17歳の私が回想の風景の中にいる。毎日あてもなく近くの山を歩き回っていた。風景は春がすみに覆われて、焦点の合わない夢のようにぼんやりとしていた。遠近感が曖昧な視界の果てから、山々が層をなしてなだらかに下りてくる。その中を、とぎれとぎれに白い噴煙が縫っているのがみえた。いくつもトンネルを抜けて進んでいく汽車は、まるで生き物のようだった。ローカルな鉄道では、汽車はまだ石炭で走っていたのだ。そして数日後、窮屈な4人がけの木製の座席にすわって、一昼夜をかけて東京を目指していた。昔も今も、線路は何処までも続いていたのだ。そして歳月は、光のように超特急で走り抜ける。いつのまにか郷里の駅は無人駅になっていた。誰もいない待合室から、木で囲われた懐かしい改札口を抜けて、廃駅のようにがらんとしたホームに出ると、ベンチに座って...線路は続くよ何処までも