都合による詩誌に載せられなかった詩を掲載しています。全員が全員共感してくれるとは思いません。でも100人中、5~6人は共感してほしいな、という個人的希望を持っています。
旅に出よう他人探しの旅に貧相な被差別部落の端にある鄙びた宿に泊れば人の好いラマが迎えてくれるラマはお茶を入れてくれ窓から裏の血の池が見えることを教えてくれる私はそこで画帳を開く三面鏡に映った自分の横顔を描くためだ窶(やつ)れているわけではないのに頬がこけている世界中の災厄を一身に背負っているつもりなのか宿で楽しみなのは夜の食事だけだが皿数ではなくこの地ならではのものであることが重要だその期待に対し...
ぼくの前に道は続いているそして歩く端から崩れていく昨日の信頼は今日の虚偽へ変わり昨夜の愛の告白は今朝には撤回される愛する人を僕は傷つけ愛する人は僕から離れられない遠くの三角定規では雷鳴が轟いている僕の左手は昨日洗面台に忘れてきたこのまま進み悪霊の国に踏み入るのか立ち止まって奈落に堕ちるのかどちらにしても時間はなく懐中時計を持った兎が隣に立って急かしているしかし足元だけはいつも慈愛の子宮であり立つこ...
カーラはご機嫌斜めなぜなら自分の腕が二本しかなく掌には指が五本づつしかなく心臓が一つしか脈を打たず性器と肛門が別々でありそんなことがカーラのお気に召さない私たちは永遠に五体満足とはなぜ五体なのか答えを持たないDNAの偶然 適者生存の法則 創造主の気まぐれしかし誰もが器用に飯を食い歩き排尿し交合するカーラはそんなすべてがお気に召さない与えられた命を与えられた意図に沿って生きるなんて敗北だからだそこで時...
獣の牙と死者の奥歯が連なった首輪を幾重にもかけた村でただ一人の霊媒師が低く唸り 高く遠吠え祈祷する悪魔の流行り病の納める方法を神に告げてもらうためだ私を合わせて四人の娘が祈祷に合わせて舞踏を踏む私と姉は十二回と十四回の冬を越え胸が少しだけ膨らみ姉は神に祈る顔ではなく何かを諦めた表情だゆっくりと手を動かし身体をくねらせる酋長の娘の残りの二人はまだ祈祷の意味が解っていないだからただ踊ることを楽しんでい...
戦地からの帰還兵が渡る籐の乳母車を押した女が渡る頭の二つある勤め人が急ぎ足ですり抜ける帰る場所の無い少女が人に押されて渡る十五年前にバスに轢かれて死んだ爺さんが渡る棺桶を担いだ行商女が渡るしかし足音はしない息遣いも聞こえない声を荒げる者ももちろんいないみな一人なので会話する相手もいないただ白目に細い瞳孔を開け前だけ見て渡るそれはガンジスの流れのようでもあり押し寄せる過去から未来への穢れの粒子のよう...
終わりそうで終わらないトイレットペーパーが音を立てるカラカラ カラカラだから僕は 更新して再起動したほうがよいのでは と思う母が夕飯ができたことを告げに伝書鵺を送って来るが生憎僕の下半身は露出されたままだ本当は母が自分の首を送ってこないのが不満だその懈怠がだからギターをつま弾く指の股で作ったカポタストをつけて白蛇の葬送曲を想えば君とはもっと深い話をすればよかった君の言葉は僕の中で消化も吸収もされず...
完璧な人生を求めたからと言って完璧な死が待っているわけではない死が詩に変換ミスしたとしても部屋には枯れ始めているのに美しい萎びた鬱金香が差してあるが自然て面白いねと言われている間は完璧な死など得られないだろう完璧な詩が結局書けないように完璧な詩を求めて印度を放浪してもペストか禁治産者になるだけだ困りですかとウィンドウズは聞いてくるが困っていることが分からないから困っているのだ朝刊を開いてみよ七十歳...
極北までも続く赤錆びた線路の平均台を両腕を広げてバランスをとりながら歩こう大丈夫だよ 友達じゃないか僕も もう一本の線路の上でほら 片手倒立だだから安心してどこまでも進もう途中で獰猛な用務員や剣呑な角の年増女に出会ってもそれさえ心浮き立つ謝肉祭誰かと一緒にいることがこんなに楽しいなんて義母も祖父も教えてはくれなかった二人とも縊り殺してきたけどねもしかして疲れているのかい線路の上で横になってもいいよ...
ペンチで窓枠を割れ鐘のように叩いてくれガンガンガンガンそうだいいぞその調子だバイバイ ミスターフレンドシップあんたには世話にならなかったがこの先忘れることはないだろう なぜなら覚えていないからだこのガラクタだらけの処理場から旅立って俺は今夜 部落穴(ブラックホール)行の鉄道に乗るだから バイバイ ミスターフレンドシップ精通したのもこの街だった薬指の先を喪くしたのもこの街だった巨大な絶望を見つけたの...
ゆあーん ゆよーん と言ってみるがいい一発で殴り倒してやるだから君はダメなんだだから俺もダメなんだそんな程度の堅固な決心を抱いても世界は何ひとつ変わりゃしない世界をもしも変えたいと 嘘でも牛でもいいから想うならゆあーん ではなく がっぴょーん と思い切って言ってみよそれこそが天の配剤それこそが神の恩賜それで君は生きるんだそれで俺も生き抜くんだ無駄のない言葉など世の中にひとつもない絶対に必要な囁きも...
君たちは八つの目玉で何を見る七十八歳の娼婦の狡猾な流し目番いの犬の交合天使の降臨美しいものを見れば瞳が澄み穢れたものを見れば濁ると思っていたら間違いだ君たちは穢れを見よ瞳は黒々と輝き白目は透明になるだろう八つの目玉が何を見透すのか誰にも分らない少女が自らの寿命を悟らないようにだからと言って今そんなに私を見ないでくれ私の腐敗を私の恥部を私の原罪を清らかな八つの目玉で見られるほどに私の穢れが穢れを繁殖...
蒼鈍く光る立方体黄色く輝く紡錘体どちらかを選べ立方体は誠実で嘘をつかない蛙の足だ紡錘体は合理的で常に正解を示す蝙蝠の羽だ悩んではいけない膣か肛門かを択ぶように目を瞑って指させ片足の新聞集金人がメトロームを突き付けて急かしても慌てる必要はないいずれどちらかに決めることなのだだから今一度瞳孔を開いて立方体か紡錘体かを決めそして 一歩進め四千丈の谷底にかかる三尺の角材の上を天の御邦(みくに)まで歩め...
君は僕の前で宙返りして光を降らせる虹を描くそして真っ赤なネイルの指先で僕を誘う君が次に考えているのはどんな意地悪をしようかということでそれを思うと僕の胸は高鳴る悪事をなす時の君の流し目は金星よりも美しい悪事を企てる時のテーブルに頬杖をつく腕は夕照の中のギリシャ彫刻だ君の純潔は天使の邪悪だと知っている僕は朽ちるまで目を離せない...
トイレットペーパーホルダーを指紋を消しとるように磨けば南蛮渡来の逸品のように輝く輝く君にそっと尻を拭ってもらうために心の底から純潔を守る 初夜の花嫁にようにかぼちゃは好きかい外が固くて中がもじゃもじゃのそれは君の子宮だ生まれた時から君は可愛かったたとえ欠けている小指を咥えたくて喚き泣いても意地悪な美女になることは誰もが請け合ってくれたそしてトイレを空間の軸にして世界は回転している誰もが眩暈を感じて...
世界はとうに終わっていた女の首筋に噛みついている間に目玉の裏側のコンタクトレンズを探している間に会議費と接待費を振り分けている間に喉仏で施餓鬼供養をしている間に精子が卵子まで競争している間に右手が左手を探している間にだから円舞曲を一緒に踊りませんかロマノフ朝の最後の晩餐を飾る弦楽四重奏に乗って鶏を踏むステップで呪われた祈祷を耳元で囁いて静かに静かに夜に溺れていくことを感じながらそれは誰にも目撃され...
サティのジムノペティが流れるカフェで静かに読書をしていたらあなたが載っている物語を読んだことがあると隣に座った上品そうな白髪の老人に言われたそんなはずはないでしょうと答えてもいや確かにあなただったと譲らないそして一週間前電車で痴漢に間違われそうになったでしょうとか三日前にパソコンの電源が飛んで作成中のエクセルファイルが消えたでしょうとか昨夜ほっともっとで唐揚げ増量中のり弁を買ったでしょうとか経理課...
僕が君を嫌えば君は誰かを嫌いその誰かがまた誰かを嫌う静かな貨車の中にたくさんの棘の塊が積まれ錆びた鉄路にそっと止まっている君は喪くした夢想を探せるわけでもないのに草むらを蹴とばして東から西へ進み貨車も覗き込む けれど何もないニンジンをください キャベツをください 味の濃いものをいつしか憎みが痛みに姿を変えないとしても僕たちはこの現実にいま向き合っている白い粉が斉射され シュプレヒコールが谺し孤児が...
君は白いパラソルを開いて砂浜に横坐りしている 波打ち際を太ももの皮の弛んだ褌布の男が歩いている救済の時間だ廃工場の梵鐘が鳴って教えている何かお腹を温めるものを持って来ようか猿の頭蓋とか泥鰌汁とかでも大丈夫 あたしはもうアスパラを食べてるからポリポリ ポリポリ腰に手をあてて仁王立ちで海を見ているお嬢さんパンツが尻の割れ目に食い込んでますよそう言ってやりたいが水牛車を待っているだけなのかもしれな...
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