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都合による詩誌に載せられなかった詩を掲載しています。全員が全員共感してくれるとは思いません。でも100人中、5~6人は共感してほしいな、という個人的希望を持っています。

牛田丑之助
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2020/08/27

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  • 少女と聖櫃

    聖櫃の前で少女あるいは少女の彫像が立っている二百三十年間護って来た浄域の静謐を 自らの結界を一歩でも蹂躙してみたらいい少女の全てを磔刑にする視線で射竦められるだろうそして蛇皮の剥製になるだから聖櫃の中を誰も知らない少女は知っているかもしれないが教えてはくれない聖櫃が永遠に閉ざされたままなのか少女が待ち続ける何かが現れて重い銀の鍵を渡すのかそれさえも明らかではないだからこの汚濁の中で生きることに諦念...

  • 天使のおばちゃん

    天蓋一面を天使の顔が埋め尽くすがそれは明らかに三軒隣の煙草屋のおばちゃんだこんな近所に天使がいることを誰も知らずに今日もハイライトを買うそしておつりを百五十円受け取る夜になればおばちゃんは翅を広げて三メートルだけ浮かんであなたの陰茎が彼女の肛門に無事に入るか見届けてくれるそれを首のない馬が目撃して花束を抱えて蒼空の楕円を横切る私の婚約者が後継ということはないと思うがだからと言って天蓋一面に顔が描か...

  • 伝説の聖者

    その崖に近づいてはいけない穴倉に伝説の聖者が嵌っている穴倉の形が聖者に合わさったのか聖者が穴倉の形になったのかNHKの集金代行人の持ってきた名刺も入らないほど隙間なく埋まっているそして 衆生のために毎日三食腹いっぱい食べる噛みつくぞ 犯すぞ狗の尻尾を持って来い悟りの極意を伝授しようそのために三十三年間 此処にこうして居るのだ嵐にも紫外線にもほうれい線にも耐えているのはお前に巡り合うためだ健やかなれ ...

  • 断崖

    断崖の下に罅割れた赤茶色の大地が地平まで続いている基督が悪魔に誘惑され摩西が十戒を授けられたのも此処に違いない私はと云えば断崖の壁に凭れて黒猫を相棒にシングルモルトを舐めている姶良島で雨に煙る灰色の水平線を見ていた時にも手元にはシングルモルト 相棒は黒猫で何処にいても同じなのは自分でも可笑しい強い風に耳の蝶番が軋んだ音を立て燻された紫蘇の薫りが漂い砕かれた光が剥き出しの皮膚を刺し網膜の右角を禿鷲の...

  • 太い輪郭の女

    あんた誰太い輪郭の女が訊ねるどこのもん輪郭から顔の肉がはみ出してさらに続けるこの先には思い出したくない夢と人間の三倍ある左手が出ることを知らんのか意外に親切なのかもしれない裏道を教えてやるから黄金餅三袋くれなんだと思って 首のない馬で突っ切るからいいと答えると自分の耳たぶを少し千切ってやはり太い輪郭の口で噛みながら裏道は山の魔女の産道だから安全なんだがねと付け加えるそんなことはいいから歌を歌え 馬...

  • 楼蘭の美女

    二千年砂の中で眠っていた貴女は今 我が家のトイレに飾られている僕は小用を足しながら貴女に訊く人間はなぜ生きているのですかすると貴女は答える今夜は持ち帰りの仕事をしないで早く寝なさい貴女は耳だけが干からびず生肉なのでどんな小さな音でも聞こえてしまうだからキャベツの咀嚼音まで耳に入り野菜ばかり食べていないでたまには猿の脳みそでも食べなさいと諭すそういう時に耳は微かに赤みを帯びているそこが性感帯だという...

  • 砂浜を馬の胴体が疾走する聖なる愚者を乗せるために曳かれてきた床屋とクリーニング屋のどちらを継ぐか考えながら僕は遠くを旅していてそれを見たもう戻らないと半ば決めていた気持ちを翻したのはそのためだだから明日還る饐えた酒麹の充満する街へ詰襟の中学生が浮きながら擦れ違う街へでもその前にどうしてもあの馬に乗りたいそれは名誉でも蛮勇の披露でもなく自分の頭がまだレタスではないことを確かめるためだそのためにどうし...

  • 80年代

    イギリスの農村の納屋で見つけたデスクに向かっているときは古い蓄音機からいつも80年代POPSが歌っている80年代ロック80年代恋愛80年代自我80年代眼のしばたき81年代うずまきそれは僕を突き飛ばして青い草むらの熟語の洪水の中へ転げさせるあの頃はよかったあの頃は余角だったあの頃は牡鹿だったしかし経験していない記憶の泡粒でむせてもなぜ という答えはバカボンのパパの駱駝色の腹巻の中に隠匿されているでもこの年になったっ...

  • 聖火

    闇夜を照らす聖火は儚いだからこそ民衆は求め聖人は指さす荒れた暗闇の沖で絶望する船乗りのように幽かだからこそ希望を託す闇夜の裏側が晴れやかな夜明けだと信じている者はごく僅かだとしても規則正しく太陽は巡る絶望の北半球にいる若者がサンバで踊る南半球の美女を憧憬するように得られないものを求めればいつかは朝が来るだから私は目覚める世界中が眠りにつく深夜にそして誰にも読まれない言葉を綴るそれが私の灯す私だけの...

  • 眠り

    死に等しい眠りがある息はしていない寝返りもしない眼球も動かないしかし脈だけが勤勉で律儀な機械だ生きながらにして死んでいるのか死にながらにして生きているのか問題は夢を見ているか否かだが見ているものは絢爛な現実だ眠る男は枯れそぼり木乃伊になるのか生きながらにして天に召された奇跡になるのかそれは男をくるんだ毛布が聖骸布として聖別されるかどうかで分かるやがて男が寝たまま世界は回転し聖女は悪魔に詐欺師は守護...

  • 夕照

    夕照の中を帰るのは八咫烏だけではない切り立つ岩壁の裾野のサバンナを西日の陽光で頬を焦がしながら姉妹がゆっくり帰路を歩んでいるしかし少し歩みを速めた方がいい夕闇と夜の裂け目から現れた悪魔が歯を剥き出した口から蛇を吐きそれに噛まれたら悪魔の花嫁にならなくてはいけなくなるそれを避けるにはハイエナの身体と自分の柔らかい肢体を交換するしかないハゲワシも愛妾を探して濁った啼き声を上げながら旋回し始めただから早...

  • 画家は死ぬと分かっていた 間もなくこの世から消えるとすると街は画板の上へ自然に立ちあがり夢と背中に縫い込まれた法被の応援団が太鼓を叩いて明日を言祝いだその時 画板に描かれた街並みの壁は静かな鼓動を刻み屋根は密かな呼吸を続けたこの世の最後だと思って訪れた十八歳の女が絵の前で一度死にそして生き返ったそのような伝説が生まれてもおかしくはない命は滅びないただ居場所を変えるだけだだから画家の肉体から その描...

  • 亜剌比亜語でおまへとは何といふ

    おまへは犀の角でつくった首飾りをわずかなパンの値にも満たない金貨で売り渡すしかし自分のたましひのありかをみせることも もちろんあたえることもないそのうつくしいよこがほに亜剌武の王侯貴族が見初めたとしてもおまへは片手の指先さへにぎらせないだらうだからわたしはおまへに会ひに毎日バザァルへかよひきのふは豚の尾 けふは猿のあばらと贖っては何とか話ができないかと画策する然しおまへはわたしの拙ひ亜剌比亜語での...

  • 奥様の歓迎

    よぉーこそ 我が館にお越しくだされたこの硝酸の氷雨が降る中さぞかし難儀なことであったろうこめかみが痛ければ執事に申し付けるがよいふぐりを押し当てゆっくり揉んで差し上げるだろうまずは冷え切った身体を脱皮しなされ雨水が音立てる薬缶を脱ぎなされ顔面真皮に食い込んだ蟹の仮面を外しなされ地獄の業火をこちらにたっぷりと熾してある芯から温まる四十処女の生き血はいかがかな身体と気分が臨終のように穏やかになったら次...

  • 闇の部屋

    深夜に懐中電灯で本を読むのも悪くない文字のない時代に僅かな灯りで獲物を獲る願いを刻んだ祖先の気持ちになれる酷寒の部屋で毛布を被り蝋燭の灯りの下 論文を書いた貧しい科学者の気持ちになれるこうして全ての不便と不遇は昇華され聖なる物語が綴られていくそれを思えば懐中電灯で顔の下半分を照らされた怪談の顔も中世の自画像に変わり漆黒の部屋は奇跡の聖堂になる遠く包で暮らす兄弟よお前の明日は輝いているだろう朝日は東...

  • 集会

    男は下駄を脱いで椅子に登り周囲の国民帽を被った者たちに向かって演説を始めるこのままで我々は死ぬまで生きていけるのかこのままで我々は自らの信仰の欺瞞を守れるのかすると周囲の国民帽は大声で賛同するそして話の続きを聞くために熱い瞳を男に注ぐいつになったら太陽は土砂降りの日照りを止めるのかいつになったら雇い主は我々の働かない不自由を認めるのか周囲の国民帽はその通りだと口々に喚くそして誰かから叫び声が挙がる...

  • 花嫁

    花嫁とは生まれなかった家で死ぬ人間の総称だぞろぞろと見物の子供を引き連れて村中を挨拶して回るが葬送行列が擬態しているありがとう元気で倖せになりますそれは戦場に赴く姿だみんな歓迎してくれるだろう婿は大切に扱ってくれるだろう三度の食事も摂れるだろうしかしそこにはいつも死が付き添ってやさしくやさしく 心臓を腐らしてくれる皮膚を青黒く変色させてくれる爺さんが高砂やをがなればチベットの弔い歌と同じ節回しだ何...

  • 裸足で走れ

    裸足で走れ君も僕も皮膚に食い込むのは真紅の珊瑚なのか赤ん坊の骨なのか分からないけれどそんなこと気にしていたらパン食い競争に勝てない笑っている 嗤っている縄を張った向こう側の割烹着の女たちがそれなら自分で走ってみろといっている暇に走れ 裸足で番長も 級長も 貧乏人の子も ひ弱なあいつも今日だけはみんな横並びだただ走れ 走り切った者だけが掴める 何を 龍の尾を 死霊の長い髪をそこからすべてが始まるだろ...

  • 女は呆けている何も考えていないのではなく 考える何ものも持っていない足尾線の木造車両の隅の見ただけでスプリングの形状が分かるような緑色の薄い布の座席に座って瞬きもせず口を半開きにして外した右手を左手で持って肩を落としているそれは女が座っているのではなく女の不在の影が穴のように蹲っている姿だどこから乗ったのか知らないが心臓の脈拍ほども動かないしかし暑い 暑すぎる 木造車両のヒーターは周囲の乗客はみん...

  • 殺し屋

    あなたの命いただきますヒミツのアッコちゃんのお面をかぶった殺し屋が言ったそして蚊にでも刺されたのか膝をポリポリと掻いたあげてもいいけど 代わりに何か欲しいなそういうと目の穴の中の瞳を少しくるくると回してからでは私のブルマーをあげましょう と言ったいやそういう趣味はないから と答えるとなんでぇ みんな嬉しがるのに と不満そうに言いじゃあ何ならいいのよ と殺し屋の輪郭からはみ出し気味に言ったそうだな ...

  • 先生、さようなら。みなさん、さようなら。

    高く掲げた卒業証書に血が滲んでいる君のじゃないとしたら僕のかな滲みはシミとなり太陽の黄色い光を通す先生、さようなら。みなさん、さようなら。背後をこっそり見ると銘仙を着た母親が立っている後ろ手に僕を殴る竹の棒を隠してこの学校のことは忘れない なぜなら覚えてないから給食で出たまるごとのキャベツだけは別にして先生、さようなら。みなさん、さようなら。隣に半ば失神して立っている君とももう会わないだろういつま...

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