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エミール・ガボリオ ライブラリさんのプロフィール

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ブログタイトル
エミール・ガボリオ ライブラリ
ブログURL
https://blog.goo.ne.jp/puereternus2
ブログ紹介文
19世紀フランスの探偵小説作家ガボリオの未邦訳作品を翻訳しています。
更新頻度(1年)

243回 / 365日(平均4.7回/週)

ブログ村参加:2016/02/12

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エミール・ガボリオ ライブラリさん
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エミール・ガボリオ ライブラリ
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エミール・ガボリオ ライブラリ

エミール・ガボリオ ライブラリさんの新着記事

1件〜30件

  • 2-14-8

    「現場から発見された物についてですが」と彼は言った。「これらをご点検頂くためにこちらに置いておきましょうか?」ソーンダイクは断るだろうと私は思っていた。なんとなれば、そういった細々した物に隠された謎なんてもうないのだし、いずれにせよ我々には無関係な代物だからだ。ところが驚いたことに彼は承諾し、一覧をチェックしてからブランディ警部が用意していた預かり証にサインした。「それから箱に入った物については、ポルトンさんから部下にどこに運べばいいかの指示をして頂けますか?」ポルトンはそれまでずっと静かに標本を調べ選り分けをしていた(その間話されていることを一言漏らさず注意深く聞いていたと私は断言する)が、これを聞いて立ち上がり、その箱はまず実験室に運んで貰うのが良いでしょうと提案した。ソーンダイクが同意したので、彼は搬入を...2-14-8

  • 2-14-7

    「動機があるからといって何になるんだね?君も法律家なんだから分かっているだろう。なんらかの行為を起こすための動機が存在しても、それはその動機を持った人間がその行為をなした証拠とはならない、それ自体ではね。君の言うとおり、ヘヤーにはモックスデールを亡き者にせんという動機があったかもしれない。しかし実際に彼がその行為に及んだかもしれないという推測に少しでも可能性を与えたいなら、彼に殺害の機会と意図があったことを証明せねばならないだろう。しかしたとえそれを証明できたとしても、それは犯罪の可能性が存在したというだけで、そこから先には進めない。刑事告発のためには、その行為が為されたことを示す証拠が必要だ」「まさに仰るとおりです」とブランディ警部が言った。「そして現状は、ヘヤーが従兄弟を殺害する意図を持っていたという証拠は...2-14-7

  • 2-14-6

    「それはセシル・モックスデールでも、同一人物とは限らないのでは?」と私は可能性を指摘した。「彼についてその人たちは何も知らないと言いましたね?身元を確認しようとはしたんですか?」「その必要はありませんでした」とブランディは答えた。「というのは、第二受益者というのがもう一人の甥でガスタヴァス・ヘヤーという名前でしたからね。既にヘヤーとモックスデールは従兄弟同士だと分かっていましたので、身元確認の問題はこれでけりがつきました」ブランディ警部がこの説明をしているうちに、彼のいつもの笑顔の上に、してやったりという色が見えた。それで彼がこっそりソーンダイクの反応を窺っていたことが分かった。しかしそんな必要はなかった。ソーンダイクは興味を惹かれていることを全く隠さなかったからだ。「その二つの遺贈は互いに関係しあっているかど...2-14-6

  • 2-14-5

    「つまり、ヘヤー氏が姿を消したというわけですね」とソーンダイクが言った。「彼の足取りを掴む方法はあるのですか?」「あらゆる手段を使って探しているところです。ですが難しいところがありましてね。その男のはっきりした人相の特徴が掴めてないんです。それに、たとえそれがあったところで、『お尋ね者』の捜索と同じ手を使うわけには行きません。この男が普段行きつけている場所に姿を現さないのは不思議ですが、そのこと自体は犯罪でも何でもないのでね。我々としては、彼が姿をくらましている理由が分からないのですよ。彼に対しては何の容疑もありません。火災の現場に彼はおらず、別の人間がいたのですから、火事の発生に関与していると疑うこともできません。ただ、ちょっとした謎であることは確かで。なにか我々が見落としていることがあるのでは、と思う次第な...2-14-5

  • 2-14-4

    「そんな、ブランディさん」とソーンダイクは言った。「些細なうっかりなど、どうということはないですよ。それに私たちに必要な情報はもう得ていると思いますしね」「そうかもしれませんが、思い違いということもあり得ます。なにはともあれ、発見された物をここに持ってきました。もしまだご興味がおありならお調べください。随分遅くなってしまいましたが」「そうですよ!」と私は叫んだ。「いわゆる後の祭りってやつじゃないですか。でも、何を持っていらしたんです?何ですか一体?」「死因審問でご覧になった証拠品ですよ。このアタッシェケースに入れてきました。後でごゆっくり調べたいとお思いなら、ここに置いていきます。後で返して貰いますが。その他の物は私の車の箱の中です。そちらの方は私どもではもう済みましたので、そちらで検査が終わられたら処分してく...2-14-4

  • 2-14-3

    しかし数日後、その話題を持ちだしたのは外ならぬブランディ警部であった。そしてそのやり方もいかにも警部らしく抜け目のないものだった。晩の八時半頃だったと思うが、夕食を早めに切り上げたソーンダイクとポルトンと私は会議のようなものを開いていた。『比較サンプル』に用いられる体毛、繊維等の顕微鏡標本が長年の間に膨大なコレクションに膨れ上がっていたので、それらの点検・再分類を行っていたのである。ちょうど新しいキャビネットの最初の一つが終わり、引き出しにラベルを張り付けていたとき、聞きなれないノックの音が聞こえた。まるで申し訳ありませんと謝っているかのような音で、叩いているのは内側のドアの小さなノッカーだった。「くそ、いまいましいな!」と私はイライラして叫んだ。「外側のオークのドアを閉めておくんだった。一体どこの誰なんだ?」...2-14-3

  • 2-14-2

    「まさにそのとおりで」とストーカーが答えた。「もしも彼が火事を起こした本人だとしても、それは無意識のことでしょうし、計画的にやったとは考えられませんからね。ところで、このモックスデールという名前で思い出しましたが、偶々というか、奇妙な偶然ですが、彼はこちらで生命保険に入っていたんです。というわけで我々は支払いを二重にしなけりゃならんのです」「多額の保険金を?」とソーンダイク博士が尋ねた。「いや、ほんの千ポンドです」「その請求にはもう応えたんですか?」「まだですよ。実は今日に至るまでまだ請求は来てないんです。我々の方からも請求してください、とわざわざ言うことはしませんからね。しかし、いずれは支払わねばならないでしょう。貴方をもってしても、あれが自殺だとは言えないでしょうから」「そうですね」とソーンダイクも認めた。...2-14-2

  • 第14章 ブランディ警部の来訪

    第十四章ブランディ警部の来訪審問の終わりをもってビリンドン・ストリートの火災及びモックスデール死亡事件は終結したように思われた。何らかの疑わしい点あるいは重要な問題点が今後生じるようには思えなかった。ソーンダイクのメモとポルトンの写真が保存用ファイルに収められてしまうと、どうやらこの件はこれにて落着と思われた。少なくとも私はそう思った。しかしその後の成り行きをみると、ソーンダイクがこの件は今後なんらかの発展なきにしもあらず、と思っていたことが明らかになる。この件に関する私の見解はストーカーのものと大体同じと言える。というのは、我々が他の用でシティに行った際ついでに彼の会社に立ち寄ってみたのだが、彼はおよそ次のような感想を述べたのだった。「私どもから見れば、どうもすっきりしない事件でした。具体的にどこがどうという...第14章ブランディ警部の来訪

  • 2-13-6

    「そうですね」と検視官は言った。「しかしそれでは本審問には間に合いません。しかしながら、今回の件にあまり不明な点は見られないようです。死亡者の名前はグリーン氏によって明らかにされていますし、焼け跡の瓦礫から発見された品々、特にパイプに彫られたイニシャルからセシル・モックスデール氏のものと結論づけられるでしょう。その人物については殆ど何も分かってはおりませんが、本審問の目的のためには十分解明されたと言っていいでしょう。具体的な事実が完全に出揃うまで審理を延期するべきかもしれませんが、私としてはそれが必要だとは思いません。警部、あなたは更に何か言うべきことがありますか?」「いえ、ありません」とブランディは答えた。「知っていることはすべてお答えしました」「それでは」と検視官は言った。「証人喚問はこれで終わります。陪審...2-13-6

  • 2-13-5

    「意味のありそうな物は全然見つかりませんでした。万力と工具がいくつか、それとおそらく彼のものと思われる八日巻き時計(一週間に一度ネジを巻くだけでよい時計)の残骸がありました。その他にも彼の所有になるかもしれない物はありましたが、映写機の残骸と混じっていましたし、店で販売されていた品物とか上の階の倉庫の物とかであった可能性もあります。しかし小さな個人的な物が最も重要と思われます。ここにそれらを持って来ましたのでお調べください」こう言って彼は書類鞄から蓋がガラスになっている小さな箱を取り出した。その中にはカフスボタン、ネームプレート、髑髏の付いた陶製パイプ、そして半分溶けた金時計が敷き詰められた生綿の上に並べられていた。彼はその箱を検視官に渡し、検視官はそれを点検した後、陪審長に手渡した。陪審長が他の陪審員と共にそ...2-13-5

  • 2-13-4

    「警部にお尋ねしますが、本審問に掛けられている男性の死に関して、警察では一定の捜査を行ったのですね。これまで証人の方々の証言を聞かれた後で、何か付け加えるべき事実がありますか?」「特にありません」とブランディ警部は答えた。「現在行っている捜査は、間違いのないように確認を取るという味合いのものにすぎません。全焼した家のがれきの中から一人の男の死体が発見された。我々としては、その男が誰なのか、そこの借家人でないことは分かっていますので、どういう事情でその家に居たのか、が知りたいわけです。これまでの捜査で確認されたことは、グリーン氏の供述内容と合致するものです。すなわちヘヤー氏によってセシル・モックスデールという名前だとされるその男性のように思われます。しかし我々の捜査はまだ完全には終わっておりません」「それは大まか...2-13-4

  • 2-13-3

    「そうだと断言できますか?」「いいえ。これは単に形状を観察して得た考えにすぎません。歯突起の折れた表面はかなりの時間火に曝されていますので破砕は収縮が起こる前に生じたと考えられます。従って、歯突起を折るのに必要な力は収縮によるよりも大きなものだったに違いない、と私には思われたのです。ですが、これは私の個人的見解にすぎません。ロバートソン医師は、破砕は収縮によるものと考えておられます。どちらの可能性もあります」「仮に、死因が首の脱臼であったとしますと、その状況に更にどんな意味が付け加えられますかか?」「その場合、付け加えるべきことは何もありません。もし、出火時にその男性が家に一人で居たのなら、死の直接原因が何かは重要ではないでしょう」「知られている事例の中で、首を骨折するという場合がありますか?」「多くの場合が可...2-13-3

  • 2-13-2

    「あなたはこの男性の大まかな外見を述べてくれました。何か身元を特定できるようなものは発見しませんでしたか?」「体の大きさ以外のものとしては、この男性はかなり健康な歯を持っていたことぐらいでしょうか。身体の寸法と全体的な特徴は、もし心当たりがある場合は較べてみるのに役立つことでしょう。特にこれといった特徴ではありませんが、死亡しているかもしれない行方不明者がある場合、この死体がそれに合致するか否かの手がかりになりますね」「そうですね」と検視官は言った。「しかしそれは警察にまかせるべき問題で、我々のではありませんね。その他に、何か言うべき点がありますか?」「ありません」と証人は答えた。「それで全部だと思います」そこで直ちに供述書が読み上げられ、署名されると、証人は退席し、代わってソーンダイク博士が証人席に座った。「...2-13-2

  • 2-13 事実と評決

    第十三章事実と評決「あなたは現在安置室にある死体の検死をなさいましたね?」と予備質問がなされた後、検視官が尋ねた。「はい、入念に検死を行いました。その死体は身長約五フィート十インチのがっしりした体格の男性のものと思われます。年齢は特定がやや困難で、四十歳から五十歳の間という以上のことは言えませんが、それすらも確実ではありません。この死体は非常な高温にさらされたので、柔らかい皮膚組織は完全に炭化され、部分的には完全に燃焼し尽されています。脚の部分を例にとりますと、白骨化された部分しか残っておりませんでした」「陪審がこの死体を目にした際、非常に印象的だったのはその奇妙な姿勢です。このことには何か意味があるとお考えですか?」「いいえ。胴体及び四肢は異常な高温のもとに置かれると、その柔らかい部分が収縮するため変形が生じ...2-13事実と評決

  • 1-XIII-16

    相手を見定めたと思ったのか、最初に口を開いたのは侯爵だった。「つまるところ」この問題から解放されたいと思い、やや威嚇的な口調で彼は言った。「もうすっかり腹は決まっておる、というわけか。拒絶は最終的なものか?」「さい…しゅう…てき、です!」「私の説明を聞くまでもない、と?」「時間の無駄です」この辛辣な返答を聞くと、ド・ヴァロルセイ氏は拳骨を固め思い切りデスク殴りつけたので、上に載っていた書類が三、四枚床に落ちた。彼の怒りはもはや見せかけではなかった……。「何を画策しておるのだ!」彼は怒鳴った。「一体何が出来ると思っている?誰のためにこのわしを裏切るのだ?どれだけの金のためだ?どんな計略だ?……用心するがいい……わしは自分の身を守ってみせる、神の名にかけて!おお、そうとも……しくじれば脳天をぶち抜く覚悟の出来ている...1-XIII-16

  • 1-XIII-15

    彼は博打打ちがカードを見ることを恐れるが如く、またアル中が強いリキュールの匂いを嗅ぐことを恐れるが如く、運を天に任せる勝負の誘惑を恐れていた。つまるところ彼は侯爵の巧みな弁舌を恐れていたのだ。もう既に当初の心積もりを超えるところまで深入りさせられてしまったではないか?それに、疑義を差し挟んだりするのは半分言い負かされたようなものだということも彼はよく知っていた。言い負かされるよりは何も聞かない方がましだった。「もう何も仰いますな、侯爵」と彼は急いで答えた。「無駄でございます。私には金がありません。昨夜貴方様に一万フランご用立てしようと思えば、プロスペル・ベルトミー氏から借用するしかなかったでしょう。本当でございますよ!それに、仮に金があったとしましても、私の返事は同じです。『出来ませぬ』と。人は誰しも、自分の主...1-XIII-15

  • 1-XIII-14

    「無駄なお喋りはよそうではないか」彼は言った。「お互い、そんなことに費やす時間はない筈だ。私は貴殿を騙そうとしたことなど一度もない。だから頼む。私が貴殿と同じぐらいの切れ者だと認めては貰えぬだろうか」相手の反応を待たず、彼は先を続けた。「私が今日ここへ来たのは、勝負はまだ貴殿が思うほど絶望的状況ではないからだ……。確かに最初は茫然とした。が、その後つらつら考えてみるに、私にはまだ最後の手段が残されておるのだ。あんたも知らぬ手段が。あんたも、ほかの誰もがマルグリット嬢は無一文だと思っておる。そうだろ?ところが私には、彼女は少なく見積もっても三百万の価値があるのだ」「マルグリット嬢に?」「そうとも、二十パーセントの親方。彼女が私の妻になったら、その翌日私は十五万リーブルの年利収入を手にすることになるのだ……しかしそ...1-XIII-14

  • 1-XIII-13

    ド・ヴァロルセイ侯爵は、顔を紅潮させ、眉に皺を寄せ、拳を握りしめながら聞いていた。今にも爆発しそうに見えたが、実のところは冷静だった。その証拠に、彼はフォルチュナ氏の無意味なお喋りの下に潜んでいる真意を見抜こうとして、その態度を必死に観察していた。道すがら彼は『親愛なるアラブの親方』と自分が呼んでいる男がこの損失に我を忘れるほど絶望し、喚き散らし、冒涜の言葉を吐き散らしていることだろうと思っていた。ところが全然違い、相手はこの上なく穏やかに落ち着き冷静で、澄ました顔で不幸の甘受を説くではないか。『これは一体どういうことだ?』と彼は不安に胸を締め付けられながら考えていた。『こやつめ、何を考えてやがる?俺を倒すための思いがけぬ攻撃を準備していると千対一で賭けてもいいぞ』それから高慢な冷ややかな態度で口を開いた。それ...1-XIII-13

  • 1-XIII-12

    「面倒を見なきゃいけない?お前がか?」「そうっすよ!俺だって、やるときゃやるんで!うちのお袋、身体が弱って一年前から働くことが出来ないんすよ。俺がいなけりゃ誰がお袋におまんまを食わせるんで?あのろくでなしの親父じゃないっす。セルムーズ公爵から貰ったお金を俺たちには一文も渡さず全部自分で食っちまった親父ですぜ!それに、おいらも皆と同じで金持ちになりたいし、楽しくやりたいっす……将来は立派な馬車を持ったりなんかして……以前のおいらみたいな小僧が馬車のドアを開けてくれる……そしたら必ずその手に百スー握らせてやって……」ここで家政婦のドードラン夫人が入ってきたので彼は遮られた。彼女はすっかり動転した様子でノックもせずに飛び込んできたのである。「旦那様!」と彼女は叫んだ。『火事だ!』と叫ぶのと同じ語調である。「ド・ヴァロ...1-XIII-12

  • 1-XIII-11

    この点検作業は毎日行われるものであったが、今日は会計係が報告をしている間、フォルチュナ氏は心ここに在らずといった様子であった。彼はしょっちゅう手を止め、外からほんの小さな物音が聞こえてくる度に耳を澄ました。というのは、石炭卸売商人との面談の前に彼はヴィクトール・シュパンをド・シャルース伯爵の下男のカジミール氏のもとに送り、伯爵に関する最新の情報を集めてくるよう言いつけていたのだ。それから一時間以上も経つのに、いつもなら仕事の速いシュパンがまだ戻ってきていなかった。しかしついに彼が姿を現したので、フォルチュナ氏は会計係を身振りで追い払い、シュパンの方に向き直った。「どうだった?」と彼は聞いた。「もう誰もいませんやね」とシュパンは答えた。「伯爵は亡くなりました……彼は遺言を残さなかったっていう話です……てわけで、あ...1-XIII-11

  • 1-XIII-10

    「昨日訪問した債務者数は?」とフォルチュナ氏が尋ねた。「二百三十七人です」「で、受け取り額は?」「八十九フランで」イジドール・フォルチュナ氏の顔に満足を表す皺が寄った。「悪くないな」彼は言った。「なかなか良いじゃないか」そして仕切り棚の中から分厚い目録を取り、それを開きながら言った。「ちょっと待った!記録しておこう」すぐに奇妙な作業が始まった。フォルチュナ氏が名前を一つ一つ読み上げると、会計係が帳簿の余白に書き込んである数字を答えていった。「〇〇氏、××氏……」と名前を挙げられる度に、会計係は次のように続けた。「…は二フラン、…は転居しました、…は留守、…は二十スー、…は支払い拒否……」フォルチュナ氏はどのようにしてかくも多くの債務者を見つけることができたのか?そしてこのような少額の勘定に甘んじているのは何故な...1-XIII-10

  • 1-XIII-9

    ルプラントル氏は、こうなったらもう仕方がないと観念した男の引き攣った笑いを浮かべ、それでも何らかの厚意を要求しようとした。が、フォルチュナ氏は占い師のような厳粛さを崩さなかった。彼が三千フランと引き換えに渡したのは、厳密に先ほど彼の言った額の株券であり、それ以上でもそれ以下でもなかった。更に重々しい声でこう付け加えさえした。「ちゃんと十二万フランあるかどうか、お確かめください」相手は数えもせず、紙屑の株券をポケットにねじ込んだ。が、立ち去る前に今月末彼の債権者たちに貸借対照表を提示する肝心なときには力添えをしてくれるという約束をフォルチュナ氏に取り付けた。債権者たちに「この人は随分と不運に見舞われた人だ」と思って貰わねばならないからだ。この手のちょっとした仕事はフォルチュナ氏のお手の物だった。相続人不明の遺産を...1-XIII-9

  • 1-XIII-8

    しかし相手は最後まで言わせなかった。「ああ分かりました!」とルプラントル氏は叫んだ。「分かりましたとも。私は在庫を売り払い、安心してその金を自分の懐に入れられるというわけですね。私の財産状況を示す何万フラン分かの株券がそこにあるわけですから……」彼は喜びに有頂天になった。「貰います」と彼は注文した。「十二万フラン相当の株券を。それと、何種類かの株を取り混ぜてくださいよ。債権者たちに多種類の株券を見せてやりたいので」フォルチュナ氏は鹿爪らしくまるで紙幣ででもあるように株券を数え、選り分け始めた。その間にルプラントル氏は財布を取りだした。「おいくらになりますか?」と彼は尋ねた。「三千フランです」相手は飛び上がった。「三千フランですって!」彼はオウム返しに言った。「御冗談でしょう!これらは十二万フランという額面のただ...1-XIII-8

  • 1-XIII-7

    「ということでしたら大丈夫ですよ。売って、その代金を安全な場所に保管することです」良心の咎めるルプラントル氏は耳を掻いた。「あの、お言葉ですが」と彼は言った。「私もその方法は考えました。ですが、そのやり方は、その……不正直と言うか、酷く危ないやり方のように思えるのですが……。私の資産が減少しているのをどうやって説明したらいいのですか?私の債権者たちは私の敵なのです。なにか怪しげな素振りを嗅ぎつけたら詐欺破産として私を告発するでしょう。そうしたら私は刑務所に放り込まれ、そして、そして……」フォルチュナ氏は肩をすくめた。「私が方策を提案するときは」彼はきびきびと先を続けた。「危険なしにそれを遂行する方法も併せて提示します。よくお聞きください。仮に、あなたが現在ではすっかり値打ちが下落した株を高価な価格で買ったことが...1-XIII-7

  • 1-XIII-6

    依頼人は顔を赤らめた。真実を告白するには勇気が必要で、彼には辛いことだった。「つまりこういうことです」とついに彼は言った。「債権者の中には私の敵がおりまして、強制和議(破産手続において,破産的清算が破産債権者にとって必ずしも利益にならないことから,破産者の経済的立ち直りを助けて債権の回収をはかることを目的としたもの)に応じてくれそうもないのです……もうそう決まりましたもので……つまり私の財産一切合切を取っていくというのです……私は一体どうなるんでしょう?飢え死にするしかないんでしょうか!」「それは痛ましい未来図ですね」「でしょう?だからこそ、お願いに上がったわけで……もし何とかなるんでしたら……危なくないような方法で……私は正直者なんです!……その、財産の一部をですね、なんとかできたら……こっそりと……言ってお...1-XIII-6

  • 1-XIII-5

    そして彼女たちはまさに一番高いところから転落するので一番の深みにまで沈み、最も文明から隔たった不浄な掃き溜めのようなところに行き着く。「ああ早く明日にならないかな」とフォルチュナ氏は思っていた。「朝になったらすぐ仕事に取り掛かるんだ!」しかし明け方に彼はうとうとし始め、九時頃に家政婦のドードラン夫人が来たときにはすっかり寝入っていたので、彼を揺り起こさなければならなかった。「従業員の人たちはもう来てますよ」と彼女は大声で彼に言った。「お客様が二人お見えです」フォルチュナ氏はベッドの足元に飛び降り、十五分も掛からないうちに身支度を済ませ、自分の執務室に入りながら部下に声をかけた。「お通ししろ!」こんな日に来客を迎えるのは全く気の進まないことだったが、シャルース事件がまだどうなるか分からないというのに他を全部断るの...1-XIII-5

  • 1-XIII-4

    フォルチュナ氏はヴァロルセイ侯爵に用立てた四万フランが無駄になったことを知ると最初は激怒し、それはすぐに失われた金への嘆きに代わった。それも尤もなことである。しかし、彼はすぐに作戦を変更し、自分にこう言い聞かせた。ド・シャルース伯爵の突然の死で自分はこれだけの損失を被ったかもしれないが、あれだけの莫大な遺産の相続人をうまく見つけ出すことが出来れば、そこから得られる儲けはこの損失を補って余りあるものになるだろう。あぶく銭はたちまち消える、などと言うが、あっけなく消えてしまったものは同じようにすぐまた戻ってくるものだ、と。彼には希望を持つ根拠があった。かつてド・シャルース伯爵からマルグリット嬢を探し出すようにという依頼を受けたことがあったので、彼は伯爵の内部事情をかなり知ることができるところまで入り込んでいた。フォ...1-XIII-4

  • 1-XIII-3

    友人、敵、債権者、債務者のすべて、更に生前に彼が知っていたあるいは近づきのあった人々すべてに、次のような返答が返ってくるまで聞きまわるのだ。『ああその人なら私と同郷人でしたよ……直接話したことはありませんが、兄弟の一人を知ってました……叔父さんの一人を知ってます……いとこの一人と友達でしたよ……』等々。ときにはこのような調査に数年を要することもあり、前倒しの資金や移動に伴う出費、ヨーロッパ中の新聞に掲載する巧みな言い回しの広告、等が必要であった。しかし一旦このような結果が得られれば、追跡調査人はホッと一息吐く。彼にしてみれば七十五%は成功したも同然なのだ。最もしんどい部分、つまりどうしても偶然に頼るしかない仕事は終わったのである。後は非常にデリケートな如才なさや手練手管を必要とする社交上の問題となる。ここで警察...1-XIII-3

  • 1-XIII-2

    「このようにして失われる金の二十分の一でも手にすることが出来たら」とある頭の良い男が二十年ほど前に嘯いたものだ。「私なら一財産築いてみせる!」これを言ったのはアントワーヌ・ヴォドレという男で、パリ中の人々がその名を知っていた。というのは、かのリスカラの裁判で、如才ない彼は愚かにも騙された男を演じ一躍有名人となったからである。このように公言した後、彼はある考えを思いつき、それを誰にも言わず密かに温めていた。六カ月間彼はその考えを練り上げ、検討し、あらゆる角度から吟味し、長所及び弱点を見定めた。そしてついに実行に移すに十分と判断した。早速その年に、どこから調達したか誰も知らぬ資金を基に新たな事業を始めた。それは新しい需要に応えるべく設立された前代未聞の奇妙な稼業であった。アントワーヌ・ヴォドレは初の『探し屋』になっ...1-XIII-2

  • 1-XIII-1

    XIII殆どの人はあまり考えないが、被相続人がいない相続財産は毎年国に没収されることになる。このようにして国庫に入る額は相当なものだ。家族の絆がどんどん弱められ、個人が我欲に駆られ、かつて大切にされた血縁や家名による連帯は見向きもされなくなった昨今にあっては、これもまた頷けることだ。年長者たちはお互いに会うこともなくなり、子供たちはお互いを知らず、第二世代ともなればもはや赤の他人も同然となる。冒険的な気質を持ち故郷を離れる若者や父親の意に反した結婚をする娘は、たちまちその存在を忘れられる。彼らは一体どうなったのか?誰も心配する者はいない。彼らが幸せにしているのかそうでないか、確かめてみようとする者もない。ただ何らかの助けを求められたらどうしようと不安がるのみである。このように忘れられた者たちは、彼らの方でもまた...1-XIII-1

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