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  • 第883日 忍耐

    忍耐忍耐というものはどうも重大な価値らしい私はからっきし落第だったつらつら反省している艱難や逆境を忍耐した人に人は敬意を覚える格別に何かをなさなくともそれ自体美徳であるからだ意志の強さとは少し違う何かはよくわからない聖なる輝きがそこにある老残の身になってひたすら忍耐を学ばされているらしい苦しいしよくわからないけど仕方ない第883日忍耐

  • 第882日 魂を生きる

    魂を生きる魂を生きることがなければ無明の苦は意味がない個であることの聖性と悲劇を見据える目を持たなければ体を愛しつつ統御し心を育てつつ純化しその奥にある叡智を永遠の相のもとに見出さなければ自らの魂の姿を知りその志向するところに向かうそれがすべての魂の課題世を生きる困難は減りはしないむしろ増えていく懊悩の中で魂は魂を生きることへと向かう第882日魂を生きる

  • 第881日 夜雨

    夜雨夜の雨が町をなだめていく体とともに心も横たえよ脈絡のない夢に憩え雨音を共に聞く者がいなくともそれはむしろ恩寵だお前がお前自身に帰るためのはるか昔この夜の雨を聴いていた者がいる草深い地の茅葺き屋根の下でそれはお前自身かそれとも雨が運んできた夢の欠片か時の謎が濡れた大気に香る第881日夜雨

  • 第880日 落葉

    落葉この輝く深紅の豪奢な凋落とともに私も崩れていきたい身も心も小さな欠片になって私はもう何も要らないただ光を反射する欠片となって無辺の空間に散っていきたいただ創造の光栄を讃えて良き事どもも苦き事どももその色のままに第880日落葉

  • 第879日 麻薬

    麻薬私の愛用する風邪薬にはわずかだが麻薬成分が入っているその薬は私にはえらく効く時には鬱をも癒す麻薬はいいものではなかろうが夢と希望を失い痛んでいる者には救いになるのふとそう思ういやむしろ夢と希望が麻薬なのだこの苛酷な生を耐えるためのそんな黒い思いもよぎる愚かな思いは振り捨てて私は生きなければならぬ夢も希望も無縁な冷たい世界に第879日麻薬

  • 第878日 言葉を作る

    言葉を作るこのもやもやとした思いを一語で言えないかこの長々しい説明を簡単に二字熟語にできないかそんな歯がゆさをしばしば感じるアカデミーフランセーズよろしく新しい単語を作る仕組みがあればとつい思ったりするお役所仕事ではダサくなるネットでやったら汚い言葉ばかりになるだろう科学や経済の新語はどんどんできるのに精神活動の表現は新しくならないその方面の進歩が止まっているからか第878日言葉を作る

  • 第877日 文語体

    文語体「濁り酒濁れる飲みて草枕しばし慰む」文語詩はいいねえ格調があって書きたいけれどその格調に身の丈が合わない古めかしく詠う雅な心境も持たず文語体を復活したらどうなるか公文書やニュースを文語にしたら?大本営発表みたいで嫌悪されるねもう文語体は滅びるしかないのか「幸いなるかな」とも言えなくなるやはり少し淋しくもある哉第877日文語体

  • 第876日 勤労

    勤労働く時には飯も忘れて働きさぼれる時には楽しくさぼり大して儲かりはしないけれどクビになることはまずない労働というのはそういうものじゃないかね大昔からそうだった未来はそうじゃなくなる?一攫千金だの成り上がりだのそれは労働とは別のものそれを夢見ても詮無い夢や希望はさしてないかもしれないけどそれなりの深い味わいはあるたぶん魂が学ぶことも第876日勤労

  • 第875日 神話

    神話神話が奇妙なのは人を遠ざけ秘密を覆い隠すため秘密を知る人を区別するためけれどもそのうち秘密が忘れられ奇妙な話だけが残るどうやっても取り戻せない神話は愚かなものと見なされる時には本当の神話を隠すために偽の神話が創られる記紀の神話のように神話が隠している秘密は辿り着くことが難しく人に伝えることも難しい第875日神話

  • 第874日 旅

    旅旅は異物になることだ自家用車で走り回るのは旅とは違う道に迷い頼るものもなく途方に暮れるその時旅は旅になる周りが異物になり自分が異物になるその時存在の輪郭が浮き出る絶景や珍味もいいけれど旅はつらく淋しいのが醍醐味この生と同じように第874日旅

  • 第873日 老鳥

    老鳥羽根の抜けた翼でよたよたと飛ぶ谷間の乱気流と戯れる力もなく地表近くを飛びながらそれでも山にぶつからないかつて高みから見た地形を覚えているからけれども時折飛び出した木にうっかり引っ掛かる大怪我をすることはないがたまにやって来る大風が空高く運んでくれることを待ちながら大樹の枝でただ空を眺める第873日老鳥

  • 第872日 異同

    異同人間なんざ皆同じと言っている時はいい時ではない人は皆とんでもなく違うと驚く時は悪い時ではないくだらないものを背負わされているという意味では人は同じ世と体の中に生きている以上その桎梏は平等けれど魂の色合いは驚くほど違う同じ人間とは思えないほどにいやたぶん種族はまったく違うのだろうそれがぶつかり合うのがこの世ぶつかることで色はより鮮やかになる多少の軋轢は必要経費みたいなものだ第872日異同

  • 第871日 で?

    で?で?という暴力的な問いは時に有効頻繁にやると殴られるけど得々と抽象論を吹聴する輩とか延々と悪口を言い続ける輩とかうんざりしたら言ってやるといいで?と何かを変えられるのかよお前は何ができるんだよそういう喧嘩売りだ行き着く目的を曖昧にしたままああじゃこうじゃと議論をするのは迷惑なことこの上ない第871日で?

  • 第870日 数学

    数学数学というのは全然わからない実在に即しているのかそうでないのか世界で数人しか正しさを理解できないそんな数式は果たして正しいのか何か意味があるのか役に立つ部分は超絶的に役に立つ役に立たない部分に入り込むと発狂しかねない認識の問題か実在の問題か魅力的な謎だけれど私にはさっぱり歯が立たない第870日数学

  • 第869日 神秘の人体

    神秘の人体人の体の仕組みは知れば知るほどその精妙さに驚嘆し当惑するこんな奇跡のものに乗っかっているにしてはわれらの魂のほうはずいぶんお粗末ではないかこれほど精妙なものができるには途方もない知性が必要だそう考えるほうが自然じゃないかねわれらの知性も成長すればその驚異の知性に繋がることがいつの日かできるのだろうか第869日神秘の人体

  • 第868日 情報

    情報土石流のように押し寄せ流れていく情報を日々受け取って今の人たちの心はどうなっているのだろう安っぽい作り話には引っ掛からなくなったけれど不感症になったりすべてを知っている気になったりしていないだろうか今の若者は私の若い頃より数百倍の情報を知っているだろう彼らはこの後どう育っていくのか世は変わらぬのかもしれず変わっていくのかもしれずそれでも進化は続くのか第868日情報

  • 第867日 夢散り

    夢散り夢や希望なしにどうやって生きていくのかそう若い頃は思っていたけれど年老いた今私には夢も希望もないだが死にたいわけでもない夢や希望がなくなって私は自分と世を見つめる大きな謎の前に立ち尽くすこれは地獄なのかそれとも天国か目指していた所なのか第867日夢散り

  • 第866日 囲炉裏の炎に

    囲炉裏の炎に囲炉裏を囲んで静かに話をしよう遠い遠い日々の記憶を深い深い夜の豊かさを今日味わった光と影を静かに反芻しよう与えられた質素な食べ物をゆっくりと味わおう煙の匂いと炎の熱そして忍び寄る夜の冷気闇の野に拡がる厖大な静寂何億年の歴史の中にわれらはいるこの広い世のこの片隅にわれらはいるその奇跡を賛美しよう第866日囲炉裏の炎に

  • 第865日 滝

    滝滝は無鉄砲川が宙を舞うなんてあってよいものではないその破れかぶれがわれらを圧倒する岩にぶち当たり巻き上がる飛沫がわれらを癒す大地神の気まぐれか創造主の手すさびかそれともわれらへの恵みか自然が時たま見せてくれる無鉄砲の力と美を私も真似してみたい第865日滝

  • 第864日 夢・白い霧

    夢・白い霧天の底から白い霧が降り注ぎ地は和らぎ風はたゆたう鳥は羽を休め獣たちはまどろむ精霊たちの歌は静かに森を満たすそれは人類が死滅する日の景色長い悪夢は去り水の惑星は自らを癒す壮大な実験は終わりすべての記憶は天の倉に収められる天の国は新たな星を求めてさすらう第864日夢・白い霧

  • 第863日 東京の西側

    東京の西側都の西北で育った者なので散策などでも武蔵野をうろつく西南はあまり知らない東に至っては未知の土地金持ちは西南に住むらしいふんそんな新興ブルジョワじゃねえよ少し前まで世田谷あたりは畑だらけモンペをはいたおばさんがいたんだぜ最近は東側の発展が猛烈だ工場地帯だゼロメートルだ川向こうだといささか見下していた地区が最先端とは西北部は逆に取り残されつつある先のものは後になり後のものは先になるまあ武蔵野の長閑な街は老人には裏侘びしく心地よい第863日東京の西側

  • 第862日 幻像

    幻像あの頃切々と焦がれた黎明の光のような美少女は果たして実在したのか彼女は人間だったのかあの美はその人間のものだったのかあの美は当人に見えたのかそれはただ私が見た幻だったのか私の中の何かが投影されたのかならばその後何度も現れてもいいはず思春期の恋は天使の悪戯謎のまま消えていく誰もそれを解くことはできない第862日幻像

  • 第861日 自炊讃

    自炊讃宗教とは大衆食堂であるそこに無上の美味を求めてはいけない無上の美味は自ら耕し自ら漁り自ら料理するもの大食堂チェーンの本社で汚職があったとしてもさして問題ない食堂のキッチンが汚れていたとしてもパック素材ならまあ問題ない「狭い門を行け」とイエスさんは言った人の目につかない門が真理への道だと宗教はどれも満艦飾の広い門だ便利な道具も材料もあるのだから心ある人は自炊すればいいそれが自分にとって無上の美味第861日自炊讃

  • 第860日 飛行機

    飛行機用もないのに空港に行き飛び立っていく飛行機を見るどこへ向かうのか知らぬままに遠い国の幻を追う飛行機には乗りたいが遠くへ行く金も気力もない高く飛んでただ戻ってくる格安の便があったら乗りたいそれでも飛行機が颯爽と旅立つ姿はいいどこかへ向かうという強い姿が向かう所もなくうずくまる日々を突き破ってどこでもない所へ行きたい第860日飛行機

  • 第859日 関心欠如

    関心欠如幼い頃人に関心がなかったどうもそんな気がする年老いてその頃の私に戻っていくそんな気もする異常なのか普通なのか私にはわからない慄然とし安堵もするこれは病なのか自然なのか第859日関心欠如

  • 第858日 海苔でもあぶりましょうか

    海苔でもあぶりましょうか海苔というものはつくづく奇妙な食べ物だ薄くて黒くて紙みたいで外人が当惑するのはわかる昔人からもらった老舗の缶入り超高級焼き海苔を食べた時その味の豊かさに仰天した普通の海苔はその半分くらいの味しかない古い小説で酒の肴として「海苔でもあぶりましょうか」と出てくるそんなもの肴になるかと若い頃は思ったけれど年を取ったらその有り難さがわかる味わいは深く胃にもたれない夜の燗酒には絶好の肴第858日海苔でもあぶりましょうか

  • 第857日 断罪

    断罪悲惨は少なくなっている物の幸福は途方もなく大きくなっているいくら不平不満を言おうがそのことは間違いないそれでも人の生の根本は解かれるわけではないもっと向き合うことができるはずなのにそうなっているわけでもないわれらは逆に考えている物質的苦は多くなっている生に向き合うことができなくなっていると向き合うためにはむしろ悲惨や労苦が多いほうがいいそれがわれらへの断罪なのだ第857日断罪

  • 第856日 玉子

    玉子玉子はおいしいゆで玉子も目玉焼きも玉子掛けご飯は格別しかしよく考えるといささか気持ち悪くもある後ろめたくもあるまあ考えないことだ宇宙卵という神話がどこかにあった卵は確かに始原の原型生命の原型を食うそう思えば力が漲る玉子は神話的な食べ物だ第856日玉子

  • 第855日 故郷

    故郷帰りたい今現実にある場所ではなくかつてあったあの美しい場所へけれど絶対に帰ることはできないそれは心の中にしかない誰もが追放された難民なのだ誰もが異郷にいるのだ人は故郷を忘れて今いる場所に故郷を作ろうとするけれどそれは故郷にはならないすべての故郷を失った後で初めて魂は帰る光溢れる本当の故郷に第855日故郷

  • 第854日 本は内部

    本は内部テレビやネットは外部だが本は外部ではない外部はこちらを攻撃してくるが本はそうではない本は内なる友だ静かに対話し自分を見直させてくれるあるいは美しい世界に遊ばせてくれる二三十冊の本があれば一人の精神世界は豊かに充溢する漫画でもラノベでもいいけれどそういう本の文化も終わろうとしている人はどんどん外部の奴隷になる第854日本は内部

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