知らない場所を生き言語さえも通じないそうして順列ひとつ合わない箇所を生き交差さえも達せないそれから表裏ひとつ疑いない二所を生き認識さえも適わないそれでも存在ひとつそれでも存在ひとつしんじるもの
最後の作品を前に幾年かが過ぎ行き未知の貴方が在る明日をば迎え行く最後の貴方の声を最後の作品を手に幾年かを振り返り未知の貴方を失う明日をも受け入れ最後の貴方に愛をgone
4月23日に発売予定のゲーム「百英雄伝」のプロジェクトリーダーである村山吉隆さんが、2月6日にこの世を去った。当ゲームを楽しみにしていた人たちにとって、突然の、まさかの訃報。張り付いていたわけではないけれど、気の向いた時には開発状況の様子ものぞき、精力的にファンに発信しているという認識だった。村山さんの代表作は、言わずもがな百英雄伝がその流れを受ける、「幻想水滸伝」である。プレイステーションソフトとして発売したのは、もう三十年近くも前で、我らが中年世代は、時の流れを思う。自分が購入したのは、発売1年後に出た低価格版ではあるが、プレステ時代であることに変わりはない。ある日、友人の家で正方形のパッケージを見て、タイトルとビジュアルに惹かれて購入し、攻略本は友人に借りた。ポケモンよろしく108人の仲間を集めると...村山吉隆さんと幻想水滸伝
なんでもそつなくこなすのにこころはいつだってぶきようはりしまわってせわやくのにおきまりのようにすれちがうなんどもそこなくころぶのにここぞはいつだってまにあうはやりこまってきずつくのにおさまりのよさにわらいあう器用で不器用
月に一度は、映画館で新作を。2024年の2月は、「ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ」(アメリカ)。2月も積極的に観たい新作はなかったので、同名のホラーゲームの存在を知っていた本作をチョイス。原作のゲームは、とある廃ピザ屋の夜勤警備員が、命の危機のある数夜のお仕事を、色々と駆使して乗り切るというもの。動画サイトのゲーム実況で見たことのある自分は、基本、映画の予習はしないので、そういう映画だと勝手に決めつけて観た。なので、自己責任なのだが、映画は原作に忠実(なのだろう)であっても、ジャンルはホラーではない。ホラー系はジャンル的に大作は少なく、本作もそんなことは期待していなかったが、最初30分を観て、正直「おっ」とは思った。少なくとも最初の30分は、助走としてその後のホラーを期待させるに十分な展開が進む。...ツキイチ映画館(2024年02月)
目を合わせることもなく遠慮がちに丁寧語で話す天性に分けへだてのない心地よい無尽蔵の優しさ一にも二にも幼いままに目を逸らすことなどなく意志つよく演説調で話す天分に揺るぐことのない親和する無制限の逞しさ一にも二にも育むままに一にも二にも在るままにwithyou
「室町は今日もハードボイルド日本中世のアナーキーな世界」清水克行(新潮文庫)日本中世史を専門とする大学教授の、一般向け、実はまるまる系シリーズ。探検系ノンフィクション作家である高野秀行さんとの、ハードボイルド対談の書籍を経由しての購入。今の日本人はこうこうで、それは歴史由来とも言われるが、中世日本の常識や倫理は、今とは全然違うんだよ、というもの。歴史資料などを裏付けに、学術研究から室町時代の市民階級の生活などについて、具体的な事件や出来事から紹介してくれる。今と同じで、今と違う、物理的には同じ位置や場所にある日本の、記録に残った昔の生活文化は、基本それだけで面白い。偶々に記録を残す、当時ありふれただろう、村と村との過激な争い、男女問題に発するうわなり打ち、とある地方の権力争い。どれもこれも、ありふれた有名...読書のよもやま(2024.02.12)
他愛もないからこその二十年来のやりとりと必然もないからこその二十年ぶりのやりとり空白もないからこその二十三十のこれまでと拝啓もないからこその二十三十代のこれまで振り返るには今さらで振り向くには今さらでScore
「読むだけですっきりわかる世界地理増補改訂・最新版」後藤武士(宝島社)現代日本においてとても一般的な、いわゆる高等学校的なお勉強から離れて、不本意にも長い年月が過ぎている。なんだか最近は、これまで定着していた基礎的な知識もあやふやになりつつあり、特に国外、世界ともなれば、まず地図が怪しい。大国はまだしも、(地理的な意味で)こまごまとした地域は、位置と情報もそこそこ自信なく、そもそも知識自体が古すぎる。戦後のアジアについてを学ぶのもいいが、肝心の今についていけなければ、である。ということで、本屋で目に付いたので、知的な好奇心というよりも、基礎知識の補強、アップデートを義務目的な感じで購入。本書はそうした期待通りに?、タイトルに相違なく、学生向けにありそうな、楽しく学ぶ何々、みたいな内容である。それ以上でも、...読書のよもやま(2024.02.05)
ほうっておけないひとあまりにやさしいこときもちのあらわなひとあまりにまじめなこといきおいまかせのひとあまりにいちずのことこのよにあまねくひとあまりにきらめくことこのよにあまねく
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知らない場所を生き言語さえも通じないそうして順列ひとつ合わない箇所を生き交差さえも達せないそれから表裏ひとつ疑いない二所を生き認識さえも適わないそれでも存在ひとつそれでも存在ひとつしんじるもの
本も読み終えていないし、特に書きたいこともないので、ここんとこの出来事からいくつか。①2024年の映画興行収入ランキングの暫定で、実写系洋画がトップテンに1作品もないよう。月に一度、映画館で新作を観るツキイチ映画館をやっているが、振り返ってみても、まあ、妥当なのかなとは思う。かつてのスターウォーズとか、ハリーポッターとか、そういうシリーズ系大作もなく、大物はことごとく期待を下回り。時代とか周期だなあとしか思わないけれど、ハリウッド系テンプレート好きとしては、もう少し洋画に頑張って欲しい今日この頃。②中央競馬所属のベテラン騎手が、スマホ使用で騎乗停止となり、同僚が無言講義を匂わせたよう。ここまでの禁止期間におけるスマホ利用は若手が主だったが、ここにきてベテランの違反者となった。スマホが生活に密着し過ぎた現代...本当に雑記(2024.12.16)
日常から離れ立ち止まり追い抜く舌打ちを横目にスライドの照合が始まる不確かに鮮やかな着色に転嫁された甘味が絡まり時空の跳躍に動く耳石にサウンドの波長が狭まる鼻奥こびり付いた香料にぼんやりと焦点が定まり呼び起こす記憶のノートラストNote
「エンド・オブ・ライフ」佐々涼子(集英社文庫)著者の作品は「駆け込み寺」「紙つなげ!」「エンジェルフライト」と読み、本作で4作目となった。取材で知り合った訪問看護師に重い癌が見つかり、本人からの依頼により書籍化を前提に話を聞き続けた日々をまとめている。在宅による終末期医療に多く携わった看護師による、患者となった自身を通した訪問介護について、後進向けに本にまとめる。そのはずだったのだが、著者が取材に赴いても、看護の専門的な話は一向に出ず、そのまま最期の時を迎える。裏表紙ではノンフィクションとされているものの、本書は終末期と死とテーマとしたエッセイに近い。癌が見つかる前に取材した在宅医療と、患者である看護師と、著者の過去を交え、在宅医療と死について考え、語る。そもそもノンフィクションを目的とした取材ではなかっ...読書のよもやま(2024.12.09)
ルールが少し違うならいつまでも終わらないラン・ラン・チェイストーンが少し違うならいつまでも終わらないラブ・ラブ・チェイスタームが少し違うならいつまでも終わらないラグ・ラグ・チェイスChasetoChase
「エンジェルフライト国際霊柩送還士」佐々涼子(集英社文庫)ここのところ、著者の作品を立て続けに読んでおり、本作で3冊目の読み終りとなった。現在、4冊目を読み進めているが、含めて著者の作品の中では、本作「エンジェルフライト」が断然、一番面白い。本書は、国内の外国人の遺体、国外の日本人の遺体を適切に処置して本国に送り届ける会社の人々のルポルタージュである。そういった内容であるから、面白いというと誤解を招きそうでもあるが、間違いなく本書が代表作といえるのではないか。自分は、既読の「駆け込み寺の玄さん」と「紙つなげ!」は、職業的ルポによる記録の色が強いという感想だった。しかし、本作は、著者も冒頭で述べるように、元々著者が興味関心を持ち、拒否されても何度も取材を依頼した題材となる。ここには、決して依頼や探し出した題...読書のよもやま(2024.12.02)
冬の知らせはいつも夏の真わたとちがい虫の知らせもなしに息の真っしろになる過の知らせをよせて針の痛みがつらぬく柝の知らせのなかで胸の痛みはどちらか冬の知らせ
月に一度は、映画館で新作を。2024年の11月は、「グラディエーター2英雄を呼ぶ声」(アメリカ・イギリス)。予告編で、ハリウッドこてこてテンプレートが約束されていそうで、他に候補もなかったため、迷うことなく今月のチョイスに。平日昼間とはいえ、それなりのメジャー作品の認識も、スクリーンには、自分を含めてお客さんは3組と少し寂しく。とはいえ、作品自体は期待通り、分かりやすいハリウッド系歴史モノアクションで、何も考えず、ただ映画を楽しめる。前作は多分、1回は観ているはずであるが、いつか分からないくらい古いはずで、もはや何も覚えておらず。ツキイチ映画館では予習復習はしない方針なので、そのまま鑑賞して後に調べ、20年以上前の事実に驚く(というか嫌になる)。すれば、冒頭に劇画調?で1作目のダイジェストらしきものが流れ...ツキイチ映画館(2024年11月)
草木の朽ちる庭園で脚立に登った庭師の壁に描く大きな魚が凪の奥を縦横に泳ぎ色という色を飲んで色という色を吐いて虹の渦に擬態すれば庭園は海原に変わり魚は飛ぶ感情のまま庭師と魚-GardenerandFish-
日常生活(人生)シミュレーションゲームである、「ワールド・ネバーランド~オルルド王国物語~」がPC版で発売するよう。記事を見て調べてみると、2作目の「ワールド・ネバーランド2~プルト共和国物語~」はすでに5月に発売済みだった。今年の発売とはいえ、再版であり、まあまあ古いこのゲームは、もはやレトロに分類されてもおかしくはない。内容は、架空の世界(街)で本当に日常(人生)を過ごすだけのもので、冒険もなければ、街づくりもない。何でもない労働に勤め、ちょっと体を鍛えて、ささいな年間イベントに参加して、見合いみたいな恋愛をして、親になり、寿命で死ぬ。死ねば操作キャラを子供に変えることはできるが、何かが変わるわけでもなく、また日常生活(人生)を淡々と過ごす。人を選びすぎるこの超マイナーゲームは、しかし、ストライクのプ...ワーネバのおもひで。
経験でも妄想でもなく進まず繰り返すXデイ結末迎えることもなくメアの先は知らぬまま多角でも丸形でもなく開かず試し直すXキイ来客迎えることもなくドアの先は知らぬまま二十のリアルなXメア二重にリアルなXドアXX-エックスロス-
「嫌われた監督落合博満は中日をどう変えたのか」鈴木忠平(文春文庫)2021年に単行本が発売された際、多くのノンフィクション賞を受賞して、話題となっていた本書。今回の文庫本の発売にあたり、半書下ろしの新章が追加され、完全版ともいえるものとなっている。試合は強いが集客に弱いことが、時代のフレーズになっていた、落合博満が監督だった頃のドラゴンズ。マスコミへの秘密主義と、一部の球団幹部とのギクシャクは当時も話題であり、記者の立場から「嫌われた」監督を追っている。先輩記者のフィルターを介して、ほぼ新人時代から落合監督と接しはじめた著者も、最初は懐疑的な立場でスタートする。しかし、直接の会話や、選手やスタッフの声なども聞き、印象は完全に変わり、好意的に、肯定的に落合監督を理解しようとする。主要な選手も、スタッフも、優...読書のよもやま(2024.11.11)
ぐぶぐぶつもるなみなみつもるすいげつはよるななまんはるかしましまつもるあくるはよあけぶぐぶぐうかぶみなみなうかぶすいげつはよぶななまんはるかあわあわうかぶあくぶはよあけ水月
「天文学者たちの江戸時代増補新版」嘉数次人(ちくま文庫)書籍で江戸時代の本を見かけて購入することが多い最近、文庫新刊で目に付いたので本書も購入してみて、読み終える。表題から、夜空に思いをはせる江戸時代の学者を想像するも、内容は主に暦(こよみ)のお話だった。江戸時代に行われた数度の改暦が、誰の手により、どのように行われたかを、残された文献などから追っている。渋川春海をはじめ、麻田剛立、高橋至時、間重富らを中心とした、西洋の知識の取入れが難しい時代の天文学者たち。日本史ビギナーな自分は、一人二人の名前を聞いたことだけはある、という程度なので、人物ものとして新鮮だった。意図的に入門的な、ライトな内容にしているので、本来、簡単とはいえないであろう改暦の深い知識は出てこない。自分のような数学アレルギーには喜ばしいこ...読書のよもやま(2024.11.04)
ほんの数駅の空中旅行街行くアトラクション乗り降りに揺れる車両予告に身構えてカーブただよう靴底の下の霧窓を拭けばゴッドレイあっという間に終着駅空中旅行さモノレール空中旅行さモノレール
「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている再生・日本製紙石巻工場」佐々涼子(早川書房)2011年3月11日の東日本大震災で、壊滅的な被害を受けた日本製紙石巻工場の再稼働までを辿ったルポルタージュ。稼働が長期間止まれば、書籍の流通に多大な影響を与える規模を誇る製紙工場は、被災から半年での再稼働を目指す。石巻工場はまともに津波に飲まれるも、被災時に工場にいた関係者は死者を出すことなく避難を遂げ、本書はその過程からはじまる。そして、関連会社を含めた社員へのインタヴューを中心に、被災の状況から再稼働までを丁寧に追っていく。ただの大きい製紙工場ではなく、地域のシンボルとしての石巻工場の復興は、地域の雇用だけでなく、精神面をも支え。工場には多くの死体もあり、社員は非現実的な現実のなか、できることを、できる限りこなしていく。...読書のよもやま(2024.10.28)
知らない内に捕われ距離を保ちながらも追突しそうに危うい群れのエキストラは主にまわり寄り沿う環の中ムーンレットまたたく間に消えて気づかれることない環の中ムーンレットMOON-LET
月に一度は、映画館で新作を。2024年の10月は、「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」(アメリカ)。アメリカのコミック「バットマン」シリーズの悪役である、ジョーカーを主人公にした実写映画の2作品目。本作とつながりのある前作「ジョーカー」は、2019年ということで、5年ぶりの新作となる。ツキイチ映画館で観ている気がするので、データを探すと、前作を「バットマン」オリジンであると感想を述べている。別に5年たっても、その評価は変わらないのだが、今作をどうかとみれば、もはや「バットマン」は影もないよう。そもそもバットマン素人であるし、前作の評価も個人の勝手なものだが、今作のジョーカーは、はたしてヴィラン(悪役)か。前作に引き続き、アメコミに思い入れがなければないほどに、この映画はただの社会系ヒューマンドラマだろう。なん...ツキイチ映画館(2024年10月)
今日か明日か曖昧な微睡みのa.m.3時半物音に増えるβ波に後悔の今日を振返りやがて訪れる明日と増えるΘ派a.m.4時今日か明日か曖昧な微睡みのa.m.3時半無音に増えるα波に希望の明日を夢見てやがて訪れる今日と増えるγ波a.m.4時a.m.3時半
「野の医者は笑う心の治療とは何か?」東畑開人(文春文庫)京都大学博士課程を修了した臨床心理士の著者が、沖縄の色々な民間ヒーリング(スピリチュアル)をめぐり、研究をする。ただし、確固たる心理のプロが、その立場から「あばく」ことを目的としているのではない。知りたいのは、心の治療とは何かであり、自分のいる側をもう一つの側から見て、精神治療とはなにかについて、考えている。そもそもの起点も、対象も、わりと行き当たりばったりに研究は進み、色々な野の医者にインタビューをする。そして、必要とあらば、研究者として治療、ヒーリングも受けて、手法と効果を分析し、位置付けていく。そこでは、拒絶もなく、批判もなく、つとめてフラットに有象無象の野の医者にあたり、あくまで研究の対象として接する。野の医者をはしごするほどにハマりもするが...読書のよもやま(2024.10.14)
お守りとして忍ばせるどこだったか手にした刃のない銀のナイフは胸元でぎこちなく重く切りつけるのはミライお揃いがらで和ませるその日うまれて施したおまじないのアクセは耳元でいつでも私語く結びつけるのはセカイTALISMA
「サバイバル家族」服部文祥(中公文庫)登山家である服部文祥さんの、登山ではなく、私生活の、家族の日常を記すエッセイ。書籍にするに耐えうる程度に、服部文祥を軸とする服部家は、現代日本の多数の、一般的な生活ではない。無論、(常に構成員の総意かはさておき)少なくとも著者は、そうした家族を意図的に目指してもいない。かつての人間の生活様式をサバイバルというかどうかは、さまざま意見の分かれるところではあるだろう。とはいえ、本書にある生活環境から人間以外の自然と生物を排除しない、共生するという生活が、現代の都会の標準でないことも確か。しかも、そうした生活環境で、結果的に致命的なこともなく、3人の子供が成長していく様子がわかる。不便がないわけではないし、わりと困りごとも多いのだけれど、かといって過剰に利便性を追求すること...読書のよもやま(2023.12.18)
聞きあきた小話をフルリピートしてはてはこれまでと連日を塞きとめる染みついた小話をテンプレートにていまはいつまでと残日を噛みしめる聞きあきた小話をいまは聞きたくてテンプレート
月に一度は、映画館で新作を。2023年の12月は、「ナポレオン」(アメリカ/イギリス)。予告編が面白そうだったことと、映画「ジョーカー」の主演のホアキン・フェニックスに引きずられてチョイス。フランス皇帝ナポレオンの台頭から、(命という意味の)最後までを完全にナポレオンを軸に追うというストーリー。さて、まず最初にお断りすると、素人の自分には本作で良かったという点が見当たらなかったため、以下、偉そうに不満を述べる。とりあえず、主役のナポレオン(とついでに脇役たちももれなく)に致命的に魅力がない。おそらく、近年というか、現代流行の人間らしさ、人間クサさのようなものを狙ったのだろうけれど、結果、単に魅力がない。ジョーカーの時は、真逆に魅力しかなかったのだから、やはり作品が俳優さんを生かしも殺しもするということを、...ツキイチ映画館(2023年12月)
なみだのはじまりがなまみのからだへのいたみにあるのならさよならのなみだはあしたのかなしみをこころがしったときはじめてこぼれおちはじまりはおそらくしではなくたびだちいきるためのなみだなみだのはじまり
「トヨタ物語」野地秩嘉(新潮文庫)この齢(中年)になると、青年期のように読んでいない著書を見つけ、そこまでわくわくするというような著者は少ない。そんな中で、本書の著者である野地さんについては、本屋で未読のものを見つけると、おっ、となる著者の一人である。ノンフィクションであることに間違いはないが、著者の作品のジャンルは、とても良質なルポルタージュだと思っている。ストーリーのある物語というよりは、事象に対する人物を書いており、とても魅力的にそれぞれの人物を描写する。本書は、トヨタ生産方式という、言葉は多くの人が聞いたことがあるだろうが、その実はなんぞやということに軸を置いている。そして、その実態を説明しつつ、トヨタという会社が、トヨタ生産方式とともにどう成長したかを、人物から追う。誰が、どうしたかを単に記すの...読書のよもやま(2023.12.04)
涼けさ求めて水辺を歩けばしろむく小輪の浮かぶるに迷いものかと見渡しみればさくや此はな底より出づる目を奪はれて指ふれみよと近づけばこそ溺れしづむに命を惜しみわが身は握るとつぼむ彼はな波よせ消ゆるTetragona
月に一度は、映画館で新作を。2023年の11月は、「首」(日本)。北野武が監督する映画をすべては観ていないが、アウトレイジは面白かったので、同系統かなということでチョイス。事前知識はいつも通り、映画館予告のみだったが、鑑賞後に調べると、意図も戦国版アウトレイジで正解だったよう。日本は戦国時代、1578年の織田信長に対する荒木村重の反乱から、本能寺の変を経て羽柴秀吉と明智光秀の山崎の戦いまでの話。世界観はしっかり構築されているが、いわゆる没入型ではなく、一歩引いた視点で人間をシニカルにコミカルに見せる。どの作品にしろ、北野武が監督をしている映画を複数見ている人は、例え監督名を伏せられても、すぐに監督がわかるだろう。それくらい、過去の作品のつくり方、展開がそこかしこに見えて、良い意味で北野武の映画という期待を...ツキイチ映画館(2023年11月)
檻中を往復する炎色熊猫爪とぎさえルーティーン大陸を往復する敏腕社長献立表さえルーティーン街中を徘徊する痴呆老人道すじさえフリールート内陸を徘徊する双峰駱駝全方位さえフリールート炎色熊猫
対戦型格闘ゲームである、ストリートファイター6が発売されてから、来週末で6か月が経過する。対戦型格闘ゲームをプレイしたことがない、新しいプレイヤー層を取り込むため、複数の操作方法をつくった本作。順調な滑り出しとなった当初以降、今も動画サイトで多くプレイされ、大会の数も確保ができているよう。その大会も、これまでのようにプロ向けの、将棋に近いようなもののみではなく、カジュアル系も多く、視聴者も確保できている。どのような大会にせよ、個人に近い大会は、よほどでない限り見る人を確保できないから、どうしても企業、団体の力がいる。そして、そうした後ろを確保したとて、結局はプレイヤーがいなければ意味がない。さらに、そのプレイヤーは、それなりに対戦型格闘ゲームができる、見るに堪えるインフルエンサーでなければならない。とりあ...スト6(発売6か月)
すばやくはしるおよぐできるからってしないのっそりとあわてずにうごかずときがくればおおきなくちでがぶりろーるろーるろーるであとはほらまるのみさたべればまたじいっとあんぐりひなたぼっこのんびりとわになってありげーた
「旅のつばくろ」沢木耕太郎(新潮文庫)一つのテーマによらず、著者の過去に繋がる国内の場所を時を経て再訪したり、はじめて訪れたりというもの。あとがきによると、新幹線車内サービス誌に掲載のようで、一つ一つを短めに、連続ものもあるが、一つでも読めるようにされている。沢木耕太郎さんのノンフィクションやエッセイ系は割とたくさん読んでいる、いわゆるファンである。それを免罪符に偉そうに言うと、こういう一般的な、一貫したテーマのない、普通の旅エッセイは珍しいのでは。本書では、これまであまり語られてはいない(と思う)、著者の16歳の東北の旅の記憶がよく出てくる。そもそも、沢木耕太郎さんはテーマを明確に、ブレなく一貫してノンフィクションの姿勢を貫く作家である。そう言うと、何を馬鹿な、深夜特急が著者の旅そのものではないかと言わ...読書のよもやま(2023.11.13)
いつだって小さいから当たり前に背伸びして同級生には当たり前もあれこれと山勘しては見当外れに笑いもされ当たり前には遠いままいつだって当たり前に精一杯に背伸びをする背伸び
先月、10月11日に若干21歳の若さで将棋の8大タイトルのすべてを所持することとなった、藤井聡太8冠。今年53歳の羽生善治9段が当時のすべてのタイトルを所持し7冠となったのは、25歳の時。将棋のプロタイトルの全てがはじめて一人の棋士に集まってから、2度目の独占まで27年がかかったということになる。それなりに人口のいる競技の、エリート中のエリートが競うタイトルなので、複数所持ですら容易ではないことは理解している。一方で、2度起きている独占という事態は、絶対的な強さがあれば、常に可能であることも表している。そこで頭を阿呆にして、歴史も考慮せず考えてみれば、相手の行為はさておき、将棋は自らの行為に、運は影響しない。そんなに単純な話ではないということは強調するが、行為について運が悪かったというような結果がないこと...藤井聡太8冠
日曜日の30分アニメを胡坐で食パンかじり見るぼさぼさ頭の164cm堂々と胸を張って歓声と応援に応える影を残して穏やか顔でねだる2枚目一晩前と確かに変わらず一晩前と確かに変わったそこはかとない160g160g
月に一度は、映画館で新作を。2023年の10月は、「ザ・クリエイター/創造者」(アメリカ)。オペレーション・フォーチュンやドミノも鑑賞候補に上がったが、ハリウッドから逃げてはダメだと本作をチョイス。ストーリーは、AI撲滅アメリカとAI共存アジアが戦争の中、アジアにパートナーがいるアメリカ軍人が愛をテーマにどうこう。はじまりはアメリカ視点で、ムービーを挟みミッションを一つ一つクリアしていくゲームのような感じで、コテコテサクサク。中盤から後半は、アジアで出会った物語の鍵となるAIと、パートナーを探しつつ、アメリカの大型兵器を止める目標もあわさり。ニューアジアと表現される舞台は、インド、カンボジアあたりをイメージした、これまたテンプレートなアジア。マーケティングなのか、流行なのか知らないが、最近とみに多い舞台な...ツキイチ映画館(2023年10月)
朝から日差しは強く影はとうに過ぎ去り西に西に冒険は進み大切な楽譜を見つけ鍵盤を機嫌良く叩き連弾で速度を競えば荒々しい創生の子は高揚の青い海を追い光と音と銀河の長い月日を併せ星が満つCLASSIC-2023-
長距離党(好き)にとっての心のダービーである、菊花賞が開催された。今年の菊花賞は、久方ぶりに皐月賞と日本ダービーそれぞれの異なる勝者が参戦する、素敵なレースとなった。結果は、皐月賞の勝者が3着、日本ダービーの勝者が2着となり、3冠初参戦のいわゆる夏の上がり馬が2頭を押さえて見事勝者に。しかし、上がり馬とはいえ、ラスト1冠を制したドゥレッツァは人気も4番人気であり、レースぶりも堂々、実力での勝利のよう。もちろん、クラシック3冠は偉業であるし、求めるべき目標の一つであるが、個人的には、この3冠を分けあう年が好きだったりする。しかも、どれかで一か八かのような、明らかな穴馬が勝つのではなく、実力馬による分け合いが、である。2頭で分けあって、その後もライバル関係を翌年に持ち越すような贅沢を超えて、それが3頭ともなれ...心のダービー、菊花賞(2023)
穢れを知らぬ秋の日に赤々と咲いた彼岸花が過去のない今日に現れ待つ人に数輪を摘めば畔からの説法が聞こえ不意つかれ手を放した後ろめたさから足早に祓うように手を叩いて物言わず道に横たわる名前を知らぬ花を思い物言わず背抱きしめるRed-flower
「日本医家伝」吉村昭(中公文庫)裏表紙から一部引用すると、江戸中期から明治初期に現れた、日本近代医学の先駆者たち十二人の苦闘の生涯を描くという本作。十二人は、掲載順に山脇東洋、前野良沢、伊東玄朴、土生玄碩、稲本いね、中川五郎治、笠原良策、松本良順、相良知安、荻野ぎん、高木兼寛、秦佐八郎で、一人あたりは20頁から30頁くらいと短めになっている。医家伝とあるが、純粋な伝記ではなく、事実や資料を基にした小説モノとなっており、気軽に読むことができる。小説ならではの入りの引き込みに続き、相当に凝縮された展開がページを進める手を早め、あっという間に読み終えてしまった。浅学であり、著者の作品もはじめてで、十二人も知らない人物ばかりで、読書中の気分は小中学生の頃のようで。江戸中期から明治初期となれば、日本が西洋の医学に触...読書のよもやま(2023.10.16)