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2020/02/19

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  • 小説・アキラの呪い(18)

    前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 目覚めると、白い蛍光灯が縦に伸びているのが見えた。消毒液の匂いが鼻をつき、今自分が何処にいるのか分かった。格子状の白いパネルを嵌め込んだ天井には見覚えがあった。以前入院した病院と同じだ。その光景から失敗を悟った。ーーー無駄なことをした。不要な痛みを経験し、不要な血を流した。それなのに必要な結果は2度目にも関わらず手に入れられなかった。その事実は私を酷く落胆させた。阻まれてしまった、また。いつもそうだった。私の邪魔をするのは歩、あのたった一人の義弟だった。今度こそその繋がりを断てる、と思ったのに。 『あんたのせいよ』 後悔し…

  • 小説・アキラの呪い(17)

    前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第四章 彼女が望む理由 珍しく向こうから連絡を寄越したのは、帰省が終わってすぐのことだった。その内容は簡潔で「部屋の片付けをするから今週は来るな」ということらしい。今更部屋が片付いていないことを気にするような奴じゃないはずだが。ひとまず疑問に思いつつも承諾した。ーーーもしかして好きな奴でも出来たんだろうか?なんて馬鹿馬鹿しい考えも一瞬頭を過るが、すぐさま打ち消された。あの姉と恋愛沙汰ほど食い合わせの悪いものは他にない。想像するだに寒気のするような不気味さだった。いっそのこと恋や愛に興味でもあれば、彼女もまともな人間関係を手に入れら…

  • 小説「アキラの呪い」(16)

    前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 間話2 「深夜:side晶」 深く静まり返った夜のことだった。 誰かがうめいていた。男の掠れた声が壁向こうから聞こえる。作業の手を止め、わたしは知らぬ間に歩の部屋の前へと立っていた。ドアノブを引くと、くぐもっていた声は鮮明になる。戸の隙間から闇が漏れ出て廊下を染めていた。その暗闇に惹かれたせいだろうか。部屋へと足を踏み入れ、気がつくとベッドを覗き込んでいた。弟が大きな体を窮屈そうに折り曲げ、蹲っている。彼を見下ろすのは久々で、見慣れない光景だった。その様はまるで獣の寝姿のようでもある。そして同じく獣のような唸りが喉から漏れて、部屋…

  • 小説「アキラの呪い」(15)

    前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 晶は結局翌日には早々と片付けを終えてしまった。後には空の部屋だけが残された。まるでそこだけ持ち主を失ったかのようだった。そうして姉はその後一日だけ滞在し、実家からアパートへと戻っていった。正直いつ帰ったのかは俺にもわからない。週明けになって大学の講義に出なくてはならなかったから。ただ、最後の1日はどこかに出掛けていたようだった。帰りしな、晶と会って一緒に家路についたからだ。彼女が自ら外出するなんて珍しいものだ。普段はほとんど出かけないくせに。考えてみれば、彼女はこの帰省中妙に活動的だった。こんなに忙しなく動き回る姉を見たの…

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