chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
敏洋 ’s 昭和の恋物語り https://blog.goo.ne.jp/toppy_0024

[水たまりの中の青空]小夜子という女性の一代記です。戦後の荒廃からのし上がった御手洗武蔵と結ばれて…

敏ちゃん
フォロー
住所
岐阜市
出身
伊万里市
ブログ村参加

2014/10/10

arrow_drop_down
  • きのうの出来事

    このところよもやま話をお届けしていませんでした。コロナと言うこともあり、出かけることをやめてしまったというせいもありますがね。3月末日でもって完全リタイアしました。そこで、4月11日から2泊3日の旅行に、3年ぶりに出かけました。相方も3月末でひと区切りをつけて、4月17日から新天地で頑張るということで、ふたり旅行です。お話したかどうか記憶にないのですが、この数年の間に大事なふたりを失いました。おととし9月に高校時代からの友人(親友と言ってもいいのですが)と、今年の1月には兄をです。2月下旬頃から体調を崩しはじめて、3月の頭に救急車依頼をしてしまいました。大丈夫だと思っていたのですが、やっぱり来てましたねえ。会社も休みがちになりました。体調は少しずつ回復してきたのですが、なんなく会社側の反応で気になることが...きのうの出来事

  • 青春群像 ごめんね……(問屋街の二)

    ぼくの仕事は、それらの個人商店やら会社相手に梱包材類をとどけることだった。そんな会社のひとつに株式会社益田商店があり、取引先としては大口の部類にはいる。ここには毎日梱包材類をとどけにいくのだが、二日ないし三日分をまとめて注文してくれればいいのにと、つい同僚にこぼしたことがある。しかし「毎日の配達になったのは、うちの会社都合だ。よそに入り込まられないようにって、担当者がお願いしたんだ」と、先輩社員に叱られた。小回りをきかせるということらしい。そういえば、午前と午後とに配達をしたことがある。株式会社増田商店は、多々ある繊維街の中でも名のとおった中央繊維街の入り口角にある。地の利の良さからだと揶揄されるけれども、この辺りでは一、二を争う売上高をほこっている店だ。社員はみな横柄な口の利き方で、我々配達員は人間あつ...青春群像ごめんね……(問屋街の二)

  • [ブルーの住人] 蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~

    (十)ポスターもう一度バンドに目を向けると、激しく動くスポットライトの中にも、等身大らしきポスターが何枚も貼ってある。黒のマントに身を包んだ、ザ・ビートルズだ。神として崇められている、ザ・ビートルズが。「リンゴの半テンポずらすリズム感が良いんだ」「ジョン・レノンのシャウトは絶品だ」「ポールだって、光ってる」四人組のはずなのに、三人の名が飛び交う。ジョージ・ハリスンの名が出てこない。更には、リンゴ・ポールと呼び合うのに、ジョン・レノンだけがフルネームだった。しかし少年は興味を示さない。少年のお気に入りはプレスリーであり、アニマルズだった。‘朝日の当たる家’に聞き惚れている少年だ。ミリタリールックのビートルズを好きになれない少年だが、お気に入りの‘Twist&Shout!’がビートルズの楽曲だとは知らないでい[ブルーの住人]蒼い情熱~ブルー・れいでい~

  • ポエム 黎明編 (夕陽よ)

    みなもに映える夕陽よ!お前はまるで生命あるように語りかけることばをもたぬ夕陽よ!わたしには言葉しかないのに語りかけてくる空を見あげてみよう涙でぼやける景色にもういちどたずねてみよういつかお前は消えていたもうみなもにはなにもない目映いばかりのおまえの存在のあかしがきえていた……まっていてくれわたしもすぐにきえていくから……=背景と解説=夕陽=愛と見れば、他愛もないものです。底の浅さが感じられます。この頃(中三)の日記を読んでみると、父親とも断絶状態になっていました。といっても、父親はそんな風には感じていなかったと思いますが。兄弟二人を食べさせることに必死で、おもんばかる余裕などはなかったと思いますよ。反抗期だったということを併せ考えても、「申し訳なかった」と反省だけです。まったくの自己チューで、家事一切の手...ポエム黎明編(夕陽よ)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百四十四)

    「だけど、社長の予言?当たったじゃない。まさかホントになるとはね。男連がいなかったのは、想定外だったけどね」「だめだめ。うちの男どもは、てんで意気地がないんだから」「うちだけじゃないわよ、どこもよ」「そうよね、社長と加藤専務ぐらいじゃない、頼りになるのは」「それはそうと、神田さんって誰なの?まさかほんとに、警察に知り合いが居るの?」「居るわけないですよ。あんなの、デマカセです。何て言いました、あたし?神田って言ったんですか?ふうぅぅ」「あの男が気付かなかったから良かったけど、危なかったわね」「そんなことないですよ、神田さんだろうと田山さんだろうと、警察に知り合いが居るってことが大事なんです!」一番の新入りが頬を膨らませて、抗議した。「そうそう、結果オーライよ。最悪でも警察に繋がってれば、何とかなるでしょう...水たまりの中の青空~第二部~(三百四十四)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ 新(三百四十三)

    きょうは〆後の、月はじめだ。どっと注文が殺到して、あいにく男たちはみな、出払っている。普段はいるはずの五平やら竹田ですら、配達へとかりだされていた。ひとり居るには居るが、齢六十を過ぎた老人だ。しかも激しくふり出した雨のため、裏の倉庫内での作業に精を出している。余ほどの大声でも、この雨音では聞こえるはずもない。「どうしたの?」。二階から小夜子が声をかける。手すりから体半分を乗り出して、階下の様子をのぞきこむ。「おう!あんたが、女主人かい?」。待ってましたとばかりに、男が怒鳴る。「あんたんとこは、困ってる人間に対して、まるで情というものがないんだねえ!世間さまの評判どおりだぜ」半ば禿げ上がった頭が、ぴかりと光る。凄みのある目つきで、階上の小夜子を睨みつけた。いまにもその二階へ上がらんかとするような動きに、大女...水たまりの中の青空~第二部~新(三百四十三)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ 新(三百四十二)

    「百貨店にたてついた男」として、富士商会の名とともに御手洗武蔵の名が全国に知れわたった。賞賛の声もありはしたが、売名行為と受け取られた面が多々あった。出かけた先々でのコソコソ話が、武蔵の勘にさわることも多かった。「俺の目を見て、言えねえのか!」と、怒鳴りつけたこともある。「余所者に冷たい所だな!」と、吐き捨てたこともある。しかし思いもかけぬ吉事となったこともある。「成り上がり者が!」と、なかば公然と軽蔑の眼差しを向けていた老舗の店主たちが、こぞって富士商会へと足をはこびはじめた。取り引き云々ではなく、富士商会の七人の女侍たちを観るためではあったが。といって手ぶらで帰るわけにもいかず、なにがしかの商品を手にして帰っていった。そしてその内の大半は以後も取り引きがつづいた。富士商会の七人の女侍たち、という風評は...水たまりの中の青空~第二部~新(三百四十二)

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり! (三)

    ((ムサシなり!三)大きく頷きながら、げんたが大男の目をじっとにらみつけた。離れていたいた子どもたちが近寄ってきて、口々に「そんなのできっこねえ」「すきがねえし、くわだってねえ」「おやにみつかったらとりあげられてしまう」と、大男に叫んだ。にやりと笑みを浮かべながら大男の言葉が続いた。「お前たちも手伝ってやれ。田畑を耕せ。山の中でもどこでもいい。お天道さまが見えるところなら、何とかなるもんだ。道具だと?手があるだろうが」俺の手を見ろとばかりに突き出された大男の節くれだった手に、げんたがそっと触った。「かてえ!すっげえかてえぞ。いしみたいだぞ」憎悪に近い光を帯びていた目が、みるみる憧れの色に変わった。「おめえら、みんなではたをたがやすぞ。どうぐはおらがつくる。で、それからどうするんだ。からだがでかくなったらつ...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(三)

  • 青春群像 ごめんね…… (問屋街の 一 )

    戦国の武将織田信長の居城だった岐阜城のある金華山をあおぎみる岐阜市は、戦後に繊維の街として発展をとげた。国鉄岐阜(現JR岐阜)駅前で、北満州からの引きあげ者たちが中心となって古着や軍服などの衣料を集めて売りはじめた。当時ハルピン街と呼ばれたこの一帯が、岐阜問屋街のはじまりとなった。日本全国の洋品店からの仕入れ客が引きも切らない、日本でも有数の一大繊維街だ。駅前に南北を走る大通りがあり、問屋街が東と西にわかれている。東側に位置する問屋街は、通称(東)問屋町と称されている。いまでこそ多くのビルが建ちならぶけれども、昭和五十年当時はいくつものまるでハチの巣状態に小さな店があった。二坪ほどに板塀で仕きられた場所で、家内工業的な縫製業者が商売を営んでいた。全体数でいうと、正確な数字は分からないものの数百軒もの店がひ...青春群像ごめんね……(問屋街の一)

  • [ブルーの住人] 蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~

    (九)グリーンのロングベストホールは、若者たちで一杯だった。対になって、踊りに興じている。しかしその誰もが、視線を合わせようとはしていない。互いの斜め先に視線を置いて、踊りに興じている。これも又、少年の思い描くものではなかった。少年の観たアメリカ映画では、じっと互いの目を見詰め合っている。時に微笑みを貰い、そして微笑みを返す。しかしこの場では、苦痛に歪んだ表情を見せ合っている。羨望、軽蔑、そして憎悪が睨みを利かせている。それも又、愛の起源ではあろう。バンドは、一段高いステージの上にいる。激しく体をくねらせながらプレイしている。そのステージの下段に、何のためのものか判然としない鏡が貼られている。その中で若者たちが、やはり体をくねらせている。その鏡から視線を外して壁に移る。そこには、種々のグループサウンズのポ...[ブルーの住人]蒼い情熱~ブルー・れいでい~

  • ポエム 黎明編 (川と少女)

    川は生きている単なる流れではなく、生命を持ったものの集合体だ幾百万、幾千万、幾千億、いやそれ以上……人間のもつ数では現しきれないほどの集合体で川は流れている川は生きているひとつひとつのうねりの中に人間の知らぬ異次元の喜怒哀楽を充満させて川は流れ続け生きている=背景と解説=川=愛と考えてもらえればありがたいです。この場合の愛とは、恋愛感情の愛ではなく、普遍的にとらえた愛ということですね。これまでとは創作時期がちがっています。言うなれば、黎明期前ということでしょうか。ポエム黎明編(川と少女)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ 新(三百四十一)

    「もちろんのことです。あたしの独断で動けるものじゃありません。第一、この話は山勘さんから出たことじゃありませんか。お忘れですか、あの夜のこと。あたしが愚痴ってしまったことを。ほら、あの百貨店の部長に、接待の場、そう、ここですよ。どんな悪態をつかれたか、女将だって知ってますから。で、ですね。副組合長には、田口商事さんと内海商店さんにお願しようかと考えているんです。もちろん、山勘さんのご承諾を得られたらのはなしですが。わたし、わたしですか?わたしは一兵卒で結構ですよ。とにかく、あの部長に一泡ふかせたいだけですから」「いいのかい、それで?」半信半疑の表情を見せつつも、武蔵を睨みつける眼光はするどかった。“若造には、荷が重かろうさ”。そんな思いが、ありありと顔にあらわれていた。しかしながらこの計画も、結局は頓挫し...水たまりの中の青空~第二部~新(三百四十一)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ 新(三百四十)

    しばらくして、百貨店に対抗するための組合作りに奔走しはじめた武蔵だったが、その反応はにぶいものだった。「その趣旨や良し」と賛同はするのだが、設立の段になると二の足をふみはじめた。富士商会の独壇場になるのではないか、との危惧が消えさらないでいた。富士商会が日の本商会との商い戦に勝利して以来、だれも物いえぬ状態になってしまっていた。「富士商会のやつ、調子にのりやがって」「みんな、殿さまの家来になっちまったよ」「百貨店にも腹がたつが、富士商会の意のままにってのも業腹なことだし」と、愚痴のこぼし合いがつづいた。同業者たちの組合の件でお会いしたい、と料亭に呼び出された。根回しだろうとは思ったものの、正面切って反発するわけにもいかない。なにせ取引先としての富士商会は重宝だ。第一に取りあつかう品揃えが格段に多い。また在...水たまりの中の青空~第二部~新(三百四十)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ 新(三百三十九)

    武蔵の訓事後、いっせいに営業が飛びだした。事務職たちも、すぐに電話攻勢にでた。営業それぞれが今日にはまわりきれない取引先に対して、おまけ作戦をにおわせた。「こちら、富士商会でございます。じつは、耳よりの情報がございまして。順次営業がおうかがいしまして、ご説明をさせていただいております。きょうにもご入用でない商品でございましたら、ご発注の方はお待ちいただけますでしょうか。ご不信はごもっともでございますが、お客さまにたいする感謝の気持ちをこめたことでございます」五平と竹田のふたりは別室に入り、仕入先にたいする値引き交渉の段取りにはいった。血をながす覚悟をしたとはいえ、傷はちいさいに越したことはない。即金支払いとの条件で、二ヶ月間のみの限定値引きを持ちかけることにした。資金繰りを危ぶむ五平に対し「銀行から引き出...水たまりの中の青空~第二部~新(三百三十九)

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり!(二)

    (ムサシなり!二)かすれ声が続けて出た。大男を見上げる目には強い光が宿っていて、ぷっくりと膨らんだ鼻や一文字に結ばれた口から意志の強さが感じられた。「はまべのれんちゅうにおいかけられるおはなをまもってやりたい」絞り出された声に大男がゆっくりと頷いた。街道筋の田畑の右手には、山々が連なっている。たなびく雲の下、視線を下げると瓦葺き屋根の庄屋の家が見え、少し離れた場所に藁葺き屋根の小さな家が点在している。「偉そうに大きな構えをしているのが庄屋の家か。どこも同じだな」かすれ声が続けて出た。大男を見上げる目には強い光が宿っていて、ぷっくりと膨らんだ鼻や一文字に結ばれた口から意志の強さが感じられた。「はまべのれんちゅうにおいかけられるおはなをまもってやりたい」絞り出された声に大男がゆっくりと頷いた。街道筋の田畑の右...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(二)

  • 青春群像 『断絶』ということ。 (8 いま

    いま、当時の自分の思いが薄れています。色々の事柄から人間不信におちいっていましたが、誤解が誤解を呼んでいたこともありました。「なぜわかってくれないんだ」と、甘えていたような気がします。「俺のせいじゃない」。「社会が悪い」と。逃げていては解決しない、と思います。思いますが、現実はそんな簡単に片づけられない事柄ばかりです。ただひとついえることは、やはり『愛』につきると思います。〔自己愛〕も大事ですが、もっと大きな『愛』を、昨今は、どこかに置き忘れているような気がします。♪さがしものはなんですか?みつけにくいものですか?♪いえ、きっと身近な所にあるような気がするのですが。青春群像『断絶』ということ。(8いま

  • [ブルーの住人] 蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~

    (八)黒服すこしの間、己の夢想とのあまりの落差に立ちすくんでしまった。戸惑いの中でも、容赦なく現実がおそいくる。「お客さん。ここでチケットをお求めください。一杯の飲料代も含まれています。追加の場合は、黒服にその旨お伝えください」「えぇっと、それじゃ…。コーラをひとつ……」「ご注文はお席に着かれてからお願いします」常連客をよそおおうとした少年。顔を真っ赤にして、チケットを手にして、キョロキョロと見まわす。少年の心が告げる。“カウンターだ、カウンターの隅っこに行け!”。しかし、少年の足は動かない。黒服が少年の前に現れた。「お客さん、こちらにどうぞ。お連れさまはいらっしゃいますか?」「い、いえ。こんやは一人です。この間は……」以前に友人に連れられて来たのだと言いかけて、ことばが詰まってしまった。初見の客だと見抜...[ブルーの住人]蒼い情熱~ブルー・れいでい~

  • ポエム 黎明編 =ふたりのために=

    ふたりの海にお舟を浮かべかがやく波間を見つめましょうやさしい月の光がふたりのために照らしてるあまい恋のささやきが風に乗って流れてくるふたりの海にお舟を浮かべとおい島を見つめましょう沖をはしる大きなあふねがふたりのために波を踊らすあまい恋のささやきが風に乗って流れてくるふたりの海におふねを浮かべ恋するこころを歌いましょうキラキラ星のかがやきがふたりのために増しているあまい恋のささやきが風に乗って流れてくる=背景と解説=自分で言うのもなんですが。わたし、ラブレターを書くのが得意でした。Windows95が、華々しく世の中に登場した翌年です。1996年ですね、春頃だったかな?みらくるワールド上記のホームページを開設しました。(現在も開いていますけれど)。そこで、ラブレター論を載せたことがあるんです。ラブレターは...ポエム黎明編=ふたりのために=

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ 新(三百三十八)

    翌日からの富士商会の攻撃はすばやかった。早朝に倉庫横にある食堂に全員をあつめて、湯気の立つそばを食べながらの訓示となった。「そうだな。取りあえずは、向こう二ヶ月間としろ。それで、様子見だ。相手のうごきを見て、あとは考える。いいか、どんなささいなことでもいいから、ちくいち報告しろ。疑問符のつく情報でもかまわん。その真偽は、俺がしらべるから。営業たちは、とにかく情報を集めろ。しばらくは、新規開拓はなしだ。どんなに大口でもだめだ。うわさを聞きつけて声をかけてくるはずだ。そのときは『現取引先さまだけの特典ですので』と、丁重にことわれ」一人ひとりの目をとらえて、ゆっくりとぐるりと見回す。訓示のさいに、武蔵がかならずおこなう所作だ。見ているわけではない、しかし武蔵が個々人に話しかけている、そう思わせるための所作だった...水たまりの中の青空~第二部~新(三百三十八)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ 新(三百三十七)

    「店に着いてからが、面白かった。もう、腰を抜かさんばかりだったじゃないか」「ところがさ、その日は持ち合わせがなくってさ」「そうそう。明日の朝一番に来るから、これとこれとあれを残しておけって、うるさくてさ」「他の客が手を出したら、怒ること怒ること」「明日も入ってくるから心配ないって、何度言っても納得しなくてさ。社長が『商売の邪魔だ!金のない奴なんか客じゃねえ!』って切った啖呵に『よおし!それじゃ、明日八時に来るからな。その時物がなかったら、承知しねえぞ!』って」「そうしたら、社長が切り返して。『へっ。もし無かったら、この俺の命でもなんでもやるよ!』」「おおさ。こっちはもう、ハラハラだよ」互いの肩をつつきあいながら、三人の思い出話はつきない。「翌日が大変だったじゃないか。まだ店を開けてないのに、大声を出してさ...水たまりの中の青空~第二部~新(三百三十七)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ 新(三百三十六)

    その夜、五平と竹田・服部・山田の面々が、そろって社長室に集まった。直立不動の姿勢をとる三人組に、「そんなに固くなるな。ほら、すわれ」と、苦笑いの武蔵だ。「実はな、日の本商会ってのは、まえに夜逃げした店の娘が起ちあげた店だった。ほら、四人姉妹と末っ子の男を抱えた親父が、泣きついてきたじゃないか。覚えてないか?」みなが首をかしげる中、竹田がすっとんきょうな声を上げた。「あっ!あの、頭の禿げあがった、小太りの……。たしか、瀬田商店とか……」「瀬田商店かあ……。そういえば、子供をひき連れて。そうそう、土下座したんですよね」と、山田が思い出す。そしてみなが、「うん、うん」と頷きあう。「それだよ、それだ。その時の、娘さ。長女が、社長だ」「でも、社長。まだ二年ぐらい前じゃないですか?よくそれで、、、」「資金か?そんなも...水たまりの中の青空~第二部~新(三百三十六)

  • [宮本武蔵異聞] 我が名は、ムサシなり!(一)

    (ムサシなり!一)中山道にて。「我が名は、ムサシなり!」「わがなはむさしなり」「日本一の、武芸者なり!」「ひのもといちのぶげいしゃなり」野太い声に続いて甲高い声が響き渡る。何ごとかと足を止める旅人の前に、身の丈六尺はあろうかという大男があらわれた。赤茶色の髪の毛を乱雑に細めの荒縄でしばり、太い眉の端は上向いている。大きな目の瞳は青く輝き、鷲鼻と相まって、ひと目で南蛮人とわかる顔立ちをしている。いかり肩を揺らしながら歩く様は、あきらかに街道を行きかう者やら田畑で農作業にいそしむ農民たちをいかくしていた。その後ろに連れ立つ子どもたちもまた、同じように肩をいからせて歩いている。子どもたちに離れるようにと大仰な手振りを示す大人たちに対して、子どもたちは素知らぬ顔で腕を天に突き上げたりぐるぐると回したりとはしゃぎ続...[宮本武蔵異聞]我が名は、ムサシなり!(一)

  • 青春群像 『断絶』ということ。 (7 〔無音〕

    〔無音〕という状態の恐ろしさに気づかなかった。しかしいま、〔音〕という論文で、音のすばらしさを再認識させられている。なにげなく日常生活における〔音〕を、ごく自然のこととして受け入れている。いま、自然のおとに興味をよせ、海・川・山での音をみみをすませて聞いている。青春群像『断絶』ということ。(7〔無音〕

  • [ブルーの住人] 蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~

    (七)シャウト、シャウト!“バババ、ドンドドドドン!”“チキチョン、チキチキチキチョン、チョン!”“ブンバンバンブンブンブンバン!”“ティーヴイィィ、ディーー、チューン、ティティーー!”“あの娘が、あのこが、云ったのさー!”とびら扉を開けたとたんに、少年の耳に飛び込んできた。少年には、騒音としか聞こえない。ロック音楽と称されて、同年代の少年たちが狂喜している。しかし少年には、どうしても異質な音楽だった。シャウト、シャウト!と歌うが、大声で叫ぶことになんの意味があるというのか。バズトーンと称される重低音が、お腹にズンズンと響く、そしてひびく。ピックで弾くはずのギターで、“チューン、ティティーー!”という音を出すのが理解できない。「大人のジョーシキは俺たちのヒジョーシキ!俺たちのノーマルは大人のアブノーマル!...[ブルーの住人]蒼い情熱~ブルー・れいでい~

  • ポエム 黎明編 =好き、好き、好き=

    好き、好き、好き、、、、、なんどでも言うよ好き、好き、好き、、、、、星あかり月あかりそれを失ったとしてもすき、すき、すき、、、、、君のこころから恋の炎がきえたとしても好き、好き、好き、、、、、=背景と解説=まったくもって、いま読み返してみると、汗顔のいたりですわ。当時の思いをおもい巡らしてみると、なにをアホなことを考えているのやら。当時、ナルシストだと指摘されたことに腹を立てていましたがこれを読むとねえ。まさに、その通りですわ。ポエム黎明編=好き、好き、好き=

  • ごめんなさい! (ぺこり)

    すみませえん!やっちゃいましたあ、またまた。[水たまりの中の青空]抜かしちゃいました、大事な大事な節を。この部分がないと、ある事件の背景があるいみ見えないんですよね。これからしばらく、時間を巻き戻させてもらいます。4月11日に、[3月22日(336)~4月6日(343)]の前に、(新・336)としてタイムスリップします。ややこしくなってすみません。ごめんなさい!(ぺこり)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百四十三)

    「まあね。武蔵も、浮気ぐせがなくなれば、ほんとに良い夫なんだけど。でも、武蔵が浮気をやめたら、武蔵じゃなくなる気もするしね。面白いのよ、武蔵は。浮気したのかどうか、すぐに分かっちゃうの。笑っちゃうわ、ほんとに。自分からね、あたしは何も言わないのに、白状してるようなものなの。武蔵には内緒よ。くくく、武蔵ったら、かならず言うの。『こんどの休みに、買い物に行かないか?欲しいものはないか?取り引きがな、うまく行ったんだ』なーんて。ううーん、間違いないわ。だからね、こう考えることにしたの。武蔵の浮気は自分へのごほうびなんだ、って。ひとつ取り引きに成功したら、誰も褒めてくれないから、自分にごほうびを上げてるんだって。でも自分だけだと気がとがめるから、あたしにもごほうびをくれるんだって。おかしいでしょ?ほんとに」小夜子...水たまりの中の青空~第二部~(三百四十三)

  • お墓のことを考えてみました。

    (毎日が日曜日)2022-04-18お墓のことを考えてみました。3月31日で退職をして、実質4月3日から無職状態です。まさに「毎日が日曜日」ですわ。2022年4月18日に、こんなことをお話しています。-------(毎日が日曜日)2022-04-18若い頃は寿命なんて考えたこともなかったんです。いつまでも未来があると考えていた気がします。(中略)昨日までは寿命というものに恐怖感はなかったんです。それが今日、日曜日の今朝目覚めたとき、「仕事を辞めて、毎日が日曜日になったら……」と、そんな思いが頭をかすめたとき、急に怖くなっちゃって。(中略)襲いかかる現実に、実のところはおののいている自分を知りました。(後略)-------良かったら、1年前にタイムスリップしちゃってくださいな。でね、タイトルのように、お墓に...お墓のことを考えてみました。

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百四十二)

    「お客って、どうせ女でしょ?あたしを呼ばずに接待するということは。で、どういう素性の女なの?」「温泉組合の理事さんです。とっくりやらさかずきやら陶器のとりひきがありまして、その仲立ちのお礼をかねての、」「ふん。その理事が怪しいのよね。旅館でしょ、女将だわね。で、どこの温泉なの?」「東北だと聞いておりますが」「東北ですって?そんな所にまで女を作ったの?あきれた」「いえ、ほんとうに取り引きがありまして。現にこのあいだも、」「いいのねいいのよ。武蔵が遊びだけで行くわけないもの。出張のついでの遊びなのか、遊ばんがための出張なのか、一体どっちでしょうねえ」竹田のことばをさえぎっては、小夜子がたたみかけてくる。小夜子の勘――女の勘はするどい。もう竹田のごまかしはまったく効かない。「小夜子奥さま、それはちょっと。社長は...水たまりの中の青空~第二部~(三百四十二)

  • 水たまりの中の青空 ~第二部~ (三百四十一)

    「太平洋戦争はね、体力勝負で負けよ」「いえ、そんなことは。天子さまのおこころづかいで負けることにされましたが、さいごには大和魂で勝ったはずです。敗戦は、これいじょう民にぎせいをしいたくないからとの、天子さまのおぼしめしですから」「竹田は、沖縄戦を知らないの?勝負ありだったのに、大和魂なんて持ち出しちゃってさ。特攻機とか回天なんて、とんでもない兵器を開発して。だからアメリカも、とんでもないものを使ってくるのよ。原子爆弾やら水素爆弾やら。ていよく実験場にされちゃったのよ。男のくせにうじうじしちゃって。終戦の決断も、天子さまのご英断でしょ。それにね、アメリカ本土は無傷だったんでしょ?どうせ特攻なんて無謀なことをするのなら、アメリカ本土をやっつけなきゃ。そうすれば、こっちの言い分が通ったはずよ。ほんと、日本の男た...水たまりの中の青空~第二部~(三百四十一)

  • 歴史異聞 鼠小僧次郎吉 ~猿と猿回し~ (終わり)懲罰

    その吟味の最中に、何を思ったのか「俺が、ねずみ小僧だ!」と、自白してしまった。大盗人だと聞かされた松平宮内家では、地団駄をふんでくやしがったというが、あとの祭りであった。そのまま牢屋敷お預けとなり、翌六月十六日に入牢となった。当時の調書に、こう記されている。十年以前未年(ひつじどし=文政六年)以来、所々、武家屋敷二十八ヶ所、度数三十三度、塀を乗り越え、又は、通用門口より紛れ入り、長局等へ忍び入り、錠前をこじあけ、或いは土蔵の戸を鋸にて挽き切り、……(中略)……、引き回しの上獄門。更に再吟味の結果、その度数は重なり、次のように記されている。=罪状=武家屋敷百三十三ヶ所列記盗みの総金額三千四百十三両ほど。そして、天保三年(1832年)八月十九日に、江戸中引き回しの上、鈴ヶ森で磔に処せられた。世間では、何と二万...歴史異聞鼠小僧次郎吉~猿と猿回し~(終わり)懲罰

  • 芥川龍之介作[ 妙な話 ]読後観

    4/2(日)早朝04:00頃、空腹感で目が覚めました。4/1(土)の午後のオイル交換時に芥川龍之介作[妙な話]を読んだのですが、その読後観をお話しすることに。-----日本の推理小説研究家である山前譲編[文豪たちの妙な話]に収められています。他には、夏目漱石・森鴎外の両巨頭と、太宰治・谷崎潤一郎、そして正宗白鳥・横光利一、解説などでよく名前を見る佐藤春夫・久米正雄、最後になりますが、失礼ながら存じ上げない梶井基次郎の十人の作品がありますよ。興味のある方は――河出書房新社出版の文庫本です――是非にも。-----[わたし]の旧友の妹の話です。その妹の旦那が軍人で、結婚後半年で欧州戦役中の地中海方面に派遣された「A――」の乗組将校という設定です。週に一通届いていた手紙がパッタリと届かなくなり、次第に追い詰められ...芥川龍之介作[妙な話]読後観

  • 青春群像 『断絶』ということ。 (6 脱却

    断絶感からの脱却の方法は、ただひとつ。人間とのつながりを作ることだ。しかし、いちど断絶感にとらわれた者が、ふたたび絆をとりもどすのは容易なことではない。画家のゴーリキーは、アルメリヤ民族としての宿命と、神に呪われての出生という個人的宿命とにさいまれていたという。そのけっか断絶感にとら囚われ、その森をさまよった。しかしその途中オアシスで休息をとり、自然のなかに安住したという。妻のあたたかい愛情をえられて。が、残念なことに自殺という悲しい結末になってしまった……青春群像『断絶』ということ。(6脱却

  • [ブルーの住人] 蒼い情熱 ~ブルー・れいでい~

    (六)ジャズあるいはズージャそしてそのジャズが、少年の手足を動かしはじめる。演奏に合わせて、ちいさな動きからしだいに大きく体が波打ちはじめる。その様はまさしく、猿回しの太鼓に踊らされる猿のようにぎこちない。それでも、目を閉じて聞き入る少年は、大人の少年がそこにいると思っている。正直、少年はジャズを知らない。聞く機会もなかった。年上の、大人たちの会話の中で飛び交うズージャということば。カタカナ文字の名前。少年を取り囲むのは、大人の歌う歌謡曲だ。しかしジャズが黒人の心の歌であるかぎり、おなじく虐げられた者にひびくなにかがある筈と、少年の期待は大きかった。隣の女が少年に声をかける。少年は、さもジャズへの陶酔の妨げだと言わぬばかりに不機嫌にこたえる。媚びるような目線で、少年に話しかける女。少年がタバコを口にすると...[ブルーの住人]蒼い情熱~ブルー・れいでい~

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、敏ちゃんさんをフォローしませんか?

ハンドル名
敏ちゃんさん
ブログタイトル
敏洋 ’s 昭和の恋物語り
フォロー
敏洋  ’s 昭和の恋物語り

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用