白秋は努力の信者であった。 練習の礼讃者であった。 「継続は力なり」を真理と仰いで微塵の疑念も差し挟まない男であった。 と言うよりも、日夜努力を継続し、綴方の修錬を積んでいなくば不安と恐怖で精神を狂わせかねないやつだった。 ──何に対して。 との疑いが、ここで当然、起きていい。白秋は何を恐れていたのか、不安の対象は何なのか。…… (中段右端に北原白秋) 解答(こたえ)は単純、「劣化」なり。 言葉を撰んで紡ぎ合わせるあの能力(チカラ)、よってもってより美しく心を紙面に反映させる、詩作の腕が錆びつくことを、彼は最大の恐怖とし、遠ざけようとがむしゃらに足掻いて喚く者だった。 「ものの十日も無縁である…