善悪の彼岸
第一次世界大戦終結後、ヨーロッパには梅雨時の菌糸類みたくアカい思想が蔓延った。 イタリアで、ハンガリーで、ポルトガルで、方々で。もう明日にでも赤色革命が成るのではと危惧されるほど猖獗を極め、うち幾つかは実際問題、そう(・・)なった。 (赤の広場) 唯物論の荼毒によって宗教はアヘンと嘲られ、欧州人の精神を永く抑制し続けた、ある種基盤をごっそり喪失した結果。道徳の頽廃、人心の堕落はもはや止め処もなくなって、日を追うごとに末期的形相を強めゆく1920年代社会を見せつけられまくり。――フランスの批評家、ポール・ブールジェは以下の如くに書いている、 「傲慢で皮相的な科学の影響の下に、信仰は一笑に伏され、…
2024/08/30 17:17