2-XII-1
XIIトリゴー男爵は喜んでパスカルの指示に従うこと、そしてどんな提案も何の異議も唱えず受け入れる、という好意を示してくれた。それを疑うなどは全く子供っぽいことであった。彼と男爵は共通の利害を持っていることを思い出せばそれでよかったのだ。彼らは共通の敵に対し同じような憎悪を抱いていたし、同じように復讐の思いに取り付かれていたからだ。それに、男爵と会って話をしてから起きた数々の出来事も男爵の性格を疑わせるようなものは何もなかった。あれ以来彼が遭遇した場面というのはマダム・ダルジュレとその破廉恥な息子ウィルキー氏の間に起きたおぞましい諍いであり、そのとき彼はコラルト子爵の悪辣さを知ったのだった。しかし不幸というものは、人を臆病にそして疑い深くするものだ。パスカルの警戒心はヴィル・レヴェック通りにある男爵邸に到着...2-XII-1
2024/06/28 06:58