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アンチ人間が吐く毒素。

ライフスタイルブログ / 残りの人生

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2015/02/04

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  • 第1話:生きものの年齢(3)

    IDとしての年齢確認に異を唱えるつもりはもちろんない。が。そういう日々を過ごしていて思い出したのは、「人類は物理的時間以外に別な時計も持ってるんですよ」という話だった。★その時計とは、一生のうちに心臓をドックンといわせる数。いわば「心臓時計」のことで、それはヒトもネズミもゾウも、一生に15億回、等しく刻むという。つまり。おなじみの物理的時間だけが生きものの寿命を測る方便ではない。用いる時計によっては、...

  • 第1話:生きものの年齢(2)

    その役割(存在のフレーム)を否定するものではないが、入院してみて1つわかったことがある。それは個々人がいつ生まれ、その後何日たったか。つまり年齢なんて何の意味もなくなるということだ。★人は病に捕縛されてしまったら、自分が何歳かなんて関係ない。病床で問われるのは、ただただ生きものとしての精神的、肉体的な生命力そのものだ。★回診に来られる看護師さんの何人かが、患者データの入ったPCを下目にしながら、異口同音...

  • 第1話:生きものの年齢(1)

    入院という非日常は、日常生活では気にも留めない事の裏面に光を差し入れる。たとえば年齢について。★私たちは過去から未来へと一直線に続く時間の流れの中にいる。が。その時間を誰も見たことがない。いや、ある、と言えなくもない。その形骸、時計によって。★時間の概念の始まりは古代エジプトだそうだ。物事に秩序を与えるために。言ってみれば、暮らしの方便として。とはいえ、おかげで歴史が成立した。また。私たち一人ひとり...

  • 人生足別離

    唐の詩人、于武陵(ウ・ブリョウ 810~没年不詳)の五言絶句「勧酒」の結び。 人生足別離 →人生、別離足る(=ばかりだ)井伏鱒二はこれをこんな日本語に変えて称賛された。 サヨナラダケガ人生ダ★しかし、じつはこれには裏話があって、講演で尾道に行った際、同行の林芙美子が港で見送る人々との別れにシンミリと、「人生はさよならだけね」とつぶやいたという。その言葉を井伏が深く胸に留め、後日「勧酒」を訳すとき、ちゃ...

  • 人を見たら✖✖と思え。

    クレジット・カードを急きょ作り直すことになった。悪人に使われた恐れがあるからだ。★ことしもあと1か月をきったある朝のこと。メールを開くと、カード会社から「ご利用通知」が2通入っていた。「おかしいなあ」その時点で首を傾げる。カードを使った覚えがない。ちなみに「ご利用通知」は使うと即来る。2通とも深夜零時過ぎの着信だった。★内容を見て疑念が確信に変わった。まず1通目が00時06分、VISA加盟店での返品。2通目...

  • 原罪。

    我々はふだん意識していないし、しても当然のことと思っているが、じつは時間に主導権を握られ、時間のせいで心をきしませながら暮らしている。だが。ほとんどの人はこう反論するだろう。「時間があるから生活秩序が保たれているし、そもそも時間がなければ、人類の歴史が成立しない。自分が何歳なのかもわからなくなるよ」★確かにそうだ。しかしね。生きもののなかで人類だけなのだ、体内時計だけでは足りず、抽象的な時間という...

  • 闇に見えるもの。

    巷はイルミネーションの真っ盛り。99%の方は「キレイ、ステキ、楽しい」なのだろう。残り1%の一人、ぼく。なぜそんなにヘソ曲がりなのか。理由は以下のとおりです。★都会では、夜は空から始まる。つまり。空が暗くなると、ビルに、店に、街路に、クルマに、明かりが灯る。闇を意識するとすれば、それは人工的な明かりとの対比によってだ。★しかし。森暮らしをしていたときに気がついたことがある。自然の中では、夜は空からでは...

  • 青いバラとナチス。

    19世紀初頭、文化・文政期の江戸。一大園芸ブームが起こり、人々はアサガオの人工交配に熱中した。★結果。できたのは、筆の穂先を束ねたようなものや捨てられた紙屑のようなもの、あるいは破れ傘のようなものなどなど。それらは「変わりアサガオ」と呼ばれた。★「これでも花?」そう思わせることができたら大成功。「おもしれぇ」「てぇしたもんだ」江戸っ子たちはこの「見世物」に拍手喝采した。★時代は飛んで2004年。サントリー...

  • 腰抜け。

    いつからなんだろう、こんな言い方をみんながし始めたのは。「…かなと思います」「大丈夫です」 「…してもらっても いいですか」キツイ言い方を避け、相手を傷つけないように気をつかう。ベースには英語表現の直訳があると思うが。★その真反対が昔ながらの断定調。「…です」「いりません」「…してください」ぼくはその言い方で育った。いまもそう言う。★「でもさ、あんたのように100年近くも生きてりゃ、そりゃ変わっていくさ。...

  • 吉本弁時代。

    かつては標準語で話せることが日本人としてのデフォルトで、関西や東北出身者はとくに苦労したんじゃないでしょうか。ぼくなんざ、広島から東京の高校に転校したとき、アクセント辞典というNHKアナウンサー御用達の一冊を購入し、「田舎者扱いされてたまるか」と馬鹿げた努力をしたもんです。当時、方言丸出しで堂々としゃべっていたのは、上方落語&漫才の人たちだけだったと思います。★もちろん、何弁で話したってかまわないし、...

  • メディアの脳味噌。

    みなさんもウンザリされてないだろうか。WBCでの活躍以来、テレビは何かにつけ「オータァニサ~ン!」ホームラン王の話題が終わると、手術の話。それが終わるとMVP。ある局では、朝のワイドショーの頭から1時間17分もMVP礼賛に使った。終わるとこんどは900億円での移籍話だ。どうでもいいじゃねえか。★大谷選手に恨みはまったくないですよ。ダメなのはメディア。流行りものを追っかける真正ミーハー体質。それが視聴者の期待に応...

  • 動物園、反対。

    動物園らしきものが最初にできたのは、紀元前1000年頃のエジプト。王侯貴族が猛獣や珍獣のコレクションを自慢し合ったらしい。★日本に動物園ができたのは明治15年のこと。博物館の付属施設としてだった。そして今日。その数は全国で158。世界には約1200の動物園があるが、日本の動物園数は世界1とも2とも3とも。(なぜか資料により異なる)が、まあ、とにかく世界で屈指の動物園数なのは間違いない。★そもそも動物園は何のためにある...

  • 大きいことはいいことか?

    かつてイギリスをはじめとするヨーロッパ諸国は植民地を持ち、覇を競い合った。日本も大東亜共栄圏というお題目を掲げ、必死でその後を追った。いまでもまだロシアと中国は迷夢のただ中にいて、争いのタネを蒔いている。★覇権主義の根幹にある価値観には、さまざまなバリエーションがある。たとえば。「大きな会社にお勤めなんですねえ。ご立派ですねえ」などと(言葉には出さないとしても)売上高の大きい会社に勤めているだけでな...

  • 溺れる者はワラもつかめぬ。

    人間は溺れる。酒に溺れ、競馬・競輪・競艇に溺れ、写真に溺れ、園芸に溺れ、骨董品に溺れ、鉄道に溺れ、ペットに溺れ、薬物に溺れ、不倫に溺れ、ホストに溺れ…そして仕事にも溺れる。★「溺れる」の意味。広辞苑では、「心を奪われる」「はまる」「ふける」(例:酒色にふける)となっている。★ただ。溺れる状態を十把一からげにはできない。一つは、溺れながらも頭は波の上に出して、自分の位置を確認している…つまり、溺れている対...

  • 動物愛護を嗤う。

    札幌の市街地に出没した熊を殺したら、抗議が殺到した。動物愛護、他の生きものとの共生、それらを言う人々だ。★しかし。その声のほとんどは道外の人々、つまり自分は熊に襲われる心配がない地域の住民からだった。★その逆の例。北海道新聞が熊の「駆除」について民意を調べた。 ※横道にそれるが、 「駆除」という言い方は 人間の上から目線だ。 「殺す」なら同等。 その結果、道民の90%近くが殺すことに...

  • 5:転回の② 身体不如意でありがとう。

    5:転回の② 身体不如意でありがとう。手術を経てから、妻はすっかりほんのりして、生命体としての輪郭がとても柔らかくなったように感じられる。体力が落ちたせいもあるだろうが、それだけではないと思う。身体不如意になったことで、少なくともいまは表舞台から去る結果となった。そのことがいちばん大きいのではあるまいか。★妻は、これまで世間と闘うためにかぶっていた鎧兜を脱いだ。刀や槍も捨てた。すると。素のままの妻の...

  • 5:転回① ぬくもり。

    5:転回① ぬくもり。ぼくが家事をしないのは病院に行く時間だけだ。病院へは、きのう洗濯した衣類を持って行く。水と新聞を持って行く。そして洗濯物を持って帰る。空いたペット・ボトルと読み終わった新聞を持って帰る。★毎日12時半頃、病院に着く。着くとまず食堂に寄って、生姜焼きだの天ぷら蕎麦だのをその日の気分で食べる。食べ終わる頃には面会可能な1時を回っている。★そして…「きょうはどう?」「歩行器で廊下に出られ...

  • 4:異変の④ 上品に生きよ。

    4:異変の④ 上品に生きよ。声帯といい、尻といい、身体がダメになっちゃ家事どころじゃない。ぼくが苦しんだら、妻も苦しかろう。じゃあ…とジイサン考えた。苦しまず、イヤにならずに家事と向き合うにはどうすればいいかと。★こんな場合、世間様はアメリカ直輸入の表現でこう答えるだろう。「楽しめよ。家事を楽しめばいいんだよ」ゾッとする。ヤなこった。ぼくは幼児の頃から82年間ひねくれ者。非・金魚のウンコ。非・付和雷同...

  • 4:異変③ 尻が痛い。

    4:異変の③ 尻が痛い。声帯のトラブルを治すために、朝に晩に風呂場で子どもじみた発声練習を開始した。その前向きな精神が肉体に作用したのか、発生装置の方は何とか正常に作動し始めた。★が…それも束の間。ぼくは次なる身体トラブルに見舞われた。両方の尻が痛くて痛くて10分と立っていられず、大げさでなく床に崩れ落ちる破目になったのだ。★外出時も100mと歩けず、両膝に手をついて痛みを和らげる始末。そして何とか歩き始...

  • 4:異変② 拘束衣。

    4:異変② 拘束衣。あっちにも、こっちにもトラブルがある。みんなに余裕がない。もしかしたらその医者も看護師も、連日の過剰労働で疲労困憊、口をきく気力さえないのかもしれない。だからってオーケーなわけないけど。★妻の報告によると、トイレの介助で看護師を呼んだら、「こんなことぐらいで呼び出しブザーを押さないでくださいっ」と怒鳴り声を浴びせられたとか。いったい、ここはどこなんだ?ほんとに病院か?監獄か? ★...

  • 4:異変① 声が出ない。

    4:異変① 声が出ない。こういう神経症的な日常の結果。起こるべき異変がやはり起こった。声が出なくなったのだ。完全に出ないわけではないが、思ったボリューム、思ったタイミングで声が出せなくなったのだった。★たとえば病院の食堂で注文をするとき、「生姜焼き定食をお願いします」と言いたいのに、「………ッ」生姜焼きの最初のショがなかなか発声できない。声が粘着質の個体と化して、声帯の隙間をくぐれないのだ。急いで息を...

  • 3:発見の⑤ 入院すべきは誰か。

    3:発見の⑤ 入院すべきは誰か。同様なことは風呂にだって言える。妻が「立ったきり」になる前、分担する家事の手順の関係上、妻が後番で入っており、出るときはカビ対策として天井、壁、床の水滴を拭き取り、その道具やタオルを洗って、干してから出て来る。そのことは知っていた。しかし。★それをいざ自分がやるとなると、「一日の汗を流した後でまた汗はかきたくない」という拒否感がハナからある。「風呂ぐらい、ゆっくり入ら...

  • 3:発見の④ 家事の真実。

    3:発見の④ 家事の真実。けっして自慢ではないけれど、ぼくは退職以前から「男子厨房に入らず」の世代にしては珍しく積極的に家事をやってきた方だと思う。家事が好きだからではない。妻ばかりに家事を担わせるのが申し訳ないと思ったからだ。とくに退職後は、「60%はあなたがやってる」と妻に言われるほどになった。しかし。じつはそれがそうではなかった、60%だなんてとんでもないことに気づかされた。★たしかに。ぼくが分担...

  • 3:発見の③ 妻の成分。

    3:発見の③ 妻の成分。家事リストを赤線で消してゆく毎日。ひとつ消すたびに義務感からもひとつぶん解放され、ギュウギュウに詰まっている呼吸が少し楽になる。★ところが。いっこうに楽にならない、いや逆に、どんどん苦しくなったのが食べることだった。★独りになると、食事中は必ず見ていたテレビを点ける気がせず、かといって、自分の咀嚼音だけという静けさにも耐えられず、妻と聴いていた音楽をかけて食卓についた。が。音...

  • 3:発見の② ぼくは変態です。

    3:発見の② ぼくは変態です。とうとう。最後まで残しておいた社会との関わりを解消した。この15年間、おなじみの完璧主義精神を発揮して、インフルエンザに罹ったとき以外は、1回も休まずに続けたボランティア活動の世話役を辞めたのだ。★なさけないことに、時間も気持も他人様のために割く余裕が持てなくなった。恥ずかしいと思う。そのセカセカとした自分が。そして(個人的なことだが)完璧主義の挫折が。「忸怩(じくじ)たる思...

  • 3:発見の① 鞭打たれたジイサン。

    3:発見の① 鞭打たれたジイサン。この15年間、ボランティア活動で通っている地域のケアセンターは、介護保険の申請を代行してくれる組織でもあった。★一連の説明、手続きがすんだ後、顔なじみの50代の社会福祉士の女性が、「共倒れにならないでくださいね」と言って、「お惣菜キットを使うと時短になりますよ。チンジャオロースーとか肉味噌炒めキットとかいろいろありますから」と教えてくれた。さらに。帰り際には、買い物の手...

  • 2:緊張の⑧ ねばならぬ。ネバナラヌ。

    2:緊張の⑧ ねばならぬ。ネバナラヌ。いまは耳にしなくなったが、「案ずるより産むがやすし」と言われているその言葉のとおり、手術の関門はあっけなく通り過ぎた。★手術が成功したことは、例の女医が病室にやって来たとき、勝ち誇ったようにぼくら夫婦を睥睨したことでわかった。きっと。本人の期待以上にうまくいったにちがいない。人格が反り返ったみたいでみっともなかった。★これから3週間。妻の過酷なリハビリが始まる。そ...

  • 2:緊張の⑦ 西の空からのメッセージ。

    2:緊張の⑦ 西の空からのメッセージ。妻より長生きしなければ…と思っても、急に元気になれるわけではない。それどころか。現実の重さに負けたかのように、なんだかボーッとしている。★病室を出るとき、妻が背中で叫んだ。「ありがと~ッ」ぼくもそれに応えたが、気持が今に根を下ろさず、病院前のバス停に立ったときには、自分がなんと応じたか、もう忘れていた。★じつは。その前の日も、ぼくが病室を出るとき、妻が泣きそうだっ...

  • 2:緊張の⑥ 先に死ぬわけにはいかない。

    2:緊張の⑥ 先に死ぬわけにはいかない。しかし。この整形外科医は、おそらくさまざまなケースの人が読むことを前提に、最も広範な、厳しい注意事項を列記したのではあるまいか。「鵜呑みにして絶望する必要はない」と解釈することにした。(ジイサン、意外に冷静)★それにしても…だった。無意識のうちにあった期待、「手術をすれば、妻は以前のように動けるのではないか」という根拠なき全快期待は吹き飛ばされた。きっと。術後の...

  • 2:緊張の⑤ 絶望的な術後。

    2:緊張の⑤ 絶望的な術後。(いちおうネットで読んだ話をしておこうかな)まず、危険性について。専門家(整形外科医)の話は、手術方法による脱臼のしやすさの違いや、合併症、感染症などの心配で、ひとことで言えば、けっきょく「医者に託すしかない」ということのようだった。★つまり。あの公立病院を紹介された時点で、危険度は100%決まっていたと言ってもよかった。したがって。いまは例の整形外科医の居丈高な態度が、人格上...

  • 2:緊張の④ 終着駅の名前。

    2:緊張の④ 終着駅の名前。準備品の中の「かがまずに…できる」という特殊な品は、ネットを利用すれば簡単に手に入ることがわかった。しかし、入院日の前日までに、となると配達が間に合わない。アナログで街を走り回るしかなかった。★その結果、諸々の家事は放置することに。白々とした埃が床にも家具にも浮き上がった。洗濯は溜まり放題だし、食事も買い食いばかりで気持がすさんだ。完璧主義&病的に清潔好きな性格のため、ぼ...

  • 2:緊張の③ 無駄な抵抗。

    2:緊張の③ 無駄な抵抗。この公立病院は何かおかしい。「おまえらの面倒をみてやってるんだぞ」という風がそこかしこで吹いている。★昭和の時代、役所がそうだった。民営化する前のJR、そしてもちろん警察もそうだった。ひとさまをバカ呼ばわりするほどバカではないけれど、正直「バカ」って単語が脳裡を走る。★ぼくはリストから目をそらし、無意味とわかっていながら、不快な現実を拒絶した。気のせいか胃が重くなってきた。「...

  • 2:緊張の② 呑み込めない魚。

    2:緊張の② 呑み込めない魚。胃に悪い刺激がさらに続いた。それは、入院手続きを担当する若い女性から手渡された準備品リストを見たときだ。★たとえば、こうだ。●身障者用の自立式杖●かがまずに靴がはける柄の長い靴ベラ●かがまずに足が洗える柄の長いボディ・ブラシ●かがまずに物が拾えるマジック・ハンド●リハビリ用の靴●室内履き●消毒スプレー(シート)●ティッシュ・ペーパー(ボックス)●吸い口付き湯飲み茶わん●下着類と寝間着...

  • 2:緊張の① 蕎麦単品でお願いします。

    2:緊張の②蕎麦単品でお願いします。CTは肉の奥の骨格の生々しい現実を映し出した。妻は早々に手術することになった。★「両股関節とも最重傷期以上に酷いです。よくもまあ、ここまで放っておけましたね。どちらからやります?右? 左?それとも両方いっしょに?」★かかりつけ医の紹介状を持って訪れた公立病院の女性整形外科医が、医者と患者の関係を思い違いしている言葉を乱暴にぶつけてきた。よくもまあ?放って、おけ、まし...

  • 1:発端の⑧ 時の歩幅。

    1:発端の⑧ 時の歩幅。ぼくたち夫婦は運動会の二人三脚のように肩を組んで、ヨタヨタとかかりつけ医にたどり着いた。すると、「すぐにCT撮影を」ということになり、こんどは介護タクシーを呼んで紹介された専門的施設へ。★そして…だった。看護師に抱えられて待合室から撮影室へやっと、やっと歩く妻の姿を、ぼくは第三者的に、あえて言うなら「客体」として、初めて数メートルの距離をおいて眺めた。そこには半世紀を共に歩んだ...

  • 1:発端の⑦ 病人はトツゼン崖から落ちる。

    1:発端の⑦ 病人はトツゼン崖から落ちる。ま、そんなことより。妻のこの急変で、ぼくは癌で母を亡くした友人から聞いた話を思い出した。★「病気の悪化というのは一本調子じゃないんだよ。下り坂の途中で突然崖から落ちる。それからまたゆるゆる下りが続いて、再びある日ズドーンと落ちる。ゆるゆるズドーン。ゆるゆるズドーン。それを何度かくり返し、やがて…ね。それが病気なんだよ」★そのときはただ聞き捨てにしていたが、ふり...

  • 1:発端の⑥ 新しい女性との関係。

    1:発端の⑥ 新しい女性との関係。他方です。能天気なぼくはどうかと言えば。ぼくの頭には妻公認の空洞がある。(じつは目にも耳にもある気がするけど)そのせいか、幼児の頃から世間と同じ考え方をしない傾向が強い。★今回も同様。自分でもどういうわけだかわからないが、(だからこそ空洞があると言われるのだろうが)「大変だぁ!」意識はハナからなし。したがって、被害者意識なんて、なに、ソレ?当然、恨み節もなし。★早い話が...

  • 1:発端の⑤ うろたえるジイサマたち。

    1:発端の⑤ うろたえるジイサマたち。妻は寝たきりではないし、トイレ、シャワーもなんとか自力でできる。(これが大きい)だいいち、そもそも死に至る病ではないし、案外あっけなく治るのかもしれない。だから。いまから大騒ぎしていたら、介護で苦闘されている方に申し訳なく、こっぱずかしく、顔向けできない。★それはそうなのですが…もし、ぼくと同じことが、ぼくと似た年齢の世間のジイサマたちに起こったらどうなるか。きっ...

  • 1:発端の④ 人生がバック転した。

    1:発端の④ 人生がバック転した。「こんなことがほんとうにあるのだろうか」最初は現実味が伴わなかった。しかし、「う~む」我ら夫婦の小舟は、どうやら新しい水脈に入ったらしいのだった。水流にもまれながら足を踏ん張り、ぼくは飛び散る言葉の飛沫にびしょ濡れになった。★「飢えたくなきゃ、おまえが三度三度の献立を考え、スーパーに走り、料理しろ。食後の皿洗いはもちろんのこと、汚れたシャツやパンツをはきたくなきゃ、...

  • 1:発端の③ 「立ったきり」の人。

    1:発端の③ 「立ったきり」の人。妻があきれた能天気なジジイ。そんな人間を天も見逃してはくれなかった。「そうやすやすと気楽にさせてたまるか」ということだろう。神様たち、リモート会議を開くと、なんとまあ、ある日突然、脳天気ジジイの奥様をいっさいの家事ができない人間にお変えになったのであります。★具体的には、「寝たきり」ならぬ「立ったきり」状態。何かにつかまらないと歩けない。それも2~3分が限度。膝は折...

  • 1:発端の② 哲学はゴミ箱に。

    1:発端の② 哲学はゴミ箱に。白状すれば。そんな気分の根底には、「生の果てに死はない」言い換えれば、「死は形を変えた生である」という80有余年かけて行き着いた(うさん臭げな)死生観があるからだ。★おまけに。「現世なんて、こんなもの。理想とはほど遠い」という乾いた気分も。さらに言うなら、「人生にウッチャリをかけて、土俵の外に放り投げたような気分」もあるからだ。★したがって。この心臓が止まるなんて、どうって...

  • 1:発端の① 死に体。

    【再開のお知らせ】 お休みをいただいている間も 弊ブログをお読みくださり、 まことにありがとうございました。 本日より(不定期投稿とはなりますが)、 再開させていただきます。 今後ともよろしくお願い申し上げます。 タイトルは 私、上品な奴隷のように 主夫を始めました。 です。 さて、結末はどうなりますか… 自分にも先が見えませぬが。 1:発端の① 死に体。ぼくが男性の平均寿命81歳をいやいや超えたと...

  • 乗り換え電車。(最終話)

    夫に怒りをぶつけている間、妻はまだ夫を見放していない。「この人はダメだ」となると何も言わなくなる。いや、心の内では言っているのだろう。「もう別れよう」と。そして「次の人生で新しい自分に…」とも。★この妻の場合、ここにいながら、もう、ここにはいない。つまり、すでに心は次の電車に乗り換えている。★こういう電車の乗り換えは、転職でも起こるし、引っ越し(転地)でも起こるだろう。もちろん恋愛でも。ところが。想い...

  • ゲラダヒヒの爪の垢。

    食べるための殺し合い。群れのボスになるための闘争。雌を得るための戦い。そして何よりテリトリーをめぐる覇権争い。これら動物たちの生存競争は、形を変えてそのまま人類の争いに置き換えられる。日本は明治時代の頭まで日本人同士で。それ以降は第二次世界大戦で負けるまで、対外的にそれをやっていた。★動物界で最も進化の度合いが進んでいる霊長類。中でも人類は、同じ霊長類でもサルたちとは別枠扱いされている。しかし。だ...

  • 永遠の旅人。

    どこか違う所で暮らしてみたくなること、みなさん、ありませんか。ぼくはしょっちゅうです。その証拠?に、これまでの82年間で12回引っ越しをしました。そのうち、会社都合が2回。あとは自己都合です。★日本人の生涯引っ越し回数を公的機関も民間も調べていますが、結果は同じ、3回です。それを知ったときにはビックラこきましたね。「みんな、なんでそんなに動かないの⁉」★いや、ぼくが動きすぎでしょう。だけどぼくなんざぁ、引...

  • 管理職はお好きですか。

    興味深い調査結果があった。会社勤めの若い男女への質問。「あなたは管理職になりたいですか」★50代以降だと、おそらく「当たり前のことを訊かないでくれ」と思うだろう。しかし。いまの若者たちは男女とも目指さないが最多だ。★その理由。1 業績とか人の管理とか 責任が増える。2 残業も増えて 自分の時間が なくなる。「でも、地位も収入もアップするんですけど…」と切り替えしても、3 社会的地位やおカネより ...

  • 月のウサギの国境線。

    「月を私たちの生活圏にするために!」その人は興奮気味に語った。「その人」とは宇宙ビジネスの推進者。去年、月探査の宇宙船が無事帰還したばかりの頃だった。★彼は本気だった。本気だけにぼくは、彼の野望のいびつさを思った。申し訳ないけれど。★いま地球はピンチだ。「しかし、だからってねえ」水もなく、ほぼ真空で、昼間が120℃、夜が-170℃。そんな1日の寒暖差が290度もある月になぜ、わざわざ引っ越さなきゃいけない?それ...

  • 女も男もない。

    ダンプカーの運転をしているのが女性。たまたま乗った市営バスの運転手さんも女性。そういえば、近所で建設中のマンションの現場監督も女性。ずいぶん前だが、女性があるじのお寿司屋さんに行ったことがあった。女性は手が温かいから寿司は握るなという話があるそうだけど、何の問題も感じなかった。「これは男の仕事」「これは女の仕事」なんて垣根があることは、いまの若者たちが老人になる頃には、笑い話になってるんじゃあるま...

  • 歯医者と人生。

    歯の治療が終わって、空を見上げたときほど気持のよいものはありません。あの解放感に匹敵するものをぼくは知りません。ジジイでなければ、われ知らずスキップしてしまうでしょう。★40代の頃、虫歯の痛みが行くところまで行った。「これはヒドイですね」のひと言で始まった治療。中年の女医さんだった。「麻酔を打ってからにしましょうね」と言われたときにはホッとした。麻酔、すなわち「きょうの治療は痛くない」ということだか...

  • ピンクのグランドピアノを欲したあの頃。

    ぼくが強く植物に魅かれるようになったのは、退職後の60代になってからだ。そのときまでなぜ植物に興味を持てなかったのか。理由は「それどころじゃなかった」からだ。★競争社会で溺れないよう必死で泳ぐストレスを馬鹿げた飲食、馬鹿げた服漁り、馬鹿げたクルマ狂いなど、人間として下の下の浪費でバランスをとっていた。★その延長線上で…「ピンクのグランドピアノが欲しい!」あるとき、そういう欲望に衝き動かされた。それは所...

  • 縦割り長屋の人々。

    タワー・マンションと言えばいかにも…の感じだが、実態に即して言えば縦割り長屋。自分もその類の建物に住んでいるくせに言うのもなんですが…人間の気持にとって自然な高さはせいぜい3~4階まで。ヨーロッパの古い街なみがよいお手本ではなかろうか。★正直な話。子どもの頃、NYの摩天楼街の写真を見せられた時には、「これが文明というものか!」と目をまん丸にし、平屋ばかりの日本がすごく情けなかった。が、いまは逆。まったく...

  • 惨敗の後の静けさ。

    去年引退したスピード・スケートの小平奈緒さん。覚えておいでかどうか、2018年の平昌オリンピック、500メートルで金メダル、1000メートルで銀メダルになった。金メダルは、日本の女子スピードスケート界で初の快挙だった。★ところが。4年後の北京オリンピック。小平さんは500メートルで17位。1000メートルでは10位だった。★ぼくはレースをすべて終えた時の小平さんの表情をよく覚えている。とても意外だったのは、少しもガッカリ...

  • 死に至る大罪を逃れて。

    江戸時代初期まで、日本人は朝夕の二食だった。おやつが生まれたのはそのため。八つ刻(どき)はいまの午後2時~4時頃。晩ご飯までの間に何かをつまんで空腹をまぎらわせる。おやつは、だから小昼(こびる)とも呼ばれた。★日本人が三食になったのは江戸中期、元禄時代から。その一因には「菜種油が一枚かんでいる」との説も。★その根拠。ロウソクはもとより菜種油も高いので、庶民は晩ご飯を早々にかき込んで、早々に寝た。が、元禄の...

  • 日本人の増やし方。

    ぼくが住む集合住宅の年齢構成を俯瞰すると、日本の現状を思わずにはいられない。出会う人の三分の一以上が、ぼくのように老人になったのだから。★(用語解説をしますと)65歳以上が人口構成比で7%を超えると高齢化社会。14%超で高齢社会。21%を超えると超高齢社会。★ちなみに。高齢化率の1位が日本で29%。2位がイタリアの24%。3位がポルトガルの23%。4位がドイツの22%となっている。★高齢化するスピードを見ても、日本がダン...

  • 犬死に。

    ぼくという人間は、親として失敗者だった。① 自分の価値観で 子どもの人生を勝手に描き、 それを押しつけようとした。② つまり、 自分のしくじった悪路は 歩ませたくない一心で (←それを愛情と勘違いして) この子はどんな人間なのか、 どんな人生を送りたいのか、 どんな悩みや不安を抱えているのか、 それらに気持を向けなかった。③ それともう一つ。 自主性を重んじることと 甘やかすこ...

  • 犯罪脳を持つ隣人たち。

    シレッとしておよそ罪悪感のない詐欺師たち。なんど捕まっても万引きをくり返す主婦や老人。闇バイトで人を殴り殺す強盗殺人犯。何十人もの女性の一生を破壊する常習的レイプ魔。「誰でもいいから殺したかった」と包丁をふるう少年。歩行者天国にトラックを暴走させる無差別殺人犯。同級生や老女を殺して「長い間の願いがやっとかなった」と興奮する殺人願望の女子高生や女子大生。★犯罪者は法で裁かれます。しかしそれが犯罪抑止...

  • あるサッカー選手からの警鐘。

    乗り物の中では飛行機と船が自動化の先輩格だ。電車では東京の山手線が2028年をめどに自動化を目指している。もとよりクルマも自動運転に向けまっしぐら。★乗り物だけではない。いろいろな製品の製造工程の自動化を見せる番組があるが、その発明のすごさにぼくなんか、初めてマジック・ショーを観た子ども状態になる。★自動化の波はサービス分野にも。ちょっと前、用事で大阪まで行った時のこと。一晩眠れれば上等と、所用先にいち...

  • 詐欺師の正体。

    何年か前、区役所から「還付金があります」と電話がかかってきた。話題の還付金詐欺にうちが狙われるとは、何の名簿が出回ってるんだ?気持悪い。以後、受信を詐欺電話対応に変えたが、いまでも週に数回は怪しい電話がかかってくる。★みなさんもそうでしょうが、フィッシング詐欺のメール数も毎日すごい。通販会社、運送会社、銀行、カード会社…を偽装する「誰か引っかかれば儲けもの」のスパム・メールの数々。削除するたびに「メ...

  • 紙のつぶて。

    ネタ切れにつき、きょうは雑談。ゴメンナサイ。★携帯電話が登場するまで、こんなに多くの人が写真を撮ってはいなかった。それ以前、カメラを携行することには少々「わざわざ感」がつきまとった。しかし、いまやカメラは常時ポケットに。観光名所の混雑がテレビで流れると、100人いれば99人がスマホを掲げている。そのとき、ぼくがどう思うか言いましょうか。…やめときます。★自分の話ですみません。ぼくは写真を撮らない。撮られる...

  • 隣の子。

    朝、ぼくが遅めの新聞取りで1階の集合郵便受けまで行くとき、ときどきエレベーターでいっしょになるお隣さんの子。ぼく「おはようございます」隣の子「お…おはよう… ご、ございます」ぼく「元気にやってますか」隣の子「は、はい…」★その子はダウン症だ。いまや世間的にはSサイズになったぼくの胸あたりまでしか背がない。子と言ったが、もう19歳になったはずだ。★狭いマンションの同じフロアに、同じ年の同じ頃に産まれた...

  • ♪雨々ふれふれ、ジイサンに~♪

    先のワールド・カップでは、日本人サポーターが観戦後にスタンドの掃除をし、選手はロッカー・ルームを整理整頓して、おまけに折り鶴を美しく飾って去りました。大リーグでも大谷選手がグランドに落ちているゴミを拾って尻ポケットに入れていました。「日本人は素晴らしい!」それらの行いは世界の人々から称賛されました。★同様な称賛は、幕末、日本にやって来た欧米人の日本滞在記にも散見されます。たとえば。宿場町にはゴミひ...

  • タテ男にヨコ女。

    市のデイサービスのお手伝いをしていて感じたこと。それは…「女性たちはなぜあんなにすぐ群れるのか」ということ。テーブルについたとたん、数十年来の友だちのようにお隣さん、お向かいさんと大声でしゃべり始める。★それに対して。「男性たちはなぜあんなに女性からも他の男性からも孤立し、沈黙しているのか」ということ。「おまえらはオレサマの必死で頑張った過去を知るまい。こんなススけたジジババと、やすやす口がきけるか...

  • ダイナマイト・ジイサン、爆発!

    去年、オンラインでの就職試験の不正が摘発された。そのときテレビ局が例によって巷の声を拾ったのだが、その中の発言の一つが、「ダイナマイト・ジイサン」の導火線に火をつけた。それは…「不正をするより、自分のレベルに合った会社を選べばいいと思う」というある若者の発言。★この言葉のどこが問題なんだと思います?「まっとうな意見じゃないか」と、まあ、ふつうは思うでしょうね。NO!言いましょうか、ダイナマイト・ジイ...

  • われら、殺意を帯びて生まれけり。

    先天的な殺人脳の人間を除き、理性がきちんと働いてさえいれば、ふつうは殺人などしない。だけど。人は時に人生の損得勘定も倫理観もどこかにフッ飛ばして人殺しをする。★恨んでも恨みきれないから?気がついたら殺してた?殺人に至るケースは様々だろう。が、ぼくは思う。じつは誰もが殺人を犯す可能性を持って生まれており、殺人者と被殺人者とは背中合わせなんじゃないかと。★ジョージ・ドヴォルスキーの「なぜあなたの脳は恨み...

  • 正妻の目を盗んでぼくは…

    人間の体のなかには数百兆個の細菌が棲みついているらしい。そのほとんどは小腸・大腸の間借り人。1平方センチあたり100万個というから驚く。★そんなに混みあっていて苦しくないのか?明石大橋や韓国での大惨事を知ってるだろう?…と心配するのはよけいなお世話。からだに悪さをする細菌退治に元気いっぱい活動している。★しかし。その強い味方も両手の指先は手薄だったらしく、悪玉に不意をつかれてしまった。★それは去年の6月末...

  • 砂場の幼児やチンパンジー。

    いま世界ではいくつぐらいの戦争が継続中だと思われますか。ウクライナをはじめとして25だそうです。★人類は数えきれないほど多くの戦争をしてきました。原因の主たるものは、権力(覇権)争い、領土争い、食糧や資源の争い、そして宗教戦争。★数を調べてみました。ウィキペディアの「戦争一覧」によると、紀元前12世紀の「トロイア戦争」を皮切りに、主だった戦争だけでも400~500。名前をつけられていない中小規模の戦争を入れれば...

  • 狂気。悔恨。幽霊。

    自分の追い求めるものを手に入れようと、無我夢中で突っ走っているとき、人は競走馬がブリンガー(遮眼革)をしているような状態になる。視界に入るのは自己実現に関係した情報だけ。前後左右の視野は、ある種「狂気のブリンガー」で遮蔽されている。両眼からあふれ出るのは煮えたぎる欲心。穏やかに人生を送っている人からすれば、1秒たりとも正対したくないタイプだ。★思い起こせば、40代半ばから約20年、ぼくはその状態にかなり...

  • ゴブリン・モードへの衝動。

    オックスフォード辞典の2022年を代表する言葉として、圧倒的な支持を得て1位になったのが、ゴブリン・モードだった。「ゴブリン」とは、人間社会の良識を蹴飛ばして好き勝手に生きる妖精の名前なのだが…そのゴブリンの持つ反社会的性向が、新語ゴブリン・モードの芯になっているようにぼくには思える。★つまりゴブリン・モードとは、気持のおもむくままにダラダラ過ごす在りようと紹介されているのだが、言葉どおりに「怠惰な状態...

  • カピバラ一族の弱腰。

    「はっきりしなさい。いったい、どっちなんだ」と近頃は叱らないのだろうか。昭和の子どもは先生から、親から、よくそう言われたもんです。★昨今は誰もが「…かなと思います」と、「かな」を語尾にくっつける。あれ、何?自信ない?間違ってた場合のホケン?それともキツクならないよう気をつかってる?★なんとまあ、国会議員が議場のやりとりで「…かなと思います」と言っていた。医者も学者も「そういうことになるのかなと…」世間...

  • 黒い死と虹。

    「さようなら」という言葉は人の心に小石を投げる。★お葬式やお別れ会。だれそれを偲ぶ会。好きだね、世間は。儀式という虚飾、虚栄、偽善に集まる人々。葬式なんて、死者にとっては大きなお世話じゃないのか?誰のため、なんのためなんだ、その儀式。それぞれの心の内で、別れはもうすませているだろうに。★何色をしているのだろうな、「さようなら」は。多くの宗教は死を黒色で語る。死を怖れさせなければ、宗教はあがったりだか...

  • 天秤の皿はカラッポ。

    人間は日常を脱したくていろんなことをする。コンサート、観劇、写真、会食、登山、旅行、スポーツ…。★しかし。齢をとると思いがけないことになります。それら非日常への脱出なんて「もう勘弁してよ」★じつは、ぼく。これまで非日常を求めて旅、旅、旅。美味いもの探しにも熱心だった。森の緑へのゾッコンは35年も続いている。★そんな非日常の載った天秤のもう片方の皿には何が載っていたのかといえば、毒々しい日常がてんこ盛り。...

  • 奴隷。

    桃や梨、サクランボなど、果物泥棒にはみんなが怒っている。この泥棒には「元技能実習生が…」のケースもある。★ところが元技能実習生の場合、彼らを牢屋にぶち込めば一件落着というわけにはいかないのだ。なぜなら、その背後には日本の人権侵害が横たわっているからだ。★こんなことがあったそうだ。( 2022年10月7日の毎日新聞の記事より) 高松市内の建設会社で技能実習をしていたベトナム人のTさん。休暇を利用して東京の知人...

  • ペット教信者の皆様へ。

    一気に敵を増やしそうな話です。★2020年、犬&猫の実態調査。お犬さま:約849万頭。お猫さま:約964万頭。合計、約1800万頭。それに対して15歳以下の日本人、約1500万人。犬&猫さま組の勝ち。子どもを育てるよりペットを飼う方がラクだもんなあ。皮肉。★ただ。多いように感じるけど、犬猫に加えて、他の動物や魚類、鳥類なども含めると、ペットを飼っている人は、日本人の30%前後なんだとか。(調査によって27%~37%のバラツキ...

  • おじいさんのオモチャ。

    【おわび】今回以降、 毎週一回 水曜日に お目に かかります。 すみません。 ぼく、見つけたんです、オモチャを。それは脂肪、筋肉、骨、水分など身体を構成する成分量を看破する体重計。★古い体重計の針の動きがおかしくなったので買い替えたのですが、付録で体重以外のこともわかるようになったしだいです。たとえば。体脂肪率、内臓脂肪率、筋肉量、基礎代謝量、体内...

  • お迎えは無言で。

    生きるテーマを失う自分ほど空虚なものはない。★テーマはあるはず…だった。物心ついて以来、いつも「こうありたい、ああしなければ」に追われていた。追われすぎだったほどに。★しかし。齢を重ね、世間のいろんなことの外に出てしまうと、ぼーとして、自分の後ろ姿を眺めているような時がある。★父は死期が近づいた頃、庭の隅の大きな石に向かって立ち、日が暮れるのも知らないかのように佇んでいたそうだ。「父ちゃん、どしたんね...

  • 無人島で降ってきた使命。

    無人島化してしまった故郷の小さな島に戻って民泊を始め、賑わいを取り戻そうとしている女性がおられる。その人の言葉。「わたしは何のために生きているのかとずっと思っていたけど、何十年ぶりかで荒れ果てた故郷の島に降り立ったとたん、ここを昔のようにしよう!そう思った。わたしの使命はこれだったんだと思った」★その人が神の存在を信ずる人かどうかはわからないが…一般論として、人為をコントロールする絶対的な存在、神が...

  • まんじゅう 怖い。

    生まれ育った広島地方では、自分勝手で無作法、しかも図太い人間のことを「あいつは野風増(のふうぞう)なやつじゃのう」と言います。★で。言葉の由来を調べたら、人形浄瑠璃や浮世草子に「野風俗(のふうず)」という言い方が散見されるとか。たとえば。「世をはばからぬ野風俗の友を集め」というように。「ルーツはこれだな」と勝手に決め込みました。★ぼくは若い頃、老人を見かけると「野風増だなあ」とよく思ったものです。そして...

  • 回る回るよ。

    テレビで見かけるなんだか誇らしげにつけてるカラフルな丸いバッヂ。お気づきでしょうか。あれは「SDGsの理念に賛同し、その推進に一役かってます」という意思表示です。(ポーズだけの人も)★ま、それはさておきまして。SDGs。わかりにくいですね。でもまあ察すれば、「人類が末永く幸せに暮らすためにこれだけのことをしましょう」という世界的運動のようでして。その中には循環型社会も含まれます。★循環型社会。これまたわかった...

  • ダジャレ日本。

    ぼくは家でダジャレをたくさん言います。錆びついた夫婦の会話の潤滑油になるからです。たとえばこんなふうに。●妻「あなた、バカだから、 若い頃バンジー・ジャンプ やったんじゃないの?」ぼく「トンデモナイ!」 (※跳ンデモナイ)●妻「雲間から満月が しっかり見えたわ」ぼく「ついてたね」 (※ツキがある →月がある)●妻「天気予報が降るって 言ったから降らないと思う。 洗濯しよっと」ぼく「賢い選択だ...

  • 壊し屋の血。

    「××君は壊しながら前に進むんやなあ」それはぼくという一般的でない人間を理解してくれた唯一の上司の言葉だった。その人はそれを非難がましく言ったのではない。微笑みながら言ったのだった。 (ちなみに神戸生まれの人で、 おおむね関西弁)★出会いはぼくがその人に咬みついたことから始まった。当時その人はぼくの所属する部門の長という立場だったが、ある会議の最後にこう言った。「以上のこと、各々部署に戻ったら、みん...

  • 最後のお使い。

    これはコロナ禍が始まってまだ日が浅く、日本中がコロナをものすごく怖れていた頃の話。★ぼくが分担する家事の一つに買い物がある。行くのは主として日用品店化したドラッグ・ストア。買うのは、牛乳、ヨーグルト、豆乳、醤油、油、酢、あるいは徳用ビンの化粧水など、重たい水ものが主。それもコロナのため十日分ぐらいをまとめ買い。総重量は何キロあるか知らないが、三歩と歩かないうちに持ち手が千切れてしまった。で、二度目...

  • ブラック・パワー

    日本女性がアフリカ系の男性と結婚するケースがけっこう増えたように感じる。おかげでスポーツ界がパワー・アップした。★アフリカからの移民を大量に受け容れた結果、人的資本を最も増やした国は、間違いなくアメリカだ。アメリカはアフリカからの移民を積極的に受け容れた結果、陸上競技では多数のメダルを獲得できるようになり、実業界でも軍隊でも政界でも学界でも芸能界でも、アフリカ系の人々に牽引されている場面が多い。そ...

  • 中学生のシッポ。

    中学生の頃。「ああ、もっとハンサムに生まれたかったなあ」こんなワタシに誰がしたと親を恨んだものです。ま、顔の造作はともかく、せめて澄んだ目をした人間になりたいと思いました。★なぜそんな思いになったのか。映画や小説の影響?そうです。ジェームス・ディーンマーロン・ブランドジョン・スタインベックアーネスト・ヘミングウェイコリン・ウィルソン…彼ら及び彼らの作品は、みんな澄んだ孤独な、そしてちょっと反抗的な目...

  • 力を抜いて、バカに至る。

    「肩の力を抜け」というのは、監督やコーチがよく選手に言うことだ。ぼくは人生で肩に力が入って、絶好球を空振りしたことがしばしば。「あそこで打ってたら、人生変わったなあ」と未だにその場面を思い出す。ぼくの場合、肩の力がやっと抜けたのは、70代の末になってからだ。★そのことに気づかされたきっかけは、ニュース番組の某女性アナウンサーだった。ぼくは彼女のプロフィールをHPで知っていた。その人は少女時代から放送コ...

  • 老人に義務教育を課せよ。

    老人の一人であるぼくは、老人が非常に嫌いだ。見るのもイヤ。エレベーターで乗り合わせたら、自然に息を止めている。★汚い。クサイ。粗暴。歩き方が不格好。無愛想。やかましい。すぐキレル。自分勝手。わけもなく威張る。オシャレじゃない。体型が無茶苦茶。 💀「おっと、ソレ、みんな、 あんたのことじゃ ないのかい?」★そういう老人が増殖に増殖を続け、ついに日本人の三人に一人となった。選挙ポスターじゃ...

  • ステ。

    「これは?」「ステ!」「これは?」「ステ!」「これも?」「もちろんステ!」ステとは、捨てる。面倒だから、ルは捨てた。★末期高齢者になると、かつては必要だった物も使うあてがなくなる。たとえば。五客揃いの食器は三客無駄。お客さんを迎える時の大皿も不要。大量のスリッパもいらない。服はもちろん、靴もバッグもアクセサリーも必要最小限に。文字が小さい昔の本も読めないから束ねてゴミ置き場に。こんなに捨てると、オレサ...

  • 宗教狂い。

    ぼくの母は根っからの宗教好きだった。末娘に生まれた母は幼くして養子に出されたが、その養子先から実家への家出をくり返し、見かねた長姉が自分の婚家に引き取った。長姉もその夫もクリスチャンだった。それゆえ母もおのずから受洗。それが母の信仰生活の第一歩となった。★時は飛んで昭和20年8月6日。広島に原爆が投下された。母とぼくは郊外の山中に疎開していて無事。父は市中にいて被爆したが、奇蹟的に一命はとりとめた。し...

  • 妻より先に死にたい私。

    この前、妻の具合が悪くなった。高熱を出し、生命力がなくなった。三日目にしぶとく回復したが、その間ぼくは、人生のクレバスに落ちた。★ぼくは家事を妻と分担している。が、「妻が死んで独りになってもやるだろうか」それを想い始めたのが最初だった。★たとえばぼくは病的なほどきれい好きときている。床に見つけた1ミリの塵だって見逃さない。移動時はだから絶えず視線が床を這う。猫背になるのももっともだ。しかし。「塵や埃...

  • デジャヴ。

    ぼくはなぜかイギリス人に対しては敵対心が湧くが、イタリア人に対しては「やあ! 元気だった?」と何十年来の友人のような親しみがわく。リアルな話ではない。感覚として…なのだけど。★またぼくは、カントリー・ウェスタンを聴くと、生々しい生活感と共に胸をかきむしられる。アメリカには行ったこともないし、シンパシーもない。だから、わけがわからない。★同様な感覚は地名に対しても。いわゆるアイヌ語由来の地名、「○○内」...

  • ボ~。

    父は当時の男性の平均寿命、72歳で亡くなった。いまはそれが81歳の延びたが、ぼくがその年齢に達した時、予期せぬ気持ちの変化が起こった。ぼくは急にラクになった…ように感じた。生きる義務から解放された…ように感じた。★それまで、ぼくの人生を父に影響されたことはなかった。父にも母にもぼくがどんな穴に落ちているのか、話したことはなかった。ぼくは20歳前後の数年を右往左往したあげくやっと卒業すると、勝手に職を得、勝...

  • 結果って何?

    この世では、「結果を出せ」が常套句。結果を出さなきゃクビになる。結果を出さなきゃ合格できない。結果を出さなきゃ出世できない。結果を出さなきゃ儲からない。★しかしね、結果を問われない大ジジイになってわかったことは、「結果にとらわれていたから、ずっと不幸だったんだな」ってこと。★そもそもね、結果を出すことに人を追い込むのが、おかしいのですよ。それが人生をクソおもしろくもないものにする。★ (自慢で話すわ...

  • 人間砂漠。

    太平洋戦争が始まった年に生まれて81年少々、いろいろなことがあった。この間、ぼくはバカだった。その結果、失敗し、後悔し、そのつど少しずつバカ量が少なくなった?かなあと思う。★これまでぼくは「成長するために人生はある。なぜなら、人間は誰もが幸せになろうとして生きているが、その手段として最も有効なのが成長することだから」そのように何度も言ってきた。★しかし、露骨な言い方をすれば、「バカを治すために人生はあ...

  • 神様を生ゴミに出す。

    子どもの頃、切羽詰まって「かみさま~っ」と叫んだことがある。「困ったときの神頼み」という科学的根拠のない刷り込み。情けない。いや、不思議なもんです。★受験シーズンになると、何を考えてるのか21世紀のいま、平安時代の右大臣様に「どうか受かりますように」とお願いに行く。日本中の寺社や教会では、病気快癒の祈願、交通安全祈願、良縁祈願、商売繁盛の祈願、金運の祈願、家内安全の祈願…。みなさん、ご自分でも努力をな...

  • お地蔵さんスタイル。

    鏡に映る自分の姿。顔の老化についてはもう蹴っ飛ばしたが、胴体はどうなのか?と珍しく点検の目を向けた。ガ~ン‼脇腹の肉がパンツから垂れている。こんなワタシに誰がした。ワタシです。★思い当たるのはこの1年、ご飯がおいしくて腹いっぱい食べるようになったことだ。で。「オレサマの美意識が許さん」ということで、節食開始。同時に、ネットで見つけたおなか引き締め運動も開始。「齢を考えてチョーダイ」とおっしゃる奥様の...

  • 心の月。

    シミ?取らなくていいです。シワ?いまさら何を…。出っ歯もダンゴっ鼻もそのままでよし。不自然に白い歯は新庄さんにお任せして。★角は立つけど、表だって言いたくなった。人間は「美の基準」とやらに従わない方がいいです。こんなインチキなものはないのだから。江戸時代では絶世の美女が、明治になって欧米文化にひれ伏すと、「こんな醜女が!」に。もし今後、アフリカ系の人々が世界の文化を牽引すれば、欧米主導の美の基準なん...

  • 言葉は世につれ。

    言葉は世につれ。世は言葉につれ。言葉は時代を映す。だから、「近ごろの言葉はなんだよ」なんて嘆くのは、時代とズレた、言い換えりゃあ年をとった証拠となる。「マジ、ヤバイっす」「おいしぇ~」「それ、ちが(違)くネ?」黙っていよう。ぼくも何十年か前、年配者のヒンシュクを買っていたにちがいないから。★そのヒンシュク、もう終わったわけではない。ぼくは未だに言い間違える。「えーと、まず最初に…」「すみません、まだ未...

  • 生きるに値しない命。

    人生100年時代だそうだ。それを言う時、メディアがずいぶん嬉しげだ。 腹立たしい。長寿を礼賛する社会があり、個人がいる。 気が知れない。そんなもん、嘘っぱちだと気づかないだろうか?★この世は平等主義が舵を握っている。だが、つねづね思うのは、「齢を重ねるとともに、命の価値は低減していく」ということだ。★思い出すのは、その昔、生産性のなくなった老人を遺棄する姥捨てが存在していたことだ。間引きといって、産ま...

  • 逆転。

    長く生きてると、「昔はこうじゃなかった」と、しばしば価値観がひっくり返される。★たとえば、日焼け。わりと最近まで「夏に日に焼けてないと不健康でオシャレじゃない」と引け目を感じたものだ。メディアや化粧品会社は「小麦色に焼けた肌こそ美しく健康的だ」と国民を煽った。が、いまは真反対に「日焼けは皮膚癌のもと。シミ、シワ、タルミのもとです」と警鐘を鳴らす。「早く言ってよォ~」もうオレのコメカミや頬はシミだら...

  • 老人は海馬にまたがって。

    「海馬」という器官が脳の中にある。加齢によって物忘れが進むのは、この海馬の衰えが原因だ。★認知症の多くもまた海馬の萎縮が関係しているとか。認知症は脳の萎縮であり、脳は海馬から萎縮するからだ。★海馬はしかし、老人になってから衰えるのではない。衰えは20代から始まるというから驚きだ。★では。衰えると、どうなるのか。それには海馬の役割をまず。★海馬は、見たり聞いたり読んだり、味わったり嗅いだり触れたりしたこと...

  • そこに○○があるから。

    1923年3月のこと。エベレスト登頂を目指す二度の遠征隊に参加したイギリスの登山家J・マロリーがアメリカで講演をした時、NYタイムズの記者が質問した。「あなたはなぜエベレストに登りたかったのか」すると、彼はこう答えた。「そこにそれがあるからです」  Because it's there.★その言葉が日本では「そこに山があるから」と変えられて、いろいろなケースで転用されるようになった。たとえば。90歳でフル・マラソンを走る...

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