桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
花より男子の二次小説サイトになります。特に類と 総二郎が大好きですべてハッピーエンドなります。
読むだけでもの足らず、とうとう自分で書いてしまいました。自己満足の表現不足とは思いますが、楽しんでいただけたらと思います。
牧野の電話を切ってから、俺はすぐにいつも使ってる情報屋に電話をした。自分で動けるのならいいが、今は野点と口切りの前で何も出来ない・・・だから仕方なく、そいつに葛城の身辺調査を頼んだ。俺が知ってる限りの情報と、牧野から送ってもらったヤツの顔写真、それと実家の情報・・・「この1~2年の間に何かやらかしてる可能性かある」と言うと、情報の少なさから高額な調査料を言われたが即了解した。「金は言い値で払う。ただし時...
前田家に救急車が来たのはそれから10分後・・・前田夫人がすっごい腹痛(下痢)を起こしてしまったため、急遽ティーパーティーは中止となった。そして私達が食べていたものもお手伝いさんに回収され、何が原因なのか調べることになったみたい。夫人が真っ青になりながら私達にお詫びしてたけど、その時に「ネックレスが~~!」って言ってたから、花沢さんが急いでケースを手渡し、それを抱えたまま救急隊員に運ばれていった。付き...
念の為に着物から薄手の洋服に着替えて蔵に向かうことにした。何故なら着物だと何かを隠し持つことが出来るから・・・万が一にも疑われないようにと考えたから。そんな格好で蔵の前に来ると、俺は極自然にそこ端の扉を開けた。当然これはすべて録画されているが、不審な動きさえしなければ、次期家元の俺なら何も言われない。「前に入ったのはいつだったっけ・・・もう4~5年前か?」そんなに前だから覚えては配置なんて覚えてはなかっ...
前田夫人は上機嫌で私達を客間に通してくれた。そこは美作さんちや花沢さんちに比べたら普通の部屋・・・もちろんソファーやシャンデリアも豪華なんだけど、如何にこの人達の家が規格外なのかってのが判る。そこに入ると、夫人はすぐにお手伝いさんに頼んでもう1人分のティーカップを用意させていた。「本当に申し訳ありません・・・私が突然くっついて来たせいで」「いいえ~~!とんでもありませんわ///美作のご子息もこんなに素敵だ...
ーーー10年前に教えた事を思い出せーーーそれはもちろん茶道のことだろうけど、それを今更私が勉強してどうなるのか・・・そう考えると苦しくなる。でも一歩踏み出すにはそれもいいのかも、と思うようになった。その日に営業で訪れた書店で、店長さんに呼ばれた。ここは私が担当しているお店では、唯一テナントとしてショッピングセンターに入ってる大きな書店・・・スタッフさんも店長さんも明るくて優しいけれど、あの時のトラウマで...
あの時の爽やかイケメンが片手を上げてこの車に近付くと、運転席を覗き込んで「助かった~」と笑った。その後で私の方を見て、「あれ?」って・・・「君、確か一昨日の・・・」「はい///あの時はご親切に有り難うございました!!」「なに?何処かで会ったの?」「あぁ、彼女は一昨日うちの本社でトイレ探してた子だよ」「いや!それは本当だけど、偶然ですから、偶然っ!!」花沢さんが呆れた目で私を見てる・・・そんな中、美作さんが後部...
牧野の部屋の写真を見て、俺は笑うしかなかった。そして「また今度行こうぜ」と言うと・・・『クレーンゲームしに東京まで行かないけど?』と。「昨日話しただろ?その会社は辞めるつもりでいろって」『・・・う、うん・・・聞こえてたけど』「暇があれば10年前に教えた作法を思い出しとけ」『・・・・・・・・・・・・1人じゃ無理だと思う・・・んだけど』「そんじゃ、最高に厳しい師匠が扱いてやる。そのつもりで待っとけ」牧野はそれに対して返事はし...
とうとうやって来た5月の第二日曜日。今日から朝ごはんに小さなパンが付き、卵料理も出てきた。それを味わって食べ、終わったら花沢さんが2階から加代さんに渡すプレゼントと花束を持って来た。加代さんはキョトンとして、彼が差し出したカラフルなカーネーションの花束を見てるだけ・・・「・・・・・・類様?」「これ、加代にと思って。いつもありがとう・・・」「わたくしに・・・ですか?」「どう見ても加代に渡そうとしてるじゃん。いいから...
盗聴器の調査をした業者からの報告書・・・それをメールで受け取り、内容を確認した。仕掛けられていたのは一箇所で、取り外さずに機能だけ停止させたと。そうなったら「犯人」が確認しに来る可能性があるから、牧野には「心当たりがある人物」を絶対に部屋に入れないように説明したと書いてあった。「・・・そうは言うがお人好しだからな、あいつ・・・」牧野からも同じようなメッセージが入っていたが、それを読んでいる時に入って来た新...
土曜日になった。今朝はおからのシフォンケーキが出され、涙が出るほど嬉しかった♪しかもサラダにササミも乗っかってて、少し「普通食」に近づいた感じ・・・加代さんが「お昼にはお粥から雑炊に格上げですよ」って言われ、それにもワクワクした。花沢さんもそれには「良かったね」って・・・そう言うこの人には、クロワッサンもオムレツも出されててムカついたけど💢。それから午前中は各自の部屋でのんびりして、お昼になったら待ち焦が...
マンションに戻ったのは23時前・・・信号待ちで見上げると、葛城さんの部屋はまだ電気がついてた。でもあれから電話もLINEもないから、私の事は特に気にしていないのか、それともあのカーテンの隙間から見てるのか・・・そう考えた時、私はもう以前のように彼を見てないことに気が付いた。あの「西田」って人の事が思い過ごしでも、彼は私に隠し事をしている・・・それは間違いないと思う。今となっては東京でのトラブルも、葛城さん...
美作商事・・・その本社は花沢物産と同じぐらい大きくて、綺麗だった。花沢物産のほうがスッキリと近代的で、こっちは緑が多くて華やかな感じ・・・ロビーの隅にある商談用?の椅子もお洒落だった。しかも受付のお姉さんの制服が可愛い♥並んでる2人も美人さんで、花沢の受付よりも美作商事の方が色気があるかも?・・・と、社内見学の私。その時藤本さんは受付のお姉さんと何か話してて、私は少し後ろで待機していた。そうしたら手渡すはず...
牧野の話を聞いてると、どうやらこいつを陥れようとした人物がいて、そいつが長期間に渡って付き纏ってるんだと判った。そうなるとますます伽耶の仕業とは思えない・・・そんなに興信所の人間を雇えるほど自由になる金はないだろうし、しかもあいつは8月から西門にいて、そんなヤツらと連絡を取り合うにはリスクが高すぎる。万が一にも、そんな連中と裏でコソコソ動いてることが親父にバレたらアウトだ。・・・そんなことを考えながら牧...
前にも寝たから緊張もなく、ぐっすり寝ることが・・・・・・出来なかった。何故かと言うと、お腹が空きすぎてるから。真夜中に何度も目が覚めて、水を飲んでみたけど満たされず・・・朝はお腹の鳴る音で目が覚めた。それなのにダイニングに行くと、用意されていたのは・・・サラダ。そしてやっぱりお粥で、トッピングは細切りの昆布に梅干し、そして具なしの味噌汁。「・・・・・・・・・・・・」「牧野様、おはようございます。これは昨日の夕食よりも少し...
キャンプでの尾行を話した時にはそうでもなかったが、牧野の住んでいたワンルームマンションで人の気配を感じたと言えば、それにはかなり驚いていた。そして急に下を向いて黙り込み、ブツブツ何かを呟いてる。その時に「やっぱり」とか「だから東京に戻るなって・・・」って言葉が聞こえたから、「伽耶だと思ってるのか?」と聞くと・・・「だって・・・それしか考えられないし」「でもあいつがお前の転勤を知ってるのか?」「・・・あ、そうか...
仮病明けの業務が終わり、「久しぶりの会社で疲れた」設定の私は定時で帰ることになった。その時にも男性社員や部長・課長は心配してくれて、ドアから出るまで側にくっついてた。女性先輩達は殆どがエグゼクティブと一緒に出掛けてたからいなかったけど、残ってた上野さんは知らん顔・・・その横を通るときには小さな声で「お先に失礼します」と挨拶して廊下に出た。廊下に出ても付き添ってくれたのは佐藤さん・・・すっごく心配してくれ...
羽田までぶっ飛ばし、1番早い新千歳行きに間に合った。それが17時30分の便で、北海道には19時に到着・・・その機内で俺はひとまず冷静になるようにと努めた。そんな思いとは裏腹に胸の奥が熱くなり、判らない事が多すぎるのに心が躍る・・・もう飛行機から見える空は夜に向かっているのに、俺の気分は夜明け前のようだった。何から聞けばいいのか、それとも、今牧野が抱えてる問題解決が先か、伽耶のことをどうやって話すのか・・・...
藤本さんに頼まれた仕事・・・資料室での資料探し。と言うか、ここには殆ど誰も来ないからゆっくりしなさいって意味なんだろうと思う。だから焦りもせず、のんびりそのファイルを探し中・・・その時、ガチャッとドアが開いて誰かが入って来たことが判った。この資料室は通常施錠されてるから、社員証でロックを解除しなくちゃ入れない。それが全部情報システム部に報告されて記録が残るんだって教えてもらっていた。だから当然入って来た...
その日は歴史に関するテレビ番組の収録に参加し、宗家に戻ったのが15時30分。気疲れしたから部屋着に着替えて暫くベッドで横になっていた。だからって寝るわけでもなく、何も考えたくなくて目を閉じてるだけ・・・そんな風に30分ほど過ごしていたら、弟子に「そろそろお時間ですが」と声を掛けられた。今日の稽古は17時から3人・・・準備を始めるかと、ベッドから起き上がった瞬間にスマホが鳴った。「こんな時間に誰だ・・・った...
「・・・・・・少しは細くなったかな・・・」ゴールデンウィークが終り、久しぶりの出勤・・・私は鏡を見ながら自分の顔をマジマジと見ていた。でもやっぱり病み上がりと言う感じはなく、どちらかというと合宿疲れ・・・ゲッソリした感じも全くないけど、それは退院してから回復したってことにしようと、スーツに着替えて髪を括り、仕事用のメイクをした。それも終わると通勤用の鞄を持ち、これまた久しぶりのヒール。それを履くと流石にシャキッ...
葛城さんに違和感を覚えるようになってから数日間、朝も夕方も一緒に通勤することはなかった。何故かそれを彼が不思議に思う事もないようで、会社で会っても何も聞いてこない。それがまたすごく怪しくて・・・これまでの事を思い返す日が続いた。そして思い出したのは、ゴールデンウィークの後で「変わった事がなかったか」って聞かれた事だった。それからも時々私の言葉に妙な顔をしたり、間があったり・・・そして誰かに見られている気...
ザーーーーーーッ!! ザーーーーーーーッ!!「また降り出した・・・」「藤本さん、何処行ったんだろうね~」予定よりも随分遅く帰って、そこで俺達は出されたサラダを食べながら窓の外を見ていた。栄養士も「大丈夫かしら・・・」って心配そうに。牧野も俺が余所見してる隙に俺の皿からブロッコリーを取って食べてたけど、口では「早く戻ってくればいいのにねぇ~」って・・・どう考えても俺達を探しに行ったのに、まるで他人事。・・・と...
それから数日経ったが、伽耶はあの日の事をお袋には言わなかったようだ。しかも相変わらず楽しそうにお袋の後をついて行き、今日も何かの観劇のためにイソイソと支度をしていた。その時の着物はお袋が若い頃に着ていたもので、すげぇ高価な加賀友禅・・・帯も何もかも一流のものを纏った伽耶は最高に美しかった。しかも髪には銀線細工の簪・・・お袋のあんな嬉しそうな顔は見たことがない。「総二郎さん、私達は帰りに銀座に行くから遅く...
蓼科湖には彫刻公園ってのもあったんだけど、牧野に「行ってみる?」と言うと、ブンブン首を振られた。その視線の先に手打ち蕎麦の文字・・・彫刻は食べられないから興味がないんだと思った。しかもその次に見たのは「手造りハム・ソーセージ専門店」の文字。それを見て泣きそうになってて、「お土産に買いたい」とか言うんだけど・・・「買ってもいいけど、今は食べられないじゃん」「東京に戻ってから食べる!」「それなら東京で買って...
「どんな俺でも受け入れるんだろ?これが俺の本性だけど・・・・・・あんた、耐えられるのかよ」「総二郎様・・・!」「俺の噂ぐらい聞いてるんだろ?んじゃ、そんなに怯えなくても良くねぇか?」「・・・・・・あ、あの・・・」わざと乱暴な言葉遣いをして、冷めた目で見下ろす・・・そうしたら伽耶は恐怖で泣きそうになりながら着物の襟元を押さえた。俺は伽耶の前に立つと自分の帯に手を掛けて緩め、それを見た伽耶はサッと視線を逸らせた。そして小...
2日目の朝・・・空腹で目が覚めたんだけど、もちろん私には朝ご飯はない。7時にはレモン白湯、8時にハーブティーで合宿が始まった。花沢さん達が部屋から出て来ないのは、多分自分の部屋でパン食べてるから・・・美香さんは何も言わないけど、焼きたてのパンの匂いがプンプンしてるもん!「ここからは短時間で栄養補給をしますよ。10時、11時30分、13時30分です。それぞれ野菜ジュース、ハーブティー、野菜サラダです♪頑張...
数日間は何事もなく過ぎていった。でも相変わらず頭の中には帰国してくる道明寺の事と、彼からの電話の事でいっぱい・・・幸い仕事で大きなミスはしてないけど、これ以上集中力を欠いたら不味いと思うぐらい不安定だった。自宅では何度もガスの火を止め忘れて安全装置が作動したり、洗濯したのに干すのを忘れたり、買い物は常に忘れ物が多い・・・溜息しか出ない毎日。昨日はお風呂を沸かしたのに、気が付いたら真夜中まで入るのを忘れて...
「何処が軽く山を歩こうですかっ💢!!2時間もかかったじゃないですか!!」「・・・・・・ホントに疲れたね・・・お腹空いた」「だらしない2人ですね。ほら、シャンとして下さいよ、今から食事ですから」アラフォーなのに1番元気な藤本さん・・・私は重たいバックパックに疲れ果て、花沢さんは運動不足で足腰立たず。この別荘地専用のトレッキングコースの中でも1番険しい道を選んだために、戻って来るまでに予定の倍の時間がかかって、既...
葛城さんと冬用品の買い物をして、それを車に積み込んだ。そうしたら後部座席はいっぱいになり、「食料品、積めるかな~」って声が出る程だった。「そんなに買い込むの?」「ん?えっとね///今日のお礼に晩ご飯、御馳走しようかなって思って。キッチン借りてもいい?」「えっ、ホントに?」「大した物は作れないよ?庶民的なものになっちゃうけど、何がいい?」「じゃあ炒飯で!」「そんなものでいいの?」私がそう言うと「最近食...
藤本さんのひと言で、私のゴールデンウィークは悲惨なものになった。これまで頑張って来たのに、まさかのダイエット・・・確かにこの1ヶ月でちょこっとは太ったかもしれないけど、まだまだ痩せ型・・・そう思っていたのは私だけ?花沢さんは「別に気にならないけど」って言ってたけど、藤本さん曰く、「感染症で入院していたんですから」・・・そう言われるとこのぷくっとした顔だと説得力はないのかも。結果、私は花沢家の別荘がある八ヶ...
道明寺のニュースを聞いてから数日、私は落ち着かなかった。あの日の夜もニュースが再放送されたら嫌だからTVをつけなかったのに、彼の姿が映ってたのかどうかが気になって・・・だから仕事でも家でも小さなミスがあって、何度も自分の頬を叩いてた。本社で散々みんなに迷惑かけたのに、転勤してまで同じ事をしちゃダメ。まだここでは信頼関係が築けてないから、下手したら自分の味方が居なくなる・・・そんな気がして怖かった。それなの...
あきらが母の日・・・5月の第二日曜日に帰国する、それがちょっと引っ掛かったけど、それよりはイミテーションネックレスの方が重要だと、早速夢子さんに持って来てもらった。そしてまずはアレキサンドライトのネックレスを返してもらい、一安心。別に美作を疑ってた訳じゃないけど、これだけは本当に大事なものだったから・・・だから牧野がボソッと「また自分のせいで無くしたら立ち直れませんもんね」って言った時にはカチンときた。...
それからまた数週間・・・9月になった。札幌の9月は東京よりもぐっと秋らしさを感じる。昼間の気温は25度程度でも朝の気温は15度前後のことが多く、過ごしやすくて爽やかだった。「でもね、すぐに最低気温が10度を下回ったりするんですよ、これが!」「そうかと思えば最近は30度超える日もあるしねぇ~。ちょっと山間部の方に行くと、9月に霜がおりるほどの気温となる場合もあるんですよ」「9月に霜?やっぱり違うんだ~~...
土曜日、再び夢子さんから電話があって、午前中にイミテーションネックレスが届けられると聞いた。だから牧野の部屋(俺の部屋)で、残りのシーフードカレーを食べてから美作邸に行く事になった。その部屋に着いたのは11時半で、ドアを開けると今日もカレーのイイ匂いがしてた。「あ、いらっしゃ~~~い♪今日はおかずにブロッコリーと人参のスープと、ごぼうのサクサク揚げだよ~」「サクサク揚げ?」「ゴボウを砂糖醤油で味付...
8月の初め、西條家の母親と伽耶が西門を訪れた。それはお袋による、伽耶の「特別な稽古」のため・・・この屋敷に住込み、次期家元夫人としての勉強をするためだ。俺は仕事を理由に挨拶だけで茶室に戻り、その代わりにハイテンションなお袋が何かと世話を焼いていた。それには志乃さんも付き添い、女達でワイワイガヤガヤと喧しい・・・使用人達も心なしか緊張気味に仕事をしていて、宗家全体が落ち着かなかった。それも暫くしたら収まり...
私が退院したのはゴールデンウィークの直前だった。その日は朝からずーーーーーーーっと寝てて、なんとか起き上がったのが昼過ぎ。流石の私も14連勤は身体に堪えたようで、自宅に戻ってホッとしたのもあって爆睡。猛烈にお腹が空いたから、急いで昨日買ってきたものでランチを作った。とは言え、冷凍食品のパスタ・・・レンチンなんて殆どしたことがなかったんだけど、今日はこれに感謝した。それから部屋に風を通し、掃除を開始。...
札幌に来て10日が過ぎた。葛城さんはあの3日間で風邪を治し、なんとか月曜からは出勤できた。私も今ではすっかり部屋もか片付き、土曜日は電車に乗って苫小牧まで行き、自分の車を受け取った。だから買い物も行きやすくなったし、必要な物もほぼ揃った感じ。彼は微熱の中「俺も苫小牧にいく!」と言ったけど、行きは私が運転しても、帰りはそれぞれの車になる。しかも熱があるし、道央自動車道を利用しても1時間掛かるのに、そ...
真顔で失礼な事を言う花沢さんにイラッとしたけど、確かに佐藤さんが私に恋愛感情を持ってるとは思えない・・・と言うか、そんなのを感じた事がない。だから余計に不思議で・・・どうして私の事を声を変えてまで調べようとしたんだろう?「つくしちゃんの過去に知られて不味いことがあるのか?」「逮捕されるような事はしてないけど、人が聞いたらドン引きするような生活ではあったかなぁ?でも隠してませんよ?花沢さんにも素直に全部教...
「他に誰か想う人がいるのね?」あきらでも類でもなく、誰かにこの封じ込めた想いを吐き出したい・・・そう思った俺は、婆様の目を見て「はい、います」と答えた。言った後で目が熱くなり、唇を噛み締める。そんな情けない姿を晒してでも、今の気持ちを誰かに聞いて欲しかった。婆様は静かに頷き、「その人を諦めるの?」と・・・「・・・諦めるもなにも、そいつは俺の事を男としては見ていませんからね。そいつが見てるのは他の男で、もう...
西門さんの車に乗り、この人の自宅に着いたのは19時。裏門からガレージに入ると、志乃さんが心配そうな顔でお出迎えしてくれた。それを見てハッとして、西門さんにコソコソ相談・・・ここで教えてもらったことは全く役に立たなかったと言えば・・・「えっ、そうなのか?」「そうなんですよ・・・じつは洋服にエプロンで、華道のお部屋には全く入れませんでした」「着物じゃねぇの?」「やっぱりここが特殊なんじゃないですか?他の文化人...
京都から帰った途端に上機嫌なお袋・・・これから忙しくなるとばかりに伽耶の部屋の準備を始めた。もちろん俺と同室ではなく、母屋の一室を彼女用に設えているわけだが、一応考三郎もいるために志乃さんの部屋の近くになったようだ。8畳二間続きの部屋の1つを洋間に替え、ベッドや家具なども新調・・・なにより高級な和箪笥が用意され、そこにはお袋から引き継がれる着物が収められるらしい。それと同時進行で、俺達が入籍した後に住む...
佐藤の車は駐車場に入ったままで、運転席から出てくることはなかった。もちろん俺達の場所から車内の様子を窺い知ることは出来なかったが、その駐車位置からは病院の出入り口が丸見え・・・牧野が退院するのを確認するつもりなのだろうが、それは一体何故なのか・・・。「・・・あいつ、牧野の事を普段から気にしてるみたいだね」「好きなんですかね」「・・・・・・・・・・・・」牧野のことを好き?女性として好きになる要素って・・・どの辺りだろう?「...
札幌に来てから2日目・・・朝からずっと家の片付けをしていた。まずはキッチン回りのもの。この部屋の収納スペースを確認したら調理器具を片付け、冷蔵庫以外の家電品を設置。段ボールから出した数少ない食器をシンクに入れて、一応簡単に水洗いした。でも食器乾燥機もカゴもないから洗ったらすぐに布巾で拭いて直すことに。それからクローゼットに服を入れて、冬服は段ボールのまま隅っこに移動。洋服ダンスも古かったから捨ててき...
『夕子のスケジュールがわかったら助かる』「ホントにもうっ!言うのは簡単だけど、こっちは朝子さんにも近づけないんだからね?」朝起きて、昨日の花沢さんのLINEにムカつく私・・・💢福岡にいる夕子さんの情報なんて、どうやって掴めばいいってのよ!それこそもうお婆ちゃんには近づけないし、仲が悪いって知ったから余計に聞けないし。好子さんに聞こうにも、その理由を聞かれたら答えようがない・・・そうブツブツ言いながら廊下の雑...
2人きりになると爺様の顔はさっきまでと全然違う・・・やはり見抜かれたかと、これから先に言われる小言を覚悟した。それはすぐに言われるかと思った。が、そうではなく、爺様は使用人を呼んで伽耶たちが外出したのを確認すると、ボソッとした声で「庭に出ようか」と言った。晴れていることもあって、気温は35度もある。京都の夏だと普通だし、爺様も移り住んでから十数年経つので慣れただろうが、それでも外で話さなくても・・・と。...
花屋のおじさんの話を聞いてから数日後、今日も庭掃除をしていた。相変わらず蘭子さんの小さな嫌がらせはあるけど、そんなのどうでもいい・・・もう少し20年前の事を知りたくて、どうにかして前家元のお婆ちゃんに接触したかった。でも入りたての私がお婆ちゃんのところに行くことも出来ず・・・「あら、そこのあなた」「はい?」草むしりをしていたら、突然後ろから声を掛けられ、振り向いたら1人の着物を着たおばさんがいた。雰囲気...
札幌支店の管理課でまずは簡単な自己紹介をして手土産を渡し、その時事務所にいた人1人1人に挨拶して回った。そのあと営業課に向かい、そこでも同じように・・・今度は本社の半分ぐらいの人数らしいけど、その時間帯には部長も外出で、課長と営業の男性1人しかいなかった。だから課長に手土産を渡し、出勤は来週の月曜からになることを伝え、14時には支店を出た。その時には葛城さんにもひと言いに行き、体調を確認・・・「もう平気...
小早川流に潜入して3日目・・・前家元のお婆ちゃんとは1度話しただけで、それからは会ってない。好子さんに聞くと、どうやら私達の仕事場から1番離れたお部屋にいるみたいで、お歳だからあまり外にも出ないそうだ。「まぁ、もう82歳におなりだからねぇ・・・こう言っちゃなんだけど、最近少しボケておいでだし」「そうなんですか?この前はちゃんとお話出来ましたけど」「長く話すとね、時々判らない事を言うそうだよ。朝子様もそう...
「それでは儂はこの辺で休むとするか・・・お前さん達はのんびりするがいい」「それでは私達も部屋に戻ります」「ご隠居様、遅くまでお話いただき、ありがとうございました。おやすみなさいませ」お喋りが終わったのは20時。まだ早い時間だが、爺様は21時には寝るというので部屋に戻って行った。それを見送ってから俺達も先程の部屋に戻り、伽耶はこれからどうするのかと困惑してるようだった。彼女の胸のうちでは、風呂は別だと...
緊張と疲れとで1日目はLINEで花沢さん達に報告した後、爆睡した。そして翌日、起床時間は6時。ここに一緒に住んでるのは前家元であるお婆さんと現家元の朝子さん、そして養子の蘭子さんと、お婆さんの付き添いをしている古弟子の静子さんと亮子さんの5人。お爺さんもいるんだけど今は入院中で、5月中には退院するらしいけど、私は会うことはない。昨日借りた何枚かの服の中から適当に選び、エプロンをしていざ仕事場へ。お手伝...
ロープウェイを降りたら、今度は葛城さんが調べてくれていた居酒屋に向かった。気取らないお店で助かったけど、海鮮ばかりで高そう・・・そう言ったら彼が「歓迎会だから俺の奢り」、だって。「歓迎会?それ、葛城さんもじゃない?」「いいのいいの、10日間でも俺が先に赴任してるから」「えっ、なにそれ!」「気にしなくていいよ、赴任手当が結構入ったから」「いや、それも当然の手当だし、引っ越しって案外お金掛かるし」「それ...
ガレージまで来たら西門さんが車に乗り込む直前、蘭子さんが居る前でガシッ!と私を抱き締めた///!!突然の事で頭がフリーズ・・・花沢さんだって、道明寺さんだってこんな事しなかったから、マジで焦った!「ちょっ///!!」「(いいから少し我我慢しろ♪)・・・すみれ、2週間頑張るんだぞ!」「わ、判ったから///!!」「(誰が見てるか判んねぇから♪)・・・伝統文化の家ってのは外から見るよりもずっとややこしくて大変だ・・・茶道と華道...
14時21分、新幹線は京都に向けて走り出した。当然俺と伽耶は隣同士だが、会話が弾むわけもなく・・・時々窓の外の景色について語るだけ。しかも俺はほぼ相槌で、伽耶は退屈極まりない時間だっただろう。俺がずっとそんな感じだから「面白い話でも」なんてことは言わず、彼女は1時間以上黙ったまま外を眺めていた。それでも名古屋を過ぎた頃には流石に不味いと思い、「祇園祭」の話をした。「あぁ、そうですわね!忘れておりまし...
今日は名前は牧野すみれ、高卒・20歳。一般家庭で両親は離婚して双方とは別居、都内のアパートで1人暮らし。今は銀座の和菓子屋でバイトしてて、西門さんとはそこで知り合って、西門には菓子の納品で出入りしてる。好きな色は紫色。西門に内緒で付き合ってるけど、結婚願望の強い私が行儀見習いをしたいと言いだして、西門さんが自分の家じゃ無理だから小早川流に頼み込んだって設定・・・もう数日前の「牧野さくら」の設定なんて...
「それでは、お嬢様をお預かりします」「お父様、お母様、行って参ります」「総二郎君、先代によろしくな。伽耶に土産を持たせているから、この子が作法で迷ったときにはフォローしてやってくれ」「伽耶、お爺様にちゃんとご挨拶するのですよ」長旅に出るわけでもないのに仰々しく見送る西條家の両親・・・俺はそれにウンザリしながらも、伽耶を西門の車に乗せた。そしてもう1度立礼してから、伽耶の隣に乗り込んだ。車は東京駅に向...
牧野を連れて車まで戻ったら、総二郎と志乃さんが見送りに来てくれた。その時に何故か「朝ごはん」だと言ってお弁当持たせてくれて、「明日の朝はこれを食べて、元気よくお勤めするのですよ」って。「馬鹿な子ほど可愛い」・・・それに似た心境なのかもしれない。たった1日一緒にいただけで、この人にそんな顔をさせるとは・・・「じゃあ明日の朝、7時にうちに来い。小早川には8時に行くって言ってるから」「・・・今日も早かったのに、...
担当店の引き継ぎは順調に進んだ。仲良くしてくれたBOOKS重田のおばちゃんは大泣きで、私は必死に宥めた。「北海道のお菓子、送りますからね」って言うと、今日もお饅頭を持たせてくれて。そして最初にトラブルがあった、曰く付きのお店にも顔を出した。その時には店長もバツが悪そうにしてて、「あのせいで転勤?」なんて聞いてたけど・・・「いえ、そういう訳ではありません。新人が2人入ったので、私以外の営業が転勤したらそれこ...
西門さんの華道の稽古が終わったら、また志乃さんの特訓が始まった。今度は和室への入り方・・・つまり、障子や襖の開け閉めだ。これは華道に関係なく、小早川流に行ったら必要な事・・・だから特に厳しく教えられた。「西門流独自の作法もありますけれど、今日は最も基本的な作法についてお教えいたしますね。まず、和室は床が部屋の中心となり、この床の正面が上座となります。和室に入る場合、基本的には下座側の襖から出入りします。...
転勤の話を受けてから1週間後、先に葛城さんが北海道に異動した。私は7日に話を受けたから15日の異動には間に合わず、引き継ぎや引っ越しもあるから25日に行く事になった。その前日が引っ越し、25日は水曜日だから木・金も赴任休暇となった。その間に色々な手続きを行う予定だ。まずは今のマンションの解約と、新しい住まいの調査。それは先に行った葛城さんが色々調べてくれてるから、取り敢えずお任せすることにして、2...
「心配すんな、初歩の初歩しか教えないから」「・・・着物で歩くのも、そこで躓きましたけど」「・・・・・・マジか」「はい。志乃さんに3回ぐらい着付け直ししていただきました」そう言ってるのに西門さんは気にせず、箸の持ち方から始めた。「和食の基本は正しい箸使いからだ、以下の動作を流れるように行え」・・・そう言って教えてくれたのは摩訶不思議な呪文・・・。 「まず箸を右手で持ち上げ、次に左手を箸の下から添える。今度は右手を...
葛城さんの話を聞いて、それから2人で会社に戻った。私の傘に2人で入って・・・その時、私の頭の中は真っ白だった。自分が北海道に住む・・・葛城さんも同じところに行く。そこでどんな生活が待ってるのか、全然想像出来ない。葛城さん以外、誰も知らない・・・・・・それに耐えられるのかどうか。なんとなく、NYでの孤独感が蘇って身震いがした。営業部の前まで行くと、彼に「気持ちを切り替えて」と言われ、それにはコクンと頷いた。「今日...
カコーーーーーーン、と鹿威しの音が12時を知らせた・・・ってのは冗談だけど、志乃さんが「お昼になりましたわね」って言うから、私はそこで一旦脱力・・・「牧野様、背中が丸いですわ!」って叱られたけど、そこでは直す気力も無かった。「どういたしましょう・・・お昼は総二郎様と一緒に召し上がりますか?それともわたくし・・・」「西門さんで!」「ほほほほほ、正直なお方ですこと!丁度本日は宗家の皆様が外出なので、ダイニングで総...
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桜の茶会が終わると宗家は茶会以外の行事で大忙しだった。まずは光翔の小学校入学で、英徳小学部の制服を着た光翔を囲み、庭の桜の下で家族全員の記念撮影。この時も祐子の悪阻は酷くなく、孝三郎と共に入学式に出席することが出来た。建翔の面倒は志乃さんがみることになり、嬉しそうな顔の3人を乗せた西門の高級車が走り去るのを皆で見送った。英徳の制服は有名デザイナーのもので、カバンもランドセルじゃなく共通の通学バッグ...
夏美さんが呆然としてる・・・・・・流石に自分でも不味いコトしたと思ってる。でも流れた玉子は拾えなかったし、真ん中の穴みたいなところ(ディスポーザー)にス~~~っと落ちていき・・・「どうしましょう、夏美さん・・・」「残った玉子は4個ですから、小さめのを作りましょうか💦」「ごめんなさい・・・」「大丈夫です!これも慣れですからね!」でも玉子をキレイに割ることは覚えたので、気を取り直して玉子4個を割った。そして夏美さんに...
翌日の紅葉の野点では、家元夫人のお茶席で祐子さんと一緒にお手伝いをした。まだまだ阿吽の呼吸とはいかないけど、とにかく自分の出来ることを頑張るしかない。2人とも家元夫人と色違いの着物で、それだけで周りの人達には意味が判ったようでザワザワしたけど・・・それでも笑顔を絶やさず、大失敗をしないことだけを願いながら。野点茶会が始まって2時間後にやってきた花沢類と美作さんは、何故か総二郎のお茶席じゃなくて家元夫...
「はぁ~~~~~!12時になったぁ!」「社食に行く?今日の日替わり、なんだったっけ?」「池上君、今日は13時30分には芝崎産業に行くから遅れるなよ~~」「はい、すぐに飯食ってきます!」「花沢課長、キリがいいところで食事にしませんか?」「・・・ん」・・・なんとか午前中の業務終了。俺も昼食に行こうと席を立った。他の社員のように社食に行ってもいいんだけど、俺の場合は周りにいる社員の方が気にするってことで、いつ...
1時間後・・・・・・クタクタになった私達は母屋に戻っていた。後援会の皆様への挨拶は道明寺達のおかげで滞りなく終わり、むしろ後半はこの人達によって私達の結婚が西門流にとってもこの上ない幸運だと言わんばかりに盛り上がってた。総二郎の親友なんだから特別顧問的な役割は続くのに、オマケに私の後ろ盾だなんて・・・家元ご夫妻も彼らとニコニコしながら会話し、「今日はどうもありがとうね~」なんて言ってる。そして鬼みたいな顔...
マンションに戻ったのは11時30分。ここで夏美さんが「すぐにご飯を炊きましょう」って言いながら、さっき買ってきた食料品の中からお米を取り出した。「お米を・・・たく?」「えぇ、炊飯器で炊くんです。これも忘れました?」「・・・・・・あ、あは・・・あっははははは!」「簡単ですからすぐに思い出せますよ」野菜を炊いたものなら知ってるけど、基本私達のご飯は玄米を蒸して強飯にしたり、水をたっぷり入れて煮るお粥がほとんどだっ...
「つくし様、終わりましたわ」「・・・ありがとうございます、志乃さん。うわぁ・・・私じゃないみたい///」「うふふ、よくお似合いですわ。では総二郎様をお呼びしますね。お客様もすでにお待ちのようですので」「・・・・・・は、はい!」今日は後援会の皆さんとの顔合わせの日・・・家元夫人から譲り受けた色留袖を着て、ドキドキしながら控えの間で待っていた。総二郎が選んでくれたのはすごく綺麗な袷の色留袖で、地色は象牙色、柄はすべて手...
夏美さんとホームセンターに行くと、真っ直ぐ向かったのは「キッチン○○」ってことろ。(↑○○=用品だが、まだ漢字が読めない)そこにはキラキラした(金属)ものが沢山あるんだけど、私には何のことやら・・・だから全部彼女に任せることにした。まずは”包丁”・・・「このまえ買ったかどうか忘れたんですけど、2つあっても良いと思うので」「は~~い」「ぺティナイフも買いましょうか」「・・・は、は~~い」(←わかっていない)夏美さんが...
お義母様との話し合いが終わった翌日から、私はいただいた着物を着て本邸を歩くことになった。そしてここではお義母様から家元夫人に呼び方も変更・・・自分1人では何をしていいのかわからないので、常に家元夫人にくっついていた。玄関の花を変えたりするぐらいなら緊張はしないけど、生徒さんが来たときに挨拶するのは心臓が破裂しそうになる。なんたって生徒さんの半数は名家のご令嬢・・・今はフリーの総二郎がお目当てなんだもん。...
サンルームとやらに干された3日分の下着・・・白に鴇色(ときいろ・ピンク)に空色・・・乾いたらこれを畳んだらいいとのこと。でもそれを何処に仕舞うのかしら?この部屋には唐櫃(からびつ)もないんだけど・・・。出典:e国宝「どこに仕舞っても自由だと思いますけど、確かにお部屋にタンスはないみたいですね~」「服は向こうに置いてあるんですけど・・・」「あぁ、クローゼットですね?でもこんなに広い脱衣場があるし、ここにも棚がある...
つくしと葵が退院してから1ヶ月が過ぎた。梅雨の晴れ間で、気温もそう高くない日・・・・・宗家には客人が来ていた。それは神楽木裕也夫妻で、その手には葵のための祝い着があった。淡い黄色から赤への暈かしがあり、美しい配色の毬に組紐、そして熨斗目が描かれたもので、華やかな芍薬や桜なども。金彩も施され、煌びやかさもある極上のもの。それを見るつくしや祐子は目がテン・・・お袋は涙ぐみながらそれを手に持った。その場には親父...
「まだ始まっていない・・・とは・・・?」「えっと・・・・・・つくしさん、成人してますよね?」「せいじん?」「大人・・・ですよね?」”せいじん”・・・つまりそれが大人って意味?私達の頃は男性は「加冠の儀」つまり「元服」、女性は「裳着の儀」ってのがあった。元服は帝であればおおよそ11歳から15歳まで、皇太子であれば17歳までに行われてたけど、通常14歳前後が多かったみたい。元服式には「理髪の役」と「加冠の役」の役目があって、まず...
出産がこれほどまでに大変だったとは・・・・・・光翔の時には立ち会わなかったからわからなかったし、正直美涼の苦しみや痛みまで考えなかった気がする。でもつくしの様子を見ていると、彼女も必死に産んでくれたのだと・・・・・・もう少し感謝の言葉をかけてやれば良かったと思った。と同時に、これだけの思いをして生んだ光翔を愛おしく思えなかったことに対して疑問が湧いたが・・・「・・・総二郎、どうかした?」「あ、いや・・・なんでもない。...
夏美さんが来てくれたので安心して全身の力が抜けた・・・けど、この人に色々と教えてもらわないといけないので、「よろしくおねがいします!」と元気よく挨拶♪中に入ってもらって、まずは・・・・・・何をする?「え~~~~~と・・・」「あぁ、お茶とか珈琲とかはいいですよ。仕事で来てるので気を遣わないで下さい」「・・・(あぁ、お茶を出すものなのね?そもそも炭汁(珈琲)は作れないし)・・・あはは///すみません」現代社会を知らないフリ...
5月31日は土曜日で、一颯の保育園はお休み。光翔くんの幼稚園もお休みで、子供達は朝から庭で遊んでいた。あんな風に走ったり飛んだり、しゃがんだりが身軽で羨ましい・・・と、自分のお腹をさすりながらそれを眺めて・・・・・・「・・・つくし、平気か?」「へ?あぁ~~~、うん、まだ平気」「陣痛が来る前に入院してもいいんじゃねぇの?」「そんなの病院に迷惑だよ。陣痛間隔が15分ぐらいで行く人もいるんだし」「でも・・・・・・」「そん...
「おはようございます、花沢課長///」「課長、今日も素敵なスーツですね~~♪」「・・・・・・・・・」「無口だけどそこがまた///」←ただの無愛想「ねぇねぇ、今日は少しワイルドな髪型じゃない?」←ただの寝癖「「「花沢課長、おはようございます~~~♪」」」「あぁ、おはよう・・・・・・」「「「きゃあああ🧡今日はご挨拶できたぁ🧡」」」そんな声もほとんど耳に入らず、床の大理石タイルに視線を落として歩いた。頭の中では1人にしてしまった...
墓参りから1週間が過ぎ、明日は桜の茶会。今回もつくしは準備だけで、当日は子供達の世話係。まだ後援会に何も話していないので、姿を見せないように離れで過ごすことにしていた。が、祐子は茶会終了後に挨拶するために数日前からその練習をしていた。お袋から譲り受けた着物を着て、光翔にも着物を着せて・・・その時は流石に一颯の事が気になったが、子供なのであまり深くは考えていないようで助かった。むしろ面倒くさいことをせ...
翌朝、やっぱり私はベッドから落ちて寝ていた。でも類がそこにマットレスってのを敷いててくれたので、今日は身体が痛くないなぁ~と思いながら身体を起こすと・・・もう類はこの部屋にはいなかった。「・・・あ、今日から仕事に行くって言ってたっけ・・・」いつまでも寝てるから、起こさずに出かけたのかと思って飛び起た私。その時にズボンの裾を踏んで転けそうになりなからも、ドアを開けて隣の部屋に行くと・・・・・・「おはよう、つくし」...
桜の茶会の10日前・・・彼岸の日に神楽木家に向かった。車中にはお袋の姿もあり、つくしが後部座席で一颯の相手をし、お袋は助手席。運転席の俺も少しばかり緊張するが、まだ祖母に慣れていない一颯のためにはこの方がいいだろうと思ったからだ。お袋は紫地の江戸小紋に紹巴織の名古屋帯。春らしい着物ではなかったけど、品があり、墓参りに相応しいものだった。「ねぇ、ママ。かぐらぎのおじちゃんはなんのお仕事してるの~?」「...
その日の夕ご飯も誰かが持って来てくれた物をレンジでチンして食べることになった。何度もやったから温めは完璧🧡そしてコンロでお湯を沸かすことも出来るようになった。ここでまた初めての物が出てきたんだけど・・・すごく軽くて四角くて、スカスカしてる?「類、これはどうやって食べるの?このまま囓るの?」「それはフリーズドライの卵スープだよ」「・・・・・・?」「あぁ、フリーズドライって言うのは真空凍結乾燥って意味で・・・・・・わ...
類が帰宅したのは21時。すぐに使用人から真利愛のことを聞き、部屋に入る前に加代のところに行くと、そこでは真音がウトウトしていた。スーツのまま真音を抱き上げると、安心したのかすぐに肩に顔を乗せて目を閉じる真音・・・類はそのまま夕食後の様子を聞くこととなった。「じゃあつくしが子供部屋に?」「はい、付き添うと仰いまして・・・風邪かどうかもわかりませんから、取り敢えず真音様を私の部屋でお預かりしましたの」「主治...
「・・・・・・・・・総二郎・・・お前、ちょっと・・・」「つくしちゃんは大丈夫なの?!」祥一郎が何か言い掛けた時、同時に特別室のドアが開いて、お袋が飛び込んで来た。しかも付き人が誰もいない・・・家元夫人が1人で外出なんて普段なら有り得ないが、それほどこの人もつくしと「孫」が心配だったんだろうと・・・俺はベッドに横たわるつくしの手を握ったままで、お袋はその手前にいた祥一郎を突き飛ばす勢いで俺の横に走ってきた。そしてつくし...
「こら、真音!遊び終わったらおもちゃは片付けなさいって言ってるよね?」「うわ!ママがおこったぁ~~~~!」「もうっ!人に任せちゃダメなのよ?そんな事するならもうおもちゃで遊ばせないんだから!」「やだやだぁ~~~!」「はい、じゃあ片付けて。いくらあなた達のプレイルームだからって、散らかしたままはダメなのよ?」「・・・・・・おこりんぼ!」「なんですって?!」「うわああぁ、またおこる~~~~っ!!」1階奥のプ...
『つくしちゃんがスケート場で倒れたんだ!今から救急車で西門の主治医の病院に運ぶから、お前もすぐに来い!』つくしが・・・・・・倒れた?一瞬何のことか判らず、思考回路停止・・・でも祥一郎は冗談を言うヤツではないし、その声はマジだった。しかも電話の向こうから聞こえるのは『返事はありません!』とか『病院まで何分ですか?』とか・・・そんな雑音が耳に入った途端に背中がゾクッとした。『お連れさんですか?救急車に同乗願います...
ドレス選びが終わると本格的になったのは英語とフランス語の挨拶だ。これはつくしだけではなく真音と真利愛もなのだが、子ども達は類が教えることになった。つくしには専属の家庭教師がつき、パーティーまでの間、毎日英語とフランス語の講習を受けることに・・・勿論簡単な日常会話のみだが、それでも気が重かった。そんな梅雨の晴れ間の、とある日曜のこと。リビングの真ん中で家族が輪になり、類による子ども達へのレッスン開始だ...
ラーメンを食べたら、まずは手袋を買いに行った。この季節に手袋なんてって思ったけど、作業服の販売店に行くとカラー軍手が売られてるからって・・・「しかも250円ぐらいで買えるんだよ」って爽やかに言われ、最近”○千万円”って言葉に慣れてるせいで逆に驚いてしまった。と言うか、祥一郎さんって西門家の血が入ってるのだろうか・・・?それともあの家を出ると金銭感覚が通常値にもどるのか?じゃあもしかして・・・私の方がバグってる...
それから数日間、つくし達は大きな問題もなく過ごしていた。少しばかり増えたことと言えば、真利愛と真音にパーティーでの挨拶を教えることだった。いくらこの豪邸に住んでいた真利愛でも、ビジネスパーティーには出席したことはない。真音に至っては堅苦しい服を着ることですら初めてだ。だからと言って3歳児に完璧なマナーなど出来るはずもないので、可能な範囲でのこと。特別な講師を招くわけでもなく、加代が教えるのだが、そ...
翌朝・・・サッちゃんは早朝から仕事だから、私が目を覚ましたときにはもう部屋にいなかった。その部屋を見たら、私の荷物がドーンとド真ん中に・・・前に使っていた部屋だけど、今はサッちゃんと野田さんの部屋だから男性用品もあるし、さり気なく結婚式の写真も飾ってあるしで、私はすごく迷惑なことをしたんだな・・・と。なんたって昨日は総二郎と大喧嘩・・・それを新婚のサッちゃんに八つ当たりしまくった気がする。「頭痛いなぁ・・・身体...
その日はいつもより早く帰宅出来そうだったため、類は加代に電話をして、子ども達と一緒に食事をすると話した。すると加代から聞かされたのは今日の昼間の出来事・・・「えっ、真利愛とつくしが?」『はい。そんなに酷い喧嘩ではありませんが、つくし様を突き飛ばすような事をしてしまって・・・』「そう・・・・・・それでつくしは?」『必死に真利愛様を宥めておいででした・・・』「真利愛は?」『まだ謝ってはおられませんが、そのあとは真音...
夕食時、考ちゃんは茶道教室・夜間の部があるとのことでいなかったけど、その席には祥一郎さんが♥見飽きた顔じゃなくて、長男さんがいることを家元夫妻も喜んでるみたい♪特に家元夫人はお母さんの顔になってるし~。「どうなの?お仕事は上手くいってる?」「もうどのくらい手術したんだ?」「まだ勤務して数年だし、そんなに言えるほどじゃないって」「あら、じゃあ一人前とは言えないの?」「欧米だと一人前の心臓外科医になるに...
「つくし、何しているの?」「ん~?えへへ・・・・・・子ども達の服を縫うの。その型紙を作ってるんだよ~」「服・・・つくしが作るの?」「うん!それとね、ぬいぐるみ達の服とか、ランチョンマットとか・・・あ、類のはブルーだよ♪」「くすっ、今日は機嫌がいいんだね」「へっ///?あぁ・・・うん、まぁね~」真音と真利愛が寝てしまった後で類が帰宅し、つくしはその時もテーブルの上に型紙を広げていた。類はそれを覗き込んだが全く判らない...
なんとか巨大迷路を抜け出し、出口前で合流したのは16時。そこに道明寺さんはいなくて、私たちはアイスを食べながら待つことに・・・するとしばらくして数人のスタッフさんに連れられて、ブスッとした彼が戻ってきた。どうやら巨大迷路を破壊したことで、お説教&損害賠償の話があったらしいけど、道明寺さんは「全部立て直してやる!」と即答したらしい。スタッフさんもこの人が道明寺ホールディングスの人(経営側)だとわかり、...
その日の夕方・・・土曜だったので類は早めに帰宅できた。当然それを迎えに出たのは真利愛と真音で、「ぱっぱ~~!」と飛び付いたのは真利愛だ。真音も同じようにしたい様子だったが、真利愛の勢いに負けるのと、まだ素直に類に触れることが出来なかった。そんな真音に気が付いて、類はいつも真利愛の後で真音も抱き上げた。「うわ・・・真音、少し重くなった?」「ほんと?ぼく、大きくなった?」「まいあは~?まいあも大きくなったぁ...
巨大迷路の入り口に立つと、そこには2つのコースがあった。1つは体力勝負のアスレチックコース、もう一つは仕掛けを解いていく知力コース。迷路としての建物は1つだけど、中の通路は巧みに入り組んでいるため2つのコースが交わることはないそうだ。そのどっちに行くかってことで、再びジャンケンすることに。勝った方が好きな方を選ぶことにして、総二郎と道明寺さんがジャンケンすることとなった。「行くぞ、司!」「・・・そん...
つくしが花沢邸に来てから1ヶ月が経過した。それが5月の中旬で、ここで2人は婚姻届けを提出することになった。何故3ヶ月も先になったのかというと、社長に就任した類が多忙だった事もあるが、警察の事情聴取、つくしの税務処理と何かにつけてドタバタしていたのだ。それも全部終わり、類も落ち着いてきたために漸く自分達の届け出に着手できたのだ。しかも類と真利愛は養子縁組をしていたので、その辺りの修正手続きに弁護士を...
いきなり現れたのが恐ろしい顔の人形だったのか、それとも人間だったのか・・・それすらわかんない状況で彼に逃げられたけど、こんなところに1人で取り残されるのもイヤだ!だから楽しむ時間もなく暗闇の中を追い掛けたら、道明寺さんは何にもない壁に両手ついてゼイゼイしていた。・・・まったく、それが30歳の男のすることか💢!!それを怒ることも出来ず、薄気味悪いBGMの中、道明寺さんの背中をポンと叩くと・・・「うわあああぁっ!...
「・・・・・・マジか・・・」「俺、1回入ってみたかった♪」「悪い、俺は絶対に嫌だ。乗り物ならいいけど、あそこは無理!」「・・・・・・・・・は、入るだけなのか?」「うん、入るだけだよ~~♪だってお化け屋敷だもん!自分の足で歩くだけだよ~~」子供の頃からの夢だと言いながら、つくしは薄気味悪い建物の前で立ち止まった。そしてここでも言いだしたのがジャンケン。あきらが絶対に嫌だと言うから、俺と類と司とつくしの4人で2組に分かれ...
先日は大変お騒がせしました。たくさんコメントいただきまして、そのお返事も出来ずに申し訳ありません。多くの方にお話を楽しみにしていると言っていただき、とても感謝しております。しばらくお休みさせていただき少しは落ち着いたのですが、続編のお話で物足りなさが解消できるかどうかを考えると・・・どうなのかな~?と思いつつ・・・でも書いていたものだけは公開して、それでこの話を完全終了させることにしました。なので近々0...
初めはゆっくり動くジェットコースター・・・だんだん心臓がバクバクし始めて、喉がゴクリと鳴った。そうしたら花沢さんがボソッとひと言・・・「ジェットコースターってさ・・・恐怖心とは関係なく気絶する事があるんだよね」「は?」「極端な重力がかかると血液は下半身に集まって脳に届かなくなるから。特に気温の高い日は汗をかいて体内が脱水気味になってるから余計になりやすいんだって」「・・・・・・(今日、暑いけど)・・・」「ジェットコ...
「あ~あ、もう無理か・・・」「美作さん、何が無理なの?」「いや、何でもない(総二郎達のゴンドラからはもう見えない・・・なんて言えないし)。つくしちゃん、あと少しだからしっかり見ておかないと!」「は~~~い!」観覧車の後半になったら美作さんは私と向かい合って座り、何故かニヤニヤしていた。その意味は判らなかったけど、言われたとおりに窓の外を眺めて「もう地面が近くなった~!」と・・・その時目に入ったのはジェット...