岩瀬 成子)10/12発売 『ごはん食べにおいでよ』(小手鞠 るい)10/27発売 『クイズ研究会チームスリー』(まはら 三桃)11/3発売…

  • 燃えよ!ライバル心『星屑』(村山 由佳)

    たまーに入試に出る作家の7月発売の本。 エンタメ色が強いんで入試に出にくそう なんだが、少女たちの成長物語って点は 一応注目ポイントなんでチェックしたわ。 面白くてハマるんだけど出題されそうな 箇所はあんまし多くはない印象だったな。 ちなみにこの作者は来月も新刊があるが、 そっちはゼッタイ入試に出ることはない。 以下は俺の『星屑』レビューの一部分だ。 1970年代の芸能界が舞台。地方で見つけたとびきりの原石を中央で輝かせるために、芸能プロの中堅社員が奮闘する物語です。男社会で半人前扱いされ続けてきた彼女が講じた奇策や番組収録での思わぬハプニング、反目し合う即席デュオが抱える秘密など、目が離せな…

  • みんな、抱えるものがある『おにのまつり』(天川 栄人)

    過去作品がラノベ寄りの作風だったんで 読友さんの推奨とかスルーしてたんだが 鉄人会の出題予想作品なんで読んでみた。 軽妙な文体なんで取っつきやすそうだわ。 小5レベルでも十分読めそうな感じだな。 出題するとしたら中堅校以下の層かもな。 以下は俺のブックレビューからの抜粋だ。 中3の問題児ばかりを集めた祭り舞踊チームが奮闘する物語です。迷走や脱線を繰り返す彼らのコーチ役を任されたのは穏やかで目立つのが嫌いな少女。はじめはバラバラな5人でしたが、苦楽を共にして演舞にのめり込むうちに繋がりを深め、それぞれが変貌を遂げていきます。 bookmeter.com 『おにのまつり』(天川 栄人/講談社)

  • 不安と焦りは狂おしく『五年目の受験詐欺』(辻村 深月)

    『噓つきジェンガ』は頻出作家の新刊だ。 詐欺を描く3つの中編作品が入ってるが、 中学受験では出題されなそうな印象だわ。 ただ、『五年目の受験詐欺』は中受親が 特にハマりそうな部分もあったけどな? 詐欺師の受験アドバイスが意外と適切で 読んだら参考になっちゃったりするかも。 こんな言葉とか肝に銘じたいと感じたし。 親の急な焦りをぶつけることほど、子どもにとって理解不能なことはないですよ。(本文より) ま、3編とも抜群に面白かったのも確か。 俺のブックレビューはこんな書き出しだ。 嘘が運命を狂わせる3編。どの作品も惹き込む力が凄いですが、受験生親としては『五年目の受験詐欺』が気になりましたね。次男…

  • 広島は8月6日が登校日『モノクロの夏に帰る』(額賀 澪)

    『モノクロの夏に帰る』(額賀 澪/中央公論新社) そこそこ入試に出る作家の7月発売の本。 出すとしたらかなりの難関校だろうな? 普通の小6には歯が立たなそうだからよ。 昔のあからさまな戦争文学とは全然違う、 現代ならではの戦争を伝える本って趣だ。 グロ・エグなしなんで手に取りやすいわ。 4話構成だが、困り感が薄いのにあえて 保健室登校をする中学生を描く第2話と、 高校の平和教育に戸惑うハーフの少年を 描く第4話には特に注目しておきたいな。 それぞれの話は微妙につながっているが 単話で読んでもまったく問題はない感じ。 第4話だけでも読んで欲しいと感じたわ。 何が正しいのか、深堀する素材だからよ。…

  • 駒東、暁星、山手など、なかなかアツい『青春サプリ。』シリーズ

    青春サプリ。心が元気になる、5つの部活ストーリー(第1期 全5巻) 青春サプリ。心が元気になる、5つの部活ストーリー(第2期 全3巻) 今8巻まで出てる部活ノンフィクション。 一冊で5つの中高を紹介する企画ですわ。 全40校のうち俺が気になったのはコレ。 青春サプリ。(1)自分がここにいる理由法政大学第二 合唱部 青春サプリ。(3)乗り越えられない試練なんてない暁星 競技かるた部立教新座 柔道部 青春サプリ。(5)なりたい自分になれる山手学院 ねころ部大西学園 吹奏楽部日本大学第二 演劇部駒場東邦 折り紙同好会 青春サプリ。(7)自分らしくあるために共立女子 地理歴史部 俺は5巻だけ読んだが、…

  • 少年は勇気を、少女は元気をくれる『スクラッチ』(歌代 朔)

    出題実績ゼロの作家の6月に出た本だが、 読友さん達の推奨が激しいんで読んだわ。 評判以上の面白さなんでお宝発見な気分。 今日現在、アマゾンのこの商品を買った 人はこんな商品も買っていますってので 渋幕、豊島岡、桜蔭の赤本が表示される。 もしかしたらどっかの塾の難関クラスで 国語の素材文にしたのかも知れないな? 主人公は美術部男子とバレー部女子だが、 男子目線のパートの方が使いやすそうだ。 俺のレビューはこんな感じではじまるぞ。 主人公はクールな美術部男子と元気印のバレー部女子を中心とした4人の中学3年生。コロナ禍もあり不完全燃焼気味だった彼らが、さまざまな制約の中で関わり、刺激を与え合って、本…

  • ツンツン、トゲトゲ、そのワケは?『金曜日のヤマアラシ』(蓼内 明子)

    人間の気持ちって、なんであんな一瞬でうらがえるんだろ?(本文より) あんまり出題実績のない作家の新作だが、 素材文にしやすそうなんでチェックした。 いやな転校生が来ちゃったなというのが 関わってみたらいいやつじゃんに変わる。 一言でいえばそんなストーリーだったわ。 平易な部類なんで小5でも読めるだろう。 以下は俺の書いたレビューの最初のほう。 事情や背景を知ることでお互いの見方は変わる。心にフタをせず気持ちを出していこう。そんな願いが込められた作品ですね。主人公は父子家庭の小6女子。取り返しのつかない過去に苦しむ彼女が、いつも不機嫌に見える転校生との関わりを通じて、人とのほど良い距離感を学んで…

  • 心ぽかぽか『掬えば手には』(瀬尾 まいこ)

    秀でたものなど、自分にはまったくないと思っていた。個性も個性も目立てるものも才能も何もない平凡な人間だと。(本文より) 頻出作家瀬尾まいこの7月発売の新作だ。 やっぱ根はいい人が多くて心温まる作風。 小説として面白いのは間違いないんだが、 主人公の特殊能力の取扱いが難しいんで 出題に使えそうな部分は限定されそうだ。 たとえば、市民マラソンのシーンとか? 俺のレビューはこんな感じではじまるわ。 親がどう接するかが子どもの将来を左右すると改めて実感しました。主人公は、自分のことはそっちのけで困ってる人を助けずにいられない大学生。ただ一つのことを除いて、何も特別なものを持っていないと思い込んでいた彼…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2022年8~9月)

    秋以降発売の作品はあんまりその年度の 入試に出ないが、これがいま気になる本。 どれもこれから読むんで、中学入試には 向かない作品も混じってると思うけどな。 『5年1組ひみつだよ』(吉野 万理子)8/11発売 『噓つきジェンガ』(辻村 深月)8/25発売 『海とジイ』(藤岡 陽子)9/6発売 『ラベンダーとソプラノ』(額賀 澪)9/14発売 『5年1組~』は入試より高学年模試に ちょうど良さそうな雰囲気かもしれない。 辻村深月はドロドロしたものは出題率が 低いんで『噓つき~』はたぶん出ないが、 『五年目の受験詐欺』という中編作品が 中学受験モノらしいんで今から楽しみだ。 『海とジイ』はあらすじ読…

  • 「開成から東大とか、いらないんで」

    個別塾には1対2のところと完全個別の 両方に通わせたが、全くの別物だったわ。 先生1対生徒2の個別は塾のメイン教材 学ぶのに役立ったのは間違いないんだが 志望校対策にはちょっと役不足だったな。 先生が過去問の予習まではしてくれない もんだから時間効率がイマイチなわけよ。 ++++++++++++++++++ 10月末に入った完全個別は、エースを 担当させますって言うんでどんな先生か 聞いたら、開成→東大の学生だっていう。 反射的にそういうのいいんでプロ講師を お願いって言ったが、いやいや、格別に 評判がいい学生なんですって推すんだわ。 超エリート君には出来ない子の気持ちが わからないに違いない…

  • 個別重課金のタイムリミット

    難関校で高い判定取れるような子の場合、 個別塾を併用する際にはリミットがある。 合格実績に貢献しそうな子はいい先生を 担当にしてもらえる可能性が高いんだが いつ入塾してもいいわけじゃないんだな。 なぜなら塾が合格実績に加えるためには 在籍3ヶ月超、受講30時間超っていう 業界ルールを守らないといけないためだ。 実績になりそうなら本気で肩入れするし そうでなけりゃ、まぁ集金に徹するわな。 だから塾側にも本気になって欲しけりゃ 入会のタイムリミットは10月末になる。 つまり、するのかしないのか、そろそろ 決めないといけない時期ってことですわ。 ※全国学習塾協会が合格実績基準を統一 ++++++++…

  • 同調圧力がコワ~い『星の町騒動記: オオカミさまあらわる』(樫崎 茜)

    まれに入試に出る作家の6月発売の新作。 オカルトっぽい題名だが中身はノーマル。 読書感想文コンクールの課題図書になる のではという声があったんで読んでみた。 良書なら出題者の目に止まると思ってよ。 正直、終盤になるまで高評価される点が わからなかったが、中学校の人間関係を 掘り下げたいじめ事件の部分で納得した。 もし出題されるとしたら、終盤かもな? オレのレビューはこんな感じではじまる。 迷信深い地域に伝わる土地神のような獣が捕獲されたことで、町が異常な熱気に包まれます。主人公は宮司の家に生まれた中2男子。不本意にも「オオカミさま騒ぎ」に巻き込まれることになった彼が、身を乗り出して生贄の儀式に…

  • 弱点を生かす立ち回りが凄い『母の国、父の国』(小手鞠 るい)

    『母の国、父の国』(小手鞠るい/さ・え・ら書房) 差別され疎外されている人には、差別の壁を崩す楽しみがある。壁に挑戦する喜びがある。弱点を生かすのだ。損をして、得を取るのだ。(本文より) たまに入試に出る作家の7月発売の新作。 差別について考えるきっかけになる本だ。 母からクロンボ呼ばわりされ世の中にも 徹底的に疎外された経験を持つ主人公が 堂々と生きられるようになるまでの物語。 終盤はお見事というほかない感じだった。 年齢を問わず広く読まれてほしい作品だ。 俺のレビューの最初のほうはこんな感じ。 ハーフ女性が綴るエッセイという形式をとったユニークな小説です。肌の色で差別や偏見にさらされ、苦し…

  • 大切なことを教えてくれる『あの子のことは、なにも知らない』(栗沢 まり)

    考えた時間はむだではない。自分の知らない世界を想像し、思いやった経験は、これからぜったい生きてくる。(本文より) ポプラ社から3月に発売された新刊本だ。 中受では出題実績のない作家だと思うが 恵まれた子らが想像しにくい環境の話は 難関校好みのテーマなんで読んでみたわ。 中学3年生たちが学校で問題児とされる 子の事情へ関心を抱いて、知らなかった 世界のことを身近に感じるっていう話だ。 俺のレビューだとこんな書き出しになる。 中学卒業を控えた時期に、心を閉ざした転校生がやってきたことで騒動が巻き起こります。主人公は卒業祝賀会実行委員の2人。彼らがつらい生活を強いられる子に関心を深め、お互いに刺激を…

  • まさか、まさかの『ノレノレかるた 二人でつくる卒塾制作』(こまつ あやこ)

    見えない何かに後ろから両肩をつかまれて、「あっち」「こっち」と振り回されてる自分の絵が思い浮かぶ。全然自分で歩いている気がしないんだ。(本文より) 2019年最頻出作家の7月発売の新作。 定型詩や異文化もテーマに関わっていて 出世作の原点に回帰したような面もある。 勉強より絵を描くのが好きな子が主人公。 受験生なのに卒塾に向けた製作なんかを はじめるから、どうなるのかと思ったら まさかのストーリー展開にびっくりだわ。 子どもが凄く共感しそうな部分もあるな。 出題するとしたら難関校より中堅校寄り。 俺のレビューだとこんな書き出しになる。 主人公は小規模塾に通う不真面目な女の子。生まれた時から志望…

  • 【本気レポート】入試問題の難易度を学校別・科目別に偏差値化する(算数・国語編)

    日能研オン・ザ・ロードの資料『学校別・分野別難易度一覧』の2年分を集計して書いた記事が人気なので、改良版を作成してみました。変更点は、多く出た分野のウエイトを重くしたうえで、難易度を偏差値化した点です。ランキングの作成方法は末尾に書いたので、関心がある方は試してみて下さい。 以上が算数の難易度ベスト100。難関校でも問題の難易度偏差値が低い学校はありますが、このパターンはミスが許されない熾烈な高得点勝負になるのであって、決して楽に合格できるわけではないという点には注意が必要です。 とはいえ、基本ができるのに応用に難があるような子は、難易度偏差値が低めの学校を選んだ方が合格しやすそうです。 例え…

  • 多様な価値観に触れられる『空と大地に出会う夏』(濱野 京子)

    割と出題実績のある作家の注目の新作だ。 合理的じゃないことが嫌いだった少年が 多様な価値観を受け入れられるまでの話。 変わった友達との交流が少年の気持ちに どう影響していくのかがポイントだろう。 難しくはないので、どのレベルの学校で 入試素材になってもおかしくなさそうだ。 以下は俺のレビューの書き出し部分だわ。 理屈っぽい小6男子が主人公。気持ちを表すのが苦手な彼が、うるさいくらいに自己主張する女子や、元クラスメイトの不登校男子らとともに、ひと夏の時間を共有します。 bookmeter.com 『空と大地に出会う夏』(濱野 京子/くもん出版)

  • 音楽が心をつなぐとき『トーキングドラム 心ゆさぶるわたしたちのリズム』(佐藤 まどか)

    そこそこ入試に出る作家の7月発売の本。 両親や兄弟の仲が悪くて家が戦場みたい という少女が居場所を作っていく物語だ。 出題されそうな本の中ではかなり易しい。 普通の小5なら十分読めそうな印象だわ。 出すとしたら中堅校から準難関校までか。 俺のレビューの書き出しはこんなですわ。 クラスで孤立しがちな小6女子が主人公。家にも居場所がなく投げやりだった彼女が、それぞれに抱えるもののある5・6年生たちと一緒に打楽器作りに挑戦し、”気持ちを伝える演奏”のために協力し合います。 bookmeter.com 『トーキングドラム 心ゆさぶるわたしたちのリズム』(佐藤まどか/PHP研究所)

  • さまよう少女たち『パパイヤ・ママイヤ』(乗代 雄介)

    「わたしその時に、一番に愛される期待なんてしないって決めたの」(本文より) 2022年入試でもかなり的中があった 鉄人会の出題予想作品なんで読んでみた。 親のせいで大変な生活を強いられてきた 少女の新奇な夏の過ごし方が描かれてる。 登場人物目線ではハッピーになるんだが 読んでる方としては引っ掛かるところも。 親ガチャのせいだとはいえ、大切な夏を 無為に過ごしてしまってる面もあるから。 成長したり友情が深まったりというのは ちゃんと描かれてるからいいんだけどな。 俺のレビューのはじめの方はこんな感じ。 酒に溺れる父が嫌いなパパイヤ、海外暮らしの奔放な母が嫌いなママイヤ。ともに深刻な悩みを抱える二…

  • 理想に燃える教師像『空にピース』(藤岡 陽子)

    『金の角持つ子どもたち』で注目された 藤岡陽子の2022年2月発売の新作だ。 一言で言っちまうと6年の担任になった 若い女教師が荒れた学校で奮闘する物語。 困り感のある子をマンツーマン対応とか、 現役教師が読んだら、大変な教育職場で こんなマネできるか!とか怒りだすかも。 ま、面白くて目が離せない部分も多いわ。 ミステリ要素もちょっと入ってたりして。 興味深かったのはクラス分けのカラクリ。 勉強・運動を出来る、普通、苦手に分け、 どの組も能力が均等になるよう先生達が 話し合いながら配分してくんだってな? もう一点、外国人の子の1/3は就学の 実態が不明って話もかなり衝撃だったわ。 俺のレビュー…

  • その思い出は宝物『すこしずつの親友』(森埜 こみち)

    自分の時間を自由に使い、行ってみたいと思うところに行けるというのはなんて素敵なことなのだろう。それが大人になるということならば、わたしは早く大人になりたい。(本文より) デビュー作が鴎友学園、2作目も入試で 使われた森埜こみちの6月発売の新作だ。 一言で言うと少女が伯母からさまざまな 旅行体験を聞いて心を動かされる話だわ。 ほんの些細なことでも気持ちは通い合う。 わずかな時間だって友情ははぐくまれる。 そんなエピソードの数々を聞いた少女に どんな心境の変化が生まれるかに注目だ。 俺のレビューの前半はこんな感じですわ。 親友の作り方を知りたがる少女に、伯母が旅先で出会った人々との思い出を語って聞…

  • しずかちゃんの言葉がけ『プレジデントFamily 2022年春号』(プレジデント社)

    『新受験に強い子になる』という特集が 組まれてたプレファミのバックナンバー。 一番惹かれた記事は親の4つの心得だな。 声かけを変えてみようというくだりでは、 しずかちゃんを見習いたいと謳っててよ、 それが思わず膝を打つような話なんだわ。 彼女(しずかちゃん)はアサーティブな言葉がけの天才です。誰の提案に対しても、必ずといっていいほど最初に「いいわね」「すてきね」と声をかけます。そのうえでしっかりと「でも、残念だけど・・」と本音を伝えます。(本文より) 優しい言葉でワンクッション置くことで、 子どもは受け止めて貰えたと感じられる。 こうした小さな積み重ねがジワジワ効く。 この、しずかちゃんタイプ…

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