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敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
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住所
岐阜市
出身
伊万里市
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2014/10/10

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  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (十五)「いや、やめて…」

    「いや!やめて…」男は、麗子の口からもれることばを塞いで強引にことをはこぼうとした。しかし麗子は、やはり「ダメ、まだ」と拒否った。そしてしばらくしっかりと抱き合っていた。「おねがい、まだだめ……」懇願する麗子の声だった。はじめて聞いたような、なみだ声だった。しかしいまの男には聞こえていない。見知らぬ男に……、という気持ちが消えなかった。「つぎには、ねっ?」。懇願する声がでた。そしてそれが引き金となり、ただただ己の欲情のままにつき進んだ。しばし静寂のときが流れた。男は満足感にひたりながら、腹ばいになってタバコに火をつけた。余韻にひたっている男、そして麗子は放心状態だった。じっと、天井を見つめている。どれほどの時が経ったろうか、麗子の口から出たことばは、男の予期せぬものであり、しかしまた予想のできることばだっ...[淫(あふれる想い)]舟のない港(十五)「いや、やめて…」

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (二十六)観光バスが「そこのけ、そこのけ」

    観光バスが「そこのけ、そこのけ」とばかりに、やってきました。あわてて、はじっこに寄りました。なのに、端っこによったはずのわたしの元に、またやってきます。さらにあわて横にずれましたが、プンプンです。なんでわたしを追いかけてくるんですかね。まあ真相はと言えば、どうやらわたしが逃げた場所が悪かったようです。駐車スペースなんですね。でも表示はなかった気がするんですが。歩き疲れているわたしに鞭をうつようなこんな仕打ち、恨んでやるう!なんてね。こんな年寄りをいじめてなにが楽しいか!ですよ。へへへ、こういうときだけ、年寄りあつかいして欲しいんですよ。さあそんなことより、中に入りますよ。良い天気です、ほんとに。汗ばむ陽気ですわ、ほんとに(「マジで」などと若者ことばは使いません)。でもですね、ほんとのところを言って、「マジ...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(二十六)観光バスが「そこのけ、そこのけ」

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (三十)じろじろと舐めまわすように

    じろじろと舐めまわすように善三さんは、小夜子さんを見られます。往事の、特高時代の善三さんを思わせる、恐ろしい様相でした。「もういいでしょう、そこらで。子どもたちもいることですし」と、なん人かが声をかけました。しかし射るような目つきの善三さんのことばはつづきました。「しかし念のいった小細工をしたものだ。若い娘たちが好んで着ていたワンピースまで用意していたのだからな。まあ、自ら訴え出ることはしまいと踏んではいたようだが。それにしても、美人に生まれたがゆえの災難だった。足立が思ったよりも早く帰ったことで、知られてしまったことだしな」なぜそこまで詳しいのかといった動揺が、はじめて小夜子さんの表情を変えました。目がつり上がり眉間にしわを寄せて、小声でしたが「おのれえ……」と漏れでたようにも。「真相は分からん。多分お...愛の横顔~RE:地獄変~(三十)じろじろと舐めまわすように

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百六十四)

    初夜のことを、五平が思いだしている。ひんやりとした空気のただようなか、五平と真理恵が対峙している。あからさまな政略結婚であることに、五平は忸怩たるおもいをもっている。真理恵への申し訳なさが、五平のこころに充満している。わかにたいする未練の情をすてきれない五平だ。武蔵の思いは痛いほどわかる。おのれが武蔵の立場にたったならば、やはりおなじように説得を試みたろうとおもっている。しかも10歳近い年の差と、五平の容貌だ。三友銀行という大看板をせおうう父親をもつ令嬢でもある。再婚とはいえ、望めばもっと将来有望な青年にとつげるはずだ。〝こんな風采のあがらぬ、女衒あがりの男なんぞに〟と思うきもちがつよい。せめてもこののち、しっかりと愛情をそそぎなに不自由のない生活はもちろん、真理恵の夢――それがなにかは知らぬ五平だけれど...水たまりの中の青空~第三部~(四百六十四)

  • ポエム ~黄昏編~ (あなた……)

    分かっていますあなたの想いおねがい少しだけ待ってもう少しこのままで居させてあなたの胸はあたしのベッドなのあなたの腕はあたしの枕なのあなたの笑顔昨日まではあたしのものあなたの笑顔明日からはあの方のもの分かっていますあなたの希みあなたの止まり木はもうあたしじゃないあたしの寄る辺はあなたじゃないでもでも待ってて良いかしら?あなたのお帰りを待ってて良いかしら?あなたの笑顔を空に白い雲が急ぎ足で流れています海に白い波がさざ波立っていますあなたあなたあたしだけのあなた……=解説=キモは、「あなたの胸はあたしのベッドなの」「あなたの腕はあたしの枕なの」なんですが。まあねえ、「おいすがる女を……」なんてね。パラレルワールド、あるのか、ないのか……。わたしが、すがっていたのでしょうか。ポエム~黄昏編~(あなた……)

  • [青春群像]にあんちゃん ((20年前のことだ。)) (二)

    家出中の定男など相手にする会社はない。1社だけが、「そんな事情なら…」と温情をみせたけれども、「ここはたこ部屋まがいだ、やめとけ」と、初老の男が貞夫に忠告した。その実は、定男が入社することによって追い出されるのではと危惧した男の、哀しいうそだった。しかし定男はその男の話を信じてしまった。その実、会社側からの仕事の内容を聞くにつけ、〝じぶんにできるか?〟と怖じ気ついてしまった。翌日に「べつに決まりました」と嘘をついて辞退した。つぎに人手不足だと聞き知って深夜営業の外食産業のバイトに応募してみたが、身元保証人を求められてしまった。親に頼むわけにもいかず、またはじめての町で友人知人もいるわけもない。1週間が過ぎて、そろそろ持ちだした所持金も、安宿の宿泊代にきえていく。食事もパンと飲みものだけにして節約するも、心...[青春群像]にあんちゃん((20年前のことだ。))(二)

  • 最後でしょうか? またまた、雪に。

    昨日のあたたかさは、なんだったの?やっぱ、まだ2月だったか。9:30頃昨日、やくそくの予約時間をおくれてしまい、3時からの施術に。足腰の「運動リハビリ」をうけているけど、もうひどいもん。ビリビリビリビリの連続で、「イタイ」「痛い」とかの話じゃない。「カタサからですね」。むごいお言葉を医師から聞かされて。((情けない話))10mも歩くと、太ももの裏とふくらはぎがつっぱりはじめ、1歩1歩を進むごとに、ビリビリ感が。そして腰にいたみが走り、背中にもビリビリ感がおそってくる。5度ほど腰を曲げれば、イタミはおさまり、足のビリビリ感も消えて。昔々(ほんの四、五年前、コロナ禍以前のこと)は、しっかりとした足取りで、各地の美術館を闊歩していたというのに。背筋をピンと伸ばして、さっそうと歩いていたというのに。2018年年末...最後でしょうか?またまた、雪に。

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十三)

    郵便局の真向かいにはコンビニがある。わたしは利用しないけれども、隣人さんたちはふつかとあけずに通っているようだ。どうやらそこの店員に知り合いがいるらしく、ひとしきりおしゃべりをしてくるらしい。客商売とはいえ、その店員さんも大変だ。ふたりいるようだが、もうひとりがせわしなく会計をしていて、お客さんが後ろに並んでいてもお構いなしなのだから。ただこちらも会計はしていて、差し出される商品がゆっくりだということだ。そこからアパートにもどるのが、わたしのいつもの散歩コースになっている。車が通ることはめったになく、そのかわりに自転車が多い。おばさん連中なのだが、チリンチリンとベルを鳴らして通り過ぎていく。たしか歩行者優先で、ベルを鳴らすのは緊急時だけに制限されているはずだ。もっとも、歩行者に注意喚起をおこない、横にどか...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(二十三)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (十四)こんやの麗子は、

    こんやの麗子は、いつもの麗子ではなかった。紫がにあう女性だった。勝負服よ、という。白いブラウスに白いジャケット。もちろんスカートも明るい白だ。そしてアクセントにとうす紫のスカーフを巻いている。均整のとれたからだが、その白に包まれている。ふたり並んで歩くのが、彼にとってはステータスだった。かならずといっていいほど、すれ違う男どもが麗子をなめ回すように見ていく。ひょっとして今夜は、だれかにからまれたのかもしれない。となりの市まで出かけての、はじめての映画鑑賞だった。いつものことではあるが、男のエスコートがあっての安心感だったのかもしれない。いつもの香水に加えて、今夜はアルコールの香がつよい。誰かを呼び出してグチを言いあう酒盛りでもしたのだろうか、そんなことを男は考えた。そして思いっきりに、男の悪口を並べ立てた...[淫(あふれる想い)]舟のない港(十四)こんやの麗子は、

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (二十五)充実感でいっぱいです。

    充実感でいっぱいです。ついに、歩ききりました。血の池地獄につきました。意外なことに、低血糖の症状はおさまりました。たまたま飴玉をもっていたので、早速に口に放り込んで道路に地べた座りというんですか、コンビニの駐車場なんかで女子高生たちがお尻を、でんとばかりに座っているじゃないですか、そんな風にすわりました。そういえば、小学生の頃ですか、運動場でこんな格好ですわった記憶があります。朝礼で校長先生の話を聞きましたね。なにせ団塊の世代ですから、体育館なんかでは入りきれなかったんじゃないですかね。ひとクラス55人ほどで、6クラスありましたから。で6学年でしょ、2000人近い児童数なわけです。中学時代なんか、凄かったですよ。同じくひとクラス55人ほどで、しかも16クラスあるわけです。想像できます?机なんか小さなもので...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(二十五)充実感でいっぱいです。

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (二十九)都電を利用しての

    都電を利用しての移動でした。朝、なん時でしたかしら。早くに出たことは覚えております。百貨店でのお買い物だと、正夫には告げておりましたが、実は……。はい、府中の刑務所です。きょう、三郎さまが出所をされます。一子さんから内々に連絡を受けまして。といいますのも、ご実家からは勘当をされておられます。まあ、無理もありませんわねえ、老舗の呉服屋から逮捕者が出たのですもの。しかも跡継ぎでいらっしゃいましたし。帰るあてのないお方です。行くあてもありませんでしょうし。とても恐縮されていらっしゃいましたが、とりあえず迎えだけでも頼めないかということです。今さらお会いしてもどうしようもないことなのですが、かつては恋い焦がれたお方でもございますし、少しではありますが金員を用意して出かけました。二、三日の宿賃になればと思いまして。...愛の横顔~RE:地獄変~(二十九)都電を利用しての

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百六十三)

    そして○の床についていたとき、武蔵が逡巡したこと。いまの家族経営は小規模の会社には通用する。しかし株式会社として体裁をととのえ、大きく成長していこうとすれば、どうしても人の好き嫌いが関与してくる。本人にその意識はなくとも、いや逆に「えこひいきはいかん」とした場合に、かえって優秀な社員をうしなうことになりかねない。〝俺の後は、小夜子だと五平はいうだろう。社員の誰しもが賛成するだろう。そして小夜子もまた、そう思っているだろう。しかし……。経営のなんたるかを、小夜子は知らない。うしろで五平が支えてくれるとはいえ〟その点五平ならば、と考えている。女衒というなりわいが、逆に功を奏するのではないかとかんがえるのだ。冷静な目でもって評価をし、しがらみとは無縁に物ごとの判断ができるのではないか、そう思っている。〝俺のもつ...水たまりの中の青空~第三部~(四百六十三)

  • ポエム ~黄昏編~ (帰省からの帰宅)

    「わたし、分かる?」「はいっ!わたしわかるさんですね?」「うん、もおう!」「うん県もおう市の方ですね?」「しらない!」「しらない町ですか」「プ・プ・プ・プ……」「プ・プ・プ・プ番地、と」“ガラガラ”「おう、お帰りい!」「フンッ!」=解説=お遊びで作った詩です。比較的最近の詩のようにも感じられるでしょうね。そう![オレオレ詐欺]でも、ブッブー!紛れもなく、五十年近く前に創った詩です。いえいえ、実際には、こんな会話はありませんから。独身時代の、ほんとに、お遊びの詩ですから。なんてしつこく否定すると、怪しい!となりそうですね。今回は、この辺で。ポエム~黄昏編~(帰省からの帰宅)

  • [青春群像:にあんちゃん] ((20年前のことだ。)) (一)

    20年前のことだ。孝男と道子の結婚生活も7年をかぞえた。子宝にめぐまれぬふたりをよそに、高校3年の定男が、同級の女子生徒であるあかりをはらませてしまった。真剣な思いのふたりは、卒業とどうじに結婚すると宣言した。「土建業にいく。給料がいいらしいから。おれ、こいつらのためにいっしょうけんめい働くよ。おやじには迷惑かけないし。ただ、赤ん坊がうまれてしばらくは、面倒をみてやってください」真剣なまなざしで、孝道の目をまっすぐに見て宣言した。あかりもまた、両親のかおをまっすぐにみる。親同士の話しあいをもったが、すぐに結論が出るようなことではない。あかりの親の怒りは激しく、ただ定男をなじるだけだった。道孝にしても、ただただ頭を下げるしかない。二度目の話しあいのおりに「申し上げにくいことですが」と前置きをして、中絶という...[青春群像:にあんちゃん]((20年前のことだ。))(一)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十二)

    街中で見かける店は、大きなガラス窓で中がよく見える。けれどもこの店はガラスの代わりに板材がつかわれていて、中をうかがい知ることができない。店内が見えないということは、おそらく置いてあるだろうショーケースも見えないわけだ。ということは、その品揃えもわからない。デコレーションケーキが好きなわたしで、クリスマス近くになると無性に食べたくなる。いちどこの店で買ってみたいものだと思うのだけれども、どうにも敷居がたかい。そう、値段がわからない。寿司店で見かける時価という文字があたまをよぎる。ケーキに時価があるわけがないとは思うのだけれども、スーパーで並んでいる大手パンメーカーのそれとは、比較にならない値段だろうということだ。店内にはいってショーケースをのぞき込み、値段にびっくりしてそのまま外へ。そんなことはできないだ...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(二十二)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (十三)ふた月ほどまえの、

    ふた月ほどまえの、雨の日だった。梅雨の時期もおわりにちかづき、はげしい降り方がつづいている。きょうは花金だった。普段なら早めに仕事を切り上げて、いつものように……。しかしやっとコンタクトのとれた会社から、昼過ぎに「あたらしい製品について説明を聞きたい」と連絡がはいった。すべての予定をキャンセルして、部長とともにはせ参じた。いっきに話がすすみ、そのまま接待の場へとうつった。〝今夜は映画だったな。すっぽかしになっちまうか……。しかたない、次にはなにかプレゼントでも用意してやるさ〟今となっては連絡のとりようがない。部長と会社をでたのが、午後の2時すぎ。プレゼン用の資料を取りそろえて、念のためにと複数回の確認をした。コピーを女子社員に頼んだときに、いったんは麗子へ連絡をと受話器をとったものの、取引先からの電話がは...[淫(あふれる想い)]舟のない港(十三)ふた月ほどまえの、

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (二十四)向こうから帰りのタクシーでも

    向こうから帰りのタクシーでも来てくれると助かるのですがねえ。そんな都合良くはいかないでしょうなあ。「物語りならば作者の思いどおりに出来るのでは?」ですか。まあたしかに、そうなんですけどね。そんなご都合主義は取りたくないですし……。「浮遊術は?」。あなたも嫌みな方ですねえ。ではでは、やってみましょうか。ああ、だめだ。きょうは荷物が多すぎる。現在75kgの体重です。そして荷物が、多分7~8kgはあるでしょう。ということは、80kgを超えているわけです。わたしの浮遊術では、80kgまでなんですよね。というのは冗談ですが。お分かりだと思うのですが、浮遊術というのは、純真な心持ちでなければ使えません。70歳のわたしです、世俗の垢に汚れによごれています。もう使えませんよ、SuperManじゃないんですから。ほんとのこ...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(二十四)向こうから帰りのタクシーでも

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (二十八)それにしても、こうなりますと、

    それにしても、こうなりますと、どちらの話を信じたら良いのか、それとも善三さんのことばが当を得ているのか……。ご婦人方の間でも、ご意見が分かれたようでして。「三郎さんのご実家に身をよせるということは、できなかったかしら」「お嬢さま育ちのむすめさんが農家の嫁というのは。やっぱり、無理があるでしょ」「若いむすめひとりが戦後をいきぬくなんて……。それに身ごもっているわけですし」「身をおとさずにすんだのよ、良しとしましょうよ」「でも、その後も使用人ふつかいではねえ」吐き捨てるように善三さんがおっしゃいます。「ふん。そらみろ!人をひととも思わぬ所業だ。すこしばかり美人だからと鼻にかけよって」善三さんのことばに、思わずわたしも頷いてしまいます。たしかにこれではご老人が哀れでございます。しかしこれで終わりではなかったので...愛の横顔~RE:地獄変~(二十八)それにしても、こうなりますと、

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百六十二)

    そしていま、五平のとなりに真打ち登場とばかりに真理恵が立っていた。えんじ色のブレザーに紺色の膝下20センチほどのスカート、そして靴はエナメル質の黒光りものだ。胸には大輪のバラをさし、化粧はすこし派手目にみえる。真っ赤な口紅をこれでもかというほどに塗りたくり、まさしく戦闘態勢に入っている。「加藤真理恵です。よろしくおねがいします」専務の妻、とは口に出さなかった。あくまで、ひとりの個人としての挨拶だった。30度ほどに腰をまげつつも、〝あなたたちへの礼ではなく、富士商会への礼なのです〟と言外にせんげんしているようなものだ。つめたく見下ろすような視線を、全社員にそそいでいた。横に立つ五平はまるで無頓着で、「わたしの嫁さんだからと身がまえる必要はない」と口にするものの目は笑っていない。これから起こるであろう幹部社員...水たまりの中の青空~第三部~(四百六十二)

  • ポエム ~黄昏編~ (セント・バレンタイン・デー)

    とうとう来てくれなかったしょんぼり帰るぼくにいたずら?神さまの……零時をすぎてかえると、ドアの前にリボン付きのプレゼントだれ?ふたりして食べるつもりだったのだろうかチョコと、フライドチキンが、ふたつずつ置手紙のないプレゼントひとりぼっちのへやで灯りを消してきょうだけはこんやだけはゆるしてください涙が止まりません拭ってもぬぐっても溢れ出てきます勘弁してくださいもう許してください。こんやは明るい月ですでも歪んで見えます雨降りのように壁際に腰をおろして膝を抱えてみますきょうは、すこしずつですが冷えたこころが温まってきました求めはしなかった優しさを与えはしたの筈なのに……きょうは、セント・バレンタイン・デー=背景と解説=待ち合わせの場所に来てくれなかった彼女諦めて帰ったアパートのドアの前に置いてあるプレゼント誰?...ポエム~黄昏編~(セント・バレンタイン・デー)

  • 5日連続とは行きませんでした。

    5日連続とは行きませんでした。とはいっても、4時頃だったですか、寒くて目が覚めたときに窓からのぞいてみたら、うっすらとは車のフロントガラスに積もっていました。ちょっと遅起きとなってしまい、こんな状態でした。北陸・東北、そして北海道地区のみなさん。笑わないでくださいね。九州生まれのわたしには、4日連続なんて、ほんとに人生初の体験だったんですよ。5日連続とは行きませんでした。

  • [青春群像:にあんちゃん] (六)

    はげしく首をふる孝男に、道子が冷然とつげた。「ツグオは、あなたにそっくり。好き嫌いがはげしくて、気に入った人間にはとことん入れあげるけど。嫌いだとなると徹底的に排除して。それを相手の人格のせいにするの」口をはさもうとする孝男を手で制しながら、なおもつづけた。「それに、清潔好きというより潔癖すぎるの。家族がさわった物でも、同じものは嫌がるし。髪の毛一本ですら目くじらを立てて責めあげるし」「それはだな。お前の掃除がいきとどいていないからであって、手抜きぐせだろうが」苛立つ孝男が道子のことばをさえぎった。ほら相手のせいにするとばかりに、大きくため息を吐いてみせながら「ツグオはね」とつづけた。「ツグオはね、知っているの。あなたに似ていることをしっているの。だからいつもあなたを避けてるの。そしてね、あなたはそのこと...[青春群像:にあんちゃん](六)

  • 人生初の、4日連続だあ!

    うわあ!人生初の、4日連続だあ!2月5日、6日、7日、そして今日は8日だもんね。2月8日(降ってまーす)2月8日2月7日9:152月6日11:102月5日11:30これまで日中が暖かったので、大地に積もることはなかったけれども。……って、今日は降り続いているよ!食糧は?3日分冷凍中。水は?水道が出る。火は?ストーブがある、灯油も一缶ある。ガスが万が一止まっても、大丈夫!2月8日8:30あれれれ?犬は?♪犬は外を走り回り、猫はこたつで丸くなる♪じゅなかった?元気なのは、ばあちゃんたちだけ。人生初の、4日連続だあ!

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十一)

    外に出てみると、ポカポカとした暖かい日差しがあった。ときおり吹いてくる風にはすこしの冷たさを感じたけれども、身をちぢこませる程でもない。うち沈んでいた気持ちが、すこし収まってきた。団地内の小さな公園に、なん本かの樹木が植えられている。そういえば春先に、桜の花びらが部屋のベランダに舞いこんでくる。といって、すべてがおなじ樹木のようには見えない。だいいち、高さがちがう。1本の木など、とびぬけている。中学高校において理科の授業がきらいだったわたしには、植物はさっぱりだ。草花にしても、せいぜいがチューリップと大輪の菊と、あとはバラぐらいだろうか答えられるのは。ああ、もうひとつあった。トイレの芳香剤によく使われている、紫色のラベンダーを知っている。頭にうかぶ花の名前といえば、ホウセンカ――これは島倉千代子さんだった...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(二十一)

  • [淫(あふれる想い)] 舟のない港 (十二)当時としては新しい

    当時としては新しい間取りのワンルームマンションで、20畳ほどの広さがある。やや縦なになっていて、玄関のドアを開けるとすぐにシンクがある。その向かい側にトイレとバスルームが一体となっている。自炊をするだけの時間とその意欲もない男には、十分なキッチン――と呼べるかははなはなだ疑問だけれども十分なスペースだ。間仕切り用のカーテンがあるにはあるが、ほとんどが使われていない。なのでドアを開けるとすぐにベッドとハンガーラックが目に飛込んでくる。申し訳程度の小さなテーブルがありはするが、壁に立てかけられたままで、いままでいちども使われた形跡はない。ここに入居したおりにポータブルテレビを、他の洗濯機やらエアコンとともに注文したはずなのだが、店の手違いかそれともかれの注文ミスかで届かなかった。結局はそのままになってしまい、...[淫(あふれる想い)]舟のない港(十二)当時としては新しい

  • [ライフ!] ボク、みつけたよ! (二十三)血の池地獄ですね、

    血の池地獄ですね、そうでした。ちょっと気をゆるすと、すぐに横道にそれちゃいます。性格が移り気というわけではないですよ。気が散りやすい、これは当てはまるかもしれませんが。どこが違うんだ!とお叱りを受けそうですが、集中するときは集中しますんでね。はい、これからは愚痴のオンパレードになります。覚悟して読んでくださいね。「いままでだって十分に愚痴だらけだったぞ」ですって?すみませんねえ、わたし自身はそんな風には考えていなかったものですから。googlemapで確認しますと、「距離は2.6kmで、歩いて34分」とあるんですよね。それで、地図上に貴船城があるのですが、右手に見ながらのルートになっています。が、が、です。わたしは左手に見ながら歩いたわけです。ということは、より海岸寄りに歩いたことになります。時間にしても...[ライフ!]ボク、みつけたよ!(二十三)血の池地獄ですね、

  • 遅起きしました。

    恥ずかしいことながら、お昼近くに寝覚めてしまいました。昨夜はたしか、12時じゃないか、午前1時ごろだったか?それにしても、いちど5時頃に目覚めたとはいえ、さすがにそれ以降いちども起きずにお昼近くだとは……。「不適切にも……」じゃなくて、「自堕落にも、ほどがある!」ですわ。しかし5時頃には降っていたんですねえ。だって、ほんと閑かでしたもん。無音、と言っていってもいいぐらいですわ。そんな中で、録り置きしていた「とうきょうサラダボール」2本を見ました。静かなドラマなんですけど、観ちゃうんですよね。1時間半、閑かでゆったりとした時間を送りました。で、起きてみたら、この状態でした。遅起きしました。

  • 遅起きしました!

    恥ずかしいことながら、お昼近くに寝覚めてしまいました。昨夜はたしか、12時じゃないか、午前1時ごろだったか?それにしても、いちど5時頃に目覚めたとはいえ、さすがにそれ以降いちども起きずにお昼近くだとは……。「不適切にも……」じゃなくて、「自堕落にも、ほどがある!」ですわ。しかし5時頃には降っていたんですねえ。だって、ほんと閑かでしたもん。無音、と言っていってもいいぐらいですわ。そんな中で、録り置きしていた「とうきょうサラダボール」2本を見ました。静かなドラマなんですけど、観ちゃうんですよね。1時間半、閑かでゆったりとした時間を送りました。で、起きてみたら、この状態でした。遅起きしました!

  • 愛の横顔 ~RE:地獄変~ (二十七)はっきり申しましょう。

    はっきり申しましょう。家柄云々といったことでした。わたくしではございませんよ。正夫ですよ、正夫です。なにせ尋常小学校すら出ておりませんから。それにあの容貌でございますし。ご親戚に対してもねえ。おわかりでございましょう?縁を切ってくれ、そのように言われたようでございます。いえ、妙子はなにも申しません。健夫さんが教えてくださいました。「恥ずかしい両親です。未だに戦前の因習にとらわれて、家格がちがうだの、家柄がひどすぎるだのと。ぼくが縁を切ります」。そこまでおっしゃっていただけたのですが。そう言われましても、妙子の気持ちを考えますと……。まあわたくしとしましても、妙子はどこに出しても恥ずかしくない娘です。ただ、親は選ぶことができませんし。申しわけありません、わたくしが間違っておりました。いくら戦後のあの時代だっ...愛の横顔~RE:地獄変~(二十七)はっきり申しましょう。

  • 水たまりの中の青空 ~第三部~ (四百六十一)

    小夜子の嘱託としての活動は、相変わらずの取引先へのあいさつまわりだった。ところがある取引先において、会社案内をさせてほしいという申し入れがあり、それをむげに断ることもできず、滞在時間が延びてしまった。同行していた竹田だけが先に帰ることになってしまった。そのことを聞きつけた他の会社が、うちの会社もと申し入れが重なり、けっきょく相手先の車が送り迎えをすることになった。当初こそ「そこまでの女なの?」と、ねたみそねみの思いを抱いて真理恵だったが、社内で采配をふるうことには好都合だとかんがえるようになり、よろこんで送り出していた。きようは金曜日であり、週の内で一番浮かれやすい日だ。明日の土曜日もしごとではあるのだが、半日だと言うこともあり、物流量が少なく、配達員たちもいつもよりはのんびりできる。普段はそれぞれの部で...水たまりの中の青空~第三部~(四百六十一)

  • ポエム ~黄昏編~ (風・旅人)

    エッフェル塔の下のため息を気まぐれな風はコンシェルジュリーへ運んだコートの衿を立てて急ぎ歩く旅人を冷たい風は囃し立てた今風は眠っている朝風はまた吹くだろう=解説=この作品のキモは「朝(あした)風はまた吹くだろう」です。根拠のない希望を持ちたいと、あがいています。「眠っている」だけなんだ、あしたには、朝の光とともに幸せがやってくるはずだ、と。エッフェル塔はパリの象徴です。希望の塔ですよね。コンシェルジュリーというのは、今でこそ司法宮の一部ですが、かつてマリー・アントワネット王妃が収容された牢獄なわけです。そこでわたしは、牢獄としてではなく、恋獄の象徴としたわけです。ポエム~黄昏編~(風・旅人)

  • [青春群像:にあんちゃん] (五)

    自宅に戻るやいなや、孝男の怒声が飛んだ。「道子、ほのかはどこなんだ!そもそも、なんで介護士なんだ。ほのかにはどこでもあるんだぞ。銀行が良ければ入れてやるし、商社が良ければ話をつけてやれる。公務員はどうだったんだ。なんで、なんで、あんな老人のばかりのところに…」苦渋にゆがんだ顔を見せて、力なくソファにへたり込んだ。そんな孝男を勝ちほこったような表情で道子が見おろす。「あなたには分からないの、ほのかの気持ちが」と、詰るように言った。どういうことだと顔を上げる孝男に「お婆ちゃんよ、お婆ちゃんのこと。それが引っかかっているの、今でも。キチンとしたお別れをしていないでしょ」と冷たく言い放った。「お別れしていないって、あれは、父さんが…。しかしそれがどうして、介護士なんだ」「あなたから逃げ出したいという気持ちもあった...[青春群像:にあんちゃん](五)

  • 奇天烈 ~赤児と銃弾の併存する街~ (二十)

    “ああ、もうお昼を過ぎてるじゃないか”のっそりと立ち上がりはしたものの、なにをする気にもならず、先日に買い置きしておいた菓子パンに手をのばした。1本を食べ終えればいつもならお腹がふくれてくるのだが、きょうはまだ空腹感がおさまらない。極度の緊張感のせいだろうか。カロリーが相当に消費されたのだろう。“きょうはとくべつに、喫茶店で食べるかな”じつのところ、警察を疑うわけではないが、万がいちということもある。出ばると言っても、すぐにとは限るまい。どれ程の時間がかかるのか。その間、どう対処すればいいのか。“留守だとわかれば、相手もあきらめるだろう。いまは法律もあることだし、張り紙やらとなり近所への嫌がらせもしないだろう。とにかく部屋にいちゃだめだ”いても立ってもいられなくなったわたしは、戸締まりをしっかりとして外に...奇天烈~赤児と銃弾の併存する街~(二十)

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