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  • 洞口英夫『一滴の水滴が小鳥になる』

    一滴の水滴が小鳥になる洞口英夫思潮社洞口英夫『一滴の水滴が小鳥になる』(思潮社、202407月20日発行)洞口英夫『一滴の水が小鳥になる』はタイトルが魅力的だ。そのタイトルになっている作品。一滴の水滴が小鳥になる私の死んだあとにまるいとうめいな球が出現してその中に小さな私がはいっていてどこへともなくとんでいった一滴の水滴が小鳥になる一滴の水がどうして小鳥になるのか。なんの「説明」もないのが、とてもおもしろい。夢を見た、その夢をそのままことばにした感じ。論理で、見たものを補足しようとしていない。何も補うことができないのだ。補えば、そこから嘘がはじまる。そのままにしている。何もしない。これは、簡単なようで、なかなかむずかしい。この「そのままにしている」というのは、「コスモス」では、こう書かれている。コスモスが...洞口英夫『一滴の水滴が小鳥になる』

  • ネタばれ

    「ネタばれ」ということばは、私は、どうにも好きになれない。何か「下品」な響きがある。その「ネタばれ」について、どう思うか、とある映画ファンから聞かれた。私は、最近は映画を見ていないので、映画について語るのはむずかしいのだが。私は、いわゆる「ネタばれ」というものを気にしたことがない。映画の結末を言わないでくれ、というのだが、結末がわかっていると何か不都合なことがあるのだろうか。映画にかぎらないが、多くの芸術・芸能は、未知の「結末」を知るために見たり、聞いたりするものではないだろう。多くの場合は「結末」を知っていて、その上で見たり、聞いたりする。これはギリシャ悲劇にはじまり、シェークスピア、近松も同じ。歌舞伎も同じだろう。「忠臣蔵」のストーリーを知らずに「忠臣蔵」を題材にした歌舞伎を見に行った江戸時代の人間な...ネタばれ

  • Estoy Loco por España(番外篇451)Obra, Luciano González Diaz

    Obra,LucianoGonzálezDiaz¿Elarpanaciódelcuerpodeunamujer?¿Elcuerpodelamujernaciódelarpe?Nohaynecesidaddedecidireso.Lamujeryelarpasejuntanparatocarmúsica.Lamujeryelarpasevuelvenunoenlamúsica.Otalvezlamúsicasedividióentreelcuerpodelamujeryelarpa.YestesentidodeunidadestámuyinfluenciadoporlosmovimientosdelosdedosdeLucianoquepermanecenenlaobra.Lamúsicaresonabae...EstoyLocoporEspaña(番外篇451)Obra,LucianoGonzálezDiaz

  • 野沢啓「大岡信の批評精神」

    野沢啓「大岡信の批評精神」(「イリプスⅢ」8、2024年07月25日発行)野沢啓「大岡信の批評精神」の最後の部分に、こんなことを書いている。(31ページ)《すべての書を読んだ》マラルメのひそみにならって言えば、詩のことばはあらゆることばとの深い相互関係のなかで生きている。批評とはそうしたことばの深淵のなかにおもむき、そこから無限の富を引き出してくる試みであって、そこには限りというものがない。詩人がことばのなりたちやその歴史を深く知ること、ことばにたいする豊富な経験をもつことがその直観力、着眼力などをどれだけ高めるものであるかを知らなければみずからの詩の営為に対する批判力をもつことはできない。その通りだと思う。そして、同時に、ここに書いていることは、野沢が「言語暗喩論」で展開してきたこととはまったく逆のこと...野沢啓「大岡信の批評精神」

  • こころは存在するか(39)

    和辻哲郎「鎖国」の終の方に、こういう文章がある。一五八二年二月、ワリニャーニが少年使節たちをつれて長崎を出発したあとの日本では、九州でも近畿地方でも新しい機運が五月の若葉のように萌え上がっていた。後半の「五月の若葉のように萌え上がっていた」は比喩であり、哲学書や学術論文には不向き(?)な表現かもしれない。しかし、私はふいにあらわれるこういう表現が好きである。そこには「感情の事実」が書かれている。和辻が、少年使節がヨーロッパへ出発したあとの日本の雰囲気に「興奮」していること、その時代をとても希望に満ちたものとみていることがつたわってくる。「新しい機運が盛り上がっていた」も感情をつたえるかもしれないが、まだ「弱い」。「五月の若葉のように萌え上がっていた」には、それこそ、和辻の感情が「五月の若葉のように萌え上が...こころは存在するか(39)

  • 青柳俊哉「あやめる」ほか

    青柳俊哉「あやめる」ほか(朝日カルチャーセンター福岡、2024年07月15日)受講生の作品。あやめる青柳俊哉花の分身として、花に結ばれ、花に帰依する蝶の本性。花にしいられ、宇宙的な変身を遂げる蝶の神性を畏れる。聖餐のように花の衛星がまう。小さな双対の花弁の、複雑な飛翔の軌跡を追う。鋭角に舞い上がり、水面低く乱舞し、秘密のように花に休む。匂やかな葉先にとまって何かを思念している蝶……。羽を立て微かにそよがせ、空気のわずかな乱れにも鋭敏に反応する。その時意識を消して、花が発する霊力の衝撃に紛れて、羽をそっと指先で閉じる。あざやかに羽を摘みとり、花の中へ沈める。指先は白や黄色の鱗粉にまみれた。一続きのいのちを、蝶の羽に映じるわたしを花へ帰す。蝶もわたしも花の模倣であり、花へ殉(したが)う草である。「あやめる」は...青柳俊哉「あやめる」ほか

  • 読売新聞・特ダネ記事の読み方

    2024年07月18日の読売新聞(西部版・14版)に、「特ダネ」が載っている。見出しに、台湾上陸1週間以内/中国軍、海上封鎖から/日本政府分析/日米の迅速対応焦点記事は、こう書いてある。日本政府が中国軍の昨年の演習を分析した結果、最短で1週間以内に、地上部隊を台湾に上陸させる能力を有していることがわかった。政府は従来、1か月程度を要すると見積もっていた。中国軍が米軍などが反応するまでの間隙(かんげき)を突く超短期戦も想定しているとみて、警戒を強めている。政府が分析したのは、中国軍が昨年夏頃、約1か月かけて中国の国内や近海など各地で行ったミサイル発射や艦艇などによる訓練だ。政府高官によると、一連の演習を分析した結果、各部隊が同時並行で作戦を実施した場合、台湾周辺の海上・上空封鎖から大量の地上部隊の上陸までを...読売新聞・特ダネ記事の読み方

  • 梁平『時間ノート』

    時間ノート梁平思潮社(竹内新訳)(思潮社、2024年04月25日発行)梁平『時間ノート』の「夜に夢を見る」のなかに、次の行がある。夏、秋、冬のなかにだって春はないこの行に出合った瞬間、私は、何かを書きたくなった。梁平の詩を貫く何かが、この一行に隠れていると直観した。「ない」ということばが、強く私を揺さぶる。「春はない」。しかし、「ない」と書かざるを得ない何かが「ある」。それは、まだ名づけられていない「存在」であり、「事実」かもしれないし、あるいは「ある」という強い動詞の動きかもしれない。いや、こんなふうにひとくくりにする「概念」ではない、何かが「ある」。「ない」と「ある」は切り離せない。「ない」は「ある」そのものでもある。それは、「誰にも古屋が」という詩のなかでは、こう書かれる。逃れる場所はそこ以外にない...梁平『時間ノート』

  • こころは存在するか(38)

    和辻哲郎「鎖国」は、私にとって忘れることができない本である。この本によって、私は初めて「歴史」に興味を持った。歴史というものに対して、驚く、ということを知った。スペインから出発したマゼランは、マゼラン海峡(南アメリカ)を越え、太平洋を渡り、喜望峰(アフリカ)を越え、スペインへ帰っていこうとしている。このとき、マゼランは、すでに死んでいる。マゼランは、実は世界一周をしていない。乗組員は食料不足で苦しんでいる。そう書いた後、こんな文章が出てくる。窮迫のあまり、ポルトガル官憲に押えられる危険を冒してサン・チャゴ島に上陸したが、この際最も驚いたことは、船内の日付が一日遅れていることであった。ビガフェッタはこのことを特筆している。自分は日記を毎日つけて来たのであるから日が狂うはずはがない。しかも自分たちが水曜日だと...こころは存在するか(38)

  • 特ダネ記事の「危険性」(読売新聞を読む)

    2024年07月11日の読売新聞(西部版、14版)に、「特ダネ」が載っている。リーク先は「複数の政府関係者」。誰かがリークし、それが本当かどうか確かめるために、別の政府関係者にも確かめたようだ。政府は、重大なサイバー攻撃を未然に防ぐ「能動的サイバー防御」で、自衛隊の新任務を創設する方向で調整に入った。武力攻撃事態に至らない平時に、発電所などの重要インフラや政府機関を守るため、攻撃元サーバーへの侵入・無害化措置を行う権限を与えることを検討している。複数の政府関係者が明らかにした。これを、見出しでは、こう書いている。自衛隊平時も無害化権限/能動サイバー防御/新任務検討/対インフラ攻撃こういう「特ダネ」は何のために書かれるか。以前にも指摘したが、そこにつかわれていることばに対する「読者(市民)」の反応を見るため...特ダネ記事の「危険性」(読売新聞を読む)

  • Estoy Loco por España(番外篇450)Obra, Sergio Estevez

    Obra,SergioEstevezEnlasobrasdeSergioseescondeuntiempomisterioso.Nohay“novedad”enningunadelasobras.Cadaobramedaunasensaciónde“tiempoacumulado”.Enotraspalabras,sientoel“largotiempo”queestáensusmanosquecreanestaobra,yel“tiempoquelasmanoshanvividoparacrearestaobra”.Poresosientonostalgia.¿QuétocólamanodeSergio?Probablementehayastocadopapel,tela,hierroymetal.Oq...EstoyLocoporEspaña(番外篇450)Obra,SergioEstevez

  • 杉惠美子「ふらここのゆめ」ほか

    杉惠美子「ふらここのゆめ」ほか(朝日カルチャーセンター福岡、2024年07月01日)受講生の作品。ふらここのゆめ杉惠美子去年の10月久し振りで兄と会った口数少ない兄がコロナ以来の久々の高校のOB会で帰福するから会いたいと言ってきた再会を喜びチョコレートケーキセットをふたりで食べた帰り際今度はいつ会えるかね・・・と兄は私の肩を3回ポンポンポンとたたいた何故か嬉しかった今年梅の花がしんしんと咲くころ兄が倒れたとの連絡があった今からリハビリの病院に転院します・・と兄は言葉を失っていたそんなある日本棚を片付けていたら大江健三郎の本が出てきて開けてみると兄の字があった1969年11月首相訪米阻止闘争の帰路霙ふる車窓に映る死人の目徹と書かれてあった多分兄から譲り受けた本だと思う学生運動をしていた兄は殆ど家にはいなかっ...杉惠美子「ふらここのゆめ」ほか

  • 特ダネ記事の「いやらしさ」(読売新聞を読む)

    能登地震から7月1日で半年。その前日、2024年06月30日の読売新聞に「輪島4地区集団移転検討」という記事が載っていた。「特ダネ」である。なぜ「特ダネ」とわかるか。記事の前文。能登半島地震の被災地・石川県輪島市で、少なくとも4地区(計257世帯)が集団移転を検討していることがわかった。今回の被災地で計画が明らかになるのは初めて。いずれも高齢化と過疎が進む主に山あいの地区で、道路寸断などで一時孤立した。住民らは災害時に孤立するリスクの低い場所への移転を希望しており、市は実現に向け支援する方針だ。「わかった」と書いてあるが、どうして「わかった」か書いていない。書けないのである。読売新聞(記者)の「調べ」でわかったのではない。能登市の「だれか(行政関係者)」からリークされてわかったのである。(読売新聞の記者に...特ダネ記事の「いやらしさ」(読売新聞を読む)

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