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りおりお
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2017/11/17

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  • 32

    つくしの住むマンションに到着し、つくしは車から降りる。すると類も降りて来た。「俺もお爺さんに挨拶しておこうと思って。ついでに神奈川のお寺巡りを一緒にする事の了承も貰っておいた方が良いだろ?」「確かにそうですね。 ありがとうございます。本当は一人で行こうと思っていたんですけど、類さんがいてくれると心強いです。」「俺も。」こうしてつくしは類を伴いマンション内へ入った。そして玄関の鍵を開けると大きい声で...

  • 31

    つくしと類はジッと中庭を見る。苔の生えた石の上に光の筋が当たりキラキラしている。類は何度も見てきた庭だが、確かに魅了されても無理は無いと分かる。それにここの庭はなんとなく楓弥がいた時代を思い出させる。「あのさ。 あれから何か発見した事ある?」「まだその段階まで行っていないんです。小田原城は北条系なので北条系の城やお寺をピックアップしているんですけど、小さな城は載っていなくて。」小さな城、、、蒔乃と...

  • 30

    つくしは図書館へ通い続けている。日本史コーナーの本が借りられているのを見ては、もしかして類さんでは?と思いながら、まだ借りていない本を手に取った。今日は初めての茶道の稽古へ行く日の為、図書館でゆっくり出来ない。サッとその本を借りる手続きを済ませると駐車場へと向かった。つくしは電車通学の為、駐車場へ足を運ぶことは無い。初めて見る駐車場は遊園地並みに広かった。「広い、、、」思わず声に出すほど呆けてしま...

  • 29

    月曜日、、、総二郎は盛大に後悔していた。元気のない総二郎を見て、F3はすぐに土曜日に行われた先代の知り合いの孫の茶道に関して何かあったと分かる。司と類はあきらに視線を送り、あきらが代表して総二郎に声をかけた。「何かあったのか? もしかしてお前のお茶が不味いと言われたのか?」「いや、、、とりあえず美味しいとは言われたけど。」「けど?」「はぁ、、、」総二郎は深い溜息を吐いた後、ゆっくりと話し始めた。「...

  • 28

    つくしは手にしていたお椀を下に置くと、ゆっくりと後ろを向く。そこには見事な中庭が見える。苔の生えた灯篭を見ると何時からそこに置かれていたのか分からないほどだ。「見事な中庭ですね。」「まあな。」「近くで見ても良いですか?」「あぁ。」つくしはすぐに中庭へ近づき座って眺める。それを見て総二郎は自分のお茶は中庭に負けたと分かる。もちろん全然別物で比べられる物ではないのだが、それでも茶器を見るでもなく、お茶...

  • 27

    土曜日。つくしは祖父と共にお茶を頂きに出かけた。どこかの茶房だと思っていたつくしは、到着した家を見て驚く。茅葺屋根の門がありその奥に歴史ある家が見え隠れしている。ぐるりと木の塀で覆われた場所はかなりの広さの敷地だと分かる。「誰かの家? 凄く古風な家だけど。」「ここは茶道家の家なんだ。」「茶道家? 茶道を職業にしている人の家って事?」「そうだ。 西門流で古くからある名門だ。 ここでお茶を頂こうと思っ...

  • 26

    学校が始まり、つくしは定期的に図書館へ足を運んでいた。あれだけ混雑していた図書館も当初の人数に戻っていた。あれ以降、類を見かけなくなったからだろう。そんなある日の夜、祖父が話しかけてきた。「つくし。 今週の土曜日は空けておいてくれ。」「良いよ。 どこか行くの?」「あぁ。 つくしが喜ぶ場所だ。」「あたしが? どこだろ?」「美味しい抹茶が飲めるところだ。」「へぇ。 おじいちゃんが太鼓判を押すぐらいだか...

  • 25

    海岸の散歩を終えた類が別荘に戻ると直ぐに夕食となった。それを食べながらも三人はやはり今日のウインドサーフィンの話になる。「風もねぇのにジッとボードの上に立つのは難しいだろ?」「風があった方が難しいんじゃね?」「まあ明日の勝負はあきらと類で良い勝負なんじゃね?」「だろうな。」あきらは決して運動神経が悪い訳では無い。サーフィンもそうだが波が無いとボードの上には乗れない。それと同じ原理だろう。「まっ、俺...

  • 24

    円覚寺の後その周辺の寺を巡り16時には鎌倉のホテルまで送ってもらった。「今日はありがとうございました。」「いや。」「ではこれで失礼します。」「ん。」二人は連絡先も交換することなく分かれる。それは呆気ないほどに。同じ様に小田原攻めに関して調べているし今後も何か情報があれば教えて欲しい所だが、調べているのは北条家の事ではなく夢でみた楓弥と蒔乃の事だ。何か得られる物はないと互いに感じていた。それ以外に類...

  • 23

    東慶寺についた二人は早速中へ入る。「鎌倉はお寺とか一歩中に入るとタイムスリップしたような景色が広がっていますね。」「あぁ、それは俺も感じた。」二人は入り口から奥に続く景色を見て感嘆の息を吐く。奥へ進んでいくと山門があり茅葺の屋根だ。「昨日から訪れている場所も全て茅葺の屋根でした。」「趣があるし、ここを昔の人が訪れていたと思うと凄いよな。」「ここは戦国時代は尼寺だったんですが知っていますか?」「ん。...

  • 22

    つくしは鎌倉歴史文化博物館を出た後、近くにある北条雅子が祭られているという浄福寺へ向かった。小田原城は北条家の城だ。という事は楓弥と蒔乃も北条家ゆかりの墓に埋葬されていても不思議ではないと考えたからだ。そこは徒歩で行ける近さだ。そして墓を一つ一つ見て回る。かなりの年月が経っている為、お墓に苔が付いている物ばかり。北条雅子の墓は案内板のようなものが立っているが、他の墓には何一つ書かれていない。もちろ...

  • 21

    「じゃあ行ってくる。」「気を付けてね。」「本当に大丈夫か? ひとりで電車に乗れるのか?」「当たり前じゃない。 それよりも久しぶりのゴルフで無理しないでね?日中は暑くなりそうだから水分補給も忘れないでね。」「あぁ。 じゃあ何かあれば連絡するように。」「分かった。 じゃあね。」つくしはホテル前で祖父を見送ると、すぐに駅へ向かって歩く。まずは鎌倉歴史文化博物館だ。類は何時になく早く起きた。それにはF3も驚...

  • 20

    つくしは祖父と報国寺の竹林を感慨深く見ていた。鎌倉時代からあったと言われている為、もしかして楓弥も来た事があるのでは?と思いを馳せる。その為、竹林の隙間に楓弥の面影を探してしまう。そんな自分に思わず笑いが漏れる。どれだけ楓弥を恋しがっているのかが分かるからだ。すると、茶席と書かれた案内板が見えた。「つくし。 抹茶が飲めるぞ。」「もう要らない。」祖父が笑いながら尋ねてくる為、つくしも笑いながら返事を...

  • 19

    類は司の車で逗子へ向かっていた。車内ではトランプゲームに興じていたのだが、ふと総二郎が呟いた。「そう言えば逗子に行く前に一条恵観山荘へ行ってみねぇか?」「どんなところだ?」「国の重要文化財に指定されててな。江戸時代に京都にあった皇族の茶室なんだが鎌倉に移転されたんだ。すっげぇ趣のある場所でさ。」総二郎は熱く語るが三人はそれほど興味が湧かない。「今から逗子へ行ってもウインドサーフィンだろ?明日もだろ...

  • 18

    類は自宅で借りた本に目を通していた。もちろん既に小田原攻め付近は読んでいる。ただその後に生き残った可能性のある小姓三人の名前がないか調べていた。楓弥は森沢楓弥のはずだ。だが幼名の為、城主の名前は違っている。その名前が分からない。楓弥は『父上』と呼んでいたし、周囲は『城主様』『殿』など敬称で呼んでいた。すると扉がノックされ、幼馴染の三人が入ってきた。「よぉ。」突然の訪問に類はあからさまにムスッとした...

  • 17

    つくしは真剣に本を読んでいた。それで分かった事だが、記憶の中では楓弥達は豊臣軍が攻めてくるため武士たちは小田原城へ向かい、城は無人にすると言っていた。という事は城に勤めていた武士は全員小田原城へ行ったはずだ。だが本によると小田原城に籠城した物は五万六千ほどとある。つまり楓弥達の城には一体どれくらいの武士がいたのか?更に蒔乃が生まれ育った城は、楓弥の城よりも更に規模が小さかったはず。それを考えると、...

  • 16

    類は初めて図書館に足を運んだ。すると控えめな驚喜の声がする。流石図書館を利用する人たちだけあり弁えている、、と思いながら目的の場所を探す。周囲をぐるりと沢山の本や蔵書などで埋め尽くされ、しかも専門分野まである。それは漫画本以外なら全て揃っているほどの量だ。利用している人は大学生が多いが、高校生の姿もチラホラみられる。中央には数多くのテーブルも有り、そこに本を手に取り勉強している者、専門分野を調べて...

  • 15

    トイレを済ませ手を洗いながらも、先ほどの愛子の言葉が頭から離れない。母を亡くした後も、父との会話は乏しかった。ずっと泣いているあたしを慰める事すらなかった。そして少し落ち着いた頃に義母と愛子を連れて来た。それはまだ四十九日も終わっていなかったと記憶している。突然の紹介だった。『父さんはこの人と再婚するから。 そして愛子はつくしの妹となる。同学年だけどつくしの方がひと月早く生まれたからね。 これから...

  • 14

    つくしは祖父と共に日本に帰国した。以前住んでいた家は息子夫婦が使っている為、六本木の賃貸マンションに移り住んだ。二人は翌日には祖母と母のお墓参りに行った。そこで偶然父である晴男に会った。「ご無沙汰しています。」「あぁ。 仕事の方は順調らしいな。」「はい。」「これからも息子のサポートを頼む。」「もちろんです。」晴男は祖父の元秘書、そして息子の康が社長に昇格した時から社長秘書として傍にいる。その晴男は...

  • 13

    城へ戻ると、出立の準備を終えたしずがやってきた。「若君。 どちらへ行かれていたのですか?」「蒔乃が誰かに殺されたと聞いたから確かめに行ってきたのだ。」「まあ、蒔乃の方が?」しずの演技とも思える驚き方に楓弥は眉をあげる。「今は城下もかなり荒れています。 金目の物でもあると思ったのでしょうか? 山越えは賊が多いと聞きますし。」山越え?なぜ蒔乃が山越えの途中で襲われたと知っているのだ?「凄く残念ではあり...

  • 12

    頼んでいた短刀が出来上がったのはそれから約二か月後だった。少し小ぶりな短刀は柄と鞘に綺麗な牡丹が描かれとても美しい仕上がりになっていた。それを手に夕食後蒔乃の寝所へ向かった。先ぶれも無く突然向かったのだが、蒔乃は笑顔で向かてくれた。その笑顔にドキンと音を立てた。「これを。」蒔乃は不思議そうに短刀を手に取り大切に胸に抱きしめた。もし、、、ここに刺客が来たらこれで少しでも応戦し時間を稼いでほしい。必ず...

  • 11

    部屋に戻るとすぐに床に入り布団を頭からかぶった。今見た蒔乃の姿が信じられなかった。あれほど大切にしたいと思っていたのに、自分が壊してしまった。だがやっと自分の物になったという優越感も湧く。少なくともあのような綺麗な体を隆正殿に渡さなくて良かった。蒔乃は私の妻だ。私だけの妻だ。ただ初めての閨事だったのに明りの灯った中でしてしまった事は申し訳なかった。それでもこれで蒔乃の事をお飾りの正室と呼ぶものはい...

  • 10

    それからさらに一か月後。城下に出た私は突然何者かに切りかかられた。それを傍にいた者が返り討ちにしたのだが、袖口を切られ切り傷のような軽い怪我を負った。その為、すぐに城内へ戻り治療を行い、その日はそのまま部屋で休む事になった。こうして自分の命を狙う輩は今までも数多くいた。それは城内に居ても同じだった。弟を城主にしようという勢力が私を亡き者にしようと虎視眈々と狙っている。どこにいても気が抜けない日々だ...

  • 9

    蒔乃の部屋から出て自室に戻ると直ぐに布団に入った。おかしいぐらい体が火照っている。目を閉じると蒔乃の白い肌と赤い小さな唇が思い出される。旅の疲れで疲労の色を濃くしながら、熱がありながら、、、それでも初夜を迎えよう頑張る健気な姿。普通は初夜を迎える前に女中によって体を慣らすらしいが、それを拒んだのは私自身だ。蒔乃の体に女であろうとも触れさせたくなかった。しかも私と交わる部分なら尚更だ。既に押さえきれ...

  • 8

    類は15歳を迎えた翌朝、飛び起きた。あまりにも衝撃な夢を見たからだ。しかも今もはっきり覚えている。それはまるで自分が夢の中の楓弥になったような心情で、辛く悲しく後悔溢れる物だった。だがあくまでも夢の中の物語。すぐに忘れるだろうと気にも留めていなかったのだが、翌日になっても忘れられなかった。こんな事は初めてだった。そんな時、やってきた総二郎に尋ねてみた。「あのさ。 総二郎は夢を見る?」「あぁ。 見るぜ...

  • 7

    初めての閨事の翌日、蒔乃は高熱を出し床から起き上がれなかった。その蒔乃に対し、体調を窺いに来たしずは相変わらずネチネチと小言を言った。「たった一度の閨事で熱を出されては、万が一赤子を身籠られたときにはどうなるのでしょうか?これでは若君も怖くて二度と触れられません。それを考え、今後は先に体調確認をされて寝所にお越しくださいとか、そもそもお体に障るので寝所には来ないでくださいと言った内容の文を書かれて...

  • 6

    蒔乃が嫁いで10か月が過ぎた。その日、突然蒔乃に訪問客が来た。相手はハトコにあたる同じ小田原藩に属する城主の中森隆正だ。楓弥は既に城下へ出ており、対応できるのは蒔乃しかいない。しかも中森の目的も嫁いだ蒔乃の様子伺いだと言う。寝ていた蒔乃は急いで身支度を整え、謁見場所へ向かう。「おぉ、蒔乃。 元気にしていたか?」「はい。 隆正殿もお元気そうで何よりです。」「あぁ。 私は元気だ。 今から小田原城へ向か...

  • 5

    再び部屋に戻った蒔乃は自然に瞳から涙が零れ落ちる。「申し訳ありません。」古参の侍女は頭を下げるが彼女が悪い訳では無いことぐらい分かっている。それにあの内容が本当の事なのだろう。小姓の三人と気楽に雑談をしていた。その小姓の一人の姉がしずだ。自分の専属侍女として付くぐらい楓弥様との関係も良好。どちらかと言えば自分を見張るためにつけたのかもしれない。間者ではないかと疑うのは当たり前の行為だ。だからこそ妻...

  • 4

    蒔乃はそれから文を書いた。体調が悪い事をしずから聞いているのか全く会いに来てはくれない。もちろん日々忙しい公務を行っているのは分かっている。でも体調が少しでも良い事を知らせる事で、伸びている閨事が行えるかもしれないという気持ちだ。文は体調を考慮し短い物にした。季節の挨拶と楓弥の事を思う気持ちと自分の体調の事などだ。同じ城にいると言うのにこうして文を送ると言う事に寂しさも感じるが、それでも初めて楓弥...

  • 3

    父上からの突然の結婚命令。しかも相手は楓弥様。驚きはしたものの嬉しさの方が勝ったのは否めない。だがそれを顔に出す前に説明があった。「突然で驚いたと思うが世情が緊迫してきてな。相手の楓弥殿はまだ元服も済まされておられないが、共に同盟を強化しておこうとなった。もちろんお前も体が弱いという事もありすぐに側室を娶られるだろうが、出来るだけ楓弥殿に応えなさい。」「はい。」それぐらいは分かっていた。自分は一応...

  • 2

    つくしは14歳を迎えた日の夜、悲しい夢を見た。それはテレビかネットで見たドラマか何かのように鮮明に映し出された。普通は目が覚めると忘れている事が多いが、その夢だけは色鮮やかに覚えており時間が経っても消える事は無かった。「どういう事?」つくしは上半身を起こしたまま呆然とする。心に灯った恋心やその後の悲しみなどが自分の胸に突き刺さり、起きた時には涙を流す程に姫に感情移入している。「有名人なら日本史の中...

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