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穢銀杏
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2019/02/02

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  • 腹に詰まりし九キロの

    もうじき二十二歳を迎える未婚の娘の下腹部が、どうも最近、膨らみ気味だ。 月経も停止しているらしい。 (孕んだか) 両親は、造作もなく合点した。 事実、珍しい話ではない。 ここは大分、東国東(ひがしくにさき)郡に属する、とある山村、某農家。 (国東半島の山々) 開発から取り残された草深い田舎のことである。中央より吹く文化の風も、昭和の御代の人倫も、両子山の錯綜せる溶岩台地に阻まれて国東半島ことごとくには届かない。だからこういう、上古以来の夜這い・野合の習俗が、なお生々しく息づく土地が保存されていたりする。 それゆえ家族も特に騒がす、自然の流れに任せていたが。――どうもだんだん、様子が変だ。 十月…

  • 動物園に巡る死は

    日本で初めてゾウの解剖をやったのは、帝大農科大学教授、田中宏こそである。 明治二十六年の幕が開いて早々だった。新年いきなり、上野動物園に於いてはその「花形」を失った。寄生虫症の悪化によって、ゾウが一頭、死んだのである。石油缶に湯を注ぎ、藁を被せて湯たんぽ代わりにしてやったりもしたのだが、今やすべては無為だった。 (上野公園前) 動物園では悲しみつつも、 「せめて学術参考に」 と、愛獣の死を最大限活かすべく、解剖の手筈を整える。 なにぶん日本で最初の試みであるということで、見学希望は引きも切らずであったとか。 そして、当日。 衆人環視の只中で、田中宏は汗みどろになっていた。 たいへんな悪戦苦闘だ…

  • 愛だの恋だのよく飽きもせず、満足いくまでやりゃいいさ

    古い『読売新聞』にラブホテルの雛形めいたモノを見付けた。 昭和六年三月十二日である、記事が紙面に載ったのは――。 「最近『円宿ホテル』といふのが多数現はれ安っぽいコンクリートまがひのアパートにベッドを置いて、ホテル営業を表看板とし待合ともカフェーともつかぬつれ込み客専門の宿をして盛んにエロ時代を謳歌してゐるものがあるので警視庁保安部風紀係では取締の必要を認め、管下各署からの調査意見書を二十日迄に集めることになりこの旨十一日通牒した」 (Wikipediaより、読売新聞ホーロー看板) 嘗てフェミニズムの権威、スウェーデンの誇る思想家、エレン・ケイ女史はいみじくも言った、「性の問題は生命の問題であ…

  • 腹に詰まりし九キロの

    腹に詰まりし九キロの

    もうじき二十二歳を迎える未婚の娘の下腹部が、どうも最近、膨らみ気味だ。 月経も停止しているらしい。 (孕んだか) 両親は、造作もなく合点した。 事実、珍しい話ではない。 ここは大分、東国東(ひがしくにさき)郡に属する、とある山村、某農家。 (国東半島の山々) 開発から取り残された草深い田舎のことである。中央より吹く文化の風も、昭和の御代の人倫も、両子山の錯綜せる溶岩台地に阻まれて国東半島ことごとくには届かない。だからこういう、上古以来の夜這い・野合の習俗が、なお生々しく息づく土地が保存されていたりする。 それゆえ家族も特に騒がす、自然の流れに任せていたが。――どうもだんだん、様子が変だ。 十月…

  • 動物園に巡る死は

    動物園に巡る死は

    日本で初めてゾウの解剖をやったのは、帝大農科大学教授、田中宏こそである。 明治二十六年の幕が開いて早々だった。新年いきなり、上野動物園に於いてはその「花形」を失った。寄生虫症の悪化によって、ゾウが一頭、死んだのである。石油缶に湯を注ぎ、藁を被せて湯たんぽ代わりにしてやったりもしたのだが、今やすべては無為だった。 (上野公園前) 動物園では悲しみつつも、 「せめて学術参考に」 と、愛獣の死を最大限活かすべく、解剖の手筈を整える。 なにぶん日本で最初の試みであるということで、見学希望は引きも切らずであったとか。 そして、当日。 衆人環視の只中で、田中宏は汗みどろになっていた。 たいへんな悪戦苦闘だ…

  • 愛だの恋だのよく飽きもせず、満足いくまでやりゃいいさ

    愛だの恋だのよく飽きもせず、満足いくまでやりゃいいさ

    古い『読売新聞』にラブホテルの雛形めいたモノを見付けた。 昭和六年三月十二日である、記事が紙面に載ったのは――。 「最近『円宿ホテル』といふのが多数現はれ安っぽいコンクリートまがひのアパートにベッドを置いて、ホテル営業を表看板とし待合ともカフェーともつかぬつれ込み客専門の宿をして盛んにエロ時代を謳歌してゐるものがあるので警視庁保安部風紀係では取締の必要を認め、管下各署からの調査意見書を二十日迄に集めることになりこの旨十一日通牒した」 (Wikipediaより、読売新聞ホーロー看板) 嘗てフェミニズムの権威、スウェーデンの誇る思想家、エレン・ケイ女史はいみじくも言った、「性の問題は生命の問題であ…

  • 敗戦国のみじめさよ ―そしてハーケンクロイツへ―

    敗戦国のみじめさよ ―そしてハーケンクロイツへ―

    『読売新聞』は幸運だった。 大正十年、彼らは期するところあり、ちょっと特殊な展覧会を開催(ひら)くことに決めている。 特殊とは、むろん出展される品。 第一次世界大戦中に帝政ドイツが刷り出したプロパガンダ・ポスターである。戦意高揚、スパイ警戒、エトセトラ。偉大なる勝利に至らんと智慧の限りを振り絞り、作製された掲示物。センセーショナルな「張り紙」の、同社が蒐集・保管するありったけ(・・・・・)を世間の耳目に晒さんと、そういうことを企画した。 彼らの視角に基けば、今の日本に何より欠けているものは、宣伝戦の心得だからだ。 (プロパガンダに余念のないチャップリン) 仕掛けるにせよ、邀撃にせよ、技術的に拙…

  • 春畝を忍ぶ ―伊藤博文、その巨影―

    春畝を忍ぶ ―伊藤博文、その巨影―

    偉人が語る偉人伝ほど興味深いモノはない。 「評するも人、評せらるるも人」の感慨をとっくり味わえるからだ。 福澤諭吉は『時事新報』の記事上で、伊藤博文を取り扱うに「国中稀に見る所の政治家」という、きらびやかな言を用いた。「政治上の技倆を云へば多年間政府の局に当りて自から内外の事情に通じ、或は失敗もし或は成功もしたる其間に、あたゆる政界の辛酸苦楽を嘗め盡して今日に至りしことなれば、事の経験熟練の点に於ては容易に匹敵するものを見ず。殊に日本の憲法制定に参して最も力あるの一事は内外人の共に認むる所にして、其功労は永久歴史上に滅すべからず」云々と。 べた褒めである。 満艦飾といっていい。 まるで鳴りやま…

  • 「幻華在目十四年」 ―秋田小町と犬養毅―

    「幻華在目十四年」 ―秋田小町と犬養毅―

    正岡子規とて身体が自由に動いた頃は遊里にふざけ散らしたものだ。 況や犬養に於いてをや。 明治十年代半ば、犬養毅は特に招かれ、東北地方の日刊紙、『秋田日報』の主筆として活動していた時期がある。「才気煥発、筆鋒峻峭、ふるゝ者みな破砕せり」とて衆の威望を萃(あつ)めたものだ。 (秋田のなまはげ) それと同時に土地の名歌妓・お鐵にめちゃくちゃ入れあげて、交情熱烈大紅蓮であったのも、蓋し有名な逸話(はなし)であろう。 明治の青年たちにとり、艶彩迷酒の歓楽はほとんど通過儀礼の一種。酒で腸を焼き鉄拵えにするのと一般、娼妓(おんな)の肌に触れてこそ、志は磨かれる――と、大真面目に主張したとて誰も不審に思わない…

  • どうせこの世は男と女、好いた惚れたとやかましい

    どうせこの世は男と女、好いた惚れたとやかましい

    デモクラシーの掛け声がさも勇ましく高潮する裏側で、人間世界の暗い業、望ましからぬ深淵も、密度を濃くしつつあった。 『読売新聞』の調査によれば、改元以来、日本に於ける離婚訴訟の件数は、年々増加するばかりとか。 大正四年時点では八百十三件を数えるばかりであったのが、 翌五年には九百五件に上昇し、 次の六年、九百五十一件にまで跳ねたなら、 七年、とうとう千百四十二件なり――と、四ケタの大台を突破して、 更に八年、千二百十八件を計上と、伸長にまるで翳りが見えぬ。 (タバコを吸う夏川静江) なお、一応附言しておくと、上はあくまで訴訟を経ねば別れ話が纏まらなかった事例のみの数であり、離婚そのものの総数は、…

  • 女神が握っているものは

    女神が握っているものは

    移民が増えれば犯罪も増す。 両者はまさに正比例の関係にある。 アタリマエのお話だ。 一世紀前、この論法に疑義を呈する白人は、ほとんど絶無に近かった。「自由の国」の金看板を衒いもせずにぶちあげる、アメリカとてもその辺の事情はまったく同じ。揺るぎなき金科玉条として、日本移民排斥の十八番としたものだ。 (いわゆる「日系二世」たち) なんといってもスタンフォード大学の名誉総長サマまでが滔々として述べている、 「アジアから群がり来る大勢の移民を歓迎する事は米国に取っては政治的に好ましからざる事である、…(中略)…人種が異(ちが)へば異ふ程、そして特に新来者の野心が大なる程、両者の軋轢は大きくなるのである…

  • 利通の遺産

    利通の遺産

    大正九年のお話だ。 帝都は水に苦しんでいた。 「水道、まさに涸れんとす」――ありきたりと言えば左様(そう)、単純に渇水の危機だった。 (江戸東京たてもの園にて撮影) 当時の市長、田尻稲次郎は事態を重く見、市民に対して犠牲心の発露を願う。トンネルの出口が見えるまで――解決の目処が立つまでの間、「娯楽目的の水道利用」を禁止すると声明し、ために深川あたりの労働者らは満足に体も拭えなくなり、必然毛穴は閉塞し、皮膚の痒みで夜もまともに眠れない、散々な目に遭わされた。 皇居御苑を筆頭に、各地公園の噴水も軒並み停止させられる。節水、節水、節水で、堅っ苦しい雰囲気が帝都に覆いかぶさった。 然るにだ。この状況下…

  • ビバ・キャピタリズム!

    ビバ・キャピタリズム!

    造り過ぎた。 無限の需要を当て込んで国家の持ち得る生産力のあらん限りを発動させた、その結果。 第一次世界大戦後のアメリカは、げに恐るべき「船余り」に苦しめられる目に遭った。 (終戦の日のアメリカ) サンフランシスコに、シアトルに、タコマに、ポートランドに、それから勿論ニューヨーク。――北米大陸東西沿岸、ありとあらゆる港湾に、外形(ガワ)だけ造って機関も何も入れてない、所謂半成状態の木造船がずらりと並んでいたものだ。 当時アメリカを旅行した日本人のほとんどが、およそこの種の豪華なる「船の寿司詰め」状態を目の当たりにして驚倒し、その感情の振幅を紀行文に記入(つけ)ている。 有名どころを挙げるなら、…

  • 酔わずに何の人生か

    酔わずに何の人生か

    アメリカ政府がジャガイモを「野菜」ではなく「穀物」と認定せんとしていると、そんな挙動(うごき)が濃厚なりと仄聞し、思い出したことがある。 そういえば明治時代にも、合衆国は食品の分類如何(いかん)で揉めていた。新規のとある輸入品、日本酒をどのカテゴリにぶち込んだらいいのかで、お偉方が意見を闘わせたものだ。 酩酊感を齎すが、あからさまにビールではない、蒸留過程も経ていない、シャンパンともどうやら違う、なら何だ(・・・・)。何の仲間に含めればいい? ――なにしろ事は関税率に直接関わる沙汰だけに、財務省の役人どもの関心たるや並でない。眼を血走らせ、眉間の皴も濃く、深く。本気の注意を向けていた。 豈図ら…

  • 便所と大臣

    便所と大臣

    文部大臣多しといえど、学校視察に向かう都度、便所の隅まで目を光らせて敢えて憚らなんだのは、およそ中橋徳五郎ぐらいのものであったろう。 話は尾籠に属するようで若干引け目を感じるが、これは至って真面目なことだ。 少なくとも中橋大臣本人は、猟奇趣味にも変態性欲を満たす為にもあらずして、己が職務を全うするのに不可欠なりと判断し、この上なく真剣に、信念を持ってやっていた。 (フリーゲーム『操』より) なんでも彼に言わせれば、便所の壁こそ学生が、もっとも赤裸に、明け透けに、言論戦を展開できる場所なのだとか。なるほど確かにSNSも、電子掲示板すらも未発生な彼の時代。心の澱を吐き出す場所は現代よりもずっと限定…

  • 壁に耳あり障子に目あり、ならもう全部焼き払え

    壁に耳あり障子に目あり、ならもう全部焼き払え

    屋根に関して、まま行政はやかましい。 東京、神奈川、京都あたりの一部地域でソーラーパネルの据え付けが義務化されつつあるように。 明治四十年代も、市民の頭上に「官」が嘴を入れてきた。茅葺屋根の根絶を、「お上」の威光を以ってして推し進めんとしたものだ。 「家屋其他建物の新築改築又は増築を為さむとするものは、瓦石其他の不燃物質を以て其屋上を覆復し、現在の燃質物屋上は十箇年以内に改葺する事とし…(中略)…違背したる者は二円以上十円以下の罰金に処す」 警視庁の名に於いて、如上の趣旨のお達しが発令されたわけである。 時恰も明治四十年、五月十六日だった。 (江戸東京たてもの園にて撮影) まさか当時の警察幹部…

  • ナイフ一本、返り討ち

    ナイフ一本、返り討ち

    研師にして剣士。 どちらの手腕(うで)も紛うことなき一級品。 そのまま時代劇中のキャラクターに具せそうな、――山尾省三はとかく刃物の扱いに熟達したる者だった。 (『Ghost of Tsushima』より、刀鍛冶) 米寿を超えてなおも現役。髪は落ち、皮膚は弛んで白髭をちぢれさせようと、指先の冴えは失わぬ。鳥取県は米子城下の四日市に居を構え、農具や庖丁等を手入れし日々の稼ぎに充てていた。 職人として好ましき老い方であるに違いない。「生涯現役」、ほぼほぼ理想に近かろう。 そういう山尾省三が、どうしたわけか、あるとき人を刺殺した。 正確な日付を示すなら、昭和五年の三月二日。 相手は若齢二十七歳、山尾…

  • 外面菩薩、内心夜叉

    外面菩薩、内心夜叉

    役者というのは結婚すると人気が落ちる。 たった一人の生涯の伴侶を得ることは、何百、何千、何万倍の、異性のファンを失うのと引き換えである。 この俗説は、果たして真なりや否や――。 「そういうことは、事実、けっこう御座います」 神妙な面持ちで頷いたのは、六代目尾上菊五郎。 (Wikipediaより、六代目尾上菊五郎) 若干二十三歳の折、妻を迎えてまだ一年も経ていない、初々しい身であれど。効果というか周囲の変化は激甚で、嫌でもはっきり自覚せずにはいられない、猛烈性を帯びていた。 地殻変動にも喩うべき、ファン層の入れ替わりがあったのだ。 「独身時代の贔屓は婦人に多く、妻を有してより後の贔屓は男に多けれ…

  • 喜ばしき欠落

    喜ばしき欠落

    明治三十九年一月十四日午前十時三十九分、東京、新橋駅頭は空前の熱気に包まれた。 凱旋したのだ、英雄が。 日露戦争の将星人傑多しといえど、わけても一際異彩を放つ、嚇灼たる武勲所有者。おそらくは東郷平八郎と国民人気を二分する、陸軍界に於ける聖将。第三軍司令官、乃木希典大将が、とうとう帝都に帰還した。 (水師営にて) いやもう、人、人、人である。 強きを欲し、強きに焦がれ、強きに向かう日本人の性情が極端に発揮されたと見るべきか。東亜に向かって伸ばされた帝政ロシアの魔の手を払い、みごと勝利をもぎとった、烈士の姿を一目(ひとめ)なりとも拝まんと、殺到して已まぬ民。東京どころか日本中の蒼生が新橋駅を中心と…

  • 尊皇攘夷の秋は今 ―明治三十七年、対馬―

    尊皇攘夷の秋は今 ―明治三十七年、対馬―

    もはや開戦秒読みの時期。 再三の撤兵要求を悉く無視し撥ねつけて、帝政ロシアが持てる力と欲望を極東地域に集中しつつあったころ。 スラヴ民族の本能的な南下運動を阻まんと、大和民族が乾坤一擲、狂い博奕の大勝負に挑まんとしていたあの時分、すなわち明治三十七年、日露戦争開戦間際。 『報知新聞』に投書があった。 送り手は、玄界灘の一島嶼、対馬に住まう老人である。 (『Ghost of Tsushima』より) (ははあ) 担当記者は内心密かに、 (来るべきものがついに来たか) と頷いた。 中世期、元寇という日本史上稀にみる本格的な対外戦争を経験した土地だけに、およそこの種の騒ぎには敏感たらざるを得ないのだ…

  • 口内衛生小奇譚

    口内衛生小奇譚

    虫歯の痛みを鎮静させるためとはいえど、蛭を口に含むなど、考えただけでおぞましい。 到底無理だ。ヒポクラテスの勧めでも、鄭重に謝絶するレベル。万が一、喉の奥へと進まれて、食道にでも貼り付かれたらなんとする。不安で不安で、神経衰弱待ったなしではあるまいか。 (Wikipediaより、ヤマビル) 論外もいいとこに思えるが、しかしそういう療法が、嘗て本当に実在(あ)ったのだから驚きだ。前回示した『家庭療法全集』中に見付けてしまった項である。 「痛む歯の歯茎に、蛭をつけると、歯痛が止まる。膿を持ったのでも治る。蛭のつけ方は、巻煙草の吸口のやうに丸めた紙の中に、蛭を一匹入れて歯茎にぴったりと当てがって吸ひ…

  • 附録戦争

    附録戦争

    猫を狂わせることだけがマタタビという植物の全能力ではないらしい。 保温効果たっぷりの良質な入浴剤として、人類(ヒト)の役にも立たせ得る。「五匁くらゐを袋に入れ、約二升くらゐの水で充分に煎じ、その汁をお風呂に入れて入ります。少しも厭な臭ひもなく大変よい気持です。このお湯は、少しくらゐ長湯しても、のぼせることがなく、上ってからも、随分長い間、体中がぽかぽかしてゐます」――こういう記述、用法が、戦前刷られた『家庭療法全集』中に載っているのだ。 如何にも古書でございといった、もう見るからにくたびれきったこの一書。 もと(・・)を糾せば単体で売り出された品でなく、婦人雑誌『主婦の友』昭和六年一月号の附録…

  • Malignant tumor ―不幸な双子―

    Malignant tumor ―不幸な双子―

    たぶん、おそらく、十中八九、畸形嚢腫なのだろう。 にしてもなんてところに出来る。 時は昭和五年、秋。山口県赤十字病院は佐藤外科医長執刀のもと、二十一歳青年の睾丸肥大を手術した。 (Wikipediaより、山口県赤十字病院) 患者にとっては十年来のわずらいになる。 十歳のころ、初めて股間に違和を覚えた。 小さなしこりに過ぎないが、確実に「何か」がそこにある。少年が成長するにつれ、「何か」も併せて体積を増し、少年から青年へ、身体が闌(た)ける時分には、もはや自然治癒などと希望(のぞ)むも愚かな、そういう規模に成り遂げた。 二十歳(はたち)の峠を過ぎたころ、いよいよ日常生活に支障を来すまでになる。金…

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