いつのまにか私は高校生になった。この頃にはもう母と私は衝突することはなかった。いや、衝突すらできなくなった。 もちろんそれまでだって表立って喧嘩していたわけではない。それでもわずかな摩擦やすれ違いは繰り返しあった。家族としてやっていくなら当然あるべきストレス。ある時からそれすらも私と母の間には存在しなくなった。なぜそんなことが起こり得たのかといえば、母が私を「見なくなった」からだった。視界に入っても見なかったふり、気づかなかったふりをする、という意味ではない。私が「おかしな子」ではないというふりをするようになった、ということだ。 彼女と話していると、時折一瞬の沈黙が訪れることがあった。あの息の…