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  • 2-XII-1

    XIIトリゴー男爵は喜んでパスカルの指示に従うこと、そしてどんな提案も何の異議も唱えず受け入れる、という好意を示してくれた。それを疑うなどは全く子供っぽいことであった。彼と男爵は共通の利害を持っていることを思い出せばそれでよかったのだ。彼らは共通の敵に対し同じような憎悪を抱いていたし、同じように復讐の思いに取り付かれていたからだ。それに、男爵と会って話をしてから起きた数々の出来事も男爵の性格を疑わせるようなものは何もなかった。あれ以来彼が遭遇した場面というのはマダム・ダルジュレとその破廉恥な息子ウィルキー氏の間に起きたおぞましい諍いであり、そのとき彼はコラルト子爵の悪辣さを知ったのだった。しかし不幸というものは、人を臆病にそして疑い深くするものだ。パスカルの警戒心はヴィル・レヴェック通りにある男爵邸に到着...2-XII-1

  • 2-XI-15

    そうは言っても、マルグリット嬢がどうなったのか、様子を知ることは大事なことであった。パスカルは一心に考え、突然叫んだ。「ヴァントラッソン夫人ですよ!彼女がいる。彼女を利用しましょう。何か口実を見つけて彼女をド・シャルース邸にお使いに遣るのは、そう大して難しいことではないでしょう。彼女は召使たちとお喋りをする筈です。僕たちは後で彼女に話をさせるんです。そしたらあそこで何が起こっているか、手に取るようにわかりますよ」パスカルの頭に閃いた解決法は勇気の必要なものであった。ほんの昨日なら、とても取り上げようとは思わなかったであろう……。しかし心に希望を持つ者にとって勇気ある決断は難しくはない。彼はだんだん、言わば一時間ごとに成功の可能性が膨らんで行くのを感じ、最初はとても乗り越えられないと思われた障壁もなぎ倒せる...2-XI-15

  • 2-XI-14

    これまで全く矛盾していると思えた状況に、今や納得が行ったのだった。ほんの少し前まで、彼はまだこう思っていた。マルグリットの父であるド・シャルース伯爵が死の間際に、パスカルを絶望に陥れるような誓いを彼女に立てさせた、という手紙をマルグリットが彼に書いてきた。ところがド・ヴァロルセイ侯爵が言うには、ド・シャルース伯爵の死はあまりに突然訪れたので、マルグリットを認知することも、その莫大な財産を彼女に遺すと言い残すことも出来なかった、と。この矛盾は一体どういうことか。どちらかが間違っていると言わねばならぬ……。どちらが?……手紙の方だという可能性は非常に高い。偽手紙は、マダム・レオンの手になるものであるとしか考えられない。この点での確信は絶対で揺るぎのないものであった。そして動かぬ証拠を手に入れたとまでは言えない...2-XI-14

  • 2-XI-13

    「ええ、それに」と彼女は語調を強めて言った。「この手紙が誰かの文章を丸写ししたものであるだけに、これらの間違いは一層注目すべきものになるわね……」「えっ!」「まさにそのまま、引き写しよ。昨日の夜私はまたこれを取り出して読み返していたとき、これと同じものをどこかで読んだことがある気がしたの。それがどこだったか、どんな状況でだったか何時間もずっと思い出そうとしたけれど駄目だった。ところが今朝になってふと思い出したの。職場の女工員達がそれをよく使っていたのよ。私はそれを読んでよく笑ったものだわ……。それで買い物に出かけた際、本屋に立ち寄ってその本を買ってきたのよ。ほら、そこの暖炉の隅に置いてあるわ。取ってきて」パスカルは言われた通りにし、その本を見て驚いた。タイトルはこのようになっていた。『必携手紙文例集一般的...2-XI-13

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