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  • オヤジのあくび728

    上野千鶴子「最期まで在宅おひとりさまで機嫌よく」 本書では至る所で介護保険の活用が説かれている。ボクの母親も利用中なので、この制度が整ったことは本当にありがたいと思う。 またボクは父親があっという間に旅立ってしまったので「老いて弱っていく姿を子どもたちに見せる」という発言は、ボク自身も老いの入り口に差し掛かっているので、結果的にそのような状況になれば親として子どもに残す最後のしつけ(教育)になるのかもしれない。 本書に登場する方は全員女性であり、結婚歴・離婚歴がある方から、生涯独身を貫いている方まで様々。ボクは男であり妻より少しだけ年長だから、自分が先に旅立ってしまう可能性が高い気がしています…

  • オヤジのあくび727

    瀧本哲史「武器としての決断思考」 本書は授業形式になっているのですが、1時間目の終わりの方で「ブレる生き方を目指せ」とあります。初志貫徹、思い込んだら試練の道を〜♪的な生き方が礼賛されていた時代に育った者としては、大きな変わりようです。そのブレ方も脊髄反射的に変化するのではなく、事前の準備や根拠が必要だと言います。 著者のイチオシは、ディベートです。大きな問題から具体的な問題(3つくらい)へ。そしてYesNoに落とし込めるところまで進めていきます。その後ディベートを通じて、論理的に隙がない説明力を身につけるかが、語られていきます。 私なりに咀嚼すれば、この本は「流されない」「騙されない」ために…

  • オヤジのあくび726

    長谷部誠「心を整える。」を読む 長谷部誠。サッカー日本代表キャプテンとしての活躍と実績はとても有名ですが、実際のプレーはテレビカメラが追いかけていないところで地味にコツコツ動いていることが多かった選手だと感じています。 本書は、長谷部選手が未だ現役バリバリの27歳の時に書かれた本で「キャプテン・ハセべ」の成長過程が読み取れる本でもあります。 56章からできているのですが、第35章に「監督の手法を記録する」というのが出てきて、「引退したら、いつかサッカーチームの監督をやりたい」と書かれている。長谷部選手が現在フランクフルトや日本代表でコーチを務めているわけで、随分前から自分の将来を見据えていたこ…

  • オヤジのあくび725

    草薙龍瞬「反応しない練習」を読む 世界中がインターネットから溢れ出る情報に頼っているし、振り回されてもいる。某国の大統領が発信している情報など最たるものだ。 その中でお釈迦様の言葉を足場にしながら、冷静に合理的な生き方を選択するとはどういうことなのか、本書は説いている。 手塚治虫の漫画全集「プッダ」12巻35頁よりアナンダの科白 「あらゆる苦しみはかならず原因から生まれる プッダはそれらの原因を説き明かされる・・あらゆる苦しみはかならずとめることかできる プッダはそれらのとめる方法を説き明かされる・・」 手塚治虫版のプッダにも散りばめられている教えが、本書で説かれている教えと被るのは、やはりお…

  • オヤジのあくび724

    石井哲代「102歳、一人暮らし」を読む 日々の生活、つまり当たり前の日常を感謝しながら生きる。 畑で育てている作物の成長、自分の生活をサポートしてくれる姪っ子さんへの感謝、仏壇に手を合わせて今の自分を亡き夫に報告する。おいしい食べ物が大好きな石井さんの食事時の表情は、笑顔に満ち溢れている。 そんな楽しいことばかりじゃないでしょ。後悔したり悲しい気持ちになることもあるでしょ。ほとんどの読者はそう思うはず。 ボクは、石井さんはきっと悲しみや辛さのしまい方・片付け方が上手なのだと思う。 石井さんが講演会で語った「生き方じようずになる五つの心得」をメモしておこう。 一、物事は表裏一体、良いほうに考える…

  • オヤジのあくび723

    和田春樹翻訳「レーニン・セレクション」を読む2 レーニンが当初帝國主義について捉えきれていなかったことは、よく指摘されている。現在であれば、イギリス・フランスによるアフリカへの植民地支配が、資本主義の行き着く先であったことが世界史で教えられている。 しかし、ただでは起きないところがレーニンでして、帝國主義を支える独占資本主義を逆手にとって全世界の労働者による世界革命が可能だと考えたのだ。 レーニンは、先の先を見通す力が優れていて、ロシア革命においてもブルジョワ革命である二月革命で踏みとどまらず、その年の十月革命で一気に社会主義国家を樹立してしまう。 一気に革命を推し進めた人というと、フランス革…

  • オヤジのあくび722

    和田春樹翻訳「レーニン・セレクション」を読む1 本書は、平凡社ライブラリーとして昨年1月に出版された。ソ連という国は、とうの昔に地球上から消え去り、マルクス・レーニン主義として学ばれた思想体系も極めて不人気な中で、何故今さらレーニンの本が出版されたのだろう。 まえがきに芥川龍之介のレーニンに対する次の詩が引用されている。 誰よりも民衆を愛した君は 誰よりも民衆を軽蔑した君だ 読み進めるうちに、学生の頃によく目にしていた文体を思い出した。そう、某過激派諸君の撒いていたアジビラの文章に似ているのだ。正しくはアジビラの書き手が和田春樹氏の書きぶりを真似ていたというべきかもしれないが、50年ぶりに目に…

  • オヤジのあくび721

    関 眞興「一冊でわかるロシア史」を読む2 レーニン、トロツキー、スターリンなど革命を主導した人。ボリシェベキとメンシェベキ・社会革命党を中心とする議会内の主導権争い。さらには第一次世界大戦下での諸外国との関係。これらを整理しないとロシア革命の全体像はなかなか理解できない。 世界史上もう一つの大きな革命であるフランス革命が次々にリーダーが変わりながら、最後にナポレオンに行き着いてしまったこと。革命をどういう方向に導くのか、大きく揺れ動いていたこととロシア革命を比較してみたい。 ボリシェベキのレーニンが革命のリーダーとしてソ連を実現した経緯を追ってみましょう。 当時のロシアは内憂外患そのもので、ド…

  • オヤジのあくび720

    関 眞興「一冊でわかるロシア史」を読む1 世界史の授業では、モスクワ公国のあたりから地図上に存在が示されていて、現在も取得であることから記憶に刻まれまふ。しかし、それ以前にリューリク朝、キエフ・ルーシと呼ばれた王様がいたことは、本書で初めて知りました。学生の頃男声合唱で歌っていた「オレーグ公の歌」。オレーグ公って、この頃活躍した人だったんですね。 ロシアの歴史でつかんでおきたいのが、コサックの人々。農奴への圧政から逃れてきた人々と遊牧民が混じり合ってコサックを形成したとされるが、国家から自由な戦闘集団であり、ゴーゴリの「隊長ブーリバ」にも彼らの様子が描かれている。 気になるのは、ウクライナがコ…

  • オヤジのあくび719

    森 博嗣「やりがいのある仕事という幻想」を読み、教育現場について考えてみた2 なぜ、近年教員という仕事がブラックな職業の代表のように言われ、実際教員が足りなかったり、教員試験を受ける人が減っているのか? 教員という仕事は、保護者とパートナーシップを築きながら、子どもの成長を促しているわけです。ところが、保護者がいわゆるモンスター化してしまったり、授業中に子どもがまるっきり指示に従わなくなってしまったり、パニックに陥りメンタル面が不安定になる方を大勢いらっしゃいます、 教員はある程度の自信を必要とする仕事でありますし、実際最低限の自信をもって教壇に立つ人が多いのです。ですから自分のプランや描いて…

  • オヤジのあくび718

    森 博嗣「やりがいのある仕事という幻想」を読み、教育現場について考えてみた1 本書を読んでいるうちに、自分自身の仕事を振り返ってみたくなりました。本書の内容から離れますが、今まではやりがいのある仕事と思われてきた教員という仕事について、考えてみたくなったのです。 ボクは大学を出てから教員しか経験していない。学校現場には通算44年通っていました。去った後も、未練がましく教育関連の仕事にしがみつき現在は塾講師アルバイトを続けています。 ずっと続いたわけは、やりがいというより子どもたちと接している時間が楽しかったからです。転職しなかったのは、教員だったという潰しが効かない経験のみで、自分は営業職には…

  • オヤジのあくび717

    沢野ひとし「ジジイの片づけ」を読む 初めの方に出てくるのが窓。「窓を開け放せ」とおっしゃる。「なるほど閉め切っているから空気が澱んでいるのだ」と納得してしまう。でもまだ寒いので早朝から窓を開け放つ勇気が、寒がり屋のボクにはない。 「あの世に持っていけるのは思い出だけ」。この言葉も沁みる。お宝のような品物も、結局はこの世に置いていくか、棺に入れてもらうしかないのだ。しかも棺に入っている自分にはすでに意識はない。 沢野さんは、文中で白湯を勧めている。そんなにいいのかなぁと調べてみると、侮るなかれいいことづくめなのです。あっ、お茶買い忘れちゃった・・・なんてこともないし、これはよさそう。 服装につい…

  • オヤジのあくび716

    鈴木るりか「さよなら田中さん」をkindleで読む 小学校6年生の女の子、花実さんの話。最後の一編だけが同級生の男の子目線で描かれている。作者は小学校4年で、12歳の文学賞に応募し、3年連続で大賞を受賞する。 幼児の絵に、その時その年齢でなければ描けないタッチが見られるように、物語も小学校6年生からそう離れていない年齢で書かれた作品には、その年齢ならではの感覚や言葉遣いが広がっている。 重松清さんが、少年少女の心理を巧みに描くが、おそらくは体験による回想を基盤にして書いている。しかし、鈴木るりかさんはリアルタイムなのだ。現在自分の周りで起きていることがそのまま物語になる。そんな作家とお見受けし…

  • オヤジのあくび715

    福永文夫 「大平正芳 戦後保守とは何か」をkindleで読む3 日中国交回復と金大中事件 日中国交回復と言えば、ときの総理田中角栄の顔写真が教科書に載っているが、外相として交渉を仕切っていたのは大平正芳。日本国内には親台湾派も大勢いるわけで、よくまぁ条約締結に漕ぎつけられたものであります。 もう一つ国家主権を揺るがす拉致事件、金大中事件が起きる。この事件に、対して韓国側からの謝罪は未だにない。また日本側も田中首相と大平外相の間で認識のずれがあり、決着がうやむやにされてしまった。大平自身としては悔いの残る対応であったろう。 ドルショックにオイルショック 70年代のニクソンショックまでは、1ドル=…

  • オヤジのあくび714

    福永文夫 「大平正芳 戦後保守とは何か」をkindleで読む2 棒樫財政論と小さな政府 大平正芳の掲げた理念のうち、現在でもなお政治の大きな課題となっているのが、小さな政府論。そのきっかけとなったのは、ある村長から大平の元に届いた手紙でした。 自分[和田村村長]のうちは、父が事業に失敗したので、当時中学に在学していた自分は退学した。大きい土蔵や物置は売り飛ばしてしまった。使っていた下男や女中は全部解雇した。事業に失敗した父としては、先ずこうするより他お家再建の糸口がなかったわけである。ところが、近頃の世相をみていると、国は惨めな敗戦の憂き目をみたのに、義務教育は、六・三制とやらで六年を九年に改…

  • オヤジのあくび713

    福永文夫 「大平正芳 戦後保守とは何か」をkindleで読む。 永い人類の歴史を通して、われわれの先人は、いつの時代においても苦悩と苦闘を重ねてきたのです。何度も何度もその改革を試みては失敗してきたのです。たまに改革ができたと思って喜んだ瞬間、また新たな苦悩ができ、みんなが幻滅に泣いたのです。われわれは、こういった苦悩の深淵にいつも生きておったし、今後もそれから脱却することはできないと観念するより他に道はないようです。 この「変革と対応」と題した文から、ボクは詩人丸山薫の「新しい時代に」の一節を思い浮かべる。 希むらく 新しい時代に生きん 新しい歎きに泣き 悩みを悩もう その歎きと悩みの上に …

  • オヤジのあくび712

    池上彰「伝える力」を読む。 まず「自分は何も知らない」ことを知り、他者から謙虚に学ぶ。この姿勢さえ持ち続けていれば、コミュニケーション能力は確実に向上していくと池上さんは説きます。 ボクは68歳になるまで教育に関わらせていただいたのですが、黒板を背にして知識の切り売りで済ませていた時代はとうの昔に終わっていて、主体的対話的なアクティブラーニングをどうプロデュースできるかが、現在の教員に求められているのでしょう。 日々学び続けている先生と何年か前に賞味期限の切れた知識のままで止まっている先生は、生徒の目からも見分けがつくはずです。 知らないことと言えば、カタカナ語の氾濫について警鐘を鳴らしている…

  • オヤジのあくび711

    平野啓一郎「私とは何か」を読む。 分人とは、個人を1とした時に分人は1を構成する分数だと言う。分母や分子の数は人によって違うが、分人の合計は1になる。そして分人は、その人を取り巻く人間関係によって築かれていく。 人格が他者との関わりの中で形成されていくという話は、至極ごもっともに響くが、長い間一人っきりで他者との関わりがないまま、暮らしてきた人がいる。 例えば旧日本兵で密林の中を生き抜いてきた横田さんや小野田さん。軍隊の中で形成された分人のまま、生き抜いてこられたのですね。 また現在引きこもり状態の方々の中にも他者との関わりが極めて希薄な人はいるでしょう。引きこもりになる前に接していた他者との…

  • オヤジのあくび710

    近衛龍春「九十三歳の関ヶ原-弓大将 大島光義」を読む 鉄砲伝来後、弓という武器の威力は少々不安定であります。ニ町先も射抜く光義の弓は、火縄銃が火薬と弾の詰め替えにかかる20秒間が勝負で、その隙を狙って矢を射なければならない。また接近戦に使う武器ではないので、実際に敵将の首を取るのは、歩兵の働きになってしまい、合戦場での評価が鑓(やり)の名手ほど高まらない。 小説の中で最初の大きな合戦は、斎藤龍興の稲葉山城攻防戦で、斎藤・長井側の光義は奮戦するも負け戦。その後信長に仕えることになり、将軍を奉じての京都上洛。木下藤吉郎のもとでの六角氏と戦いや金ヶ崎の退き口、姉川の戦いの様子が描かれている。 弓の実…

  • オヤジのあくび709

    磯田道史「天災から日本史を読み直す」を読む 昔の地震の記録は、現在に比べればかなり曖昧であります。まず時刻が秒単位でわかる現在に比べて、江戸時代以前は1日が12等分されているだけなので、かなり大雑把です。今はあっという間に震源地やマグニチュードが計算され、各地の震度もわかりますが、昔はそれぞれの地域の文書記録があるだけです。 本書は秀吉が権勢を奮っていた頃、天正地震けら始まります。山内一豊の所領長浜では、城が崩れて愛娘が亡くなった。山内夫妻は震災孤児を引き取るが、その子が後に名僧となり会津や土佐の学問に影響を与えたとのこと。また当時秀吉は家康を傘下に引き入れたく、小牧長久手の戦いの第二幕が切っ…

  • オヤジのあくび708

    中村彰彦「逆風に生きる」を読む2 長州藩の藩校を会津の秋月悌次郎が講師として訪ねたことがあり、その縁で奥平謙輔は書生として健次郎を引き取った。健次郎は終生謙輔を先生と呼んだという。ちなみに奥平謙輔は新政府の政策と合わず、前原一誠を首謀者として萩の乱を起こし、敗走の末斬首。 一方浩はどうなったのか。浩はすでに家老職であり会津が下北半島の斗南藩に移された時には権大参事として、容保の跡を継いだ喜徳を支えている。 斗南藩で浩は他藩に先駆けて佩刀を命じるなど先進的な政策を行ったが、この辺りで末の妹である咲子についてふれたい。咲子は名を捨松と改めて、津田梅子らと共にアメリカに留学したのです。日本人として学…

  • オヤジのあくび707

    中村彰彦「逆風に生きる」を読む1 敗戦側に立たなければ、見えにくい事実がある。鳥羽伏見敗戦の後、すべてをほったらかしにして江戸に逃げ帰った徳川慶喜の話は有名だが、その後大阪城に残された幕軍の様子はあまり語られない。その場に会津藩の砲兵隊長になっていた山川兄弟の兄、浩がいたのだ。彼は大政奉還の前、まだ会津藩が京都守護に当たっていた頃、ロシアに渡って西洋の事情を体験している。体験を元に様々な献策を提案したであろうが、いかんせん時代の流れが想定以上に早かった。 孝明天皇の信厚く、京都を守っていた松平容保は、一転して朝敵賊軍の汚名を浴びてしまう。戊辰戦争が新政府(西郷隆盛)にとって抵抗勢力を一掃する一…

  • オヤジのあくび706

    門脇禎二「吉備の古代史」を読む2 吉備国が星川王子の変や蝦夷への対応でゴタゴタしていた後、大和側もゴタゴタが続き、結局は継体天皇を招くことになる。大和側の混乱期は吉備が勢力を立て直す好機だったのでしょうが、結果的には大和に制圧されてしまいます。 話は大化の改新前後に飛んで、その時期外交関連の大事件と言えば、白村江の戦い。逃げ帰った日本を追撃して唐が攻めてくる可能性があったわけです。 唐への防衛線は、北九州〜瀬戸内〜生駒山脈ライン。瀬戸内には、讃岐に官城として屋島城。吉備国には鬼ノ城(キノジョウ)がありました。705でもふれた吉備津彦による温羅(ウラ)退治の舞台と言われています。もちろん鬼が住ん…

  • オヤジのあくび705

    門脇禎二「吉備の古代史」を読む1 吉備津彦という神様がいらっしゃる。 伝説の範囲ですが、大和から派遣された神 孝霊天皇の皇子イサセリヒコノミコト(=吉備津彦)が温羅(ウラ)を退治したことが桃太郎のモデルだという説がある。推量ですが、この地方に一大抵抗勢力があり、それを鎮める必要があったのでしょう。 古代において一大勢力が力を持っていた地方は、ことごとく分割統治されている気がします。吉備国は備前、備中、備後。九州なら肥前、肥後。筑前、筑後。豊前、豊後。北陸は越前、越中、越後。関東は上野、下野。日本統一の過程で各地の豪族を従えていった過程が伺えるようです。 本書、吉備上道田狭の話の中で当時の朝鮮半…

  • オヤジのあくび704

    加藤九祚「シルクロードの古代都市」を読む 著者は、まず研究対象としている地域について解説を始める。この説明がなければ、どこのことやらわからないくらいボクには馴染みのない地域なのだ。アム・ダリア川という総延長2500kmの大河がパミール高原からアラル海に向けて流れている。しかし下流部は土砂堆積や耕地が増えた影響で水量が減り、流れ込むアラル海も1960年頃に比べて、とても小さくなっているという。 本書には、年代に対する記述があまり見られない。バクトリア-マルギアナ複合群の遺跡が紀元前2000年ごろの青銅器文化ものであるとあるが、時系列による説明が少ないのは、まだ研究が途上のためだろう。本書では、拝…

  • オヤジのあくび703

    阿刀田高「コーランを知っていますか」を読む2 マホメットは、預言者であると同時に政治家であり軍人でもあった。彼は敵対する勢力と戦い、信仰を広めていった。 ところが戦闘が起きるとおびただしい数の子どもと女性が、孤児と寡婦になってしまう。実は経緯は異なるがマホメット自身が孤児だったのです。寡婦の処遇が今日まで続くムスリムの一夫多妻制に通じていることを本書は語っている。ボクなんかたった一人の妻でも青息吐息なのに、ある意味すごいなぁと感心してしまうのですが。 離婚を含む男女関係、遺産相続、金が金を産む高利貸し、飲酒、ギャンブル・・様々なルールがコーランには書き込まれている。中には21世紀の現在に馴染ま…

  • オヤジのあくび702

    阿刀田高「コーランを知っていますか」を読む1 ボクの身近にムスリムの方がいたのは、国際理解教室の講師の方が職員室にいらした時くらいで、小学校は給食だから講師の先生は信仰に配慮した献立になっていた(具体的には豚肉厳禁)。生まれてこの方ずっと日本で生活しているせいもあるだろうけど、我ながら実に交流経験が乏しい。 信者になろうというわけではなく、イスラム教についてもう少し見識を深めたい人には、うってつけの本でしょう。阿刀田高さんの語り口は極めてやわらかく、リラックスして読み進めることができます。 はじめの方では、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教と皆一神教なのですが、先行する二つの宗教、特に旧約聖書に…

  • オヤジのあくび701

    安倍雅史「謎の海洋王国ディルムン」を読む。 世界史の授業では、初めの方で古代遺跡の名前が次々に登場する。現代に至るまでその痕跡をとどめているピラミッドのような観光地を除けば、遺跡のほとんどは掘り起こされたものだ。けれど、誰もが知っている遺跡を掘り起こしたのはどんな人だったのか、シュリーマンのような例は特別で、ほとんど知られていない。 本書はディルムン発掘に当たった学者を紹介する中で、同時にその人たちが他の遺跡の発掘に関わっていることを記している。 聖書のノアの方舟伝説にはネタがありまして、ギルガメシュ叙事詩のジウスドゥラがノアらしい。そのノアが神様から永遠の命と楽園を与えられて、その楽園がディ…

  • オヤジのあくび700

    安田祐輔「発達障害の人が上手に勉強するための本」 著者は、キズキ共育塾の代表。不登校、発達障害、中退者の学び直しや受験指導を行っている塾です。一読して感じるのは、自分がうまくいかないことをどのようにしたら克服できるか? に視点を当てて、その効果的な方法がまとめられている。 ボク自身の半生を振り返ってみると、苦手なところをあの手この手で克服したというよりは、むしろ自分自身の偏りをどうやって強みに変えられるか? に腐心してきたように思います。その結果が現在の自画像なので、人に胸張って誇るようなことでもないのですが、何とかそれで生きてきてしまいました。 偏り・不得手がリフレーミングすれば、人にない長…

  • オヤジのあくび699

    橋本公誠「イブン・ハルドゥーン」をkindleで読む2 歴史を教えるという行為は、単に年代を追いながら記録された事実を羅列していくことではない。それは歴史の外面に過ぎず、何が原因でそのように時代が変わっていったのか、内面をとらえなければならないとハルドゥーンは考えた。しかし、そのように歴史の深層にまで思索を深めた書物はなかったのです。 名門王族は何故没落するのか。ハルドゥーンは4世代120年程度しか維持できないと言う。以下本文より引用 名門は四世代のうちに終わってしまう。栄光の創始者は何が創始に値するかを知り、その栄光を創り出し、持続させる資格に気をつける。次にその息子は父と個人的な接触をする…

  • オヤジのあくび698

    橋本公誠「イブン・ハルドゥーン」をkindleで読む1 イスラムの歴史が世界史の授業でメインストリートとして案内されないのか、その答えはハルドゥーンの生涯を追いかけている本書から明らかになってくる。北アフリカとスペイン南部を中心に展開した王朝は、どろどろの権力抗争、王朝交代に絶えず明け暮れしており、何とハルドゥーン自身もクーデター未遂に関わったり、牢獄に1年9ヶ月も幽閉させられたりしている(この後も投獄経験は続きます)。まぁ、その経験がハルドゥーンの思想形成に大きく影響するのでしょうが、局地的な地域紛争と片付けてしまえば、それまででして、のちのち世界の文明をリードするヨーロッパや四千年の歴史を…

  • オヤジのあくび697

    宮田律「中東 迷走の百年史」を読む 私たちは、近代国家を支える一員として国と社会契約を結んでいるはずだし、主権国家とはそういう概念なのだという西洋的発想が脳に刷り込まれている。 しかしながら、アラブ世界の人々は容易に国境を跨ぎ越し、政治的信条、民族・部族の利害、ムスリムとして所属する派閥等を元に、国家など眼中にないかのように行動する。テロリスト然りであるし、サダム・フセインを処刑された後、彼を支えていたバアス党の動きも国家・国境をスルーしている。バアス党はアラブ民族による統一国家を目的にしているのだから、当然なのかもしれませんが。 なぜ、このような事態を招いているのか、その原因を辿ればオスマン…

  • オヤジのあくび696

    後藤明「ムハンマド時代のアラブ社会」を読む 本書の前半は、当時のアラビア半島において部族・氏族がどのように形成されていたのかを解説している。個人名が先に来て、続く名前は父祖の名前なのですね。 ほとんどが砂漠に覆われているこの土地は、建前上はペルシア帝国の支配下にあっても、実質その統治が及んでいるわけではなく、ムハンマドが政治的軍事的に統一国家をつくるまでは、国らしい体裁がなかったのです。 元来は多神教であったメッカの街に、突然現れたムハンマドが一神教を説き始めたので、街の有力者クライシュ族は迫害を加え始める。聖地カアバ神殿は元々多神教であった人々の巡礼地であり、それまでの神々を否定されることは…

  • オヤジのあくび695

    武田幸男、宮嶋博史、馬渕貞利「朝鮮」を読む 1993年、今から30年以上前に書かれた本でありますが、古臭さをあまり感じないのは歴史書の強みでしょうか。 中国史の登場人物は、もちろん漢字で名前が表記されているのですが、その発音は日本の音読みです。例えば毛沢東は日本の読み方ではモウタクトウですが、現在の中国の発音ではありません。音読みは時代と共に変化しているからです。さてこの本も人の名前が漢字で表記されていますが、横に振ってあるルビは朝鮮語の発音で、日本語の音読みではありません。原則としては現地で呼ばれているように発音はするべきだと私は考えています。 朝鮮も日本と同様で国が成立する以前のことが神話…

  • オヤジのあくび694

    半藤一利「墨子よみがえる」を読む 漢籍にある程度通じていることが、教養人としての嗜みであった時代があったし、今もその伝統は続いているはず。本書前半では、漱石門下の墨子に対する見識の浅さを冷かしている。著者は漱石の遠い縁者なので、この程度の暴走は許されると思っているのでしょうか。 前回の拙稿683で、墨子の説く「鬼神」がわかりづらいと書いてます。悪行を働くと鬼神がそれを罰する。墨子は鬼神に出会った王の具体例を挙げている。一例目は無実の罪で家臣杜伯を殺した宣王。狩りで朱の服を身に纏い、朱の弓、朱の矢をつがえた杜白が現れるとその矢が宣王の胸を射抜き絶命してしまう。二例目は朝廷で政務をとっている王の傍…

  • オヤジのあくび693

    青野太潮「パウロ 十字架の使徒」を読む2 十字架。ロザリオの先端に、クリスマスツリーに、そしてもちろん教会で私たちは十字架を見ている。本書の副題、十字架の使徒とは何か? 「殺害されたままの状態のキリスト」こそが、同時に「神の栄光」の体現者である。この逆説は、もろくて弱い土の器である私たちの身体も、十字架にはりつけられたまま殺害されているのと同じなのだとパウロは伝えたいらしい。言うまでもなく十字架刑は極めて残忍な処刑法です。思わず目を背けたくなるような状態のイエスから目を逸らさずに、しっかり心にとどめ置くこと。 続けて「イエスは十字架にかかって、私たちの罪のために死んでくださった」という記述は、…

  • オヤジのあくび692

    青野太潮「パウロ 十字架の使徒」を読む1 キリストが教えを説いていた頃、パウロはこの新しい教えを迫害する側にいた。モーゼの十戒を元に律法を遵守するユダヤ教とキリストの教えは相容れなかったのです。 そのパウロ(=サウロ)が次の日ような体験をしたと使徒行伝には書かれている。 ・・旅の途中でダマスカスに近づいたとき、突然、天からの光が彼の周囲を照らしました。彼は地面に倒れ、声が彼にこう言うのを聞きました。「サウロ、サウロ、なぜ私を迫害するのか。」 「主よ、あなたはどなたですか?」サウルは尋ねました。 「私はあなたが迫害しているイエスです」と彼は答えました。「今、立ち上がって町に行きなさい。そうすれば…

  • オヤジのあくび691

    杉崎泰一郎「修道院の歴史」を読む2 最初の修道士は250年頃にエジプトで生まれたアントニオスです。彼は隠遁生活を送りながら修行を続け、人々へ病気の治療や説教を行いました。まだキリスト教が迫害を受けていた時代のことでした。始めは単独だったのです。 290年生まれのパコミオスが他の修道士と共同生活を始めると、エジプトのナイル河畔に修道院ができます。バシレイオスによって共住生活の体系的な規則が決められる。 これらの東方型の修道院が西方=ヨーロッパ型へと形を変えていくわけです。 話はジャンプして前回の続き、フランク王国で皇帝の文化振興政策の一翼を担った修道院は、やがて領主たちの寄進を受けて巨大化してい…

  • オヤジのあくび690

    杉崎泰一郎「修道院の歴史」を読む1 有名なミュージカル「サウンド オブ ミュージック」や「天使にラブソングを」には、修道女が登場する。そして修道院の厳しい戒律に馴染まない女性や身を隠すためにやってきた女性が主人公なのだ。 そもそも厳しい戒律とは、何なのか。ど素人の私はそこから読み始めなければなりません。本書第二章に、現在まで伝わるスタンダードと言ってよさそうなベネディクトの戒律が紹介されています。暖衣飽食の生活を満喫している今の日本人からすると、かなり禁欲的で、全てに節制が求められる生活がイメージされます。仏教でも修行中の僧侶が欲を断ち切り節制した生活を送ることに似ています。仏教はお釈迦様の修…

  • オヤジのあくび689

    祝田秀全「建築から世界史を読む方法」を読む2 ロマネスク建築の傑作として本書に登場するのが、斜塔で有名ならピサの大聖堂。著者は世界史の先生だから、建築当時の社会背景など解説されていることがありがたい。この聖堂はピサの艦隊がイスラームの艦隊に勝った記念に建てられたのだ。ローマの模倣と名付けつつ、ローマには及ばない点も書かれています。 続いて、天をも突くようなゴシック建築が開設されます。尖塔アーチ、フライング・バットレス、リブ・ヴォールトと高さを支える工夫が説明されます。しかし、観光客目線ではステンドグラスの美しさ。口絵にもあるバリのサント・シャペル聖堂のステンドグラスは、本当に美しい! 思うに私…

  • オヤジのあくび688

    祝田秀全「建築から世界史を読む方法」を読む1 世界史のテキストには、建築様式の移り変わりが記載されている。ビザンツ様式→ロマネスク様式→ゴシック様式という具合。 でもビザンツの前に、すばらしい建築群を残した帝国を私たちは知っている。その名はローマ帝国。 テルマエ・ロマエという漫画がヒットしたけれど、ローマ人が入浴していたあの水はどこから引いてきたのだろう。そう、ローマ帝国の遺跡には今もヨーロッパ各地に残る水道橋があるのです。道を造ると同時に水道を引かなければ、そこには人は集まってこない。それをローマの皇帝たちはよく理解していて、建築という公共物をローマ市民はもちろん、属州の人々にも提供したので…

  • オヤジのあくび687

    渡辺信一郎「中華の成立 唐代まで」を読む3 始皇帝が始めたことは実に広範に及ぶが、国内の幹線道路網および駅伝制を整備した実績も大きい。人・物の移動がスムーズならば経済は発展していくのだから。 本書は続いて、漢の領土を広げて大帝国を築いた武帝とその均輸・平準政策や前半生が実にドラマチックな宣帝にふれながら、前漢時代について書いていく。 いよいよ前々回本書を読むきっかけとなったと書いた王莽が登場します。本書では王莽の世紀と題し、その影響の大きさを評価していますが、中国が文化大革命で根こそぎ価値観を変えるまでは、儒教を重んじる国であったのは、王莽が出発点だったのですね。 「儒家的祭祀、礼楽制度、官僚…

  • オヤジのあくび686

    渡辺信一郎「中華の成立 唐代まで」を読む2 国内の民を戸籍に登録して管理する。登録したら租税・軍役を課して国を強くする。その戸籍を最初に作った人が秦国の商鞅でした。実際、秦国は最強の国となり、やがて始皇帝の時代を迎えるのです。 それまでの血縁関係より支配者的な立場を確保していた時代から、軍功を立てた者が支配者の身分を獲得するという大きな改革でした。血縁から能力主義へ。 商鞅の変法と呼ばれる改革は、法を元にした中央集権国家を目指していました。民家を什伍の単位に分けて、互いに法律を破る者がいないか監視させ、誰も名乗り出ない場合には連帯責任を取らせました。 容赦ない法による管理取り締まりは、貴族支配…

  • オヤジのあくび685

    渡辺信一郎「中華の成立 唐代まで」を読む1 お江戸コラリアーずで組曲「ハレー彗星独白」の「弥生人よ きみらはどうして」という歌を歌った。大岡信さんの詩に、吉野ヶ里遺跡を思わせる集落が描かれている。周囲に塀や堀を巡らした村の原型は、中国古代、殷・周時代の邑(ゆう)に見られるようだ。山西省西南部にある龍山文化期の陶寺遺跡などは、すでに埋葬を通して階層文化の存在を示していて、吉野ヶ里遺跡を想像させる。 中国最古の王朝は夏と呼ばれる。文字資料が少なく伝説化しているが、著者は河南省の二里頭文化が夏王朝と密接な関係があったと指摘している。二里頭ではすでに巨大な宮殿が二棟発見されているのだ。 続いて殷。殷は…

  • オヤジのあくび684

    「養老孟司の〈逆さメガネ〉」を読む 養老さんは、東大紛争の頃、助手だったそうで、あの紛争の最中に学内にいて様子をリアルに見ていた。本書で改めて問いを投げています。結局学園闘争とは何だったのか、誰が説明して、誰が責任を取ったのか、全てがうやむやなのは、日本の敗戦後と似ていると。 養老さんは東京大学に入る前の話が出てきます。現在は大船から長い坂を2度登ったところにある名門栄光学園です。養老さんのころも今も休み時間になると全校生徒が上半身裸になって屋外で体操をしているらしい。冬は寒そうですね。私立の男子校だからできるような気がしますが、部屋にこもってゲームに耽っているより遥かに健康的でしょう。栄光学…

  • オヤジのあくび683

    草野友子「墨子」を読む 非攻。墨子は侵略戦争を大量殺人と位置付け、なぜこれが不義でないのかと主張します。そして実際に戦闘集団を組織して、大国から攻撃を受けている弱小国の救援にあたるのです。実際にどのようにして城を守ればよいのか、その具体的な方法が書かれています。 墨子は職人出身であると言われていますが、概して貴族に批判的な論調が目立ちます。その例が厚葬久喪と音楽。長い期間喪に服することを批判しています。今日本ではコロナ禍以来家族葬が増えていますが、まるでその時代を見通していたかのようですね。音楽についても、それがどうして民の利益に繋がるのかと批判的です。貴族が音楽に親しむ様子とその影で人々が生…

  • オヤジのあくび682

    田丸ようすけ 漫画「竜樹」をKindleで読む 仏教に取材した漫画と言えば、手塚治虫の「ブッダ」を読んで以来になります。手塚治虫は様々なエピソードを元に彼一流の脚色を施していますが、本書も架空の人物を恋人役や弟子として配置するなど、劇画としての演出を施しているようです。 さてキリスト教のアウグスティヌスが自身の履歴を振り返って、肉欲に支配されていた時期を告白していますが、竜樹も王家の女官に散々な悪行を働いている。このくだりは大いなる反省が次への進歩成長につながると言う暗示でしょうか。 最終章で故郷南インドの王様に戦争を止めるように諌めるのですが、現在戦争をけしかけている国の政治家に読んでほしい…

  • オヤジのあくび681

    色摩力夫「アメリゴ・ヴェスプッチ」を読む。 なぜ、彼についてちゃんと学んでいないのか、本書の冒頭で明らかにされている。彼の業績に関する資料が少ないのだ。けれど明らかなのは彼の親友であるコロンブスが野心に満ちた航海者であったのに比べ、ヴェスプッチは知的な好奇心から、船長や航海士ではなく天文地理学者として「新世界」を4回訪れているのです。 後年新しい大陸の名前が、アメリゴにちなんでアメリカと名付けられたが、すでになくなっていた彼はその事実を知らない。 コロンブスの新大陸発見の功績を横取りしたという説があるのですが、コロンブスは発見した島を西インド諸島と理解して地理的に大きな勘違いをしている。緯度経…

  • オヤジのあくび680

    F・ショットレンダー著、石橋長英訳「エルウィン フォン ベルツ」を読む 東京医学所(東大医学部)教授、医学博士としての業績という、いわゆる専門分野を踏み越えて、ベルツ博士はさまざまな文化に興味を示している。 休日は乗馬、江ノ島まで遠出することもあったという。音楽は四部合唱団でベースパートを歌っていた。さらには日本の伝統文化に造詣を深め、造形美術や工芸品の蒐集に止まらず口伝の神話や童話の形で残された伝説に強い関心を持ったという。この広い好奇心のあり方が、どこか鎖国下で来日していたドイツ人医師シーボルトの残像と重なる気がしてしまう。 抜き書き本書p220〜 1896年2月26日の記念講演より 西洋…

  • オヤジのあくび679

    原田恒弘編「群馬歴史散歩 173号」を読む。 飯尾宗祇 いのちあらばまたもきてみむ草津なる 神のいでゆはあやにかしこき 草津温泉は有名な観光地であるし、ボク自身もリピーターを自負しています。そこで本書からは、今までボクが知らなかったことのみを抜き書き的に拾い出してみます。 湯畑の下に落ちている湯滝のそばに燈篭が立っている。かつてはこの傍に不動堂があり文政十三年伊勢太々講中の人々によって寄進された。川端龍子の出世作「霊泉由来」はこの燈篭を元にしている。 戦国時代も傷ついた兵士たちに、草津温泉での効能は有名で、温泉で乱暴狼藉をはたらき、一般人が入れなくなったことがあった様です。武田信玄がそのような…

  • オヤジのあくび678

    エリック・ルーセル著、山口俊章・山口俊洋訳「ドゴール」を読む2 チャーチルにファシスト・独裁者的な雰囲気を指摘されているドゴールは、ソ連とも接触しつつ共産主義者が大勢いるレジスタンスを鼓舞しなければならなかった。戦後壊滅的な被害を受けたフランス国内の産業を国有化したのは、他ならぬドゴールであります。単なる保守主義者や共和主義者とは一線を画している独自の立ち位置が本書から見えてきます。 しかし、戦後のフランスの行方を託されたかに見えたドゴールは、突如政界から身を引いてしまうのです。その後政治のど真ん中に戻るまで実に12年! 大戦中も混乱の渦中に置かれた時、彼は一旦その場を離れて、孰考する環境を確…

  • オヤジのあくび677

    エリック・ルーセル著、山口俊章・山口俊洋訳「ドゴール」を読む1 愛国主義って何だろう。ドゴール伝を読み進めながらこの問いについてボクなりに考えてみたい。 ドゴールのゴールとはガリアの意味があると言う。カエサルの戦記にあるように現在のフランスはガリアだったのだ。彼にこの国土にずっと暮らしてきた一族としての意識はあっただろう。そしてそれがどうやってフランスの独立を守るかという軍人として政治家としての行動に結びついている気がします。 ドゴールが軍人として、第一次世界大戦でドイツ軍と戦った時、彼は捕虜となったのですが捕虜になるたびに収容所から脱走している。その後彼は戦車が戦力の中心になると考え、政府に…

  • オヤジのあくび676

    高遠弘美「物語 パリの歴史」を読む2 本書の中でも、かなりの分量を割いて書かれているのが、フランス革命とその後のナポレオン。思い出せばフランス革命を「やばい」と感じた周辺国がちょっかいを出そうとして、逆にナポレオンに攻められてしまったのでしたね。 第二共和制の後に登場したフランス最後の皇帝ナポレオン3世の生き様も波瀾万丈でおもしろい。本書は現在のパリがいかにしてできたのかについて語っているのですが、その中でナポレオン3世の指示によって造られたものがとても多いことがわかります。中央市場、道路、下水道、ガスなど、彼のパリ改造計画は失業者を減らすことに結びつきました。「国民主権を標榜する皇帝」という…

  • オヤジのあくび675

    高遠弘美「物語 パリの歴史」を読む1 オヤジのあくび674でシャルルマーニュの本を読んだのですが、彼はエクス・ラ・シャペル(アーヘン)を中心に活動していたので、パリの話があまり出てこない。はて? ヴァイキング(ノルマン人)による侵攻からパリを守った人として、西フランク王ロベール家のウードがいます。その後シャルルマーニュの系統であるカロリング家が途絶えるとカペー朝の時代となります。治めていた領土はバリ近郊のみでしたが、987年バリを中心としたカペー王朝がここで成立します。 シテ島にあった王宮が再建され、やがて王宮はルーブル宮(1190年〜城塞として建築がスタートした)へと移ります。しかしながら、…

  • オヤジのあくび674

    ロベール・フォルツ 大島誠編訳「シャルルマーニュの戴冠」を読む2 世界史のおさらいです。ローマにはカトリック教会の頂点に立つ教皇がいらっしゃる。一方ローマ帝国は、テオドシウス1世の時に皇帝がコンスタンティノープルに移り、ビザンツ帝国とか東ローマ帝国と呼ばれた国になる。西ヨーロッパへの影響力はどんどん弱まっていき、ローマ帝国が東西に分かれたと学習する。その後数百年が経ち、ガリア・ゲルマニア・イタリアを統治する王、シャルルマーニュが登場し、戴冠式を経て西側の皇帝になるわけですね。 最近日本でお札の肖像が新しくなりましたが、戴冠式後シャルルの顔も早速コインになります。波風が立つのはビザンツ帝国側のイ…

  • オヤジのあくび673

    ロベール・フォルツ 大島誠編訳「シャルルマーニュの戴冠」を読む1 初めて習うものにとって、ドイツ語とフランス語は大きく異なっている。ドイツ語が西ゲルマン祖語から長い時間をかけてドイツに浸透して知ったのに対して、フランス語は、ざっくり俗ラテン語→ロマンス語→フランス語という過程を辿っており、ローマ帝国の属州ガリアであった名残が感じられる。 古代から中世にかけて、周辺国へ攻め入り広大な版図を実現した王は何人もいる。シャルルマーニュもその一人で、現在のドイツ・フランス・北イタリアを含める広大なフランク王国を築いた。彼が建設した都はエックス・ラ・シャペル(アーヘン)で、大聖堂がユネスコの世界遺産に登録…

  • オヤジのあくび672

    安田祐輔「未来が変わる勉強法」を読む キズキ共育塾では、そのまま学校の先生を続けていたら、まず体験できなかったようなケースにいくつも出会いました。予定通りに生徒が現れないということもありまして、生徒が来ないのでその合間にこの本を読んでいるわけです。皆様、「けしからんじゃないか!」と眉を吊り上げてはいけません。ここはそのような子をサポートするための塾なのですから。 生徒に合った学習と口先で標榜することはやさしくても「言うは易し行うは難し」なわけです。 キズキ共育塾で教える内容は、もちろん予習が必要ですし、その他ボクには表現系の趣味(=合唱・琵琶)があって、両方とも予習復習が欠かせません。けれど上…

  • オヤジのあくび671

    鈴木康久「西ゴート王国の遺産」を読む2 外国に門を閉ざし、国内がほどほどに平和であると、国を防衛する力を衰えてしまうようだ。江戸時代のベリー来航時がそうだったし、イスラム勢力が入ってきた時の西ゴート王国もそうだった。711年滅亡。 イスラム勢力に負けて王国を失ってしまったので西ゴート王国の人々は人頭税を支払う義務を負った。しかしながら信じる宗教については寛容な政策がとられたので、キリスト教徒もユダヤ教徒も改宗を迫られたわけではなかった。 西ゴート王国滅亡から7年後、718年ペラーヨがアスティリア王国を興す、722年にペラーヨはイスラム勢力に勝利しており、この時からレコンキスタが開始されたとされ…

  • オヤジのあくび670

    鈴木康久「西ゴート王国の遺産」を読む1 ピレネー山脈より西、現在スペインやポルトガルがある地域の歴史は、イスラム勢力とカトリックが入れ替わったり、国の名前もコロコロ変わって、単線型ではない。本書はケルト(セルト)人と原住民のイベロ人の混血であるセルティベロ族の成立から始めている。その後地中海沿岸ではフェニキア人やローマ人、ギリシア人が植民都市を築いて、勢力争いを繰り広げていたので、有名なローマとカルタゴのポエニ戦争やハニンバル(アニバル)将軍のことが語られる。 私たちが普段慣れ親しんでいる発音が、本書ではスペイン語の発音で語られるため、文中のカタカナ表記を( )書きすることにしました。 最近世…

  • オヤジのあくび669

    高田康成「キケロ」を読む 「ローマの雄弁の最高の父」であり、同時に「軽佻浮薄な不幸な老人」でもある。いったいこの真反対な言われようから人々は、どのようなキケロ像を描けばよいのだろう。 まずは雄弁家としてのキケロ。スッラから逃れるようにギリシアへ留学に向かった20代の頃。その頃の彼は胃弱で痩せており、スピーチは粗く柔らかさに欠けており、激しい熱のこもった話し方になると調子が高くなり、周りがハラハラする程だったという。発声法が身についていなかったのだ。これは現代の日本の政治家にも言いたい。まずは基礎的な発声技術を身につけてほしい。 彼は「発想論」の始めでこのように書く。「雄弁なき英知は国政に有益で…

  • オヤジのあくび668

    橋場弦「古代ギリシアの民主政」を読む3 アテナイを細かく分割された単位が区。この区に区民会という会議があり、国家レベルで論じられる軍事・外交以外の生活上のほとんどの問題が論じられていました。国との関係は大きな歯車と小さな歯車の組み合わせで考えるとわかりやすいと筆者は言います。 中央集権制で国に決めたことがトップダウンで地方から各地域へと指示されている現代の国家とかなり様相が違います。 無頭性。リーダー・代表を置かずに「順ぐりに支配し、支配される」関係。市民一人一人が武装し、警備が必要な場面は異民族の国有奴隷である弓兵が担う。 ソクラテスは「国家の歳出歳入額、陸海軍の現有兵力、鉱山の採掘高、穀物…

  • オヤジのあくび667

    橋場弦「古代ギリシアの民主政」を読む2 陶片追放によって国外へ追放された人は13人。従来は僭主の出現を防ぐためと言われてきたが、本書では有力貴族同士の破滅的な対立を防ぐためという説を掲げています。なお国外追放は永久ではなく、再び戻ることができました。 また陶片に名前を書くためには、文字を書けることが前提だと感じますが、たぶん大部分の人は代筆を依頼していました。当時のアテナイの識字率は15%程度。公教育制度がまだ整っていない時代の話なのです。 さてアテナイは、程なくして厳しい状況に追い込まれます。そしてその引き金となったのは27年も続いたスパルタ・シラクサとのペロポネソス戦争でした。当初籠城のた…

  • オヤジのあくび666

    橋場弦「古代ギリシアの民主政」を読む1 始めに、成文法を定めて公正な裁判が可能になったクレタ島や声の大きさが採決に影響した(=ヤジ?)民主政とは言い難いスパルタの例が語られる。一つの制度を定めるとそこに安住し硬直化してしまうのは、現代もまったく同じであり、永久革命としての民主主義を掲げた丸山眞男の言葉が蘇ってくる。 その中でやはり語られるのが、アテナイの民主政です。アテナイそのものは他のポリスよりもかなり大きく日本で言えば神奈川県程度の面積があったと言います。政治に携わる者をアルコンと呼ぶのですが、互いの名誉欲や権益欲が絡んでなかなか決まらない。不在の状態は今のアナーキーの語源になっています。…

  • オヤジのあくび665

    ハイディ・グラント・ハルパーソン 児島修訳「やってのける」を読む 序章でラディッシュを使った実験で我慢を強いられ、苦いラディッシュを食べさせられた被験者は、自制心を消耗していたという記述が出てきます。ストレスが多い環境に居続けると人は自制心を消耗してしまう。これはさまざまなトラブルを引き起こしている環境がかなりストレスに満ちていることからも類推できます。けれど筆者は自制心は鍛えることができると言います。例えば、エクササイズをする、家計簿をつける、食事の内容を記録するなどの「鍛錬」が自制心を鍛えることに繋がると言います。 目標設定ついては、長短比較が有効。目標を達成した時に得られるもの(長)と、…

  • オヤジのあくび664

    大塚ひかり「くそじじいとくそばばあの日本史」を読む この本で取り上げられている人々は、ご長寿です。ほとんど神話の世界の住人はともかくとして、意外なほど昔の平均年齢が高かったことに驚いてしまう。現在定年を70歳に引き上げようという論議が出ているけれど、律令国家の官僚も定年は70歳だったのだ。それまで勤め上げた人が大勢いたのでしょう。 老いて歯止めが効かなくなった例として、朝鮮出兵を強行した豊臣秀吉が登場しますし、もはや性欲の塊と化した一休禅師などが登場します。 実はボクの親族が役所で総合案内をしているのですが、毎日高齢者が大勢訪れてくるらしい。なかなか個性的な方々が多いらしい。高齢者でちょいと扱…

  • オヤジのあくび663

    鈴木鶴子「江藤新平と明治維新」を読む4 西郷隆盛が政府から去ることに、大久保は、なぜ平然としていられたのだろう。お膝元の近衛兵を統括していた元帥は西郷隆盛その人で、実際西郷隆盛が鹿児島に帰ると同時にかなりの兵が帰郷してしまう。しかし、すでに政府は徴兵令を敷いており、戊辰戦争を戦った兵隊に頼らなくても大丈夫になりつつあったのだ。 いよいよ本書も最終盤となり佐賀戦争が語られる。戊辰戦争以前の動きで佐賀藩は薩長両藩に確かに遅れを取った。その挽回なのか、いざ征韓! と、はやり立ち憂国党や征韓党なる集団ができていた。新平が佐賀に赴いたのは、当初これらの集団を鎮撫するためであった。 しかし、これは罠で政府…

  • オヤジのあくび662

    鈴木鶴子「江藤新平と明治維新」を読む3 どの時代にも立場や人間関係を利用して、私腹を肥やす者がいて、最近も政党の不正会計を正す論議が立法府で行われている。江藤新平の時代には、それは薩長閥の要人でありそれにぶら下がる商人たちであった。江藤新平は、司法卿として軍会計と商人の癒着を追求していく。既得権に胡座をかいていた人々が、新平を煙たがったのも無理はない。 明治政府の幹部は、当時下級武士出身者が多かったが、法律をしっかり教育されていないルーズさが露呈している。法治国家とか三権分立とかを前提にした至極真っ当な論議が噛み合わなかったのだろう。 新平が参考にしていた制度は、革命後のフランス民法である。そ…

  • オヤジのあくび661

    鈴木鶴子「江藤新平と明治維新」を読む2 話は江戸城無血開城から。西郷隆盛と勝海舟の会談で決まった史実は有名ですが、その裏側で江藤新平が奔走していた話は、この本で初めて知りました。日本が内戦状態に入れば英仏の思うツボとなることを恐れて走り回ったのでしょう。やがて彰義隊が立て篭もる上野に向けて、本郷加賀藩邸から撃たれたのが佐賀藩のアームストロング砲。その合図で動いた長州兵とともに、勝敗を決する兵器となりました。 さて当時の江戸市民(新平はすでに市民という言葉を使っている)132万人に対して、どのような民政を行うか。いよいよ江藤新平の本領発揮です。官軍は占領軍のような存在ですから、政策が失敗すれば混…

  • オヤジのあくび660

    鈴木鶴子「江藤新平と明治維新」を読む1 江藤新平は著者の大伯父でして、逆賊扱いされてきた新平への思いが著作のエネルギーになったと思われます。 新平は、佐賀弘道館で大木喬任や副島種臣と知り合う。当時の弘道館では、水戸学を取り入れた国学を講じていて、先祖が南朝側であった新平は大いに共感したらしい。やがて新平は義祭同盟という尊王活動に加わる。この同盟の中からは、島義勇、副島種臣、大木喬任、大隈重信など明治政府で活躍する人材が出ているが、藩政に対しては藩主鍋島直正が藩政改革に爆進中でもあり、藩政を改革する勢力とはならなかったようであります。 教授の退任や長崎留学を断るなどして、大木喬任と共に新平は弘道…

  • オヤジのあくび659

    片野ゆか「動物翻訳」を読む2 宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」でアオサギが話題になったが、本職に登場する動物は、アフリカハゲコウ。知らない鳥だったので少し調べると、腐肉を食べる大型鳥らしい。 担当者のミッションは、フリーフライト。つまり大空を自由に飛翔させることだ。鳥が大空を飛ぶのは当たり前の話だけど、それを動物園で実現するとなると、だいぶ勝手が違う。ちゃんと飼育員のところへ戻って来られるようにしなければならないのだ。 恐れていたことは、起きてしまった。動物園のある山口県秋吉台から飛び立った雌鶏のキンが和歌山県の御坊市まで飛んだのだ。これを人間=動物園側の視点ではロストと言うべきだろうが、…

  • オヤジのあくび658

    片野ゆか「動物翻訳」を読む1 プロローグを読むと、変化のない単調な生活を送っていると飽き飽きしてしまうのは、人間も動物園の飼育動物も同じこと。環境エンリッチメントという飼育動物の幸福な暮らしを実現するための方策が模索されるようになったとあります。 はじめに登場するのはお馴染みのペンギン。日本は世界で最も多くペンギンを飼育している国なのだそうだ。ペンギンと言えば南極の氷の世界を思い浮かべるが、フンボルトペンギンは自然豊かな島に営巣している。動物園の中に島の自然を再現しよう=緑のペンギン島!と言う世界初の試みが紹介される。 可愛らしいのは、長野から埼玉へ移送されてきた卵が孵ったエピソード。ヒナの名…

  • オヤジのあくび657

    伊藤亜紗「目の見えない人は世界をどう見ているのか」を読む 本書の始めの方に、ゾウとアリでは時間の感じ方が違う話が出てきます。また客観的な情報が個人によって異なる意味に捉えられることがある話。視覚障害の皆様には、晴眼者には感じられない感覚があるのだとも。第一章空間では、目が見えないからこそ脳にスペースができて、視覚情報への対応に追われている晴眼者とは違う空間把握ができる。例えば見える人が二次元的に、例えば富士山を絵に描いたように認識するのに対して、目が見えない人は三次元的に立体的に捉えると。 実は学校教員をしていた頃、視覚障害の疑似体験としてアイマスクを使ったことがありました。けれど筆者はそれは…

  • オヤジのあくび656

    栗山英樹「栗山ノート2」を読む 「栗山ノートを読んだら、古典を読まなくてもいいね」と先輩から言われたエピソードが登場します。この本の目次には名言・格言が並んでいます。野球監督としての判断が何に支えられていたのか? が垣間見える趣向なのです。少々説法臭いのですが、元々栗山監督は教員養成のための大学出身でして、その辺りも繋がっているのかもしれません。 彼の信条が伺える言葉が刮目相待。栗山流解釈は「選手たちの成長や進歩を信じて前へ進んでいく」です。ボク自身、学校を辞めた後も、別の教室で生徒と接する機会を持ち続けているのですが、肝に銘じたい言葉と感じました。 WBC日本代表監督として、どんな場面で自分…

  • オヤジのあくび655

    養老孟司「ものがわかるということ」を読む 養老先生が大学生の頃、家庭教師で中学生に数学を教えていた経験から「なぜやらなきゃならないのか、よくわからないけれど、なにしろやるしか仕方がない。」ことがあると本書は始まる。 情報社会とは、言葉や記号が変わらないのに人間は変化すると言うギャップに課題がある。生身の人間の生の感覚、言葉や記号では伝えられない変化していく感覚の大切さを養老さんは説いています。しかし人間そのものが情報化してしまった状態を養老さんは情報化社会と呼んでいます。 その延長で、個性とは身体にあると。心は共通性を基盤にしているが、身体こそが唯一無二なのだと。学んだことが「身につく」とは身…

  • オヤジのあくび654

    橘玲「テクノ・リバタリアン」をkindleで読む 序章において、著者は、保守とリベラル・共同体主義とリベラリズム・功利主義と市場原理の否定・・様々な対立軸を提示しながら、タイトルにもなっているテクノ・リバタリアンの輪郭を浮かび上がらせている。保守とリベラルは政治的な立ち位置を表すためによく使われるが、現時点で自分が共感できる思想は何か? 振り返る作業にも有効な気がします。 続いてシステム化された脳と共感脳の比較が出てくる。シリコンバレーの成功者たちは、システム化された脳によって、高度な数理処理能力を発揮しているが、他者に共感する力が弱いと、その典型をイーロン・マスクを例にして語っている。 ピー…

  • オヤジのあくび653

    藤岡換太郎「フォッサマグナ」を読む2 フォッサマグナと言えば、糸魚川〜静岡ラインと思っていたのですが、これはあくまでも西側のラインらしい。しかもフォッサマグナの北側と南側では地質が違っていて、北側(大雑把に言って諏訪湖より北)は、日本海のできかたと関係があり、南側は伊豆半島や丹沢山塊のできかた=フィリピン海プレートの動きと関係している。さらに西日本から伸びてきた中央構造線がフォッサマグナのところで一旦姿を消して、関東山地の東側=下仁田あたりでまた現れる。さらに地下6000mより深いところはわからず、フォッサマグナの深さも現時点ではよくわかっていないと言う。 何だ、わかっていないことだらけじゃん…

  • オヤジのあくび652

    藤岡換太郎「フォッサマグナ」を読む1 本書は地質学の本なのですが、最初に登場するのは若きドイツ人ナウマンです。あのナウマンゾウに名前を残している科学者は地質学者だったのですね。ミュンヘン大学で学び20歳で博士号を取得したナウマンは、お雇い外国人教師として来日し21歳で新設間もない東京大学理学部の教授となります。 彼が打ち込んだ仕事は、日本の地質図作成でした。来日直後から調査旅行に出かけています。野辺山近くの平沢という集落で、嵐の翌朝ナウマンは見たこともない風景を目にします。細長い土地の両側に2000m以上の山が壁のように聳えているのです。後年彼はこの地溝帯をフォッサマグナ(ラテン語で巨大な溝)…

  • オヤジのあくび651

    坂本龍一「音楽は自由にする」を読む2 坂本龍一さんは自由劇場繋がりで、やがて鈴木茂に会うのですが、それまで「はっぴいえんど」を聴いたことががなかったと告白しています。正直クラシックバリバリ芸大作曲科卒業の坂本とポップミュージックどっぷりの仲間との間に辿ってきた音楽履歴の溝を感じます。だって「はっぴいえんど」は、すでに新しいポップスの開拓者として広く知られる存在だったわけですから。続いて山下達郎に会い、大瀧詠一に会い、ようやく本書に細野晴臣さんが登場するのですね。クラシックとポップスの溝と書きましたが、それをラクに跨ぎ越えて行ったのが坂本龍一その人なのだと思います。 YMOで登場する直前に「千の…

  • オヤジのあくび650

    坂本龍一「音楽は自由にする」を読む1 坂本龍一の愛称は「教授」。芸大大学院の作曲科を出ていることと無縁ではないでしょう! 高一の時に新宿高校の先輩である池辺晋一郎さんに「今受けても受かるよ。」と言われて、あとは学園運動まっしぐら! 制服制帽、なんと試験がない高校が実現してしまったそうです。 芸大に入って、所属する音楽学部より美術学部の方に入り浸っていたのは、なんとなくわかります。当時の音楽学部内でロックの話題などで盛り上がる友だちなどいなかったでしょうしねぇ。それでも小泉文夫さんや野口体操の野口三千三さんの授業には熱心に出ていたそうです。やがて美術学部の仲間繋がりでアングラ演劇に気持ちが動き、…

  • オヤジのあくび649

    森林貴彦「Thinking Baceball」を読む 序章で「最後はデータよりも感性を優先しよう」という言葉が出てくる。相手投手のストレートを想像以上に速いと感じたら、データではなくストレート待ちであっても変化球待ちに変えてよいと言うのです。「データにおいて必要なのは、翻弄されず人間が使う側であり続けること」と。なるほど。 昨年甲子園を沸かせていた話題の中で、慶應高校野球部のテーマ「エンジョイ・ベースボール」が話題になりました。森林さんは自身が高校二年生の時に当時の監督から「セカンドへの牽制球のサインを考えなさい。」と言われた経験を紹介しています。意図を聞くと「自分たちで決めた方が楽しいだろう…

  • オヤジのあくび648

    藤子・F・不二雄「大人になるのび太たちへ」を斜め読みする プロのゲーマー梅原さんがこんなことを言っています。「僕は不器用だから、特にぼくと同じような子には、『諦めることにメリットなんかない。自分がやりたいんだったら、周りが何か言おうと、やり続けると、結構人そこで踏ん張ったなりの見返りってあるよ』って伝えたい。他の人が諦めたところからが自分の時間だぞって」 プロのゲーマー! ボクらオヤジ世代にとってはまさに前人未到、諦めたという友だちの気持ちも想像できます。けれど本物のパイオニアって、彼のような人が新しい地平を切り拓いていくのだろうなぁ・・とも感じます。 仮面ライダーだった菅田将暉のところまで読…

  • オヤジのあくび647

    網野善彦「歴史を考えるヒント」を読む 冒頭に日本という国名がいつ決まったのか? という話が登場します。ボクは手塚治虫の火の鳥で天武天皇が国名を決めた描写が出てくることを当てにしていたので、その頃かな? と漠然と考えていたのですが、689年の飛鳥浄美原令が定説のようでドンピシャですね。ちなみにこの時から天皇という言葉が使われ始めます。 私たちが日常考えなしに使い、知らないうちに偏った見方にとらわれている状況を解きほぐしてくれるのは、網野さんの本のありがたさだと思います。例えば「人民」。中華人民共和国とか朝鮮民主主義人民共和国とか、ものものしいイメージがある。学生の頃食堂周辺で「ピープル」というジ…

  • オヤジのあくび646

    井上ひさし「四千万歩の男 忠敬の生き方」を読む 商家に養子に入り、傾いた店の経営を立て直し、村の政治にも力を発揮した50歳までの前半生。忠敬が江戸に出て天文学を学び、さらには日本全国の地図作成という大事業に挑むのは後半生のこと。定年を迎えたサラリーマン諸氏にとって、これからどう生きるか? お手本を示してくれるようであります。 しかしこの本の面白さは、伊能忠敬の偉さよりもむしろ井上ひさしのオタクっぷりにありそうです。遅筆で有名な著者は、脚本の設定をイメージするために手書きの現地地図を書いていたという。オクラホマ州アナダルコの地図、小林一茶が生活していた頃の江戸市中・・手書きの地図には国境や保護地…

  • オヤジのあくび645

    会津人群像2022no.43より鶴賀イチ「会津藩校日新館」読む 会津藩の教育と言えば、大河ドラマ「八重のの桜」で紹介されていた「ならぬことはならぬものです」の什の掟が有名だ。6歳から9歳までが、什の組織による基礎教育期間で10歳から日新館入学となる。 学習内容が漢書の素読と講釈中心は、時代背景からして合点がいくところですが、天文方では会津暦があり暦学の先端を学んでいた。会津には海がないが池の周囲が153mの水練場を備えていて、日本初のプールと言われている。学習内容ではないが、窮乏時に藩が費用を負担して昼食が提供されたことがある。これまた給食の始まりだろうか? 家老田中玄宰の「教育は百年の計にし…

  • オヤジのあくび644

    佐藤智恵「ハーバードでいちばん人気の国・日本」を斜め読みする。 ボクは本書で金剛組という世界最古の会社を知った。578年に聖徳太子が招聘した宮大工が創業したと言う。何と1446年も続いている! 株価の激しい値動きを眺めていると、その時代時代でニーズや成功のあり方は変化するものと思いがちだが、どっこい飛鳥の世から続いている企業があったのだ。 日本を代表する経営者の名前が、ハーバードで議論の対象になっていることが紹介されているが、会社経営とは少し離れた印象があるアベノミクスの話が登場する。全く予想外の死を迎えた安倍晋三さんの経済政策が歴史に名を刻むことになるのかもしれない。 東日本大震災から13年…

  • オヤジのあくび643

    岡村道雄「縄文の列島文化」を読む 今も昔も日本独自の文化がある。何と三万年も前に日本独自の石器が使われていた。刃部を研磨した石器でナイフのように動物を狩る際に用いたらしい。 ところで私たちが資料で学んだ竪穴式住居のイメージは屋根が茅でふかれている。しかし、それは先入観であって本書を読むと縄文時代の住居の屋根は土でふかれていたらしい。それなら火災にも強いだろう。研究者は知っていても一般の人は誤解したままのことは他にもありそうだ。 遺跡というと、まずは建物群や土器に注目するが、本書はまず松島湾宮戸島の調査を元に、季節ごとにどのような食べ物をどのようにして食べていたのかを、詳しく解説している。今のよ…

  • オヤジのあくび642

    村井康彦「出雲と大和ー古代国家と原像をたずねて」を読む2 本書に吉備国の桃太郎伝説が登場する。桃太郎は大和朝廷から派遣された吉備津彦命のことであり、鬼は吉備国で鉄生産に従事していた百済の人々だというのだ。何とかして吉備国の経済力を弱めたい朝廷側は実力行使に出たのかもしれない。この本には他にも丹波・尾張など大和朝廷にとって目の上のたんこぶ的な豪族を如何にして支配下に収めていったのか、書かれている。 さて出雲国。出雲大社の他に熊野大社という大きなお宮があります。筆者はそれを伊勢神宮の下宮と内宮の関係に例えています。しかるべき内宮造営の前段階として、下宮の役割を果たす熊野大社が必要だったと。出雲大社…

  • オヤジのあくび641

    村井康彦「出雲と大和ー古代国家と原像をたずねて」を読む1 奈良盆地に三輪山という山があり、麓に大神神社がある。御神体が山そのものという古代の自然崇拝を受け継いでいる。ところが祀られている神様は大国主命なのです。なぜ出雲大社の神様が奈良盆地の真ん中に祀られているのか? どうやら日本の統一過程で、初めてまとまった国造りに成功したのは、大国主命らしいのです。大国主命とは、あの因幡の白兎に登場する意地悪なお兄さんたちと好対照のやさしい神様です。本書は、その後どのようにヤマト王権へ移譲されていくか? を推論している。 著者は出雲国の名残を磐座と四方突出墓を頼りに訪ねていく。(四方突出墓とは四隅がヒトデの…

  • オヤジのあくび640

    関裕二「縄文の新常識を知れば日本の謎が解ける」を読む 一般に社会で学ぶ対象を「人・もの・こと」と言うけれど、その中でも歴史は、文書・記録を元にした過去を学ぶことだから、縄文を始め文字を持たなかった文化は、その様子を手繰り寄せることが難しい。 しかし「日本人はいつ頃どこからやって来たのか」という問いについては、ヒトゲノムの解析がヒントを与えてくれている。答えになってないが「北、西、南・・いろいろなところからやって来て、長い期間を経て混じり合った」ということになるだろうか? 元々の文化に積み重なるように新しく移入された文化が取り入れられていく過程は、文字言語の輸入過程に似ている。元々土着の発音=や…

  • オヤジのあくび639

    椎名誠「漂流者は何を食べていたか」を読む この本のネタは、生きて戻った人による漂流記。残念だが帰還を果たせなかった漂流者のことはわからない。それを生きて戻れたのは知恵や技術があったからだと、またはクルーのチームワークがよかったからだと決めつけてはいけないと思う。理由の大半は、やはり幸運だったのだと思う。遭難の理由が不運であるとほぼ同じ割合で。 椎名誠の特徴は、実体験に基づいた文章がデフォルメを軽薄体などと揶揄されながらも、体験と文章のギャップが大きく、その面白さが共感を呼んできたことでしょう。この本においても、漂流記の抜書き的な部分より実体験を踏まえて書いている(本書で言うとアリューシャン列島…

  • オヤジのあくび638

    高野秀行「間違う力」を読む2 「ラクをするためには努力を惜しまない」で、早大探検部の幹事長になった話が出てくる。(早稲田ではサークルの部長やリーダーのことを幹事長とと呼ぶらしい。ただの幹事だっていいのに)。リーダーを経験することは、メリットがあると思われるが、著者は自分勝手ができることを挙げている。集団行動の目的地や日程・ベースなどを自分に合わせて組めるというのだ。 ふとボクがグリークラブの学生指揮者だった時のことを思い出した。同期のメンバーに比べて少しばかり鍵盤ハーモニカが弾けるというのが、就任理由だった。なった当初は部員がバート練習に勤しんでいる間、ひまを持て余していた。みんなが集まって、…

  • オヤジのあくび637

    高野秀行「間違う力」を読む1 ジョン万次郎と著者が違うのは、万次郎は漂流の末、アメリカの船に救助され、そこから運命を切り拓いていくのですが、著者は初めから人が訪れないような地域に自ら進んで出向いているのです。当然危険なわけですが、行ってみなければ実際のところどうなっているのかわからないわけで、著者の勇気にはある意味感心します。 もう一つ、気持ちが拡散し取り止めもなくなってしまう人にありがちなのでしょうか、自分自身の行動原理をお約束ごととして十ヶ条にまとめています。本書もその構成になっているのですが、それはマニュアル本のように読者を説得するというよりは、自分を納得させようとしているように感じます…

  • オヤジのあくび636

    永国淳哉編「ジョン万次郎」を読む2 万次郎が捕鯨船で世界中の海を巡っていた頃、アメリカ西海岸ではゴールドラッシュのブームに湧き立っていた。そして一攫千金を目論む男どもの中に何と万次郎も身を投じていたのである。そしてここで稼いだ金が日本に戻るための渡航資金となるのだ。万次郎はホノルルに渡り現地にいた仲間二人と合流すると「アドベンチャー」号で沖縄に向かう。(アドベンチャー号は小舟だから途中までは上海行きの大きな船の甲板に乗せてもらっていた)沖縄→薩摩→長崎というルートを経て、万次郎はようやく故郷土佐へと戻った。そこから先が目まぐるしい。土佐藩から武士の身分に取り立てられるかと思えば、次には幕府から…

  • オヤジのあくび635

    永国淳哉編「ジョン万次郎」を読む1 ジョン万次郎が日本に戻った幕末、彼のアメリカ体験談が、坂本龍馬を含む土佐の志士たちやその後の自由民権運動に影響を与えたという説がある。偶然にも漂流民の万次郎が到着したのがニューイングランドのフェアヘブンであり、現在に至るまで自由を標榜し続けているアメリカという国のもっともルーツである土地(メイフラワー号が到着したすぐ近く)であったことは、とてもラッキーであった。NHKの朝ドラ「らんまん」の中で牧野冨太郎がジョン万次郎と出会う場面が描かれていたが、明治という時代の幕開けの中で土佐がどんな熱気に満ちた地域であったかを伝えたいたと思う。 さて漂流の末。救助された四…

  • オヤジのあくび634

    パトリック・ハンフリーズ著、野間けい子訳「ボール・サイモン」を読む2 サイモン&ガーファンクルが有名になったのは「サウンドオブサイレンス」から。それまでポール・サイモンはどこで何をしていたのか?その疑問に本書は答えてくれる。イギリスでフォーククラブを巡っていたのでした。ボクが大好きな「早く家に帰りたい」を書いたのもこの頃の話。この時期の成果は「ポール・サイモン ソングブック」としてレコード化されている。 ファンは憧れる歌手や作曲家を偶像化する。けれどそれは人間性までも尊敬に値するかどうかは別物なのだ。ベートーヴェンやモーツァルトがそうだったように、若かりしポール・サイモンのエピソードにもかなり…

  • オヤジのあくび633

    パトリック・ハンフリーズ著、野間けい子訳「ボール・サイモン」を読む1 トム・グラフとジェリー・ランディス。コンビ名は二人合わせて「トムとジェリー」。ネコとネズミが駆け回るアニメーションではない。16歳のサイモンとガーファンクルが「Hey School girl」という曲を出した時のコンビ名なのだ。ちなみにビルボード最高位54位、売り上げは10万枚だったという。やがてコンビは学校に戻って行き、曲も忘れ去られていく。何よりもサイモン自身が当時の状況をほとんど語っていない。 サイモンのアルバムを聴いて、課題レポートのようだと評している人がいたけれど、サイモンのアルバムにはその都度彼が関心を抱いた音楽…

  • オヤジのあくび632

    萩本欽一「欽ちゃんの、ボクはボケない大学生。」を読む2 後期が始まって大学に戻った欽ちゃんは、要領よく立ち回っている学生に、平均点はズルい感じがすると言う。人生は怒られるか褒められるか、将来社会に出てから役立つ武器は、そのどちらかの体験からこそ得られる流ものなのだから・・と。0点を取るにはズルをしない素直さと開き直る度胸が必要だとも言う。 関根勤や小堺一機、見栄晴を例に、短所が長所に変わったときこそ、人が最も力を発揮するとも言っている。 ある日大学キャンパスで就職がきまらなくて浮かない顔をしている4年生と話す。どんな仕事でも自分が面白くしてしまえば、いずれはそれを好きになれる。そう考えるだけで…

  • オヤジのあくび631

    萩本欽一「欽ちゃんの、ボクはボケない大学生。」を読む1 ボケないために大学進学を決めた欽ちゃん。老人と言われるより、年寄りでいたいと言う。年が寄って来るなら避けようもあると言うことらしい。元々幕府幹部に若年寄がいたように行政の重役の意味もあるしね。 さて授業。欽ちゃんはコメディアンだから笑いが取れると確信して失敗を演技する。だから自分が失敗しているのかどうかがよくわからない状態がとても不安だと言う。それが授業中の英語の指名読みだったのですね。失敗したくないから予習する。時には復習する。学校教育では「教室は失敗する所だ!」などと体裁のいいことを掲げながら、実は個々人の失敗回避の本能を利用して来た…

  • オヤジのあくび630

    ちばてつやが語る「ちばてつや」を読む2 この本は年代別にちばさんが作品にまつわる思い出を振り返っていく形で構成されている。私にとって初期の貸本漫画時代や週刊誌に漫画を連載し始めた当時の漫画は、タイトルでしか知らない作品も多く、とても興味をもって読み進めることができた。 ところで不思議な話だが、来るべき大作を準備していたかのような作品がある。ベートーヴェンが第九交響曲を完成させる前に「合唱幻想曲」を書いているような例は、ちばさんにもある。「あしたのジョー」の前に「魚屋のチャンピオン」というボクシング漫画があるのだ。さらに「ハリスの旋風」に出てくる拳闘部。すでにイメージができていたのだろう。原作者…

  • オヤジのあくび629

    ちばてつやが語る「ちばてつや」を読む1 ちばさんは高校3年生で貸本漫画家としてデビューしている。いろいろなアルバイトを始めてみたもののどれも上手くいかない。そんなちばさんが訪ねたのが、貸本漫画の日昭館書店。社長さんの名前は石橋国松。のちに一文字変えて「ハリスの旋風」主人公の名前になる。 ちばてつやさんに限らず、若い頃少女漫画を描いていた作家は多い。「ユカを呼ぶ海」という作品で、お転婆で男の子なんかに負けない少女を登場させる。今となっては当たり前だが、それまでは主人公=薄幸のちょっと病気がちな女の子が定番だったので、これは大きな改革であった(編集者はハラハラしていただろうけど) また少女漫画と言…

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