※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
つくしは怪我を負わせた人の家と思われるマンションの前でタクシーを降りた。もちろんタクシー代はつくしが支払った。「大丈夫ですか? 歩けますか?」「すみません。 なんとか、、、」男性は松葉杖をつきながらゆっくりとタクシーから降りる。「ここです。 ご親切にどうもありがとうございます。 もう大丈夫ですので。」「じゃあ自宅前まで送ります。」つくしはマンションの中に入ると先にエレベーターの前へ行き、ボタンを押...
類はテストの後、親友達とレストランへ向かった。「牧野は?」「今日は友達とランチ。 一限で終わりだったから、その後ブラブラしてくるってさ。」「まあ気分転換も必要だよなぁ。」「ん。 父親の事件があってテスト勉強に明け暮れる事で気分を紛らわせていたけど、やっぱり気もそぞろって感じだったから。」「でもお前が傍に居たからマシだろうな。 お爺さんもお前を頼ったしな。」「ん。 それには感謝してる。」普通なら東条...
テスト最終日つくしは一限目のテストが終わると真木子と共に学校を出て渋谷へ向かった。そして雑貨店などを見て回りパスタ店へ入った。二人は注文を終えると早速今回の経緯を話し始める。「、、、って事みたい。 まだ祖父からは詳しい話は聞けてないけどね。」「と言う事は花沢さんからの情報って事ね?」「そう。 類は美作さんから聞いたみたい。」「それで、、、つくしは大丈夫?いくら縁を切っているとはいえ実の父親が犯罪を...
期末テスト5日間。その間、花沢邸で夜遅くまで勉強し翌日の試験に臨んでいた。類も同じように試験勉強をする。そんな中、類がポツリと呟いた。「牧野晴男は罪を認め始めたらしい。」「そっか。」つくしの視線は教科書に向けられたままだ。「横領に関しては東条側も証拠を固めて提示していたし、未成年淫行に関しても相手の証言もあるからね。それにスマホに写真や動画が残されていたから言い逃れも出来ない。」「まさか、、、父が...
晴男は警察署で必死に訴えていた。だが横領と高校生に手を出していた事は素直に認める。証拠が残っており逃げられない為だ。だが、自分だけが悪い訳では無い。現に春香があのバーを紹介しなければ、、そうだ! 春香も翔とやっていたじゃないか!「確かに私は翔君を気に入り彼を待ち伏せして関係を持ちました。でも翔君は元々体を売る仕事をしていたんです。 初めはそこで知り合ったんです。」「そこ、、と言うのは、牧野さんが話...
愛子は急いで自宅へ帰る。するとそこには数人の警察官が、部屋の中を物色している。そして必要と思った物は箱に入れている。そこには呆然とした母と進が居た。「ママ! どういう事?」「あぁ、愛子。」母親は愛子を抱きしめ震える声で話す。「パパが高校生の男の子を脅して性行為をしていたそうなの。」「高校生の男の子?」愛子は信じられない気持ちだ。「パパのスマホにその男の子の写真が沢山入っていたそうなの。それに会社の...
類とつくしは花沢の車に乗り込むと直ぐに東条ホールディングスに向け走り始めた。その間に類はスマホで何が起こっているのか調べ始める。類自身、テスト中で電源を切っていた為ハッキリとしたことが分かっていなかった。するとつくしのスマホが鳴り始めた。表示を見ると祖父からだ。「おじいちゃん! 大丈夫? 何があったの?」『あぁ、大丈夫だ。 夕方には記者会見をするが、とりあえずしばらく私も会社に行くからお前は類君の...
「そうかしら? でも花沢としては、あなたは相応しくないでしょう?なぜなら、、、あなたは愛子さんの父親の愛人の子供なんでしょう?」自信たっぷりに口角をあげながら告げる静の表情は、つくしを蔑んだ物だ。その表情が本当にしずにそっくりでまるでデジャブを見ているようだ。そして類が何故惹かれなかったか分かった。プライドが高く自分が望めば誰もが喜び傅くと思い込んでいる。愛人の話も愛子さんから聞いた物だろうが、他...
翌朝、愛子はテスト後のつくしの対応が楽しみでニコニコしながら朝食を食べていた。「そんなに笑っているという事はテストで良い成績が残せるという事ね?」「そんなに顔に出ていた? テストは出来るだけ頑張るわ。 それよりパパは?」「帰ってきていないの。 きっと急な残業や接待で近くのホテルにでも泊まったのよ。」「ふ~~ん。」突然の外泊は昔からよくある事。特に心配することも無く愛子は食べ終えると直ぐに身支度をし...
晴男はバーの裏口近くで翔が来るのを待っていた。そして翔の姿を見つけると直ぐに近寄り耳元に囁く。「そろそろおじさんだけの翔君になってくれないかな?」「いや、、です。 そろそろ解放してください。」翔は俯き拒否を示す。あれだけ回数を熟しても初々しい言葉や行動が晴男の庇護欲と独占欲を掻き立てる。「お金が欲しいんだろ? おじさんなら短時間で稼げると分かってると思うんだけどなぁ。」「でも、、僕は、、、」「おじ...
7月初旬。静がサマーバケーションの為、日本へ帰国した。そしてすぐに類の事を報告してくれた友達に連絡を入れカフェで落ち合う事になった。そこには友達と共に三人の英徳の生徒もいた。そして静が姿を現すと直ぐに立ち上がりお辞儀をした。「おかけになって。」「「「はい。」」」生徒の中には愛子もいた。まずは静の友達が話し始めた。「静さん、お久しぶりです。 フランスの大学はどうですか?」「言葉が違うし接し方もまるで...
※後半少しRがあります。 注意書きを入れましたので自己判断でお願いします。GWが終わり、類とつくしは変わらぬ日々を過ごしていた。昼休みには類が迎えに来て、真木子も共にラウンジで一緒にランチを取る。真木子は初めは緊張し遠慮していた物の、一人残ってアレコレ聞かれるよりも楽だと判断し、誘われれば素直について行くようになった。つくしと類は放課後決まって非常階段へ足を運んだ。それぞれの階から非常階段へ行き、どち...
GW前に麗はフランスへ帰った。類に「学生らしいお付き合いを」つくしには「是非夏休みにはフランスへ遊びに来てちょうだい」と念を押して。そしてGWに突入し、つくしは去年と同じように神奈川へ向かった。ただ今年は祖父は西門祖父と西門の車で、つくしはF4と道明寺の車で向かった。つくしが三浦半島先端の寺巡りを計画している事を聞いた祖父が、それなら去年と同様GWに友人達とゴルフへ行くことを言い出し、その周辺のホテルに泊...
花沢邸予定していた寺巡りだが雨の為延期することになり、つくしは花沢邸で類と共に下調べをする事にしたのだが、、、「へぇ。 こんな所にもお寺があるのね。 ここも北条系のお寺なの?」「はい。 調べたところ北条系のようです。」「大変な作業ね。 北条系のお寺は全て制覇、それ以外にも古くからあるお寺には行っているのね。」「はい。 小田原城は北条家が城主だったので、小田原城と同盟を組んでいれば亡骸は北条所縁の寺...
西門邸での茶道稽古日。何時もなら授業終了後30分程待ってから駐車場へ向かっていたが今日からは違う。「牧野。 帰ろうか?」「うん。」類がつくしの教室へ迎えに来ると一斉に女生徒が奇声を発する。「じゃあまた明日ね、真木子ちゃん。」「うん。 また明日。」つくしが真木子に挨拶をすると類も真木子に軽くお辞儀する。そしてつくしが軽く手を振ると、類と共に教室を後にした。もう一つの手はしっかりと繋がれている。恋人宣...
フランス静は眩しさのあまりけだるい体を起こすと隣を見る。そこには眉目秀麗なフランス人男性が幸せそうに眠っている。その男性を起こさないようにスマホを見ると、そこにはに英徳大学に通っている友達から連絡が入っていた。かなり久しぶりだが何気なく表示させ内容を見ると、一気に頭が冴えた。《 お久しぶり。 お元気かしら?ところで花沢さんが一学年下の女子生徒と交際宣言をしたらしいの。確か静さんからは花沢さんの許嫁...
翌日、つくしが教室に顔を見せると、愛子と百合子他数名の女子生徒に囲まれた。「牧野さん! あなた花沢さんとお付き合いをされているの?」「えっ?」百合子は一歩前へ出る。「春休みに見たのよ。 あなたと花沢さんが○○レストランから出てくるところを。」そのレストランの名前に覚えがあるし、特に変装をしているわけではない為、誰かに見られていても不思議ではない。と言うより今まで誰にも見られなかった方が不思議なくらい...
英徳高校の入学式には、祖父と共に出席した。そこにはつくしの姿をチラチラと見る女子生徒がいるが、それをすべて無視する。どうせ愛人の子供なのに、まだ英徳に通うつもりなのか?という考えだろうと思っている。つくしは会場を見渡し真木子の姿を探す。真木子は母親と来ているようで、真木子もつくしを見つけると大きく手を振って近寄ってくれた。「つくしちゃん。」「真木子ちゃん。 これからもよろしくね。」「こちらこそ。 ...
無事麗を追い出した類は、再びつくしの前に座る。「ごめんな。 突然母親が来て。」「ううん。 確かフランスにいるんだっけ?」「そう。 ずっと帰ってこなかったのに突然帰ってきた。」「と言う事は何も聞かされていなかった?」「ん。 何時もは前もって連絡が来るんだけど、きっと俺に彼女が出来たから驚かそうと思ったんじゃない?しかも今日に限って俺の家で打ち合わせをしていたんだから偶然って恐ろしいな。」「ふふっ、確...
晴れてカレカノになった類とつくし。だが何も変わったことは無い。春休みは二人の時間が許す限り一緒に過ごす。これは普段の休日と至って同じ。互いの家へ行き、城と寺をピックアップする。これも普段の休日と変わりはない。ただ大きな地図のバツ印が増えていくだけだ。「三浦半島まで行く?」「先端まではいかなくても良いと思うんだけど?」「たぶんだけど蒔乃が住んでいた城はこの辺りまでだと思うんだ。」「うん。 楓弥様と初...
東条の会議室に、美作社長と秘書の春香、東条社長と秘書の晴男が向き合っていた。そこでアルコールの販売会議が行われている。東条が取り扱っている希少なウイスキーを美作が一部優先的に購入するという物だ。希少と言うだけありなかなか市場には出てこない品で、今まではメープルが独占していた。そこに美作も目を付けた形だ。「私どもはレストランを経営していまして、そこで是非幻のウイスキーを置きたいと思っています。」「ご...
三学期も終わり春休みとなった。類とつくしは順調に寺や城巡りをしている。既に二人の中には墓石はないと思っている。それでもこの地のどこかに楓弥と蒔乃が眠っていることは確かで、最後まで巡り手を合わせるつもりだ。もちろん道すがらのお地蔵さまにも手を合わせている。今日予定していた場所を巡り終えた二人は、花沢の車に乗り込み帰路へ着く。都内に入ったところで夕食を食べるために二人は車から降りた。そして手を繋いでレ...
もうすぐホワイトデーという週末、つくしは四人と共に栃木へと来ていた。「栃木?」「そう。 バレンタインに美味しいチョコを貰ったからそのお返し。」「栃木で?」「そう。 牧野が一番好きな物を渡そうと思って。」「栃木に?」「ん。」つくしの頭は何が何やらという感じだ。栃木に自分が好きな物があるとは思えない。というより栃木に来るのは初めてだ。「お前、栃木に拘り過ぎなんだよ。」「たまたまそれが栃木にあったと考え...
三学期が始まった。つくしは久しぶりに真木子に会い、箱根土産のお菓子を渡す。「「あけましておめでとう。」」「楽しかった?」「うん。 凄く楽しい年末年始だった。」真木子はつくしが満面の笑みを見せているのを見てホッとする。そして真木子も笑顔でお礼を告げる。「お土産ありがとう。 それと終業式後のランチもありがとう。驚いたけど、、、あの人たちって見る目があるなぁと思った。悪いけど、改めてお礼を伝えておいてね...
バリ島牧野一家はオプション観光に参加していた。そこにはツアー客も多く参加している。有名な観光地であり是非見ておきたい場所だからだろう。晴男の視線の先にはパワースポットと知られるゴアガジャという古代遺跡の建物がある。象の口を模した彫り物の入り口から洞窟内に入るようだ。入り口は狭く一列になる。晴男の前には美作秘書がいる。秘書はタンクトップのような物にシャツを羽織り短パンにスニーカーというラフな格好だ。...
30日に箱根に向かった。新宿から箱根ロマンスカーで75分で着くのだが、これを選んだのは祖父だ。「西門さんから一度は乗っておくべきだと言われてな。」確かに窓が広く景色が良く見えた。75分とあっという間だ。そこから箱根登山鉄道に乗り換え約15分程でホテル最寄り駅に到着し、まずはチェックインをする事に。その後は近くにある箱根彫刻の森美術館へ向かった。展示物はもちろんの事、外にも沢山のアートがある。つくしは案内...
伯父の家に車が到着した。「ありがとう。」「どういたしまして。 じゃあ気を付けて箱根に行っておいで。」「うん。」「それと家族と一緒の時は楓弥と蒔乃事は忘れて楽しみな。」「分かった。」「あっ、家の中までこの袋を持っていくよ。 重いだろ?」こうして二人は車を降りて伯父の家へ。「ただいま~~。」「「お帰り~~~。」」家の中から美樹の声が聞こえバタバタと玄関へ出てくる。そこには伯父の妻と息子の姿もあった。つ...
司の家では、F4とつくしがゲームに興じていた。四人で競うのだが、5勝したら抜けご褒美のケーキを一つ食べることが出来る。その空いた場所に新たな人が入りチャレンジしている。F4は褒美のケーキを食べたくなくて手を抜こうとしていたのだが、勝負となると本気で挑んでしまう。しかも単純なゲーム過ぎて加減が難しい。そして勝つと本気で嬉しくガッツポーズをしたり雄たけびを上げたりと我を忘れて挑んでいた。その為、類と総二郎...
クリスマスイブつくしは祖父や伯父達と楽しいひと時を過ごしていた。去年までは祖父と二人だけだった為、かなり賑やかな物に感じる。そしてつくしには沢山のプレゼントを貰った。祖父からはバッグ、叔父夫婦からは腕時計、従兄からは財布、そして美樹からは口紅だ。「お姉ちゃんにはブルゾンを買ってもらったのに、、、」「それは今までのクリスマスプレゼントとして、そしてこれが今年のプレゼント。高校生になるんだしそろそろお...
レストランにはクリスマス限定ランチがあり、二人はそれを頼む。そして料理を食べながらF4の話を続ける。「道明寺司君と西門君はおじい様の伝手で知り合ったらしいけど、学校では大変なんじゃない?それこそ虐められてない?」「知り合いだと言う事は黙ってもらっています。 西門さんには茶道の稽古をつけて貰っているんですけど、下校時間30分後ぐらいに駐車場で拾ってもらってます。もちろん中等部には来ないように伝えていま...
つくしと祖父は23日から伯父の家で過ごしている。その間、つくしは伯父の娘である美樹の部屋で寝泊まりをする。従姉に当たる美樹は23歳で英徳大学を卒業後、東条ホールディングスに勤めている。「つくしちゃん。学校は楽しい?」「まあまあかな。」つくしは苦笑いで告げる。それを美樹は察する。「英徳は少し変わってるかもね。 それなりの企業のご子息が通う学校だからね。でも将来役に立つものが学べるのよ。 社交ダンスと...
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※こちらの作品はおちゃめママ様へ献上した作品となります。つくしは苺を洗うとヘタを取り一口大に切る。そして数個の苺は更に小さく切りお子様スプーンも添え皆の待つリビングへ向かった。そこには今か今かと苺の到着を待っている娘の愛がいる。愛は類とつくしの長女で3歳になる。「お待たせ。」「ママ!あたちが恭にあげる。」「分かった。」「ちょっと待って。恭を座らせるから。」恭とは類とつくしの長男で1歳だ。最近すっかり...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございました。類君とつくしちゃんを幸せにするお話を、、、と思い、書き始めて約12年になります。まさかこれほど続くとは思いませんでした。皆様の温かなコメントに支えながら何とかやってきたのですが、今は全く妄想が浮かびません。沢山の作品が生まれネタが尽きました。もちろん12年という月日は老いていく事にも繋がり、ここ数年は浮かんだ妄想がなかなか文字として書けなくて(...
一年後の夏。陽向も心陽も、しっかりと歩くようになっていた。最近は10か月ごろから歩く子供もいるというが、未熟児で生まれ3か月も保育器に入っていた為、そこを0か月として発育状況を見るらしく成長に問題はなさそうだ。「順調だね。」「ん。 首も秋ごろには座ったし、そこからすぐに寝がえりを始め、気づいたらズリズリと動き出し、ハイハイを初めてつかまり立ち?」「誕生日を迎えた頃にはしっかりつかまり立ちが出来てた...
4月になり、つくしは入院することにした。というのもこれから何があるか分からないため、万が一の時はすぐ対応できるようにだ。それに28週を過ぎた為、運動は極力避けた方が良いと言われた事も有り、家でジッとしているなら入院した方が安心という事になった。もちろん日中は麗が、仕事終わりに類が毎日来る。「どう? 変わりはない?」「うん。 元気すぎてお腹の中で暴れ回ってる。 二人がそれぞれ動くからお腹が張り裂けそ...
シリウスの元にデイジー村のギルド長から手紙が届いた。 定期的にリチャードに関する報告を貰っている。再びリチャードを王位に据えようとする貴族が接触していないか、本人にその意志がみられないか、リチャードが困っていることは無いかといった物だ。だがシリウスの思惑に反し兄はリカルドとして不便な生活を受け入れ、平民として働いている。せめて少しでも生活がしやすいようにと、魔道具の普及も急いだ。半年ほど前には村娘...
三日後、メアリーから電話があった。予想通り、あの世界へ戻るという返事だった。その為、週末に類と共にアレッタの店へ向かった。「お忙しい中、すみません。」「いいえ。」「いろいろ考えたのですが、アレッタさんにメアリーの姿を見せたくて戻る事を決断しました。」「ご主人はもうこの世界に戻れなくなりますが、それで良いんですね?」「はい。 私はメアリーと共にあの世界に骨を埋めます。 それとお言葉に甘えてこの店と自...
週末、類とつくしは子供服売り場へ向かった。小さな服はとても可愛いが、今はまだどちらが生まれるか分からない。その為、産着のみを数着買った。「男の子二人とか女の子二人なら、お揃いの服も良いな。」「形は同じで色違いとかも良いね。」「男女の双子でも一歳ぐらいまではそれで良いんじゃない?」「うん。 でも可愛いね。」「だな。」それから少し早いがアレッタの店へ向かった。小さな店で看板には漢字とカタカナで『異国料...
翌、月曜日。類の元にあきらがやってきた。「あのよぉ。 牧野さんなんだが美作が経営しているレストランのアルバイトに24歳の牧野さんがいるんだ。 だが髪の毛は茶髪なんだが、髪の色ぐらい変わる物だし会ってみるか?」あの後も裾野を広げて調べてくれていた親友に、嬉しさと申し訳なさが同時に込み上げてくる。そして再会後、バタバタしすぎて親友に報告していなかったことに気づいた。「ごめん。 見つかったんだ。」「えっ...
土曜日、類とつくしは長崎へ向かった。つくしは結婚したい相手を連れて行くと電話で連絡していた。「初めまして。 花沢類と申します。 つくしさんとの結婚をお許しください。」類はつくしの両親を前にすぐに頭を下げる。両親は俳優のような容姿の類に驚きつつも、娘のつくしに自然に目が向かう。どう見ても出産間近だ。「えっと。 つくし? あなた妊娠してるの?」「うん。 順番が逆でごめん。」結婚したい人がいるから会って...
二人っきりになり、類は改めてつくしに向き合うとポケットから小袋を取り出す。異世界で肌身離さず身に着けてた小袋だ。その中身を取り出しながら話す。「無事こうして戻ってきたんだけど、服装はあの時のままだった。 ただ傷は一切なかった。 もちろん服には大きな穴が開いていたし血も付着していた。 そして小袋には魔法陣の消えた紙切れとドラゴンの鱗、シリウスから貰った銀のプレートが入ってた。 枕の下に敷いていた紙も...
佳代は類の声に急いで玄関へ向かう。しかも珍しく「ただいま」という声まで聞こえた。どういう心境の変化だろうか?という気持ちが湧く。すると玄関に類が女性と手を繋いでいる姿が目に飛び込む。類がこうして女性と手を繋いでいる姿を見るのが初めてで動揺が走るが、努めて冷静を装い出迎えた。「お帰りなさいませ。」「佳代。 こちら俺の妻。」「妻!!?」動揺を隠していたが『妻』という言葉に、冷静さを失い驚きの声が出てい...
レストランを出ると類はすぐに花沢の車を呼んだ。「ちょっと待ってて。 20分程で車が来るから。」「うん。 あっ、だったら私の職場に来てくれない?」「あんたどこで働いていたの?」「フリーペーパーの編集部。 と言っても来月号で廃刊で会社は倒産。 あたしは今日付で倒産に伴う解雇になったんだけどね。」(類:フリーペーパー編集部? 確かに俺達のどこにも関連がない会社だよな。 だから見つからなかったんだ。)「社長...
つくしは駅に隣接しているショッピングモールに入った。バレンタインが近づいているという事で、店内は至る所にバレンタインを意識したものとなっており、一部コーナーはチョコ売り場となっている。(つ:社長に最後にチョコを渡せば良かったなぁ。 妊娠が分かってからの社長は物凄く優しくていろいろな物を差し入れしてくれたし。 まあ私が辞めたら社長一人で紙面づくりをしないといけないからってところもあったんだろうけど、...
クリスマス。この日もつくしは仕事をしていた。社内には社長もいる。身重でありながらこのような日にも仕事をしているし、土曜日も出勤しているのを見て察しているがなかなか事情を聞けないでいる。「牧野。 そろそろ帰ったらどうだ?」「はい。 これが終われば帰ります。」「年末年始はどうするんだ?」「家に居ますよ。 実家は九州なので混み合う時期に移動は避けたいので。」「まあそうだよなぁ。 きちんと親には話している...
12月つくしは土曜日も出勤し紙面づくりを行っている。その代わり平日は18時ごろには帰るようにした。そして社長が何かと気を遣ってくれるようになった。取材帰りに果物やジュースなどを買って帰ってくる。「あまり食欲がないだろ? でも何か口に入れろよ。」「ありがとうございます。」街はいつの間にかクリスマス仕様になっている。(つ:類もどこかでこの雰囲気を味わっていると良いなぁ。)そう思いながら自宅へと急いだ。...
つくしは忙しい仕事の合間にコッソリ産婦人科へ行った。休日は無いし、サービス残業の日々なのだからこれぐらい許されるだろうという気持ちだ。検査薬で陽性反応が出ているため間違いは無いだろうが、出産予定日など今後の事を決めたかった。「おめでとうございます。 双子ですね。 8週目で三か月に入ったところです。 予定日は5月25日ごろですね。」「双子?」まさか双子とは思わなかったつくしは、呆けた顔で確認した。その...
類は、ハッと目を開け飛び起きると腹を押さえる。だが、、、血は出ていない。痛みもない。どういう事?そう思いながら周囲を見渡す。「俺の部屋?」自分のベッドの上だ。しかも一人だ。「牧野? 牧野は?」周囲を見るがつくしの姿はない。「夢?」そう思いながらベッドから起き上がり自分の服を見る。それは乗合馬車に乗った時の服で、切られた箇所には穴が開き血が付着している。靴も履いている。だが、、腹に傷はない。もちろん...
それは一瞬の出来事だった。馬上の騎士達、そして乗合馬車から降りた男も崖を覗き込む。確かに二人が落ちていく姿が確認できたが、突然まばゆい光が現れ目を閉じた為、二人の行方が分からなくなった。「まさか、飛び降りるとは。」「聖女様はどうします? 森へ入りますか?」「いや。 この高さから落ちたら生きてはいないだろう。 万が一、生きていたとしても魔物が住む森ではさすがの聖女様でもどうすることも出来ない。」「あ...
翌朝、宿の人にクルクマへ行く乗合馬車を確認しチェックアウトした。時間まで村を散策する。昨日の商人の店の前に来た時に、たまたま店内に居た商人が二人を見て店から出てきた。「今から行かれるんですか?」「はい。」「この先の山を越えるんですけど、片側は断崖絶壁なんですが景色は凄く良いですよ。 半日はかかりますが、途中トイレ休憩しかないので何か食べる物を持っていかれた方が、、、あっ、是非このピーアを持って行っ...
類とつくしは王都内のギルド商会を訊ねた。類の姿を見たギルド商会長は直ぐに奥の部屋へ二人を通す。「いやぁ。 この方がマキノ殿かぁ。 本当に連れ出せたんだなぁ。」「その節はお世話になりました。 こうして無事、妻を連れ出すことが出来ました。」「いやぁ。 それにしても話に聞いてはいたが、こんなに綺麗な女性とは。 画家を呼んで姿絵を一枚作らせたいほどですよ。」「困りますね。 たとえ姿絵だとしても妻は俺だけの...
その夜、あきらと総二郎から電話があり報告は1月5日の初出の後でとなった。初出は忙しいと拒んだが二人が納得するはずもなく、類はこの経緯をどこまで話すべきか悩み数日を過ごした。まずは父親に牧野つくしという人物の事を確認してからだと思いながら。そして1月5日を迎えた。類は少し早めに出社し社長室へ向かった。すると父親に満面の笑みで迎えられた。「さっそく報告に来てくれたのか?」「そんなに良い報告ではないのです...
運転手は類が女性を伴い乗り込んだことに内心ビックリした。だが表情には出さずそのまま類の自宅へと車を発進させる。そうしながらも後ろの二人の会話を漏らさぬよう聞いていた。「一応東京都だけど周囲を山に囲まれてる場所だけど。」「はい。」揺るがないな。「駅まで徒歩30分だけど。」「自転車に乗れるので大丈夫です。」お嬢様が自転車で駅まで?「車は?」「免許はあるんですけど車は持ってないです。」免許は持っているんだ...
類は過去の失恋により恋愛が恐くなり、それを見かねた父親が見合いの席を用意したと判断する。「恋愛に否定的って事?失恋したとか?」「いいえ。恋愛をした事がありません。ただ家庭を持ちたくないだけです。」「なんでそこまで?でも恋愛ではなく政略結婚させられるかもしれないけどそれで良いの?」「いえ。きっと政略結婚も無いと思います。今回は父の気まぐれだと思っていますから。」きまぐれ?俺との見合いが?そんなにハー...
つくしは診断書を手に取る。そこにはED(勃起障害)と書かれている。「大学を出てからこの状態。だから誰とも付き合っていないし付き合おうとも思わない。何も知らない父親は色んな女性との会食の場を設けてくれるけど、そもそもこんな体では結婚は出来ない。相手にも失礼だからね。だからこの話は、、、」「ずっと一人で悩まれていたんですか?」つくしは類の続く言葉を遮り尋ねる。これはすごく大変なことだ。確か御曹司はまだ2...
1月3日。つくしは11時20分にメープルへ到着した。そしてフランス料理店へと向かうと入り口のボーイに告げた。「花沢様で予約している者ですが。」「伺っております。こちらへどうぞ。」つくしは緊張しながら歩く。メープルは父親の仕事の関係で何度か訪れた事はあるがそのどれも会議室だった。その為、高級レストランに緊張している。というのもドレスコードがあるからだ。そこまで厳しい物ではないが女性はワンピースやスー...
あきらは初めて他人に自分の気持ちを打ち明け、照れた表情を見せながら話す。「母親のマナー教室へ通っている女性なんだけど、いつの間にか妹達と仲良くなっててさ。俺に色々聞かせるから一度見てみようかと教室を覗いた時に妹に紹介されたんだけど、俺に取り入ろうとはしないし自分をアピールもしねぇ。単なるお兄さんという扱いでさ。マナー教室は美作の名前は一切出していねぇし、そこのオーナーが美作商事の社長夫人とも書いて...
類とつくしの会食の日取りが決まった。それは年明けの1月3日だ。聡はすぐに類に社内電話をかける。『類。1月3日にメープルで会食をするように。』「この前、話していた人?」『そうだ。』やっぱり、、と類は思う。あの時は相手が断る可能性があると示唆していたが、やはり断る事は無かった。つまり相手の女性も会食の相手が俺だと聞いて乗り気になったんだろう。「食事をするだけで良いんだよな?」『もちろんその後に気が合うな...
聡は本村と別れた後、すぐに類の執務室へ向かった。「何?」「まだ日程は決まっていないが会食へ行ってもらうことになるからそのつもりで。」「また?」類はあからさまに嫌そうな顔を見せる。「もちろん会食の場すら断られる可能性もあるがな。」「断られる?」類にしてみれば考えられない事だ。花沢物産御曹司との会食を断る女性がいるとは思えない。何時も俺が嫌がっているからそう言えば乗り気になると考えているとしたらお粗末...
12月末。花沢物産本社ビルに政治家の本村が秘書二人を引き連れやってきた。そして会議室で社長の聡と面会した。「こんにちは。いつもお世話になっています。」「こちらこそお世話になっています。」二人は固い握手を交わす。「今回の選挙も無事当選できました。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。」「いえ、こちらは大したことはしておりません。」二人はどっしりとソファーに腰を下ろす。「かねてより伺っていました道路拡張工事...
結婚式類は緊張の面持ちでつくしが入ってくるのを待っていた。参列席には類とつくしの家族その後ろにあきら、総二郎、桜子夫妻、滋が座っている。するとドアがバンッと開き、司が入ってきた。皆はつくしが入ってくると思っていた為、驚く。「お前なぁ。来るならもう少し早く来いよ。」「悪りぃ。さっき着いたばかりで、これでも車を飛ばしてきたんだぜ。」「こっち来いよ。」あきらと総二郎は司を自分たちの真ん中に座らせると、類...
類とつくしは結婚式の為、東京へ向かった。そして挙式前日には、花沢家の好意でつくしは家族水入らずでホテルで一泊することになった。久しぶりの再会に、つくしは晴男、千恵子、そして進と順にハグをする。「つくし、おめでとう。」「元気そうで良かったわ。」「まさか姉ちゃんが花沢さんと結婚するとは思わなかった。」「それはあたし自身が思ってること。人生何があるか分からないね。」三人はつくしが一段と綺麗になり笑顔でい...
夕食は楽しい物となった。久しぶりの豪華なディナーにつくしは舌鼓を打つ。「美味しい。それにやっと生野菜が食べられます。」「そういえば向こうでの食事はどういう物だったの?」「ヤム芋を蒸した物を潰してマッシュポテトにしたり、おかずは缶詰が多かったです。でも類さんがカップ麺を持ってきてくれてそれはそれは凄く美味しくて。」「日本では塩分が高いとか良いイメージを持たれないカップ麺も、ナイジェリアでは貴重な物だ...
『今、幸せ?』の作品に沢山のコメントありがとうございました。期間が短く最後まで読めなかった方からもう一度公開を望む声がありました。また最後まで読まれた方からも、もう一度読み返したいというお声も多数ありました。一度きりの公開と決めていましたが少し考えますね。今日も石川県で大きな地震があり、何時どこで起きるか分からない状況。物価が上がり、食材も信じられない価格になり、今月から電気代も上がるとか。「やっ...
司と楓の会談から一週間後、キャサリンの陣痛が始まった。司は仕事中だったが急いで病院へ駆けつける。そこにはキャサリンの母親もいた。『そろそろですね。』『司さんも待ち遠しいでしょう?』『はい。どちらが生まれるか楽しみです。』司はドキドキしていた。子供が生まれる事でやっと白黒つけられると思っているからだ。《どちらが生まれるか楽しみ》というのは、自分の子供かそうでないかという意味で言っている。もちろん母親...
類は仕事を終えると直ぐつくしの病院へ向かった。コンコン『はい。』つくしの声が聞こえ類はそっとドアを開ける。「俺。」「いらっしゃい。仕事はどうだった?」「順調。社員もやる気満々で発売を待つばかり。」「何とか成功させたいね。」「是が非にでもね。」類は近くの椅子に座るとつくしの手を握る。「ご飯は食べた?」「うん。」「言葉はどう?」「全く分からない。医師は英語で話してくれる人もいるけど看護師はほとんどフラ...
翌日、類は会社へ向かった。ブラックソープの商品は既に完成している。それをどう販売するかの最終確認だ。一部は桜子の会社のパッケージで作り、それは既に日本へ送っている。販売方法はそれぞれ好きな方法で売り込む事になったが、発売日だけは合わせる事にした。『販売日は今日から二週間後。日本に送ったSAKURAKOと発売日は同じ。中の商品も全く同じ。パッケージだけが違う事は承知の通り。つまり、、負けるわけにはいかない。...
フランスに着き、救急車に乗って病院へ運ぶ。スムーズに移動が出来るのは両親が根回しをしてくれたおかげだ。その最中も、つくしはしきりに申し訳ないと謝っていた。だがどこかホッとした表情にも見える。それは類も同じだ。病院内の個室に運ばれ、簡単な検査が行われた後やっと二人っきりになった。「痛い所はない?」「大丈夫。痛み止めが点滴に入っているから。」「あんたの事だから中途半端で仕事を放りだしたとか思うなよ?あ...
我が家のブログにお越しいただきありがとうございます。以前少し連載しました『あんた、誰?』という作品ですが、似たような作品があると指摘を受け取り下げました。そこから指摘部分を修正していたのですが、このまま公開するのもどうかと悩んでいました。ですがこの作品に費やした時間があまりにも長く(修正も含め)、このまま埋もれさせるのもどうかと思い期間限定で公開させていただきます。全部で182話あります。期間は3...
オヨ州に着いた類は、その足で作業場へ向かう。そこには一生懸命働いているサニ達がいた。『あっ、類!恋人はどうなった?』『昨日は突然キャンセルしてごめん。牧野が勤務していた診療所が窃盗団に襲われ左肩と右脇腹を銃で撃たれたけどなんとか命は取り留めた。』『良かった。』サニ達はホッと安堵し喜び合う。『それで本当は後三日はここに居る予定だったんだけど、病院についていたんだ。だから俺は今日までとなる。何か聞いて...
類とアドが待つ廊下に、以前つくしの診療所で見た男性がやってきた。医薬品などを運び、ラゴスやアブジャの病院へ行くときには連れて行ってもらっていると言っていた男性だ。『牧野先生が撃たれたと聞いたんですが?』『はい。診療所が襲われ、この子供は腕を切られ、牧野は撃たれて手術中です。』男性は心配そうに手術中のドアを見る。『もしかして薬が原因ですか?』『そのようです。診療所はもぬけの殻でした。それとパソコンも...