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BL小説『いつか君に咲く色へ』連載中です。人の感情を色で把握できるDKとその色をもたない同級生のおはなし。ゆっくり恋になっていきます。

『ありえない設定』⇒『影遺失者』と『保護監視官』、『廃園設計士』や『対町対話士』(coming soon!)など。…ですが、現在は日常ものを書いております。ご足労いただけるとうれしいです。

風埜なぎさ
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2014/08/13

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  • キシャツー! #35

    3月の結果発表の日は僕までもありとあらゆることが手につかず、英語の単語小テストで歴代最低点を叩き出したり(先輩たすけて)、学食でカレーうどんとカレーライスをまちがえて注文してしまったり、やることなすことそんな感じだった。世界が自分からすこしずれて、ふわふわと足の裏が地面についていない感覚がある。午後3時きっかりに机の下でこっそり見張っていたスマホに先輩から『合格』とかえってそっけないほどの報告が入...

  • キシャツー! #34

    先輩が借りてきてくれたDVDをマンションのリビングで並んで観る。寄り添うように座っているので、ニットを着た右腕が先輩の左腕にくっついていて、いまさらだけれどそれだけのことに胸が騒いだ。画面を流れゆく洋画コメディーに春の終わり、先輩のクラスが演じた劇を思い出した。「学園祭の時の先輩のクラスの演劇、おもしろかったです」「俺は、脚本だったけどな」「……脚本」「なんでそんな顔なんだよ」だってすごい。2年後に演劇...

  • キシャツー! #33

    ほんとうは家族で過ごすはずだった翌日の午後4時、姉さんに「ちょちょ、ちょーっと急に用事が」と平謝りに謝って家を飛び出した。駆け出す背中に「彩里!あんたはまたそうやって彼女がいるのを自慢して!」とちょっととげとげした声がぶつかってくる。いいえ、彼氏です。会える、会える、先輩に会える。わくわくが胸のなかでポップコーンみたいにはじける。マフラーの下でこみ上げる笑みを隠せない。実秋先輩に抱きしめてもらえる...

  • キシャツー! #32

    《冬》本格的な受験シーズンの到来とともに、実秋先輩はほとんどキシャツーすることがなくなった。朝、電車に乗っても先輩はいない。校舎のどこをさがしてもいない。わかっていたことだけれど、訪れてしまうと膝から崩れ落ちそうなほど寂しかった。それでも毎日LINEでメッセージのやり取り(邪魔になってはいけないので『おはよう』と『おやすみ』だけで我慢している)をしている。12月も半ば、姉さんと一緒に父さんと母さんへの...

  • お話、ときどき日常【21】:溺れるカナヅチ。

    またすこし、息が苦しい。ときどき、気が遠くなりそうになります。だれもわたしを愛さない。わたしはだれの必要にもなれない。それよりなにより、わたしがわたしをこの世界に必要な存在だと思えない。なんでもいい、どんなことでもいいから、自分を肯定できるなにかがあれば、こんな気持ちにはならないのでしょうか。考えてはいけないことを、また、考えてしまっています。溺れるってわかっていながら水に飛び込むカナヅチみたいに...

  • キシャツー! #31

    山道をごとごとと進んで公園に到着しバスを降りると、さすがの広さもあって車内ほどには混み合っていない。あたりをきょろきょろ見まわしていた先輩がちょいちょいと僕の肩をつつく。「彩里、あっち行こうぜ、滝があるって書いてある」先輩の指さすほうにはなるほど、滝がある旨を示した木の看板がある。20分ほど案内板にしたがって歩いていくと(先輩は涼しい顔で歩くけれど、なかなかどうして山道だった)だんだん樹で覆われた...

  • キシャツー! #30

    「どっかって、どこに?」『どこでもいいよ。彩里の好きなところ、どこでも行こう』「それじゃ、先輩の誕生日の意味がない」『それでもいいよ。彩里、どこに行きたい?』デートプランなど練ったことのない頭で必死に考える。なかなかどうして、これは難儀だ。先輩が僕を海に誘ったときはどんな気持ちだったんだろう。こんなふうにどきどきしただろうか。しばらくお待ちください、というと先輩が爆笑した。ふっと近場の山の中腹にあ...

  • キシャツー! #29

    秋の気配が濃厚な坂道を一気に下り、ベスと母さんの待つ動物病院に到着した。また連絡するよ、と言い置いて、先輩がもと来た道を漕いで登っていくのをちょっとだけ見送って、院内に飛び込んだ。「彩里!」待合にいた母さんがぱっと立ち上がり、僕の顔を見て「髪の毛そんなにぐしゃぐしゃにして。走ってきたの?」と尋ねた。申し訳が立たないことに、これは先輩が行為のあいだにしたことだ。うん、まあね、とあいまいに返事をして「...

  • キシャツー! #28

    秋の中間考査が終わり、そのあとに続く合唱コンクール、遠足とつぎつぎに学校行事をこなしている間にも、実秋先輩と過ごせる高校生活の終わりは近づいてくる。聞きたくない足音ばかりが耳につくのはなぜだろう。したくもないカウントダウンをしてしまうのはどうしてなんだろう。知り合って、打ち解けた初めからわかっていた。実秋先輩とは少なくとも二年、離れ離れになること。でも、恋人どうしになれるなんて思っていなかったから...

  • キシャツー! #27

    「でも、だけど、実秋先輩がいなくなるのは、耐えきれないくらいさみしい」先輩は一度だけゆっくり目を閉じた。そしてその目をすぐに開けると、置いていくみたいだな、と困ったようにつぶやいた。僕は先輩との思い出の詰まった電車に揺られて、先輩のことを思い出しながら二年通学して、そして。突然、訊くのをすっかりわすれていた重大なことを思い出した。「そういえば、どこの大学受けるの?」実秋先輩が盛大に噴き出した。「い...

  • キシャツー! #26

    《秋》朝の電車のなかで、そっと重なっている先輩と僕の指をだれも咎めない。古典の単語帳に目を落としていた先輩が、不意に話しかけてくる。「彩里とこうやって通学できるのもあとちょっとだな」ひゅるりと一足早い北風が心を通り抜ける。冬になれば大学入試のための特編授業で実秋先輩の通学は不定期になる。うん、と答えて重なった指をそっと絡めた。寂しさはそばにいることでしか埋め方を知らなかった。あのあと。夏、旅館での...

  • キシャツー! #25

    びっくりするような快感といっしょに、指一本できつかったなかがほどけていくのが自分でわかった。キスされたり乳首を食まれたりしながら、指を増やされ、ローションを足され、時間をかけてさんざん弄った僕の後孔のなかで先輩が指をまだ遊ばせている。めちゃくちゃに、気持ちがよかった。声を我慢できない。聞こえるはしたない水音も鼓膜を震わせれば性感に転化するのはなぜだろう。「彩里、はじめてなのに、こんなにはやく馴染ん...

  • キシャツー! #24

    必死でふうふう息を整えていると、実秋先輩がいとおしげに僕の汗だくの前髪に触れた。たったそれだけで、たった髪の毛に触れられただけで照れていた春の終わりからは考えられないいまがある。髪をなでながら先輩が言う。「脚、もっとひらいて。彩里」その姿勢を想像すると恥ずかしくて蒸発できそうだったけれど、先輩の声がどこか祈るように聞こえたので、素直に従った。それでも先輩が立てた膝のあいだに割り込んでくると、いたた...

  • キシャツー! #23

    押し倒されたふとんの上で実秋先輩を見あげる。僕にのしかかっている先輩は見たことのない顔で、僕のシャツのボタンを上からゆっくり外していく。胸をすっかりはだけてしまうと、またキスされた。そうしながら首筋や耳たぶを指で撫ぜられるととても気持ちよかった。先輩の唇がすこしずつ下のほうに移動し、僕の胸にたどり着く。乳首にキスを落とされると、たしかな快感が走った。実秋先輩は少しほっとしたように笑うと、そこに歯を...

  • キシャツー! #22

    「彩里、行こう」ふっと唇を離して実秋先輩が言う。片割れをなくしたように、濡れた唇がすうすうしてさみしい。行くってどこに?と間抜けに問うと「部屋に戻るんだよ」と先輩は旅館のほうを指さした。「ここだと、いつ人がくるかしれない」「……え?」「彩里、なぁ、うんといやらしいことしよう、な。気持ちいいことしよう」僕が思いきりうなずくと、先輩はよくできましたというふうに僕の頭を撫ぜた。花火の後片付けを終え、薬局で...

  • キシャツー! #21

    「僕も、先輩のしてくれたことぜんぶ、うれしかったです。先輩が好きです。もっと一緒にいたいと思ってます」金魚すくいの簡易屋台にきてくれたこと、髪の毛に触らせてくれたこと、廊下で光のような声で呼び止めてくれたこと、かわいいだろ、と言ってくれたこと。そしてなにより、毎日キシャツーで僕に笑いかけてくれたこと。記憶はあふれるばかりで、そのひとつひとつを伝えると泣いてしまいそうだった。突然に思った。あと、半年...

  • キシャツー! #20

    言われた言葉の内容より、その口調にまずびっくりして、言葉を失った。内容に、さらに返す言葉が迷子になってしまう。「彩里、ごめんな。ほんとうはこれ、出かける前に言っておかなきゃいけなかったな」「どうして?」「察しろよ。俺は」先輩の声が宙でほどける。ややためらうような間のあとで、深く長いため息をつくように先輩が言う。「俺の好きなやつは彩里なんだよ。お前が好きだ」ストレートな告白に呆然ととする。嫌悪じゃな...

  • キシャツー! #19

    宴会場での夕飯は確かに豪勢だった。お造りも天ぷらも、固体燃料で煮立った小鍋も海鮮尽くしで、先輩と僕は「うまいな、これ」「そうですね」と次々平らげていった。「彩里、なんでイクラよけてんの?苦手?」「ううん、むしろ逆です。好きすぎて最後にとっておきたい」実秋先輩が嚙み殺した声で、子どもみてえ、と笑った。すっかりお腹いっぱいになって、部屋へ戻ろうとすると、実秋先輩が言う。「彩里、花火したくね?」「花火?...

  • キシャツー! #18

    部屋のドアを開けると、冷房の心地よい風が全身を包む。思わず、ため息が漏れた。「涼しい!天国のそよかぜみたいですね」「さっきまで天国のプールで泳いでるみたいな顔してたくせに」僕は座卓の座布団に膝を抱えて座り、先輩は窓際の椅子に陣取った。先輩の向こうに夕暮れの海が見える。「先輩、お腹すきましたね。お菓子持ってくればよかったです」「そりゃお前、あんだけ泳げば腹も減る」実秋先輩はあきれたように言う。さっき...

  • キシャツー! #17

    実秋先輩がひらひらと手を振って海を示す。「ほら、はやく泳いでこいや。ここで見てっから」「先輩は泳がないんですか?」「俺、日に焼けるとひりひりしてつらいの」「えっ、じゃあなんで海に?」「しいて言えば」と実秋先輩は僕を見て、ゆっくり瞬きした。「彩里と過ごした、夏の思い出がほしかったから」めずらしく照れたようにうつむいて追い払うしぐさをするので、僕も恥ずかしくなって「いってきまーす」と海に駆け出した。実...

  • キシャツー! #16

    「チェックイン済ませてくるから、彩里はここで待ってろな」「ありがとうございます」フロントに向かう実秋先輩の後ろ姿を見送り、キャリーケースの持ち手に腕と顎を乗せてロビーの椅子に座った。畳の香りがして、なんだかなつかしい気持ちになった。おばあちゃんの家にきたみたいだ。先輩はフロントで受付の人と和やかになにか話している。ぼんやりとその背中を眺めていたら、くるりと振り返った。「彩里、おいで」ちょいちょいと...

  • キシャツー! #15

    待ち焦がれて、緊張と高揚でアラームよりずっと早く目が覚めた出発当日。駅に現れた実秋先輩は、黒のスニーカーにブラックデニム、黒のTシャツ、と上から下まで真っ黒けの全身黒づくめで、テンションのおかしな僕はそれだけで笑いが止まらない。僕の服装はジーンズに犬のワンポイントの入ったシャツ、青いスニーカーだ。「先輩、それ、サングラスかけたら職務質問が入る格好ですね」「うるせいやい」先輩といつもの電車に乗り込む...

  • キシャツー! #14

    姉さんの疑りぶかいまなざしを真正面から受け止める。「同じ高校の、先輩で、男」ひと言ひと言区切るように言う。そう、といった姉さんはまたにやにや笑いだした。「かっこいいの?」「うん、すっごく。いろんなこと知ってて、バスケがうまくて、僕の話をちゃんと聞いてくれる」実秋先輩のことを話し出すと、思わず知らず声が弾む。僕の表情をじっと見ていた姉さんは「へーえ?」と一言言い放ち、自室へ引っ込んだ。しばらく戸棚を...

  • キシャツー! #13

    その晩。実秋先輩から連絡がこないかなぁという期待のせいで、僕にしては珍しくスマートフォンばかり触ってしまっていた。ふだんは本を読んだり、DVDを観たりして暮れる夜を、電子機器がかわりに埋めていく。だんだん眠くなってきて、もうそろそろ寝ようかなという頃合いにスマホが実秋先輩からのメッセージを受信し、僕はぱっちり覚醒した。ぽこんという音とともに現れた『彩里、ここだぜ』というメッセージの下の海水浴場の地図...

  • キシャツー! #12

    「なぁ、彩里。海に連れて行ってやろうか」窓の外をみながら、ぽつんと先輩が言った。突然だったので、流れとして言葉がつかめない。おうむ返しに聞こえた単語を繰り返す。「……海?」「俺と海に行かないかって誘ってる」「行く、行く!行きます!日本海でも太平洋でもオホーツク海でも!」やっと理解が追いついて、さっきまでのしおらしい気持ちが一瞬で吹き飛んだ。テンションの乱高下の激しいやつだな、と先輩は低く笑い、じゃあ...

  • キシャツー! #11

    シートに腰を下ろすと、実秋先輩とまっすぐに目があった。なぜだか逸らしたくなるのをこらえて、僕を見る目を見返す。はじめはからかうように細められていた先輩の目がふっと凪ぎ、やわらかくてやさしい表情をともした。「で、彩里。お前は何が言いたい」「えーっと、えーっとですね、今度は僕が先輩の髪の毛に触ってみたいです」「は?」「きのう、バスケの試合中の先輩の髪がとてもきれいだと思って。だから」照れたのかそれ以上...

  • キシャツー! #10

    《夏》梅雨が明けると今度は球技大会がある。(その前にあった考査とその惨憺たる結果については遠く忘れてしまいたい)くじ引きで僕はバスケットボールに振り分けられた。球技全般が世も末という勢いで不得手なので、コートの隅っこで、できるだけボールが飛んできませんように、あわよくばだれも僕に気づきませんようにと祈りながら極めて消極的に試合に参加(参加って言えるのだろうか)していた。前半戦が終わって、ネットで区...

  • キシャツー! #9

    六月に入ると一気に空気が湿り気を帯びる。梅雨入り宣言が例年より二週間近くはやく発表された。僕が電車に乗ると、実秋先輩はいつもの席でいつものようにだるそうな姿勢で僕を見上げ「彩里の髪、癖がなくてうらやましいな」と言った。先輩の髪はわずかに波打っていて端っこがちょっとはねたりしている。先輩、くせ毛だったんですねと言うと、この時期だけは手に負えねえと悔しそうに返ってくる。口調でわかる。どうやら本気で悔し...

  • キシャツー! #8

    校舎のなかではじめて実秋先輩と偶然にすれ違ったのは、僕がもっと実秋先輩と過ごすにはどうしたらいいんだろうと、そんなわがままなことを思いはじめたころ。梅雨時に入るちょっと手前の春の名残の光の差し込む、昼休み明けの教室移動のときだった。先輩は5、6人の友達と一緒で、先に気がついた僕がちいさく会釈をして通り過ぎようとすると「彩里!」と屈託なく手を振ってきた。光のような声だった。小柄な先輩の友達が怪訝そう...

  • キシャツー! #7

    五月の連休明け、二日間にわたって学園祭がある。僕たちのクラスは多数決の結果で金魚すくいの屋台を運営する運びとなった。いつもの電車に揺られながら、実秋先輩は「俺らは一年のとき、駄菓子屋だったな」と言った。「ことし、実秋先輩のクラスは何やるんですか?」「三年生は演劇、うちのクラスは去年大流行したドラマのギャグパロディーをやる」「えっ、おもしろそう。観てもいいですか?」「なんで俺の許可がいるよ」「だって...

  • キシャツー! #6

    それから僕と実秋先輩は毎朝、乗り換え駅までのキシャツーのあいだ好き勝手にしゃべったり笑ったりして過ごした。大人が見たら眉をしかめるだろう勢いで。実秋先輩は知識と話題がとても豊富で、話していて飽きるということは全くなかった。対等に接してもらっていることが、こそばゆくて、誇らしかった。毎日何を話そうかと朝から心のなかの淡い水色の風船が膨らみ切っている。「休み、なにしてんの?」と実秋先輩が聞いたところか...

  • キシャツー! #5

    「で?彩里、入学式はどうだったよ」翌日、実秋先輩が僕に尋ねた。実秋先輩相手に意地を張ってもしょうがない気がしたので、正直な感想を述べる。「高校入試が終わったばっかりなのに大学の話をされて、人生って延々とこんな感じなのかなってびびりました」僕の返答のどこがおかしかったのか、実秋先輩はまたげらげら笑った。お前どうしてそんなにいちいち俺のツボなの、と言って。姉が僕と同じタイミングで受験生だったんですけど...

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