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  • 2-XIV-14

    私の思い描くような環境をどうやってあなたのために作れるかを考えていたとき、男爵の友人の二人がこんな提案を私にしてきたのです。非合法の怪しげな溜まり場で途方もない利益が上げられるという驚くべき話がある。では堂々と賭博場を開設してはどうだろうかと。パリの住人であろうと外国人であろうと、自由な考え方を持つ教養人としての嗜みがあり、お金をうんと持っている人間であれば誰でも入れる賭博場を。ある程度慎重な予防策を取りつつ、社交界に影響力を持ち得るような女性のサロンにそのような賭博場を作れば、それは実行可能なのではないかと彼らは判断したのです。それで私のところに話を持ってきたというわけです。私に彼らの協力者兼管理者になってくれないかと頼みに……。自分がどういうことに関わろうとしているか深く考えもせず、私は同意しました。...2-XIV-14

  • 2-XIV13

    自分が被っていたかもしれない危険を思っただけで、ウィルキー氏は身震いした。「ブルル……、ああ、よくそこで躊躇してくれたもんです」と彼は呻った。マダム・ダルジュレは聞いていなかった。「もうこれでおしまいにするのだ、と私は苦労して立ち上がり、橋の欄干につかまって身を支えました。そのときすぐ近くでぶっきらぼうな声がしたのです。『そこで何をしている?』と。私は振りむきました。街の巡査が声を掛けてきたのかと思って……。でもそうではありませんでした。ガス灯の光で見えたのは三十歳ぐらいの男で、顔つきはいかついけれど、正直そうでした。どうしてこの見ず知らずの他人が、無限の信頼を置ける人だと咄嗟に思ったのか、私には分かりません。おそらく死の恐怖が、自分でも無意識に、誰かの憐憫の情に縋りつかせたのでしょう……。とにもかくにも...2-XIV13

  • 2-XIV-12

    私は自分に言い聞かせました。自分は生きていく、働いて、ウィルキー、あなたを育てるのだ、と。裁縫のような女がする仕事の全般において、私はとても上手だったのです。楽器の演奏も得意だったので、あなたと私が生きていくのに最低限必要なお金、日に四、五フランはたやすく稼げるだろう、と思っていました。でもすぐに、自分が馬鹿な幻想を抱いていたことに気づいたのです。音楽のレッスンをするには生徒を探さねばなりません。どこで見つけることができるか?私には伝手もないし、あなたの父親が飽くことなき執念で私たちを探し回っていることは間違いないので、通りに出て自分の姿を人目に曝すことさえ怖くて体が震えるというのに。それで私はお針子の仕事へと方針を変え、おずおずと何軒かのお店を訪ねました。ああ、一軒ずつ店を回って仕事が貰えないかと尋ね歩...2-XIV-12

  • 2-XIV-11

    私が自分の権利を行使しない決心をしたと彼に伝えた時、彼は理解が出来ない様子でした。あれほど屈従させられてきた奴隷が反逆するなどとは、彼には考えられないことだったのです。でも私の決心が動かないと知ったとき、彼は怒りに悶絶するのではないかと思うほどでした。彼の生涯の夢だった莫大な財産が、私の一言で手の届かないものになってしまう、それなのに私にその一言を言わせることが彼には出来ない、それが彼の憤怒に火をつけたのです。それからというもの彼と私の間の争いは、彼の持ち金が少なくなっていくほど凄惨さを帯びて行きました。でも彼がいくら私を痛めつけようが無駄でした。私は殴られ、命を脅かされるような目に遭い、血まみれで意識を失った状態で髪を掴んで引きずり回された……。でも、自分が復讐を果たしているという思い、私と同じ苦しみを...2-XIV-11

  • 2-XIV-10

    この瞬間からはっきりと、彼は大きく動揺し、命の危険に四六時中脅かされている男の苦しみを見せるようになりました。それからほどなくして、彼は私に言いました。『こうしてはいられない!明日トランクの準備ができたらすぐ、俺たちは南へ出発する……もうゴルドンという名前は名乗らない……グラントという名前で旅をするんだ』私は問いただしたりしませんでした。残酷な暴君のような彼のやり方に慣らされていたので、何も聞かずに彼に従うことが当たり前のことになっていたのです。鞭の恐怖に怯える奴隷のように……。しかしこの長い旅の間に、この逃避行の理由と何故名前を替えねばならなかったか、を彼の口から聞くことになったのです。『これは呪いだ』と彼は言いました。『お前の兄、あんな奴くたばってしまうがいい!そいつが俺を何としても探し出せ、と言って...2-XIV-10

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