小説・「アキラの呪い」(11)

小説・「アキラの呪い」(11)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 予告通り帰省した姉をみて、俺はほっとため息をついた。正確には、その手首を観察していた。最近彼女のリストカット跡はかなり薄くなってきている。それでもよく見れば分かってしまう程度には残っていた。今、傷はリストバンドに覆われて見えない。どうやら隠す気はあるらしい。胸を撫で下ろしながら、ふと疑問が芽生えた。なぜこんな心配を俺がしているのだろう。バレて困るのは姉さんじゃないか。なんだか釈然としない気分でもう一度傍に立つ姉に目をやった。姉は帰って早々母から小言を食らっている最中だった。 「帰る前に一報寄越せって前から言ってるでしょう。…