足し算をするか引き算をするか ~映画「オッペンハイマー」 オッペンハイマー。核物理学の先端を行き、同時に文明論者としても知られた。女性好きの私生活も一風変わっていたという。この特異なキャラクターが映画化された。公開とともに、さまざまな観点から賛否両論が渦巻いた。なぜか。第二次大戦中、米国「マンハッタン計画」を率いて原子爆弾を完成させた。20世紀は二つの大戦を経て「戦争の世紀」と呼ばれたが、オッペンハイマーの「仕事」は、さらに戦争のかたちを変え「核の時代」の始まりを告げた。一人の科学者の栄光と葛藤、内面の物語にとどまらず多様な読み方、解釈のもとに語られたのは、こうした「悪魔の仕事」の側面を持ったからだった。 広島の試写会では、元広島市長の平岡敬、詩人で米国社会に独自の批評眼を持つアーサー・ビナード、映像作家でノンフィクションライターの森達也の3氏がコメントした。平岡氏は被爆地の惨状..