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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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岐阜市
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伊万里市
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2014/10/10

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  • ドール  [お取り扱い注意!](六)「はじめての設定を

    「はじめての設定をしていただかなくてはいけません。男性・女性の選択ができます。年齢の設定ができます。赤児からお年寄りまで、ご自由な設定ができます」なるほど、家族というわけだ。「ご希望であれば、他人という設定もございます。恋人、という設定ができます」他人?これは気が付かなかった。なるほど、家人では重いと感じる人もいるといことか。なんとも、こまやかな配慮がしてあるものだ。答えに窮したわたしだったが、こころを見すかすように言った。「いまの小夜子は、年齢的には娘ということになるのでしょうか。それは、イヤです。幸いご主人さまは、お独り身でございます。恋人にしてください」「添い寝させていただきたいのですが、体温はいかほどが宜しいですか?35度から38度まで、いちぶ単位で設定できますが。それとも、お布団のなかで調整いた...ドール [お取り扱い注意!](六)「はじめての設定を

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (四百七十三)

    *三部としていましたが、二部に訂正します。所帯が膨れあがるにつれ、おれはおれ、あいつはあいつ、そんな風潮がでていた。武蔵の○後、組織経営という名のもとに、社員間の団結心がうすれていた。これこそが、小夜子の感じていた違和感だった。家族経営にこだわる小夜子の、強いねがいだった。皮肉なことに、小さな部品にすぎないネジが巻き起こしたことが、真理恵をして――じっさいは佐多だったとしても――為すことになった。そしていっきに真理恵にたいする信頼感が醸成され、徳子の存在感がうすれた。竹田が言った。「忘れてたよ、社長のことばを」なにごとかと竹田に視線があつまり、つぎのことばを待った。「情報はいのちだ。きょうの飯が、あすにはステーキに変わる」「ものごとは一面だけで決めつけるな。多面的にかんがえろ」服部がつづいた。「人は一面だ...水たまりの中の青空~第二部~(四百七十三)

  • ポエム ~夜陰編~ (Re.手紙:忘れられない!)

    小さな石を池に投げ、大きな波紋が広がった。良いにつけ悪いにつけ、それを投げたのは、君だ!男の子が蛙に向かって石を投げた。蛙は言った。「坊ちゃん!あなたにとっては遊びでも、わたしにとっては、生き死にの問題です」偽りの優しさよりも、心から憎んで欲しい。真実の言葉が、欲しい。そう願いつつもやはり心の底で、慰めの言葉を待つ。ぼくは一人で砂浜を歩いていた。太陽はもう沈み、月の光もうっすらとしていた。冷たい風が、沖から吹いてくる。もう帰らなくちゃ……そう思いつつ、いつまでも歩き続けた。砂浜の果てに、何があるか分からない。砂浜から、、、岩だらけに。それでも歩いた、何かがありそうだ。年をとるということは、大人になるということ。現実を見るということ。汚れていくこと。そう思った。しかし自分が汚れても、あの娘は汚すまい。そう思...ポエム~夜陰編~(Re.手紙:忘れられない!)

  • [青春群像]にあんちゃん ((20年前のことだ。)) (十一)

    シゲ子が息を引き取る前夜のことだ。つきそっている孝道にたいして、シゲ子が力ない弱々しい声でかたりはじめた。「ナガオはいっけん優等生に見えますけど、こころのなかにはどす黒いおりがうず巻いているんですよ。そのことを知っていたくせに、わたしときたら見てみぬふりをしてしまって。ナガオも可哀相な子です。じつの親に捨てられたのですから。孝男にしても、しぶしぶ引き取ったわけですし…」眉間にしわを寄せて苦渋のひょうじょうをみせながら、孝道もまた力なく答えた。「といって、実母を責めるわけにもいかん。両方の親に反対されては…。いちばん悪いのは定男だ。甘やかしすぎたようだ。孫のようなものだったから……。あかりさんは、まだ十七歳の娘さんなんだ。周囲に反対されればされるほど、燃えあがったんだろう。しかし、祝福されずに生まれ落ちた赤...[青春群像]にあんちゃん((20年前のことだ。))(十一)

  • 日本と西洋の文化について考えてみました。

    日本と西洋の文化について考えてみました。某テレビ番組で、聞いたことです。立教大学教授横山太郎氏の論です。日本文化の特徴は、「余白をつくる、残しておく」ことだそうです。例としてわかりやすいのが、絵画ですね。浮世絵しかり、水墨画しかり、ですね。室町文化の能楽において生まれたということです。「能面のような無表情」ということばがあります。余白、まさにそれですね。よけいなものをそぎ落として、一挙手一投足にて、表現しようとします。感情を表現するにはは、顔の表情が一番でしょう。ドラマなどで、「画面いっぱいの顔」って、迫力ありますもんね。NHKの演出家で、和田勉さんと言う方がおられました。あの方なんか、その手法を多く取り入れられていたとか。ある人によると、和田勉さんが「画面いっぱい」の元祖だとか。観客の想像力を、最大限に...日本と西洋の文化について考えてみました。

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (三十二)

    がっくりと肩を落とすわたしを、「だいじょうぶですか?山本さん」と、あのこころ優しき看護師がむかえてくれた。なのに、なのに、ああ、またしても……。まぶしさに耐えきれずに閉じていたまなこを、さぞかし愛くるしい娘さんだろうと、ひっしの思いでうす目を開けた。しかしその目に飛び込んできたのは…いや、なにも言うまい、なにも考えまい。魔物が恐ろしい姿をしていると、だれが言った。神が気高い姿だと、だれが教えた。そうだ。戦国の世に、信長が謡いながら舞ったではないか。「人間五十年、化天のうちを比ぶれば、夢幻の如くなり。いちど生を得て、滅せぬ者のあるべきか」受け入れねば、うけいれねば。すべてを、あるがままに、と受け入れねば。この棟の住人たちとの付き合いも、恐ろしい男からの訳の分からぬ戯言も、そしてそして子どもたちの歓声も、すべ...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(三十二)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (二十三)男が飛び起きた。

    男が飛び起きた。いつの間にか寝入っていたようだ。「ああ、夢だったのか」。おもわず口に出た。なまめかしい夢だった。〝ドアを開けるとミドリさんが来て、びしょ濡れのままおれの胸に飛込んできた……〟「あれは、あの夜のことだ。しかし、どうしてミドリさんの顔に。そうか、立候補すると言ったからか。馬鹿な、こんな俺にそんな資格があるものか」男は、大きく伸びをするとベッドから飛び出した。気のおもい毎日がつづいた。辞表をだす勇気ももてず、悶々とした日々が繰りかえされた。相変わらず部長の嫌みなことばや、かつての同僚からの憐憫を受けていた。そんな煩わしい日々のある退社時に、雨宿りをしているミドリに出会った。あのときの事を思い出し、また平井道夫への傘のお礼もあって、「やあ!」と、声をかけた。肩を落とし暗く打ちしおれていた瞳が、男の...[淫(あふれる想い)]舟のない港(二十三)男が飛び起きた。

  • ((どうなんでしょうかねえ))

    どうなんでしょうかねえ。あれほどに、「夢で逢いましょう」と呼びかけていたのに。もう何年になるのか?[金魚の恋]という自伝小説(書き切れないこころのひだというものがありそうなんですがね)を書き上げてからというもの――。いや違うな。構想中からだから、1年ぐらいか?「まだそんなもの?」という感覚だけれども。その間、もう毎晩毎晩、いや日中ですら、お昼寝前にも「夢で逢いましょう」と願い続けていたというのに、まるで無視されていた。父親、兄貴、親友、先に逝ってしまった者たちは、願えば逢いに来てくれたというのに。かっての同僚たちやら上司との仕事を復活させたり、望まぬ黒歴史というべき過去の失敗した事業に悪戦苦闘してきた時期が現れて、苦しめてきたというのに。子どもたちにしても、存命中の友人にしても、望めば逢いに来てくれるとい...((どうなんでしょうかねえ))

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (三十四)さあ次なる場所に移動です。

    次なる場所に移動です。小学6年生の夏休み前までかよった、福岡県中間市の中間小学校に行きましょう。1級河川の遠賀川の堤防下に建てられている学校でした。ですがあまり記憶にありません、学校内は。6年生ですからねえ、覚えていてもおかしくはないのに。学校外でのことばかり思い出すんです。倉田くん、佐々木くん、ぼくのこと、覚えていてくれるかなあ。たがいの家が近かったこともあり、放課後によく遊びました。家のわきに国道と並行して線路があったのですが、その地がさっぱり分かりません。その線路わきに小山というか小高い丘というか、頂には神社があったと記憶しているのに、それらしき場所がさっぱりです。中間小学校にかよっていたということは、この近辺だということなんですがねえ。小川が流れていて、すこし離れたところにちいさな池があり、そうだ...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(三十四)さあ次なる場所に移動です。

  • ドール [お取り扱い注意!](五)おどろくほどに

    おどろくほどに気持ちの良い肩もみだった。じんわりと、あたたかかさが体に染みこんでくる。それにしても、肩をもまれるなど、なん年ぶり…いやなん10年ぶりのことだろう。幼かった娘の、たわむれ的なカタモミ以来ではないか?ときおり、柔らかいものが背中に当たる。心地よくはあるのだが。10秒ぐらいだろうか、その間隔であたってくる。「さよこちゃん、その…当たって…」そう言ったとたんに、思わず顔が赤くなった気がする。「おいやですか、ご主人さま。ふふ…純情なんですね」「これこれ、大人をからかうものじゃないよ」ざんねんなことに家事については、プログラムがなされていないという。たしかに複雑な動きをともなうことだし、なんといっても判断基準もむずかしい。たとえば掃除についていえば、ゴミを吸い取るだけなら問題ないだろう。拭き掃除となる...ドール[お取り扱い注意!](五)おどろくほどに

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百七十二)

    でね、工場なんかで余分にほしがるのは、明日は入らないんじゃないかという恐怖感があるからでしょ。ラインが止まることなど、けっしてゆるされることではないわ。逆にいえばその恐怖感をとり除いてあげれば、通常にもどるの。そのためには、富士商会に部品がキチンとはいってこなくちゃいけないわね。ではどうするか?富士商会だってやみくもに仕入れる必要はないのよ」まるで生徒と教師だった。絶対の信頼をよせている教師のことばには、迷うことなく従うものだ。いままさに、その関係におちいっていた。「実需ってわかる?ほんとの需要よね。じゃ仮需は?そう、恐怖感からうまれた、膨れ上がった需要。きっとあふれだすわ。あとひと月、ふた月?日本の町工場をなめないで。きっと徹夜してでも生産してるわよ。売れるんだもん、作ればつくるほど。国の政変もおちつく...水たまりの中の青空~第三部~(四百七十二)

  • ポエム ~夜陰編~ (手紙:振られたあ!)

    あなたって、どういう人なんでしょう?何かずっと見守ってあげたい。見守るという言葉が適切でなければ、見ていたい……。そういう気持ちを起こさせる人なの。そしてそれが、決してあなたの重荷にならないように遠くから、そっとと思う。だから、ずっとお友達でいたいの。他人は誰も皆、あなたやもう一人のあなたの作品を読んだ後、あたしをまじまじと見つめて、言う。『あなたはこの人に、一体どのような手紙を書くのですか?』あたしは、いつも、返答に困ってしまう。自分でも、不思議でたまらなくなるの。------そ、そんな、こと、、、いま、ことばを忘れてしまった…いま、なすすべを失った…ベッドに座わり、ぼんやりとテレビに見入っている。小説を書く気にもならない…あしたから、なにをしよう。なにを、すればいい……(背景と解説)送られてきた、詩と...ポエム~夜陰編~(手紙:振られたあ!)

  • [青春群像]にあんちゃん ((20年前のことだ。)) (十)

    シゲ子が夕食時にたおれたと連絡がはいったとき、真っさきに駆けつけたのは小学校3年生になったばかりのほのかだった。床のなかで苦しげな表情を見せるシゲ子に近づいたとき、弱々しい声で「ほのかちゃん…」と呼びかけられたが、思いもかけぬ反応をみせてその場に立ちすくんだ。「だれ、だれ…」小声で問いかけるほのかで、布団のなかの土色のはだをした老婆は、ほのかの知る祖母ではなかった。いつも身ぎれいにしているシゲ子とは、まるで似てもにつかぬ老婆だった。いや、醜悪な物体に見えてしまった。「シゲ子、シゲ子。ほのかが来てくれたぞ。良かったな、これでもう元気になれるぞ」孝道がシゲ子の耳元でささやく。かすかに口元に笑みがうかんだ。布団のなかからゆっくりとしわだらけの手が出て、明らかにほのかを呼んでいる。「いや、いや!」とさけんだなり、...[青春群像]にあんちゃん((20年前のことだ。))(十)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (三十一)

    「はい、もうけっこうですよ」あの天女さまに促されて退出した。別室に移された。「それでは、説明をしますね」その甲高い声に、つい薄目を開けたのだが、見なければ良かったかもしれない。貫禄充分の看護師だった。まさか…。いやいや、声が違う。「あのですね。眩しいんですよ、普段でも。室内から外を見るとですね、目を開けていられないんです。それに、遠近感もおかしいようで。先日の視力検査では、二重どころか四重いや六重にも見えちゃいました」医師に話すべく整理していた文言を、いっきに吐き出した。「ええ、ええ。それらすべてが、白内障の症状なんですよ。ほかに、白くかすみがかかったようなことは、ありませんでした?程度の差はありますけれど、見にくくなったこととか」言われてみれば、白い霞かどうかは分からないけれども、たしかにテレビの画面が...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(三十一)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (二十二)「父には、『そんなふしだらな娘に

    「父には、『そんなふしだらな娘に育てた覚えはない!』と叱られて、母には泣かれるし・・・。それにはじめてよ。父に手をあげられたのは」と、泣き叫んだ。男は、カラカラの喉からしぼりだすように「すまない」と答えたが、かすれた声のせいか、麗子の耳にはとどかなかった。「なんとか言ってよ!『挨拶にこないとはなに事だ!麗子、お前遊ばれただけじゃないのか!』。父にそう言われて、どんな気持ちだったかわかる?ねえっ!」ひと言もなかった。麗子の言は、至極もっともなことだ。しかし、麗子との関係を知られたいま、麗子の家を訪れることがためらわれた。上司を立てて、正式に結婚を申し込む以外になかった。それでしか、いやそれでも八方まるくおさまることはないだろうと思えた。ひと悶着もふた悶着もあるかもしれない。となると、男の評価が下がる。だから...[淫(あふれる想い)]舟のない港(二十二)「父には、『そんなふしだらな娘に

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (三十三)花が咲いたよ

    花が咲いたよパッと赤い花が咲いたよ白い花も咲いたよぶあーっとお花畑いっぱい咲いたよ陽が照ってきたよサッと青い花が背伸びしたよ緑の花も背伸びしたよわあーっとお花畑いっぱい背伸びしたよ風が吹いてきたよドッと赤い花が踊ったよ白い花も踊ったよどあーっとお花畑いっぱい踊ったよ水が撒かれたよワッと青い花が喜んだよ緑の花も喜んだようわーっとお花畑いっぱい喜んだよお花たちが言ってるよありがとう!うれしいな!------それなのに、もう一枚のメモ用紙に書かれた……------なにひとつ不満のない生活━愛する妻がいて、愛する子どもがいて、絵に描いたような幸せな生活ベビーシッターとして現れた、娘妻との生活をエンジョイするための、娘、のはずが……男は、同時に複数の女性を愛せるものらしい女は、どうなんだ?……答えがかえってきた「冷...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(三十三)花が咲いたよ

  • ドール[お取り扱い注意!]ドール  (四)わたしの涙目に気づいたようで

    わたしの涙目に気づいたようで「ご主人さま、申し訳ありません。嫌な思いをさせましたでしようか。服を着るというプログラムがありませんので。苦情申した立てをなさいますか。連絡先は…」と、かなしげに聞く。「いや、いい」。手を振ると「苦情がかさなりますと、返品処理をされてしまいます」と、目を落としていう。どうにも、人形であることを忘れてしまう。どんな目的で作られたものなのか、うすうす察しがついてきたが、そうは考えたくない。「さよこちゃんだっけ、ひとつ聞きたいことがある。わからないなら、こたえなくて良い」「さよこの分かることでしら、どうぞ」「きみを頼んだ覚えがないんだけど、だれかからの贈りものなのかな」「そんな…淋しいです、さよこは。お忘れになられたのですか、もう。2011年8月に、懸賞サイトで応募していただいたのに...ドール[お取り扱い注意!]ドール (四)わたしの涙目に気づいたようで

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百七十一)

    いちど聞いたことがある。「お父さま、推理小説はお好きだった?それともストレス解消のため?」それにたいする佐多の返答は意外なものだった。「ストレスか、そりゃあもう。しかし推理小説は、人間の心理探索のバイブルだ。精神分析とおなじだ。どうすれば人は怖がるか、喜ぶか、そして畏敬の念をもってくれるか。これが意外にわかってくるんだ」このところしばらく、毎夜のように佐多から真理恵に声がかかる。むろん五平に否やはない。灯りの消えた家にもどるのにも、もう慣れた。そして昨日の夜も、現在の部品不足にたいする考え方の講義を受けた。「会社の大小じゃない。いやそれを考慮せねばならんことは当たり前か。それよりもだ、この現象だけをみるのではなく、そこに隠れた裏はないか、そもそもなぜこの事態になったのか。そしてこの部品不足がおきたことで、...水たまりの中の青空~第三部~(四百七十一)

  • ポエム ~夜陰編~ (人生)

    心に雲の広がりを持ち、湿った空気のために、澄んだ音でさえも、屈折しがちな心……広い空、白い雲の広がりなど、ものともしない。雲雲雲雲雲々々々々々それですら、一つの空としての美を創り出している。幼い頃、背丈の何十倍もの大木の下でそのあまりの高さに、唯ため息を洩らしつつあすなろを感じた。その純な心は、今どこに。れんげ草の咲き誇る、畑の中に寝転んでは花と花を飛び交う蝶に心を許し、共に蝶になり、その蜜の世界に浸った。純な心は、どこに置き忘れた。いつか、おほしき太陽も隠れ沈みゆく彼方の雲はオレンジに輝く。太陽の、青い海に落としたオレンジ色をオレンジ色に染まった雲に乗って、どこまでも、追い続けてみたい。そして、やはりいつかは、ここに戻る……(背景と解説)二十歳を少し超えた、多感な時期のRollingAgeのわたしです。...ポエム~夜陰編~(人生)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (三十)

    「山本さんは、糖尿病もわずらってみえますね。糖尿病ののことは、ご存じですね?合併症がこわいですからね。はいそれでは、眼底検査をさせてもらいますよ。だいじょうぶですよ、なにもこわいことはありませんからね。光を当てて、なかの様子を見させてもらいます。まぶしいでしょうけれど、辛抱してください。まばたきしたくなっても、できるだけ我慢してくださいよ」じつに優しく低い声でささやききかけられると、目のなかをのぞき込まれるという恐怖感も薄らいでくる。いっそわたしのこころのなかも覗いてみてください。家族に見放されたあわれな、この老人です。ひとり住まいがこころ細い、独居老人です。どうぞ気にかけてやってくださいな、女神さま。あなたさまならば、多少の苦行にもたえられます。しかし実際は、そんな生易しいものではなかった。まぶしさを通...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(三十)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (二十一)部屋にはいるなり、

    部屋にはいるなり、「遅いじゃないの!恥をかいたわよ、あたし。時間どおりに来てよ!」と、ヒステリックに叫んだ。さすがに男もムッときた。「仕方ないだろう。今のプロジェクトがいよいよ大詰めなんだから。上から、プレゼン用の企画を急いで仕上げろと言われてるんだ」「だって、だって…」、とつぜんに麗子が泣きくずれた。はじめてのことだった。「おいおい、泣くなよ。悪かったよ、大声をあげて」男は背広を脱ぐ手をとめて、麗子を抱きしめた。あの夜のように、麗子のかたがふるえている。男はすこしうろたえた。なにか余程のことがあったのだろう。「どうしたんだい、今夜は。さあ機嫌をなおして。いっしょにシャワーを浴びよう」無言のまま、麗子は服をぬぎはじめた。〝やれやれ、やっと機嫌が直ったか〟と、安堵したものの、その後のご奉仕のことを思うと気が...[淫(あふれる想い)]舟のない港(二十一)部屋にはいるなり、

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (三十二)長いながい、少年の煩悶がつづいた。

    長いながい、少年の煩悶がつづいた。“どうして……”。“なぜ……”。“どうする……”。“どうやって……”。“どうして……”。“なぜ……”悲しいことに、なにをどう煩悶しているのか、少年には分かっていない。ことばだけが堂々巡りしている。少年の視線のさきにいる女は、食い入るようにバンドを見つめている。“ほら、ほら、待ってるんだぞ”、“ほら、ほら、まってるんだぞ”。煩悶が、いつしか逡巡に変わっていた。靴のかかとが、コトコトと音を立てている。よしっ!と、握りしめたこぶしも、すぐに力が抜ける。気を取り直しての力も、かかとが床に着くと同時に、立ち上がろうとするとゆるんでしまう。気づくと、バンドが交代している。身を乗り出さんばかりだった女も、ストローを口に運んでいる。バンドのボーカルが、マイクスタンドを蹴っては、がなりたて...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(三十二)長いながい、少年の煩悶がつづいた。

  • ドール[お取り扱い注意!] (三)「申しわけありません、

    「申しわけありません、重かったですね。体重は、いま37キロです。まだ成長途中です。身長は1メートル60センチで止まります。体重は、42キロで止まります。最近の平均値だそうです。ご安心ください、それ以上にはならないようにプログラムされています」神妙な顔つきでいう。眉間にしわをいれて、申しわけなさそうな表情を見せもした。「ご主人さまの体格からしますと、すこし大きいようですね」どんどん発声がきれいになっていく。まったく人間と遜色ない。現代の若者というよりも、昭和の女だ。なつかしさで胸がいっぱいになる。箱から引きずり出したときの感触が、体温しかりだがなによりその肌ざわりだ。すべすべとして張りもある。いや、瑞々しいというべきか。そして全体として丸みがある。しかも胸のふくらみがしっかりとあり、乳首さえついていたのには...ドール[お取り扱い注意!](三)「申しわけありません、

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百七十)

    「なにばかなことを言ってるの!競争社会だもの、あたりまえでしょ。人のいいことを言っていたら、相手にくわれちゃうわよ」真理恵がかみついた。お人好しの気があると五平に不満をもらしている真理恵だったが、今夜はことのほか機嫌が悪かった。普段ならばいないはずの小夜子が会社にいたため、不機嫌になってしまった。しかも皆がバタバタと動き回っているというのに、泰然自若と専務室に閉じこもっている。そしてそれを当たり前のこととして見ている社員たちに腹をたてているのだ。〝電話のひとつもとって、それこそ気に入られている課長なり部長にこびを売ってほしいわ。うちの社員たちをいじめないでくださいって。みんな頑張ってますからって。いいわ。そうやってボーッとしてなさい。みんなの目をあたしに向けさせるから〟五平がまず口を開いた。「よその業者に...水たまりの中の青空~第三部~(四百七十)

  • ポエム ~夜陰編~ (ピュッピュッ)

    クスリを5錠口に含み、水をひと口流し込む。さらに5錠、また5錠、そして5錠――いく粒になった?いっきに水と共に飲み込む。手首に充てられたナイフがすべる。血管から流れ出る血!ドクドク、と耳に大きく響く。台所のガス栓が緩められる。シューッ!という噴出し音の中、二人の会話が始まる。“ほらっ、血がこんなに流れて、綺麗でしよ!”“シューッだってさ。ピュッピュッって、なんないの?”(背景と解説)心中のシーンです。リアルではなく、バーチャルということです。むかしむかしのことですが、映画を観ました。タイトルも内容も、まるで覚えていません。ただ、あるシーンだけが残っています。拷問のシーンなんですが、バーチャル的にみてくださいよ。テーブルか机の上に、目隠しをされて縛り付けられています。手足は勿論、頭すら動けない状態です。そし...ポエム~夜陰編~(ピュッピュッ)

  • [青春群像]にあんちゃん ((20年前のことだ。))(八)

    孝男の初恋は、あいての父親の転勤で告白すらできない片おもいにおわった。高校の卒業を待たずに、転校してしまった。むろん引っ越し先がわかるわけもなく、机のなかには出すあてのない手紙がたまりつづけた。そのなかに、悲痛なおもいから書きこんだ3編の詩があった。――・――・――・――水たまりのなかの青空は小さかったポチャンと投げた石ころに水たまりのなかの青空は歪んだ。渇いた愛砂に吸われる水草木は枯れていた枯れ木に風が吹くきょうの愛あすには憎悪かわいた愛激しい雷雨外で遊ぶ子どもたち汗まみれ……時の流れはいま川となりました銀の皿は流れるのですその上に空を乗せたままその夜空は消えましたその朝(あした)には太陽が消えました吐く息の凍りし窓辺暖炉の火外には雪が音のするなり吐く息の凍えし手にぞ伝わりて恋しき想ひなぜに届かぬ身を縮...[青春群像]にあんちゃん((20年前のことだ。))(八)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十九)

    「はい、山本さん。お入りください」うすぼんやりと辺りが見えはじめる。周りを見わたすと、たしかにあの忌々しい老婆だった。機械のまえにちょこんと座り、「しっかりあててね」という看護師の声に、こんどはすなおに従っている。「友だちのレンズを……」と、医師の指示をムシする小娘はとみれば、おう、こりゃかわいい娘さんだ。年の頃、16、7歳あたりか。箸が転がってもおかしいという年頃だろう。教室内では、キャッキャッと騒ぎたい年頃だろう。ならば、許してやろうかな、おとなに反抗する時期ではあるのだし。薄ぐらい部屋のなかから、お出でおいでと手招きする女医先生、まさしく女神さまだ。まぶしかろうと灯りを落としていてくださる。ありがたいご配慮だ。この部屋では、眩しさも感じない。はっきりと女医先生を目にすることができた。三十代後半だろう...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(二十九)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港  (二十)それから何回かのデートを

    それから何回かのデートを重ね、そのたびにホテルで情交をかさねた。そしてそれはもう、あの夜の麗子とのからみではなかった。相かわらずの麗子主導だった。男は、ただ振りまわされた。次第におざなりになり、奉仕活動のような性〇に、男はいらだちを感じていた。それ故ということもないのだが、両親への挨拶については話題にのぼらなかった。麗子にしても、身体を許したという安心感からか、口にすることはなかった。それよりも、男との性〇に没頭していた。美容院で、素知らぬ顔をしながらその類の記事を読みあさった。そして、男をなじることも、ままあった。〝エロ小説まがいのことができるか!〟と、反発しつつも、ヒステリックな麗子の剣幕に圧倒されるのがおちだ。結局は、麗子の言うがままだった。ますます、男の気持ちのなかに”早まったかナ”という思いが募...[淫(あふれる想い)]舟のない港 (二十)それから何回かのデートを

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (三十一)新年に入りました。

    新年に入りました。さあつづいては、初ナンパのことです。「清水の舞台からとびおりる」というのは、こういうことを指すのでしょうねえ。ナンパの経験はあるといえばありますし、ないといえばそれもありです。またまた禅問答のようになりました。お怒りになる前にわたしの心情らしきものをひとくさりお聞きください。対人恐怖症、それとも女人恐怖症?面とむかっての会話が苦手でして、だれかを間に入れてのことならばいくらでも話が出来るのですがねえ。いえいえ、なんどもいうようですが、昔々のことですから。ですので、わたしの場合は手紙という手段をとりました。まあねえ、いまでもその名残りというのでしょうか、携帯電話の常態化にある現代においても、直電がにがてでメールなりを多用しています。そういえば現代の若者たちもまた、ラインなる通信手段がおおい...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(三十一)新年に入りました。

  • ドール[お取り扱い注意!] (二)「生ものです、

    「生ものです、お早めにご開封ください。なお、くれぐれもお取り扱いにご注意を」おどろいたことに、そんな表示があった。受け取ったおりには、なんの表示もなかったはずだ。ということは、表示か浮かび上がってきた?恐るおそる封を開けてみると、エアパッキンがぎっしりと詰め込まれている。「なんて、梱包だ。このエコのご時世に、なんて無駄なこんぽうをしているんだ」製品の梱包作業にじゅうじしているわたしには、とてものことに容認できるような代物ではない。よほどに苦情を申し立てようかと思ったが、いかんせん送り主不明ときている。「ゴシュジンサマ、オハヨウゴザイマス」とつぜんに、中から人形が起き上がった。ゼンマイ仕掛けのような仕草で、ピョンと。「な、なんだ。人形がしゃべっ…。いや、珍しくもないか。いまどきの玩具なら、当たり前のことか。...ドール[お取り扱い注意!](二)「生ものです、

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百六十九)

    そしていま五平が応対しているのは、そのネジに関してのことなのだ。大手の家電メーカーの製造部の部長が、入荷予定の確認にきている。正味のところ、実需分だけでなく在庫分としての確保を狙っている。現状の発注分の半分ちかくが在庫分としてのものだ。しかしそのことは、おくびにも出さない。ただただラインが止まってしまうと、談判にきている。きょうの電話のほとんどがそのネジに関するもので、その他いちぶがこれから不足が予想されているボルトに関するものだ。たかがネジ、されどネジ、なのだ。たった1本のネジ・ボルトが不足しても、製品はしあがらないのだ。なんの情報も持たぬ事務員にしてみれば、駆けずり回っている営業に問い合わせてほしいとおもうのだが、その営業自体もじっさいの入荷予定がわからずにいる。唯一はっきりしているのは、今日の営業終...水たまりの中の青空~第三部~(四百六十九)

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