chevron_left

メインカテゴリーを選択しなおす

cancel
arrow_drop_down
  • 『オネーギン』/アレクサンドル・セルゲーヴィチ・プーシキン

    プーシキンの有名な韻文小説。この岩波文庫版では散文として翻訳されているので、ふつうの小説として読むことができるようになっている。あらすじは以下の通り。 * 若くして叔父の財産と土地とを引き継いだオネーギンは、社交界の寵児として享楽的な日々を過ごすが、やがてすべてに飽き、無為で退屈な日々を送るようになる。田舎に隠棲した彼は、自分より少し年若い詩人、レンスキイと知り合う。レンスキイはオネーギンの隣家の娘、オリガに夢中で、オネーギンを彼女の屋敷へ連れて行く。オリガの姉のタチヤーナは、突然現れた都会の男、オネーギンを一目見るなり恋に落ちる。小説好きで夢見がちな性格のタチヤーナは、思いの丈を打ち明けた熱…

  • 『ひとさらい』/ジュール・シュペルヴィエル

    シュペルヴィエルの長編。以前に読んだ『海に住む少女』が完璧に素晴らしい作品だったので、それと比べてしまうとやはりどうしても落ちる、という印象はあった。でも、これはこれでなかなかおもしろい小説だ。 物語の主人公は、ビグア大佐という男。父性溢れる人物で、あちこちから身寄りのない/不幸な子供をさらってきては自分の家に住まわせ、自分の子供として大切に育てようとする…という変人である。読者がこの男のことを、変わった人だなー、そこまで悪人って感じでもないみたいだけど…などとおもうのと同じように、さらわれてきた子供たちの目にも、大佐はどこか掴みどころのない、出来合いのものさしでは測りがたいような人物として映…

  • 『女のいない男たち』/村上春樹

    村上春樹の2014年作。短編集としては、前作『東京奇譚集』から9年ぶりの新作ということで期待して読んだのだけれど、これは素晴らしかった。『1Q84』あたりから、村上の作品の雰囲気はそれまでよりぐっと静謐なものになっているように感じられていたのだけれど、本作も、昔の作品と比べると、かなり「音量が絞られた」ような印象のする物語になっている。登場人物たちが口にする言葉や、雨が地面に落ちる音、煙草に火をつける音、車のエンジン音、それらのひとつひとつが静寂のなかで小さくも、しかしその存在をはっきりと主張しているような、そんな印象を受けた。 そういった静けさのなかで語られていくのは、女を失った、女を失いつ…

  • 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』

    ずいぶん以前に、早稲田松竹にて。ディカプリオのドヤ顔がたくさん見られて――しかしこの人は本当にいろいろなドヤ顔を持っている!――それだけでもおもしろい、マーティン・スコセッシ作のブラックコメディ。これもまた実話をもとにした作品なのだけれど、『ブリングリング』と比べると、ずっとエンタテインメント性が強く、下品で、爽快感のある作品に仕上がっている。もぐりの株式ブローカーとして成り上がった後に証券会社を設立、株価操作などの違法行為によって若くして巨万の富を築き、ウォール街のウルフと呼ばれた男、ジョーダン・ベルフォートの一代記。 『ブリングリング』の主人公たちと異なっているのは、主人公のジョーダンが、…

  • 『ブリングリング』

    ずいぶん以前に、早稲田松竹にて。LAに暮らす裕福な家庭の子供たちが、夜な夜なセレブの空き家に忍び込み、窃盗を繰り返す…という、本当にそれだけの話(実話)を描いた作品。「シャネルのバッグが欲しいの」→「そういえば、リンジー・ローハンは今晩パーティに出ているはず」→「リンジー・ローハン 住所」でネット検索→家はここか、じゃあひとつ戴きに行っちゃいますか→クラブで知り合いに自慢:「今日はリンジーん家からパクってきたわー」「まじ!?ウケるんですけどー。てか、それ超クールじゃない?」、って流れを繰り返すばかりなのだ。 彼らを駆り立てていたものは、つまるところ何だったのか?観客には最後までわからない。物欲…

  • 『知識人とは何か』/エドワード・W・サイード

    サイードによる知識人論。BBC放送向けに行われた講演をまとめたもので、シンプルな主張がコンパクトにまとめられている。 サイード曰く、知識人とは、権力や伝統、宗教やマスメディアや大衆や世間に迎合せず、また、利害や党派性や原理主義や、専門家の狭量な視点に縛られることなく、「アマチュア」として、「亡命者」として、「周辺的存在」として、何ものにも飼い慣らされず、立ち止まらず、果敢に動き続け、言葉を効果的に使って批判を投げかけることのできる、そういった人間のことである。単純な二項対立や常套句、集団内の空気といったものに抗い、大勢を撹乱し、彼らにとって耳当たりの悪いことを言い続けるのが使命だというわけだ。…

  • 『写字室の旅』/ポール・オースター

    オースターの2007年作。シンプルな四角い部屋のなかに、老人が一人。彼には何の記憶もない。部屋の天井には隠しカメラが設置されており、その姿を撮影し続けている。やがて、彼の元をさまざまな人物が訪ねてくるのだが…! 長編と呼ぶには分量少なめの本作は、オースターお得意の「カフカ的不条理」に、「書くこと」、「物語ること」といった伝統的なテーマが組み合わさるような形で構成されている。そういう意味では、彼の初期の小説を思い起こさせるような作風だと言ってもいい。 ただ、本作からは、『幽霊たち』や『鍵のかかった部屋』にあったような、身を切るような切実さというものはいまいち感じられなかった。作家自身にとってはこ…

  • 『天使の囀り』/貴志祐介

    Kindleにて。手堅いサスペンス・ホラーものを得意とするエンタメ作家、貴志祐介だけれど、今作は怖いというよりも気持ち悪い、それも超絶気持ち悪い一作だと言っていいだろう。何が気持ち悪いのか、ってところは本作のサスペンス要素に大きく絡んでくるので具体的には書かないでおきたいのだけれど、えっ、この人何かんがえてるの…っていう「底の知れなさ」からくる内面的な気持ち悪さと、もうぱっと見がとにかくおどろおどろしい、っていう外面的な気持ち悪さ、その両方を完全に兼ね備えている作品なのだ。そこがすごい。それにとにかく、ちょっとこれは映画化とかはできないだろうな、とおもえるくらいにグロテスクなんである。 物語の…

  • 「クロイツェル・ソナタ」/レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ

    嫉妬がもとで妻を刺し殺すに至った、ある貴族の男の告白。プロットとしては非常にベタなのだけれど、殺人にまで至った自身の心情を逐一綿密に辿っていく男の台詞によって、その一連のプロセスが特殊な事情によるものではなく、ある真理によって必然的に引き起こされたものであるかのように語られていくところがおもしろい。 男は、自身の結婚生活の破綻を経て、現在の婚姻制度やら愛やらといった観念などというものはそもそも幻想であり虚飾であり、そこにあるのは男と女の欺き合いでしかない、という考えを持つに至る。 ところで男性が女性をどのように見ているかということは、私たちは誰でも知っていますね。つまり『酒と女と歌』というやつ…

  • 「イワン・イリイチの死」/レフ・ニコラエヴィチ・トルストイ

    舞台は19世紀ロシア。世俗的な成功を手にした中年裁判官、イワン・イリイチという男がふとしたきっかけで病に倒れ、数ヶ月の苦しい闘病の末に死んでいく…という一連の流れを描いた物語だ。 イワン・イリイチという男は、ごく平凡な性格と人生観とを持った主人公である。「賢く覇気があって好感の持てる、品のいい」若者だった彼は、「気楽で、快適で、陽気で、つねに上品で周囲に祝福されるような暮らしぶり」を追求し、それを得ることに成功する。仕事で出世し、素敵な女性と結婚し、家庭を築き、豪華な邸宅を手に入れ、ときどき息抜きに友人たちとカードをしたりもする…何事につけてもうまくやるコツを心得た、世渡り上手な人物というわけ…

arrow_drop_down

ブログリーダー」を活用して、hayamonoguraiさんをフォローしませんか?

ハンドル名
hayamonoguraiさん
ブログタイトル
Show Your Hand!!
フォロー
Show Your Hand!!

にほんブログ村 カテゴリー一覧

商用