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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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岐阜市
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伊万里市
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2014/10/10

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  • ポエム ~夜陰編~ (恋の終わり)

    月さえ凍れる蒼い夜星の光りが冴えわたる舗道に映す影のその冷たさに後ろ姿に刺す月の光りが恋の終わりを告げる枯れ葉が落ちるその季節が来た「お友だちでいましょう」「ぼくたちは戦友だね」(背景と解説)余計なことですが、大切ことなので。「月さえ凍れる」=「つきさえしばれる」しばれる=厳しく冷え込む。凍る。(東北・北海道の方言)この詩のキモは?と考えたときに、前回の[詩とは……]を考えました。なにもないんですね、ほんとに。ただ、詩の範疇を超えた「戦友だね」という文字だけが心を伝える言葉だと感じました。ポエム~夜陰編~(恋の終わり)

  • [青春群像]にあんちゃん ((20年前のことだ。)) (七)

    しかしそんな孝男が、女児が生まれたとたんに変貌した。こと娘にたいしては盲目的愛情をしめす孝男で、長男や次男に接するときとはまったくちがう表情や態度をみせる。長男にたいする接し方については、おのれの実子ではないからと思えないでもない。しかし次男は、まぎれもなく実子なのだ。名前にしてから、道子には納得ができない。はじめに長男と付けたから、第2子は次男でいい。いや、でなければおかしいだろうと、まるで他人ごとのように言う孝男だった。ほのかの折には、まさか三女と書いてミナ…不安になった道子だったが危惧におわった。道子がおそれた名前ではなく、ほのかと名付けてくれた。「どうだ、良い名前だろうが。ほのかに香る…だ」得意満面にかたる孝男は、新婚とうじの孝男そのものだった。あんどする半面、不安なおもいもよぎった。あまりにもの...[青春群像]にあんちゃん((20年前のことだ。))(七)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十八)

    天女さまに手を引かれて移動した。「はい。それでは、ここで待ってて下さいね」たしか壁際に長椅子のある、広い部屋だったはずだ。長椅子には4、5人が腰掛けられるのだが、皆それぞれに互いのテリトリーを主張しあうので、座ることができるのはせいぜいが3人止まりだ。看護師たちもこころ得たもので、それ以上に呼びこもうとはしない。その部屋には、なにやら機械類が7台ほど並んでいる。順番に移動をしていけるように、横1列だ。そのうしろが通路として、余裕をもせてある。そしてその向こう側、フロアの中央あたりで、視力検査をやってくれる。こちらは3台ある。大体が、ほぼ満席だ。「お待たせ、お婆ちゃん」「はよしてもらわんと、どうにもならんぞ。みんなで夕ごはんを食べることになっちょるのに」なんという毒々しいことばを吐くハバアだ。ひょっとして、...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(二十八)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (十九)ひとつひとつの

    ひとつひとつの行動・感情のうごきにまで因果関係をもたせ、おのれを納得させている麗子が、男には不満だったのだ。気まぐれ・衝動、そういったものいっさいを否定するがのごとき麗子に、不満だったのだ。昨夜のあの行為にさえも、〝麗子なりの意義をもたせているのだろう〟男はそう思った。ただ、幸か不幸か麗子の打算にまでは気がつかなかった。ひとつひとつを完全なものにしない限り、麗子はいらだった。ちょっとしたことばの言い間違い・聞きちがいによって生じたトラブルを、男は「多分…」と済ませることを、麗子はとことん問いつめる。そういった小さなことの積み重ねが、男には我慢できないものだった。指定の場所に向かうおり、気まぐれにコースを変更することを麗子は嫌った。工事中等の不可抗力による変更すらも、きらった。当初の計画通りに事が運ばないと...[淫(あふれる想い)]舟のない港(十九)ひとつひとつの

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (三十)高校に入ってはじめての

    高校に入ってはじめての夏休みのことです。声をかけられたのは夏休みにはいるすこし前のことです。上級生の女子生徒に声をかけられました。純朴な青年じゃなくて、まだ少年ですね。「すこし話をしたいんだけど」だったか「楽しいところに行かない?」だったか、そんなようなことだったと思います。女子生徒との会話なんて、挨拶のことばすらまともにかわせない時期のことですから、はじめてのことでした。いや女子生徒だけではなく、同性とも話をした記憶がありません。学校に着いて1時間目の授業をうけて、給食を食べて2、3、4時間目の授業をうけて、ひと言も声を発することなく帰路についた日もありました。すみませんねえ、いつものくせで。なかなか本題に入ら、、、はいります、すぐに。そんなわたしですから、声を発することなく、ただただ頷くだけでした。ど...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(三十)高校に入ってはじめての

  • ドール [お取り扱い注意!](一)2012年、元旦のこと。

    2012年、元旦のこと。とつぜんに荷物がとどいた。「お荷物のおとどけでーす。お取り扱い注意ですので、よろしくお願いしまーす」「元旦早々、ご苦労さまです」ねぎらいのことばをかけたけれども、その配達員はニコリともせずに立ち去った。配達すべき荷物がとどこおっているのかもしれない。“愛想のない男だな”と思ったものの、よくよく考えると男だったかどうか判然としない。顔を見たような気もするし、みていないような気もする。どちらでも良いことなのだが、すこし気になった。まだ62歳なのだ、あれには早すぎるとおもった。とどいた物は、一辺が30センチほどの立方体で、なんの表示もない箱だ。会社名すらない。「なんだ、こりゃ。中身はなんだ?ちょっと待てよ、伝票ってあったっけ。判子を押してないぞ。ま、いいか」映画のつづきが気になったわたし...ドール [お取り扱い注意!](一)2012年、元旦のこと。

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百六十八)

    ソファに座ったり机に戻ったり、そして冊子をパラパラとめくっている。窓の外ではチンチンと電車が行き交っている。車の往来もはげしい。思えば復興がめざましい。階下ではひっきりなしに電話が鳴っている。呼び出し音が2回なるまえに、受話器を取るようにと命じられていて、みなそれをキチンと実行している。応対の声もいつにも増してあかるい。「おい、どうした?」しびれをきらした五平がドアから顔を出した。小夜子のへやの前で聞き耳を立てていた徳子に、「早くはやく」とせかせた。「どうもお待たせしまして。問い合わせがおおくて、手が足りませんで」「もうしわけありません、すぐに上がるつもりが……」頭を下げる徳子にたいし、「状況をおしえてください」と、相手先がいらだった様子をみせた。部品のひっ迫が、もう2ヶ月ほどつづいている。高級品でも特殊...水たまりの中の青空~第三部~(四百六十八)

  • ポエム ~夜陰編~ (詩は……

    詩は、素敵なものであるべし。詩は、美しいものであるべし。詩は、感動を与えるものであるべし。詩は、情感をこめるべし。詩は、叙情を謳い上げるべし。詩は、心を伝えるべし。(背景と解説)これには付け足すことがなにもありません。金科玉条の心情だったのでしょう。かくあらねばならぬ、と言い聞かせていたころでしたか。まともといえばまともな内容なのですが。まあ、こんな言葉を羅列している-せねばならない状況に自分を追い込んでいたということでしょうねえ。疲れるだけなんですがねえ、ほんとに。今の私が、そのおりのわたしにアドバイスすするとしたら「あるがままに、だよ」と声をかけるでしょうね。ポエム~夜陰編~(詩は……

  • [青春群像]にあんちゃん ((20年前のことだ。)) (六)

    不遇の三十代、孝男はそう思っている。同期の中田に後塵をはいしたのはおのれの才覚ぶそくではなく、恣意的人事だとおもっている。直属の上司にめぐまれなかったおのれが哀れだとおもっている。そして、上司に嫌われたからだとおもっている。担当させられた地区には目ぼしい企業はなく、資産家もいない。中田がたんとうした地区には資産家が複数人居住していたし、本店にいどうした鈴木はビジネス街を担当した。なんで俺だけ…というおもいが渦巻いた。愚痴をこぼしあう相手にはこと欠かない。孝男とどうように、他支店でも脱落者はいる。そんななかに、入行とうじには気があわずに口論が絶えなかった江藤がいた。本店での研修時にバッタリと顔を合わせたふたりは、たがいの愚痴をこぼし合うようになった。「息子なんて、要らないんだよ。考えてもみろよ、女房を取りあ...[青春群像]にあんちゃん((20年前のことだ。))(六)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十七)

    4時半からの受付で、すでに5、6人の患者が待っていた。自動ドアの開くのももどかしく、せわしなげに入っていく老婆が、床に敷いてあったマットに足を取られてしまった。うしろに居たわたしは、思わず「危ない!」と声をあげて手をだした。しかしわたしが手をだすまでもなく、お迎えの看護師らしき中年女性が老婆を支えていた。ところが「うしろの人が押した!」と、とんでもないことを老婆が言いだした。周囲のつめたい視線がいっせいにわたしに注がれたが、受付の看護師が見ていてくれて疑惑が晴れた。「とんだ災難でしたね。ま、お年寄りのことですし、かんべんしてやってくださいね」中年女性の話がなかったら、いつまでもわたしの怒りは収まらなかっただろう。「もういちど、瞳孔をひらく目薬をさしますね」マスク姿の看護師が寄ってきた。愛くるしいその目に焦...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(二十七)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (十八)劇場にはいる前に、

    劇場にはいる前に、コーヒーだけの朝食では持たないと考え、軽く食事をとることにした。劇場からすこし先に、純喫茶・和がある。その店名どおりに、和の雰囲気をだいじにしている店だ。格子戸の引き戸を入ると、和服姿の女性がむかえてくれる。間口のせまい店内には両側の壁ぞいにテーブルが設置してあり、4人掛けと2人掛けだけの構成だ。店内はほとんどどがアベックだったが、ひと組の親子連れがいた。場にそぐわぬ客だと鼻白む思いの男にたいし、異常なほどに子どもに関心をいだく麗子を見て、男のこころは痛んだ。早く結婚してやりたいとは思うのだが、共稼ぎを嫌う男には、まだ経済的に無理がある。しかし、〝俺の思いは麗子もわかっているはずだ〟と考えてはいた。もっとも、麗子が親子づれに興味をもったのは、男の思いとはまったく別のことからだった。〝こん...[淫(あふれる想い)]舟のない港(十八)劇場にはいる前に、

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (二十九)尻切れトンボ的に、

    尻切れトンボ的に、地獄巡りからの退出です。遊びほうけていた20代前半ですが、どう位置づけすればよいのか。人生における華ととらえるべきか、禍と評すべきか。ただこの時代がなければ、老をむかえた現在を悠然と過ごせぬのも事実だと思えるのです。当時にしても現在にしても、わたしがわたしであることに変わりはありません。意味不明ですか?正直わたし自身もどう伝えたらいいのか、ことばが見つからないんです。「人間は変われる」。「人間は変われるものじゃない」。どちらもよく聞くことばです。わたし自身の経験から言えば「変われる」ですし、「でも変われない」なんです。思いだしてもらえませんか、はじめのころにお話しした、ある疑問を。矛盾してますよね、矛盾してます。哲学論を聞きたいんじゃない!お叱りはごもっともです。それではわたしの経験をお...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(二十九)尻切れトンボ的に、

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (三十三)あちこちから、女性の声が

    あちこちから、女性の声が飛びはじめました。こういってはなんですが、一般的に婦女子というのは……。いえ、これは失言でした。男もまた、うわさ話は好きです。とくに下ネタとなると。いやこれも失言です。で聡子さんは「いえね、さっきのご老人のお話でね、その、合宿先で……」と、ことばを濁されます。と、みなさん一様に口を手でおさえて、黙られました。「ああ、湖畔でのことですか?なにごともありませんでしたわ。ただ念のため、そういうことでございます」それまでは涼やかだった小夜子さんの表情が一変しました。苦痛に歪んだ表情で、ぐっと唇をかみしめられています。いかにも「余計なことを」と言わんばかりでした。みなさんは聡子さんに視線がいかれていましたので、おそらく気づいたのはわたしひとりだったろうと思います。しかしすぐに、すこしの口角を...愛の横顔~RE:地獄変~(三十三)あちこちから、女性の声が

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百六十七)

    五平から声がかかり、徳子が応接室にはいったときだった。小夜子がいるへやの前をとおったとき、扉がすこし開いていた。キチンと閉じることなく入ったせいか、窓からの風でドアがすこし開いたようだ。重厚に見えるそのとびらも、じつのところ合成板を使った安物だった。武蔵ならばすぐにも取り替えさせたであろう、代物だ。「お客に見られる最初のものだ、本物を使わなくてどうする。輸入の高額品でなくてもいい、たとえ安物の国産材でもいい。とにかく本物を使え。富士商会は本物しか扱いません、と宣伝するんだ」そういえば1階のカウンターも、名前は知らないが1枚板だときいている。業者に在庫がなく、また市場にも流通していないと言うことで、特注でつくらせたものだった。どうにも気になった徳子は、「書類の一部をわすれました」とことわって、そっと小夜子の...水たまりの中の青空~第三部~(四百六十七)

  • ポエム ~夜陰編~ (パープルレイン)

    それは紫色の雨のふる朝冷たい風に吹かれてさ迷う落ち葉のようにわたしの恋は破れたの水たまりに映ったわたしの影はとても淋しいものなのよ(背景と解説)正直に言うと、まだ書きかけ?と思えるんですよね。本来ならお届けするべきではないのかもしれません。というより、だめですよ。でも、現在(いま)のわたしには書けません。体裁は整えられると思います、形だけは。それは紫色の雨のふる朝冷たい雲に抱かれて彷徨う枯れ葉のようにわたしの愛は消えたの水たまりに落ちたわたしの闇はとても哀しいものなのよだめですね、やっぱり。この詩は、キモはパープル(紫色)でして、言葉に惹かれてのことだと思うんです。紫といえば高貴の代名詞でしょ?憧れみたいな気持ちを抱いていたんでしょう。今でもそうですけどね。あ、気がつかれましたか。嬉しいですねえ、「水たま...ポエム~夜陰編~(パープルレイン)

  • [青春群像]にあんちゃん ((20年前のことだ。))(五)

    道子は、実子とのわけへだてなくという思いから、泣きさけぶ赤児をしり目めに長男にたいする世話を優先した。そんな道子にシゲ子が苦言をていした。しかし道子は相手にしない。「大丈夫ですよ、お義母さん。いまはこういう育て方なんですから。泣いている赤ん坊をあとまわしにすることで、上の子は安心するんです。そして下の子に愛情を感じるようになるものなんですよ」「口出しはえんりょしろ。定男の子どもを面倒をみてくれているんだ。感謝こそすれ、だ」常々、孝道がシゲ子に言うことばだ。そんな孝道に、シゲ子は反論することができない。必然、気持ちのなかにうつうつとしたものが溜まっていった。そして火の点いたように泣きさけぶ次男をあやしながら「そんなものかねえ。あたしたち古いばあさんには分からないことなんだけどねえ」と言うのが精一杯だった。そ...[青春群像]にあんちゃん((20年前のことだ。))(五)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十六)

    「行くよー!ボーヤ」わざと、大きな空振りをした。とたんに、ケタケタと大きな笑い声を上げながら、手を叩いている。「よーし。こんどこそ、行くよー!」かるく蹴りだしたボールは、うまく男の子の足下に転がっていった。満面の笑顔でボールを手にとった男の子は、うんうんと大きくなんども頷いてくれた。そして父親の「ありがとうございまーす!」の声が、さわやかに耳に届いた。どれほどの時間が経ったろうか。公園の木々の陰が、すこし長くなってきた。子どもたちはすでに家路についている。しかしわたしは、なかなか腰を上げる気にならなかった。もう不安や恐れの気持ちはない、いつのまにか消えていた。ただ、子どもたちの余韻に、もうすこし浸っていたかったのだ。入り口に設置してある時計が、四時を指していた。〝そうだ。きょうは、眼科検診だ。そのために会...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(二十六)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港   (十七)時計が11時をつげると

    時計が11時をつげると、男は麗子と共にあかるい外に出た。きのう日の雨がまるで嘘のようにカラリと晴れわたっていた。道路の所どころにある水たまりが、かろうじてきのうのはげしい雨のことを思い出させる。麗子は男の腕に自分のうでをからませて、もう離さないとでも言いたげだった。気恥ずかしさを感じはしたが、男は幸せだった。〝しかしどうしてだろう、なにがあったのだろう、麗子に。あれほど一線を越えることに躊躇していた麗子が……〟と、すこし不思議ではあった。じつのところ、麗子のこころのなかに打算が働いたのである。人事課の同僚からの情報で、男の評価が高くなったと聞かされた。現在男が手がけている戦略的商品の有望性がたかく、結果しだいではすぐの昇進もありうるかもよと聞かされたのである。そして、そのことで社内の女性社員のあいだで花丸...[淫(あふれる想い)]舟のない港 (十七)時計が11時をつげると

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (二十八)「聞いたことがない話だ」。

    「聞いたことがない話だ」。「この地でははじめて聞いた」。そんなことばが飛びかいます。そりゃそうでしょ。この話は、いま思いついた、わたしの創り物ですから。そんな怒らないでくださいな。はじめに申し上げたでしょ?わたし、嘘吐きだって。まだお怒りですか?なんだか旅行記みたいな風になっていたので、あくまで物語りなんですよと、いうことなんです。はいはい、お怒りがやわらいだところで。帰りはバスにしました。テクシーはもうイヤですし、タクシーはお金がかかりますしね。だいいち、目の前にバス停があるのですから。ちょっと休憩しながら待ちますよ。待ち時間は、15分ぐらいでしょうか。ところが、時間になってもなかなか来ません。電車は正確ですが、バスとなると交通事情が違いますからやむを得ませんかね。ああ、竜巻地獄のことをお話ししていませ...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(二十八)「聞いたことがない話だ」。

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (三十二)なにを期待していたのでしょうか

    なにを期待していたのでしょうか、わたくしは。正直のところ、いまでも判然としないのでございます。「ぼくの子どもを産んでほしい」。あの夜の情熱はなんだったのか、いったいどこに消えてしまったのでしょう。「ぼくはもう、娑婆には出てこられないだろう。牢屋のなかで朽ちはててしまう運命なんだ。しかし後悔はしていない。いまの日本国は、労働者を○している。一部のブルジョアたちを守るためだけにあるんだ。富国強兵なんて、権力者の言い訳さ。国が富んでも民が貧しければ……」涙ながらに語っていた、あの三郎は、足立三郎は、どこに行ったのでしょうか。三郎だけではございませんわ。岡田、白井に山本のご三人衆。そしてリーダー格の竹本は、どうしているのやら。それこそ、口角泡を飛ばして議論されていたあの方たちは、どうしていることやら。未だに刑務所...愛の横顔~RE:地獄変~(三十二)なにを期待していたのでしょうか

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~   (四百六十六)

    まず竹田に複式簿記のなんたるかを説明し、いかに会社経営において有用であるかを認識させた。そして竹田同席のもとで服部を夜の会席に呼び出し、さらには五平をも同席させて、あらためて複式簿記の有用性を説いた。いくら内容を聞いてもちんぷんかんぷんな表情を見せる服部への、竹田の「ぜったいに必要なことだ」とのことばが、真理恵の援護射撃となった。表に出したくない金員を佐多から頼まれることがある。民間会社では使途不明金として処理できるものが、銀行だと金融庁からの厳しい目が光っている。監査が入ろうものなら、出世はおろかその場に留まることすらできない。場合によっては、おのれの進退をも左右することになる。二の足をふむことの多いなか、佐多は積極的に受け入れてきた。そしてこの地位に就いたのだ。佐多の上司から「うまく処理してくれ」との...水たまりの中の青空~第三部~ (四百六十六)

  • ポエム ~夜陰編~ (ヒトリゴト)

    ナニモカタラズ、タゞモクモクトヒトリシズカニシゴトヲコナシダレニメイワクヲカケルコトナクシヤカイニヒタルコトモナクタゞヒタスラニオノレヲミガキオノレノミチヲツキススムツチニカエルソノヒマデ言い訳なんか、するな!分かり合える時が、きっとくるって。今はどんなに+を積み上げても0になりこそすれ、+にはならない。“嘘も方便”方便以上になっちゃった。沈黙を続けろ!沈黙の後、誤解か否かわかるさ。沈黙だ、ひたすらに沈黙だ。なんてこった!なんという欺瞞!すべてに、我慢できない。――できない?誰に?――分かってる、この俺にだ。――ならば、良し!バカヤロー!死んじまえ!くたばっちまえいぃ!本当に、人間嫌いになったのか?なんで、疑うんだ?嫉妬心?なのか猜疑心?と言うべきか……(背景と解説)最後通告を受けた者の、断末魔の叫びにも...ポエム~夜陰編~(ヒトリゴト)

  • [青春群像]にあんちゃん ((20年前のことだ。)) (四)

    孝道の懇意にする産婦人科医のはからいで、孝男・道子夫妻の実子としてとどけられた。そして孝男によって、長男と書いてナガオと呼ぶ名前がつけられた。いくらなんでもそんな字は、と周囲が反対したが、頑として孝男は「これでいい」と応じなかった。孝男にしても、弟の尻ぬぐいをさせられたという思いが強かった。皮肉なことに、その2年後に次男がさずかった。不妊治療にかようことをやめたあとの妊娠だった。道子のきもちに余裕ができたゆえのことなのか、治療が功を奏したのか、孝男とシゲ子に「あの金はなんだったんだ(の)」と、イヤミのことばを受ける道子だったが、道隆の祝福のこえが救いだった。そして名を、ツグオとつけられた。孝男の長男にたいする無関心さは、実子でないからという理由があった。しかし次男にたいしてもむかんしんな孝男の心底が分から...[青春群像]にあんちゃん((20年前のことだ。))(四)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十五)

    「ほーら。タケくーん、行くよ!」やさしい声をかけながら、軽くボールを蹴った。愛情のこもった眼差し、そう観音さまが与えてくださる慈しみをもって、見つめている。男の子は、嬉々としてボールに向かっていく。そのひたいに光る汗が、わたしにはことさら眩しく見えた。“可哀相なことをしてしまった”おのれの父親としての自覚のなさを後悔した。子どもが嫌いだったのではない、可愛くなかったわけではない。ひと並みの愛情は、持っていたつもりだった。ただ、その表現の仕方がわからなかったのだ。どう接すればいいのか、わからなかったのだ。こころのゆとりのなさが、子どもとの時間を作らせなかったのかもしれない。なんと言うことはなかったのだ。いち日をかけてどこかに出かける必要も、1泊の旅行を計画する必要もなかったのだ。ほんの1時間でも30分でも、...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(二十五)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (十六)翌朝、カーテンの隙間からの

    翌朝、カーテンの隙間からのつよい光に男は目がさめた。台所の方からハミングが聞こえる。男はベッドの中で腹ばいになると、タバコに火をつけた。〝こういうのも良いもんだな〟と、昨夜とはうって変わり〝幸せにしてやらなくては〟と思いはじめた。「あなた、起きてよ。朝食の用意できたわよ」あなた。名前ではなく、あなた。明るさの中にも、恥じらいのある声だった。きのうまでの傲慢な麗子ではなかった。新妻の色香がただよっているように思えた。「結局のところ、女は男しだいか……」。ひと晩のことで、これ程に違うものかと驚かされた。「えっ、なーに?」「いや、いま起きるよ」すこし薄目のコーヒーには、砂糖がなかった。「太るから、ね」と麗子が囁くように答えた。男は身ぶるいした。〝うーん、いい。いいなあ、この感じ〟と、まさに幸せ心地に酔った。「う...[淫(あふれる想い)]舟のない港(十六)翌朝、カーテンの隙間からの

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (二十七)むかしむかしのこと。

    むかしむかしのこと。山口県下関市壇ノ浦、源氏と平家のさいごの戦いは、みなさんご存じのことでしょう。平家滅亡がこわだかに喧伝されましたが、じつのところは数人の落武者が豊後灘を泳ぎきっていたのです。いやこの地、敵見郷=あだみごうに、流れついたというのが至当でございましょう。ですが甲冑を身につけてのことでもあり、ただのひとりを残して息絶えてしまいました。この若者が、じつに眉目秀麗でして。名前は……、やんごとなきお立場のお方、とだけ申しておきましょう。やはり血筋という者は争えぬものでございますな。その顔立ちにしてもですが、立ち姿に致してもな、凜とされておりましたわ。ここいらの村人ときたら、顔全体がごつとごつとしておりますし、目ん玉はギョロリと飛び出しております。鼻はひくく平らげで口といえば大きく横にひろがっており...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(二十七)むかしむかしのこと。

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (三十一)それではお話しをつづけさせて

    それではお話しをつづけさせていただきます。まずは新宿方面に向かいました。お店から銀座の百貨店に向かったと思わせるためでございます。そして府中に向かったのでございます。なぜそんなまどろっこしいことを?そう思われますのが当たり前でございましょうね。正夫のことです、駅まで付けてこないともかぎりませんわ。若いツバメが、などと疑心暗鬼になっていたようでございましたから。とにかく、あの大木という官僚の奥方が、なにかやと吹き込んでいるようでございましたから。そんなに正夫の嫁にとつがせたかったのなら、はやく話を進めればいいものを。どうせ、のれん分けが本当のことなのか探りを入れていたのでしょう。そうこうしている内に戦争ということになりましたからねえ。グズなんですよ、大木という方は。わたくしが府中の刑務所前のバス停におり立っ...愛の横顔~RE:地獄変~(三十一)それではお話しをつづけさせて

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百六十五)

    週に1回のペースで、経営戦略室にて[組織経営の何たるか]という初歩の経済学勉強会が開かれることになった。講師は真理恵がつとめ、第2土曜日には真理恵の父親であり三友銀行銀座支店長の佐多が、極秘で特別講師としてまねかれていた。その場には、服部・山田・徳子、そして社長である五平も出席することになった。接待の多い日ではあるが、できるだけその日を外すようにして出席していた。〝はやくも尻に敷かれたか〟などと社の内外から陰口をたたかれつつも、毎回参加の五平だった。〝御手洗社長ならば女ごときに……〟という声もでた。しかしこんな声も追加して聞かれたことだろう。〝もっとも小夜子奥さんのご命令とあれば従うかな?〟。そして話に興じる全員が笑いがおになり、次回の接待の場ではその話で場がもりあがる。五平にもその話はとどいている。しか...水たまりの中の青空~第三部~(四百六十五)

  • ポエム ~夜陰編~ (お題なし)

    半世紀も前に書き綴った、わたしのポエムです。いよいよ、その時が来ました。去ります、去っていきます。身から出たサビです。=====過ぎし日の幼きころの想い出は満天の星より多けれど我の倖せただひとつ十九年の生涯に終止符をうつことのみ(背景と解説)これは、解説は要らないでしょう。生意気にも、絶望感に襲われている気持ちを吐露しているつもりのようです。本当の地獄というものは、あんなものではありませんでした。こんなですね、ことばに形を変えられるようなものではなかったです。第一、その入り口にも立っていなかったのですから。ただただ、だれかに、ぐちを聞いて欲しかっただけなのですから。むろん、そんなことを打ち明けられる相手などいませんでした。ですが、慰めの言葉を、もしもかけられていたら……。少し、ゾッとします。ポエム~夜陰編~(お題なし)

  • [青春群像]にあんちゃん ((20年前のことだ。)) (三)

    ワル仲間とのあそびに興じはじめた定男に、身重のあかりが反発した。喧嘩がたえなくなり、とうとう「赤ちゃんなんか、いらない!」とさけんだ。言いあらそいに嫌気をさした定男が、やむなく孝道に泣きついた。結局ふたりは別れることになったが、定男が戻ることはなかった。孝道のお説教が毎晩つづき、町中をあるけば「根性なし」だとか「はらませた男」と、侮蔑のことばをあびせられる。「おれだけがわるいのか!」。そう言いのこして、ワル仲間のもとに戻った。ふたりの赤児は孝男が引きとることになった。渋る道子にたいしシゲ子が言いはなった。「あとつぎができるんだから、感謝してほしいぐらいだよ」顔を合わせるたびに、シゲ子のつめたい視線が飛んでくる。「だから言ったんだよ、わたしゃ。あの娘さんにしときなって」3回目の見合いで、やっとシゲ子のおメガ...[青春群像]にあんちゃん((20年前のことだ。))(三)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十四)

    公園をとり囲むようにして樹木がある。残念ながらその種類はわからない。何本かの木が桜であることは、春になればわかる。あのピンク色の花びらをつけた木が、桜だとは。ただ残念なことに葉桜になってしまうと、もうわからない。秋冬の枝だけだと、もう区別がつかない。そうだ、ポプラの木はわかる。あのセンス型の花びらといっていいのだろうか、あれがくっついていればわかる。ああ、まだあった。この公園には植わっていないけれども、松に杉、この二本もあった。この日本国に何種類の木々があるのか、皆目けんとうもつかないけれど、情けない話ではある。母親が子供たちに、あれはなんの木であの花はこれこれよ、と話しているのがしゃくに障った思い出がある。すこし離れたその横では、お父さんであろう男相手に、ボール蹴りに興じている男の子がいた。年のころ、3...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(二十四)

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