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  • 『パトリシア・ハイスミスの華麗なる人生』アンドリュー・ウィルソン/訳:柿沼瑛子 その5

    ネタバレします。 写真6枚目、母メアリーとパット。7枚目、メアリーとスタンリー。8枚目、ネコ型風船?を持つパット。 彼女は子供時代のことを「小さな地獄」と呼んでいたのだそうだがこの写真を見る限りそう見えない。ホームズなら見破るのか。 第9章「未知のかすかな恐怖」1945-1948 第二次世界大戦終了直後のニューヨークはヒトラーから逃れてアメリカに移住してきたヨーロッパの知識人たちによって爆発的かつ創造的活動の中心となっていた。 トーマス・マン、ナボコフ、ブレヒト、、作曲家のストラヴィンスキーなどといった多彩な顔ぶれであった。 そんな戦後のアメリカニューヨークでブームを巻き起こしたのはカフカだと…

  • 『パトリシア・ハイスミスの華麗なる人生』アンドリュー・ウィルソン/訳:柿沼瑛子 その4

    ネタバレします。 巻頭の写真について書くのをすっかり忘れたいた。 まずはミナ・ハートマン。 ハイスミスの父方の祖母。1985年撮影。 2枚目。ハイスミスの母方の曽祖父。ギデオン・コーツ。迫力ある響きの名前だと思ったら旧約聖書に登場する指導者の名前だった。 3枚目。ダニエルとウィリー・メイ・コーツ。ウィリー・メイは特に良いおばあちゃんのイメージ。 4枚目。パットの母メアリー・コーツ。 女優を思わせる写真。パットをして「母と結婚した」と言わせる。 今では「毒親」と言われる存在だ。 5枚目。実の父であるJ・B・プラングマン。メアリーがこの人と離婚していなかったらパトリシア・プラングマンになっていたっ…

  • 『パトリシア・ハイスミスの華麗なる人生』アンドリュー・ウィルソン/訳:柿沼瑛子 その3

    ネタバレします。 第4章「抑圧」1933ー1938 1933年。1921年生まれのパットは12歳。祖母のウィリー・メイは孫娘の保護者としてサウスジェニングス・アベニューにある中学校に入学の申請をしている。 この時期のパットは友人もできず孤独に苛まれているがよりどころになる23歳のいとこと兄妹のような関係でいたという。 また実の父と初対面するが仲は深まらずパットが欲していたのは母メアリーだった。 12歳という時期に母を失ってしまったことは彼女にとって「母親の裏切り」と感じられ彼女の人間関係に大きく影響していく。 「関係が安定すると相手を拒絶してしまう。何度も同じことが繰り返される。母は継父と離婚…

  • 『パトリシア・ハイスミスの華麗なる人生』アンドリュー・ウィルソン/訳:柿沼瑛子 その2

    ネタバレします。 第1章「彷徨い続ける者」1921 以前 ハイスミスは「わたしは何者であり、なぜ存在するのでしょうか?」と問い続けた作家であり世界中を旅したくさんの人々と出会いながら孤独であり「わたしは永遠に探し続ける者だ」と記していたという。 13歳のハイスミスは南部連合軍のものである南北戦争時代の刀剣一対を13ドルで買った。 後年居を移すたびにこの由緒ある武器一式を部屋の一番人目につく場所に飾ったのである。 うわべこそヨーロッパ人のようだったが彼女の本質はまぎれもないテキサス人そのものだった、と語られる。 伝統的な南部料理トウモロコシのパン、スペアリブなどを好み晩年もっとも落ち着く衣服はリ…

  • 『パトリシア・ハイスミスの華麗なる人生』アンドリュー・ウィルソン/訳:柿沼瑛子 その1

    書肆侃侃房 (2024/12/27) 単行本で7480円、kindleで7370円。とても手が出ず図書館で借りました。 第36章にプロローグ・エピローグ・あとがき付きの分厚い本です。期間は二週間。 ええい、一日3章ずつ読めばいいのではないかと適当な計算をして読み進めて行こうと思います。 初日の今夜はまずプロローグです。 ネタバレします。 表紙と冒頭の写真も少しずつ紹介してみましょうか。 まずは表紙。 昨今の紹介写真では晩年のちょっと強面なハイスミスになってしまいますが、これは何歳くらいでしょうか。かなりの美人ではないでしょうか。 昨日観た映画『キャロル』の若い娘テレーズに憧れられる美貌の人妻キ…

  • 原作:パトリシア・ハイスミスの考察/『キャロル』トッド・ヘインズ

    観た。 恋愛映画、どころか映画そのものにもしばらく離れていて昔観た映画くらいしか観れなくなっていたけど必死で観た。 よかった。 映画を観るには能力がいる。 観始め最初、いや途中までも観てこれはどうなんだろうかと思ったりもした。 つまりテレーズの彼氏やキャロルの夫があまりにも嫌味に描かれすぎてるのではないかとか。 テレーズとキャロルがあまりにも良すぎに描かれているのではないかとか、少し脳裏によぎったけど頑張って最後まで観てよかったと思う。 人間はもがき続けて生きるしかないのだと。 すべてうまく思い通りにはならなくてもその中でできる限りの努力を積み上げていくしかないのだと。 なぜか不甲斐なく泣いた…

  • 『太公望伝』諸星大二郎

    1987年11月号~1988年3月号「月刊コミックトム」 私は『無面目・太公望伝』という本を持っているのですがこちらの画像を使わせていただきました。 ネタバレします。 太公望=釣りをする人、という意味で最初に知ることも今ではかなり少なくなってきたのではないか。 昔はTVニュースで釣り人が映ると必ずこの表現をしていたのでイヤでも覚えてしまっていた。 後はもちろん藤崎竜『封神演義』の太公望で知った勢は多いだろう。 私も大好きである。 発表年は本作の方が断然早いが読んだ、もしくはちゃんと読んだのはどちらが先かよく覚えていない。 何故なら私は『無面目』の方が好きで何度も読み返したが本作はそこまで読み込…

  • 『無面目』諸星大二郎

    1988年9月号・1989年3月号(全2回掲載) 何度も読んだ作品です。 史実を元にした諸星氏の(いつもの)自由な発想による創作ですが「こんなことがあったのかも」と思わせてしまいます。 ネタバレします。 「巫蠱の禍」をメインに置いた残虐な物語なのだが私はどうしても無面目=欒大のロマンチックラブの物語として印象的なのだ。 ここまで一途な恋物語は他にないのではなかろうか。 物語は上の画のようなところで東方朔と南極老人が碁を打っている場面から始まる。 東方朔はどうやら俗界の皇帝の相談役となって面白い話などをする仕事をしている。 老人はそんな東方朔をからかっている。 東方朔はふいに「「女媧の五色の石を…

  • 原作:パトリシア・ハイスミスの考察/『太陽がいっぱい』ルネ・クレマン

    こちらも何度か観ているはずなのですが、今回パトリシア・ハイスミス考察ということで久しぶりに再鑑賞して映画作りのあまりの違いにあっけに取られているところです。 ネタバレします。 フランス映画、だからなのか、時代のせいなのか、ルネ・クレマン監督作品だからなのか、映画『リプリー』と原作小説との違いが物凄い。 これは「いけない」と言っているのではなくむしろ原作と映画とはこうあるべきではないかと感心したのだった。 現在特にマンガ原作の場合「原作とは違う」という煩い批判が巻き起こるがこのくらいはっきりと違っていいのではないだろうか。 原作を読んで生まれたイメージを映像化するのが映画なのだと改めて感じさせて…

  • 原作:パトリシア・ハイスミスの考察/『リプリー』アンソニー・ミンゲラ

    大好きな映画作品で何度も観てその感想もどこかに書いています。 一時期マット・デイモンにはまっていたこともあって。 今回はパトリシア・ハイスミスの原作であるという点に注目して書いてみようと思います。 ネタバレします。 『パトリシア・ハイスミスに恋して』というドキュメンタリー映画を見て初めて彼女が同性愛者でありそのことに苦しみ続けた人生であると知った。 映画『リプリー』には同性愛そのものの描写はそれほどないがかつての『太陽がいっぱい』に比較すればはっきりと表現されているし原作にはもう明確にリプリーがディッキーに恋して恋人マージを蔑んでいる様子が描かれている。 たぶんこの心理と状況は彼女自身が同性の…

  • 『パトリシア・ハイスミスに恋して』エバ・ビティヤ その2

    不思議なドキュメンタリーだった。 「私はミステリーを書いていない」と言う。 『見知らぬ乗客』『リプリー』(つまりは『太陽がいっぱい』)の原作者でありながらそんなわけはないだろう。 彼女を評して「欧米ではアガサ・クリスティに並ぶ人気作家」と銘打たれるというハイスミス。 クリスティは自分でもミステリー作家といっていただろうがハイスミスは自己認識ではそうじゃないのだ。 こうなるとまったく作品を知らない自分としてはなんともいえない。 ではなぜ私がハイスミスを題材にしたドキュメンタリーを観たのかと言えば映画『リプリー』が大好きだからだ。 年齢的には『太陽がいっぱい』が好きでリメイク映画はどうもね、と言っ…

  • 『パトリシア・ハイスミスに恋して』エバ・ビティヤ

    以前は映画・ドラマ記事を書き続けていた私ですがこの数年(たぶん横山光輝沼にはまってから)マンガひとすじになってしまい映像作品を見ると退屈で耐えられなくなってしまいました。 昨日まで「諸星大二郎作品」に没頭していたのですがアマゾンプライムで本作『パトリシア・ハイスミスに恋して』というドキュメンタリーを偶然見つけて昨今ない鑑賞欲求を覚えてしまいました。 「おもしろくなかったらやめればいいや」と捨て鉢気味に観始めたのですがこれが素晴らしい映像作品で予想しない感激でした。 ネタバレします。 パトリシア・ハイスミスと言う名前で観始めたのに関わらず私は彼女の作品をまったく読んではいません。 知っているのは…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』「火焔山の章」諸星大二郎 その4

    モーニング増刊「月刊モーニングtwe」2021年12月号~3月号、5月号~8月号 ネタバレします。 【第十二回 勇躍して双童師命を受け 機を見て公主戦場を走る】 悟空の前に再びサソリ女が現れ激しい戦いとなる。 共にいたアシャイバンダクは持っていた剣を蹴落とされ妖物の毒を浴びてしまう。 サソリ女の鋭い蹴りで悟空のマフラーが裂ける。 悟空が追いかけるとサソリ女は地上へと向かう。 「まずい。上にはあの二人が」と思った悟空は先ほどの蹴りで毒が回ったと見せかけるかのように呻いてうずくまる。 それを見た女はとどめを刺しにきた。 が、それは悟空のブラフであった。 女が近づいたところで悟空は金箍棒を振り回す。…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』「火焔山の章」諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 【第八回 悟空 児を捜して寧城に入り 牛王 威を顕して陋巷を震わす】 悟空は再び双子と一緒に行動することになる。 行先は寧戎城である。 双子は祆教寺院に悟空はバザールへ行って古着屋を捜そうとしていた。 が、暴動のためかバザールは荒れ果てていた。 こっそりと物を拾い集めていた女とこどもに古着屋の場所を訊く。 古着屋も荒らされたらしく主人はうんざりした様子で悟空の質問に答える。 子供たちは暴徒と一緒に西北のスラムの奥に立てこもっているらしい。 が、スラム街の人々は暴徒よりも略奪や暴行を繰り返す役人や兵隊たちを怖れていた。 さらに町の隅々に奇妙な化け物がおり悟空の頭痛を引き出す。 …

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』「火焔山の章」諸星大二郎 その2

    ネタバレします。 【第四回 城外に悟空 毬を追い 市場に公主 虎を見る】 約束通り悟空は玄奘と共に公主の邸に行く。中華風の屋敷であった。 公主の母君は玄奘に懐かしい隋の話をしてほしいと所望する。 その間、悟空は公主に付き合うことになる。 公主とその母親は宮廷の中でも特殊な存在だという。 公主の父親である先王はかつて隋に赴き当時の天子に拝謁した。その時天子から降嫁したのが母上である華容公主なのだという。 今は腹違いの兄が国王となった。 悟空は公主の話を聞いていてもピンとこない。 そんな悟空を公主は街へと連れ出す。 途中、警備の突厥兵たちがポロをしていた。 その中に先王の奥方のひとりである可賀敦さ…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』「火焔山の章」諸星大二郎 その1

    今になってここも『西域篇』だと気づきました。その中の「火焔山の章」だったのですね。 ネタバレします。 『第1回 聖僧 夜を徹して高昌を目指し 行者 山中に孤兒群を見る】 五世紀末から七世紀にかけて西域トルファン盆地に高昌国はあった。 漢族の麴氏が支配する天山南路のオアシス国家である。 その中心である高昌城の東方三十kmほどのところに白力城という城市があった。 悟空を除く玄奘一行がトルークシュに案内されてこの白力城に到着したのは日が暮れかけた頃だった。 疲れ果てた玄奘たちはここで悟空を待ちたいところだったがトルークシュは一休みしたらすぐに王城へ向かうというのである。 小さな姉弟たちは瓜を摘んだ馬…

  • 『逆旅奇談』ー西遊妖猿伝異聞ー 諸星大二郎

    前編は2011年12月21日「モーニング4・5合併号」(後編わからず) タイトルの読みは『げきりょきだん』であります。「げきりょ」とは宿屋のことらしいです。 ネタバレします。 こ・れ・は! さすが諸星大二郎と言う作品だった。 唐代の中国を舞台にして妖怪をモチーフにしたミステリーという幾重にも困難な設定をして楽しませてくれる。 本作の主人公たる書生くん李信のいで立ちは本来玄奘三蔵の天竺への旅装束として描かれるものとしてここに描写されたのではあるまいか。 冒頭で李信はいきなり妖怪に襲われ逃げ込んだ祠で雨宿りをしていた強面の武人と見える男性に助けられるところから物語が始まる。 雨の中、道連れとなって…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その10

    ネタバレします。 【第34回 一雄 往きて突厥に独り挑み 三騎 並びて胡兵を迎え撃つ】 イリーシュカは悟空に会うなり「なぜ私の邪魔をした」と咎める。トルークシュを殺す邪魔をしたからだ。 悟空は「キルク族が落ち着ける場所を作るよう西突厥に交渉をさせるためだ」と答えた。 イリーシュカは「うまくいかなければ次は邪魔するな」とくぎを刺す。 悟空もまたイリーシュカに「叔父を殺したな」と問いかけた。 「それがどうした」と答えるイリーシュカ。 悟空はイリクに「一度でも浮気をしたら・・・いや、したと思われただけで殺されるぞ」と案じたのだった。 さてついに本篇のクライマックスとなる。 悟空、イリク、イリーシュカ…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その9

    ネタバレします。 【第32回 胡娘 鋭舌にて心猿を責め 吐窟 甘言にて悟空を宥む】 至近距離で本当に外さないか試してやるという悟空とそれに応じようとするイリーシュカをイリクは止める。 イリーシュカは矢を収め「なぜ弟を連れて行った?」と問う。 カマルトゥプはイリーシュカの弟だったのだ。 悟空の話を聞き裏が読めてきた、として「おまえの命はイリクに預けといてやる」と落ち着いた。 だが、イリクが「キルク族が山から下りてきたと伝えにきたんだ」と言った途端イリーシュカは馬を駆って去る。 イリクと悟空もその後を追った。 キルク族は固有の遊牧地を持っていないため他の部族と衝突するのだ。 さて玄奘たちはトルーク…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その8

    ネタバレします。 【第27回 女怪 箱より出でて毒爪を振るい 悟空 薩宝邸を大いに鬧がす(承前)】 ヴァンダカ率いる射手の列はサソリ女に向かい一斉に矢を射るがサソリ女はまっすぐに突っ込んできた。 矢の方向に直線になることで被害を最小限にしたのだ。 無事に矢を避けた女は毒針で射手を次々とさしていく。 が、ヴァンダカは自らのケープを脱ぎ目の前に広げることによって防御し剣を抜いた。 手ごたえを感じたがサソリ女は姿をくらます。 悟空たちもまた厩に入ったはいいが外に出る方法でためらっていた。 悟空は長安でやった手を使うことにする。 屋敷に火をつけ厩の馬を解き放つ。悟空たちは各自馬に乗って屋上へ向かう。 …

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その7

    ネタバレします。 【第22回 孤影 ふたたび強箭を射 祆僧 夜陰に怪を視る】 アマルカを追ってひとり馬を駆る悟空は岩場に入り込みふたたび謎の射手に襲われる。 悟浄は祆教徒たちと行動を共にし夜になって火をつける時息を吹きかけて咎められる。 マルボーロ達の馬車が到着しないことを懸念している。 祆教徒たちは突然巨大なサソリに襲われる。 それは女性の顔をした不気味なサソリだった。 悟浄が焚火を投げたことでそれは逃げていくが祆教徒たちはここでも聖なる火を投げたことを怒る。 誘拐されたアムを捜してハルとワユがやってくる。 そこで悟空と出会いハルは悟空を脅してアムを捜させようとする。 悟空は見破りながらもそ…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その6

    毒敵山の章 ネタバレします。 【第19回 八戒 酒を欲して浄財を偸み 胡婦 企みを懐きて妹を訪ぬ】 玄奘一行はようやく伊吾国の中心伊吾城へ入ることができた。 ここには仏寺がいくつかありそのひとつに宿泊することになった。 八戒はもともと欲深いので今でもまだおかしくなったことに気づかれないでいるがそれでもあまりにも度が過ぎている。 世話になっている寺の老僧に酒をせびり、足りずにお布施を持ち出してしまう。 悟浄から「それならバザールでしょう」という情報を得て悟空はともにバザールへ行く。 やはりバザールでお布施の布地を売りさばこうとしていた八戒だったが途中で馬車に乗ったメーウザーイと出会ってしまう。 …

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その5

    ネタバレします。 【第16回 童女 城に入りて祆僧を誑かし 悟空 怪を追って胡宅を鬧がす】 砂漠の描写が続いた後に湿気を感じさせる夜の描写が多い粟特城回は諸星大二郎の特色が色濃く表れている。 粟特城門内に入ったアマルカはナササラルの者たちに見つかり呪文を唱えられるが老婆の妖怪に変化してその呪文さえ封じ込めてしまう。 ガ、アシャイバンダクの登場にアマルカも消える。 悟空はバクラクッチ家の裏門を叩く。 トプチンは盗んだ妖怪羊の首が入った袋を持ってうろうろするばかり。 そんな時バクラクッチの妻メーウザーイは裏庭にこっそりと悟浄を呼び出した。 その様子をトプチンが見てしまうのだが背後には昼間眠っていた…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その4

    ネタバレします。 【第13回 胡兵 馬を連ねて悟空を襲い 単騎 虚を突きて強箭を射る】 悟空はカマルトゥプを後に乗せて馬を急がせた。 だが前方から騎馬集団が攻撃してきた。 応戦する悟空を取り囲む騎馬隊。 それを止める男が現れる。 それでも騎馬隊の攻撃は止まなかったが今度はどこからか矢が飛んできて騎馬隊のひとりのこめかみを直撃した。 さらにもうひとりも。 見るとはるか遠くに弓を持つ人影がある。慌てて逃げ出す騎馬隊になおも矢が射かけられる。 悟空が「おかげでやつらを振り切れそうだ」と思った瞬間自分自身にも矢が当たりそうになり思わず落馬する。 馬はカマルトゥプを乗せたまま走り去る。 追いついた悟空は…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 【第9回 流沙河を去りて 伊吾に至り 胡宅に宿を借りて 復た妖を見る】 『西遊記』にのっとって悟空・悟能・悟浄をつれた玄奘三蔵。 しかし本作では悟空は弟子のつもりはない。 そして西域を知っている悟浄によって案内されながら旅をする。 悟能=八戒は悟浄におまえの元の名は何なのだと問いかけそれに悟浄は「忘れました」と答える。 しかし八戒は「お袋から呼ばれていた懐かしい名前は思い出した、と言ってたじゃないか」としつこく訊く。やむなく悟浄は「小鳩ちゃん」だと答えそれを聞いた玄奘と悟空は笑うまいとしても笑いがこみあげてくるのであった。 やがて砂漠は草原と変わる。伊吾が近いのだ。 幼い羊飼…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その2

    ネタバレします。 【第6回 流沙を脱して二僧 死を逃れ 死者を倒して行者 水を得る】 窮地に悟空が現れ玄奘は喜びその名を呼ぶ。 悟空と仮面の男の戦いが始まる。 が、仮面の男は流沙の上を歩くことに慣れており悟空はどうしてもうまく動けない。 それでも悟空は金箍棒の鋭い突きで男を脅かす。 男は笑いながら去っていく。 八戒は流沙に呑まれそうになってもどうしても見つけた金貨の壺を手放そうとしない。 呆れながらも悟空は八戒を助け出す。 しかし改めて見てみると金貨と思ったものはすべて古い銅貨にすぎなかったのだ。 悟空たちはさっさと立ち去ろうと考える。 馬と荷物は見つかったが水袋の水が抜き取られていてそのまま…

  • 『西遊妖猿伝 西域篇』諸星大二郎 その1

    西域篇 入ります。 こちらはまったくの初読みです。 ネタバレします。 【第1回 校尉 意気に感じて客を通し 悟空 唐僧を追って烽を破る】 玄奘と悟空たちはそれぞれ別々に進み、大唐国の国境玉門関を遠くに望み瓠蘆河に木を倒して渡り禁忌である密出国を犯しなおも進んだ。 かつて西域貿易が華やかなりしころは大勢の商人や駱駝のキャラバンが行き来したこの区域も今は国境を守る守備兵が五つの烽火台に駐屯するばかり。 さらにその先には莫賀延磧という大砂漠が広がる。 この五烽が唐の目の届く一番外れなのだった。 その五烽の一番手前には王祥という校尉が烽官として詰めていた。 辺鄙なところにいるせいかもともとそういう素地…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その26 完結

    ネタバレします。 【第96回 玄奘 玉門を望みて河を渡り 通臂 革袋に入りて讐を報う】 玄奘、石槃陀、八戒の一行は玉門関を遠くに望みながら気取られぬように瓠蘆河に切った木を渡しゆっくりと馬を引いて渡った。 ついに玄奘は密出国を犯したのである。 羅刹女は退屈していた。 阮馮河だけでは満足できなかったのだ。 そこに通りかかったのは恵岸行者であった。 恵岸は物思いにふけっていた。 玄奘そして悟空が気にかかってはいたものの国境まで追いかけるとは思ってもいなかったのだ。 ふと落ちている革袋が奇妙に膨れているのが気になり錫杖を突き刺した。 空気がはいっているだけだ、と恵岸は自分を安心させる。 そして未練が…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その25

    ネタバレします。 【第92回 通臂 甕を転がして行者を悩まし 妖虫 錦を食いて腹中に入る】 あれほど執拗に悟空を追い詰めていた黄袍があっけなく死んでいた。 加害者である石方相もまた黄袍の毒矢によって苦しみながらも百花羞を捜している。 ちゃっかり漁夫の利(かどうかはわからないが)を得た通臂公は金蚕蠱に丘が残した錦を与える。 どうやら金蚕蠱は錦を食するらしい。 そして今金錦蠱は一回目の脱皮をしようとしていた。 しかしその時通臂公は恵岸行者が近づくのを感じる。 金蚕蠱は一度目の脱皮後人の腹中にはいるという。 通臂公は恵岸の腹に金蚕蠱をつけてやれないかと考える。 通臂公は恵岸行者に近づき甕に入って襲い…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その24

    ネタバレします。 【第90回 孫行者 岩窟院を脱れ 丘秀才 金蚕蠱を調う】 岩窟院堂守が百花羞を襲い石方相がこれを追い払う。 小柄な堂守はするりと岩窟の穴に入り込んだが大男の石方相はその穴から入るのはできず馬鹿力で穴を壊し始めた。 中では一升金を抱えた黄袍が悟空と玄奘を追い詰めている。 そして入り込んできた堂守にまたも楽慧の亡霊が「法楽さまは」ととりついた。しかも「参詣人を殺していたのはおまえだろう。おまえが法楽さまを」 石方相は岩窟をこじ開けてしまうがその反動で自分自身が上から落ちてしまう。 一升金が抜け出したその瞬間黄袍は弓矢を発する紐を引く。 悟空は玄奘とともに外へ飛んだがそこは流沙だっ…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その23

    巫蠱の章 ネタバレします。 【第86回 瓜州に至りて強風 更に吹き 玉門を前に法師 心乱る】 瓜州に向かう玄奘と悟空は強風に吹かれる。 通臂公は駱駝の壺に入って移動してきた。 巫蠱使いの男と出会い旅を共にする。 瓜州の寺で玄奘は高僧に「どうしても西域へ行きたい」と願い出る。 禁忌である出国については何もわからないと困惑する僧たちだが玄奘のために一案を呈した。 寺の裏に住む毛さんは去年まで玉門関の守備をしていたから何か知っているかもしれないと教えられる。 玄奘と悟空はすぐに毛さんを訪ねて西域への道を訊いた。 国境の関門が玉門関となる。 その先の砂漠には百里おきに烽台が五つあるという。その先は莫賀…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その22

    ネタバレします。 【第83回 両雄 空材に戦い 孤僧 巫蠱を破る】 火井鎮では婆の占いが当たった。禍がやってきたと騒ぎになる。 昼間から大トカゲが徘徊し人々は逃げ惑った。 一升金はその様子を見て析易居士は三流だと罵る。 八戒はうっかり寝込んでしまい目覚めると一升金がいないので鎮火石と刻まれた大岩の下を掘り返した。 悟空はぐったりと寝込んでいる玄奘を連れとりあえず火井鎮に行こうとして羅刹女の手下どもに襲われ逆に叩きのめす。 玄奘を馬に乗せ火井鎮へ向かう。 が、村は静まり返り婆巫師の弟子が殺されていた。 さらにいつかの仮面の男がのし歩いている。 そして玄奘の顔をした蜥蜴が「私は死ぬよ。天竺へは行け…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その21

    火井鎮の章 ネタバレします。 【第78回 陰風 凄々として砂漠を吹き 聖僧 促々として荒野を過ぐ】 こうしてシン・羅刹女は悟空そして玄奘と出会う。 羅刹女は悟空が気に入ったらしく突如襲いかかりそして去っていく。 西域を目指し八戒は駱駝に乗って旅を続ける。早く帰りたいのだが。 これまで人に敗ける気がしなかった恵岸行者が黄袍の飛抓に襲われ傷を負う。 (まあこの後の布石だからなんだけど) 八戒の一行に一升金が合流。 一升金「玄奘がいる」と聞いて覗き込むと八戒だったのでがっかりする。 紅孩児は羅刹女と行動を共にする。 恵岸を助けたのは百花羞だった。 石方相はここでも愚痴を言っている。 玄奘、悟空は岩の…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その20

    【第74回 真の聖僧 水滸に宿を借り 仮の玄奘 甘州に言をもて弄す】 冒頭、玄奘と悟空が言い争いをする。 珍しいなと思っていたらこれは布石であった。だろうて。 しかしこの後さらに珍しいとは言えないほどの怖ろしい事件が起こる。 一見普通の農民に思えた通りすがりの男女からいきなり襲われてしまうのだ。 突然小刀で斬りつけてきた男を悟空は叩きのめす。 が恐ろしいのはその直後鎌を振り上げた女の姿だった。 悟空は迷うことなく女を叩き殺す。 玄奘は「なにも殺さずとも」と小言をいう。 これに悟空も言い返した。 やむなくふたりが歩を進めようとすると前方に女児が牛に乗っているのに出会う。 女児は悟空が人を殺したの…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その19

    ネタバレします。 【第71回 百年の仙根 まさに絶えんとし 連理の霊樹 永に生きんとす】 旅を続ける玄奘・悟空一行は砂漠を行くとたちまち砂嵐に包まれてしまう。 その行く手にも扶桑夫人の胞子が化けた植物が生えていたがすでにすっかり枯れ切っていた。 悟空は八戒が今も人参果を持っていると指摘する。 持っていないと言い張る八戒を悟空は脅して白状させた。 玄奘は八戒を叱って去ろうとするが悟空は「これは行きながら草にされた赤ん坊だ」と玄奘を引き留める。 木の根元に埋めるから念仏を唱えてくれと伝える。 悟空は気配を感じていた。 そして人参果を埋めながら「おまえたち、少しでも怨念のようなものがあるのならおれの…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その18

    ネタバレします。 【第67回 方相 市を鬧がして蛮力を誇り 李靖 花を摘まんと鸚鵡を贈る】 狼頭堡で玄奘を捜しまわる悟空は百花羞を見かけその家を訪ねる。 そこに悟能がおりさらに百花羞目当てに来た李靖とお嬢様を守ろうとする石方相が入り乱れて大騒ぎとなる。 【第68回 同君 畫より出でて車輪を飛ばし 両雄 大いに狼頭堡を鬧ず】 李靖将軍、弼馬温=悟空に腹立ちが収まらないが突厥が竜牙堡のすぐ近くまで来ているとの報せを受け出兵することになる。 待機する部下に弼馬温捜索を命じた。 道整は忙しい車屋の女将に子守を頼まれおんぶすることになってしまう。 そんな道整に声をかけたのが悟空だった。 悟空はついに玄奘…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その17

    ネタバレします。 【第64回 五荘観に唐僧 人参を届け 霊芝谷に悟空 嬰児を拾う】 狼に襲われた玄奘を救った道教の師らは玄奘を五荘観という道観に連れて行く。 与世同君という人物の棲み処だという。 道教の師らは玄奘に届けていただきたいものがある、と言って籠にはいった包みを渡した。玄奘は馬を引きひとりでその道観に向かう。 「主人が留守だから」と一旦断られてしまった玄奘だが「凌虚子殿から包みを預かっているのですが」と言うとその門は開けられた。 主人の代わりのその人物は第一弟子の陰砒生と名乗った。 中に入り事情を説明した玄奘の目の前で包みが明けられるとそこから赤ん坊のようなものが転がり出た。 「人参果…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その16

    ネタバレします。 【第60回 黄風の中 大王刀を振るい 砂塵の内 悟空 谷を走る】 これまでと違う悟空。 明確に自分がどうするべきかを考えながら戦い始める。 旅芸人たちは逃げ出す。 玄奘もその中にいる。 しかし黄風大王は旅芸人たちを見逃したわけではなく殺す手段を取っていた。 それに気づいた二娘たちは一行を止める。 大王の手下たちに追われ散り散りに逃げる。 玄奘の行く先には紅孩児がいた。 しかしここでも現れる恵岸行者。 そして悟空の乗る馬が阻まれ悟空は振り落とされる。 【第61回 唐僧を護りて行者 鬼を放ち 大聖を念じて悟空 棒を振るう】 落馬した悟空だが信念は揺るがない。 その時、紅孩児と争っ…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その15

    ネタバレします。 【第59回 驕りて城門にいのちを落とし 黄風 死児を冥婚させんとす】 李都督は野盗ふぜいが涼州を襲ったことに苛立つ。 黄袍は負傷していたが牢から救い出された小旋風が門を出る寸前、手下どもの目が離れた隙を狙い殺してしまう。 大王の息子の死に驚く手下どもに聞こえるよう「小旋風を殺したのは弼馬温だ」と言い放った。 傷を負わせられた黄袍の小さな復讐だった。 大王の息子小旋風が殺されたとなっては大王に会うことも出来ないと右旋風は馬を駆り涼州へと向かった。 ところがそこに突如として李勣が現れ右旋風は倒されてしまう。 右旋風の口から「弼馬温」という言葉を李勣は聞いた。 天竺楼の遊女たちは黄…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その14

    ネタバレします。 【第57回 通臂 術を弄して玉女を招き 細作 薬を売りて悟空を誘う】 恵岸行者そして黄袍が暗躍する中で悟空は旅芸人一行から抜け出した。 恵岸行者は通臂公の行き先を見つけ通臂公はそこで玉女降臨の術を披露する。 そして李都督は玉女を招こうとしていた李軌の亡霊を見る。 が、恵岸が観音経を唱えたために玉女は壺に収められてしまい李軌の亡霊も去っていく。 翌朝李都督は「あの鼎をどこかに放り出してこい」と命じる。 悟空が割ったはずの鼎は何故か元通りになっており巨大な鼎をどうするか下男たちは骨董屋に売って小遣いにしようとする。 玄奘は法師に促され出立を決意する。 が、悟能の姿が見えずやむなく…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その13

    ネタバレします。 【第54回 黄風大王 疊ねて道を遮り 河西回廊 なお路険し】 通臂公は悟能におぶさり玄奘と旅を続ける。 通臂公は黄風大王の一味を見つけ危険を知らせるが玄奘の天竺行きの決意は揺るがない。 悟空、二娘を加えた旅芸人一行も悟空の護衛で進み続けた。 黄砂が晴れ烏鞘嶺を越えると道はいよいよ祁連山脈とゴビ(砂漠)(ゴビって砂漠って意味なんだよね)に挟まれた細長い地帯に入る。これが涼州から甘州、粛州を通って西域に通じる河西回廊である。 (この地図はウェブ上で拾ったもの。本作に収録されてはおらず) 河西回廊と聞いただけでわくわくするのは何故。 沙州(敦煌)わくわく。 そしてその先は西域となる…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その12

    いっかーん。褚悟能の画像になってしまったよお。おんおん。 ネタバレします。 【第50回 蘭州城に八戒 三蔵を欺き 観音院に老僧 痴態を尽くす】 八戒こと褚悟能はいまだ追われる身。蘭州に入りたくとも入れない。どうした者かと思案しているところへ玄奘がやってきたのを見てうまく丸め込んでしまおうと考える。 玄奘に話しかけると真面目な彼は同じ志を持つ人だと勘違いして同行する。 頓珍漢なやり取りが続く。 が、悟能は玄奘にくっついてなんとか役人を騙して蘭州の門を通ってしまう。 玄奘が離れた隙に胸から紫金鈴を取り出し振ってみる。 が、音もしない不良品だとすぐにしまった。 しかし紫金鈴の効果は絶大だった。少し振…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その11

    観音院の章 ネタバレします。 【第47回 衆を欺いて八戒 閨房に忍び 盗を追って悟空 三蔵に遇う】 盤糸嶺では黄袍が枯れた樹木に突き刺しになり顔を烏に啄まれていた九頭駙馬を見届けていた。 また黄袍は笠を深くかぶった行者を見る。 不意にその笠を奪ったが見知らぬ男であった。 二娘は乾草を積んだ車をロバに引かせていた。 乾草の中には悟空が眠っている。 道中で検問をしている男たちがいた。男たちが乾草に槍を突き刺し調べようとするとどこからか蜜蜂が飛んできて男たちを襲った。 二娘は大急ぎで逃げ出し、蜜娘にお礼をつぶやく。 蜜娘はもう悟空のことは諦めていた。 蜻娘と共に去っていく。 一方、蠦娘に置き去りにさ…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その10

    ネタバレします。 【第43回 盤糸洞に怪虫 群れ集い 千花洞に悟空 難に遭う】 蜢娘が矢に倒れ洞の中では年長の螞娘が一番幼い蜻娘を守ろうとしていた。 蜢娘の周囲には彼女の虫であるウシバエがたかっていた。 百眼道人に従う農民たちは次々と洞の中に入ろうとする。 その頃悟空は突厥と戦っていた。その悟空を守るように蝗が動き悟空は突厥を倒していく。 いつしか悟空は蝗婆婆がいる千花洞に入っていた。 蝗婆婆は毘藍婆菩薩を悟空に見せた。 その後に通臂公も現れた。 蝗婆婆は語りだす。 この世の中はいつも同じで権力者は互いに殺し合い弱い者から搾り取る。 そんな世の中に嫌気がさした私は仙道を修めようと決心した。そし…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その9

    ネタバレします。 【飛蝗ふたたび興りて 山沢に群れ 道人ひとたび説いて 村民を動かす】 究極のイナゴ「平天蝗」は飛び出した後、悟空の胸に留まる。 そこへ蜜娘が悟空を夜這いに来たのであった。 悟空の胸に留まったイナゴを追い払いキスしようとしているところを蜡娘によって二郎と間違われ逆にキスされてしまう。 さらに別の娘たちも悟空の部屋に入り込んできて大騒ぎとなる。 これを蝗婆婆が怒って静めてしまう。 この間に平天蝗は外へと出てしまった。 悟空は騒ぎを逃れ年長の螞娘の部屋に入っていた。 彼女が戻ってくると悟空は「なぜ蝗婆婆が恐ろしい飛蝗を作る事に熱中しているかを問う。 しかしそれは螞娘の知らぬことであ…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その8

    盤糸嶺の章 ネタバレします。 【第37回 皇帝と称すといえども 身に仁なく 民を救わんとせば 義守り難し】 明けて貞観元年、この年の冬突厥の地には大雪が降りたくさんの家畜が死ぬ。 人々は飢え長城を越えて村々を襲った。 冬が過ぎても中国全土を干ばつが襲い多くの人々が飢えたのであった。 さてその中国全土でいまだ唐に平定されていない者がひとり残っておりそれが夏州の梁師都であった。 とはいえその梁師都も突厥の支援を受けてかろうじて持ちこたえている状態だったのだ。 李世民はこの梁師都を一日も早く降すようにと望んでいた。 ところがここに悟空は関わってくるのである。 どうやら何かの恩を受けて悟空はしばらく梁…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その7

    【第30回 厩に逃れて弼馬に見え 観を尋ねて 異人に遇う】 玄奘は天竺行きたさに宮城を勝手に歩き回り皇帝に会いたいと願うのだがこれはあまりにも無謀であった。 どういうことか、紅孩児と地湧夫人が悪だくみをしている場面に遭遇し話を聞いてしまう。 物音をたててしまった玄奘は逃げ出すが紅孩児は「殺せ」と叫ぶ。 玄奘が逃げ込んだのは悟空が捕らえられている厩であった。 思わず経を唱えるとその声は幻影に苦しむ悟空を再び救うことになる。 紅孩児と地湧夫人が追ってきた。 悟空が玄奘を匿う。 地湧夫人が悟空に気づき近寄ってくる。 が、紅孩児が「馬丁だ」と呼びかけふたりは逃げていく。 悟空は玄奘に声をかけ「城外の落…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その6

    ネタバレします。 【第27回 六健将 深更に井を潜り 三太子 地底に剣を振るう】 悟空はじめ紅孩児とその仲間はいよいよ宮城へと入り込む。 井戸を降り横穴を通り地下道を抜けて森羅殿へと到着する。 龍と思っていたのは鰐だと気づく。 悟空はこの中に入るとどうしても頭が痛くなる。 そんな彼らに近づいてきたのは三太子の哪吒だった。皆はおかしな子供だと思ったが悟空は怖れる。 如意真仙は宝に目がくらむ。 悟空はそこにある立像にも恐れをなして暴れた。 哪吒は巨霊神を呼び悟空を襲わせた。 が、ここに六耳が現れ悟空を守る。 その隙に雲裏霧は悟空の手を引き逃げ出す。 紅孩児は先を急いだ。 その後に続いたのは生き延び…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その5

    ネタバレします。 【第23回 李元吉 牢城に首を検め 李世勣 悟空を押送す】 李世勣によって捕らえられた悟空は李元吉に詰問を受けるが答えず、厳重に押送車に乗せられ長安へ向かうことになる。 李世勣は一足早く長安へ急ぎ悟空の護送はその後に続いた。 これを襲ったのが紅孩児であった。 さらに猿たちが金箍棒を取り返してくれた。 長安に到着した玄奘は大覚寺へと進む。 【第24回 落胎観に六健 聚義し 大覚寺に三蔵 聴講す】 悟空は紅孩児ら劉黒闥の残党に助けられ長安の郊外に潜んだ。 そこは紅孩児の叔父如意真仙の道観だった。 悟空は紅孩児の仲間、雲裏霧に連れられ長安の町中を歩く。 そして悟空は皇帝に献上される…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その4

    ネタバレします。 【第16回 竜女 環を投げて少年を援け 悟空 賊を殺して学僧を救う】 竜児女はもう斉天玄女の力をすっかり失っていた。 銀角に追い込まれ逃げる術もない。 ついに投げ網によって捕獲されてしまう。 平頂山では唐軍と山賊の戦いが始まっている。 金角大王が立ちはだかっていた。 銀角によって手籠めにされそうになった竜児女だが唐軍の襲撃で危うくも助かる。竜児女は捕らわれながらも悟空を救おうとしていた。 悟空の目の前に竜児女の銀箍棒が現れ悟空はそれを武器として山賊相手に戦う。 そして捕らわれていた玄奘を救った。 【第17回 竜児女 心迷いて魔を忘れ 孫大聖 新珍鉄を得る】 力を失ったとはいえ…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 【第11回 仙境に処女 天意を図り 村裏に凶徒 良民を虐ぐ】 この部分も微妙に描きかえられている。 通臂公によって竜児女がどんな修行をしてきたかが語られる。 竜児女は悟空が力を持った時に得られる金箍棒を見せる。それは岩から生えているようで今の悟空の力では抜くことができない。 竜児女が持つのは銀箍棒でありそれも彼女が力を持った時に得られたのだ。 しかし悟空は斉天大聖などただの妖怪であり人々や野人までも見境なく食ってしまったと疑問を持っていた。 反抗する悟空の前に岩壁の斉天大聖が「悟空」と呼ばわった。 悟空は脅威を感じる。 白雲洞の中には外国のものらしい読めない文字も書かれていた…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その2

    【第6回 処刑場に鬼哭啾啾 黄河上に悟空大いに怒る】 断頭坡で野ざらしになっていた白骨たちは恨みの声を上げた。 「大聖、おれたちの怨みを晴らしてくれ」 しかし悟空には自分がなにものかすらよくわからなくなっていたのだ。 そこに通りかかったのが旅の僧、玄奘だった。荊州から来て長安へ帰るところであった。 玄奘は白骨たちにお経を唱えさらに檻の中で横たわっている悟空が心を取り戻せるよう祈ったのだった。 すると今までどうしても思い出せなかった悟空が自分の名前を思い出したのだ。 悟空は別の道へ進んでいく玄奘を見送った。 やがて一行は黄河をさかのぼる船に乗り込んだ。 すでに別の一行がいたが彼らは劉黒闥の一味、…

  • 『西遊妖猿伝 大唐篇』諸星大二郎 その1

    いつも単行本の横に発表および発行年月日などを記しているのですがこの作品に関してはかなり複雑で修正加筆さらに中断そして掲載誌も様々に移り変わるなど煩雑すぎるので省略することにします。 本作は双葉社『月刊スーパーアクション」にて1983年から始まった作品であります。 私は画像右上の双葉社発行の第一巻1984年第2刷から数冊持っているのですがこれが中断されているうえに「大唐篇」として大幅な加筆修正が成されているとされていて頭を抱えました。これでは今不足している巻を買い足しても意味がない・・・。 しょうがないのでもうやむなく『大唐篇』デジタル版を購入し手持ちの双葉社版と読み比べながら進めることにします…

  • 『妖怪ハンター 稗田の生徒たち』諸星大二郎

    2014年2月「ヤングジャンプ・コミックスウルトラ」 「美加と境界の神」が読みたく文庫本を購入しました。 が、文庫本は目がつらい。 やむなくデジタル版も購入。ううう。 ネタバレします。 「美加と境界の神」2009年8月号「ウルトラジャンプ」 天木兄妹の美加が登場。 携帯に四方口村にある不思議な大きな藁人形の画像を入れそれを探している。 同じく四方口村で亡くなった姉の謎を解き明かしにきた木戸健人と出会い道連れとなる。 この作品で驚きだったのは「両墓制」だった。 遺体を実際に埋める「埋め墓」「捨て墓」と呼ばれるものと別にお参りするために作られた墓がある、というのだ。 この場合埋め墓捨て墓のほうは土…

  • 『闇の鶯』「それは時には少女となりて」「書き損じのある妖怪絵巻」 諸星大二郎

    2009年4月「KCデラックス」 wiki記載で記事を進行しようとしてやや困惑する事態が発生しました。「妖怪ハンターシリーズ」の中にこの単行本が記載されていなかったのです。 が、「妖怪ハンター」リンク先のエピソード一覧の下に単行本の記載がありそこにはちゃんと記されていました。 ううむ。全部目を通さなかったために起きた困惑でした。いかんいかん。 (個人的事件でなんのことかよくわからない説明となりました) ネタバレします。 「それは時には少女となりて」2004年9月号「アフタヌーン」 大島&渚シリーズ。 大島君が海から来た裸の少女に魅入られてしまう。 海岸にある防塁の向こう側に見知らぬ少女が顔だけ…

  • 『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 三章「苧環の男」2004年9月号「メフィスト」 「魔障ヶ岳」で”モノ”を見た四人のひとり岩淵翔子の場合は「神上嵩」であった。 苧環伝説そしてさらに箸墓伝説を重ねるように翔子は神上と自分の関係をそられに模してしまう。 神はその正体を知られた時に姿を消し、女は自殺してしまう、稗田礼二郎はそれを危惧して翔子の後を追う。 果たして神上嵩は消えてしまった。 翔子はそんなはずはない。彼の赤ちゃんがいるのだからと腹部を抑え、そして去っていく。 四章「名を付けなかった男」2005年1月号「メフィスト」 そして「魔障ヶ岳」の”モノ”に名を付けなかったのが稗田礼二郎である。 他の三人はそれぞれ”…

  • 『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その2

    なぜかwiki記載の章と本記載の章が異なるので詳細な年月日は省略します。 本にする前加筆されているのでそのせいでしょうか。 ネタバレします。 一章「魔に遭った男」 奈良県三輪山で遺跡発掘が行われていた。 主導者の赤井高信助教授は遺跡が三世紀は下るまいと判断していた。 記者はドンピシャで発掘場所を当てた赤井に「新たなる神の手と呼ばれているそうですが」と話しかける。 ここに出てきた「神の手」(発掘における)は記憶している人もいるだろう。 2000年に起きた「旧石器捏造事件」だ。 本作の赤井助教授はそんな事件を思いわせるほどの発見を次々に実現していた、と描かれている。 しかし発掘を手伝う人々からは「…

  • 『稗田のモノ語り 魔障ヶ岳』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その1

    2005年11月「KCデラックス」 1974年から始まったこのシリーズが30年の時を経て描かれます。 他の作者作品の多くが最初は緻密でアクティブなのに段々と投げやりになっていく感がありますが本シリーズはクオリティが落ちないどころかより複雑に活動的になっていくようです。 ネタバレします。 序章「魔障ヶ岳」2003年5月号「メフィスト」 稗田礼二郎は美しい和服女性と話をする。 年かさの上品な佇まいだ。 その女性が言う「この子に良い名前をつけてあげたい」と。 その女性は前作『六福神』「淵の女」で登場している。 本作では稗田が赤井と共に御霊山山系の入り口姥ヶ峠で見かけたとなっている。 (どういうことな…

  • 『六福神』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎

    1998年12月「ヤングジャンプ・コミックスウルトラ」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより ネタバレします。 「産女の来る夜」1994年8月号「月刊ベアーズクラブ」 産女ー難産で死んだ女の霊が化けた妖怪。なんという悲しい話だろうか。 妖怪自体が怖いのではなく女性の妊娠と出産に対する家父長制が恐怖なのだ。家の繁栄のために女性の性と生が犠牲になるシステムを嫌悪するのは当然だろう。 こんな場所に住んではいけない。 そう思わせるほど悲しい産女を諸星氏は描いている。 「海より来るもの」1994年2月号。 大島&渚コンビの物語の舞台はやはり海辺の町、粟木。 こんなに「ドザエモン」が大量に出てくるマンガがあ…

  • 『黄泉からの声』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その2

    ネタバレします。 「黄泉からの声」 第一章 井戸のまわりで 1993年8月号、10月号「月刊ベアーズクラブ」 これもまた複雑で奇妙な筋立てである。 稗田の学生時代からの友人・青山が登場する。 一か月前に九歳になる娘・珠美が行方不明となり探し続けているゆえか心身ともに疲れ果てている様子だ。 妻は夫がノイローゼになっていると稗田に伝えていた。 娘は井戸のある空き家で遊んでいる時にいなくなったという。 青山はボロボロの空き家を買い取り井戸をさらい娘を探し続けているのだ。 稗田が青山を訪ね話し合っている時、ひとりの若い女が土手に座り「ずいすいずっころばし」を口ずさむ。青山が聞きとがめると女は「この家も…

  • 『黄泉からの声』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その1

    1994年7月「ヤングジャンプ・コミックス」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより ネタバレします。 「うつぼ舟の女」1991年冬の号、1992年春の号、1992年夏の号、1992年秋の号「ヤンジャンベアーズ」(全4回連載) タイトルにある「うつぼ舟」という伝説にまつわる物語。 他の創作者は「うつろ」という表記を多くとっているようだが「うつぼ」になったのは諸星氏の感覚なのか柳田國男氏がそちらを表記しているからか。 中に若い女が入っていた、というもので興味をそそられる話である。 異国の女性かあるいはその船がUFOでつまりは宇宙人だったなどの説があるが諸星作品ではやはり異世界とのつながりが感じられる…

  • 『天孫降臨』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 『天孫降臨』 第二章 樹海にて 1990年12月号「月刊ベアーズクラブ」 ”光の木”真理教団の信者全員が教祖もろとも行方不明となる。 富士の裾野の青木ヶ原に入り集団自殺を行っているのではないかと報道される。 ここを訪れたのが天木薫と橘であった。 稗田もまたひとりで向かったがその前に美加に電話したところ呼び出し音の中に 「来ないで・・・せめて三本目の矢に気を付けて」という声が混じって聞こえた。 その矢とは稗田が枯野村で見つけた古い鏃で作ったもので橘が持ってきた天の鹿児弓につがえて薫が射るのである。 稗田は駆け付け三本目の矢にカバンを投げつけ惨事を防ぐ。 その間に”光の木”真理教…

  • 『天孫降臨』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎 その2

    稗田礼二郎フィールド・ノートより 下の画像があんまり怖いので一枚上に乗せました。 まあこちらも怖いですが。 ネタバレします。 コワスギル 「川上より来りて」1988年7月号「月刊ベアーズクラブ」 「生命の木」シリーズと呼ぶべきだろうか。 「花咲爺論序説」と「幻の木」が融合していく。 天木薫・美加兄妹が諸星先生のお気に入りになったのか、最初からこのシリーズを描くはずだったのか。 航空機事故で死んでしまうはずからの転生をして妹の美加はいわば超能力を身に着けてしまう。 本作で稗田礼二郎は「幻の木」のその後を追っている。 そして美加は「光る木」を夢見てどうしてもそれを見つけねばならないと兄の薫に訴えた…

  • 『天孫降臨』〈妖怪ハンター〉諸星大二郎

    1993年2月「ヤングジャンプ・コミックス」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより ネタバレします。 『闇の客人(まろうど)」1990年1月号「YJベアーズクラブ阿蘇 本作最高に爆笑、と言いたいけれどかなり人が死んでてその表現はサイコパスだが面白すぎるのだ。 某県大鳥町。大小五十ほどの集落からなる過疎地域である。 そんな場所を活性化しようという「町おこし」が流行った時期があるが大鳥町もその一つであった。 そしてその「町おこし」のために「百年近く前に断絶した古い祭りを復活させること」が行われる。 我らが稗田礼二郎はそんな「古い祭り」について相談を受けたらしい。彼は以前文献などから「大鳥村の神迎え神…

  • 『海竜祭の夜』〈妖怪ハンター〉 諸星大二郎

    1988年7月「ジャンプスーパーエース」 稗田礼二郎のフィールド・ノートより(あるいは妖怪ハンターと呼ばれた男の手記) うん、かっこいい 諸星氏は『妖怪ハンター』というタイトルが嫌いだったようで本当はこのタイトルにしたかったのでしょうか。私はどちらも好きですが。 ネタバレします。 「海竜祭の夜」1982年9号「週刊ヤングジャンプ」 萩尾望都が怖くてたまらなかったという作品である。 だからというわけではないが本作もやはり名作だと思う。 まあだからこそ単行本のタイトルに選ばれているのだけど。 諸星氏は礼二郎をハンターではなく傍観者として位置づけしている。 そのために「妖怪ハンター」というタイトルを…

  • 『妖怪ハンター』諸星大二郎 その2

    第四話「闇の中の仮面の顔」1978年「書き下ろし」この作品の中に「ルングワンダルング」という言葉が出てきて「?」となったのですが検索して「リングワンダリング」だと判る。 単なる印刷ミスなのか、作者の間違いだったのか、別の本では訂正されているのか、それともそういう言い方もあるのかわからないが、視界が限られた場所でぐるぐる回ってしまう現象のことである。 本作では狩猟中濃霧に迷った男が同じ場所をぐるぐる巡ってしまったという現象が描かれる。 有名な話では『八甲田山』で吹雪の中軍隊が同じ場所をぐるぐると回り続けてしまうものがある。 私は「リングワンダリング」という言葉そのものを知らなかったので(見落とし…

  • 『妖怪ハンター』諸星大二郎 その1

    1978年7月「ジャンプスーパーコミックス集英社」 すみません。どうしても先にこのシリーズを読みたくなり先日書いたwikiの順番を無視して急遽稗田礼二郎シリーズに突入します。 『夢みる機械』も半ばだったのに心変わり失礼します。 ネタバレします。 第1話「黒い探求者」「週刊少年ジャンプ」1974年37号 稗田礼二郎初登場。九州F県(というのは福岡県しか考えられないが)比留子古墳に赴く。「比留子古墳」というのは創作だろうが『暗黒神話』にも福岡県某所にあるとして登場する。 郷土史家の父を持つ矢部まさお少年は稗田礼二郎に手紙を送ったらしい。 それに答えて稗田はF県を訪れたのだ。 まさおの父親は一か月前…

  • 『夢みる機械』諸星大二郎

    1978年 サンコミックス朝日ソノラマ なぜか手持ちの単行本には何刷りかすら記載されておらず。&表紙カバーは外れて存在せず。 ネタバレします。 「夢みる機械」1974年週刊少年ジャンプ11月号掲載 絵柄が何とも言えず可愛らしい。 隣の哲学者シブさんが良い味出している。 無個性で何の刺激もない社会にうんざりしてドロップアウトする、というSFは多々あるだろう。 本作はいわば『マトリックス』カテゴリSFだ。勢作年順としては『マトリックス』が『夢みる機械』カテゴリともいえるが。 単調で退屈な現在に留まるか、『不思議の国のアリス』世界に飛び込んでいくか、それを選択するのは自分自身なのだという問いかけだ。…

  • 『暗黒神話』諸星大二郎 その3

    ネタバレします。 「人間の巻」 スサノオの命は八俣の大蛇を退治し、その尾からひとふりの剣を発見する。 その後その剣はスサノオからヤマトタケルの手に渡る。 それが天叢雲剣、別名草薙剣である。 竹内老人は武に「聖痕もあとふたつ。この先はわしが案内しよう」と告げる。 この後本作で名場面のひとつが描写される。弟橘姫(おとたちばなひめ)の登場である。 ふたりは静岡県焼津市を訪れる。 このあたりでは丸石の信仰があるという。 この丸石を本作では卵としてその中から人が生まれた物語があり、かぐや姫も元来は竹ではなく卵から生まれた話だったらしい、と語る。 老人はとある洞に祀られていた丸石=卵を杖で叩き割る。 中に…

  • 『暗黒神話』諸星大二郎 その2

    ネタバレします。 「餓鬼の巻」 菊池彦は大神美弥を連れ大角隼人が待つ国東半島へ急ぐ。 隼人は武を見失ったという。 武はとある施餓鬼寺に辿り着き倒れていたのを住職らに助けられる。 本堂に寝かせられていた武の周囲に餓鬼どもが集まるのを和尚は観る。 菊池彦は石仏の上に彫られている梵字が気にかかっていた。 そこには「ヤマタイ」と書かれていたのだ。 寺では武が目を覚ましていた。 泥酔和尚は武に馬頭観音の説明をする。 畜生道や餓鬼道に落ちた人間を救ってくれる。 珍しい憤怒の観音である。 観音の馬頭は転輪聖王の乗馬を現しているという。 この施餓鬼寺は普段は寂れているが最澄が施餓鬼供養のために開いた寺であり毎…

  • 『暗黒神話』諸星大二郎 その1

    週刊少年ジャンプ1976年20ー25号 先日記事で書いた通り諸星大二郎シリーズ始めることにしました。 wikiに記載されている単行本リストに従って読んでいきます。 画像の本と2021年第20刷の文庫本を持っています。 (先の本を失くしたと思い購入した) しかし文庫本では細かすぎて読めません。 しばらく映像を観ようと予定していたのですがどうしても映像に耐え切れず本に戻ります。 ネタバレします。 これが一冊の内容とは信じられないほど濃い。 とても順を追って説明するほどの根気はない。 それをやったらたぶんそれだけで膨大な資料になりそうだ。 「畜生の巻」 冒頭の描写がとても良い。 現在のうるさい演出が…

  • 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』その2

    いつもあーだこーだ書く人間だけど本作については今のところ、特にこの3話4話言いたいこともないんだけど楽しんでいるからいいのかな。 楽しんではいるが一方キャラクターについても設定についても物語についても今のところ猛烈に言いたいこともない。悪口もない。 普通に楽しんでいる。 ところで・・・自分だけの感覚なのか、台詞がすごく『ヨルムンガンド』なのだ。 といってもそもそも『ヨルムンガンド』が『ガンダム』台詞だったのだから仕方ないのかもしれないが。

  • 『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』1

    久しぶりに映像を観る。 賛否両論、かまびすしくもりあがっている、そんな作品に参加してみる。 第一話目、初見、思った以上に面白く好きになれる世界観だった。 問題視されている「スマホ」に関しては確かになあ、という感じ。 存在に別にむかつきはしないがあんな落としやすく割れやすい代物をこの時代にアナクロ趣味としてではなく貧乏学生が必需品として持っているものかな。 しかしそれで言えば学生服も今はおかしくないが将来見る時には古風衣装だろう。 あえて古めかしい鳥居を入れ込んだりして新と旧を混ぜ込んでのお遊びなのだろうと自分的には判断した。 私にとってそれ以上に問題だったのはマチュとニャアンの登場演出なのだ。…

  • 『麒麟狩り』萩尾望都

    2021年 「諸星大二郎デビュー50周年トリビュート」より 今のところこの作品が今回の「萩尾望都マンガ作品読み返し」の最後の作品となります。(wiki記録にて) ほんとうはこの後そして現在も『ポーの一族』シリーズを描かれているのですが記事の書き方としてシリーズものはまとめて記すことにしたので『ポーの一族』シリーズは過去記事としてまとめています。 時期としては2024年10月号掲載の「青のパンドラ」が最後です。(wiki記載に従って書いているだけなので間違いはあるかもしれません) とはいえ今後の発表、というか私の場合は単行本になってからの記事になりますがその場合はこの後に続けて書いていくはずです…

  • 『ガリレオの宇宙』萩尾望都

    2020年「Apple Store」 萩尾望都初の完全デジタルで製作された本作『ガリレオの宇宙』がApple Storeにて公開中(2025年4月30日現在) その詳細はこのサイトに記されています。 www.hagiomoto.net 初完全デジタル作品がガリレオ・ガリレイの物語というのもさすがという感じです。かっこいい。 デジタルはそれまででも活用されてはいるようですが。 しっかしうまいし楽しい。そしてこの 笑ってしまう。色々使えそう。 異端と言われて書くことを禁止されていてもちゃんとこっそり書いてるガリレオ・ガリレイ。 萩尾望都氏は共感するはずだ。 ではその作品にリンクしておこう。 ガリレ…

  • 『バス停まで』萩尾望都

    2018年「週刊モーニング」1月25日号 2011年の東日本大震災後、2012年『なのはな』で福島原発事故後の人々を描き、2013年『AWAY』では世界の破滅への畏怖を描き、7年経ってまた本作を描いた。 やはり萩尾望都の悲憤は福島原発にあるのだ。 ネタバレします。 男がひとり草茫々の中に建つあばら家に向かい傾いだ家の戸をこじ開ける。 頭の中では妹の声が彼を導いていく。 妹の声は男に「汚いし危ないから靴のまま入っていって」というが男は靴のままじゃ上がれないと靴にビニール袋をかぶせて入る。 家の中はすでに荒れ果て泥棒も入っていたようだという。 二階は動物が住み着いていたのか臭いのだという。 「あま…

  • 『由良の門(と)を』萩尾望都/原作:岩明均『寄生獣』より

    2016年「月刊アフタヌーン」5月「ネオ寄生獣」より 残念なことに私が『寄生獣』をまったく読んでいないので原作との照らし合わせなどの面白みを味わえないのですが、その上での感想です。 ネタバレします。 そして本作自体も今回初読みだったのだが原作『寄生獣』を読んでいないのが悔しいほどの名作ではないのか。 私がこれから原作『寄生獣』を読むかどうかは未定だが知らずに本作の感想を持つのは読んでからではできないので原作未読の本作への感想もまた良いのかもしれない。 本作の主人公・由良は病院の中の病室で三歳までを過ごし「ふつうの子」と診断される。 神田夫妻の養女となって神田由良として成長する。 感情表現のない…

  • 『AWAYーアウェイー』萩尾望都 原案:小松左京『お召し』 その2

    ep3から「3月21日」世界が分かれた日です。 ネタバレします。 つまりep2から時間が戻ってAWAY世界では大人たちがどこかに行ってしまったと子どもたちが途方に暮れている。 ここで登場するのが大介が所属するバスケ部の後輩、河津克巳である。 ちょっと昨今のマンガではあまり出てこない個性的容貌の持ち主といえる。 しかも彼はとんでもない活躍を見せる。 それに関わってくるのが次に登場する不思議な笛少女ネネちゃんだ。 場面緘黙症だという説明がされる。 リコーダーを首から下げてピーッと吹くことでなんらかの意思表示をしているようだ。 AWAYでは子どもたちがどうしたらいいのかわからず不安の中で試行錯誤して…

  • 『AWAYーアウェイー』萩尾望都 原案:小松左京『お召し』 その1

    「フラワーズ」2013年6月号~2015年8月号 本作『AWAY』多くの方が評しているように「おもしろいんだけどあまりにも短い」 そしてなにか構成が破綻しているようにも思えます。 いつもやっているようにストーリーを追っていくべきかとも思いましたが、今回はストーリーよりも思ったことを書き記していきます。 ネタバレします。 ある日突然世界が18歳以上とそれ未満の二つに分かれてしまう。 それが「HOME」と「AWAY」 18歳以上の大人世界が「HOME」 未満世界が「AWAY」 「HOME」で赤ん坊が産み落とされたらその子は「AWAY」世界へ飛ばされてしまう。 「AWAY」である子が18歳となったら…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その8

    最終巻です。 ネタバレします。 美しく気高いマルゴは最期までアイデンティティを失わなかった。 自我を持ち続けた女性だった。 彼女は母后カトリーヌに厳しく躾けられ母を怖れ続けた女性で、だからこそ萩尾望都はマルゴを描いたと思われるのだが作者自身の成長のためか、マルゴは母を嫌悪しながらも上手く回避し時には逆らって行動していく。 以前の萩尾マンガにおける母親にはなんの対処もできないままの主人公とは大きく違うのが今回読みなおして感じたことだった。 母后は政略に子供たち、むろんマルゴも使っていき場合によっては死へ導く場合もあるのだがマルゴ自身は「そういう人だから」とため息しつつ開き直っている。この強さを萩…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その7

    うるわしい『王妃マルゴ』もついに七巻となってしまいました。 ネタバレします。 マルゴはナヴァルのアンリをベアルンに残しひとりフランスに戻る。 そしてサパン、今はジャックと呼ばれている我が子とついに再会する。 ジャックは父親かと思っていたアンリ三世にも失望しマルゴが近寄っても反発するのだった。 マルゴはすべてアンリ三世の仕業だと気づき改めて兄アンリに憎悪を抱く。 がアンリ三世のほうもマルゴに悪態をつきパリから追い出してしまう。 その後もジャック(サパン)を間にして兄アンリとマルゴの確執は続く。 アンリは本当に愛してほしかった人からは愛されないと嘆くが母から溺愛されデュ・ガストという忠実な愛人が長…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その6

    さすがに表紙になることはないがやはり歴史的に一番のヒロインはなんといってもカトリーヌ・ド・メディシスでしょう。 彼女の表紙は・・・・無理ですかねえ。 ネタバレします。 シャルルが24歳で死去。 アンジュー公アンリはポーランド女王に言い寄り宝石類をだまし取って(ほんとに?)フランスに逃亡帰国。 そしてフランス国王となる。 コンデ公の妻で身重のマリーを后にしたいと願い出るが(母后のさしがねでか?)マリーは葬り去られる。 (ここにアンリ三世はデュ・ガストを使い手紙を届けさせたためにアンリはデュ・ガストがマリーを毒殺したと疑うこととなる) アンリ三世は悲痛のあまり髑髏の衣服を纏う。 母后に逆らいルイー…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その5

    ではマルゴ自身をどう思うのかと言えば強く惹かれます。 一般的な歴史としては派手な男性遍歴と謳われてしまう彼女ですがこうして萩尾望都のマンガとして描かれれば純粋に愛を求めた女性として共感できるし魅了されます。 ネタバレします。 五巻の冒頭は萩尾望都『王妃マルゴ』の中でも圧巻だ。 母后カトリーヌはカトリックの王女マルゴとプロテスタントの王アンリの結婚を契機に一気にユグノーの一掃を企んだ。 この時母后は娘マルゴを夫の寝室へ向かわせる。 幼い頃にも殺戮に怯えて泣いた国王シャルルは自らの命令で虐殺されていくユグノーの死体に奇声をあげながらも狂ったように銃を撃ち続ける。 大虐殺を率いていくのはアンリ・ド・…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その4

    アンジュー公アンリ。なんやこいつ。むかつくヤツ。 しかし物語には絶対必要なヤツなんよな。 ネタバレします。 そんなアンリに対しマルゴは嫌悪を激しくぶつける。 マルゴがはっきり文句を言う女性なのが良いのだなあ。 一方、シャルルはコリニーに上手く言いくるめられまたも「父上」と呼んで信頼していく。 マルゴとナヴァルのアンリの結婚はマルゴが嫌がっても着実に母后によって進められていく。 阻むのはアンリの母ジャンヌだったがメディチ家(薬剤師)の生まれであるカトリーヌは彼女を美しい手袋を贈って毒殺する。 国王シャルルは后となったエリザベート・ドートリッシュとも愛妾マリー・トゥシェとも円満に仲良く、アンジュー…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その3

    なぜシャルルが一番好きなんだろう。よくわからん。 ネタバレします。 マルゴの美しさは輝くばかりとなっていく。 ギーズとの恋は秘められたものだったがふたりの間でより強くなっていた。 母后カトリーヌへの怖れは変わらないがスペイン語やラテン語が得意なマルゴは母から手伝いを頼まれるようになる。 カトリーヌは商売の大家メディチ家の出身である。政治は戦争だけではなく駆け引きと取引で解決するのが基本だとマルゴに教えるのだった。 アンジュー公アンリは女装をしてマルゴを待ち構えていた。 マルゴは兄アンリに「ギーズが好きなのね」と問う。 しかしアンリは「わたしが好きなのはおまえだ」と言い彼女の処女を奪ってしまう。…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その2

    アンリ・ド・ギーズ。 亡き父の仇を討つために自らの顔に向こう傷をつける。 そんな豪放磊落な男にマルゴは強く惹きつけられる。 ネタバレします。 マルゴたちは母后カトリーヌに従いフランス一周の旅に出る。 ところで私はアンリ・ド・ギーズよりシャルルが好きなのだけど皆そうなのだろうか。 そしてアンリ・ド・ギーズより田舎者のナヴァルのアンリのほうが良いと思う。 兄のアンリはなあ、あいつ。 マルゴは14歳となり社交界デビューを果たす。 ますます美しく艶やかになり男たちを魅了していく。 そんなマルゴを国王であり兄であるシャルルは溺愛し修道院に入れて自分だけのものにしたいと言い出す。 性愛に生きたいと本質的に…

  • 『王妃マルゴ』萩尾望都 その1

    「月刊YOU」2012年9月号~2018年11月号→「Cocohana」2019年1月号~2020年2月号 16世紀フランス。 後に王妃マルゴとなるマルグリット・ド・ヴァロワの一生が描かれる。 カソリックとプロテスタントの対立が軸となる。 ネタバレします。 王妃マルゴ。マルグリット・ド・ヴァロワ。 特に西洋歴史を学んだことのない一般日本人としては聞き及ぶこともない名前ではないか。 私はまったく知らなかった。 彼女の母、カトリーヌ・ド・メディシスであればうっすらと聞いてはいた。 それはたぶん彼女の夫であるアンリ2世と彼より18歳年上の愛妾ディアーヌのエピソードで知っていたのだが。 正妻との間に9…

  • 『なのはな -幻想「銀河鉄道の夜」』萩尾望都

    2012年 萩尾望都作品集『なのはな』に描き下ろし 「銀河鉄道の夜」は死んでしまった人が乗る汽車なのだ。 それを思うとほんとうに悲しい。 同様に「ひかりの素足」のお話が語られる。 宮沢賢治の物語の中でも最も怖く痛々しい描写がされるがこの中では救済の部分だけが取り入れられている。 唯一の慰めだ。

  • 『ハルカと彼方』萩尾望都・田中アコ短編集 ゲバラシリーズ

    「月刊アフタヌーン」2010年3月号~4月号 ゲバラと白湯はいわば探偵役のような感じになり表紙に描かれている兄妹ハルカと彼方の物語になります。 ネタバレします。 本作はもう前作の『菱川さんと猫』を上回る不思議話だ。 白湯は小学校で同級だった彼方と偶然再会する。 ほっそりした彼方は美少年を思わせる。 白湯はそのまま彼方の家を訪問する。 そこには驚くほどたくさんの水槽が置かれ様々な海水魚、淡水魚、古代魚などが飼われていた。 それは彼方の兄であるハルカが世話しているものだった。 仲が良すぎるほどの兄妹の話だがだからと言ってふたりがそこに性愛を求めるものでもない。 萩尾氏は「エドガーとメリーベル」とい…

  • 『菱川さんと猫』萩尾望都・田中アコ短編集 ゲバラシリーズ

    「月刊アフタヌーン」 猫シリーズが続く。 レオくんはやんちゃな子供だったけどこちらは落ち着いたおっさん的なかんじで良いです。 ちょっと不思議な本です。 田中アコさんが書かれた原作は全部なのか「菱川さんと猫」だけなのか、よくわかりません。 本にはなぜか目次がありません。 それらも含めて謎の本です。 (あ、カバーの裏表紙に目次的なものがありました) それから読むと絶対泣いてしまうのでご注意ください。 ネタバレします。 「菱川さんと猫」2009年5月号 大森レオくんは学校も会社もうまくやれない未熟猫だったがこちらの菱川ゲバラ氏は会社仕事もそつなくこなしていく。 語り手である高野白湯子は入社二年目の新…

  • 『レオくん』萩尾望都

    「フラワーズ」2008年2月号~2012年6月号 なんといっても表紙が良い。 レオくんと赤い表紙がとても良い。 ネタバレします。 レオくんは実際に萩尾先生が飼われている猫らしい。 幾匹かいる飼い猫の中でも特にお気に入りの猫らしい。 目の上の部分が一直線になるという特徴を持つ。上の画像でもそのように描いてある。 萩尾先生の描く猫は他のマンガ家が描くのと違いどっしりと重さが感じられる。 今回読み返すまで猫のレオくんが学校もお仕事もみんなと同じようにうまくやれなくてなんとなく障害を持つ子どもの置き換えのように感じて「これはいかがなものか」と拒否感を持っていた。 しかし今読んでみるとレオくんはむしろ我…

  • 『バースディ・ケーキ』萩尾望都

    「SF Japan」2007年SUMMER号

  • 『なのはな』その2 萩尾望都 シリーズここではない★どこか

    ネタバレします。 「雨の夜 ーウラノス伯爵ー」 「月刊フラワーズ」2012年2月号 「ウラン」をウラノス伯爵に擬人化してのお話。 「サロメ20✖✖」 「月刊フラワーズ」2012年3月号 「核廃棄物」をサロメとして擬人化した物語。

  • 『なのはな』萩尾望都 シリーズここではない★どこか

    「シリーズここではない★どこか」と記載されているのでそれに従います。 ネタバレします。 「なのはな」 「月刊フラワーズ」2011年8月号 2011年3月11日「東北地方太平洋沖地震」とそれに伴う津波により東京電力の福島第一原子力発電所で原子力事故が発生した。 その時の恐怖は忘れることはできないがそれでも今現在2015年となり14年の年月はその恐怖を薄れさせていく。 本作を再び読むことでその時の焦りのような心情を少し思い出せた気がする。 本作は同年2011年8月号に発表されている。 かなりの速さで描かれたのだ。 物語は事故そのものではなくそこに住む人々特に子供たちに焦点を当て描かれる。 主人公の…

  • 『春の小川』萩尾望都 シリーズここではない★どこか3

    といっても前回「シリーズここではない★どこか」2-2でかなり書いてしまったけど。 ネタバレします。 「花嫁 メッセージⅤ」 「月刊フラワーズ」2010年11月号 メッセージシリーズもⅤとなった。 黒い男の正体は相変わらずよくわからない。 歴史の案内者というところなのだろうか。 そして本作も両親に愛されずいいように利用されていく子供の物語である。 1420年フランスの王女カトリーヌ(キャサリン)とイギリスのヘンリー5世は結婚するがその前夜のお話。 アジャンクールの戦いでイギリスがフランスに大勝しヘンリー5世はフランスの王女カトリーヌ=英語名キャサリンに明日は求婚するということになっていた。 19…

  • 『スフィンクス』萩尾望都 シリーズここではない★どこか2-2

    ネタバレします。 「海の青」 「月刊フラワーズ」2009年7月号 おや前作品とは2年ほどの間があるのだな。 「人魚姫」をモチーフにしてさえない女の子とモテイケメンに置き換えたお話。 おもしろいのはモテイケメンが案外良い奴だったというところかな。 そして現代人魚姫は言いたいことは言って髪を切る。 「スフィンクス メッセージⅣ」 「月刊フラワーズ」2009年10月号 2年前に描かれた「オイディプス」のそれまでの話になる。 予言通りオイディプスは実の父を殺しテバイを訪れる。 しかしテバイではスフィンクスという怪物が夜な夜な出現し赤子を食うため人々は怖れ逃げ出す者もいた。 オイディプスはスフィンクスを…

  • 『スフィンクス』萩尾望都 シリーズここではない★どこか2-1

    ややこしくなりますが「シリーズここではない★どこか」の2巻目『スフィンクス』に入ります。 ネタバレします。 「青いドア」 「月刊フラワーズ」2007年8月号 このお話を「良い話だなあ」と感じるか「なんて嫌な女だ」と感じるかであなたの人生がわかります。 と言いたくなる作品だ。 語り手は「夫」である晴夫さんだ。 眼鏡のいかにも一般サラリーマンといった風情だ。平凡だが心優しく妻を愛している。 その妻の喜代子さんはなかなかの美人で生活力もあるけれどやや行き過ぎている感がある。 我が家をより良くしたいとまずはドアを青く塗ってしまう。 マンガはモノクロなのでわからないがかなり奇抜なのかもしれない。 平凡派…

  • 『山へ行く』萩尾望都 シリーズここではない★どこか 3

    ネタバレします。 「くろいひつじ」 「月刊フラワーズ」2007年1月号 「黒い羊」が「身勝手によって要望や期待から逸脱していることを暗喩する、否定的な意味を持っている」という意味だとは知らずにこの年齢になってしまった。 そうだったのか。 本作では音楽が大好きな一家においてただひとり音楽が苦手でそれゆえに嫌いな男が描かれる。 普通、というか少なくとも萩尾望都的には絶対にこれまでこの役は小さな少年か少女のもので会ったのにここでは「オヤジ」と呼ばれる年配男がそれになる。 冒頭で兄が母のピアノを焼いた、という不穏な情報が呈される。「ピアノを焼く」この恐ろしい行動は特に音楽を愛する人には許されざる暴挙な…

  • 『山へ行く』萩尾望都 シリーズここではない★どこか 2

    ネタバレします。 「ゆれる世界」 「月刊フラワーズ」2006年7月号 この話はどういう意味なのだろうか。パパは言われた通りに従っていたけど娘は自分で考えて行動していた。 パパは驚いたけど娘の説が正しい、というか自分にとっても良い感じだった、ということでいいのだろうか。 萩尾作品にはけっこう横山光輝SFからの発想なのかな、と思うものがある。 本作は横山光輝『ダイモス』を思わせる。 しかし羽があるからといってもなんの超能力にもならないのである。 息子くんがいうとおり邪魔なだけな気もするがそれを良しとしている奥さんが良い人だ。 風通しは確かに気持ちよさそうだと思う。 「メッセージ」 「月刊フラワーズ…

  • 『山へ行く』萩尾望都 シリーズここではない★どこか1

    『シリーズ ここではない★どこか (Anywhere But Here) 』短編集です。 発表順と本の収録順が異なるのですが以前も書いた通り発表順にのっとっていきます。 「月刊フラワーズ」2006年4月号 『残酷な神が支配する』でふっきれたというべきか禊が終わったというのか、他作家に比べれば」ぎこちない感はあれど『午後の日差し』『帰ってくる子』そして『バルバラ異界』になって家族のつながりという題材が描かれるようになった。 本作にいたってはごく普通の家族の在り方と言っていいのではないだろうか。 ネタバレします。 主人公は生方正臣。小説家で大学の臨時講師らしい。 妻と高校生の娘、中学生の息子がいる…

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