なぜだか急にアガサ・クリスティーのミステリーが読みたくなった。クリスティーの小説を読むのは、子供のころ以来ではないか。 面白いと思ったことは記憶している。「そして誰もいなくなった」「オリエント急行殺人事件」「ゼロ時間へ」などを読んだのを覚えている。なんで、その後、もっと読まなかったのか。 あまり読書をしなくなった現在だが、今読むことで、推理小説の女王が作った物語がとてつもなく面白いと感じるのではないだろうか、との期待があった。世間で名作といわれているものは、実際に面白いものであることを経験から知っているからだ。 そんなわけで手に取ったのは、大ネタ「アクロイド殺し」。 ミステリーファンの間では「…
小林信彦の「喜劇人に花束を」(新潮文庫)の再読と単行本との比較
「喜劇人に花束を『植木等と藤山寛美』増補改題」小林信彦新潮文庫1996年4月1日初版発行 「この作品は平成4年3月新潮社より刊行された『植木等と藤山寛美 喜劇人とその時代』に、書き下ろしの第三部「伊東四郎」を増補し、改題した。」と巻末にある。 2021年5月、小林信彦「決定版 日本の喜劇人」が刊行された。新潮文庫版で長く刊行されていた「日本の喜劇人」と、その続編といえる新潮文庫「喜劇人に花束を」を併せてまとめた、まさに〈決定版〉と言う書籍で、価格は3,960円! そんなタイミングで手元にあった新潮文庫版「喜劇人に花束を」を再読したら、異様に面白くて驚いた。何度読んでも面白いものは面白いのだ。 …
萩尾望都「一度きりの大泉の話」はやはり衝撃の本と言わざるを得ない
「一度きりの大泉の話」萩尾望都2021年4月30日初版発行河出書房新社1800円+税 ある日、書店の目立つ棚に、萩尾望都「一度きりの大泉の話」という美しい書籍を発見した。ネットで話題になっていたのは、ぼんやり目にしていた。カバーは麗しいエドガーのイラストであり、思わず手に取った。パラパラと本をめくると、萩尾望都デビュー当時のものと思しきマンガの下書きのようなラフスケッチや、なぜかマンガ作品「ハワードさんの新聞広告」も収録されている。勢いで、前書き部分を読む。「竹宮恵子先生とは交流を絶ってしまいました」「竹宮先生の作品も読んでおりません」「大泉時代のことは封印していました」といったことが記されて…
日本で一番素晴らしい青春映画といえば、やっぱり「の・ようなもの 」
一番好きな日本映画は何ですか、と問われた際、なんと答えるべきか。全然、誰にも聞かれないが、実は答えを用意してある。 1981年公開の森田芳光監督の商業デビュー作「の・ようなもの」だ。 洋画なら「フェーム」なのだが、この2本は似ている。 どちらも青春映画で、まとまった物語が無く、エピソードの羅列で構成されている。 「の・ようなもの」のお話とは、若手落語家がトルコ嬢(現在は使われない言葉だが、この映画の中ではこちらの呼称が使用されている)と付き合ったり、女子高生と付き合ったりするという、なんとなくの日常を描くというもの。 落語家仲間がソープランドへ行く金をカンパしてくれたり、一緒に銭湯へ行ったり、…
一番好きな映画は何ですか、と問われた際、なんと答えるべきか。全然、誰にも聞かれないが、実は答えを用意してある。 1980年公開のアラン・パーカー監督作品「フェーム」だ。 ニューヨークの芸術高校を舞台に、ショービジネスの世界を目指す若者たちの群像劇。入試のシーンから始まって、卒業式で唐突に終わる。 何人かの生徒たちのエピソードを繋げた形で構成されており、ストーリーはほぼ無い。 だけどなぜか面白い。 別に私だけが、この映画は最高! と思っている訳ではない。 なぜなら、当時、アイリーン・キャラの主題歌は大ヒット。食堂で自然とジャムセッションになる、いわゆる「ホット・ランチ・ジャム」のシーンは、映画公…
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