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  • その気骨、比類なし『ミナミの春』(遠田 潤子)

    勇気という言葉は美しく尊い。しかし、勇気のない人、勇気が足りなかった人は責められても仕方がないのだろうか?(本文より) 中学入試ではほとんど見ない作家の新作。 もう、最初から最後まで素晴らしくって 自分でも笑っちまうほど揺さぶられたわ。 ここぞって場面での登場人物の意志力が まばゆいまでに輝いてたもんだからよ~、 最高の終幕なのに名残惜しくなったほど。 とくに響いたのは女の強さであり逞しさ。 心の傷やいくつもの困難を抱えながらも 人のために動ける気概に魅了されっ放し。 初読みの作家さんだけどマジ驚かされた。 素材文適性は、読み始めて10分ほどで 高い場面にぶち当たることになるだろう。 問題素材…

  • 執着心の断捨離『スノードームの捨てかた』(くどう れいん)

    蜘蛛の目って八個あるって知ってます?(本文より) 割と入試に出る作家の本日発売の短編集。 主人公は20代から30代が中心という オトナの恋愛話が多めの楽しい本だった。 女の友情を描きあげた表題作も面白いが 俺の推しは『川はおぼえている』だな~。 唐突な出会いから膨らむ予感が良いのよ。 まぁ、道ならぬ恋の話なども含まれるし 小学生を読者に想定していなさそうだな。 ヤバい描写があるわけでもなかったけど ちょっとマセた子でないと厳しいかもね。 以下はマイレビューからの抜粋になるよ。 捨てたい何かにまつわる短編集。 粒ぞろいだったな~。 捨てる対象は物だけでなく、人との関係や過去など実に多様でストーリ…

  • 出題されるかもしれない新刊本(2025年6月前後)

    6月は稀にみる大豊作になりそうだな~。 最注目は中学受験の女王青山先生の作品。 工藤先生の描く中受のアナザーサイドは ユニークで驚きが詰まってるストーリー。 久々に登場するまはら先生は期待度大だ。 ほかにも王女、王子達がズラリと並ぶよ。 新人では橋長先生の受験モノが面白そう。 以下のリストは未読の作品が多めなんで 問題文に向かない本も含まれてそうだが。 6/4発売 先行レビュー済 『この世は生きる価値がある』(長谷川 まりる) SF要素を織り交ぜた子供達へのエール。 6/4発売 先行レビュー済 『読書感想文が終わらない!』(額賀 澪) 小学生たちが感想文の救世主に出会う夏。 6/5発売 『さく…

  • 波風の教室『ぼくに友だちがいない理由』(小林 史人)

    ぼくはこの一週間、五年二組を引っかきまわした嵐の中で、おぼれないようにするだけで精一杯だった。(本文より) 今月発売された新人作家のデビュー作だ。 少年に芽生える仄かな恋愛感情や嫉妬心、 そして自己嫌悪などが繊細に描かれてる。 な~んかこの優柔不断さは自分に重ねた。 だから共感しまくりで彼が前に出る瞬間、 思わず読む手にギューッと力が入ったよ。 で、男子らしさの暴走にはビックリした。 尻上がりに面白くなるストーリーだな~。 問題文には、4章後半から11章前半に 意外なほどたくさん使えそうな場面アリ。 とくに6章のグループ作業、8章の聴取、 10章のウサギ小屋、11章の起立場面。 このあたりに素…

  • 断ち切れ!哀しき連鎖『あんずとぞんび』(坂城 良樹)

    何かを目指してがんばることも、がんばったことで結果がついてくることも、初めての経験だった。(本文より) ポプラ社小説新人賞の奨励賞受賞作品だ。 エモさが超ド級でぶったまげちまったよ。 え、ぞんび?ナニ?SFのパニック系? とか思うかも知れないが、そうじゃない。 世間からなくならない争いごとに対して 小学生が疑問を持ち行動するストーリー。 幼いころに魔法使いにあこがれた少女が どんな方法で訴えかけようとするのか? ぜひとも作品に手を触れて感じて欲しい。 そして胸に手をあてこれからの生き方を、 言葉の使い方を、いま一度考えて欲しい。 素材文適性は序盤の老婦部屋、傘パート、 中盤の家の修羅場が微妙に…

  • やすらげる優しさの『ありか』(瀬尾 まいこ)

    自分が幸せになるより、誰かを幸せにできるってすごいことだよ。(本文より) 頻出作家がベストの時期に発売した新刊。 作問選書の佳境に書店で平積みなわけで 多くの先生方が手にしていることだろう。 今作もメチャメチャ心温まる路線だわ~。 母親に愛された記憶がないって主人公が 思わぬ人の助けを受けながら子育てする。 ワンフレーズで言うとこんな話なんだが そのなかに揺さぶられる要素がたっぷり。 ピンチを越え強くなるさまは素晴らしく 血のつながりを超える愛も心に沁みるよ。 終盤で露わになる主人公の信念には万感。 こんな人になれたらって思わされたな~。 脇役陣にもそういう魅惑のキャラが多め。 素材文適性はそ…

  • 自走に向けた仕込みにも『超伴走! 中学受験合格へ導く読書法』(akira)

    今日読む一冊が、国語力だけでなく、未来を切り拓く力を育てていきます。(本文より) 本日発売の読書推し全開のキンドル本だ。 著者は日能研の旗艦校舎の教室長だよ~。 ボリューミーではないがエッセンス濃厚。 親子にたくさんの気づきをくれるだろう、 いかに点を取るか?みたいな話とは違い もっと長い目で人生を豊かにするための ヒントが詰まっていてかな~り良い感じ。 手っ取り早くないけど実は近道みたいな 勉強に役立つアイデアも含まれていたよ。 俺がいちばん感動したのは推薦図書の章。 作品たちに詩歌のようにピリッと効いた 推奨理由が付いてて頷け過ぎるんだもの。 読んでて鳥肌がきて思わず笑っちまった。 推薦図…

  • 新感覚の恋愛アンソロ『流星と吐き気』(金子 玲介)

    男のほうが元カノのことを引きずって、女のほうが元カレのことを引きずらない、って言いますよね。男は『名前をつけて保存』で、女は『上書き保存』みたいな。(本文より) 『死んだ山田と教室』で注目を集めてる 若手作家のちょっと変わった恋愛小説集。 先行禁止だったので発売日に紹介するよ。 この先生はSFのイメージがあるんだが 本作の短編は全て現実路線になっている。 現実だけど現実だと思いたくないような ビックリ展開があったりで楽しいんだわ。 一番笑えたのは職員室の先生同士の軽口。 試験問題でまさかそれをやる?っていう。 一方で背筋が寒くなる話もすこぶるある。 読めば感情がグワングワンになるだろう。 難易…

  • そう、何度でも言おう『この世は生きる価値がある』(長谷川 まりる)

    スマホも、自分にとっては興味のない道具だ。小さな機械をじいっとながめているだけなんて、せっかく生きてる時間を無駄にしているみたいに感じる。(本文より) 精力的に作品を発表し続けている作家の あと二週間ほどで発売される新作ですわ。 意外な存在が主人公になって生を謳歌し 周囲を巻き込んで影響を及ぼしていくよ。 自分でもビックリするほど引き込まれた。 いまこの世で生きている奇跡に感謝して 何でもやりつくしたいって気になったわ。 マンガ的設定だがそんなことに関係なく 子どもも大人も心を動かされそうだよ~。 これはSFが好きじゃない人にも推せる。 素材文適性って点では、不登校の少女に 手を差し伸べるかを…

  • この地から巻き返す!『ディア・オールド・ニュータウン』(小野寺 史宜)

    高校生のうちから妥協する癖をつけんな。妥協は何も生まねえぞ!(本文より) わりと入試に出る作家の3月の新刊本だ。 会社をやめ父のそば屋を復活させた男が さびれそうな町で再起をはかる物語だよ。 この主人公、人がよすぎて最高なんだわ。 お店の経営だって楽じゃないのに周囲に 気を配って手助けに余念がないんだもん。 まぁ、そういう人柄だと人の縁ってのが なにかのときに救いになったりするよな。 カネ、カネ、カネと心が汚れまくってる オレみたいな大人にはいい薬になったわ。 人情であったまりたい人に薦めたい本だ。 素材文適性は、くすぶっていた幼馴染に 働きかける場面や、問題少年にこれまた 働きかける場面にち…

  • 何もかもが美しい『遊園地ぐるぐるめ』(青山 美智子)

    思いっきり騒いで、あとは受験勉強に身を入れようって、4人で話した。(本文より) 頻出作家がミニチュアの魔術師とコラボ。 今年3月に発売された連作短編集ですわ。 青山先生は6月にも注目作が控えてるよ。 例によって美しく組み立てられた物語は 安定感抜群で感嘆につぐ感嘆なんだな~。 老若男女の視点で描かれた8篇の中では 特に素材文適性が高いと見込まれるのは バスケ女子を描く『スイングマシン』か。 引退試合の打ち上げで訪れた遊園地での チームメイトの交流に心が温まる話だが 技あり選書になりそうな部分があるから。 ま、頻出作『リカバリー・カバヒコ』を 適性100とすると今作は60程度かな。 面白さでは『…

  • 出会い花咲く『思いがけず、朝子ちゃん』(高村 有)

    先月発売された魅力あふれる短編集だよ。 小6の3人と中2の2人の視点がメイン。 これがデビュー作ということなんだけど まったくそんな感じがしない物語だった。 パワハラがもとで退職した25歳女性が 親族の計らいで手伝う店で活躍するんだ。 複雑な家族関係など、少年少女の多様な 葛藤が描き込まれていて飽きさせないよ。 子供たちの悩みに朝子がゆる~く関わる。 導くんじゃなくてあくまで自然な感じで。 この空気感こそが本作の魅力だと思うな。 素材文適性はいじめっ子への少女からの 決意のメッセージシーンなどにありそう。 難易度は紹介作品では標準的な水準かな。 以下、いつものマイレビューというやつ。 花屋さん…

  • ド直球な信念『白い虹を投げる』(吉野 万理子)

    たまに入試に出る作家の3月の新作だわ。 熱い友情で結ばれた野球チームの二人が 引っ越しで引き裂かれても励まし合うよ。 身体の弱い弟を全身全霊で心配する少年、 新天地での苦悩を打ち明けられない少女、 彼らの生き様が瑞々しく描かれてるんだ。 俺野球好きだし変なこと書いてあったら 突っ込む気まんまんだったんだが超OK。 ま、著者が筋金入りの野球ファンゆえに 安心してストーリーの世界に没頭できた。 人を悪く言わない少年チームの監督とか 元プロ選手の優しさも心に沁みまくるよ。 素材文適性は序盤の兄弟の会話のなかで 弟の感情がこぼれるシーンとか、中盤の これも弟の気持ちへの理解が転機になる シーンなどにち…

  • 自我の芽吹きを目撃する『ものごころ』(小山田 浩子)

    自分が受験することを、果たして自分は話し合ったり考えたりするタイミングがあったんだろうかと思う。(本文より) 2014年芥川賞作家の2月に出た本だ。 子どもの世界が描く短編集とあったので 手にしてみたが子ども視点の話は少な目。 全9篇のうち最初の2つと最後の短編が 小・中学生の目線で描かれた話だったよ。 エリート塾に通う少年を描いた『心臓』、 受験期の少年を描いた『ものごころ』が この作品集で楽しめたツートップになる。 改行の少ない文体が嫌気されるかもだが これらの短編の母親と子の意識のズレや 中学生活の中には素材文適性がほんのり。 取っつきづらさは否めず難易度は難しい。 以下には俺のレビュー…

  • 介護の未来への光明『森にあかりが灯るとき』(藤岡 陽子)

    未来を変えたいと思うなら動くしかありません。動けばなにかが変わります。(本文より、普遍的なメッセージを引用) 今期の超有力作品が出たばかりの著者の 前作にあたる昨年9月に発売された本だ。 特別養護老人ホームを舞台にそこで働く さまざまな職種の人々を描いてゆくよ~。 命の現場の緊迫感がマジで伝わってくる 得るもののメチャメチャ多い一冊だった。 理不尽な要求には、こっちまで怒り心頭。 そんだけ没入させられてたってことだな。 暗い現場に指す光明ってのも素晴らしい。 サプライズからのさらなる一手も凄いよ。 ただ、小学生にはなかなか難しいかな? 中学に入ったらぜひとも挑戦して欲しい。 これを問題文にする…

  • 本は師であり、友であり『さみしい夜のページをめくれ』(古賀 史健)

    ぼくはみんな、ただ偏差値で学校を選んでいると思ってたんだ。(本文より) 『さみしい夜にはペンを持て』の姉妹本。 3月に発売され評判を呼んでいる作品だ。 傷つき、あるいは疲弊した心に寄り添う 人生の案内人になってくれる物語ですわ。 抽象的だが一言で紹介するとこんな感じ。 本がどんな救いになるか訴えまくるよ~。 著者のオリジナルだけでなく紹介される 名作からの一文も魅力いっぱいだったわ。 最も心に刻まれたのはこんなフレーズだ。 身体を動かすことが身体と精神の健康にいいように、心を動かすことも、身体と精神に良いのです。(『演劇入門 生きることは演じること』より) 物語と説明文の読み方の違いには納得感…

  • 心惑わす洗足選書『うそコンシェルジュ』(津村 記久子)

    林本君はね、本当にうそに勤勉だから、大船に乗った気持ちでいていいと思うよ!(本文より) 今年の洗足学園の入試で使われた作品だ。 発売は昨年10月なので随分と早い採用。 月刊誌に該当の短編が掲載されたときに ビビッと来て素材文に選んだんだろうな。 本作は来年のほうが出る可能性が高そう。 基本的に大人の生きづらさを掬い上げる ような話が多めでエモ要素がふんだんだ。 思考がぐるぐる巡るさまは悪魔的楽しさ。 面白さでは表題作つながりの話が抜群で 洗足学園で使われたのもこの短編だった。 ただし、素材文適性って点ではおそらく 小4女子視点の最終話がベターだろうな。 『居残りの彼女』は毅然とありたい子が 堂…

  • 図書室の才女『読書感想文が終わらない!』(額賀 澪)

    「きみ、中学受験するんだ。それも、けっこう難しい学校目指してるでしょ」(本文より) 割と入試に出る作家の約一ヶ月後の新作。 読書感想文に一家言のある中三の少女が 夏休みに小学校の図書室に入りびたって 訪れる高学年の子たちと関わっていくよ。 感想文にまつわるさまざまなアイデアが ストーリーの中に幾層も織り込まれてる。 これほど夏休みの宿題の助けになる本は そうそうないんじゃないかと俺は思うな。 この作品の効用はそんなもんじゃなくて 世間の荒波を生き抜く知恵も得られるよ。 気持ちを文章化するメリットの話とかな。 だからタイトルから自分には関係ないと 思わないほうがいいのがこの本の特色だ。 色んな子…

  • 希望の種を育ててくれる『地図にないお店 純喫茶クライ』(吉田 桃子)

    その日から、教室で、わたしと口を聞いてくれる子はいなくなった。(本文より) まれに入試で見る作家の2月に出た本だ。 生き方に迷う子どもたちがちょっとした 謎めいた体験の末に出口を見つけていく。 ひと言で言っちまうとこんな短編集だよ。 両親のけんかを止めようとする子だとか 空気を読めない子のせつない胸の内など いま何かを抱え込んでる人に刺さりそう。 各章末尾に濃いぃアドバイスがあるので 刺さるだけでなく救ってくれる作品かな。 例の4段階基準で語ると難易度は易しい。 以下、俺のレビューの書き出しになるよ。 昭和の香り漂うカフェが登場するちょっと不思議な短編集。 悩める子どもたちを引き寄せるお店との…

  • 淀む空気を切り裂いて『嵐をこえて会いに行く』(彩瀬 まる)

    探しているのは活路だ。星を失った後の世界で、それでも生きていくために必要な。(本文より) まれに入試で見る作家の1月に出た作品。 言ってみれば大人の短編集って趣ですわ。 食べ物やコーヒーの魅力やばかったよ~。 卵スープなんかもメチャメチャうまそう。 北の大地を巡る旅ってのがまたいいんだ。 主人公たちが非日常の時間に浸ることで、 こんがらがった日常がほどけていくんよ。 ま、難しいんでちょっと敷居は高いかな。 マイレビューの一部だけ以下に付けとく。 北の旅情あふれる5編。 青春が薫る一冊ですね。 年代も性別も様々な悩める大人たちが、魅力あふれる旅路とその中での出会いで大切なことに気づき、人生の再出…

  • 勇気、燃ゆる日『あの子の隣で待つ春は』(上田 聡子)

    自分の一挙手一投足を笑おうと待ち構えている子が、いつも周りにいたら。想像するだけでも、喉がつかえたような気になる。(本文より) 入試で見たことのない作家の3月の新作。 だがしかし素材文適性は高かったりする。 未知の先生によるYA作品っていう訳で 俺の期待値は高くなかったんだけどな~。 真っ正直に言っちまうとあれだ、泣いた。 葛藤に苦悩する2人の中学生たちの姿に すっかり心を持ってかれ、ボロ泣きだわ。 自信のない子が頑張っちゃうと来るね~。 まさかの勇気なんか見せられた日にゃあ クソエモくって感情ダダ漏れになるのよ。 これは子どもたちの感想も聞いてみたい。 問題文に良さそうな部分は不登校少女が …

  • きっと、誰もが輝ける『TRUE Colors 境界線の上で』(神戸遥真,蒼沼洋人,いとうみく,鳥美山貴子,ひこ・田中)

    それでも今までのぼくは、ぼくの世界が充分大きいと思っていた。とんだ誤解だった。(『ぼくと体と、』の本文より) こういう本に学生のころ出会いたかった。 文学賞作家がズラリと並ぶ企画の第二弾。 約3ヶ月後の7月末頃刊行予定の作品だ。 掴んで盛り上げて鮮やかに締める連携を 十二分に見せつけるアンソロジーだわ~。 男女とも知っておきたい心情がメガ盛り。 女だから、男だから、という固定観念に ズバズバ切り込むストーリーが美味ナリ。 押し付けがましくはないナチュラルさで 楽しく物語を噛みしめつつ味わえるのは 家でも学校でも教えてくれない学びだよ。 難易度分類は例の4段階だと普通あたり。 例によってレビュー…

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