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  • 第669日 幻

    幻幻のような世界だが幻にしては重すぎる幻のような世界なら軽やかに移ろい消えていけばいいのに重くしているのはわれらの心なのか愛着と貪欲が幻を鉄の荒野にしているのか幻のように過ぎていくものを幻として味わい尽くすそんな智慧をわれらは持たない移ろい消えていくものを消え去るに任せるそんな賢さをわれらは持たない第669日幻

  • 第668日 中間

    中間一〇〇かゼロか言い切れれば気持ちがいい知性が好きならなおのことけれどそうは行かない物理法則すら絶対はないましてや生命や心の活動は言い切れないことだらけすべては中間で揺れ動く理想主義は知性の化け物一〇〇かゼロでないと許せないそして大きな悲劇が起こるすっきりしない世界をわれらはバランスを取って生きる居心地の悪さは諦めるしかない第668日中間

  • 第667日 自己愛撫

    自己愛撫自己愛撫に浸ると他者は不要になるいいことではなかろうが誰に迷惑を掛けるわけでもない心もまた自己愛撫してやればいいのだがそれが難しい棘を出し毒を吐き愛撫する手を拒む愛撫する手が未熟なのか心は反逆児なのか暴れて唸るばかり第667日自己愛撫

  • 第666日 原初の認知

    原初の認知幼い子供は物をそのまま感じ掴む知を通してではなくそして物は輝く輝きは想像を生み不定型の感情を生むすべては渾然として詩情を創る感覚と想像と感情のアマルガム知でも理でもない認知の原初の姿理知の認知でやせ細ったらわれらはそこに戻らなければならない物とじかに純粋に戯れることによって第666日原初の認知

  • 第665日 冷蔵庫

    冷蔵庫冷蔵庫に物がたくさんだと何か腐ってないか心配冷蔵庫に何もないと飢えるのではないかと心配冷蔵庫はすごい昔は氷を買って箱に入れただけだった今じゃご家庭で冷凍食品が作れる食べるためのわれらの労苦は激減した冷凍は時間を止める魔法完璧ではないけれど人間は時間を操る技術を得た青春時代の情熱を冷凍保存しておいて老年に解凍したらどうなるかねのたうち回るだけか第665日冷蔵庫

  • 第664日 春への愛

    春への愛花は微風に散り踊り若葉は霧となって森を包むこの燃え盛る春の狂喜に私は独り取り残される春を愛し崇めても春と一つになることはできぬ愛しく美しい恋人と一つになることができぬようにもしわれらが冬に一度死ぬのなら春はいのちとなってわれらを満たすだろうけれどわれらは郷愁を抱けるいくつもの春の中に死ぬことができるそれがわれらの春への愛第664日春への愛

  • 第663日 思想のカオス

    思想のカオス人の思想は整然とした体系になどならない無数の思念が織りなす不格好な多中心体だ矛盾する思念もある孤立した思念もある思念と思念をつなぐ思念もある複雑で奇怪な織物だいくつかの基礎命題があってそこからきれいな論理が展開されるそんなものは機械であって思想ではないその混沌が一つの色となって発散するそして反射して多様な色を産む思想とはそういうものだ第663日思想のカオス

  • 第662日 脱出

    脱出ああ脱出したいこの小さな肉体をこの狭苦しい心を脱ぎ去りたい不定形の精神になって万象を吸い尽くし未知のものを創造し激しく脈動したい親しきものと共振し敵対するものと戦い宇宙を光と闇で飾りたい救いや赦しなんかではない私が欲しいのは自由とエネルギーだ理知や個人などを吹き飛ばす運動だ第662日脱出

  • 第661日 小石川植物園にて

    小石川植物園にて野獣を呑み込んだかマグマの精を溜め込んだかそのクスノキの幹は巨牛のごとく膨れ上がり樹皮はさながらゴジラの膚いやゴジラがこれを真似たのか東京には稀なこの樹は植物園の怪物にして主楠の肌に湧いた樟脳の結晶に陽の光が射して神が生まれるというどこかの神話がふと頭をよぎる三百年の時の中で生まれたこの聖なる樹にして醜悪な怪物は夜な夜な唸り声を上げているに違いない第661日小石川植物園にて

  • 第660日 洗濯

    洗濯こびりついているうんこを腸からきれいにそぎ落としたい心に溜まっているうんこもきれいに洗い去りたい心もばざっと取り出して洗濯できないものだろうか洗い立ての真っ白な心で自分を包めないものだろうかけれど除菌された布地にまたお前は嬉々としてばい菌を培養するだろう腸に有用菌を送り込むように心にもいいものを植え付けなくてはしかしそれは何だ第660日洗濯

  • 第659日 密義

    密義真理を明らかにするとねじ曲げる阿呆もいるし悪用する馬鹿もいるだから隠しておくという密教の姿勢はたぶん賢明なのだろう平等主義の今の世ではけしからんと言われるだろうが真理は隠しておいたほうがいいかもしれない必要な人は見つけるだろうからしかし本当の真理はいくら白日に晒しても人は聞こうともしないものかもしれない第659日密義

  • 第658日 唾棄

    唾棄こんなもののために人類は進化してきたのかこんなものが人間を進化させるのか私は同意しない擁護しないむしろ天のいかづちが降り注いでくることを望むどこかで決定的に道を間違えたのではないか悪魔に唆されたのではないかもし私がもう一度この世に生まれるなら私はその破壊者になりたいいやもういいこんなものは見たくない第658日唾棄

  • 第657日 現実

    現実現実をわきまえない者は現実に処罰されるしかし現実しか認めない者はケダモノになる現実はケダモノの世界だがそうでないものも混じっているそれを見出さないと人はケダモノで終わるいくら理想の言葉を吐こうが望むものが現実に留まるならばそれはケダモノの功利に過ぎぬ人がケダモノを脱しているのは現実の向こうにあるものを感じているからだ現実の功利を超える部分があるからだ第657日現実

  • 第656日 果てぬもの

    果てぬもの飢えが渇きが私の奥底のさらに奥底にあるもう欲望はない幸福も愛も求めていない救いを求めているのでもないけれど飢えと渇きがある何が欠けているのかわからないわからないから飢え渇いているこの生の終わりまで飢えと渇きは続くだろうそれを私は悲しまない第656日果てぬもの

  • 第655日 天変

    天変火山の猛烈な噴煙も竜巻の乱暴狼藉も洪水の容赦ない侵略も雷の無差別の鉄槌も自然の荒ぶる姿は恐ろしいが心を強く魅了する見ていたい身を危険にさらしてでもそれは生命よりもっと強い根源の創造の勇姿神の子たる地球の素顔文明や人命のことは忘れてもっとずっと見ていたいその大動乱に呑まれて死にたい第655日天変

  • 第654日 半睡

    半睡眠りに落ちていく手前で勝手に動いていく思考は意味も脈絡も出鱈目で呆れる意味不明の馬鹿げた夢はこういう脳の暴走が作り上げているという可能性は大きい悪夢や感情満載の夢はそれとは違う出所が違うのだろう夢の出所は秘密体か心か魂か半睡の出鱈目思考がそれを覆い隠している第654日半睡

  • 第653日 おかしい

    おかしいつらつら考えてみるに同性異性を問わず付き合いのあった連中はどいつもこいつもちょっとおかしい奴ばかりかなりおかしいのは少しいたけれどおかしくない奴は一人もいなかった俺がそういうのを引き付けているということでもあるまい誰もがちょっとおかしいのだおかしくない奴なんてまずいないそれで世の中回っている自分がまともだと思うのは阿呆少しおかしいのが標準まあそういうものなのだな第653日おかしい

  • 第652日 悪筆

    悪筆自分の悪筆はどうも恥ずかしい下手であることがではなく何か裸の自分を晒しているようで誰かが攻撃してくるわけではないがどこかで嘲笑されているようで見栄っ張りなのか臆病なのか悪筆でも味のある字はあるその人の人格が優れているのか私の悪筆にはそんなものはない実は達筆というのは臆病で見栄っ張りを必死に隠しているなどと思うのは下衆の勘ぐりか第652日悪筆

  • 第651日 チズちゃん

    チズちゃんチズちゃんは山国の出スタイルはよくないし歩き方はプレデターのよう険しい顔をして歩いていると狩りの標的にされそうで怖いだけどふとした時に微笑むとその微笑はものすごくかわいいその笑顔と飾らない性格にあの旦那さんは惚れたんだなやさ男の律儀そうな旦那は私もその笑顔に少し惚れている山国の土と水の香りが彼女の笑みから漂ってくる気がする第651日チズちゃん

  • 第650日 幽玄

    幽玄めくるめく桜の狂乱に酔ったことがなければ雪間の草の春をいとおしめぬあでやかな紅葉に狂い歩いたことがなければ浦の苫屋の秋を味わえぬわびは豪奢を味わい尽くしそれを捨てなければ辿り着くことができぬ「つまりさあ百の恋をして恋をもうやめて通りすがりの少女のほつれ毛にすべての恋の哀切を蘇らせるこれぞわびってこと?」ま……まあな「でも美少女じゃなきゃだめなんだよなあそのあたりが悟り切っていないんだよなあ名作の茶器なんか揃えちゃってさ」う……うるせえ第650日幽玄

  • 第649日 イカロス

    イカロス私は見た触れた見えないものを捉え得ぬものをしかし私は墜落したイカロスのように今は地べたを這う泥にまみれながら見触れたものをもう思い出せないかすかな光暈のほかはだが高さの記憶はあるここが地べたであるという認知もそれがわずかな果実第649日イカロス

  • 第648日 侮蔑

    侮蔑怨嗟するよりは侮蔑するほうがましだ侮蔑には少しなりとも誇りが含まれている誇りは愚かな幻かもしれないが自制のつっかえ棒にはなる怨嗟には自制はないただ凶暴化するばかりしかし侮蔑するならば侮蔑されることも覚悟せねばならぬ自分より上の存在からは神様に祈ったりしてはだめだよ神様はあんたを侮蔑するだろうあんたがしているように第648日侮蔑

  • 第647日 芸術の終わり

    芸術の終わり芸術はもう終わっでしまったのか何とはなしにそう思う時がある芸術という概念は近代の神話もうその時代は終わったそう説く人もいる大衆が崇敬すべき権威はもうない美術界文学界音楽界とやらの重鎮はいなくなって結構だけどそういうことではなく何かが消え去ってしまった気がするそれは「永遠へのまなざし」かもしれない第647日芸術の終わり

  • 第646日 勝ち取る

    勝ち取る戦って勝ち取るんだ美味いものを食うためか女を抱くためか自分に誇りを持つためかまあいいんだよそんなこたあとにかく戦って勝ち取るんだこれぞと思ったことを間違ったっていいじゃねえかそんなものなんてないなんて生き方はつまらんだろうまあそれもいいけれど最後に勝ち取るのは自分自身だ永遠に死なない自分自身第646日勝ち取る

  • 第645日 肉体四散

    肉体四散電車に飛び込む人は肉体を心底憎んでいるのかばらばらぐちゃぐちゃにして鬱憤をはらしているのかいろいろ苦しめられたけど世話になったしそこそこいとおしい肉体を私はあんなふうにしたくはない干涸らびさせて粉々に砕いて散らすのがいいか火で消し去るのもやむを得ないか魂が抜けた後なのだからどうでもいいのだけれど多少の気遣いはあってもいいだろうに第645日肉体四散

  • 第644日 紺色の怒涛

    紺色の怒濤皆と同じ服を着るというのは楽なのだろうけど一抹の息苦しさというものはあるもので街を歩いていると時折もやもやとしてしまう紺色の怒濤が改札口から噴き出しオフィス街へ拡がっていくのは少しばかり津波のようでもある社会というものはこういうものなのかそれとも人間の妙な偏執がなせるわざかその奥に鬱屈が溜まっていないのか文明は抑圧であるとフロイト先生は言ったそれがないと生きられないのが人間とはいえ色まで抑圧する必要があるのかどうか第644日紺色の怒涛

  • 第643日 巨人

    巨人丸太ん棒で何もかもぶっ叩いていくそんなふうに生きられたらとふと思う小さなことに捕らわれて些細なことに傷ついてごにょごにょと思い絡まるそういうのはもううんざりだ手当たり次第にぶち壊しぐちゃぐちゃになったのを積み重ね食えるものだけむしゃぶり食うのっしのっしと山に登り天に向かって反抗の吠え声を上げるそして雷に打たれて死にたい第643日巨人

  • 第642日 尻尾

    尻尾いつか忘れたごく若い頃私は電車の中でよく夢想したこの気に入らぬ輩に毒針を刺したいとただの夢想で済んだのが幸い人はちょっと間違えば平然と人を殺す生き物なのだそんな尻尾を何とか抑え込んで愛だの平和だのと言っているけれど美しい理想を叫ぶ人々が時折その尻尾をぽろりとさせるおいおい見えてますぜ皆尻尾を持っていると前提しなければ愛だの慈悲だのを語っても笑止とりわけ自分が持っていることを第642日尻尾

  • 第641日 補強

    補強弱いところを補強するのか強いところを補強するのかこれはなかなか難しい社会を渡って行くには弱いところを補強せねばならん矢が刺さって死ぬかもしれんからけれど魂的には強いところを伸ばすしかないそれが魂の課題なのだから弱いところを補強するので精一杯日々の暮らしはそんなふうに見えるけど強いところは気づかないうちに強くなっている第641日補強

  • 第640日 夢の数字

    夢の数字あと一年半と少しでその年になる夢の中で示された数字の年何が起こるかはわからないその数字だけが鮮やかに出現した天変地異が起こるのかもしれない私が死ぬのかもしれないあるいはいいことが起こるのかもしれない私は少しばかり楽しみにしている予感というものはこれまで何度も持った当たったものはほとんどない私は予感や予言をあまり信じない予感や予言で自分の何かを変えるほど私は人生に期待していないただ少しばかり面白がるだけ第640日夢の数字

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