[淫(あふれる想い)] 舟のない港 (十五)「いや、やめて…」
「いや!やめて…」男は、麗子の口からもれることばを塞いで強引にことをはこぼうとした。しかし麗子は、やはり「ダメ、まだ」と拒否った。そしてしばらくしっかりと抱き合っていた。「おねがい、まだだめ……」懇願する麗子の声だった。はじめて聞いたような、なみだ声だった。しかしいまの男には聞こえていない。見知らぬ男に……、という気持ちが消えなかった。「つぎには、ねっ?」。懇願する声がでた。そしてそれが引き金となり、ただただ己の欲情のままにつき進んだ。しばし静寂のときが流れた。男は満足感にひたりながら、腹ばいになってタバコに火をつけた。余韻にひたっている男、そして麗子は放心状態だった。じっと、天井を見つめている。どれほどの時が経ったろうか、麗子の口から出たことばは、男の予期せぬものであり、しかしまた予想のできることばだっ...[淫(あふれる想い)]舟のない港(十五)「いや、やめて…」
2025/02/28 08:00